サッカーと社外取締役(その2)

「観察の観察の観察」さんから、前回のエントリー「サッカーと社外取締役」で、社外取締役をサッカーの審判に例えた点について、またトラックバックいただきました。
週末なのに、お騒がせしてすみません。

うーん、このたとえはちょっとムリがあります(^ ^;)
「社外取締役」は「審判」ではないです。
だって基本的にはどちらか一社の利益のために働くわけですから。

例えば、監査法人も、その会社から報酬をもらってその会社のために会計監査をするわけですが、「その会社のため」というのは、「その経営陣や従業員のため」ではなく、「その会社の株主のため」なわけです。
(社外)取締役は監査するだけ(ツッコミ専門)でなく取締役会で決議もする(ノリツッコミ(?)もやる)ため、ちょっとわかりにくくなりますが、基本的には「経営陣や従業員のため」に働いているわけではなく、「株主のため」に働くので同じことじゃないかと思います。
(HPの例を引くまでもなく社長をもパフォーマンスが上がらないと判断したらクビにしたりもする、文字通り「監督」でもあるわけですから、そういう意味では、草サッカーで監督が審判も兼務している姿に近い面もありますが・・・まあ、たとえ話で限界がありますのでご勘弁を。
<(_ _)>)
今の日本の現状を考えて、「社長と懇意にしてる怪しげなコンサルタントのおっさん」みたいな人を想像してしまうと、「そんな人が審判のわけないじゃん」という気がしてしまうと思いますが、純粋に株主のために活動する理想的なエージェントを想像していただけるとありがたいです。
「フォレストヒルズ」さんにもコメントいただきましたが、そうなるためには、もうちょっと取締役が訴えられるかもという緊迫感がないとダメかも知れませんね。それも、今回のライブドアの件や、UFJ vs 三井住友戦などで、ずいぶん意識は変わってきたんじゃないかと信じたいですが・・・。

市場における審判は司法や公正取引委員会や金融庁や、、と専門家でないのでこのくらいしか出てきませんが中立な立場で監視する機関がありますので、上記のようなまったく審判がいない状態ではないでしょう。

司法や金融庁は、法令に沿っているかどうか(適法性)を判断するには向いてますけど、そもそもは「どっちが株主にとって得か」を判断する役目の方々ではないと思うわけです。
今回の話を含め、もし純粋な法律解釈だけで決着が付くような話であれば、それは裁判所も判断しやすいと思いますが、(今回の場合についても、ちゃんとニッポン放送側の弁護士さんも頭をしぼってスキームを考えたんでしょうから、そんな単純な話のわけないわけで)、ちゃんと株主の立場に立って判断したかというような意思決定の「プロセス」まで深く検討しないと判断が付かないようなときに、(上記のような理想的な意味での)社外取締役というのは、一つの判断の要素になってきうるとは思います。
(ではまた。)

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サッカーと社外取締役

「観察の観察の観察」さんにトラックバックいただきました。(その1その2

「社外取締役が重要」という論旨は賛成なのですが、

ニッポン放送が勝つにしても負けるにしても、レブロンの判決のように、「社外取締役の検討が十分でなかったから”×”」というように、社外取締役の役割に言及してほしいなあ、ということです。
もちろん、社外取締役が今回の仮処分の結論導出の中心的要素になるということは、まだちょっと無理っぽいですが、以前も申し上げたとおり、そういう「ニュアンス」がちょろっとでも入っていれば、日本の資本市場にはプラスになるんじゃないかなあ、ということです。

というのは
ナシ
でしょう。
社外取締役が常識の社会ならともかく、それじゃあタダの「後出しじゃんけん」です。

とのこと。
私の説明不足で「社外取締役の数が多い方が勝ち」というように取られてしまったのかとも思いますが、そうではなくて、ニッポン放送の買収対抗策に対して仮処分するかどうかを裁判所が検討する際に、ニッポン放送の対抗策が「脅威」に対抗する合理性のあるものであったのか経営陣の保身に過ぎないのかを判断するには、一つには社外取締役の位置づけが重要だろう、そこを今回裁判所はどう判断するのか知らん?ということを言いたかったわけです。

なるほど、ニッポン放送の決定についてのみ、社外取締役のチェックが効いていたかどうかを問題にするということでしょうか。それならばフェアな判断基準の一つとしてもいいのかもしれません。
(中略)
逆に社外取締役のチェックを「アリバイ」にされるという逆作用も考えられます。社外からきたといっても、日本人はすぐに取り込まれますから。

そのリスクはありますね。
ただ、今後のM&Aが頻発する社会では、誰かが、その敵対的買収が株主にとって「いい」買収なのか「悪い」買収なのかを判断しないといけない。経営の内情を詳しくわからない裁判官が全部それを処理するわけにはいかない。
とすると、やはり社外取締役を拡充する方向しか無いんじゃないかと考えるんですが、どうでしょうか?
ゴルフや草サッカーからプロのサッカーへ
「観察の観察の観察」さんは、スポーツがご専門とお見受けしましたので、スポーツに例えさせていただきますと、
例えば、サッカーで「今のはファールだ」「いや、たまたまパスをカットしようとして足を出したら、そっちがつまずいただけだ」というようなトラブルが発生した場合、もしその場に審判がいなくて紛糾し、いちいち試合が中断して「スポーツ紛争調停所」みたいなところに駆け込んで、「こうだったんですけど、どっちが悪いっすか」みたいなことを聞きに行くというのは、聞かれた方も困ると思うんですよね。
今までの日本の社会は、ゴルフのように審判がいなくてもかなりうまくいく「紳士のスポーツ」のノリだったわけです。いまだに、紳士に囲まれて仕事をしている企業さんは「外部の審判」の必要性はピンと来てないでしょう。しかし、今後、M&Aや株主代表訴訟が頻発して、体が激しくぶつかるサッカーのような様相に変わっていった場合、「その場」に審判がいないと絶対うまくいかないと思うわけです。
もちろん、サッカーと同じく、「あの審判、ぜってーあっちに有利な判定ばっかしてるぜ」てなことは(人間がやることですから)起こりうるわけですが、少なくともグラウンドに審判がいないよりはましかと。
しかも、上場会社は「草サッカー」じゃなくて「プロ」なわけですから、控えの選手に「じゃ、君、主審やっといて」てなノリで内輪のだれかが審判をやるのではなく、「ちゃんとした審判」を「よそから」連れて来た方がいいんじゃないかと思うわけです。
「これからのプロのサッカーの試合には、どちらかのチームに肩入れしないプロの審判が必要だよ、」
「まずはそういう独立性の高い審判がジャッジして、それでも問題がある場合にはこっちに来てちょうだい、」
「当方はちゃんとした審判がちゃんとよく見てジャッジした結果は尊重しますよ。だけど、どっちかに肩入れしてる審判だったり、いいかげんな審判だったら、こっちが判断しますよ」
というような方向性が見える判断を裁判所が出したらかっこいいのになあ、と思った次第です。
(ではでは。)

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村上ファンド売却、今後の「落としどころ」は?

本日届いた日経ビジネス(2005.3.7号)によると、村上ファンドは、

フジテレビ、ライブドアのどちらにも持ち株を譲らないと決めたことが本誌の調べで明らかになった。

とのこと。タイトルも「ライブドア敗色濃厚」とシゲキ的。

保有するニッポン放送株の扱いについては「ノーコメント」を繰り返したが、関係者によると実際には市場での売却によりニッポン放送からは手を引いていくという。

ともあります。
両者の争いに巻き込まれたくないという思惑もあるようですが、そもそも、前の記事のインタビューで堀江社長も伝えているように、村上ファンドはフィナンシャルな投資家なので、今後、これ以上株価が上がらないと思ったら、市場で売却していくのは当然ですね。
「落としどころ」とコンプライアンス
いろいろ頭の中でシミュレーションしてるのですが、今回のTOBが終わり裁判所の判断が下った後、ライブドアとフジテレビはどういう「落としどころ」を模索するんでしょうか?
ライブドアはTOBの5,950円より高い平均取得単価で購入しています。ライブドアの取得原価以上で5,950円より高めに買い取るというのは、TOBに応募してくれた株主に申し訳が立たないし、その株主に、後から差額を補填するのも難しいでしょう。あまり高く買い取ると、TOBに応じてくれた株主さんも、(場合によっては)、代表訴訟の危険にさらすことになっちゃうのではないかと思います。
裏ワザとしては、ニッポン放送株を保有している子会社のライブドア・パートナーズに何か「おまけ」をつけたりしてテキトーな株価算定書を付けて、ちょっと高めに買い取るという手が無くはないかも知れませんが、ここまで衆人環視の中で、証券取引法164条(短期売買による利益の返還)の精神からしてグレーなことはやりにくいのでは。
5,950円という価格のスジは通すが、ライブドアには特定の事業分野で提携していくなど他のメリットで妥協してもらうということも思いつくわけですが、商法294条ノ2(株主の権利行使に関する利益の供与)の観点からすると、「株持ってるから事業いっしょにやってくれや」と言われて総会屋の事業に協力させられるというのとどう違うのか、という問題もありますね。(よほどライブドアの提案が他にはない優れたものだと説明できない限り。)インターネットビジネスをやってる会社はライブドアだけじゃないですし。プレスリリースでも「違法な可能性のあることをするやつ」と言っちゃってますし。そもそも、従業員があれだけ反対してたら、現場レベルでうまくいかなさそう。
単に株主代表訴訟だけじゃなく、刑事罰もあって、ちょっと怖い。それやっちゃうと、西武鉄道と同じ運命をたどるような気もします。
・・・と消去法でいくと、新株予約権の発行に至った場合には、フジテレビとしては「5,950円でなら買う」「いやなら新株予約権を行使して株を発行するよ」というスジを通して長期戦も辞さず、という手しか無くなるのではないでしょうか?
または、ライブドアの取得価額よりは若干下がるが、5,950円よりはちょっと高いところで購入し、TOBに応じてくれた大株主には(アウンの呼吸で)なんとかするという三方一両損な「大人の」妥協案に落ち着かせるんでしょうか。
確かに、ライブドアが持っているのはすごい量ですので、それがまた第三者の手に渡ったりすると、それはそれで話がややこしくなりますから、(法律的にはともかく)経済的には若干プレミアムを付ける合理性はあります。
(他になんかいい手ありますかねえ?)

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ライブドア側猪木弁護士辞任

まじスか?
http://www.sankei.co.jp/news/050304/sha005.htm
(追記)
ちなみに、3日夕方のニュースでやってましたが、本日、堀江社長が外国特派員協会で記者の質問に答えて時間外取引について回答した部分は、以下のような感じだったようです。

もう一つ、村上さんと、メイソンさんと、あれですか、サウスイースタンですか、あの人とコンタクトがあったかっていう話なんですけど、村上さんは僕の友達で、よくご飯を食べたりする人なんですけど、今回の件に関して僕が言ったことは、あなたは、高い値段がついたら、ニッポン放送の株をどうするつもりなのかと、TOBよりも、もし高い価格が市場でついていたら市場で売るのかということを聞きました。
彼は、私はファンドマネージャーだから、高い金額で売るのは当然だというふうに言いました。どうもそのサウスイースタンの人、僕は、コンタクトないんですけど、どうもそういうことらしいと。ただ、伝え聞いたところですから、本当かどうかわからなかったですけれども、高い値段がつけば市場で、たくさんの株がでてくるなというのが、その時にわかりました。なので、そういうことです。

(うーん。ビミョー。)
これだけで即、違法というわけではないでしょうが、少なくとも立会外取引での相手方のイメージをかなり事前につかんでいた、ということは明らかになったのかなあと。
「市場」といってますが、実際の会話では「ToSTNeT」と言っていたんでしょうねえ。
ニッポン放送は証券取引等監視委員会と東証にライブドアの時間外取引についての調査を申し入れたとのことですが、(刑事罰があるかどうかはともかく)、TOB規制を潜脱したという要素が強くなると、仮処分が認められない可能性は高まったということなんでしょうかね。

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ニッポン放送買収の社会的・経済的インパクト

公平を期すためというわけでもないですが、ライブドアさん側の観点からも何か書けることはないかというのは当初からずっと考えていたのですけれども、
ライブドアさんの観点に立つと、
「直前の6800円より行使価格が低いのはおかしい!」
「取締役は、ライブドアの提案を全く検討せずにフジサンケイグループに残る方がいいと頭から決めてかかってて、ちゃんと株主のために検討しているのか?」
という非常にわかりやすい一言に尽きてしまって、(これってもう巷で語られ尽くしてますし)、それ以上私が掘り下げる余地がちょっと見つかりません。
また、有利発行かどうかという点については、オプション的要素が含まれていたり、いろいろイジクリようもあったのですが、今回の仮処分申請の争点で一番重要な論点とに考えられる「不公正な発行かどうかに」等、その他のことについて掘り下げようとすると、過去の判例とか学説とか完全に弁護士さんの領域に突入してしまいますので、ちょっと私の分を超えてきます。
ものすごい教育効果
ただ、これだけは言えるのは、今回のライブドアさんによるニッポン放送買収が社会に与えた教育効果は計り知れない影響があっただろうということ。ワイドショーや夕刊紙にまでM&Aについて掲載されて、お茶の間にまで「TOB」とか「新株予約権」とか「ホワイトナイト」とかいう用語が上がり込んできたわけです。
日本銀行金融経済統計の「資金循環」によると、日本の個人金融資産は1,411兆円(2004年 9月末速報)。
この資産は、下図のように半分以上が銀行や郵貯を通じて、必ずしもパフォーマンスのよくない第三セクターや民間企業に投資されてきたわけです。アメリカのように預金の比率を10%台前半まで落とせとは申しませんが、さすがにもうちょっと直接金融(下図で黄色っぽいところ)寄りに変更して、(一部の官僚や銀行員が資源配分をするのではなく)、広く国民が直接企業に投資をしたり、投信や年金等を通じて証券で企業に資金供給される世の中にシフトしないとあきまへん。
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(出所:日本銀行資金循環勘定より磯崎がテキトーに作成。)
その場合に重要なのがやはり企業価値を上げて株主に報いるというベクトルを企業にいかに根付かせるかということじゃないでしょうか。
ただ、それって、どんなに偉い学者や官僚の方々が議論しても、国民の腹に落ちるにはほど遠そう。机の上のお勉強で「株主のことを考えるのが大事ですよ」といくら言っても、差し迫った危機感が無いと、内輪で固まっている取締役さん達の意識が変わるわけがない。
意識を変えるためにはやはり、「ヤンチャな企業が実際に我が社を買収するかも知れない」というほのかな恐怖感を経営者や社員のみなさんに味わっていただくのが一番。それによって、企業内に利益率を上げなきゃとか、資本効率を良くしなきゃとか、株価を上げなくちゃとかいう雰囲気が醸成されてくるんじゃないでしょうか。
買収への恐怖は資金効率を上げる
今回の「事件」で、この1400兆円が今後1べーシス(0.01%)うまく運用されるようになっても、1,400億円の経済効果。0.1%利回りがよくなれば1.4兆円の経済効果です。
ただ、日本の企業が同業の米国企業なんかと比べて時価総額が圧倒的に低いのを見ても、ホントに資本効率を高める気になったら、1400兆円の0.1%とかいうケチなバリューアップでは済まないかも知れませんね(と考えるのは楽観的すぎ?)
逆に、今回のこの「事件」がもしなかったとしたら、日本の上場会社は、ほとんど買収防衛策なんてものに興味を持たなかったり、または、現在の経営陣の保身の意図がミエミエの買収防衛策を導入したりしていたかも知れません。
今回の「事件」で、それではアカンというのが、どんな本よりわかりやすくお茶の間まで浸透したんじゃないかと思うんですよね。
またもし、企業が今まで通りボケーっとしてたままだったら、来年の会社法改正で外資にどんどん買収されちゃってたかも。期せずして「最高の予防注射」になったのではないでしょうか。
もしライブドアがいなかったら
以前も申しましたが、「もしソフトバンク(さん)がいなかったら」というのを考えてみると、ナスダックジャパンが日本に来ることも無く、それに触発されてIPOの敷居が下がることもなく、ライブドアをはじめとするベンチャーが球団買収に名乗りを上げるところまで力を付けるというような世界も無かったかもしれない。
また、ADSLも普及せず、このページをご覧の皆様も未だに56kのモデムで、「がーぴーひょろろろろー」とかやってたかも知れない。ナスダックジャパンはいなくなっちゃったし、ソフトバンクのブロードバンド事業もまだ成功とは言えないけど、「ソフトバンクがいない世界」がどんなにつまらなかったか、ということは容易に想像できると思います。
同様に、後から振り返れば、今回の「事件」でライブドアさんもそれと同じかそれ以上にすごいことをやったんじゃないでしょうか。
「あのときライブドアがニッポン放送買収に手を出さなかったら今の日本は無かった・・・」
と言われる可能性は、かなり高いと思います。
(・・・と、こんくらい褒めときゃいいかな?:-)

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ブログと媒体価値とクオリティ

「ダウト」さんから、コメントいただきました。
「isologueはフジ派・・・ってわけじゃありません」の、「他のエントリーもすべてそうですが、当ブログでは、個別の事象について、特定の企業を応援したり非難したりということはしてないつもりです。(どっちかに肩入れしているように読めるとしたら、私の文章力のなさのせいです。すみません。)」という部分に対していただいたものだと思いますが、

「文章力のなさのせい」で誤解されてしまったのではないでしょ。
それは、御自分で良く分かっているはず。
磯崎さんが、本当に議論を深めることが目的でいるならば、
まず最初に明示すべきは、「対象とする主題と範囲」。
その当然のことをやっていれば、誤解したくても誤解できないんですけれどね。
ところが、突っ込まれた時の逃げ方もチャンと用意しているあたり、
「誤解されることを期待」していたのかなと、誤解してしまいそうになりますよ。
実は、磯崎さんは自分のことを遣り手だと思っているんでしょ。

めっそーもございません。
言い訳っぽくなりますが、私、あくまで本業のかたわらにブログを書いておりまして、なるべく推敲はちゃんとするようにしてはいるものの、「ヤベっ、あと1分で出発しないと、クライアントとの会議に遅刻だっ!」ってなときに、「えーい」とそのまま保存ボタンを押して出かけてしまったりすると、ホコロビが目立つ文章になっちゃったりするわけでして・・・。
また、このブログですが、自分が完全に理解していることをみなさんにご披露しているというよりは、なぜそうなるのか自分でもよく理解できないことを開示されたデータなどを使って解き明かしていこうというノリのものでして、当然、多くの仮説や思いこみを含んでいるということをご了承いただければと思います。
−−−
一昨日、某テレビ局さん(フジじゃないです…)にお呼ばれしたときに、「ここが我が社の中心部です」と報道フロアをご案内いただいたのですが、体育館くらいの広さ一面にすごい数の人達がワイワイ働いててちょっとビックリしまして。このほかに、官庁等の記者クラブ等にも人が張り付いてらっしゃるわけで、「『ちゃんとした』情報発信を行おうとすると、こんなに人が要るもんなんかいなー」、「オレの書いてるブログって何よ?」というのを改めて考えさせられた次第です。
本ブログは、情報収集からコンテンツ制作から技術から送信まで全部一人で(仕事の片手間に)やってるわけでして、人様の会社ことは言っておきながら(笑)、ガバナンスはおろか内容のチェック機能すら無いわけです。
先日のブロガー飲み会technoratiジャパンの方と話をさせていただいて、ブログの「媒体」としてのビジョンがなんとなく見えてきた部分もあります。アメリカでは既に、企業等の記者会見に、マスメディアの記者だけでなく、ブロガーの席が3席くらい用意されてたりするとのことですが、technoratiのような「エージェント」が(アクセス数だけでない質的なものも含め)ブログの媒体価値をレーティングすることによって、ブロガーの社会的なポジションも明確になるとともに、企業の広告費などもブログ界に流れ込みやすくなるのかなあ、とか。
そうして、仮に「ブログを書くことでメシが食えるようになる」時代が来るとすると、私のような仕事の傍らでブログを書いてるヤツは淘汰されていって、「ちゃんとした組織」を持った、ブログを書くベンチャー企業?等がブログのトラフィックの中心的存在になったりするのかしらん?とか。
そうではなくて、既存メディアのようにチェックやら制約やらが存在しないところがブログのいいところだから、個人やごく少人数でやっている媒体と超巨大メディアだけがトラフィックを集めて、中途半端な規模のメディアが淘汰される「U字カーブ」的マーケット構造になるのかしらん?とか。
image002.gif
トガった情報をウリにして「個人」というカテゴリー全体はトラフィックを集めるものの、個々のブログを見ると、チェックやガバナンス機能が存在しないため、いつかは不用意な発言を発端にサイトが「燃やされ」ちゃったり、自爆したり、気合いが続かなくなってやめちゃったりと、ミクロで見ると激しく入れ替わりがあったり、その「炎上」等が、また一つの強力なコンテンツになったりするんだろうなあ、とか。
いや、そうではなくて、コメントやトラックバックでいろいろご指摘いただくこと自体が、既存メディアとは違う新しいタイプの「ガバナンス」になっていて、個人がやっているブログでも、やりようによっては「サステイナブル」な様態を取りうる余地があるのか無いのか、とか。
・・・いろんなことが考えられますが、本日はこれにて。

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ニッポン放送の適正な時価とは何ぞや(TOBとプットオプション)

村上ファンドさんをはじめ、投資家の方々はみな、「なぜ行使金額が直前の株価よりはるかに安い5,950円なのか?」「おかげで株価が下がったぞ」と激しくお怒りです。ごもっともかと思います。
ニッポン放送のプレスリリースでは、なぜ新株予約権の行使価格を5,950円にしたかということについて、以下のように述べられています。

(13)発行価額及び新株予約権の行使の際の払込金額の算定理由
株式会社東京証券取引所における平成17 年2 月22 日の当社普通株式の普通取引の終値を基準となる株価とし、前提となる金利には残存年数が行使期間までと同程度のTIBOR(Tokyo Inter-Bank Offered Rate)を、ボラティリティには当社のマーケットにおける状況等を総合的に勘案した変動率を、配当利回りには今期における当社予想年間配当金に基づく利回りを使用した。これらの諸条件を前提とし、一般的な価格算定モデルである三項ツリーモデルの算定結果を参考に、本新株予約権1 個の発行価額を金3,362,731 円(1 株あたり金336.2731 円)と算定した。
また、本新株予約権の行使時の払込金額は、当初、平成17 年1 月14 日までの3 ヶ月間の株式会社東京証券取引所における当社普通株式の普通取引の毎日の終値の平均値である4,937 円に約21%のプレミアムを加算した額とした。

投資家の方々のお怒りがごもっともな一方で、ニッポン放送の価値を表す理論的に適正な時価とは何かということを考えてみると、客観的に考えて、2 月22 日時点の株価(6,800円)が必ずしもそれを表しているとはいえない面もあります。
つまり、ニッポン放送株については現在フジテレビがTOBをかけているわけですから、投資家は6千数百円で株を購入しても、最悪、フジテレビが5,950円で買ってくれるわけです。ということは、ニッポン放送の株主は全員、行使価格5,950円のプットオプション(株を必ず5,950円で売却できる権利)をフジテレビから無償でもらってるのと同じであり、このためそのオプションバリュー分、株価は高くなっているはずだとも言えます。(新株予約権の発行価額から考えると、そのプットオプションのバリューも数百円くらいはあるんでしょうね。)
NipponHoso20050301.GIF
そもそもフジテレビがそれまでの株価の21%増しの価格(5,950円)をTOBで付けたからこそ、さらにその価格にオプションバリュー分をプラスした株価になっているとも言えるわけです。それは「人工的」な株価であって、本来のニッポン放送の価値を適正に表す株価とは言えない。このため、平成17年1月14日までの3 ヶ月間の株価を用いたものである・・・・・てなことを法廷では主張してくるのかなあ、と妄想する次第です。
もちろん、ライブドアさん側は「眠っているニッポン放送の価値をうちが引き出したんだ。」というような意見をお持ちでしょうね。
ただ、ご案内のとおり、株価の算定というのは、いろんな視点からいろんなことが考えられるわけです。(純資産とか類似会社比準とか。)仮処分するかどうかということになると、ニッポン放送の取締役会として著しく不合理な算定根拠をベースにしているというようなことがない限り・・・どうなんですかね?(よく存じませんが。)
もちろん、上記はすべて昨日のお話(有利発行かどうか)の続きであり、今回の仮処分申請には「著しく不公正な発行に該当するか」「価格操作目的ではないか」など、他にも論点がありますので、仮処分が必ず失敗に終わるだろうということを申し上げているのではありませんし、私が上記のようなvaluationの考え方を支持する、というわけでもありませんので、念のため。
(ではまた。)

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ニッポン放送の新株予約権は「有利発行」ではない(ってか)

(「やっぱり、磯崎はフジ派だ!」とか言われると困るのですが・・・)、
ブログ界では、かなり法律に詳しそうな方まで、「ニッポン放送の新株予約権はどう考えても有利発行で違法だ!」とおっしゃる方が非常に多いようです。
村上ファンド(株式会社M&Aコンサルティング)さんも、以下のような理由をあげて、この新株予約権の発行を危惧されてらっしゃいます。
http://www.maconsulting.co.jp/PDF/050225_PR(J).pdf

・発行済株式総数を大幅に超える多大な新株予約権を株主総会の決議なくして特定の第三者に対して安価にて発行するものであること(発表のあった23 日の終値6,800 円に対して、新株予約権の行使価格は5,950 円と時価よりも低く、新株予約権の発行価格も約336 円に過ぎない)
・新株予約権の行使により調達する資金(最大約3,000 億円)の使途が明確でなく、希薄化した株式の価値が将来的にどの様に高まるのか株主は理解できないこと
・フジテレビによる公開買付け期間中の発表であり、株価に大きな影響を与えたこと(発表のあった23 日の終値6,800 円に対して、発表後の24 日の終値は6,280 円)

まったくおっしゃるとおりですし、この新株予約権には有利発行以外の論点もいろいろありそうですので、この新株予約権の発行がOKなんてことを申し上げるつもりは全くありません。
ただ、新株予約権の条件をもう一回良く読みなおしてみると、「有利発行かどうか」という論点に絞れば、「有利発行ではない」という気がしてきました。
発行価額に影響を及ぼす主な要因
ニッポン放送のプレスリリースに書かれた新株予約権の要項のうち、有利発行に関係しそうなものをピックアップしますと、以下の通りです。

(4)新株予約権の発行価額
1 個につき3,362,731 円(1 株につき336.2731 円)

(9)新株予約権行使の際の払込金額
各本新株予約権の行使に際して払込をなすべき金額は、各本新株予約権の行使により発行または交付する株式1 株当たりの払込金額5,950 円(以下「当初行使価額」といい、必要な場合、第24 項または第25 項に基づき修正または調整したものを「行使価額」という。)に割当株式数を乗じた金額とし、当初は59,500,000 円とする。

(11)新株予約権の行使により発行する株式の発行価額
1 個につき62,862,731 円(1 株につき6,286.2731 円)
(ただし、第23 項および第24 項または第25 項によって変更されることがある。)

(15)行使請求期間
平成17 年3 月25 日から平成17 年6 月24 日までとする。

(17) 新株予約権の消却事由および消却条件
当社は、当社取締役会が必要と認めた場合には、本新株予約権の発行日の翌日以降、当社取締役会で定める消却日に先立つ1か月以上前に、新株予約権証券を当該消却日までに当社に提出すべき旨を公告し、かつ新株予約権原簿に記載された各新株予約権者に対して通知を行った上で、当該消却日に、本新株予約権1個あたり3,362,731 円にて、残存する本新株予約権の全部または一部を消却することができる。一部消却をする場合には、抽選その他の合理的な方法により行うものとする。

(18) 新株予約権の譲渡制限
本新株予約権を譲渡するときは当社取締役会の承認を要するものとする。

(24)行使価額の修正
平成17 年4月1日以降、毎週金曜日(以下、「決定日」という。)の翌取引日以降、行使価額は決定日まで(当日を含む。)の5 連続取引日(ただし、終値のない日は除き、決定日が取引日でない場合には、決定日の直前の取引日までの5 連続取引日とする。以下「時価算定期間」という。)の株式会社東京証券取引所における当社普通株式の普通取引の毎日の終値(気配表示を含む。)の平均値に相当する金額(円位未満小数第2 位まで算出し、その小数第2 位を切り捨てる。以下「決定日価額」という。)に修正される。
なお、時価算定期間内に、行使価額の調整事由が生じた場合には、修正後の行使価額は、本新株予約権の発行要項に従い当社が適当と判断する値に調整(かかる調整は、公正で合理的なものでなければならない。)される。

5,950円で行使できるのは1ヶ月後の1週間だけ
まず誰しも、第(9)項の「新株予約権行使の際の払込金額」が5,950円なのが「カチン!」と来るわけです。直前の株価が6,800 円なのに、それより12.5%も安く(87.5%で)発行できるオプションなんてけしからん!というわけですね。
ただし、良く読むと、「(24)行使価額の修正」で、平成17 年4月1日以降、毎週月曜日に、前週金曜日までの5 連続取引日の終値の平均値に行使価格が修正されるわけです。(上限、下限無し。)
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行使可能になるのが3月25日からですから、4月1日まで1週間しかありません。
つまり、5,950円で行使できるのは1週間だけです。
また、おそらく、フジテレビはこの第一週に約3,000億円もの大金を全部払い込んだりしないでしょう。(あと一ヶ月でそれだけの資金調達は無理っぽい。)
取得者側のコストで考えるとディスカウントは7.6%に過ぎない
仮に一部払い込んだとしても、先にフジテレビは1株あたり約336円を新株予約権に払っているわけです。5,950円と足すと6,286円。これは直前の終値6,800 円に対して92.4%であり、7.6%のディスカウントでしかありません。
しかも、合計6,286円で取得できるのは、発行決議の1ヶ月後の1週間だけなわけですから、それって、普通の増資(決議から2週間ちょい)よりちょっと払込までの期間が長い時価発行増資と同じとも言えます。ご案内のとおり、10%程度のディスカウントまでの増資は、判例や実務でも有利発行とはみなされてないようです。7.6%のディスカウントしかない1ヶ月先の増資は有利発行とはいいにくそうです。
2週目からのタイムバリューは相当小さい?
さらに、翌週(4月4日)からは、前週の平均「時価」でしか行使できないわけです。これ以降は、(ライブドアのMSCBとは違い)ディスカウントもついてません。つまり、翌週からのオプションバリューはほとんど無いんじゃないでしょうか。
フジテレビとしては、つまり4月4日以降は、株の取得コストは結局1株当たり「時価+336円」かかってしまうわけですね。つまり、(流動性とかマーケットインパクトを考慮しなければ)、「市場と同じ値段で株が買えるというだけの権利」に、1株あたり336円も払わせられるわけです。結果としてフジテレビとしては市場における「時価」より合計取得コストが(有利どころか逆に)高くなっちゃう・・・。
もちろん、浮動株が少ない現状では、そもそも市場で買える株数が限られるわけですが、そういう流動性リスクをオプションバリューとしてどう組み込むかですが・・・。(あまり、見たことがないですね・・・。)
しかも、(フジテレビとニッポン放送が「グル」だと考えればあまり関係ないとも言えますが)、第(17)項の発行会社のコールオプションと第(18)項の譲渡制限条項も、理論的なオプション価格を大きく下げる要因ではあります。
というわけで、このオプションって(詳細に三項ツリーモデル等で精緻な計算をするまでもなく)、「有利」と主張するのはかなり難しいと言えるんじゃないでしょうか。
(っていうか、誰か以上のような内容のこのオプションを一株当たり336円で買いたいって方、いらっしゃいますか?)
(1ヶ月後の株価にもよりますが、現時点で。)
同様に、「これを発行したおかげで株価が下がった」とか「株価を下げるためにこれを発行した」というのも厳しいかも知れないですね。純資産倍率(PBR)が1近辺の会社ですし、新株予約権だけ発行して株を発行しなかったら、一株当たりの価値は高まりこそすれ安くはならないはず。フジテレビ側は、まだ行使するどころか引き受ける旨の機関決定すらしてないわけですし。
というわけで、裁判所では、有利発行以外の論点で争われるんじゃないかと想像いたします。つまり、「安く発行はしてないかも知れないが、フジテレビに大量に新株予約権を発行するのはズルい」という主張が認められるかどうか、ではないかと。
(ではまた。)

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isologueはフジ派・・・ってわけじゃありません

「っていうか〜」さんからトラックバックいただきました。

isologueはフジ派?
(略)磯崎氏は冒頭で「今回、裁判所が社外取締役に注目した判断をしたら、日本の将来のためになると思うなあ。」として、日本における21世紀型ガバナンスの要素を含めた司法の判断がなされることで、ライブドアによる仮処分申請が却下されることを意図(直接書かないところがニクイですね!)している点です。
タイトルに「(ライブドア vs ニッポン放送)」とわざわざ記載があるということは、日本における21世紀型ガバナンスについて、あえて、そうした構図の中で議論しようということでしょうが、それこそ場外乱闘へ持ち込もうということではないかなア〜という気がします。

ちょっと議論がわかりにくかったかも知れませんが、私は全然どっちが勝って頂いてもかまいません。どっちが勝っても全く私に影響ないですし、どちらかに親しい知り合いがいるというわけでもないので。
他のエントリーもすべてそうですが、当ブログでは、個別の事象について、特定の企業を応援したり非難したりということはしてないつもりです。(どっちかに肩入れしているように読めるとしたら、私の文章力のなさのせいです。すみません。)
今回の件についても、「買収されそうになったら新株予約権を出せば買収されずに済む」とか、逆に、「買収が関係する時は新株予約権を発行しちゃだめ」とか、日本の資本市場の未来のためにならない結論を裁判所が出さないで欲しいなあ、ということです。
本文をよくお読みいただければおわかりのとおり、社外取締役がいるからニッポン放送が勝つだろうという予測を申し上げているのではなく、ニッポン放送が勝つにしても負けるにしても、レブロンの判決のように、「社外取締役の検討が十分でなかったから”×”」というように、社外取締役の役割に言及してほしいなあ、ということです。
もちろん、社外取締役が今回の仮処分の結論導出の中心的要素になるということは、まだちょっと無理っぽいですが、以前も申し上げたとおり、そういう「ニュアンス」がちょろっとでも入っていれば、日本の資本市場にはプラスになるんじゃないかなあ、ということです。
よろしくご理解ください。 ではまた。

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ライブドアのコーポレートガバナンスとプロスポーツ

昨日の続きですが。
水樹さんからコメントいただきました。

ライブドアが「中小企業型の企業統治」という指摘はその通りだと思います。
しかし、創業して間もない会社は、そうでないと前に進めません。
創業者オーナーの推進力が企業を発展させる原動力です。
そのオーナーのビジネスモデルが、ある時期に壁にぶつかったときに、そこから、企業統治のありようが変わるのだと思います。

「創業して間もない会社は、中小企業型の企業統治でないと前に進めません。」というのは、2つの意味でツッコミどころがあると思います。
1つは、ライブドアは「創業して間もない会社」ではないこと。(水樹さんもライブドアが創業して間もないとは思ってらっしゃらないとは思いますが。)
時価総額が2000億円もあって一日の株式の売買高が日本でもトップクラスになるような会社が、「創業して間もない会社と同じコーポレートガバナンス」でいいんでしょうか?というところに改めて強い疑問を感じているわけです。
2つめは、「中小企業型の企業統治でないと、成長期の企業は前に進めない」というのは世界的に見るとまったく成り立っていないということ、です。
もしそうだとすると、Googleをはじめとしてスタートアップして間もないころから社外取締役の方が多いようなアメリカの会社は、みんな公開前後で成長の限界にぶち当たっててもよさそうなもんですが、むしろ、日本のベンチャーより時価総額が大きくなっている会社のほうが多いんじゃないでしょうか。
かように、(水樹さんに限らず)、日本では「コーポレートガバナンスは”必要悪”ではあるが、経営の足を引っ張る要因」というイメージで捉えられているんじゃないかと思います。かくいう私も、以前のエントリーで、コーポレートガバナンスにおける執行と監督の機能を「アクセルとブレーキ」(平均速度を落とす要因としてではなく、性能のいいブレーキがないとラップタイムも上がらない、という意味でのブレーキではあるものの)に例えたりしましたので、人様のことはあまり言えないのですが。
アメリカの事例で考えてみても、コーポレートガバナンスは投資家が安心して投資できる要素なわけで、より良質な資金を大量に集められる成長要因なんではないかと思います。
「そのオーナーのビジネスモデルが、ある時期に壁にぶつかったときに、そこから、企業統治のありようが変わるのだと思います。」とおっしゃいますが。確かに日本では、壁にぶつかるまで創業オーナー社長が突っ走って、誰も猫の首に鈴を付けられず、結局経営がかなり悪化して破綻寸前になってから、社長を代表権のない会長などに祭り上げて銀行の介入を受けたりする例というのは枚挙にいとまがないかと思います。
(経営者を動物に例えるというのも恐縮ではありますが)、犬も成犬になってから首輪をつけようとしても、いやがって付けないわけです。また生まれつき首輪が大好きという犬もいません。小さい頃から「首輪をするのは当たり前」と教育しないとアカンのではないでしょうか。
スポーツに例えても、体を壊す寸前まで自己流の練習を続けるのではなく、常時、プロのトレーナーや医師のチームが選手をサポートする体制の方が、いい成果が出ると思います。スポーツでもそうなんですから、いわんや経営をや、じゃないでしょうか。

ただ、ライブドアは企業ガバナンスが日本でいわれだしたときに創業し、(ガバナンスの本は、今は本屋に行けばたくさんありますが、1990年代のはじめにはごく一部のところでの議論でしかなかった)
堀江氏はこれらを読みながら、いいとこ取りをしながら、株式市場対策として、常にそれを意識しているわけですから、今度の件が決着すれば、どっちに転んだとしても、他の日本企業よりも進んだ企業ガバナンスの仕組みを組み立てると思います。
その動機は「株価対策」としてだとおもいますが、動機はともあれ、市場を意識して、ガバナンスの仕組み作ることを考えるのは、非常に重要かつ良いことだと思います。

(ライブドアさんがそうされるおつもりなのかどうかはともかく)、
『水は飲むな!』とか『ウサギ跳び校庭二周!』とかいう非科学的な根性論で少年時代から体を蝕むよりは、なるべく小さい頃から科学的なトレーニングを受けるようにしたほうが、選手生命も長くなるし成績も上がると思います。
アマチュアのうちからコーチを付けるに越したことはないですが、少なくともプロ(公開企業)になったら、自己流はやめて科学的なコーチを付けるべきじゃないでしょうか。
同様に、企業も少なくとも公開準備にはいったらいい社外取締役を取締役会に招聘するなど、いいコーポレートガバナンスのしくみを取り入るべきじゃないかと思います。
スポーツならまだ選手が故障してもそいつが困るだけとも言えますが、公開企業は、1株何百円からの小銭を個人投資家からも預かって運営してるわけですから。
(ではまた。)

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