昨日のエントリーに隊長氏からトラックバックいただきました。
そうですか。さすがというか、大変ですねー。がんばってください。(にっこり)
さて、ライブドアさんは9月末決算ですので、3月末は中間期末になります。
今、マスコミさんも「誰が何%取ると株主総会で○○できる権利があり」みたいな法務っぽい分析が中心ですし、本ブログでもそんなんばっかりやってきたわけですが、たまには財務的な検討もしてみたいと思います。
ライブドアの現在の取得総額と平均単価は?
まず、平成17年2月8日に発表された、ライブドア本体が普通取引で行っていた買い集めが1,756,760株(発行済株式総数の5.4%)で、これはおそらく、直前のTOB価格5,950円近辺で購入されているはず。(一部はかなり以前から保有していたので、ホントはもうちょっと安いと思いますが。)
一方、時間外取引によって、株式会社ライブドア・パートナーズが購入した9,720,270株(同29.6%)は、6,050円+αで購入されているはず。(合計同35%)
その後10%を市場で買い増していって現在45%超と報道されているわけですが、株価推移からすると、その追加分の平均取得単価は7,000円くらいでしょうか。

そうすると、後掲の表のように、現在の取得平均単価は6,200円程度になってるはずです。
現在、もう850億円以上買ってることになるんですね。
大手企業や機関投資家等の動向
さて、TOBも終わって上場廃止の可能性も高まってきたわけですので、当然、株価は下がっていく可能性がありますが、ライブドアさんは継続して買っていくことを表明してます。一方、トヨタさんや機関投資家などの一部は、株価が高止まりしていることを受けてTOBには応募しなかったわけですが、もし上場廃止の可能性が高くなり、株価が5,950円を切ってくるようだと、逆に立場上売らざるを得ないかと。
フジテレビさんも、現在は「市場では買いません」と言ってますが、株価5,950円以下で購入するのであれば、TOBに応じてくれた株主さんへの義理も立ちますので、買ってくる可能性はあるかと思います。(ただし、「市場では買いません」とおっしゃってるので、市場外で買うんでしょうね。)
もちろん、ライブドアさんが「5,950円でいいから買ってくれ」と言えば、フジテレビさんも断る理由はないんじゃないかと思うわけですが。
会計上の処理と評価損
会計上は、上場株式は時価評価して評価差額を資本の部に計上しますが、子会社または関係会社株式は取得原価をもって貸借対照表評価額になります。また、3月末でライブドアさんの持株比率が50%を越せば連結、越さないと今回の場合、(役員も送り込んでいないので支配力基準で考えても)連結ではなく持分法適用。つまり、ライブドアさんが主張している「長期に保有する」という立場を取れば、原則として評価損は表面化しないかと思います。
ただし、仮処分が認められずフジテレビさんが3月末までに大量に新株予約権を行使してくれば、関連会社株式でもない「その他有価証券」となり、評価損がドーンと資本の部に計上される可能性もあります。
ライブドアさんは、昨年の中間の決算短信は5月20日に、半期報告書は6月30日に提出されてます。3月末までは子会社または関連会社に該当したが、5月から6月にかけて、ライブドアがニッポン放送株を手放す動きがあった場合またはフジテレビが新株予約権を大量に行使してきた場合、監査法人さんとしては、子会社または関連会社として評価損を計上しないようにするのか、評価損を計上するのかを、どう判断されるんでしょうか。
5月20日(未監査)には関係会社(または子会社)として評価損を計上していなかったのに、6月30日の半期報告書(または次の四半期報告書)では大量の評価損が計上されたりしたら、それはちょっとまずいですよね。
ちなみに、この新株予約権は”MS”(行使価格修正条項付)予約権ですので、4月1日以降は、価格が下落すればその分安く新株を購入できるわけです。フジテレビさんが、3月末までにはライブドアさんが50%を超えない程度に新株予約権を行使するにとどめ、公開廃止をにらんで株価が下がる中、6月末に向けた決算作業の最中に大量の新株を発行してきた場合、ライブドアさんの経理部門は連結にするのか評価損出すのか、上を下への大騒ぎになったりしたら、他人事ながら かわいそうですね。
ライブドアの評価損の想定
以下、(従業員も総反対している状況では、提携もあったもんではなく長期保有は難しいという仮定のもとで)、会計はおいといて実質的な評価損のお話。
仮に、前述の想定の通りの単価で購入してきているとすると、株価がTOB価格の5,950円まで下がってきた場合には、ライブドアさんの評価損は35億円弱。
ただし、上場廃止になるのにTOBがかかる前の価格水準(5,000円程度)までしか下がらないというのも理論上はヘンですよね。仮に5,000円とすると、評価損は166億円。
堀江社長は「想定内」かも知れませんが、株主はちょっとびっくりする数字ですよね。

(黄色部分は仮定または予想値。)
(追記9:08、浮動株の量にもよりますね。浮動株がほとんどもう残っておらず、ある程度大口のものは市場外で取引され、市場に出ているものは残らずライブドアさんがすくっていくのであれば、価格はあまり下がらないような気もします。また、3月末で、価格操作があったのなかったのというケンカになるんでしょうか。)
(追記3/11,1:27、ライブドア45%超というのは議決権ベースの数字でしたので、取得株式数ベースに図と本文を修正しました。)
もちろん、フジテレビさん側にも評価損は発生しうるわけですが、フジテレビの昨年9月末の連結純資産は5,056億円。ライブドアの昨年9月末連結純資産が536億円であることや、平均取得単価がフジテレビさんの方が低いことから考えれば、当然、ライブドアさんが食らうインパクトの方がはるかにでかい。(もちろんCBが今時点でどこまで転換されているかにもよりますが・・・ほとんど転換されていたら、それはそれで怖い。)
切込隊長さんは「あるいは。」とおっしゃりつつも、泥沼化を危惧されてらっしゃるようですが、仮にニッポン放送がライブドアの連結や持分法の対象とならず、大量の評価損が計上されるようなことになった場合、ライブドアさんとしては持ちこたえるのはかなり厳しそうかと。
そういった状況で、フジテレビさんが「5,950円で買います」と持ちかけて、ライブドアさんがこれを蹴り、後に160億円もの損を(仮に)出したりしたら、「想定内です」「株主のためにやってます」という説明がしきれるのかなあ。130億円くらい損失を回避できるチャンスがあったのに回避しなかったとなると、代表訴訟のリスクも高まると思いますし。
35億円程度の損であれば、今回のこれだけの話題性を考えれば、いつも通り「広告費として十分ペイしました」「当社が資本市場に投げかけた意味は大きかったと思います」みたいなノリで切り抜けられるかも知れませんが、160億円もの損となってくると、どうなんでしょうか。
(ではまた。)
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