サッカーと社外取締役(その2)

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「観察の観察の観察」さんから、前回のエントリー「サッカーと社外取締役」で、社外取締役をサッカーの審判に例えた点について、またトラックバックいただきました。
週末なのに、お騒がせしてすみません。

うーん、このたとえはちょっとムリがあります(^ ^;)
「社外取締役」は「審判」ではないです。
だって基本的にはどちらか一社の利益のために働くわけですから。

例えば、監査法人も、その会社から報酬をもらってその会社のために会計監査をするわけですが、「その会社のため」というのは、「その経営陣や従業員のため」ではなく、「その会社の株主のため」なわけです。
(社外)取締役は監査するだけ(ツッコミ専門)でなく取締役会で決議もする(ノリツッコミ(?)もやる)ため、ちょっとわかりにくくなりますが、基本的には「経営陣や従業員のため」に働いているわけではなく、「株主のため」に働くので同じことじゃないかと思います。
(HPの例を引くまでもなく社長をもパフォーマンスが上がらないと判断したらクビにしたりもする、文字通り「監督」でもあるわけですから、そういう意味では、草サッカーで監督が審判も兼務している姿に近い面もありますが・・・まあ、たとえ話で限界がありますのでご勘弁を。
<(_ _)>)
今の日本の現状を考えて、「社長と懇意にしてる怪しげなコンサルタントのおっさん」みたいな人を想像してしまうと、「そんな人が審判のわけないじゃん」という気がしてしまうと思いますが、純粋に株主のために活動する理想的なエージェントを想像していただけるとありがたいです。
「フォレストヒルズ」さんにもコメントいただきましたが、そうなるためには、もうちょっと取締役が訴えられるかもという緊迫感がないとダメかも知れませんね。それも、今回のライブドアの件や、UFJ vs 三井住友戦などで、ずいぶん意識は変わってきたんじゃないかと信じたいですが・・・。

市場における審判は司法や公正取引委員会や金融庁や、、と専門家でないのでこのくらいしか出てきませんが中立な立場で監視する機関がありますので、上記のようなまったく審判がいない状態ではないでしょう。

司法や金融庁は、法令に沿っているかどうか(適法性)を判断するには向いてますけど、そもそもは「どっちが株主にとって得か」を判断する役目の方々ではないと思うわけです。
今回の話を含め、もし純粋な法律解釈だけで決着が付くような話であれば、それは裁判所も判断しやすいと思いますが、(今回の場合についても、ちゃんとニッポン放送側の弁護士さんも頭をしぼってスキームを考えたんでしょうから、そんな単純な話のわけないわけで)、ちゃんと株主の立場に立って判断したかというような意思決定の「プロセス」まで深く検討しないと判断が付かないようなときに、(上記のような理想的な意味での)社外取締役というのは、一つの判断の要素になってきうるとは思います。
(ではまた。)

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6 thoughts on “サッカーと社外取締役(その2)

  1. 西武鉄道に社外取締役がいたらよかったのにね。
    「インサイダーになる」 西武の取締役会で警告
    http://www.sankei.co.jp/news/050305/sha091.htm
    社外取締役がいたら、問題発覚後の事後対応にチェック&バランスの機能
    が働いたでしょうね。それでもオーナーが不正を働こうということであれば、
    その時点で全員辞めるでしょう・・・。法令違反の会社の社外取締役を
    継続するインセンティブがないものね。(人によってはあるのかもしれないけど・・・。)
    沈みゆく船からはだれもが逃げるものでしょうし・・・。
    西武鉄道虚偽記載、小柳前社長が継続に反対
    http://www.nikkei.co.jp/sp2/nt85/20050305AS1G0402J05032005.html
    少なくとも法令順守に取り組んだ前社長は自殺せずにすんだかもしれないわね・・・。
    (合掌)

  2. こんにちは。社外取締役の議論、なかなか面白く拝見しています。
    さて、磯崎さんの議論なのですが、その論旨は、結局、会社防衛の手法の選択を含む経営判断の是非については、裁判所ではなく、中立的な第三者であってかつ経営の専門家であるべき社外取締役にチェックしてもらうのが適切だ、という点に尽きるのだと思います。
    もとよりその指摘は正当だと思いますが、この議論は、いわゆる経営判断の法理を日本法に初めて導入しようとした大昔から存在する論点で、アメリカ法と異なり、日本法では裁判所が、一応、経営判断の合理性についてもチェックするということになっているわけです。磯崎さんの問題意識は、このような判断の枠組を変更することを示唆するもので、会社防衛にとどまらない、全ての経営判断に対する司法判断の枠組に影響を与えるものなんだと思いますが、謙抑的な裁判所がそのような枠組を変更するに足りる社会情勢になるのかどうか、なるとしたら何時なのか、なかなか難しい問題であるように思いますね。もし、そのような理想に日本の社会が近づいているのであれば、政府が慌てて会社防衛策が適法となる要件についてガイドラインを出すということはないだろう、なんて思いますし。どうなんでしょうかね?

  3. 支配権争奪と「審判」(1)

    ちょっと、ここしばらく仕事も忙しく、また、見てくれている方にもっと見やすくという面でマイナーチェンジを行っていたので、内容面の更新が滞ってしまいましたが、特にFirefoxのユーザーの方には格段に見やすくなったのではないかと思います。
    今後もちょこちょこ頑張…

  4. 社外取締役の議論、大いに行うべきなのでしょうが、その有用性を説いても定着させるのに大きな障害があると思います。
     
    常勤取締役(執行役)の監視係としての社外取締役を考えた場合、監査役に置き換えても同じ状況のように思いますが、多くの会社における問題は監査役のなり手いない事のように思います。
     
    上場会社であっても監査役の経歴を見ると、一線を退いた取締役か、メインバンク等の主要取引先、地元の会計士(IPO時に会計監査人は大手監査法人に変更)などだったりします。
    で、就任後に監査役協会からどっさり資料が送られてきて、まじめに読んだ人はその責任の重さに気が付いて引受けるんじゃなかったと思うんだそうです。
     
    取締役や監査役が訴えられる事例が出ればますます腰が引けてしまいそうですね。
    その会社の業界・経営について知識があり、経営者と利害関係が無くて、訴訟リスクを恐れずその任に就きたがる人物がどれだけいるでしょうか?
     
    国内のトップ企業ならいざ知らず、上場企業だけでも4000社弱あり、人材育成も含めて定着方法も考えないと、投資家(株主)、経営者がその有用性を認識しても、ほとんどの会社ではなり手がいなくて導入困難というのが実情ではないでしょうか?

  5. フジTOB トヨタ、応じぬ方針

    フジTOB トヨタ、応じぬ方針
    報道によれば、トヨタはTOBに応じないが、市場でも株を売却しない方針とのことである。
    常識的に考えれば今の状況では「正解」の中立な立場の選択であろう!
    逆にいうと、今の状況でTOBに応じる立場を選択した企業って、
    凱..