投資単位の引き下げとボラティリティ

昨年末はライブドアの100分割が話題になりましたが、本日は投資単位の引き下げについて。
平成13年9月に、「株式投資単位の引き下げ促進に向けたアクション・プログラム」が発表され、全ての上場企業はその投資単位を時価ベースで50万円未満とするよう努めることとされ、その後、各証券取引所等の規定の中でも、そうした努力義務が盛り込まれています。
実際に株式分割等を行うと、市場はそれを好感して株価が上がることが多いですが、株価でなくボラティリティ(変動率)にはどういう影響を与えるのでしょうか。
ちょっと古いですが、昨日webでちょっとおもしろい論文を見つけました。
株式投資単位の引き下げがボラティリティに与える影響
奥山 英司 星野 真智子
http://home.hiroshima-u.ac.jp/jea2002/okuyama.pdf
要旨:
東京証券取引所に上場する41 銘柄の株式について,株式売買単位の変更(くくり直し)が,株式収益率のボラティリティに与える影響について分析を行った.

というものですが、この論文では、分析対象について、
「株式分割は発行株式数が変化するため,株価自体に影響を与える.さらに日本の企業は,株式分割後も配当を据え置く例が多く,実質的な増配が行われる.従って,株式分割後の正確な株価を計算するのが非常に困難であり,それによるボラティリティの増大が予想される.
一方でくくり直しに関しては,売買単位を引き下げるだけで,株式自体の性質を変えることはない.さらに,株式分割を行った株式よりもくくり直しを行った株式の方がはるかに多い.従って,くくり直しが行われた株式を分析対象とすることは,多くのサンプルに基づいて,個人投資家の参入が容易になった影響を分析することが可能であると期待される.」

ということで、純粋に投資単位変更の影響を分析するために、株式分割の事例は除いて、単元株の引き下げ(くくり直し)の事例のみを扱っています。
結論として、
くくり直しを行った銘柄のボラティリティは,多くの場合くくり直し前後で有意には変化が見られなかった.
しかし,TOPIX を用いた市場全体のボラティリティの変化と比較すると,1999 年度以前にくくり直しを行った銘柄ではボラティリティが増大する傾向にあるものの,2000 年度にくくり直しを行った銘柄ではボラティリティが低下していた.
このような違いは,1999 年10 月の株式売買委託手数料完全自由化や,それに伴うインターネット等を活用した低料金の取引機会の拡大が影響しているのではないかと思われる.全国証券取引所や日本証券業協会が推進している個人投資家の株式市場参入拡大は,現時点では株式市場の安定化をもたらす方向に作用していると考えられる.

としています。つまり、オンライン証券でデイトレーダーなどの個人投資家の売買が活発化することにより、価格変動がより激しくなってるんじゃないかというギワクがあるわけですが、データを見るとそうした個人投資家の活発な売買は逆にボラティリティを低下させており、価格形成を滑らかにする「潤滑油」の効果を果たしていると言えるのではないか、ということですね。
おもしろいですね。データがちょっと古いので、最新の研究があったらぜひ拝見したいところです。
(以下、参考URL、条文)
投資単位の引き下げと単元株制度導入の動向(あずさ監査法人2002.02)
http://www.azsa.or.jp/b_info/ipo/200202/ipo_200202_02.html
商法第221条(単元株制度)
 会社ハ定款ヲ以テ一定ノ数ノ株式ヲ以テ一単元ノ株式トスル旨ヲ定ムルコトヲ得但シ一単元ノ株式ノ数ハ千及発行済株式ノ総数ノ二百分ノ一ニ当ル数ヲ超ユルコトヲ得ズ
� 一単元ノ株式ノ数ヲ減少シ又ハ其ノ数ノ定ヲ廃止スル場合ニ於テハ第三百四十二条ノ規定ニ拘ラズ取締役会ノ決議ヲ以テ定款ノ変更ヲ為スコトヲ得
(以下略)

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投資サービスと規制

金融や商法などの領域でご活躍の神田秀樹 東京大学教授が、本日の日経朝刊31面の経済教室で「投資サービス法の整備を 横断的ルール必要」というテーマで書かれてます。
要旨:

ラーメンファンド、ワインファンドなどの多様な投資商品の登場は歓迎すべきだが、今のままでは詐欺的な商品が出てくる危険性もある。
証券取引法の規定する有価証券の範囲は狭すぎてこうした新商品を取り締まるのには向かない。
また、例えばベンチャーキャピタル業界等がファンドへの投資を証取法上の有価証券とすることが規制強化であるとして反対してきたように、へたな規制をすると新しい芽を摘んでしまいかねない。
米国では幅広い「投資契約」について規制。英国でも銀行や保険も含めた横断的な金融サービス法に改組されている。
これを取り締まる「日本版SEC」などの「番人」の強化も必要。

「誰がベンチャーを助けてくれるの?」日本の未公開株市場の構造にも書きましたが、以前、金融庁に問い合わせたところ、「うちは証券会社での公開株の取引を取り締まる担当はいますが、未公開株の取引とか証券会社以外の法人が行う募集とかを取り締まる担当ってちょっといないんですよねー。」というお話でした。
先日も、怪しげなDMが届きまして。
「当社は証券会社ではありません。上場を予定している企業の第三者割当のサポートをしています。」と、ある未公開企業の第三者割当増資の概要を付け公開益を匂わせた上で、「先に申込証拠金を振り込んだ人には、詳細を送ります。」という明らかに証取法違反の内容でした。つまり、どう見ても証券会社以外による募集に該当しますし、50名以上に送られているDMだとすると公募にも該当するかと思いますが、証取法上の目論見書に相当するような財務のデータ等は何も添付されていません。
単に証取法違反ということではなく、恐らく、オレオレ詐欺とか請求書詐欺の変形版の可能性が高いと思われます。
こうしたマージナルな金融サービスについて、「(資本金○円以上の)証券会社じゃなきゃできない」というような参入障壁については低くすることを検討すべきだと思いますが、一定のルールを設定し、かつ、そういう「怪しげな(というか明らかに法律違反の)」業者は取り締まるという運用にしないと、善意で活動している真面目なベンチャーやベンチャーのサポーターが割を食うことになってしまいます。
神田先生のご提言に基本的に大賛成。
(以上)

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ベンチャーこそ委員会等設置会社

本日(3月29日)日経25面で、「米企業、消える”会長兼CEO”」という記事があり、インテルのアンディ・グローブ会長のコメントも載ってますということで、本日は「ガバナンス」に関して。
日本でも米国型のボードシステムである委員会等設置会社が平成14年の商法改正で登場し、すでに、ソニーや日立製作所、オリックスといった企業が採用しています。ただ、大半の人は、「委員会等設置会社は、そういった超大企業向けのガバナンスのシステムで、うちの会社には関係ないよ」という感じをお持ちではないでしょうか。
今回は、あえて「ベンチャーこそ委員会等設置会社を検討してみたら?」という提言をしたいと思います。
(ここでいうベンチャー企業とは、中堅中小企業であるかどうかという規模の問題ではなく、株式公開またはM&Aにより投資家に株式の売却(exit)の機会を与えようとすることにより株式で資金調達をし成長をしていこうとする会社のことを指すこととします。)
ベンチャー企業は、
1.ベンチャーキャピタル等から投資を受けていることが多く、社外取締役を置いていることが多い。
2.2億円以上資金を調達している有望なベンチャーであれば、商法上の「中会社(資本金1億円超)」ですし、10億円以上調達していれば確実に「大会社(資本金5億円以上)」になります。(「株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律」第1条の2等)
商法上の中会社になると、監査役の責任は会計に関する監査だけでなく業務監査にも及び、非常に大きくなります。大会社になると監査役の会計に関する監査責任はぐっと軽減されますが、代わりに監査法人等に会計監査を依頼しなくてはいけないことになります。
委員会等設置会社で注意が必要な点としては、監査法人等の監査を受けなければならない点と、社外取締役を置かなくてはならない点ですが、ベンチャー企業はいずれにせよその両方ともすでにやっていることが多い。委員会等設置会社のメリットとしては、監査役を置けない(置かなくていい)ということがあります。
特に商法上の大会社では「常勤」の監査役が求められるのでそのコストが確実に発生しますし、2人以上社外監査役をおかないといけません。最低でも取締役3人+監査役3人の非常に大掛かりな役員構成が要求されます。
委員会等設置会社の場合、最低取締役3人(最低2人以上は社外取締役)が要求されるだけですので、ベンチャーの成長のステージに応じた最適な人数で役員会を構成することができます。
監査委員会、報酬委員会、指名委員会の3つの委員会を作る必要がありますが、そのために膨大な規程類を作成しないといけないというわけではありませんし、行うことも基本的には今までの取締役会や監査役の機能と重複しています。開催も、取締役会と合わせてやればいいわけですし、メンバーも重複していいので、従来やっていた取締役会よりも負担が増えるということは(予想に反して)あまりないといえます。
問題は、こうした仕組みで会社がうまく運営ができるのか、社外の人が多いと社長の思ったとおりの会社運営がしづらくなるのではないか、はたしてこうしたしくみでガバナンスがうまくできるのか、というようなことになりますが、これについて詳しくはまたの機会に。
基本的には、かなりうまくいくし、ガバナンスとしてもプラスになるのではないかと考えています。
とりあえず、本日は、このへんで。

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特許権侵害と鑑定人

青色ダイオードの中村氏の訴訟に代表されるように、特許権に関わる訴訟はこれからますますホットになると考えられます。特許権侵害による損害額の計算などは財務諸表や帳簿を見る力が要求されるなど、なかなか弁護士や裁判官だけでは厳しいということで、平成11年の特許法改正で計算鑑定人制度(特許法第105条の2)が導入され、最近、この鑑定人選定について最高裁判所から公認会計士協会に協力依頼があったそうで、昨日はその研修に出席してました。
その中で、一点だけ。(以下、特許法の計算鑑定人に限らない民事訴訟法上の一般論ですが、)
鑑定人になるのは「学識経験者」の(権利ではなく)「義務」なんですね。
民事訴訟法(第四節 鑑定)
第212条(鑑定義務)
鑑定に必要な学識経験を有する者は、鑑定をする義務を負う。(以下略)

つまり、世の中「裁判所に関わるなんてことは一生なさそう」と思っている人が大半だと思いますが、「真面目に生きてる一般の人」でも何か学識経験がある人が裁判所から指名された場合には、鑑定をしなければならない義務がある(つまり「ちょっと忙しいので」「私の趣味じゃないので」というような理由では断れない)、ということですね。陪審員制度と同じような「国民の義務」ということです。
また、裁判所と鑑定人の関係は、双方の合意に基づく「契約」ではなく、裁判所から国民に対する一方的な「命令」に基づくものということになります。
実際にあるかどうかはおいといて、例えば、
「人工心臓弁の特許侵害に関して、心臓手術に詳しい開業医が鑑定人に指名される」
というようなことはもちろん、
「ソーシャル・ネットワーキングのビジネスモデル特許訴訟に関して、ソーシャル・ネットワーキングの日本での第一人者のネット系ベンチャーの社員が東京地裁から鑑定人に指名される」
とか、
「美少女フィギュアの意匠権侵害に関して、その分野についてチョー詳しいアキバ系オタクのA君が指名された」
というようなことも、法律上は可能性があるということですね。
計算鑑定人などは比較的代替性が高いと思われるので、裁判所から高圧的に命令を受けてイヤイヤ鑑定人になるというわけではなく、時間単価や作業に要する時間などを見積もって合意の上鑑定人になるプロセスを踏むようですが、非常にマニアックな分野で他に代わる人がいないような場合には、より「命令」に近い形でフツーの(オタクな)人などに鑑定人のお鉢が回ってくる可能性もあるということで。
(ではでは。)

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銀行が株式公開助言

じりじり間合いをつめて来てますねー。本日の一番の注目記事ですね。
銀行が株式公開助言、金融庁、付随業務に認める。3/27, 日経朝刊5ページ
 金融庁は銀行に対し、取引先の企業に株式公開を助言したり、証券会社に公開候補の企業を知らせたりする業務を認める。二十六日に改正した事務指針で、銀行の「付随業務」の一つとして明記した。中小企業など銀行取引先の株式公開の機会を高め、証券市場の活性化も促す。(中略)
証券取引法六五条は銀行の証券業務を禁じており、証券業界の一部には銀行が株式公開の助言まで手掛けることは証取法の禁止規定に触れるとの声も出ていた。これに対し、金融審議会(首相の諮問機関)や総合規制改革会議などは規制緩和を要望、金融庁も勧誘行為を除けば、銀行の業務としても問題ないと判断した。(以下略)

「勧誘行為を除けば、銀行の業務としても問題ないと判断した」とか言っちゃってますが、証取法65条改正により、今年中にこの勧誘行為も認めるつもりなのはご案内のとおりです。
これによって、戦後証取法65条によって作られた日本版グラス・スティーガル法の壁はとっぱらわれ、日本が本格的なユニバーサルバンキングの時代に突入することになります。(あくまで形式上は「仲介業」ではありますが。)
銀行は中小企業に対するアドバイザリーフィーで収入が得られるとともに、65条改正後は、例えば中小企業をグリーンシートに公開させれば、その公開時の引受や売出しの仲介でまたまたフィーが入ることになります。
今まで「融資」という(企業から見て)debtの形で資金供給をしていたのが、自分のB/S(貸借対照表)を通さず、equity(自己資本)の形で企業に資金を供給できる。一般論として、企業の自己資本比率は高まり融資のリスクは下がるし、銀行の自己資本比率も高まってBIS規制のクリアもしやすくなった上、フィーも入る。銀行にとっていいことばかりです。
本来は直接金融で調達すべきものまで借入で調達していたのが、日本がバブル崩壊によりここまで痛手を負ってしまった理由とも言えますので、事業のリスクの性質のよってそれぞれ最適な資金調達手段が行いやすくなるという意味では「いいこと」です。
銀行は証券に比べて、とにかく窓口も多いし、日常的に企業と取引してキャッシュや手形の動きもつかんでますので、そういう意味では(公開の直前だけ一時的に付き合う証券会社の引受部門などよりも)企業(特に中堅中小企業やベンチャー)の真の実態を見たアドバイスができる可能性があります。
ただ、そもそもグラス・スティーガル法が大恐慌以降、銀行の証券業務を封印してきたのは、腐りかけたヤバい企業に債権や株式を発行させて、そのリスクを一般の投資家に押し付けて自分の融資のリスクを減らすというような「ババ抜き」を銀行がやらかしたからなわけですから、そうした行為には要注意です。証取法65条改正がパンドラの箱を開けることではなく、日本再生のスタートになるといいんですけどね。
参考:証券取引法65条
銀行、協同組織金融機関、信託会社その他政令で定める金融機関は、第二条第八項各号に掲げる行為(注:証券業務)を行うことを営業としてはならない。(以下略)

(本日はこのへんで。)

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TOB(公開買付)

本日は、株式の公開買付(TOB)が2発。
一つが、株式会社幸洋コーポレーションが福岡証券取引所「Qboard」の第一号上場銘柄の株式会社ビジネス・ワンに対して行うもの。もう一つが、株式会社CSKがコスモ証券株式会社に対して行うものです。
TOB(Takeover Bid)は、「証券取引法」第二章の二(公開買付けに関する開示 第27条の2〜第27条の22の4)、「証券取引法施行令」第三章(第6条〜第14条の3の12)、「発行者である会社以外の者による株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令」、「発行者である会社による上場株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令」等で規定が定められているものです。
以下の条文のとおり、公開されている株式を市場外で買い付ける場合には、原則としてTOBの手続きを踏むことが必要です。具体的には「有価証券報告書を提出しなければならない会社」が対象となりますので、例えばグリーンシート銘柄でも(グリーンシートは必ずしも有価証券報告書を作成してるところばかりではないですが、作成してるところは)TOBをしなければならないことになります。ネット系の企業などは「生もの」的なところがあり「旬」を見はからってM&Aで買収されることも多いので、TOBをしなければならないとなると、時価総額が小さい割に相対で取引するよりはかなり面倒になるので、プチ公開がデメリットになる可能性もあります。
ビジネスワンも昨日の時価総額が(わずか)3.74億円なので、ビミョーなところですね。
第二十七条の二
 有価証券報告書を提出しなければならない会社が発行者である株券、新株予約権付社債券その他の有価証券で政令で定めるもの(以下この章及び第二十七条の三十の十一(第四項を除く。)において「株券等」という。)の当該株券等の発行者である会社以外の者による取引所有価証券市場外における買付け等(株券等の買付けその他の有償の譲受けをいい、これに類するものとして政令で定めるものを含む。以下この節において同じ。)は、公開買付けによらなければならない。ただし、次に掲げる株券等の買付け等については、この限りでない。
一 取引所有価証券市場における有価証券の売買等に準ずるものとして政令で定める取引による株券等の買付け等
二 新株予約権を有する者が当該新株予約権を行使することにより行う株券等の買付け等その他の政令で定める株券等の買付け等
三 当該買付け等の後におけるその者の所有(これに準ずるものとして政令で定める場合を含む。以下この節において同じ。)に係る株券等の株券等所有割合がその者の特別関係者(第七項第一号に掲げる者については、内閣府令で定める者を除く。次号において同じ。)の株券等所有割合と合計して百分の五を超えない場合における当該株券等の買付け等
四 著しく少数の者から株券等の買付け等を行うものとして政令で定める場合における株券等の買付け等(当該株券等の買付け等を行う者及びその特別関係者の株券等所有割合の合計が三分の一を超えない場合に限る。)
五 株券等の買付け等を行う者がその者の特別関係者(第七項第一号に掲げる者のうち内閣府令で定めるものに限る。)から行う株券等の買付け等その他政令で定める株券等の買付け等

TOBの適用除外になるケースとしては、上記のとおり、
取引所での取引での買付(第一項本文)
店頭売買有価証券市場における店頭売買有価証券の取引(JASDAQ銘柄のJASDAQでの取引)(第一号)
ストックオプションの行使等の場合(第二号)
株券等所有割合が5%以下の場合(第三号)
10名以下からの買付けで株券等所有割合の合計が1/3を超えない場合(第四号、証券取引法施行令第7条�)
その他、子会社株式の取得、売出しの場合、従業員持株会的な場合、等(第五号)
などですので、基本的には普通の市場外での買付けはTOBによらないといけないということになります。
(本日はこのへんで)
参考URL:
証券取引法の一部を改正する法律について(大蔵省平成2年)
http://www.mof.go.jp/kankou/hyou/g464/464_b.pdf
「ソトー巡る買収合戦で注目、TOBって何?」
http://manabow.com/qa/tob.html
「なぜ敵対的TOBが増えているのか」マッキンゼー・アンド・カンパニー 本田桂子
http://www.mckinsey.co.jp/articles/2000/03/20000311-1.html
11年度中小企業白書
http://www.chusho.meti.go.jp/hakusyo/h11/zenbun/html/p1423000.htm

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ユーザーレーティング

23日の日経29面経済教室は、「開放的な”信頼社会を”」ということで、信頼の確立の方法について経済学的な観点から整理してますので、ネット系の方はちょっと注目かも。
筆者:山岸俊男 北海道大学教授

要旨:
マグリブ商人は、11世紀の地中海貿易で活躍したユダヤ商人のグループ。「情報の非対称性が生み出す代理人問題」を、自分を裏切った代理人を雇わず評判を落とすことで解決していた。
これに対してジェノバは、こうした閉鎖的な方法ではなく、裁判所などの社会制度を作った。これはコストが高いがオープンなので、結局、マグレブ商人との競争に勝つことになる。
ノーベル経済学賞を受賞したアカロフ教授は、情報の非対称性が存在する匿名市場では必ずレモン(表面的に見えない瑕疵)市場化が発生することを予測した。しかし、イーベイ(e-bay) などのネットオークションの研究では、不正直な取引は代理人問題に関する理論的な予測に比べると非常に少ないことが明らかにされている。なぜか。

ユーザーレーティングを行うとレモン市場化を抑制する効果がある。ただし、ネガティブな評判のレーティングにするとハンドル名を変更されたら終わり。筆者らの実験では、面白いことに、最初のうちはネガティブ評判の効果の方が大きいが、時間が経つにつれポジティブ評判の効果は尻上がりに大きくなるという結果を得た。ポジティブな評価は一度獲得した評判を継続したいというインセンティブが働く。

オークションは、取引が成立することが重要なので、取引量が多いところほど取引量が成立しやすくなり、ますます取引を呼び込むというポジティブなフィードバックが働きます。日本でのヤフオクとか米国でのebayとか東証とかが典型例ですが、このフィードバックが働くと、どんどん独占化が進むことになります。

この経済教室の記事は、そうした取引量(liquidity)確保のほかに、レーティング(しかもポジティブなレーティング)がこうしたサイトのポジティブ・フィードバック化(すなわち、スケーラビリティと事業への参入障壁、独占利益)を生み出すことを示してます。ビジネスモデル構築の参考になりますね。
では。

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ユニクロ、食品事業から撤退

ファーストリテイリングが、100%子会社のエフアール・フーズ(「SKIP」ブランド)で行っていた食品事業からの撤退を表明しました。
大ショックです。
SKIPは、「美味しんぼ」でしか読んだことがなかったような「永田農法のトマト」とか、「刈り取ったあと”はさがけ”したお米」などが注文できるので、1年以上前から我が家では野菜や牛乳や卵などを全面的にSKIPのものに置き換えまして・・・・私の体を構成する分子の約1/3程度はすでにSKIPに置き換わっていたんですが・・・。(泣)
当初はクール宅急便で野菜が届くというのもなんか贅沢な気もしましたが、最近はよく考えると、スーパーに車で買出しに行って駐車場の列をエンジンかけたまま待っているよりは環境にもいいような気がしてました。
また、確かにスーパーの野菜に比べれば割高ではありましたが、あまりにうまいので肉や外食が減って、結局トータルのコストは抑えられるし健康にもよかったんですけど。
さらに、素材がいいと、100円のものをちょっといためるだけで2000円くらいのレストランのメニューの味になったりするので、料理するのも楽しくなるし自信もつきます。
昨日も子供が「SKIPにしてから嫌いだったトマトが大好きになった!」と言っていたんですが・・。
悲しい・・・初めて失恋したときと同じくらい胸が苦しい・・・。(撤退を好感したのか、株価まで上がってるし・・。)
確かに簡単にボロ儲けできるビジネスモデルではないと思ってはいましたが、400億円も経常利益があるんだから、もうちょっと踏ん張ってくれるかと思ったんですが・・。
(そういえば昔、WebVanってベンチャーもありましたね。
http://www.orixrentec.co.jp/media/2001_08.html
やっぱ、毎日の買い物をwebでやるというのは、現在でもまだ時期尚早なんでしょうか。)
ちくしょー!食べ物の恨みは怖いぞ!
今まで普段着から靴下までほとんどユニクロだったけど、もうユニクロでは服は買わん!・・ことにします。はい。

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デット・デット・スワップ(DDS)

昨日の日経新聞朝刊3面に、「債務、資本に転換 金融機関に金融庁促す 経営再建しやすく」ということで、デット・デット・スワップ(DDS)の記事が載ってました。
「資本に転換」といっても、法律上の性質は資本ではなくデット(借入)ですが、劣後条件がついているもので、金融庁の金融検査マニュアル上は、資本とみなして検査する、ということです。
「今までの貸付を(貸し手から見て)より条件の悪い劣後貸付にシフトさせる」ことで、逆に「追い貸しがしやすくなる」というのもなんか腑に落ちない気がするかも知れません。少なくとも倒産したときの回収可能性は、理屈としては優先株式などにデット・エクイティ・スワップ(DES)するよりは高いわけですが・・・。(普通の債権>劣後債権>優先株式>普通株式)
とりあえず、本日はコメントはおいといて、関連するリンクのみご紹介とさせていただきます。(では)
金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕改訂案の主な内容(金融庁)
(経済産業省)
「商工組合中央金庫と中小企業再生支援協議会の連携による
デット・デット・スワップ(DDS)第1号案件について」

商工中金 デット・デット・スワップ(DDS)第1号案件への取り組みについて(平成16年3月11日)
今般、商工中金は、東京都中小企業再生支援協議会と連携して再生計画の策定を支援している中小企業者A社(東京都の金属製品製造業者)に対して、デット・デット・スワップ (以下、DDS)を用いた再生支援に取り組むこととしました。
本件は、2月26日の金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)改訂後、同マニュアルに沿ったDDSとしては、コベナンツの内容を含め中小企業者に適用した我が国で初めての取り組みです。

商工中金のDDS契約書(参考例)
中小企業金融におけるデット・デット・スワップおよびコベナンツの活用
(新業務対応ワーキング・グループ報告書 要旨)
平成16年2月 第二地方銀行協会

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アナロジー(blogと日記)

「blogは、blogを知らない人に対してよく”日記のようなもの”とたとえて説明されますが、これは当たっているとも言えるし当たっていないとも言えます」シリーズ、その2です。
先日、口の悪い方から「おまえは、藤原の定家にでもなったつもりかー」というツッコミを受けましたが。
確かに「日記」はめったなことでは人に見せるもんじゃないですよね。私も当初、その「人様に見せるもんじゃないものを人様に見せる」というところに一抹のブキミさを感じていたのですが、これは、「日記」というアナロジーがぴたっとハマっていないせい以外の何物でもなかったのではないかと。
Blogは、はじめから人に情報をばらまくために設計されてます。どちらかというと、「(よく更新される)ホームページにメール機能をつけたもの」というようなたとえのほうが、より適切だと思います。
このblogを作成しているMovable Typeでは、新しい「エントリー(記事)」を作成すると、あらかじめ指定しておいた宛先にメールを送ったり、「ping」という機能で記事を配信したりできます。
また、このblogのページ(https://www.tez.com/blog/)の左下に、「Syndicate this site (XML)」というリンクがありますが、ここを見ていただくと、XML化された記事のダイジェストが表示されています。
XMLは平たくいうと「機械(コンピュータ)でも解釈できるようにした情報」ですが、これによって、希望する人は自動的に情報を取りに来てもらうことができます。
(先ほどもソーシャルネットワーキングのサイト「mixi」を運営されてる笠原さんから教えていただいて、私のblogが更新されるたびにmixiの私のページが更新されるようにしてみました。)
メールだと、(スパムが端的な例ですが)、好むと好まざるとに関わらず情報を送りつけることになってしまいますが、こうした形での情報配信は、より受け取る人の側の希望にあわせた形の配信が可能になります。
ただし、こうした機能的に進んだ情報交換の方法は、思ったほど普及しない可能性もあります。言語やプロトコルなどの情報交換の方法は、「複雑で奥ゆかしいもの」よりは「シンプルでわかりやすいもの」が普及してスタンダードになるわけでして、他の人もどんどんこういうノリに乗ってこないと「ネットワーク外部性」が働かないわけです。
BlogとかRSSとかいっても、先端的な人は騒いでいるけど、実際にはこの普及のための「しきい値」に達しないで、このポジティブなスパイラルに乗れないんじゃないかなあと思ってましたが、あちこち対応するところが出始めてきたので、もしかすると、「しきい値」を超えるかも知れません。
超えたアカツキには、10年前に誰もが想像した(けど実際は想像とはかなり違った)「個人がテレビ局と同等に情報発信をはじめる」状態が、ちょっとだけ当時想像したものに近づくかも知れません。
ではまた。

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