TOBと事後設立

「経営・会計通信」のKrpさんからトラックバックをいただきました。
「少数株主を追い出す」http://krp.web.infoseek.co.jp/mt/archives/000103.html
「最近見つけた磯崎哲也事務所さんのblogは、私にとっては非常に参考になります。」
と言っていただいております。ありがとうございます。
krpさんの経営・会計通信もちょっと前に発見して、今回、全部目を通させていただきましたが、非常に参考になります。今後ともよろしくお願いいたします。<(_ _)>
ちなみに、最近よく、「TOBの際に新設の株式会社・有限会社をSPC(特別目的会社)にして公開株を取得する場合、商法上の事後設立(商法246条)に該当するのか?」という質問をよく受けます。
これを法的にどう解釈すればいいのでしょうか、という問題ですが。私、弁護士でもないのであくまで個人的意見ですが、以下、krpさんが「少数株主を追い出す(続き)」で引用されていたEDINETのロキテクノのMBO関連の臨時報告書をベースに検討してみたいと思います。
(ちなみに、該当するリンクを直接クリックしても表示されず、EDINETのトップページhttp://info.edinet.go.jp/EdiHtml/main.htm)から辿らないと表示されないみたいです。(→「ENTERボタン」→「内国会社」→「50音で”ロ”」→「ロキテクノ」→2003/7/22の「臨時報告書」))
事後設立は商法の条文では、
商法246条�
第二百四十五条第一項ノ規定ハ会社ガ其ノ成立後二年内ニ其ノ成立前ヨリ存在スル財産ニシテ営業ノ為ニ継続シテ使用スベキモノヲ資本ノ二十分ノ一以上ニ当ル対価ヲ以テ取得スル契約ヲ為ス場合ニ之ヲ準用ス」
商法173条�
「前項ノ規定ハ左ノ各号ニ掲グル場合ニ於テハ其ノ各号ニ定ムル事項ニ付テハ之ヲ適用セズ
一 (略)
二 第百六十八条第一項第五号又ハ第六号ノ財産ガ取引所ノ相場アル有価証券ナル場合ニ於テ定款ニ定メタル価格ガ其ノ相場ヲ超エザル場合 其ノ財産ニ係ル同項第五号又ハ第六号ニ掲グル事項」

となっておりますので、
(1) 会社が成立後2年以内であること
(2) 成立前より存在する財産を取得すること
(3) その財産は営業のために継続して使用すべきものであること
(4) 資本の5%以上にあたる対価であること
が要件となっており、以上の要件にあてはまらなければそもそも事後設立に該当せず、裁判所の検査役、または弁護士・公認会計士等の証明は不要。また、商法173条�の、
(5) 取引所の相場のある株式が価格を超えない
場合には、事後設立には該当するものの証明は不要、ということになります。
一般的にTOBのアドバイザー等の方々の間では、「こうした新設会社での取得は事後設立に該当するので、2年以上経過した休眠会社を探してこなければならない」というのが通説であり実務になっているようなんですが、適当な休眠会社が見つからない場合や、デューデリ(買収調査)にかける時間が足りない場合もあるでしょうし、簿外負債等のリスクもあるので、できれば新設の法人のほうがいいに決まってます。ということで、「事後設立に該当する」というのは、どういう根拠にもとづくものなのかを検討してみたいと思います。
新設会社だと、「(1) 会社が成立後2年以内」ですし、TOBの場合には借入金でレバレッジをかけることもあって、「(4) 資本の5%の対価」にはとても納まらないです。
ただし、「(2) 成立前より存在する財産」「(3) その財産は営業のために継続して使用すべきものであること」についてはどうでしょうか。
「(3) その財産は営業のために継続して使用すべきものであること」は、一般的には「固定資産」的なものを指すとされ、商品などには適用されないと考えられます。(でないと、会社成立後に生産した商品しか仕入れられず、商売になりまへんがな。古物商も新設法人ではできないことになります。売るつもりで仕入れた1000万円の九谷焼の壷が3年間売れなかったとしても、「継続して持っていたから事後設立だ、商法違反だ。」ということにもならないでしょう。商品は、物によって回転の速いものもあれば遅いものもあります。)
このロキテクノの臨時報告書を見てみると、ロキテクノの完全親会社として設立する会社の定款の目的が「次の事業を営む会社の株式を所有することにより、当該会社の事業活動を支配、管理することを目的とする。」と通常の持株会社と同様の「長期保有」っぽい書き方になっているので、SPCの方の目的も同じような書き方になっているとすると事後設立に該当しちゃうかなあという感じもします。しかし、はじめから株式の売買(投資業務)を会社の目的とし、貸借対照表上も取得した株式を「子会社株式」(固定資産)ではなく、「商品」として「営業投資有価証券」(棚卸資産)に計上すれば、事後設立には該当しない気がします。
ベンチャーキャピタルの会計においては、たとえ投資した会社の株式を50%超保有することになったとしても、それが営業の目的を達成するためであり、傘下に入れることが目的で行われていないことが明らかにされたときには、子会社に該当しないこととし、連結もされません。(会計制度委員会「金融商品会計に関するQ&A」Q71、「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する監査上の取扱い(監査委員会報告第60号)2(6)�等参照)(もちろん、子会社の範囲と事後設立の範囲が一致するとも限らないのですが。)
このSPC、通常の持株会社というよりは、ベンチャーキャピタルと同様の性質を持っていますよね?
また、このロキテクノ等のスキームをもう一ひねりして、例えば完全親会社を作った後にもう一段ロキテクノが株式移転で完全親会社を作ってその株式をSPCに譲渡したらどうでしょうか?その株式はSPCが設立された後に「製造(?)」されたものなので、「(2) 成立前より存在する財産」にもあてはまらない気がしますが。
ちなみに、TOBの場合、相場の時価に10%とか20%プレミアムを付けて買い付けることが多いので、上述の「(5) 取引所の相場のある株式が価格を超えない」というケースにも該当しない場合が大半でしょう。弁護士・会計士等が価格の証明をすれば裁判所の検査役も必要ないのですが、曲がりなりにも市場で価格が形成されているものに対して、その10%とか20%上の価格が適正価格ですというロジックを組むのは非常に大変そうです。(もちろん、TOBをかける方は、10%とか20%プレミアムを乗せても、さらに儲かる可能性が高いと考えているわけですから、証明できる可能性はあると思います。)
長くなりましたが、以上のように考えると、新設法人をSPCに使ったTOBというのが事後設立に該当するとは法律上は必ずしもいえないと思うのですがどうでしょうか。何かそうしなければならない判例その他の事情があるのでしょうか?
(いろいろ他にもおもしろい点はあるのですが、本日はこれにて。)

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官報ファン

すでにご案内の方も多いと思いますが、1999年秋から官報はネットでも見られるようになってます。http://kanpou.npb.go.jp/
無料で見られますが、掲載されるのはその日の正午からで、しかも一週間分だけ。一週間以上経った官報をネットで見たい場合には、「官報情報検索サービス」http://kanpou.npb.go.jp/search/introduce.htmlを申し込む必要があります(月2,100円。こちらは2001年9月からサービス開始。)が、一週間分でもタダで見られれば、かなり使い出はあります。
そもそも、法律違反に問われた場合、公布された法律を「知りませんでした」では済みませんし、手形の公示催告や商法関係の諸手続きなど公告で権利関係に大きな影響を与える可能性のある制度も多いので、「国民なら必ず見ておく必要がある」とも言えます。(言えないか。)
以前、「国土交通大臣 林 寛子」と書いてあって、「そんな大臣いたっけ?」と思ったら扇千景議員の本名だったり、といろいろマニアックな発見もあります。(マニアックすぎるか。)
破産や民事再生などに関するナマナマしい情報も。法人名はともかく、破産者等の個人名・住所まで出ちゃうのはプライバシー上問題とも言えますが、どこにも情報が公開されずに勝手に借金が踏み倒されるのも困りますので、それはそれで仕方ないのですが。
以前は、官報は「公告しても実際、誰も見てないしー。」というようなシロモノだったわけですが、インターネットが普及して、こうしてタダで誰でも見られるようになると、問題はいろいろ出てきます。
前述の官報のホームページに、
平成15年4月頃から、自己破産者を対象に官報掲載料金の支払いを求める通知書が送り付けられています。この件につきましては、裁判所及び国立印刷局は一切関知しておりません。
とあります。
弱ってる人に付け込んで、悪いことを考えるヤツはいるもんですね。
(ではまた。)

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「公的資金」とは何ぞや

横浜銀行、昨日のプレスリリース(http://www.boy.co.jp/topics/040406.pdf)では、「当行が当該権利を行使するか否かは現時点では未定であります。」としていた横浜銀行の転換社債の120%コールオプション条項ですが、本日、行使する旨の公告が行われてます。(日経38面)
(isologueバックナンバー
http://www.tez.com/blog/archives/000040.html
http://www.tez.com/blog/archives/000041.html
参照)
日経によると、横浜銀行はこの転換社債の株式転換で自己資本を強化し、公的資金を前倒しで返済しようということですが。
この銀行に注入された「公的資金」というのは、「銀行が政府から国民の税金をタダでもらった。けしからん!」と思っている人が多いのですが、実は中身は「優先株式」であり、「もらった」のとはちょっと違います。
またまた横浜銀行のケースを使わせていただいて恐縮ですが。(各行だいたい内容的には同じなので。)
同行の有価証券報告書http://www.boy.co.jp/k_t/yuukasyoken_2002.pdf28ページ以下に、「公的資金」である第一回優先株式、第二回優先株式の内容が掲載されてます。保有者は両方とも(財務省等ではなく)、「株式会社整理回収機構」になってますね。また、整理回収機構の分類は、32ページから33ページにまたがる表のところで「政府及び地方公共団体」ではなく、「金融機関」として開示されてます。(整理回収機構って、確かに公社等ではなく「株式会社」ですが、「金融機関」に分類されるんでしょうか。)
開示されている優先株式の内容について、詳細に検討していきますと、(カッコの番号は、後ろに添付した第一回優先株式の内容に対応してます。)
(1) 銀行は、普通株主に優先して優先株主に優先配当金を支払わないといけません。ただし、優先配当金を全額払えなかった場合でも、翌年以降にその未払い分は払わなくていいよ(プレッシャーを感じないで経営改善してね)、という「非累積条項」がついてます。また、優先配当金には上限がついてますので、結局これは配当というよりは、「払えなかったら払わなくていい借金の金利」的な性質を持ってます。
(2) 万が一銀行が解散することになった場合でも、残余財産は1株500円までしか支払われません。まず、預金者などの債権者に財産を分配してから優先株主が分配を受け、それでも残った場合に普通株主にも分け前が行くことになります。つまり、株式というより劣後債務(借金)的な性質を持ってます。
(5) この優先株には議決権がありません。つまり、国(整理回収機構)は、銀行の経営には参画しないということですが、
(3)で、普通株式へ転換できることになっており、また、
(4)で、平成21年7月30日までに転換請求のなかった優先株式は、平成21年7月31日をもって一斉に普通株式に転換することにもなってます。
普通株式に転換されてしまうというのはすなわち(一部)国有化、ということになるので、「こういう事態にならないと行使しないよ」ということが、実際にはより詳細に定められているとは思います。
他にも、恐らく「当行は、いつでも本優先株式を買い入れ、これを株主に配当すべき利益をもって当該買入価額により消却することができる。」というような買い入れ消却に関する条項がついているのではないか(でないと公的資金を返せないので)という気がしますが、書いてないですね。
以下、横浜銀行の第一回優先株式の内容:
(1)優先配当金
� 優先配当金
毎年3月31日現在の優先株主に対し、普通株主に先立ち、優先株式1株につき年5円66銭の優先配当金を支払う。ただし、当該営業年度において優先中間配当金を支払ったときは、当該優先中間配当金を控除した額とする。
� 非累積条項
ある営業年度において、優先株主に対して支払う利益配当金の額が優先配当金の額に達しないときは、その不足額は翌営業年度以降に累積しない。
� 非参加条項
優先株主に対しては、優先配当金を超えて配当は行わない。
� 優先中間配当金
中間配当を行うときは、毎年9月30日現在の優先株主に対し、普通株主に先立ち、優先株式1株につき2円83銭の優先中間配当金を支払う。
(2)残余財産の分配
残余財産を分配するときは、優先株主に対し、普通株主に先立ち、優先株式1株につき500円を支払う。優先株主に対しては、上記500円のほか残余財産の分配は行わない。
(3)普通株式への転換
� 転換請求期間
平成13年8月1日から平成21年7月30日までとする。ただし、株主総会において権利を行使すべき株主を確定するための基準日の翌日から当該基準日の対象となる株主総会終結の日までの期間を除く。
� 転換価額
優先株式の普通株式への転換価額は505円40銭とする。
また、転換価額は、平成11年7月31日とその後平成20年7月31日までの毎年7月31日に修正される。
ただし、今後時価を下回る払込金額をもって普通株式を発行する場合や株式の分割により普通株式を発行する場合等、一定の事由が生じた場合には転換価額を調整する。
(4)普通株式への一斉転換条項
平成21年7月30日までに転換請求のなかった優先株式は、平成21年7月31日をもって、優先株式1株の払込金相当額をそのときの普通株式の時価で除して得られる数の普通株式となる。この場合に使用する時価は、平成21年7月31日に先立つ45取引日目に始まる30取引日の東京証券取引所における当行の普通株式の普通取引の毎日の終値の平均値とする。ただし、当該平均値が200円を下回るときは、優先株式1株の払込金相当額を200円で除して得られる数の普通株式となる。
(5)議決権条項
法令に定める場合を除き、優先株主は株主総会において議決権を有しない。
(6)新株引受権等
法令に定める場合を除き、優先株式について株式の併合または分割は行わない。
優先株主には新株の引受権、新株予約権の引受権または新株予約権付社債の引受権を与えない。

他行の例:
株式会社東京三菱フィナンシャルグループ有価証券報告書(平成15年9月期 半期報告書[一部])
http://www.mtfg.co.jp/finance/securities/2003_half/pdf/yu_mtfghalf0304.pdf
株式会社みずほフィナンシャルグループ有価証券報告書(平成15年3月期 [一部])
http://ir.eol.co.jp/extra/8411/PDF/8411-200203-05.pdf
株式会社UFJホールディングス有価証券報告書
http://www.ufj.co.jp/ir/lib/yukasyoken/yukasyoken.html
株式会社三井住友フィナンシャルグループ有価証券報告書(平成15年9月期 半期報告書[一部])
http://www.smfg.co.jp/library/statement/h1603fghanki_pdf/1603_hanki_07.pdf
株式会社りそなホールディングス有価証券報告書(平成15年9月期 半期報告書[一部])
http://www.resona-hd.co.jp/ir/pdf/i_03b_01/042/hd_034-055.pdf
住友信託銀行 (平成15年3月期 [一部])41ページ
http://www.sumitomotrust.co.jp/IR/company/finance/yuka/132-01.pdf
三井トラスト・ホールディングス株式会社(平成15年3月期)41ページ
http://www.mitsuitrust-fg.co.jp/invest/pdf/yu_cmtb60.pdf

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転換社債(横浜銀行)[追記]

この横浜銀行の転換社債、ですが、ちょっと注意が必要なので追記します。
日経の記事だけ読むと、「横浜銀行、株価が20%上がって絶好調」とも読めますが、発行時の転換価格は525円だったのに、市場価格が20%下がったので転換価格の下方修正条項に従って転換価格を20%引きの420円に引き下げており、株価が回復して504円を上回ったということですから、実際には株価は「行って来い」で、もと(発行時の水準程度)に戻っただけです。
image002.gif
しかも、1×0.8×1.2=0.96ですので、一回大きく下がってまた株価が回復してくれば、当初の行使価格より4%株価が下落した水準でも買い戻しが可能になるわけです。
株式分割等が発生したために転換価格を修正したというなら株式の性質自体が変わってますので変更後の転換価格をベースにするというのはすんなり納得できますが、株価が1回下がってまた回復しても株式の中身は何も変わってないにも関わらず、コールオプションを発行者に行使されてしまうのは、なんとなく釈然としない気もするのではないでしょうか。
ただし、よく考えると、転換価格は20%下がってますので、転換して得られる株式数は当初想定された株式数の1.25倍になってます。つまり、株価が発行以来ずっと525円程度で横ばいの場合より、一度大きく下がってから今の価格に回復するほうが、転換社債権者としては得してます。
逆にいうと、新聞ではポジティブな感じで書いてありますが、株価はもとに戻っただけですし、横浜銀行は発行時の条件よりは株を多く発行しなければならず「損」することになります。また、記事を読むと、「120%コールオプション条項の条件にひっかかった」から「株式への転換が急速に進む公算が大きい」とも読めますが、償還期日が今年の9月に迫っているので、それまで株価が下方修正後の転換価格の420円以上で推移すれば、このコールオプション条項の適用がなくても、株式への転換は進むはずです。(このコールオプション条項の適用があったほうが、「急速に」進むのは間違いありませんが。)
(以上、ご参考まで。)

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転換社債(横浜銀行)

本日の日経朝刊は、いろいろおもしろい記事があるのですが、
(「個人投資家に株買いやすく」(3面、isologueバックナンバー投資単位の引き下げとボラティリティ参照)、「資産担保証券の市場整備」、「公的資金返済金融庁は複雑」、「市場外取引で免許交付(ほふりクリアリングに)」(以上7面)、「セプテーニ、トライコーンを子会社化」(16面 セプテーニ過去最大の買収とのこと)等)
横浜銀行の転換社債が、「120%コールオプション条項」がついていてちょっとヒネってあって面白いです。
CB全額株式転換へ 公的資金完済、前倒し視野」(7面)

横浜銀行は六日、転換社債(CB)六百億円を額面で繰り上げ償還できる権利が発生したことを明らかにした。投資家にとって額面償還は不利なため、株式への全額転換が急速に進む公算が大きい。転換後は自己資本比率が〇・九%程度上がる見通しで、財務面で余裕のできる同行が公的資金を今年度中に完済する可能性も出てきた。
 横浜銀は二〇〇一年十一月に六百億円のCBを発行。東証での株価の終値が転換価格(四百二十円)より二〇%高い価格(五百四円)を二十営業日連続で上回った場合に銀行の判断で繰り上げ償還できる権利(コールオプション)が発生する条項を盛り込んでいた。
 横浜銀株の終値は三月十日に五百五円を付けてから高水準を維持。二十営業日目に当たる六日も六百六十六円と基準値を上回り、権利行使条件を満たした。横浜銀が権利行使に踏み切る可能性を考慮すると、CBの保有者は額面(百円)での償還を待つよりも、転換価格の四百二十円で普通株に転換し、市場売却した方が有利になる。(以下略)

決議時の公告(平成13年11月1日)
http://ir.nikkei.co.jp/data/pdf/20011101/01110001.pdf
転換価額修正公告(平成15年7月28日:525円→420円)
http://ir.nikkei.co.jp/data/pdf/20030728/03070144.pdf
この公告、ホームページのプレスリリースでも、新聞の記事検索でもリリースされていないようですが、決議時の公告にあるように、この転換社債には120%コールオプションのほかに、株価が20日連続で転換価格を下回ると転換価格を最大20%まで引き下げるという条項もついていて、その適用を受けて転換価格を(ひそやか?に)引き下げていたんですね。
株価推移(Yahoo!Japan Finance)
http://quote.yahoo.co.jp/q?s=8332.t&d=c&k=c3&z=m&h=on
今回のリリース
http://www.boy.co.jp/topics/040406.pdf

平成13 年11 月16 日発行の株式会社横浜銀行120%コールオプション条項付第4 回無担保転換社債(転換価額下方修正条項および転換社債間限定同順位特約付)につきまして、管理委託契約証書第1条(7)号(ホ)に基づく120%コールオプション条項の要件が本日平成16年4 月6 日に充足され、今後当該転換社債の全部を額面100 円につき金100 円で繰上償還する権利が当行に生じたことをお知らせいたします。
当行が本条項に従って権利を行使する場合には、当該権利発生日より15 日以内かつ当該償還日に先立つ30 日以上60 日以下の期間内に必要な事項につき公告をおこなうこととなりますが、当行が当該権利を行使するか否かは現時点では未定であります。

(本日は、これにて。)

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今どきの社会科教科書

上の息子が小学校三年生になって教科書をもらってきたので、社会科の教科書(光村図書出版「社会3・4上」)を見せてもらったんですが、なんだか自分が小学校三年生の時に勉強したのとはだいぶ違う感じです。
まず、「わたしだけのたんけん・はっけん・けんきゅうノートを作ってみよう」ということで、仮説構築や調査計画の策定等を行わせ、街に出て仕事をしている人などに実地でヒアリングをさせたり。
また、
あいての気もちを考えて聞きましょう。
はじめに
「おいそがしいところすみません。○○小学校の3年の○○です。今、社会科の学習で○○○についてしらべています。お話を聞かせていただいてもよろしいですか。」

など、ヒアリングをする際のポイントを押さえさせたり。
スーパーマーケットだと「新せんさ」「しなものたくさん」「やすさ」「べんりさ」などの観点から、物流や顧客ニーズなどを学ぶ構成になってますし、最後には(PowerPointこそ使わないものの)プレゼンテーションにまで落とし込むところまでやります。
コンサルティングファーム即戦力って感じ。(笑)
私なんぞ社会人になってから新人研修で某スーパーでコンサルティング実習をさせてもらったりしましたが、今思えばいろいろ「あいての気もちを考え」ない質問をしてイヤな顔されたり、最終プレゼンでもよく知りもしないでいろいろ生意気なこと言ったりと、小学三年生以下のことをやってたんじゃないかとお恥ずかしい限り。
「今どきの若いやつは・・」と良く言いますが、「日本で一番長い川は?」てなことを詰め込まれてた世代よりは、よほどよくなるんじゃないでしょうか。
(全然関係ないですが、先週日曜日に息子とショートコースにいったら、ホールインワン出してたしなあ。(苦笑)
最近はインターネットやハードディスクビデオなど、ラーニングのためのツールもばっちりそろってますし、もうゴルフの知識でも全くかなわなくなってきました・・・。[単なる親バカ話でした・・・。])
(ではまた。)

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いらない会社の処分法

本日東証二部に上場した株式会社クリード(http://www.creed.co.jp/)が、日経朝刊29面の下のほうに(簡易)合併の公告を出しています。
最近、グループ会社の再編で合併する公告は珍しくないのですが、今回の公告がちょっと面白いのはその合併する会社の数。

当社(甲)は、平成16年3月23日開催の取締役会において平成16年6月1日を合併期日として、乙、丙、丁、戊、己、庚、申及び壬と合併することを決議し、平成16年3月23日に合併契約書を締結いたしました。(以下略)

ということで、つまり9社が同時に合併するわけです。(”甲”とか”乙”とかは普通ですが、”申”及び”壬”とかって、なかなか見かけませんよね。)
クリードの15年5月期の有価証券報告書
http://www.creed.co.jp/ir_jpn/whatsnew/S42.pdf
6ページ「関係会社の状況」によると、同社の連結子会社は25社、うち有限会社が14社(うち資本金300万円が13社)。
今回合併する子会社は8社。うち、資本金3000万円の株式会社が1社あるほかは、後の7社すべて資本金300万円の有限会社です。
これらの有限会社は、恐らく不動産のプリンシパルインベストメント用の「器(vehicle)」だったもので、不動産を売却した利益を「匿名組合契約」などで本体に吸い上げた後の(失礼な表現かもしれませんが)「抜け殻」というか「ポンカス」のペーパーカンパニーなのではないかと思われます。
前出の有価証券報告書の連結財務諸表の注記では、「1.連結の範囲に関する事項」で、

「なお、前連結会計年度において連結子会社でありました(有)○○・・・(計5社社名略)は、当連結会計年度に持分を処分したことにより子会社で無くなったため、連結の範囲から除外しております。」

(32ページ)
と書いてあり、(おそらくこれも「抜け殻」となったペーパーカンパニーの出資を誰かに引き取ってもらって)連結対象からはずしたものだと思われます。ただし、結局、その持分を受け取った人は、ペーパーカンパニーであっても帳簿を付けたり住民税の均等割額など払ったりでコストもかかりますし、まともに解散・清算手続きを踏むと、何度も登記をしたり裁判所に届け出たり公告をしたりと、事務手続きもたまったもんではありません。
また、従来は「額面の50円化(大昔)」「事後設立回避」「会社設立コスト・資金がいらない」等に利用するメリットがあったペーパーカンパニーも、昨今は「額面株式の廃止」「1円会社の登場」「事後設立の価格等証明で裁判所の検査役の選任が不要に」などで、価値が低下気味で、将来再転売できる可能性も低くなってきました。
平成9年商法改正で簡易合併(商法413条ノ3)の規定が導入され、合併に際して発行する株式が、発行済株式総数の5%以下の場合には、合併手続きが非常に簡単になりましたので、不要になった会社で(簿外負債等のリスクの無い)「得体の知れている」会社については、売却したり清算したりするより、(簡易)合併しちゃう方が事務手続きもはるかに簡単、ということで、今回は簡易合併を用いたものではないでしょうか。
(以上、私のjust推測ですので、ご注意ください。)
(本日はこれにて。)

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特許関連サイト(これはすごい)

特許について調べていたら、以下のホームページを発見しました。
「B-Files」
http://b-files.hp.infoseek.co.jp/
Yahoo!の特許のカテゴリー(トップ>政治>法>知的財産権>特許)のトップにも掲載されているので、その筋では超有名なのだと思いますが、不勉強で存じませんでした。
特に、「電波系」「めばえ系」「文学系」のあたりに掲載されている特許は秀逸です。ひさびさに腹を抱えて大爆笑。([ある意味]勉強にもなりますが、爆笑したり脱力したりする可能性があるので、お仕事中に読むのはあまりお勧めしません。:-)
「特許」と「ベンチャー」は、ある意味似てるなと思いました。「ベンチャー」も多くは真面目にやっていて可能性もあるものですが、本人は大真面目で一見してもよくわからないが実は成立しない話ということもよくあります。「大儲け」を期待しているけど、実際にそうなるものはほんの一握り、というところも同じ。
今後、新興市場やグリーンシートなどに公開される企業が増えて裾野が広がることはもちろんいいことですが、「電波の香り」のする企業も必然的に増えることになりますので要注意ですね。
(ではまた。)

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ストックオプション費用計上

昨日(4月2日)の日経9面に「ストックオプション費用計上 米、義務化巡り深まる対立」という記事が載ってます。
米国の財務会計基準審議会(FASB)が、従業員向けのストックオプションの費用計上を2005年から義務化する公開草案を発表して産業界等からは反発されている、国際会計基準審議会の方向性とも一致する、というような内容です。(日経には「国際会計基準理事会」とありますが、「審議会」の方が日本語訳としては一般的かと思います。)
中でも、以下の部分は注目。
「従業員向けストックオプションは市場で自由に売買できないため、公正価値の評価方法が確立されていない。FASBは今回、これまで使われてきた「ブラック・ショールズ・モデル」に代わり、「格子モデル」という手法を採用するよう促している。様々な条件を考慮できる利点があるが、大量で細かい計算が必要で、より複雑な作業になるとされる。」
「格子モデル(lattice model)」は、「Aの場合、Bの場合・・」というように二項(以上)のツリー(それが格子(lattice)に見える)を作っていって価値を計算する、(ヨーロピアン・オプションだけでなくアメリカン・オプションやその他のエキゾティックなオプションなどの)オプション・バリューの計算やリアル・オプションなどの計算に用いられる手法です。
数年前までは、「会計」というと基本的には「足し算、引き算」の世界のお話だったのですが、例えば退職給付会計や減損会計などで、ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)法などの考え方が盛り込まれてきて、(1+r)のn乗といった「掛け算、割り算」の”才能”が要求されるようになってきました。さらにストックオプションでは、σ(分散)とか平方根とかの理解を超えて、ケース別の(Excelなどでの)シミュレーションが求められてくるということになるという流れになってきたわけですね。
退職給付とか減損会計などは大企業では問題になるけど成長過程のベンチャー企業には当てはまらないケースが大半であったわけですが、ストックオプションとなるとベンチャー企業にもバリバリに関係してきます。
なかなか大変な時代になってきました。
(本日はこれにて。)
参考URL等:
Share-Based Payment—an amendment of Statements No. 123 and 95 (Proposed Statement of Financial Accounting Standards)(FASB)
http://www.fasb.org/draft/ed_intropg_share-based_payment.shtml
Fair Value Measurement(ページii)Issue 4(b):
Some constituents assert that the fair value of employee share options cannot be measured with sufficient reliability for recognition in the financial statements.
In making that assertion, they note that the Black-Scholes-Merton formula and similar closed-form models do not produce reasonable estimates of the fair value because they do not adequately take into account the unique characteristics of employee share options.
For the reasons described in paragraphs C21-C25, the Board concluded that fair value can be measured with an option-pricing model with sufficient reliability. Board members agree, however, that closed-form models may not necessarily be the best available technique for estimating the fair value of employee share options—they believe that a lattice model (as defined in paragraph E1) is preferable because it offers the greater flexibility needed to reflect the unique characteristics of employee share options and similar instruments.
However, for the reasons noted in paragraph C24, the Board decided not to require the use of a lattice model at this time.

Appendix E GLOSSARY
http://www.fasb.org/draft/ed_sbp_appe.pdf
Lattice model
A model that produces an estimated fair value based on the assumed changes in prices of a financial instrument over successive periods of time. The binomial model is an example of a lattice model. In each time period, the model assumes that at least two price movements are possible. The lattice represents the evolution of the value of either a financial instrument or a market variable for the purpose of valuing a financial instrument. In this context, a lattice model is based on risk-neutral valuation and a contingent claims framework. (Refer to the definition of closed-form model for an explanation of the terms risk-neutral valuation and contingent claims framework.)

Exposure Draft ED 2 SHARE-BASED PAYMENT (IASB)
http://www.iasb.org/uploaded_files/documents/8_38_ed2.pdf

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企業買収対抗方法の「特許」

昨日のスクイーズ・アウトに関連してwebを調べていたら、驚いたことに、特許庁の特許電子図書館(IPDL)(http://www.jpo.go.jp/shiryou/ipdl/ipdl_a.htm)で検索すると、以下のように企業防衛の方法についての特許出願があります。
【出願人】クデールブラザーズ・エルエルピー
【発明者】アーサー・エム・ミッチェル、斎藤 輝夫、田子 真也
【弁理士】生田 哲郎、外1名
1. 特許公開2003-196481 株主保護プラン
2. 特許公開2003-174800 株主保護プラン
3. 特許公開2003-164200 株主保護プラン
「本件発明は会社株主の権利を保護する装置または方法に関するものであり、特に少数株主の利益を保護するためのものである。本件発明の一つの具体化として日本法の下で設立された株式会社によって利用されるポイズン・ピルを提供する。」
ポイズン・ピルというのは、敵対的な企業買収があったときに敵対的な株主の株式の価値を相対的に落とすなどして対抗する手段のことです。特許なので「装置または方法」と言ってますが、中を読ませていただくとほとんど商法のお話で、買収に対抗するために、新株予約権を発行する等の内容です。
そうしたものに特許性があるのかどうかという話はさておき、米国での買収の事例や日本の商法の通説と米国法との違いの話などが展開されていて、中身は非常におもしろく具体的で勉強になりますので、ご興味のある方は特許庁のHPで中身をお読みください。
(ではまた。)

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