フジテレビ、発行登録制度を使ったポイズンピル?(その2)

昨日のNNN「今日の出来事」の報道によると、ライブドアさん(熊谷副社長)は、取材に対して「当面、フジテレビ株取得は中止」とコメントされたようですね。
Apricotさんに教えていただいた毎日新聞の記事
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20050323k0000m020115000c.htmlによると、

 通常の株主割当増資は手続きに最低25日必要だが、あらかじめ登録することにより手続きが2週間に短縮できる。TOB期間は最短で20日間のため、敵対的TOBを仕掛けられてから手続きを始めても、TOB終了までに新株を割り当てる株主を確定できる。TOBは増資前の旧株だけが対象になるため、増資完了後はTOBの買い付け者の保有比率が相対的に低下、結果的にTOBを失敗させる仕組みだ。

ということで、TOBが最短20日というところを使ったところがミソということですね。
同記事では、フジテレビ幹部の発言を引用して、

この手法のポイントは、新株発行の方法を「株主割当」にしたところにある。全株主に新株を割り当てるため、特定の株主に有利・不利が生じず、「裁判などで差し止められるリスクがない」(フジ幹部)という。

と言ってますが、47thさんの「日本版『ポイズン・ピル』も楽じゃない?」や本日の日経朝刊3面では、株主割当でも差し止められるリスクはゼロとは言えない、とおっしゃってます。
ただし、TOBに資金供給するレンダーは、この差し止めの可能性に賭けてくるかというと、ちょっと難しそうですね。「TOB期間中に新株や新株予約権の発行が行われた場合には資金供給しない」という条件付きの契約にしたらレンダーのリスクは限定されるかも知れませんが、それだとTOBする買収者が債務不履行になっちゃいます。
では、買収者が「TOB期間中に新株や新株予約権の発行が行われた場合にはヤメ」という条件でTOBできるかどうかですが・・・証取法と公開買付府令をさらっと読んだ限りでは、そうした条件付きで公開買付していいか悪いかは、ちょっと読み取れませんでしたが・・・。(追記:47thさんおっしゃるように、基本的にはできないと解すべきなんでしょうね。)また、実際問題、そうした条件付きで法廷闘争が繰り広げられる中で応募する人がいるのかどうか・・・。
同記事ではさらに、

 ただ、ライブドアがニッポン放送株を大量取得した時のように、TOBなしに大株主が突然現れた場合には、効果は限定的だ。敵対的株主にも新株が割り当てられるため、この株主の株式の保有比率を引き下げることはできない。ただこの株主は新株を購入する追加資金は必要になる。

といってますが、ライブドアに限定して言えば、市場買付でフジテレビ株を何千億円分も買うというのは、T+3[日]でお金を払わないといけないため強力な抑止策になってるわけです。ただし、(例えばトヨタのような)キャッシュリッチな会社が自己資金で買っていくのを防ぐことはできないということですね。
(ではまた。)

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フジテレビ、発行登録制度を使ったポイズンピル?

フジテレビが、発行登録制度を使ったポイズンピル(防衛策)をとってきましたね。
発行予定額が500億円と中途半端な額に見えますが、おそらく、株主割当増資で安い株価で(も)発行できる余地を残して、敵対的買収者に買収を躊躇させる目的のものかな、と。
(ポイズンピルというのは、米国でも「実際は抜かない宝刀」として運用されているようなので、それと同じわけですが。)
これからまた会議に入りますので、取り急ぎ。
(追記:22:05)
フジテレビのプレスリリース「新株式発行に係る発行登録に関するお知らせ」
http://www.c-direct.ne.jp/japanese/uj/pdf/10104676/00031444.pdf

1. 募集有価証券の種類: 普通株式
2. 発行予定期間: 発行登録の効力発生予定日から2年を経過する日まで
(平成17 年3月30 日から平成19 年3月29 日)
3. 募集方法: 株主割当
4. 発行予定額: 50,000 百万円
5. 手取金の使途: 設備投資、投融資、運転資金へ充当する予定です

と、これだけ見ると、「なんだ500億円ぽっちか」「時価で株主割当しても10%にも満たないじゃん」という気がするわけですが、よく見ると発行価額がいくらなのかが書いてない。

本発行登録により、当社は、必要な法的手続きを踏んで機動的に新株を発行することが可能となります。
当社は、本発行登録のもとでの機動的な株主割当による新株発行が行われうることを明らかにすることにより、当社の株主の利益・企業価値を毀損するような条件による公開買付け等による買収行為を未然に防止し、健全な企業活動の維持・継続とひいては株主の利益・企業価値の最大化を可能とする効果を期待しております。
当社に対する買収の提案または公表・公告があったときに、当社は、その内容・条件が当社の株主の利益・企業価値の向上に資するものか、内容・条件を修正すれば向上に資するものか、あるいは毀損するものかを検討します。
内容・条件を修正すれば向上に資すると判断した場合、当社は、買収者と鋭意、交渉し、内容・条件を修正するように促します。その上で、適切な内容・条件に修正されない場合には、当社は、株主の利益・企業価値を守るため様々な手段・方策を採ります。
また、株主の利益・企業価値を毀損するものと判断した場合、当社は、株主の利益・企業価値を守る様々な手段・方策を速やかに採ります。

と、「株主のため」という(ある意味当たり前の)スタンスを強く打ち出しておいて、ここで、

株主割当増資も、このような株主の利益・企業価値を守るためのひとつの選択肢であると認識しております。株主割当増資を行う場合は、取締役会で、発行新株式数、発行価額(時価を下回る可能性もあります)等の発行条件及び将来の割当期日を決定し、割当期日の2週間以上前に公告いたします。

というところで、「時価を下回る可能性もあります」というところが、脅し文句として効いているわけですね。
現在の時価より非常に安い価格の新株の発行をやっても、株主割当なら既存株主の権利には影響を与えないでしょ、ということですが、

その割当期日における株主名簿(実質株主名簿を含みます)上の株主(実質株主を含みます)の皆様にその持株数に応じて平等に新株を引き受ける権利が割り当てられることになります。割当期日現在の株主の確定作業が終了した後、申込期日の2週間前までに、株主の皆様に、失権予告付割当通知書(引受権の対象株数等及び申込期日までにお申し込みがない場合には権利を失う旨記載した通知書)、株式申込証及び目論見書等法令上必要とされる書類をご送付いたします。株主割当増資を行うことを決定した場合、以上の手続を適正に行い、株主の皆様・株式市場に対して、適正な開示を行ってまいります。

ということで、(「企業価値を毀損するような」買収者に対しては、新株を割り当てませんよ、なんてことは一言も書いてないわけですが)、なにやらイヤーな書きっぷりなので、「なにをしでかすかわからん」ところが、とりあえず不気味かな、と。
実際に、どういう理屈で、「企業価値を既存するような」買収者に対して「株主の利益・企業価値を守る様々な手段・方策を速やかに採」るのかというのが、これではまったくわからないわけですが、わからないだけに、少なくともこの段階では、ニッポン放送の新株予約権のように差し止めもできない。
(株主に平等に、てな、当たり障りのないことしか書かれてないので。)
もちろん、堀江社長はこんなのを出されても、ただひたすら突き進むのみかと思いますが、
一方で、LBOに資金供給するようなレンダーは、このような買収者の取得した株式の価値が著しく低下させられる可能性のある(わけのわからない)対抗策が存在するというだけで、貸し出しのリスクが非常に増大するわけですから、前のエントリーで述べたような種々の条件(金利等)を、買収者に対してよりハードな条件にしないと怖くて貸し付けができなくなる(または貸し付けそのものができなくなる)可能性が上昇するわけで、そういう意味では非常に大きな抑止力になるかも知れません。
「Strategic Ambiguity」(戦略的あいまいさ)ってやつですかね?(違う?)
(取り急ぎ。)

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ライブドアのLBOについて、もうちょっと考えてみた

今週にもライブドアがフジテレビ株にTOBをかけるとか報道されてますが、ホントなんですかね?
ライブドアがフジテレビにTOBをかける場合に具体的にどんなことが想定されるか、もうちょっと考えてみました。
SPVの設立
ニッポン放送株(の立会外取引による)取得の際には、「株式会社ライブドア・パートナーズ」という会社が使われましたが、フジテレビの買収を行う際にもSPV(Special Purpose Vehicle:特別目的事業体)が設立されることになると思います。
LBOの場合、最終的に「合併」が想定されますので、この場合、SPVとしては有限会社か株式会社が使われるということになると思いますが、(法律上はどちらでもいいし有限会社の方がコストは安くなりますが)、きっとニッポン放送の時と同様、株式会社が使われるんでしょうね。
商法上の事後設立の問題がありますので、実務上は、新設法人ではなく設立2年以上経ったペーパーカンパニーを購入してくることが多いようです。
TOBの開始
フジテレビのTOB(公開買付)を開始します。
公開買付の時には日刊新聞2紙以上に公告を行わないといけませんが(証券取引法27条の3、発行者である会社以外の者による株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令第9条)

(公告の方法)
第九条  法第二十七条の三第一項 の規定により公開買付開始公告を行う場合には、次に掲げる日刊新聞紙の二以上を含む日刊新聞紙に掲載して行わなければならない。
一  国内において時事に関する事項を総合して報道する日刊新聞紙
二  国内において産業及び経済に関する事項を全般的に報道する日刊新聞紙

この公告を出す実務ですが、ライブドアが直接、公告枠を取ったら新聞社にそれとわかってしまうので、(TOBの公告枠のサイズはだいたい決まってますし)、公開買付代理人となる証券会社が代わりに取るんでしょうか。
ちなみに、新聞社の広告の部門と経済部等の間には、どのくらいチャイニーズウォールが敷かれてるんですかね?
今朝、新聞に公開買付の公告が出るかと思ったら、出てませんでしたね。
価格設定の方針は?
今回、報道されている「ご予算」は3000億円程度ということですが、先週金曜日終値の324,000円からすると、それより20%程度高い株価を付けたとしても、みなさんTOBに応じるでしょうか?
仮に+20%で388,800円とすると、3000億円で約773,200株で発行済株式数2,548,608株の約30%が取得できることになります。
ただし、友好的TOBで買付予定を最大100%とすれば上場廃止も確実なので、(他に誰も買い手が現れなさそうであれば)、ニッポン放送の1月からの株価のように、相場の価格はTOB価格に張り付くことになるわけですが、
一方、今回もし敵対的TOBを行うとしたら、フジテレビがおいそれとそれに応じるとは思えないわけですし、取得する弾薬も全体の30%分程度しかなさそうということであれば、必ずしも上場廃止になるわけではない。(その後の株価の変動についてのプレミアムが理論上残っちゃうわけです。)
加えて、ホワイトナイト(スポーツ紙でソニー説が報道されてるようですが)が現れたり、さらなる増配などで株価が高くなる要因があると市場が考えれば、株価はニッポン放送のケースと同様、TOB価格を上に突き破っちゃいますので、ライブドアとしてはさらにTOB価格をつり上げないとTOBが成立しなくなってしまいます。
TOBをかけることでフジテレビに心理的プレッシャーをかけることを目的とするのか、本当に「占領」を目的にするのかでも方針が違ってくると思いますが、価格設定の方針をどうするのか(あまりプレミアムを付けずに相場を見ながらじりじりと釣り上げていくのか、一気に市場を「観念」させるようなプレミアムをドーンと付けてくるのか)が、一つ、見所ですね。(ホントにやるとしたら、ですが。)
テレビでも、「フィナンシャルな株主は価格によってはTOBに応じるのではないか」と解説されてましたが、当然、こういう不確実性が残る状況では、TOBの最終日(公告から20日〜60日。証券取引法施行令第八条�)までは、様子見でしょうね。
加えて、すぐに上場廃止にはならないとすると、既存株主は必ずしもTOBに応じなくても説明はつくかと思います。
image002.gif
ニッポン放送保有フジテレビ株の取扱い
ニッポン放送はフジテレビの株式の22.5%(573千株)を保有していますが、うち、220千株(約8.6%)は既に大和証券SMBCに貸株されています。
http://www.jolf.co.jp/company/IR1242/PDF/kashikabu.pdf
この残った株券を、どうするか、ですが。
一部報道のように今週にもTOBを開始するとすると、最大60日だと6月の定時株主総会にはかからないので、今回のTOBへの応募は無理。
ライブドアが取締役会の過半数の取締役を送り込んだ後は、取締役会でSPVへの譲渡を決議することが可能になってきますが、これだと大量の譲渡益が出ちゃいますね。
要は、SPVとフジテレビの合併さえ承認されればいいわけですから、しばらくそのまま持っているという手が合理的かも知れません。
貸し手がつけてくる条件は?
これだけの金額ですので、貸し手も、単に自己資金で貸すとは考えられず、契約書の厚さの合計が10cm単位になるようなストラクチャード・フィアナンスのスキームを組んで(?)、このローン債権自体が流動化されて転売されるんじゃないかと思います。
この場合、問題は、このSPVが取得するのが30%程度にしかすぎないとすると、議決権の3分の2の賛成を必要とする合併のための特別決議が行えない可能性があるという点。
もちろん、SPVにはフジテレビ株という担保はあるわけですが、この株自体、マーケットのプライスに(例えば20%とか)プレミアムを上乗せして買うわけですから、常識的に考えると、最低でも2割くらいはエクイティ部分はほしいところ。3000億円としても600億円。ライブドアからは、もうこれ以上そんな自己資金は出せなさそうですよね。
とすると、この流動化された債権を売りやすい「商品」にするためには、何かあと一工夫・二工夫必要じゃないでしょうか。例えば、
・金利をバカ高くする。(ジャンクボンドと同じ。これだと、金額や金利によっては、合併後のフジテレビが長期的に金利負担に耐えられなくなるので、合併後、フジテレビ資産の切り売り発生の可能性が大きくなります。)
・巷で言われるような「ご予算3000億円」どころじゃなくて、ニッポン放送とあわせて3分の2を確実に取れるところまでをTOBの下限にして、確実に合併ができるようにし、合併までの信用リスクを小さくする。
(そんな量が売りに出るかどうか。また、ニッポン放送の取締役の席がほんとに確保できるかどうかが現段階では不確実。ニッポン放送に「進駐」してからの方が、レンダーから見たリスクは減少するので、調達条件はよくなるはず。)
・ノンリコースではなく、リコースローンとしてライブドアが保証する形にする。(どこまで保証力を認めてもらえるか微妙ですが、、、)
・ライブドアが保有している資産で処分価値の高いもの(例えばバリュークリックジャパン株とか弥生株とか)を担保として提供する。
・「甘味料」としてライブドアの新株予約権等をつける。(また、ライブドアにdilutionが発生しちゃいますけど、)
・SPVのエクイティ部分も販売する。(エクイティ部分も外部調達。ただし、フジテレビ株と交換できても、そこから利益が出る絵が描けるのか?)
どれも、ライブドアの経営に多大な影響を与えかねない条件ですので、どういう条件にすればいいのかを決めるのは非常に難しそうです。
なおかつ、こうした条件を厚さ10cm超の英文の契約書(かどうか存じませんが)に落とし込んだりするとなると、クローズまでに1日とか2日で済むなんてことはありえないわけで、(先週あたりから準備を開始したとすると)、なんだかんだで、条件に合意したりあと1〜2週間はかかっちゃってもおかしくないんじゃないでしょうか。
このへんで、また、日本初のウルトラC的なスキームが使われると、勉強になりますね。:-)
以上、推測が非常に多く含まれているたまたま思いついたアイデアベースのものですので、その点にご留意の上、ご参考になれば幸いです。
ではまた。

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ラジオ局の経営をちらっと考えてみる

先日来、ラジオへの出演依頼があったので、(ライブドアさんがラジオ局を買収するということはどういうことなのか、ということを考えるという意味でも興味もあり)、2局ほど出演させてもらったんですが、
担当ディレクター氏が、「わかりやすいとリスナーにも好評でした。」てなことをおっしゃるので、(そんな見え透いたオベンチャラを〜。リスナーの反応なんかわかるんかいな?)と思って聞いてみると、
「生放送で、リスナーからのメール・FAXを受け付けているので、反響はリアルタイム。斬新な視点にはリスナーも敏感に反応してくれるので、そこがラジオの面白さでもあります。」
とのこと。ラジオって意外にインタラクティブなんやなー、と思いました。
−−−
ちなみに、以前4年半ほど某誌に書評を書かせてもらってたんですが、担当の方に、
「たまには、ファンレターとか来ないんスか?(笑)」
と聞いたら、
「全くありません。」
とキッパリとしたお返事が。(ガ━━━(゚Д゚)━━━ン)
やはり、情報を受け取る人の反応が何もないというのは萎えますし、私のようなもんのブログが続いているというのも、読んでる方のレスポンスがダイレクトに来るところが大きいわけです。<(_ _)>
−−−
では、そういったラジオの現状以上に「インターネットとラジオの融合」てなことができるのかどうかですが、技術的にも事業的にも直感的には非常に難しそうなわけですけど。
−−−
某テレビ局の方が「あそこの営業はスゴい」と関心されてましたが、ニッポン放送の営業マンは、他局が出かける前の朝一からスポンサー等を回るなど、かなり気合いが入っているので有名なようです。
そもそも、テレビ局ですら収入の要であるCM等の契約書が存在しないというスゴい世界とのことですし、ホイチョイのマンガでも白クマ広告社のラ・テ局の方はライターでアレを焼いたりラップでアレを包んでくわえたりして営業してらっしゃるようで(笑)、テレビ局やラジオ局の収入が、「契約ベース」ではなく、「人間関係ベース」に大きく依存しているというのは想像に難くないところ。
私も隊長氏と同様、AMはほとんど聴かないわけですが、車に乗ってる時などによく聴く某FM局が、従業員十数人でやってるのに開局8年も経って売上10億円で赤字というのにはびっくりします。
そう考えると、ニッポン放送が、単体半期で売上143億円、営業利益6.6億円(昨年4月〜9月)も稼いでいるというのは驚異的。よく存じませんが、「ビジネスモデルがいいから」というわけじゃなくて、上述のような「クローズドな社会における人間関係のテンション」でかなり膨らんでいる数字なんじゃないかと。
そうした中で、経営者が変わって従業員のやる気もそがれて、同じキャッシュフローが得られるのかどうかは全くわかりませんわね。外の風が吹き込めば、契約書や内部統制は整い、ライターだラップだというような世界は無くなって、それはそれで「いいこと」なのかも知れませんが、経営が「現代的」になると売上や利益が膨らむかというと、おそらく逆なんじゃないかと。
(ではまた。)

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未来の同窓会

本日は中学校の時の同窓会ということで、ひさびさに荻窪の駅に降り立ったが、店に行ってみるとそれらしき雰囲気が全く無い。改めて案内メールを確認すると、なんと同窓会は来週だった・・・。_| ̄|○
腹も減っているので、仕方がないから荻窪ラーメンでも食って帰るかと思ったら、なんと「丸福」が店をたたんだ模様。_| ̄|○
激しく脱力したので、本日は休載とさせていただきます。<(_ _)>

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ライブドアがLBO?

LBOと来ましたかー。(M&Aの教科書状態ですね。)
http://www.asahi.com/business/update/0317/099.html

ライブドア、フジテレビ買収狙い3000億円調達へ
2005年03月17日20時13分
 ライブドアがフジテレビジョン買収に向けて、レバレッジド・バイアウト(LBO)と呼ばれる手法を使って、3千億円の資金調達を検討していることが17日分かった。LBOは80年代に米国で発達した手法で、3000億円にものぼる調達が実現すると日本では過去最大級。ライブドアはこの資金で、フジ株の過半数の取得をめざす見通しだ。(中略)
 関係者によると、ライブドアは買収をめざすフジの資産を担保にして、複数の外資系金融機関などからなる融資団から、借り入れや債券・コマーシャルペーパー(CP)発行の形で資金を得る。2月の同放送株取得時に転換価額修正条項付き転換社債型新株予約権付き社債(MSCB)で調達した約800億円をしのぐ金額が要るため、別の手法を用いる。 (中略)
 フジの発行済み株式数は254万8608株で、時価総額は約7000億円。外国人の保有比率(議決権ベース)は15日時点で18.6%になるなど、市場で買い付けられる余地(流動性)はあるとされる。同放送はフジ株の22.5%を保有しているため、ライブドアはあと30%程度取得したい考えだ。(中略)
 LBOは80年代後半、米国でブームを巻き起こした企業買収法で、89年の米投資会社コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)による、たばこ・食品大手のRJRナビスコ買収が代表事例。
 日本では、03年の米系投資会社リップルウッドによる通信大手の日本テレコムの買収がLBOを使った最大事例。買収額は2600億円あまりだったが、リップルはこのうち約2000億円を、国内外の銀行から調達したとされている。

こうしたこと自体の是非とか、こうしたことを報道することの是非はさておき、フジテレビをどうやってLBOするか、ですが。
まず、平成16年9月末中間(単体)貸借対照表を非常にざっくりと要約すると以下の図のとおり。
image004.gif
オレンジ色の部分が、特に換金しやすそうな部分。
建物+土地のうち、建物のほとんどはお台場の局舎のようです。お台場の土地は東京都から借りているとのこと。こんなの全部equityで(借入金ゼロで)建ててるんですね。(こりゃびっくり。)これこそ、流動化してBSから落としちゃったりとか考えなかったんでしょうか。土地を東京都から借りているので難しいのかな?
その他流動資産は売掛金や手形が主ですが、信託受益権335億円とか、よくわかんないのも入ってます。(リース債権の信託受益権がほとんどとのことですが。)
つまり、フジテレビの資産って、ほとんどは本業であるテレビ局には直接関係なさそうな資産ですね。
テレビをやるだけなら、LBOして「不要資産」を売っぱらえば借金もほとんど返せるかも知れません。
おまけに、自己資本比率84.1%!
中間純利益11,818百万円の2倍が年間純利益としてもROE6.3%?
こりゃ確かにROE(または株価)を最大化しようという発想は、あまり感じられませんね。
(少なくとも財務的には)、ライブドアさんに大規模な財務リストラをしてもらったほうがいいのかも知れません。
フジテレビさん、よく見ると、(財務体質的には)相当LBO向きの会社かも知れません。
前述の朝日の記事だと、ライブドア本体が借り入れや債券・コマーシャルペーパー(CP)を発行して資金調達するようにも読めますが、実際には、SPVを設立して、
image006.gif
こんな感じで、SPV作って負債を借り入れるんでしょうか?(ノンリコースでなくライブドア保証で。)
上記の図だと、SPVがライブドアから倒産隔離されてませんが、ライブドアの連結子会社にすることはあきらめて、倒産隔離し、匿名組合出資などで果実だけ得るとか?(そちらのほうが、ライブドアの倒産リスクは下がるし、金を貸す方も安心かも。)
普通だと、このSPVとフジテレビを合併して、フジテレビにSPVが抱える負債を押しつけることになるかと思うのですが、ニッポン放送(議決権が復活するとして)とSPVを足しても50%ちょいしか議決権がなかったら、合併ができるのかしらん?
それとも、SPVは作らずに、ライブドア自身が負債を調達して、フジテレビと合併するつもりでしょうか?
その場合、放送免許がありますので、ライブドアが消滅会社になるんでしょうね。
そもそも、2月23日のニッポン放送のプレスリリースだと、大和証券SMBCに貸したフジテレビ株(議決権も)は、平成19 年3月15 日まで返ってこないようですが、その間2年間ふんばるんでしょうか?
しかし3000億円というような数字が出てくると、パックマンディフェンスがバカバカしく見えなくなって来ますね。(笑)今の株価ならライブドア25%で約500億円、50%でも約1000億円だから防衛費としては安いかも。
堀江社長のご発言によると、買収に使うなら第三者割当で資金調達しても不公正でないそうですので、ライブドア買収のために新株発行すれば、ライブドアのLBOも防止できて一石二鳥。ライブドアも株価が高止まりしてハッピーかも。
(ホントにやったら笑います。)
(まとまりませんが、とりあえず今時点でこれ以上考えてもしょうがない気がしますので、本日は、このへんで。)

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カブドットコム証券、東証一部に上場

守秘義務上の線引きが面倒だとか会社の立場からの発言ととらえられても困るということで、基本的に本ブログでは私が直接関係している会社のことは書かないようにしているのですが、本日は特別に。
私が社外取締役をやらせてもらってますカブドットコム証券が本日、東証一部に上場いたしました。

kabucom[1].gif

設立準備から約6年で東証一部に直接上場を果たしたというのは、ひとえに、お客様や株主、取引先の方々のサポートと、何より執行部門の方々の努力のたまものだと思います。私は非執行の社外取締役なので、こういう場合、外部の立場から「おめでとう!」と言うのがいいのか、会社の立場から「ありがとうございます」と言うのか迷いますが・・・法律的には一取締役は機関ではないので「何も言わない」が正解かも知れません。ただ、一人の人間としては、執行部門の人達に「設立前から今まで本当によくがんばった。」と言ってあげたい。(面と向かって言うのは照れくさいので、ブログに書かせていただきます。)
本日は、朝10時から東京証券取引所15階で贈呈式に出席、その後、アローズを見下ろすテラスで鐘を鳴らしてきました。「五穀豊穣」ということで5回鳴らすんだそうです。
出産の時から知っている子の結婚式に出席したような気分、です。
引き続き粛々と、株主のみなさまの利益になるよう、経営の監督に努めたいと思います。
<(_ _)>
(ではまた。)

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[pseudo]ハードディスクビデオで花粉症がなおる

私は社会人になった春の新人研修の最中に鼻血を垂らして以来、その後何年も「新人研修で鼻血を出した」いそざき、と、ありがたくない修飾語を付けて呼ばれる人生を歩むことになったわけですが、思えばあれが私の花粉症の始まりでした。当時はまだ花粉症という概念が一般には知られてませんでしたが。
ところが、ここ2年ほど、花粉症の症状がほとんど出ない。もちろん、ちょっとクシャミが出たりはしますが、以前のように頭痛がしたり意識がぼやけるというような仕事に差し支える状態からはほど遠い。ではなぜ、いきなり症状が劇的に緩和したのかと考えていたら、「ハードディスクビデオ」に行き着いたわけです。
「高圧縮」可能な報道コンテンツ
うちのCoCoonは自動的に山ほど番組を録画してくれるわけですが、中でも、(番組を作ってらっしゃる方には大変申し訳ないですけど、)報道番組というのはまさにハードディスクビデオで30倍速や120倍速で飛ばし見をするのに最適なコンテンツなわけです。
先日テレビ局の方に伺ったところ、画面の左上や右上に表示される説明書きや字幕は大きく視聴率を左右する要素だとのことですが、まさにあれが高速飛ばし見中のインデックスとなって、興味ある事件や特集のところだけ通常のスピードで見ることができます。
また、報道番組は激しい競争を展開してますので、皮肉なことに、逆に放送される絵面が局間でもみんな似かよってきますし、5時のニュースでも11時のニュースでも同じ素材が使われたりします。最近だとニッポン放送の亀渕社長へのぶら下がり取材のシーンとか、堀江社長の記者会見のシーンとか。そういう部分は120倍速でOK。
「シャノンの定理」的に言うと、報道番組は「非常に高圧縮率で情報を圧縮することが可能なコンテンツ」ということが言えるかと思います。
「お笑い」はどうか
一方、お笑い番組やバラエティ番組はというと、そうはいかないわけです。なぜなら、お笑いというのは「絵」もさることながら「間」が大切なわけで。「間」というのは早回しではわかりませんわね。
また、当たり前のことではなく常識との「差異」がお笑いになるわけですから、そういう意味でも「お笑い」は、エントロピーが高く圧縮しにくいコンテンツということができるかと思います。
ちょっと考えると、お笑い番組よりは報道番組の方が「中身がある」ように思われますが、実は、情報理論的には逆なのかも知れません。
真夜中の大爆笑
するとどういうことになるかというと、必然的にテレビを視聴する時間のうち報道番組の比率は下がり、お笑い番組を見る時間が増えるわけです。(笑)
また、以前は、視聴率の高いバラエティ番組はゴールデンタイムに放送されていて、夜中にはイマイチな番組が多かったわけですが、今では、朝の3時でも、(その時間帯に放送している番組の中からではなく、過去数日間の番組の中から)最高におもしろい番組を見ることができます。
かくして、私は、仕事で煮詰まったり休憩したいときに、真夜中であれ早朝であれ、バラエティ番組を見て大爆笑するようになりました。
以前、末期ガン患者の方々を吉本新喜劇につれていったらNK細胞の活性が上がったと報道されてましたが。真偽のほどはよく存じませんし、私も別に花粉症を治そうと思ってお笑い番組を見ていたわけでもないんですが、ここ2〜3年で大きく変わった要因って他に無いからなあ。大爆笑していたおかげで免疫機能が活性化してきたんじゃないかと。
ちなみにうちの家族は、同じものを食って同じ家で生活しているので、ほとんどの条件が私とまったく同じなわけですが、テレビを見て大爆笑している私に冷ややかな視線を浴びせている点は異なります。で、引き続き花粉症で苦しんでるわけですが。
「投資家」さんからコメントいただきまして、

率直な感想です。最近、投資家目線ではどうでもいい議論が続いてます。
以前はもっとアナリスト的なBlogだったと記憶しているのですが・・・
ご多忙中だとは思いますが、早く戻って欲しいものです。

とのことですが、いえ、残念ながら、以前からこのブログはこういうヨタ話もするサイトでございまして、そんなアナリスト的なblogなんて大それたもんではございませんです、はい。
また、上述のように「差異」(お笑いを含む)が情報の価値を形成するのではないかと考えている次第でして、引き続きこんな感じで参りますので、よろしくお願いいたします。<(_ _)>
(ではまた。)

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フジテレビ増配が意味する「落としどころ」

要旨
フジテレビが増配したのは、ライブドアとフジテレビが「株式交換」で落としどころを見つけるという可能性と関係あるか。(ないか。)
以下、本文
Nikkei Netの記事より。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20050315AT3L1505415032005.html

フジテレビ、今期大幅増配・株主に還元
 フジテレビジョンは15日、2005年3月期に期末配当4400円(前期末の配当は1400円)を実施し、年間配当を5000円(前期は2000円)にすると発表した。年間配当の従来計画は1200円だった。昨年5月に株式1株を2株にする株式分割の効力が発生していることを考えると、大幅な増配となる。フジテレビでは今期の配当は配当性向を50%メドに決定したとしており、来期以降も株主還元の充実を図っていく。〔NQN〕 (16:37)

うーん。株価を上げようということだとは思うんですが・・・。
今回の、ライブドアとフジテレビの「大人の落としどころ」として、「株式交換によるニッポン放送の子会社化」という手があるんじゃないかなと思っていたわけです。
つまり、ライブドアからニッポン放送株を買い取ろうにも、現金で買い取るとすると、TOBに応じてくれた株主さんへの義理として、(ただでさえ今でも株主代表訴訟されちゃったりしてるわけですから)、5,950円以上の価格では買い取れない。一方、以前推定したように、おそらく、ライブドアさんは6,200円くらいの平均取得コストになっているから、それ以上安く売るわけにはいかない。
ところが、株式交換となると交換比率が前面に出て、いくらで評価したのかという実額は比率の裏にちょっと隠れます。キャッシュで買い取るよりは、価格をボヤかせられる効果がある。(かも)
ライブドアや村上ファンド等の既存株主には、フジテレビ株がわたるわけですが、結果としてそのフジテレビ株が、もとのニッポン放送株の取得価額より高く売れればライブドアも納得できる可能性はあります。
既にフジテレビとライブドアでほとんどすべての株式を持っているわけですから、ライブドアだけでも説得できれば、株式交換は確実に実行できます。少数株主に負担をかけるスキームでもない。
つまり、
image002.gif
と、なってるのを、
image004.gif
と、こうするわけですが。
ここで、例えばTOBをやっていた時点でのTOB価格(5,950円)とフジテレビ株の株価の比率で株式交換をすることにすると、TOBをしていたときよりもフジテレビの株が上がっていれば、ライブドアが投下した資金を回収することも可能になってきます。
ソトーやユシロのときと同様、配当を上げれば株価は上がる可能性が高いわけですが、「それによって企業の本質的な価値が上がったとは言えない」とも言えなくはないですから、そのへんの理屈を付けて交換比率を決定すれば、TOBに応じてくれた株主さんにも一応スジは通る。(・・・かも・・・ちょっと苦しいですが・・・。)
フジテレビ株主の観点からは相対的に悪い交換比率にはなるわけですが、焦土作戦だなんだという話よりは損害は少なくて済むでしょうから、フジテレビ株主に対しても経営判断としてはアリなのかな、と。株なので、キャッシュよりはプレミアムが付くのが通常でしょうしね。
ま、単にフジテレビ自体が買収されないように株価を上げとこ、とか、今まで株主重視の姿勢があまりになかったので反省して、という単純な話かも知れません。
思いつきで恐縮ですが。
(ではまた。)

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ニレコの「セキュリティ・プラン」(ポイズンピル条項)

本日の話題と言えば、やはり、ニレコさんの発表された「セキュリティ・プラン」(ポイズンピル条項)条項でしょう。
これを詳細に見ていきたいのですが、私、ひとには「確定申告はお早めに」と勧めておきながら私自身はこれから申告書を書くという状況でして、本日は夕方までそっちの作業等をさせていただきます。
ということで、ここはニレコさんの「セキュリティ・プラン」(ポイズンピル条項)検討エントリ建設予定地、ということで。(後で追記します。)
ニレコさん、プレスリリース:
企業価値最大化のための「セキュリティ・プラン」について
http://www.nireco.co.jp/jap/info/img/050315.pdf
さらっと拝見したところ、新株予約権を既存の株主に発行し、「手続開始要件」に該当した場合のみ、株主が保有する株式数の2倍の新株を取得できるようにするというもののようです。
手続開始要件とは、「ある者が特定株式保有者に該当したことを当社の取締役会がそのように認識し、公表したことをいう。」とし、特定株式保有者とは、ざっくり会社の議決権の20%を取得した買収者ということのもよう。
(取り急ぎ。)

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