ファンドビジネスとゴルフ会員権

華氏911に、プライベート・エクイティ・ファンドのカーライル・グループが(「悪者」として)登場してましたが、その主要メンバーが、元IBM会長のガースナー氏だとか、アメリカの元国防長官とか国務長官だとか、きらびやかなのにびっくりされた方もいらっしゃるかと思います。
同じくプライベート・エクイティ・ファンドのリップルウッドが旧長銀を買収して新生銀行にしたときのボードメンバーもしかり。
会長兼社長に元シティバンクの八城氏をもってきたのはもちろん、社外取締役にアサヒビール名誉会長の樋口氏、新日鐵会長の今井氏、三菱商事会長槙原氏の他、スタンフォード大学教授、メロン銀行会長、デイヴィッド・ロックフェラー氏等々・・・。
新生銀行年報2001(p99)参照)
当時、「この取締役会の運営、どうやるんじゃい?」と他人事ながら心配したもんでしたが。
このノリって、バブルの頃の(今もそう?)高級ゴルフ場の会員権募集のノリに似てるなあと、ふと思いました。当時、ゴルフ場の会員権募集のパンフレットには、やはり、「○○○製鐵会長・・・」など、すごい超大手企業の重役などの名前がずらり。
そういえば、当時のゴルフ会員権って、(もちろんゴルフしたいというための需要の部分もあったでしょうが)、基本的には会員権の値上がり益を見込んだ一種の「不動産投資ファンド」でしたよね。
(もちろん、当時のゴルフ場は収益還元価値とかexitとか全く考えないものでプライベート・エクイティ・ファンドとは全く異なるわけですが、)
「ゴツい人々の名前を並べて、短期間に信用を形成する」というのは、いつの世もファンド・レイジングの基本ということかと思います。
(では。)

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ハードディスクビデオと電通の未来

昨日、関東地方に台風が接近したのでテレビを見ていてハッと気づきましたが、そういえば、「リアルタイム」でテレビを見たのは超久しぶり。CoCoonを買ってからというもの、録画で見るのが全体の99%以上になっちゃいました。
当然、録画されたテレビ番組のコンテンツでは、広告は飛ばし見されてしまうわけです。これは、テレビという媒体の価値が著しく低下する可能性を示しているかと思います。
逆に、(例えば、うちの奥さんがヨン様のCMだけを選って見て、ワイドショーの番組のコンテンツ自体は飛ばしてしまうように)、CM自体がコンテンツとしての価値を持つように変わっていくかも知れません。
「そういう新しいメディアの登場の影響って、騒ぐ割には実際には社会の変化はそれほどたいしたスピードでは起きないんじゃないの?」と思われる方も多いかと思います。(実際、Google News は思ったほど見ないなあ。)
しかし、ハードディスクの価格低下のスピードを考えるに、5年後、10年後にテレビをリアルタイムで見る人って、明らかにかなりの少数派になってるんじゃないでしょうか。
11月にはソニーからも、1テラバイトのハードディスクを搭載して、地上アナログ放送6チャンネル分を同時に約1週間分録画可能全部録画できるVAIOが発売されるそうです。
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200410/10-1005/
例えば電通の売上明細をみても、テレビ媒体からの収入はじりじり下がりつつはあるものの、いまだに4割以上を占める最大の収益源であることがわかります。
Dentsu_Sales.jpg
(出所:電通フィナンシャル ファクトブック 2004
テレビの媒体価値は下がるが、CM制作費には逆に熱が入る可能性もあるので、それで広告代理店が滅亡する、ということにはならないでしょう。(ただ、「気まぐれコンセプト」に出てくる白クマ広告社のラテ局の部長さんは、ライターで燃やしたりラップを使ったりして営業してる場合とちゃう、ということになるんやないでしょうか。)
インフォマーシャルみたいな番組が増えたり、映画のファンドレイジングのように番組中で人気タレントがスポンサーの製品を使ってたり、テレビ番組のあいだ中ずっと、バナーなどで広告が出っぱなし、というような方向性もありえます。
かれこれ1年半以上も前になりますが、日経デジタルコアのメーリングリストに投稿した内容(一部抜粋)をご参考まで掲載しておきます。以上のような話が長々と書かれているだけですが、ご興味のある方はご覧ください。
———————– Original Message ———————–
発言者 :磯崎 哲也
発言日時:2003/02/10 22:03
●「CoCoon」で垣間見る情報産業の未来
eラーニングから話がそれるようですが、2ヶ月ほど前にSONYの「CoCoon」と
いう機械(http://www.sony.jp/products/Consumer/cocoon/)を買いまして、
eラーニングやテレビ産業、その他の情報産業についてかなり示唆がありまし
たので、ご紹介させてください。
CoCoonというのは、平たく言うとハードディスクビデオですが、キーワード
(例えば、「ゴルフ」とか「ニュース」とか)を登録すると、そのキーワード
にひっかかる番組をすべて自動的に録画してくれるところがミソです。
このため、これは「ビデオの延長線上の機械」というよりは、未来の「究極の
オンデマンドの動画像コンテンツ・サービス」を「ローカルのハードディスク
上で擬似的に体験できる製品」になってます。つまり、自分で個々の番組をい
ちいち予約するのではなく、見たい番組はすべてディスクの上にあって、その
中から、オンデマンドで情報を取り出せるわけです。
(中略)
●真の「オンデマンド」
CoCoonでは最大120倍速で早送りや巻戻しができます。これは、極めて単純な
機能のようでいて、ストリーミングコンテンツの意味を決定的に変える要件で
はないかと思います。
ご案内の通り、現在のWebのストリーミングコンテンツだと、ちょっと早送り
したいと思っても、そのたび、
「バッファリング10%、20%、30%、40%・・・」
という表示が出て、次の映像に飛ぶまでに10秒近くも待たされます。
つまり、コンテンツのタイトル毎には確かに「オンデマンド」であるかも知れ
ませんが、コンテンツの「中身(コンテンツ)」については、まったくオンデマ
ンドではないわけです。
動画像のでかいファイルのどこに自分の欲しい情報があるのかが全くわからない。
これに対して、120倍速でのサーチは、(コンテンツはそのままでも)まった
くコンテンツの性質を変えます。
(中略)
また、この「オンデマンド化」によって、今までのテレビの、リアルタイム&
フルタイムの「呪縛」に改めて気づかされました。
基本的にリアルタイムでテレビを見ることが皆無になり、
「時計代わりの朝の番組を見なくなった」
「夕食時にもテレビを見なくなった」
「家族の会話が増えた」
「好きな時にトイレにいける」
「いつでも(ゴールデンタイムでなくても)おもしろい番組が見られる」
「見たい部分は何回でも見られる」
というように、生活面にもかなり変化がありました。
●コンテンツの「一人勝ち」化へ
改めて思うのは「テレビの番組って、やっぱりおもしろい」ということです。
おもしろさの根源は、やはり「好感度の高いタレントが出ており」「才能ある
プロデューサーやディレクターが才能あるスタッフと」「金をかけて」作って
いるところかと思います。
今までは、テレビをつけた時にたまたま自分の興味のあることをやっている確
率が限りなく低かったわけで、テレビを付けたときにアホな番組をやってると
「テレビの低俗化が進んでいる」てなことを思ってしまっていたわけですが、
「すべての」番組の中から一番面白い番組の一番面白いところだけ選べれば、
大変面白い。
関東圏で見られる地上波だけでも、一日に130時間以上のコンテンツがありま
す。一方、見られる時間は、普通の社会人なら1〜2時間程度でしょう。
こういうコンテンツが作れるのも、数千万人の目を引き付けることのできる、
「テレビ」という「ビジネスモデル」の構造的要因が大きいかと思います。
Webやeラーニングのコンテンツで、1コンテンツ1千万円かけられるケースは
なかなかないかと思います。
(中略)
ただし、金をかけたコンテンツなら高い金を払う、というほど市場は甘くない
ので、おのずと、金をかけられるのは、一部の「勝ち組」コンテンツだけ、と
いうことになるでしょう。
●収益のシフト
(中略)
実際、あまりにテレビのコンテンツがおもしろいので、CoCoonを購入してから
というもの、ほとんどレンタルビデオを見なくなりました。
(中略)
●というわけで、
私は最近、自宅にビデオデッキが何十台あるデーブスペクター氏とか1日中テ
レビをつけっぱなしだった故ナンシー関氏並の量のテレビ番組(1日10時間分
以上)を見ているのではないかと思います。
もちろん、実際の視聴時間は1日1〜2時間程度に圧縮されてます。
世界で初めて登場した「eラーニング・マシン」は、映画「禁断の惑星」に出
てきた知能の高くなる機械じゃないかと思いますが、ああいうのを手に入れた
気分です。
今のところ、「イドの怪物」が夜中に歩き回っている兆候はありませんので、
ご心配なく。(笑)
では。
———————– Original Message ———————–
発言者 :磯崎 哲也
発言日時:2003/02/13 10:37
ソニーさんは「ビデオ以来の大発明」とぶちあげてらっしゃいますが、確かに
そうだと思います。これ、使ってみないとスゴさがわからないので、革命的な
割には、マスコミ等でも意外なほど取り上げられていないのが不思議なくらい
でして。
これが広まると、テレビの広告媒体としての価値も大きく変わってしまいかね
ないので、政治的な配慮かなあ、と勘ぐりたくなります。(たぶん、違うと思
いますが。(笑))
私もビデオを使い始めて20年近くになりますが、最初の数年はいろいろ一生懸
命録画したものの、ここ十数年は「レンタルビデオを見る」以外の用途には全
く使ってませんでした。かように「録画」という行為はめんどくさい。
未だに「ビデオの録画ができない人」というのはたくさんいるので、「録画し
なくていい」(擬似オンデマンドな)のはすごいことです。
もともと、同機を購入しようと思ったのは、おそらく史上初の「本格的に常時
接続でネットに繋がっている家電」で、ネットのサービスモデルと連動してい
るから、だったのですが、肝心のその「家の外からでも録画できる」機能は、
勝手にほとんど録画してくれて「擬似オンデマンド」になっているので、ほと
んど使わなくなってしまいました。
(中略)
これは、ソニーさんがすごいというよりも(すごいのもさることながら)、
ハードディスクが低価格化して、10万円の製品で画像データが100時間も録画
データが保存できるような時代になると、遅かれ早かれ訪れる必然的変化と
いうことなのではないかと思います。
では。

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劣後特約付転換社債の例

昨日の続きで、転換社債(CB)の条件の具体例として、銀行のケースを見てみます。
image003.gif
このうち、東京都民銀行と福島銀行を除く4行については、転換社債に「劣後特約条項」が付いてます。もちろん、自己資本増強のためですね。劣後特約を付けることで、BIS規制上、この転換社債が(株式に転換されなくても)自己資本にカウントされるわけです。
池田銀行のプレスリリースによる例は以下の通り。
池田銀行「第3 回劣後特約付無担保転換社債型新株予約権付社債の発行に関するお知らせ」
http://www.ikedabank.co.jp/pdf/20040106.pdf
以前、デット・デット・スワップ(DDS)で取り上げた商工中金のDDS契約書の例の劣後特約条項など同じ、一般的な劣後特約条項になっているようです。
(この転換社債の特約では、「特別清算の場合」「会社整理の場合」がなく、代わりに「日本法以外による倒産手続の場合」が規定されています。)
(本日はこれにて。)

9. 劣後特約
本社債の償還及び利息の支払は、当行につき破産宣告、会社更生手続または民事再生手続開始の決定があり、あるいは日本法によらない破産手続、会社更生手続、民事再生手続またはこれらに準ずる手続が外国において行われる場合には、以下の規定に従って行われる。

( 1 ) 破産の場合
本社債につき定められた元利金の弁済期限以前において、当行について破産宣告決定がなされ、かつ破産手続が継続している場合、本社債に基づく元利金の支払請求権の効力は、以下の条件が成就したときに発生する。
(停止条件)
その破産手続の最後の配当のための配当表(更正された場合は、更正後のもの)に記載された配当に加えるべき債権のうち、本社債に基づく債権及び本項第(1)号乃至第(4)号と実質的に同じ条件を付された債権(ただし、本項第(3)号を除き本項と同一の条件を付された債権は、本項第(1)号乃至第(4)号と同一の条件を付された債権とみなす。)を除くすべての債権が、各中間配当、最後の配当及び追加配当によって、その債権額につき全額の満足(配当、供託を含む。)を受けたこと。

( 2 ) 会社更生の場合
本社債につき定められた元利金の弁済期限以前において、当行について会社更生手続開始の決定がなされ、かつ会社更生手続が継続している場合、本社債に基づく元利金の支払請求権の効力は、以下の条件が成就したときに発生する。
(停止条件)
当行について更生計画認可の決定が確定したときにおける更生計画に記載された債権のうち、本社債に基づく債権及び本項第(1)号乃至第(4)号と実質的に同じ条件を付された債権(ただし、本項第(3)号を除き本項と同一の条件を付された債権は、本項第(1)号乃至第(4)号と同一の条件を付された債権とみなす。)を除くすべての債権が、その確定した債権額について全額の弁済を受けたこと。

( 3 ) 民事再生の場合
本社債につき定められた元利金の弁済期限以前において、当行について民事再生手続開始の決定がなされ、かつ簡易再生または同意再生の決定がなされることなく再生手続が継続している場合、本社債に基づく元利金の支払請求権の効力は、以下の条件が成就したときに発生する。
(停止条件)
当行について民事再生計画認可の決定が確定したときにおける再生計画に記載された変更されるべき権利のうち、本社債に基づく債権及び本項第(1)号乃至第(4)号と実質的に同じ条件を付された債権(ただし、本項第(3)号を除き本項と同一の条件を付された債権は、本項第(1)号乃至第(4)号と同一の条件を付された債権とみなす。)を除くすべての債権が、その確
定した債権額について全額の弁済を受けたこと。

( 4 ) 日本法以外による倒産手続の場合
当行について、日本法によらない破産手続、会社更生手続、民事再生手続またはこれらに準ずる手続が外国において本項第(1)号乃至第(3)号に準じて行われる場合、本社債に基づく元利金の支払請求権の効力は、その手続において本項第(1)号乃至第(3)号に記載の停止条件に準ずる条件が成就したときに、その手続上発生するものとする。ただし、その手続上
そのような条件を付すことが認められない場合には、本社債に基づく元利金の支払請求権の効力は当該条件にかかることなく発生する。

( 5 ) 上位債権者に対する不利益変更の禁止
第8 項第(4)号、第8 項第(7)号、第8 項第(11)号及び本項の規定は、いかなる意味においても上位債権者に対して不利益を及ぼす内容に変更されてはならず、そのような変更の合意はいかなる意味においても、またいかなる者に対しても効力を生じない。この場合に、上位債権者とは、当行に対し、本社債に基づく債権及び本項第(1)号乃至第(4)号と実質的に同じ条件を付された債権(ただし、本項第(3)号を除き本項と同一の条件を付された債権は、本項第(1)号乃至第(4)号と同一の条件を付された債権とみなす。)を除く債権を有するすべての者をいう。

( 6 ) 劣後特約に反する支払の禁止
本社債に基づく元利金の支払請求権の効力が、本項第(1)号乃至第(4)号に従って発生していないにもかかわらず、その元利金の全部または一部が社債権者に対して支払われた場合に
は、その支払は無効とし、社債権者はその受領した元利金を直ちに当行に返還する。

( 7 ) 相殺禁止
当行について破産宣告決定がなされ、かつ破産手続が継続している場合、会社更生手続開始決定がなされ、かつ会社更生手続が継続している場合、民事再生手続開始決定がなされ、かつ簡易再生または同意再生の決定がなされることなく再生手続が継続している場合、または日本法によらない破産手続、会社更生手続、民事再生手続またはこれに準ずる手続が外国において行われている場合には、社債権者は、当行に対して負う債務と本社債に基づく元利金の支払請求権を相殺してはならない。

他の銀行も、劣後特約の内容は基本的に全く同じ。
北越銀行「120%コールオプション条項付第1 回無担保転換社債型新株予約権付社債(劣後特約付)の発行に関するお知らせ」
http://www.hokuetsubank.co.jp/new/040527.pdf
鳥取銀行「120%コールオプション条項付第1 回無担保転換社債型新株予約権付社債(劣後特約及び転換価額下方修正条項付)の発行に関するお知らせ」
http://www.tottoribank.co.jp/new/sinkabu.pdf
三重銀行「株式会社三重銀行120%コールオプション条項付第2回無担保転換社債型新株予約権付社債(劣後特約付)の発行に関するお知らせ」
http://www.miebank.co.jp/news/pdf/news239.pdf

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下限があるようで実は底なしの修正条項付転換社債の例

転換社債(CB)の条件の具体例として、銀行の例を見てみましょう。
昨年の10月から今年の9月までに日経新聞に公告が掲載された銀行の転換社債は6ケースで、その条件は、以下のようになってます。結構、ばらつきがあります。
image003.gif
東京都民銀行の例
まず、最初の東京都民銀行のケース。
(日経IRに掲載されている公告の実物
http://ir.nikkei.co.jp/data/pdf/20031223/03120188.pdf
東京都民銀行のプレスリリース
http://www.c-direct.ne.jp/japanese/uj/pdf/10108339/00019266.pdf
毎月、修正価格を変更するタイプで、修正方向は下方のみでなく上方にも動きます。
当初転換価額が1,926円で、

(中略)但し、かかる算出の結果、修正後転換価額が1,540.8円(以下「下限転換価額」という。但し、下記�若しくは�による修正又は下記�による調整を受ける。)を下回る場合には、修正後転換価額は下限転換価額とし、修正後転換価額が2,889.0円(以下「上限転換価額」という。但し、下記�による調整を受ける。)を上回る場合には、修正後転換価額は上限転換価額とする。

と、「下限」も80%に設定されているので、一見、「そんなに悪い条件のCBじゃないな」とも思っちゃうわけですが、問題はその次。

�による転換価額の修正とは別に、ある月の時価算定期間の株式会社東京証券取引所における当行普通株式の普通取引の毎日の終値(気配表示を含む)の平均値の95%に相当する金額(略)が、下限転換価額を初めて下回る場合には、翌月第3金曜日以降、そのとき有効な下限転換価額は、その80%に相当する金額(略)に修正される。

�による下限転換価額の修正がなされた翌月以降、ある月の時価算定期間の株式会社東京証券取引所における当行普通株式の普通取引の毎日の終値(気配表示を含む)の平均値の95%に相当する金額(略)が、下限転換価額を初めて下回る場合には、翌月第3金曜日以降、そのとき有効な修正後下限転換価額は、その80%に相当する金額(略)に修正される。

とあります。
ややこしいですが、要するに、「下限転換価額を下回ったら、下限転換価額は20%ずつ切り下げられていく」ってことです。
(「それって、『下限』や無いやん!」と、思わずツッコミを入れたくなりますが。)
この東京都民銀行さんの場合、転換価額は上方にも修正されますので、株価さえ戻せばなんとかはなります。
実際、チャートを見ると、3月から株価も回復してきて、大事には至ってません。
tokyo_tomin_bank.JPG
(出所:Yahoo!ファイナンスのチャートに磯崎が加筆。)
ただし、一度株価が下がり出すと、実質は「底なし」の恐怖が待ちかまえています。
一応、「下限」のところにクッションがあって、株価が下落しても一旦はそこで受け止められてもらえるわけですが、一度そのクッションを使う毎に、そのクッションが「ズズーッ」と20%ずつ下がっていくというルールなわけですね。
(本日はこれにて。次回は、劣後特約付の転換社債の例などを予定しております。)

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MSCBの研究(その3「転換価額修正の限度」編)

昨日に続いて、本日は転換価額修正の「限度」について。
下の図のように、転換価額修正条項がついている転換社債の発行事例全119件のうち、下限が無いもの(底なし)が6%程度。
最も多いのが「8割までは修正します」というパターン(36%)、次が「半分までは修正します」(21%)というパターンです。
image002.gif
一方、株価の変動により、転換価額が下方にのみ修正されるものか、上方にも下方にも修正されるのかについては、以下の通り。修正条項のついているもののうち3分の2は下方にのみ修正されるもの。下方だけでなく上方にも修正されるものは、修正条項のついているもののうち3分の1になります。
image004.gif
「死のスパイラル」
修正条項が下方のみへ修正される場合、株価の変動が激しいと、一度株価が下がって転換価額が下がってしまうと2度と上がらないわけです。ただし、冒頭の転換価額の下限が80%等に設定されていれば、いくら下がっても8割までということですし、昨日の修正の頻度で見たように、社債の償還期限までに1〜2回しか転換価額が修正されないような条件のものについては、この「ラチェット性」はたいして効きません。
しかし、昨日の修正の頻度が高い条件と組み合わさると、株価がいったん下落すると→転換価額下方修正→既存の株主の権利が希薄化→さらに株価が下がる→転換価額がさらに下落、という「死のスパイラル」に入ることになります。
(本日はこれにて。)

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MSCBの研究(その2「転換価額修正の頻度」編)

前回に引き続き、いろいろ物議を醸しているMSCB(Moving Strike Convertible Bond:転換価額修正条項付転換社債)について、です。
転換価額修正条項付転換社債とは、株式に転換する際の価額が、株価の変動によって修正されるタイプの転換社債のこと。
過去1年間(平成15年10月から16年9月まで)に日経新聞に掲載された転換社債の公告をすべて見て、その当初転換価額、修正条件、修正幅の上限・下限、等についてのデータを、先ほど一通りインプットし終えました。(ふぅ。)
転換価格の修正や繰り上げ償還、日程変更決議などを除き、1つの公告で2つ以上の条件の転換社債を発行している場合には、それを分けると、全部で202件。(社数でなく件数。まだデータの二重チェックをまったくやってないので、数え違い等がありましたら、ご容赦ください。)
転換価額の修正を行う頻度は?
本日はまず、「転換価額の修正を行う頻度」を見てみたいと思います。
データを頻度で集計してみたのが下記のグラフ。
image002.gif
全部集計してみると、転換価額修正条項がついていない転換社債は(まだ)4割程度あります。(前回は、証券コードの若い方しか集計してない段階で2割程度しかないと申し上げましたが、その後、重厚長大産業等を集計していくと、「伝統的な条件」の転換社債の比率はやっぱりそこそこあります。)
また、社債の転換可能期間内に1回〜2回しか転換価額を修正しないものを含めると、約3分の2は、それほど問題のある条件ではないかも知れません。またこれらの転換社債は、平均13日程度、短くても5日以上の取引日の終値を平均して転換価額を修正するかどうか判断しますので、不公正な価格形成(売り崩しや終値関与等)に対する耐性もそこそこあると考えられます。
レアな頻度の会社のケース
パターンとして最も多いのは「毎月変更」タイプですが、他にレアなパターンのものとしては、以下の会社のものがあります。
毎週変更するもの:
(株)ダヴィンチ・アドバイザーズ
コロムビアミュージックエンタテインメント(株)
毎四半期変更するもの:
(株)メディビック
半年ごとに変更するもの:
イーラックス(株)
1日ごとに変更になる会社は?
一番、むむ?というのが1日ごとに転換価額が変更になるもの。
以下のとおり、社数で11社、公告で17件あります。
(株)千年の杜(キーイングホーム(株))
(株)メディア・リンクス
オープンインタフェース(株)
(株)ラック
(株)アイ・シー・エフ
(株)プライムシステム
(株)コモンウェルス・エンターテインメント
(株)T・ZONEホールディングス
(株)キムラタン
(株)インボイス
(株)バーテックス リンク
(「カタカナ」の会社しかありませんね。)
この中でも、「★」をつけたラック、アイ・シー・エフ、コモンウェルス・エンターテインメント、インボイスの4社は、下方だけでなく上方にも修正されるタイプですが、その他のものは、下方にのみ修正される(一度下がったら二度と上がらない)タイプ。
コモンウェルス・エンターテインメントは、上限・下限が設定されていません。(底なし、青天井・・・・。)
また、上記4社のうち、コモンウェルス・エンターテインメント以外の3社は、Merrill Lynchが引き受けてます。
インボイスは、上にも下にも転換価格が修正されますが、毎日転換価額が変更されるほか、前日1日のみの価格で転換価額が修正されるということで、(分割の比率だけでなく、ここでも)最も変わった条件の転換社債になっていると言えるかと思います。
(本日は、これにて。)

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ファンド運営と投資顧問業規制

証取法改正でファンドビジネスの危機は来るか?(速報)に、tobyさんよりコメントいただきました。

今回の政令案を見る限り、やはりPEやVC等の投資事業有限責任組合契約に基づくファンドも、認可投資顧問業とみなされることが確実な様に見受けられますが、ここでよく分かりにくいのが、ファンド(組合)自体が業者となるのか、GP会社が業者となるかです。
何故かと申しますと、今般案の中にある「有価証券に係る投資顧問業の規制に関する法律施行規則」改正案の27条の利害関係人ところで、「ヘ 投資事業有限責任組合の業務執行組合員」となっており、であれば、業者は組合自体なのか?と読めてしまうことです。ただ、ファンド自体を業者にすることは、法24条2の「株式会社であること」に反していますし、実務的にファンドを立ち上げる度に認可をとるのも大変かなとも思えますし・・・。
GPが業者となるのであれば、一部の著名なファンドGPでも、資本金が足りないところも見受けられるので、増資されるのですかね?それよりも、認可投資顧問業者が一気に増加しますね。

ここは非常におもしろい論点ですよね。
今回の証券取引法改正で直接に関わってくるところは、ファンドの持分自体が「証券」として扱われることになるところですが、(それとは別に)、証取法改正で「シリコンバレー的ファンド」等の運営に影響が出るか?でも書かせていただいたとおり、組合が「投資一任」の投資顧問業法の潜脱行為じゃないかという議論も、それと平行して存在する、ということですが、

経産省の解釈では、有責組合法に基づいたファンドであれば、投資一任契約に係る業務にあたらない、となっていました。(http://www.meti.go.jp/policy/sangyou_kinyuu/toiawase.htm
内容的には以前掲載されていた、旬刊商事法務の記事にあるFSA見解と同じ感じですが、日証協で6月14日に行われた同省説明会における内容(http://www.jsda.or.jp/html/gyouhou/0407/0105.pdf
を併せて読むと、契約書に投資方針を定め、投資委員会にて一定の監督を行い、運用結果の報告を行う(有責組合法通りの運用と思いますが)であれば、やはり対象外であるとも解釈できます。

ちょっと長いですが、いただいたURLを引用させていただきますと、

http://www.meti.go.jp/policy/sangyou_kinyuu/toiawase.htm
� 有責組合の組合契約は、投資顧問業法の投資一任契約に該当しますか。
有責組合は、法律上、組合員の共有に属する組合財産を、組合員の協同の事業として運用する組合であると規定されており、実務上も無限責任組合員とその他の有限責任組合員が共同で事業を行っていることが一般的です。
このような無限責任組合員の行為は、一般論としては、投資顧問業法が規制する投資一任契約に係る業務にはあたらないものと考えられます。
但し、有責組合の形で組合契約を締結していたとしても、無限責任組合員の業務が実態として投資一任業務を行っている場合は、当該無限責任組合員は投資顧問業法の規制に服するべきものであると考えられます。
個別のケースにおいて、組合契約が投資一任契約に該当するかにつきましては、担当省庁である金融庁にお問い合わせ下さい。
(経済産業政策局産業組織課)

http://www.jsda.or.jp/html/gyouhou/0407/0105.pdf
投資事業有限責任組合法(ファンド法)に関する説明会
経済産業省経済産業政策局産業組織課課長補佐篠原倫太郎
日本証券業協会 平16.6.14
その他の論点について
まず、有限責任組合を組成するにあたり、投資顧問業法の認可が必要なのかという話
が出てまいりました。これは、いわゆる投資一任契約に当たるのではないかということ
ですが、要は出資をする有限責任組合員がお金を預けっぱなしで、無限責任組合員が有
価証券の価値を分析して投資をしていくということになると、投資一任契約とどこが違
うのかということになってくるわけです。従来はどうなっていたかということですが、
従来は民法組合の特別法ですから民法組合も一緒ですが、組合というのは、お金や労務
を出資し合って共同で事業をする集まりです。共同で事業をする集まりであって、業務
執行者も出資もするし事業もするということになり、そうすると、これは共同で事業を
することだから一任ということはないということになり、投資一任契約には当たらない
という形式的な論理の組み立てをしていたわけです。
ところが、今般は投資クラブといった形を装った悪質業者が出てきており、有責組合
が悪用される懸念が高まってきています。そこで、従来どおりの通常のファンド運営の
ように、契約書で投資方針をみんなで一緒に決め、投資委員会のようなものを設置し、
同委員会で一定の監視監督も行い、運用結果をきちんとフィードバックして今後どうし
ていくかという話し合いをするという健全な共同事業をしているものであれば、当然投
資顧問業は関係なしでいいのですが、実態に着目して、「100万円を預ければ増やして
きてあげるから、あとはもう何もしなくていいですよ。」という、実態は投資一任契約
のものを組合という名前をつけて契約書をつくったということになると、それはやはり
実態を見て投資一任契約になり、その場合には認可が必要になるというのが今の解釈と
なっています。

・・・とのことです。
以上のように、組合というのは、そもそも「みんなでいっしょに何かやろうぜ」というvehicleですが、実際のVCさんの運営等では、限りなく「一任」に近い形で運営が行われていて、契約書も限りなく業務執行組合員または無限責任組合員に権限を一任する形になっているものがほとんどではないかと思います。
以前も申し上げましたが、ベンチャー投資の判断には、M&A等、非常に高い守秘性を要求されるディールがよくありますし、そういったものを事前に(特に多数の組合員がいる場合)いちいち事前に相談して決定するなんて実務が行われるわけはないわけで。
上記の経済産業省の方のご説明も、(当然、実態はよく把握されてらっしゃりながら)「あくまで、タテマエとしては、『みんなで決めてます』ということにしといてくださいね。」ということかと思います。
こうしたファンドビジネスが過度に規制されることになると、産業再生やベンチャー振興といった経済にプラスになるアクションが萎縮してしまうわけで、経済産業省さんはそこのところが非常によくわかってらっしゃって、従来からも、有責組合法の制定や改正、商法改正などにも、多大な貢献をされてきているわけですが、
一方で、そのへんを緩くしていくと、悪徳業者が投資顧問業法の規制の潜脱行為としてそういったスキームをとってしまう。
結局、行政(経済産業省)の思いは「健全なものはOK、悪質なものはダメ」ということなわけですが、「健全」かどうかを、法律上明確に定義することは非常に難しい。
数年前、日本のファンドビジネスの草分け的大御所の弁護士先生にご相談をしたときも、「今後、ファンドが小口化していったときに、悪徳業者と健全な業者をどう区分するのか、というのが一番の問題」とおっしゃってました。
「みんな投資顧問業者になっちゃえばいいじゃん」と思われるかも知れませんが、米国で(実質的に)運用されているヘッジファンドのvehicleがオフショアに設立されていることを考えると、やはり、行政による「立入検査権」などが認められてしまうと、資金というのは萎縮しちゃうもんではないかという気もします。
(実際、金融庁の検査官が来て、何週間も書類をひっくりかえされたりしたら、数人でやっているファンドは、ほとんど仕事にならなくなっちゃうはず。)
(以前のエントリー「ヘッジファンド規制と日本のオルタナティブ投資」参照。)
監督官庁の「運用」にもよるわけですが、そういう規制のための書類作成コストや検査対応コストというのは、取り出してみると結構馬鹿にならない金額になりますし、小型のファンドだと特に、ファンドの収益性にも大きく影響してくる可能性があります。
一方で、悪徳業者取り締まりの観点からは、そうした業者を罰せられる法的根拠や公平性を確保しておく必要もあるんですよね。・・・・難しいですね。
(ではまた。)

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Googleのビッグブラザー性

「Googleは電気羊の夢を見るか?」にY松さんよりコメントいただきました。

昔、IBMのDeepBlueというチェス専用のコンピューターがありましたが、その時も同じような感想をもちました。
(DeepBlueは力技で計算しまくるので、『脳』にはなりえないですが。。。)

・・・ということで、掲げられているURLを拝見いたしました。
http://www.venturenow.tv/founder/yoshimatsu/yoshimatsu_011.html

 DeepBlueがカスパロフ氏を破ったニュースをいまでも鮮明に覚えています。その中でも非常に印象深かったのが第3戦です。
 ある局面で、カスパロフ氏は危機に立っていました。カスパロフ氏もその場にいたすべての人・IBMの開発の人間も、次にDeepbBlueが打つ一手で勝負が決されると思っていたその時、DeepBlueは長考を始め、だれもが想像だにしなかった一手を打ちました。
 結局その試合は「引き分け」になり、勝てるハズだった試合をDeepBlueは取りこぼしたのです。
 IBMもロジックにミスがある可能性を否定できずに、試合後、何億何十億とあるログを数ヶ月にわたって解析した結果、たった一手あの局面でカスパロフ氏が逆転できる可能性があることが分かりました。その瞬間、Deepblueが正しかったことが証明されたのです。
 私が衝撃をうけるのには十分でした。
 なぜなら人が判断したことをコンピューターが否定し、それが正しかったことが証明されたわけですから。
 今回は数ヶ月のログ解析でDeepBlueのロジックを確認することができましたが、これがログ解析に1年・10年・100年かかるようになった場合、正しいか正しくなかったか判断する術がありません。
 近い将来コンピューターの言っていることを正しいか正しくないかではなく、信じるか、信じないかでしかなくなってくる可能性がここにあります。

このエピソードは存じませんでしたが、非常におもしろいですね。
コンピュータが正しいことを言ってるにもかかわらず、人間がその正しさを理解できずに間違った選択をしちゃう、というのは、ある意味「健全」なのかな、という気もします。
人類の歴史は大昔から、「頭のいい人には正しい答えが解ってるのに、アホな人々が数にものを言わせて間違った答えを選択しちゃう」ことの繰り返しだったかと思います。つまり、そういう間違いは、ある意味、まだ「かわいい」。
人間の歴史における大間違いはむしろ、みんなが「〜の言うことだから」と何かを頭から信じてしまうことで発生したことのほうが多いかと思います。
コンピュータについては、80年代くらいまでは、「うちの会社はコンピュータでこれを計算してますので間違い有りません」みたいなセールストークが散見されましたが、パソコンが普及してコンピュータが実はそんな大層なもんじゃないということが一般大衆にも解ってきたせいか、最近、あんまりそういうトークは耳にしませんね。
そんな中で、検索エンジンは、この「盲信」パターンにハマる可能性が非常に高いものの一つではないかと思います。つまり、検索エンジンはその性質上、アルゴリズムは公開されない(公開したら、検索表示順を上げるための対策によって表示順が(今よりさらに)歪められる)ので、「ブラックボックス」であり続けるはずだし、人々は、その「ビッグブラザー」が表示した一番上あたりのリンクをあまり深く考えずにクリックしちゃうわけで。
特にGoogleという企業は、「選民意識が強い集団」になっていくような気がしますので要注意ですが、幸か不幸かGoogleも株式公開したので、公開会社としてのコーポレートガバナンスの仕組みが機能するのだと信じれば、あまりあからさまに「検索結果を操作して、愚衆を正しい方向に導いてやるのじゃ」みたいなことにはならないような気もします。
ただし、検索エンジンは「人間の持つすべての知を操作する道具」であり、これは非常に大変なことなはずなので、必ずや、人間がアルゴリズムを作るだけでなく「コンピュータ自体にアルゴリズムを最適化させよう」ということになっていくはず。そういった「コンピュータが自分でアルゴリズムを最適化する(つまり膨大な量の擬似的な「思考」を始める)」未来に、人間(の取締役会)が、その「ビッグブラザー」の中身を理解して、これをgovernできるんでしょうか、ということですが。
それを考えると夜も眠れませんね。
(ではまた。)

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MSCB(転換価額修正条項付転換社債)の研究

いろいろ物議を醸しているMSCB(Moving Strike Convertible Bond)の実態に非常に興味があったので、現在、分析中です。
MSCB.jpg
過去1年間(平成15年10月から16年9月まで)に日経新聞に掲載された転換社債の公告をすべて見て、その当初転換価額、修正条件、修正幅の上限・下限、等について分析中。
(公告の
以前、同様の(体力勝負型)分析をした株式分割の統計が、(ごく一部の)専門家の方に大好評を博しましたので、調子に乗ってやりはじめては見たものの・・・さすがに単なる分割とは違って、条件がいろいろ複雑なので、非常に時間がかかります・・・。
とりあえず、本日のところは途中経過の感触まで、ということで、詳細は後日また。
・1年間の転換社債の発行の公告は210件程度。(ワラント債タイプは皆無の模様。)
 今のところ55件くらいまで分析終了。
・(意外なことに)今や、何の転換価額修正条項も付いていない転換社債の方がめずらしい。(全体の2割程度)
・ただし、修正の条件は、「お上品」なものから「なんじゃこりゃ」というまで多種多様。
・全体の3割は上方・下方どちらにも動くタイプ。ただし、やはり3割くらいは、下方修正条項しかついていない。(一度下がったら上がらない。)
・期間中、1回とか2回だけ修正するという「お上品」なものもポツポツあるが、主流は、「毎月」転換価額が修正されるパターンのもの。
・三菱自動車の優先株は、修正にBloombergの「売買高加重平均価格」の平均値をとってましたが、転換社債では今のところ「終値」の平均値を使うものしか見てません。終値関与的なアタックに対しては、どうなんでしょうか。
・たいていは5日以上の終値の平均値をベースに修正するパターンなのですが、3日というのも結構あります。中には前日の終値のみで修正というものも・・・。(あんぐり。)
・下限価格が無いものもあります。(!)
ちなみに、Googleなどで「Moving Strike Convertible Bond」を検索してみると、日本語のページしか引っかからないので、これは、和製ファイナンス用語なんでしょうね。
(今後の予定)
とりあえず、現状発行されている条件のパターンを統計化し、ゆくゆくは、それらの条件毎にオプションの理論的価値がどれくらい違うのか、というのを分析してみたいところですが。
(本日は、これにて。)

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量子コンピュータは通信を中世の暗黒時代に引き戻すか?

量子暗号はビジネスになるか?に対して、「ma」さんからコメントいただきました。

量子コンピュータが実用化されて公開鍵暗号が役立たずになるのは最短だと8年以内とも言われています。当然インフラを大幅に変える必要が出てくるでしょう。

「インフラは変わらないんではないか?」というのが「量子コンピュータとは何か?」 に書かせていただいたことです。
詳細は、そちらのエントリーをお読みいただければと思いますが、かいつまんで申し上げると、量子コンピュータというのは「超高速なコンピュータ」ではなく、(素因数分解の困難性をもとにしたものなど)特定の暗号のみが高速で解読できるようになるだけで、そのまま使える暗号もたくさんある、という理由からです。

また「盗聴されてる限り、いつまでも通信できない」のはセキュアな通信路としてある意味当然だと思います。「盗聴されてる限り『安全に』通信することは出来ない」と言い換えると、これはどんな方式にも成り立ちます。そして安全性が必須であれば「安全に通信できない」と「通信できない」は価値として同等です。検出できるという点で量子暗号は優れています。

お気付きでない方も多いのですが、今も、インターネットは「盗聴されているのと同じ状態」にあります。
つまり、インターネットで通信すると、こちらのコンピュータから通信相手のコンピュータまでは、多数の(どこの馬の骨とも知れない)プロバイダ等が通信を中継しているわけです。もちろん、送信されるパケットの中身は、そうした民間の一企業の担当者(茶髪だったりアニメオタクだったり背広着てたり)がメンテナンスのためにモニターしているかも知れません。(つまり、そんなことを検出できたところでしょうがない。)
「セキュアでない」ところが成功の要因
インターネットはこのように、セキュアかどうかという観点からは非常に「クオリティの低い」通信網ですが、そこがいいところ!です。セキュア度は低くても、その上で、VPNやSSLといった工夫が競争して、低コストな価格でセキュアな通信ができるようになったからこそ、電子商取引等の商業活動も行われるようになって、ビジネスとして大成功した、ということではないかと思います。
電話会社だけが通信を中継する旧来の電話網とインターネットの最大の違いは、このように「どこの馬の骨ともわからない」者でも参入でき、強い競争原理が働くようになったことです。
また、通信というのは、相手も同じ通信方式を採っていないと通信ができないので、自分が何を希望するかではなく、他の人たちがどう考えているかが重要です。つまり、「ネットワーク外部性」によって、シェアを獲得した方式がますます有利になるというポジティブフィードバックが働きます。
電話会社も、ちょっと前まではATM(銀行にある機械のことじゃなくて、Asynchronous Transfer Mode)で電話網を構築し直そうなんてことを考えてましたが、インターネットの普及でルータ等の性能が(そうした独自の方式に比べて)進歩し、コストも劇的に安くなったため、ついに全面的にIP網で電話網を構築する方針に転換せざるを得ませんでした。
(いわんや、量子暗号のネットワークなんて・・・ねえ。)
セキュリティを確保するために通信網自体を再構築するというのは、「大統領の護衛のために犯罪者が近づけない大統領専用道路を建設する」、というのに似てると思います。莫大なコストがかかる割には、行けるところが限られるので意味がない。
普通は、大統領とはいえ通常の道路を使ってもらい、大統領が通るときだけ警備を強化するとか、窓を防弾ガラスにするとか、護衛の乗った車で前後を固めるとかを考えるのが、まともな考え方というものではないかと思います。
もし本当に、量子コンピュータが登場し、そうした高価な光通信網を構築しないと電子商取引もできなければ企業秘密を書いた暗号化メールも解読され放題という事態になったら、(無線や銅線も使えないわけですから)、ユビキタス社会はおろか、電子商取引もできない「中世の暗黒時代」(1990年中盤以前)への逆戻り、ということになるはずですが・・・。
・・・そんなことにはならないと思います。

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