MSCBの研究(その2「転換価額修正の頻度」編)

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前回に引き続き、いろいろ物議を醸しているMSCB(Moving Strike Convertible Bond:転換価額修正条項付転換社債)について、です。
転換価額修正条項付転換社債とは、株式に転換する際の価額が、株価の変動によって修正されるタイプの転換社債のこと。
過去1年間(平成15年10月から16年9月まで)に日経新聞に掲載された転換社債の公告をすべて見て、その当初転換価額、修正条件、修正幅の上限・下限、等についてのデータを、先ほど一通りインプットし終えました。(ふぅ。)
転換価格の修正や繰り上げ償還、日程変更決議などを除き、1つの公告で2つ以上の条件の転換社債を発行している場合には、それを分けると、全部で202件。(社数でなく件数。まだデータの二重チェックをまったくやってないので、数え違い等がありましたら、ご容赦ください。)
転換価額の修正を行う頻度は?
本日はまず、「転換価額の修正を行う頻度」を見てみたいと思います。
データを頻度で集計してみたのが下記のグラフ。
image002.gif
全部集計してみると、転換価額修正条項がついていない転換社債は(まだ)4割程度あります。(前回は、証券コードの若い方しか集計してない段階で2割程度しかないと申し上げましたが、その後、重厚長大産業等を集計していくと、「伝統的な条件」の転換社債の比率はやっぱりそこそこあります。)
また、社債の転換可能期間内に1回〜2回しか転換価額を修正しないものを含めると、約3分の2は、それほど問題のある条件ではないかも知れません。またこれらの転換社債は、平均13日程度、短くても5日以上の取引日の終値を平均して転換価額を修正するかどうか判断しますので、不公正な価格形成(売り崩しや終値関与等)に対する耐性もそこそこあると考えられます。
レアな頻度の会社のケース
パターンとして最も多いのは「毎月変更」タイプですが、他にレアなパターンのものとしては、以下の会社のものがあります。
毎週変更するもの:
(株)ダヴィンチ・アドバイザーズ
コロムビアミュージックエンタテインメント(株)
毎四半期変更するもの:
(株)メディビック
半年ごとに変更するもの:
イーラックス(株)
1日ごとに変更になる会社は?
一番、むむ?というのが1日ごとに転換価額が変更になるもの。
以下のとおり、社数で11社、公告で17件あります。
(株)千年の杜(キーイングホーム(株))
(株)メディア・リンクス
オープンインタフェース(株)
(株)ラック
(株)アイ・シー・エフ
(株)プライムシステム
(株)コモンウェルス・エンターテインメント
(株)T・ZONEホールディングス
(株)キムラタン
(株)インボイス
(株)バーテックス リンク
(「カタカナ」の会社しかありませんね。)
この中でも、「★」をつけたラック、アイ・シー・エフ、コモンウェルス・エンターテインメント、インボイスの4社は、下方だけでなく上方にも修正されるタイプですが、その他のものは、下方にのみ修正される(一度下がったら二度と上がらない)タイプ。
コモンウェルス・エンターテインメントは、上限・下限が設定されていません。(底なし、青天井・・・・。)
また、上記4社のうち、コモンウェルス・エンターテインメント以外の3社は、Merrill Lynchが引き受けてます。
インボイスは、上にも下にも転換価格が修正されますが、毎日転換価額が変更されるほか、前日1日のみの価格で転換価額が修正されるということで、(分割の比率だけでなく、ここでも)最も変わった条件の転換社債になっていると言えるかと思います。
(本日は、これにて。)

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4 thoughts on “MSCBの研究(その2「転換価額修正の頻度」編)

  1. お疲れ様でした。こうした力仕事をやっていただいて恐縮です。1日毎に転換価額が変更になる条件のところは、やはり財務的に厳しい企業が多いようですね。引受証券会社もそうした企業を狙った営業をしているのでしょうね。また続編を期待しております!