証取法改正で「シリコンバレー的ファンド」等の運営に影響が出るか?

証券取引法が改正され、銀行等に証券仲介業が解禁されるなど規制緩和的動きがある一方で、今まで規制のなかった「証券取引類似」のサービスに対する規制の強化も進みます。
「ファンド」と名の付く投資組合、コンテンツファンド、持株組合等を運営される方は要注意かと思います。
証取法改正の内容
具体的には、証券取引法第二条�3号および4号で、投資事業有限責任組合、民法組合、匿名組合、またはこれに類似する外国法によるファンドについては、今年の12月1日より証券取引法の規制を受けることになります。

証券取引法第二条第二項
三 投資事業有限責任組合契約(投資事業有限責任組合契約に関する法律(平成十年法律第九十号)第三条第一項に規定する投資事業有限責任組合契約をいい、商品投資に係る事業の規制に関する法律(平成三年法律第六十六号)第二条第二項第二号の契約のうち政令で定めるものに該当するものを除く。以下この号及び次号において同じ。)に基づく権利又は組合契約(民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百六十七条第一項に規定する組合契約をいう。)若しくは匿名組合契約(商法(明治三十二年法律第四十八号)第五百三十五条に規定する匿名組合契約をいう。)であつて投資事業有限責任組合契約に類するものとして政令で定めるものに基づく権利
四 外国の法令に基づく契約であつて、投資事業有限責任組合契約に類するものに基づく権利

以前のエントリー「投資サービスと規制」で、神田秀樹 東京大学教授の「投資サービス法の整備を 横断的ルール必要」という論文をご紹介したとおり、今後も、投資類似サービスについては規制強化の方向です。
旬刊商事法務2004.7.15号の記事「証券取引法等の一部改正の概要」(金融庁総務企画局市場課、田原泰雅氏、端本秀夫氏、谷口義幸氏、吉田修氏)によると、

この投資家保護範囲の拡大に係る規定については本年十二月一日施行されるが、この措置により、株式・社債・金銭債権・匿名組合出資持分・信託受益権・工業所有権、著作権等に投資を行う組合については、証券取引法上のディスクロージャー規制や不公正取引規制の対象となる(以下略)

とのこと。
「ベンチャーキャピタル業界等がファンドへの投資を証取法上の有価証券とすることが規制強化であるとして反対してきた」(上述、神田教授の論文)というようなことを配慮してか、

ディスクロージャーについては経過措置を置くこととし、施行日である十二月一日前に勧誘を開始した組合については、当面、ディスクロージャー規制は適用されず、平成十八年六月一日に出資者が五百人以上である場合、有価証券報告書を提出することとされる。

とありますので、有価証券報告書を作るというシンドイ作業は当面行わなくていいようです。
投資顧問業との関連
一方で、(証券取引法そものもではなく)投資顧問業との関連において、同記事では、

ファンドについては、有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律の適用の有無が問題とされることが多い。投資事業有限責任組合は、法律上、組合員の共有に属する組合財産を、組合員の共同の事業として運用する組合であると規定されており、実務上も、組合の業務を執行する無限責任組合員とその他の有限責任組合員との間で話合いを行いながら投資判断をしていることが一般的であるとのことである。このように、話し合いによって投資対象を選定するなど、他人から投資判断を一任されているとは言えない場合については、証券投資顧問業には当たらないと考えられる。一方で、組合型ファンドの形態を取っていても、他人から投資判断について一任され、その投資判断に基づいて当該他人のために投資を行っている営業の実態があれば、証券投資顧問業にあたると考えられる。

と述べています。
組合というのは、そもそもは「みんなで話し合って決める」という趣旨のvehicleですし、記事中で「その他の有限責任組合員との間で話合いを行いながら投資判断をしていることが一般的であるとのことである」とはおっしゃってますが、実際にベンチャーファンド等の組合契約においては、無限責任組合員または業務執行組合員(以下「GP」)に一任されるような構成になっていることが多いのではないかと思います。
なぜかというと、ベンチャーへの投資とかM&Aは、極めて守秘性が高くまた迅速に投資の意志決定を行わないといけないため、いちいち組合員と相談しながら投資や売却の意志決定を行うということは不可能に近いため、で。
上場しているベンチャーキャピタルや金融機関系のファンド会社などは、コンプラ体制や開示の体制もそれなりにしっかりしてますので、(ぶつぶつ言いながらも)投資顧問業者になってしまえばいいだけの話ではないかと思いますが・・・。
「シリコンバレー的な」ファンドへの影響
問題は、10億円前後またはそれ以下の「プチファンド」や、個人がGPをつとめるような「シリコンバレー的な」ファンド、または、株式の保有を行う目的で設立された持株組合的なファンドなどが、従来型の運用を続けられるのか?という点。
有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律(投資顧問業法)では、投資一任業務を行う投資顧問業者は、

第二十四条(認可)
 投資顧問業者は、投資一任契約に係る業務を行おうとするときは、その行おうとする業務の内容及び方法を定めて、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。

ということで認可業種になってしまいます。(「認可」というのは「免許」よりはゆるいが「登録」よりさらに厳しい、というイメージです。証券業は一般には「登録」でOKですが、元引受けを行う場合などは「認可」になります。)
また、

2  前項の認可を受けようとする者は、株式会社(外国の法令に準拠して設立された株式会社と同種類の法人で国内に営業所を有するものを含む。第二十七条第二項において「株式会社等」という。)でなければならない。

ということで、GPは個人ではなく株式会社でないといけないということになります。
株式会社がGPになること自体はいいとして、キャピタルゲインがどーんと出た場合の個人GPのインセンティブ部分についての課税をどう最適化するか、というのがちょっと難しくなるかも知れません。
(個人がGPなら公開した法人のキャピタルゲインに10%しか課税されないところが、株式会社だと法人税で40%持って行かれるところをどうするか。日本版LLCがまだ使えないですし、日本版LLCが投資顧問業者になれるのかどうかもよくわかりませんし。
海外にLLCを作った場合にも、「国内に営業所を有するもの」ということで税務上「PE」になりますので、源泉税関係をどう処理するか等、いろいろ考えないといけません。)
さらに、認可にあたっては、

(認可の基準)
第二十七条  内閣総理大臣は、第二十四条第一項の認可をしようとするときは、次に掲げる基準に適合するかどうかを審査しなければならない。
一  認可申請者がその営もうとする業務を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有し、かつ、その者の当該業務の収支の見込みが良好なものであること。
二  認可申請者が、その人的構成に照らして、その営もうとする業務を公正かつ的確に遂行することができる知識及び経験を有し、かつ、十分な社会的信用を有するものであること。

というあたりを見られるわけですが、具体的には、

第二十七条の三  内閣総理大臣は、申請が法第二十七条第一項第一号 の基準に該当するかどうかを審査するに当たつては、次に掲げる要件を満たすかどうかを審査しなければならない。
一  資本の額(外国の法令に準拠して設立された法人にあつては、その本邦支店の持込資本金(資本に対応する資産のうち国内に持ち込むものをいう。)の額とする。)が五千万円以上であること。
二  認可申請時の収支見込みに基づく純資産額が、収支見込み対象期間(認可を受けた日の属する営業年度及びその翌営業年度から起算して三営業年度をいう。次号において同じ。)において五千万円を下回らない水準に維持されていること。
三  投資一任契約に係る業務に係る営業の収支見込みが、収支見込み対象期間内に黒字になると見込まれること。

というように、資本金五千万円以上などのハードルが課されることになります。
さらに、投資顧問業者には、取締役の兼職の制限(法30条)、兼業の制限(31条)、金融庁への営業報告書の提出(35条)など、様々な規制がガチガチにかけられることになり、「シリコンバレー的な」のびのびした運営ができるのかというとビミョーかも知れませんね。
適用除外で「抜け道」があるのかも知れませんが、基本的に「やる気はあって優秀な(だけど金や実績はまだあまりない)GP」と「詐欺的商法を企てているGP」を見分ける法律上のフィルターを作るのが非常に難しいのではないかと思うので、現在「抜け道」があったにしても、いずれにせよ長期的には一律に規制が強化される可能性が高いのではないかと思います。
結局、日本ではシリコンバレーのように個人のGPがイケてる企業に投資する世界にはならず、金融機関系のベンチャーキャピタル等のみが投資を行う資本主義のイメージになっちゃうということでしょうか?
(追記7/21, 12:08)
金融庁総務企画局市場課さんに電話で伺ったところ、
「証券取引法第二条第二項三号の政令については現在策定中であって、秋口にパブリックコメントを募集し、12月1日の施行までに間に合うようにする予定。どういう内容の政令になるかは、パブリックコメントを求めるまでは何とも申し上げられない。」
というご回答をいただきました。
うーん。このパブリックコメントと決定される政令の内容いかんで、日本のベンチャー投資、その他のオルタナティブ投資の方向が大きく変わっちゃうかも知れませんね。(ご注目あれ。)
(本件は、引き続き折に触れて継続検討していきたいと思います。)
参考URL:
有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S61/S61HO074.html
有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律施行令
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S61/S61SE333.html
有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律施行規則
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S61/S61F03401000054.html
金融庁事務ガイドライン等−投資一任契約に係る業務
http://www.fsa.go.jp/guide/guidej/syouken/s3_004.html

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日経金融の記事に物申す−「三菱基準でUFJの自己資本比率が4%」??

本日の日経金融新聞の1面記事に、「衝撃三菱基準——財務、自己資本4.0%にも(メガ統合UFJ・三菱東京)」てな記事があったので、ギョッとして読んでみましたが。

 税効果資本は、不良債権処理などで生じる税金の過払い分を、将来戻ってくるものと見なして計上する制度。だが、過大計上は、りそな銀行や足利銀行が国有化されるきっかけになったこともあり、大手銀は中核的自己資本に対する比率の引き下げを進めてきた。

このへんはその通りかと思いますが、

 先行したのは三菱東京で、三月末の比率は一七%。計上額は約六千五百億円で、上限である「今後五年間で見込める課税所得」を大幅に下回る。

と、このあたりで、この記事を書かれた記者の方の繰延税金資産に対する理解がちゃんとしてらっしゃるのかどうか、ちょっと不安になってきます。
繰延税金資産の上限が「今後五年間で見込める課税所得」だったら大変ですね。繰延税金資産は平たく言うと将来の「節税額」なわけですから、「実効税率(40%+α程度)」をかけないと。
もっと言えば、繰延税金資産は「今後五年間(以内)に見込める一時差異の解消見込額に税率をかけたもの」です。いくら課税所得が潤沢にあろうが、(例えば)「会計上は貸し倒れとして損失計上したけど、5年以内に税務上の貸し倒れになる見込みがないようなもの」は、繰延税金資産に計上することはできません。

ところがUFJは六四・二%と、五〇%を大きく超えている。仮に三菱東京と同じ一七%に引き下げるとすると、約一兆四千億円ある税効果資本を中核的自己資本から約一・二兆円も取り崩さなければならない。
 中核的自己資本が減ると非中核自己資本も同額減らさなければならず、二・四兆円が自己資本から消える。UFJの自己資本比率は、九・二%から、国内銀行の基準である四・〇%ちょうどまで落ちこむ。

「仮に」と言えば何を言ってもいいのかも知れませんが、「三菱東京と同じ一七%に引き下げ」ることに何の意味があるのでしょうか?
税効果会計では、明確な基準に基づき、

法人税等については、一時差異に係る税金の額を適切な会計期間に配分し、計上しなければならない。(税効果会計に係る会計基準 第二、一、1)

のであって、企業側の「こんな比率にしたいなー」という勝手な願望によって、計上する額を上げたり下げたりしてはいけないわけです。
つまり、合理的に考えて不良債権処理などで生じる税金の過払い分が将来「回収される」と考えられるのであれば、計上しなければならないし、回収できると考えられないのであれば、計上してはいけないわけです。
金融庁の金融検査マニュアルに「自己資本比率に対する繰延税金資産の比率は極力低くするように」とでも書いてあるのかと思いましたが、金融検査マニュアル(預金等受入金融機関に係る検査マニュアル:平成16年2月)でも金融持株会社に係る検査マニュアル(平成15年7月)においても、(当然といえば当然ではありますが)、

資本勘定に算入される税効果相当額(=繰延税金資産見合い額)は日本公認会計士協会が公表している「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(監査委員会報告第66号)等、税効果会計に関する会計基準・実務指針の趣旨を踏まえ適正に計上されているかを検証する。

と、日本公認会計士協会の一般的な繰延税金資産の回収可能性の基準をreferこそすれ、「低ければ低いほどエラい」なんてことは書かれてません。
また、そもそも記事のタイトルだけ見ると「三菱基準」なるものが存在するかのように読めますが、記事をよく読むと、単に三菱東京の自己資本比率に対する繰延税金資産の比率がそうなっているというだけの話で「基準」でもなんでもないですね。
さらに、この記事はUFJと三菱東京の「メガ統合」という文脈で書かれているわけですから、みなさん「統合して、せっかくの三菱東京の健全な財務構造がどうなっちゃうのかなー?」という疑問を持ちながら読んでいるわけです。が、記事を何気なく読んでいくと、
「BIS基準の自己資本比率が、三菱東京13%弱に対して、統合して三菱東京の”基準”に合わたUFJが4%になっちゃうと、両方合わせて8%切るか切らないかギリギリになっちゃうんじゃ??」
というようなあらぬ誤解を生みかねません。
実際には全く逆ですね。UFJと三菱東京が統合すると、三菱東京の安定的な収益のおかげで、UFJの繰延税金資産の回収の可能性も高まる可能性が高いわけですし、特にUFJの税務上の繰越欠損金は適格合併等の場合には引き継がれ、その部分に係わる繰延税金資産は旧東京三菱事業の利益と相殺して消せる可能性が高いわけです。
この記事はその点からも非常にミスリーディングではないでしょうか。
(追記:7/20, 20:07)
繰越欠損金の部分に関する表記に一部不適切な部分がありましたので、表現を修正させていただきました。
この部分は、統合の具体的なスキーム(合併を使うのか、他の手か。適格合併等の要件を満たすか。ホールディングス同士の合併か、銀行も合併するのか、存続会社がどちらになるか、等)にもよりますので、より詳細がわかりましたら、また。
(ではまた。)
参考URL:
UFJ銀行の繰延税金資産と政府のノリツッコミ
http://www.tez.com/blog/archives/000095.html

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日本で一番シリコンバレーっぽい場所は?

シリコンバレー。いいですねぇ。空気はさらっとしてるし、天気もいいし。
ああいうところで働いてると人間自ずとポジティブにもなるし、新しい発想も出てこようというもんです。できるならシリコンバレーのような場所で働きたいもんですが、なかなかそうもいかないとすると、日本で一番シリコンバレーっぽい場所はどこか、ということになるわけですが。
私は、横浜(西区以南)から横須賀あたりまでの臨海部がソレではないか、と勝手に思っとります。
・ 東京方面から海沿いに高速道路(高速湾岸線、101)を来ると、左に海を見ながら、途中で空港(羽田、サンフランシスコ)もあるし。湾岸線は、首都高にしてはめずらしく片側3車線もあります。
・ 横浜には中華街もあるし。
・ (日本にしては)気候もさらっとしてるし、空も青い。
森永卓郎氏が、「失業率が高いのに自殺率が少ない」というのを表す「ラテン度指数」というのを出しるんですが。神奈川県は、沖縄や奈良に次いで、全国都道府県別で4位から5位くらいに入っているようです。臨海部だけ取ると、より失業率は高く自殺率は低そうなので、よりラテン度が高いんじゃないかと。(お気楽極楽な風土。)
いえ・・・・あくまで「強いて、日本の中でどこかと言われれば」でございまして・・・・。(苦情等ございましたら、なんなりとコメント等ください。<(_ _)>)
よしもとおもしろ水族館、横浜にオープン
ところで、横浜と言えば、先日、中華街に「よしもとおもしろ水族館」というのができたとのこと。(まだ行ってませんが。)
Yahoo! Japan Newsより。

お笑いの吉本興業がプロデュースした「よしもとおもしろ水族館」が15日、横浜中華街にオープンした。「さかな研究員」として同水族館のキャラクターを務めるタレントのさかなクン(28)、中田宏横浜市長(39)らがテープカットを行った。中田市長は「よく顔が似ていると言われるんです」と、さかなクンのかぶりものを自分の頭に乗せ、甲高い声でものまねまで披露。(以下略。日刊スポーツ)

この2人・・・・似すぎです。
sakanakun.jpg  nakada.jpg
出所:
http://www.sakanakun.com/
http://www.nakada.net/yokohama/
参考URL:
よしもとおもしろ水族館
http://www.omoshirosuizokukan.com/

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Blogと庭いじり

本日より、このblogを動かしているMovable Typeというプログラムを、「バージョン3.0 Developer Edition 日本語版」にバージョンアップいたしました。
mt3-logo-small.gif

http://www.movabletype.jp/archives/2004/07/movable_type_30_2.html

ご覧になる方にとっては、(画面右下に表示されるMovable Typeのバージョンが上がったくらいで)、特段何も変わらないかと思いますが、
運営者側にとっては、今までコメントスパム(プログラムで巡回して、コメントができるblogを発見すると、いろいろ広告宣伝のコメントを自動的に書き込んでいく、スパムメールのコメント版)を削除するのがちょっと大変だったりしたんですが、その一括消去機能などがついて、管理がちょっと楽になりました。
今までは、庭の雑草を一本一本草むしりしていたのが、芝刈り機でガーッと刈れるようになった、という感じでしょうか。
(以下、まったく関係ありませんが、庭いじりで思い出したので。)
先日、ボストンから来日した機関投資家の外人さんを夜、接待していて、庭いじりの話になったんですが、その方、「ボストンからかなり遠い郊外に家があって」「庭の広さが数エーカー」「庭いじり用に、家にトラクターがある」とのこと。
庭の広さを「エーカー」で表現されたのは生まれて初めてですね。もちろん、トラクターで庭いじりするというのも。
庭が広くなると、機械もゴツいのが必要になるわけですね。
(または、機械のゴツいのがあれば、広い庭でも一人で管理できる、というか。)
(ではまた。)

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UFJ銀行と平将門

絶妙のタイミングというか、最新号の日経ビジネス(2004.7.19号)88ページから住友信託銀行の高橋 温(あつし)社長の(UFJと破談になる直前の)インタビュー記事が載っています。
「強運の経営者」というコメントがちょっぴり切ない。
記事中で、高橋社長は旧長銀を「首相官邸で”説得”されても」フッたという話をしていますが、今度は「自分がフラれちゃった」わけです。旧長銀の怨念かも知れませんね。

大手町観光案内
怨念と言えば。UFJ銀行の北側には、東京で最も霊力の強い場所と言われる「将門の首塚」があります。(下図、+印のところ。)
otemachi_map.jpg
(出所:Yahoo! Japan Maps )

もともと江戸幕府が、朝廷に謀反を起こした平将門の霊力を使って朝廷を霊的に封じ込めるために首塚を利用し、実際に江戸幕府は日本の歴史上類を見ないほど長期間安定するわけですが、それゆえこれは、明治になったら真っ先にとっぱらわれてしかるべきものなわけです。にもかかわらず、このような最も反皇室的なものが皇居のこんな近くにあると言うことが、まず不思議。
「平将門」「首塚」といったキーワードでググっていただきますと、
・ 関東大震災で崩れた旧大蔵省の仮庁舎をここに立てようとしたら、時の大蔵大臣をはじめ官僚たち十数人が怪死したとか
・ GHQが工事で首塚をどかそうとしたら死者が出たとか
・ 首塚にお尻を向けて座っていた銀行員が怪死したとか
いろいろ怖いタタリの話が書いてあります。
いろいろ話に尾ひれもついているとは思いますが、それにしても、日本で最も地価の高い場所にソレが存在するというのは、経済合理的にはおかしいわけで、少なくとも、それにふれるとヤバいことになるということが多くの人に信じられているということは間違いなさそう。
旧長銀の本店は、もともと上の地図で首塚のすぐ右側のビルにあったのですが、ご案内のとおり本店を日比谷に移してしまいました。理由は、確か当時あった都内の土地の買い換えに関する売却益の圧縮記帳の特例の適用期限が迫っているからとかそんな理由だったと思います。
税務上の理由(!)で将門様にお尻を向けて去っていくなんて、失礼極まりないですよね?大手町に本社があるままだったら、旧長銀もいい提携先が決まったりして破綻までは行かなかったような気がするんですが。(しません?)
ちなみに、首塚はもともとこの場所にあった神田明神の管轄になっており、首塚にお供えされたお賽銭は、UFJ銀行の総務のおじさんが集金して神田明神の口座に入金しているはずです。(確か。)
国有化寸前などと報道される最悪の状況から、一発逆転で世界No1のメガバンクに躍り出るというこの運の良さ!これ、もしかすると、いつも首塚のお世話をしている総務のおじさんのおかげかも知れません。
また、首塚の横の旧長銀本店ビルは、現在はプロミスの本店になってます。
プロミスは本当の本店ですが、UFJ銀行は(実質の本社機能は大手町にしても)登記上の本店は大阪(ホールディングス。銀行は名古屋。)ですので、霊的なパワーとしてはUFJ銀行よりプロミスの方がちょっと上なのかも知れませんね。(で、三井住友グループへ逃げられちゃった。)
(登記上の本店ではないので、MTFGとの関係もまだ気を抜いたらあかんかも知れまへん。)
ちなみに日本のインターネットの「ハブ」もこのすぐそば(首塚の右上のKDDI大手町ビル内)です。
まさに、「霊=情報」って感じでしょうか。
みなさんが読まれているこのblogのパケットも、将門の首塚の霊力の中をくぐりぬけて、みなさんのところに届いているわけであります。はい。
(それではまた。)

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Google「難問」、住信差し止め、三菱自動車払い込み、他

Googleの難問(その3)
一昨日昨日のエントリーにコメントいただきまして、ありがとうございました。
ふなさんの第一問目(看板)の解答方法は、「wget 2718281828.com」という感じで「頭から10桁ずつwgetして何かしら index.html がヒットしたらそのリストを作りクリックする。」というプログラマの方らしい解法。
(注:つまり、素数がどれかという判断はまったくせずに、解答のサイトがxxxxxxxxxx.comという名前で必ず存在するはずなので、それをeの一桁目から「総当たり」していこう、という方法、ということです。)

ちなみに99というのは頭から99個めである。
ずいぶん近いな!数十万桁目くらいを覚悟してただけにあっさりすぎだ。(中略)
つーか90個めくらいにダミーサイト用意しとけよ。

とのこと。
おっしゃるとおりですね。イヂワルするなら、途中にダミーサイトをいくつも用意しておいて、そこから先にまたダミーの問題があって、というような「複雑に枝分かれした洞窟の中で道に迷わせて餓死させる」方法も採れたと思いますが、やはりこれ、Googleはそれほど難しさを狙ったものではないのだと思います。
ちなみに、その次のエントリーでは、第二問目の「秘密」をあっさりとクリアされてます。
MostlyVowelsさんからも第二問目の「秘密」についてコメントいただきました。
私も「足し算」まではやってみたんだけどなー。「”位置”を示すキーになるはず」という発想から抜けられずに見落としました。(←負け惜しみ。)
でも、やっぱり最後までExcelで解けるレベルの問題でしたねー。(←すごい負け惜しみ。)
渡辺千賀さんからもコメントいただきました。ありがとうございます。

すみません、ネタバレしちゃって・・・楽しみをそいじゃってますね。ごめんなさいませ。
でも、答えがわかっていても楽しめる!のはすごい?(負け惜しみ?)

いえいえ。そもそももういろんな媒体で答えが載っちゃってますし、コメントにも書かせていただきましたが、答えを書いていただいているからこそ、あっしのようなモンでも、ちょっとトライしてみようかという気になるわけでござんして・・・。
「こっち行くとアメリカ大陸がある」とわかってて航海するのと、「だれも行ったことないけど、ぜったい大陸があるはず」と思って航海するのとでは、わけが違います。
「検索ビジネスはカネになる」とわかってから検索ビジネスをはじめるのと、「誰もやったことないけど、検索をビジネスにしてみよう」というのは全く違うわけですね。
そういう意味で、「誰も行ったことのないフロンティアに一番始めにチャレンジするやつは偉大だ」とも言えるし、「二番手戦略は効率がいい」とも言えます。
住友信託の差し止め請求は成功するか
UFJ・三菱東京と統合については、日経新聞はすでに「祝福モード」に入っているような気がするのですが、朝日新聞の本日の朝刊トップでは「住信、差し止め申請へ−信託買収、交渉権を侵害」ということで、交渉差し止めの仮処分を東京地裁に申請する方針を固めた、と報じています。
(「冬のソナタ」にハマった後だと、社名がUFJ(ユジン)、三菱東京(ミニョン)、住信(サンヒョク)というフリガナに見えてしまいます・・・。正式に婚約しようとしたまさにその直前で、ミニョンを見つけて後をついて行ってしまうユジン。残されたサンヒョク、という構図。)
問題は、この仮処分が成功するかどうか、です。
合併交渉の際には、いきなり合併契約をしてしまうのではなく、基本合意書とかterm sheetと呼ばれるような覚書を締結するのが普通です。
合併というのは極めて多岐にわたる詳細決めていかないといけないので、詳細な条件をいきなり決められるものではなく、また、資産内容等を詳細に調査しないと、取締役等が正当な注意義務(due care)を欠いたということで訴えられる可能性もあります。
また、合併にあたっては、公正取引委員会等への届け出等や株主総会での承認が必要になって来ますので、両者の経営陣だけで最終的に決定できるものでもありません。
このため、この覚書の段階では、合併そのものについては「法的拘束力がない(legally non- binded )」とし、ただし、交渉については一定期間「独占的(exclusive)」な交渉権を与え合うのが通常です。この独占交渉権や守秘義務などについては法的拘束力があるのが通例。
朝日新聞の記事によると、

住友信託はUFJHDが14日の取締役会で三菱東京への統合申し入れを決議したことが、基本合意書が明記する独占交渉権を侵害し、合意に違反していると主張していくとみられる。(中略)
住友信託は(中略)基本合意書は「契約書と同等の法的拘束力がある」(広報室)と、法的手段に訴える構えを見せていた。

とのこと。
日経があまり問題にしないところを見ると、基本合意書の内容のリークを受けていて、契約内容上、「差し止めは無理じゃないの?」という判断をしているということでしょうか。
独占交渉権があっても、一方の会社が途中で「もうこの会社との交渉は止める方向にしよう」という意志決定をするのは構わないんじゃないかと思いますが、契約書の具体的な文言がどうなっていたのか、どこまでが「交渉」ということになるのか、M&Aや投資にちょっとでも関わる人は、裁判所の判断は必見ですね。
三菱自動車、増資払い込み完了
本日の日経朝刊11面に「三菱自、4960億円増資完了」とあります。フェニックスが普通株で740億円を引き受けたほか、とありますので、以前予想したのと反して、優先株では投資しなかったんですね。
この普通株にはロックアップ条項とか何にもついてないんでしょうか?
普通株の有利発行については、定時株主総会で決議したということでしょうか?
ここに、定時株主総会の様子のビデオがありますが、決議事項でなく、報告事項のみのようです。
転換価額の「調整」条項も、まだ効力を発していないので、上記のエントリーで取り上げた「優先株主は、”修正”条項と”調整”条項の両方で調整されてズルじゃないか?」というのには当たらないことになります。
(で、9月の臨時株主総会は、いったい何をやるんでしょうか。)
(追記)
上記のビデオを見たところ、臨時株主総会では、株式の授権枠の拡大の決議をするようですね。
参照:
「三菱自動車工業の優先株式」
http://www.tez.com/blog/archives/000106.html
ではまた。

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Googleの「難問」2問目に挑む

昨日のエントリーの続き、です。
(以下、ご自分で解きたい方は、ネタばれにご注意、です。)
第2問
昨日の第一問の答え「7427466391.com」に、アクセスしてみると、以下のような問題が表示されます。。

Congratulations. You’ve made it to level 2. Go to www.Linux.org and enter Bobsyouruncle as the login and the answer to this equation as the password.

f(1)= 7182818284
f(2)= 8182845904
f(3)= 8747135266
f(4)= 7427466391
f(5)= __________

f(5)に入る数字がパスワードになるわけですが、それはなーに?というわけです。
まずは、軽くアタリを付けようと思って、またもやExcelを使用してグラフを書いてみると、以下のような感じ。(これも、渡辺千賀さんのblogにf(5)の解答が載っていたので、それもプロットしちゃってますが。)
image002.gif
(単位:百万)
うーん。一見、2次曲線ですね。
Excelで上のグラフの青い線を右クリックして「近似曲線の追加(R)…」を選択、対数近似、多項式近似、累乗近似、指数近似等、ぜんぶやってみたけど、当然のように、ぴったりグラフの線に重なることはありません。(そんなに甘くはない。)
で、よーく数値を見返してみると、どれも10桁の整数です。10桁の整数・・・って、第1問の答えも10桁の整数だったと思ってよく見直してみると、f(4)の答えが第1問の答えと同じじゃん!(大ヒント、ですね。)
「ということは・・・」と思って、必殺超最先端テクノロジー「Ctrl+F」を使って、f(1)からF(4)までの値について、昨日の自然対数の底「e」の数列を文字検索してみると・・・・

e =2. 718281828459045235360287471352662497
7572470936999595749669676277240766303535
4759457138217852516642742746639193200305
9921817413596629043572900334295260595630
7381323286279434907632338298807531952510
・・・

・・・・出ました出ました。
これらの数列は、やはり、「e」の数列の中に現れる10桁の連続した数字のようです。
(最後の「5966290435」は、渡辺千賀さんのホームページにあった解答。)
ここからが難問
f(n)の現れるeの小数点以下の桁数をa(n)として表してみると、
a(1)=1
a(2)=5
a(3)=23
a(4)=99
(ついでに、解答の数字は、a(5)=127)
アタリを付けるために、これをまたグラフにしてみると、
image004.gif
・・・こんな感じです。
eとか素数が好きそうなので、たぶん、その辺の組み合わせなんでしょうけど。
a(4)以外は、全部素数なんですが、a(4)だけ99で素数じゃない。だから、素数の表の中で一定間隔でたどっていく、というような単純なものではない、ということになります。
a(1)=1なので、次の2つの素数2と3を足すと「5」=a(2)、次の3つの素数5、7、11を足すと23=a(3)、といういい感じで進むのですが、次の4つの素数13、17、19、23を足しても72にしかならず、a(4)=99とは合いません。(あれぇ〜?)
(すでに渡辺千賀さんのホームページで答えを見ちゃっているので上のグラフがわかってるわけなので推測できるわけですが)、そもそも解答の「5」のところで数字がサチっちゃってます。単純に素数の順番のかけ算とかで増えていくなら、前の数字との差はどんどん開いていくはず・・・。(うーん。)
ま、この程度の数字遊びで解けたら、それこそ「文系でも解けちゃう」問題になっちゃいますからね。(←負け惜しみ。)
ということで、本日は、ここまで。

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Googleは「難問」でどんな人材を求めたのか?

CNETの記事渡辺千賀さんのblog でも紹介されていましたが、Googleがシリコンバレーの高速道路101沿いに、ナゾの看板を出したことが話題になってます。
看板には、
「first 10-digit prime found in consecutive digits of e (自然対数の底”e”の中で最初に出てくる連続した10桁の素数)」.com
とだけ書いてあって、答えは7427466391.com
(看板にはgoogleとも何とも書いて無くて、問題だけが書いてある。)
このアドレスにアクセスすると、さらに次の問題が待っているということになります。
要するに、Googleが人材募集のために、ある程度の数学の素養があるかどうかをふるいにかけるために、話題性のある看板を出した、ということのようです。
はじめから記事に答えが書いてあるので解く楽しみが台無しですが。この問題はどのくらい難しいのか。また、googleは、この問題でどんな能力を試そうとしているのか、というところが興味深いところです。
自然対数の底「e」を探してくる
問題を解くためには、まずは、自然対数の底eの数列を用意しないといけません。インターネット時代には、自分で計算するよりどっかから探して来た方が早い。
Googleで「e、2.718281828459」などのキーワードで探して、そこで見つかったより長い数列で検索していくと、何万桁といったeの数列を掲載しているページがいくつか見つかってきます。間違ってると意味ないので、一番頭の良さそうなNASAの人のページのものを引用させていただきますと、eは、

e =2.718281828459045235360287471352662497
7572470936999595749669676277240766303535
4759457138217852516642742746639193200305
9921817413596629043572900334295260595630
7381323286279434907632338298807531952510
1901157383418793070215408914993488416750
9244761460668082264800168477411853742345
4424371075390777449920695517027618386062
6133138458300075204493382656029760673711
3200709328709127443747047230696977209310
1416928368190255151086574637721112523897
8442505695369677078544996996794686445490
5987931636889230098793127736178215424999
2295763514822082698951936680331825288693
9849646510582093923982948879332036250944
3117301238197068416140397019837679320683
・・・

というような数列になることがわかります。(このページ、100万桁まで紹介しています。)
意外に早く答えに到達
記事のせいで、答えが「7427466391」だとわかっちゃっているので、どの辺にその10桁が出現するのかを見てみると、

e =2.718281828459045235360287471352662497
7572470936999595749669676277240766303535
4759457138217852516642742746639193200305

と、わずか100桁ちょっとのところに出てきました。(がっくり_| ̄|○)
わたしは、Googleが出した問題なので、数学知識+コンピュータのプログラミング能力が超バリバリの人でないと解けないような問題なのかと思ったのですが、これならちょっとExcelの知識がある人なら解けちゃいますね。
10桁の素数ですから、その平方根の10万くらいまでの素数で順に割っていけばいいだけです。
素数を探してくる
次に、素数を用意する必要があります。
自分で「エラトステネスのふるい」などのアルゴリズムで素数を計算してもいいですが、同じく、インターネット時代なので、素数を計算して結果を紹介されている方のホームページから素数を拝借するほうが早い、です。これなら「文系」でも素数を用意できます。
そういう方のデータで10万以下の素数の数を数えると、1万個弱。
これなら、Excelの縦の行に十分収まりますね。
eから10桁ずつ切り出した数字をExcelのセルに並べて、素数一覧で順に割っていき、割り切れたら次の数の検証にとりかかる、というような比較的簡単なマクロを組めば、マクロを組む時間を含めても半日もかからないで解けちゃいそうです。
素因数分解の困難性
素因数分解は「NP問題」であることが知られています。NP問題とは「非決定性チューリングマシンが多項式時間で解くことのできる決定問題のクラス」に属する問題のこと。つまり、答えがわかっていればコンピュータを使えばそこそこの時間で検算はできるが、答えをゼロから探す場合、桁数が増えるとその桁数の多項式以上(つまり指数関数のオーダーなどで)計算時間が増え、コンピュータでも何億年もかかってしまうようなことになる問題のこと、です。
(ちなみに、インターネットで利用するセキュリティ技術のSSL、PGP、RSA暗号などに使われている公開鍵暗号理論も、この素因数分解の困難性により、短い暗号キーでも解読が現実的に困難になることを利用したものです。)
つまり、今回の問題は10桁でしたが、桁数をちょっと増やせば急速に計算時間が長くなるので、Googleは、
「Excelのマクロ程度の知識ではとても解けないが、素因数分解の効率的なアルゴリズムやバリバリのプログラミングの知識があるヤツなら、そこそこの時間で解ける問題」
を簡単に作れたはずなわけです。
もしかしたら、この問題(2問目はまだ解いていないですが少なくとも1問目)は、バリバリの技術者を探す問題ではなく、「Googleで働くには技術者以外の(文系的)職種でも、こんくらいできないとね」、という軽いジャブなのかしらん、とか、HRの担当者がこの程度の問題を作れるのかしらん、と思ったりもしました。(・・・・そうだとしたら・・・恐るべしGoogle・・・・。)
(1問目ですが、とりあえず本日はここまで。)

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「部分的な買収」をするには?

7月8日の日経新聞14面「新興ネット企業 M&A成長戦略(下)」より。

「楽天やライブドアが資金力を背景に完全買収を目指すのに対し(略)インターネット関連サービスのGMOは(略)相手企業の株式を一〇〇%しない。買収先の経営者に継続して株を保有してもらい、従業員らの士気を維持するという。熊谷正寿GMO社長は「緩やかな連携」を強調する。グループ会社は十六社だが、そのうち完全子会社は四社しかない。

とのこと。GMOは、

六月、ネット広告のサンプランニング(東京・港)の六六・七%の株式を株式交換で取得した。株式交換は本来、相手先を完全子会社化する場合に使う手法。一部を取得するには現金で買う必要がある。だがGMOは、サンの六六・七%の株式を持つ持ち株会社を完全子会社化することで、現金支出なしにサンの部分保有を実現した。

とあります。
公告や他のネットの記事(末尾に掲載)によると、この66.7%の持株会社は「パワーフォーメーション」という会社のようです。
つまり、
image007.gif
・・・という感じだったのを、株式交換で、
image009.gif
・・・とする、というのは記事から素直に読み取れるわけですが、
興味あるのは、このサンプランニングの66.7%を保有する持株会社をどうやって作ったか、です。(加えて、「exit」してしまう持株会社の株主の株主構成も興味あります。)
この事例について具体的には存じませんので、もしかしたら最初から持株会社があって、その持株比率を若干修正したりしたのかも知れませんが、66.7%=2/3とキリのいい数字なので、買収のスキームの中で新たに加わった会社のような気がします。
どうやって部分買収するか
以下、一般論として、部分的な株式交換をするスキームを考えてみますと、
image011.gif
・・・というように、exitする株主と、引き続き被買収会社の株式を保有する意向の株主(正確には「株式数」)が仮に66.7%対33.3%の比率で存在した場合に、どうやって、
image013.gif
・・・というような66.7%の持株会社を新設するのがいいでしょうか、ということです。
特に、この持株会社がずっと前からあったのではなく、買収企業との株価の合意前後、買収のちょっと前に組み込まれ、被買収会社の株式の「時価」が買収する株価とみなせるようなタイミングが税務上、問題になるかと思います。
税務を考えずに商法的にだけ考えれば、いろんなやり方が考えられます。
例えば、株式移転または分社型会社分割で100%保有の持株会社を作って33%分だけ譲渡するとか、(つまり、
image018.gif
↑こんな感じにしてから、株式を残る株主に33%譲渡して、
image013.gif
↑こんな感じにするという方法とか)、も考えられますが、取得簿価より「時価」がかなり高い場合には税務上はいろいろややこしいことになります。
ということで、素直に考えれば、exitする66.6%の株主が、現物出資または持株会社への譲渡で持株会社を作るという手が一番シンプルではないかと思います。
さらに言えば、現物出資で会社を新設するとか、設立2年未満の会社に株式を譲渡する事後設立となると、その現物出資・事後設立の証明も必要となってくるので、設立2年超の休眠会社を買ってきて、その会社が買い取るということになると思います。(正確には、休眠会社の取得コストより、証明コストのほうが高い場合)
要は、持株会社を作るときにexitする株主等に税金がかかるかかからないか、かかるとしたらどのくらいかかるかといった問題になってくるわけで、そのあたりをわかりやすく図解でもさせていただこうかと思ったんですが、
・ exitする株主が、法人か個人か
・ 取得価額と時価はどのくらい差があるか、株主間でも違うか
・ 株式交換で取得した買収会社の株式を、すぐ売却するのか、長期で保有するのか(VC等なのか、創業者などもいてロックアップがかかるのか?)
等の条件でも話が違ってきてややこしいので、本日はここまでとさせていただきます。
この「部分買収の最適スキームの一般解」という話は、考えると非常におもしろいので、機会があれば、また。
以下、参考資料:
簡易株式交換公告(6月23日取締役会、8月10日)株式交換
http://ir.nikkei.co.jp/data/pdf/20040624/04060145.pdf
GMO、中小企業への販路拡大でパワーフォーメーションを子会社化
http://japan.internet.com/finanews/20040616/4.html
GMO、パワーフォーメーション買収で新株41万株を発行
http://japan.internet.com/finanews/20040624/5.html

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「冬のソナタ」と韓国のメディア構造

「冬のソナタ」ネタ、もうこれくらいにしときますが・・・。
奥さんが買ってきたAERA臨時増刊「ペ・ヨンジュン」で知る韓国
pe.jpg

という本によると、韓国のテレビは、

ケーブルなどもあるが、主流は3局4チャンネル。人気番組の視聴率は50%を超す。

とのこと。50%超。紅白歌合戦がゴロゴロしてるという感じでしょうか。

延世大のユン・テジン助教授は、「視聴率を高める効果をねらい、親兄弟、祖父母とすべての世代を登場させるのが典型的です」と指摘する。(中略)基本的には道徳的であるべきという意識があり、家族で安心して楽しめる。

日本のテレビ番組のように、視聴者のセグメンテーションが行われてないんでしょうね。
「大問題」になった麻木久仁子さんの「冬ソナはまどろっこしい」というコメントも、根本的な構造として、こうした「子供からおじいちゃんおばあちゃんまで楽しめるためのわかりやすいつくり」があるのではないかと思います。
冬ソナも、基本的には「28歳にもなっておでこにチューだけ」というノリなのですが、

祖父母が出てこず、会話が静かで美しい風景を見せる部分が多い「冬ソナ」は、韓国の典型ドラマではない。

と、ちょっとはマーケットのセグメンテーションを行っているもよう。
ちなみに、冬ソナで最も「暴力的な」シーンが、幼なじみの男性が主人公の女性に無理矢理キスしてベッドに押し倒し、女性がそれを振り払って逃げるというシーンなのですが、これを見ていたうちの小学校低学年の息子二人は、「うわ。この男、何してんだ?血を吸おうとしてるのか?怖えー」と怖がって騒いでました。
確かに、小学生低学年用の作りにはなってなかったようです。(笑)
また、韓国と言えば、ブロードバンドの普及率で世界トップクラスですが、

韓国では、大勢が同じドラマを見て盛り上がる。たとえば冬ソナが放映されていたとき(中略)ドラマが終わるやいなやパソコンに向かった。ここがよかった、あそこはどう、とサイト上で議論を始めるのだ。(中略)
冬ソナを撮ったユン・ソクホ監督はこんなことを言う。
「意見をすべて受け入れるわけではありませんが、参考にするときもあります。」(中略)
この「双方向性」も人気の要因だ。週2回のドラマ放映で、放映日の直前まで大急ぎで撮る。シリーズ放映前にかなり撮影が進んでいる日本とは違う、ダイナミックな作り方だ。

ということだそうで。
「超大衆型」のテレビと「超ニッチ」のインターネットが併存するというところが非常におもしろいですね。
韓国は日本よりインターネットにハマっちゃう人が社会問題になってるのではないかと思いますが、もともとそこそこスレてた日本と異なり、「ピュア」なものしか存在しなかったところにいきなり「邪悪な」インターネットが出現した落差が大きかったのかも知れません。
ではまた。

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