Google Spreadsheets、来ました

Google Spreadsheets
spreadsheets.gif
のテストアカウントが来ました。
モーソーが先走りすぎていたんですが、実際使ってみると、

How many spreadsheets can I create? What’s the limit per spreadsheet?
Given that Google Spreadsheets is being offered at this time as a limited test in Labs, it’s still experimental and we have set some conservative usage limits. You may create up to 100 spreadsheets, each of which may contain up to 20 tabs, 50,000 cells, 256 columns or 10,000 rows – whichever comes first (meaning, any one of these limits may prevent you from continuing to add data to a spreadsheet). We allow you to import .xls and .csv files which are approximately 400k in size originally.

といった制限がまだいろいろあり、縦は100行横はT列までしかない・・・。orz
「ネット上に無限に広がるスプレッドシートと、無尽蔵なコンピューティングパワー」
「周期が219937−1」のメルセンヌツイスター乱数」
「Googleのハードウエアに最適化された超高速処理」
・・・とかいう夢は、とりあえずかなり先のものになりそうです。
(ご参考まで。)

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村上氏の逮捕は「ホリエモンの復讐」なのか?

マスコミでは、「ライブドアをケシカケたのは村上ファンド」「だから村上ファンドが悪い」的な報道が主流になりつつあるようですが、先にどちらが けしかけたかでインサイダー規制(167条)が適用されるかどうかが決まるわけではないですよね。
本日の読売新聞の記事
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060608-00000006-yom-soci
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060608it06.htm
によると、

25万株一気に購入、ライブドアから連絡あった日に
(中略)
関係者によると、ライブドア側の担当者は同年10月20日のメールで、「購入資金として200億円を用意する準備ができたので、会合の場を持ちたい」などと伝えていた。女性担当者は、この内容を村上容疑者に報告したという。ライブドアが用意しようとした200億円はこの当時、5000円前後で株価が推移していた同放送株の発行済み株数の約12%、400万株の購入資金に当たる。
 ライブドア側の報告を受け、村上ファンドの投資顧問会社だった「MACアセットマネジメント」はこの日のうちに、同放送株を約25万株購入していた。MAC社の大量保有報告書によると、同ファンドは少なくとも同年8月以降は、10万株台の大量購入はしていなかった。
 村上ファンドは、この日以降、11月4日に約17万株、同12日に約15万株などと断続的に大量購入を続けた。

とのことなので、ここまで読むと、「こりゃ村上ファンドは完全にインサイダー規制に引っかかってアウトじゃん」、と思いますよね。
(聞くところでは、M&AコンサルティングとMACアセットマネジメント[一任の投資顧問業者]の間にはチャイニーズウォールが敷かれていて、M&Aコンサルティングがインサイダー情報を取得するとMACに売買を停止するように指示が行ってインサイダー取引を防止する仕組みが構築されていた、という話もありますので、その両者の間でインサイダー情報の流通があった、ということを検察は別途立証する必要もあるかも・・・・ということは、さておき、)
一方、同記事によると、

ところが、12月に入っても、ライブドア側が同放送株をほとんど買い進めておらず、0・5%程度しか保有していないことを知った村上容疑者は、ライブドア幹部に「全然、買ってないじゃないか」と怒ったという。

とのことで、実際に買ってたのは村上ファンドだけで、ライブドアはこの時点までは「大量買付け」はしてないわけですよね。
メールの内容にもよりますが、10月20日でホントに「公開買付等の開始に関する事実」を村上氏が「知った」ということになるんでしょうか?
(記事の「怒ったという。」という文章には、「ライブドアが買うはずだったので村上ファンドも買い増したのにライブドアは買ってないじゃないか」という「期待はずれ」的ニュアンスが出てますが、村上氏はもともと普通の会話でも声がでかそうなので(笑)、怒ってるように聞こえた、というだけかも知れません。)
「共同買付者」ではないのか?
47thさんがおっしゃる「ライブドアと村上ファンドは『共同買付者』に該当するのではないか?」という可能性もまだ消えてませんよね。
ライブドアが買うと、5%を越えた時点で5日後に公表しないといけないわけですので、買い始めると市場が大騒ぎになるのは見えてました。が、村上ファンドはすでに10月時点で約12%を保有していたわけで、多少買い増しても怪しまれない。
ライブドアが後で引き取る可能性も前提に「共同で」購入して、ライブドアが食指を伸ばしているのをカモフラージュしようにした、と考えるのも筋が通ります。
「ライブドアの要請」に該当しないか?
また、47thさんの以前のエントリ(ブロック・トレードとインサイダー取引規制(2))の最後でも触れられていた、「(167条)5項4号」ですが、この条文では、公開買付者等(ライブドア)の要請により、あとでライブドアに売り付ける目的で村上ファンドが買い付けを行う場合には167条インサイダーの適用除外ということになっています。ただし、これには「ライブドアの取締役会が決定して」という条件が付いてます。

四  公開買付者等の要請(当該公開買付者等が会社である場合には、その取締役会が決定したもの(委員会等設置会社にあつては、執行役の決定したものを含む。)に限る。)に基づいて当該公開買付け等に係る上場等株券等(上場等株券等の売買に係るオプションを含む。以下この号において同じ。)の買付け等をする場合(当該公開買付者等に当該上場等株券等の売付け等をする目的をもつて当該上場等株券等の買付け等をする場合に限る。)

実際には、村上ファンドはライブドアの取締役会議事録を確認したわけではないでしょうから、これに該当するとしても(注意不足も含めて)真っ白でないのは確かですが、仮に、堀江・宮内・熊谷といった主要かつ取締役会の過半数のメンバーから「後で売ってくださいよ」といった要請を受けていたにも関わらず、取締役会の決議がないだけで懲役だとしたらキビシイですね。
マスコミでは、「後でライブドアに高く売り付けるために株を買った(ゆえに村上ファンド=悪人)」といった表現が使われているようですが、ライブドアの(取締役会の)要請によるものならむしろ逆に問題なかったはずです。そして、村上ファンド側はケアレスではあったものの、ライブドアの取締役会の決議により要請があったのとほぼ同様の実態を有していた可能性も高そう。
ライブドアはインサイダー違反ではないの?
スポーツ紙系の報道では、「村上逮捕はホリエモンの復讐」というような見出しで、「いっしょに経営権を取ろうと約束していたのに裏切られたので、検察に情報を提供した」というようなことも書かれているようです。
「いっしょに」ということだとすると、村上ファンドとライブドアは(少なくとも昨年の時点では)「共同買付者」だったということで、前述のとおりほんとに167条が適用できるのか?という気もします。
一方、「共同買付者であっても167条は適用される」という厳しい解釈を取るとすると村上ファンドはアウトなわけですが、昨年秋の時点で村上氏が「うちのファンドでも(5%以上)買い増していく予定だよ」「いっしょにやろう」とライブドア役員に告げていた場合には、ライブドアも167条違反、ということにならないでしょうか
実際、大量保有報告書によると平成16年10月1日時点でのMACアセットマネジメントの持株比率は12.02%で平成17年1月5日に18.57%まで6.55%買い増してます。
image001.gif
これに対して、「大量買付けを行うはず」のライブドアは、実際には1月中旬になってもニッポン放送株を約0.5%しか保有しておらず、本格的な取得を始めたのはフジテレビがTOBを発表した翌日の1月19日以降。(後掲の表ご参照。)
つまり、9月ごろから「いっしょに大量に買い付けよう」という話をしていたのだとしても、翌年1月までの間に「大量買付け」の事実が客観的にあったのは、どちらかというと村上ファンドの方の話。
両者ともニッポン放送株を買い付けていたのだとすれば、村上ファンドが167条の解釈上「黒」になるとするなら、ライブドアのほうがより黒になる可能性が高いんじゃないでしょうか。
村上ファンドよりライブドアの買い付け額の方がはるかに小さいですが、0.5%とはいえ10億円弱の金額になりますし、インサイダー取引というのは「額が小さいから許される」という話でもないです。
平成17年2月10日にライブドアが提出した大量保有報告書の「最近60日間の取得又は処分の状況」では、平成17年1月7日の取得がもっとも古い取得日として開示されており、合計株数と明細の差を取るとそれ以前に取得したものは157,720株。
その157,720株を取得したのは60日以上となる平成16年12月上旬より前、ということになりますので、その中に村上氏と緊密に連絡を取った時期以降に取得したものがあるとすると、ライブドアも167条違反である可能性が高くなりますね。
image002.gif
 
(追記:6/9、9:34)
大量保有報告書では、2004年12月上旬以前に157,720株持っていたことまではわかるものの、それらをいつから保有していたのかがわかりませんが、いただいたヒルズ黙示録
hills_mokujiroku.jpg
を読み返したところ、93ページに、

最初はライブドアの「純投資」として、いわば資産運用のつもりで前年の2004年7、8月ごろからニッポン放送株を買い進めている。ニッポン放送が最新の株主名簿を作成した2004年9月末時点では、0.1〜0.2%ほど取得していた。村上がどんなイグジットを考えているのか分からないが、とりあえず「提灯をつける」つもりで、見よう見まねで株を買い始めたのが真相だろう。

とあります。
株主名簿の名義と実際の保有株式数が一致しているとは限りませんが、もし一致していたとしたら、10月から12月上旬にかけて残りの0.3〜0.4%を買ったということになり、9月ごろから村上氏に「うちも買い進む」という旨の話を聞いていた場合には、ライブドアも同罪、ということになりえます。
(/追記)
つまり、ライブドアの役員の方々はまだ167条インサイダー違反では逮捕されてませんから、「復讐のため」に検察に情報提供したりしたら、自分にもさらに罪が加わっちゃう。ということは、「復讐説」というのは違うんじゃないですかね? 「毒食わば皿まで」ということか、あるいはそこまで深く考えてないということでしょうか?
(ではまた。)
付録:「言ったもん勝ち」について
ちなみに、先日のエントリで、「言ったもん勝ち」という表現を使いましたが、他のブログで「磯崎さんの言うとおり、聞いただけでインサイダーになるというのはおかしい」と多数引用されてるのを見て、誤解を招きやすい表現だったかも・・・と思っております。
「言ったもん勝ち」というのは「(実際には行うかどうか決まっていないようなどんなテキトーなことでも)言った方が相手の行動を制約できる、というのは、ちょっとねえ・・・」というニュアンスを込めたつもりでした。
つまり、わかりやすく例えれば、私が一昨年の10月あたりにタイムスリップして堀江社長に会って、「私、磯崎は、ニッポン放送の経営権を取得するために、50%超の株式を取得できたらいいなあ、と思ってるんです」と告げるだけでライブドアは株式を取得できなくなってしまうのか?また、私が「200億円程度なら調達できる目処が付きました」と付け加えたら、確実にアウトになるのか?というあたりですね。
「磯崎がそんな資金を調達できないのはあたりまえだが、ライブドアは可能性があった」ということであれば、どのへんの確かさがその境目になるのか?
もちろん、上記は私の頭の体操としての興味から考えていることであって、よいこのみなさんには、ぐっちーさんのおっしゃるとおり、「李下に冠を正さず」をオススメします。
(「光の中」を歩んでください。)

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Google の Web-Based Spreadsheet

でましたな。

Date: Mon, 5 Jun 2006 18:13:44 -0400 (EDT)
Subject: WSJ TECH ALERT: Google Plans Web-Based Spreadsheet
Google plans to release Tuesday a Web-based spreadsheet application, the Internet giant’s latest challenge to Microsoft’s core PC software business. Google Spreadsheet will be made available on a limited test basis.
FOR MORE INFORMATION, VISIT: http://online.wsj.com/article/SB114954419577771854.html?mod=djemTECH (注:←有料)

で、

Spreadsheet documents users create will be saved on Google computers.

なのは当然として、

That will allow consumers to give other users access to view and edit them over the Web. Multiple users will be able to simultaneously edit the same spreadsheet, and type messages to each other in a separate window.

てなこともできるようです。
(特にexcelとの)、import、exportあたりをばっちりするのは当然でしょうけど、

“I see them as complementary,” said Jonathan Rochelle, product manager for Google Spreadsheets. “I know a lot of users will use both.”

だそうです。
乱数の精度をましにするとか、行や列の制限をなくすと、一部の金融関係者にはウケそうですね。
もし仮にGoogleのマシンパワーが使えるとしたら、すんごい重いモンテカルロシミュレーションとかが一瞬で終わっちゃったり、とか。
(そのかわり、世界のメジャーな金融関係企業のリスクポートフォリオがGoogleからは丸見えになっちゃったり、とか。[笑])
手元パソコン側のコンピューティング・パワーを使って計算するだけのしろものだったらアホっぽいですが、Google側で、誰がどのような計算をどんな目的で使いたがっているのかがわかるようなしくみであれば、これは一種の革命かも知れないです。世界の人々が使い込めば使い込むほど、進化していくわけですからね。
そういう「計算のアルゴリズムをより洗練させて、レスポンスや使い勝手を高める」なんてのは、まさにGoogleのエンジニアが得意そうなところじゃないでしょうか。(先日買収したオンラインワープロのWritelyなんかよりも。)
Gmailではタダで湯水のようにディスクスペースをくださったGoogle様なので、今度は、タダで湯水のようにマシンパワーを下さるとしたら非常にいいんじゃないかと思いますけど。
速くて高いワークステーションなどを購入せずとも、また、ややこしいプログラミングの技能を修得せずとも、Excelと同じようなワークシートのインターフェイスで、超高度な科学計算が誰にでもできる世界・・・・うーん、もーそーしてるうちにだんだんコーフンしてきました。
(ではまた。)

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村上氏、インサイダー取引認める(どうなる、投資実務の今後?) 

村上氏が罪を認める記者会見をしたとのこと。
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/economy/murakami_fund/?1149474186

インサイダー取引認める 村上氏、一線から退く意向
 村上ファンドのニッポン放送株売買をめぐるインサイダー取引疑惑で、村上世彰氏(46)は5日午前、東京証券取引所で記者会見し、「私自身が罪を認め、反省すべきことがある」と述べ、インサイダー取引容疑を認め、謝罪した。同日までの東京地検特捜部の任意聴取にも「ライブドア(LD)によるニッポン放送株の大量取得をある時点で知っていたと言われれば、そう取られてもやむを得ない」と供述している。(共同通信)

いやー、びっくりしましたね。
今までも、奇手・巧手含め、人が考え付かない様々なことをやってこられた村上氏ですが、しかしこれは、よく考えると非常〜にシブい一手かも知れないですね。
世間の皆さんは堀江氏のアナロジーで、誰しもが村上氏も今後一貫して容疑を否認して争うものだとばっかり思っていたと思っていたんじゃないかと思います。しかし、よく考えてみると、堀江氏は公開企業であるライブドアの社長であって、しかもそのキャラで株価を高く保っていた面があったわけで、堀江氏が事業を「やーめた」と放り出すことは極めて困難であったのに対して、村上氏は(簡単ではないにせよ、はるかに容易に)ファンドの事業から身を引くことができるわけです。(保有している資産も、非公開化した電鉄株などがまだ残っている場合等を除き、非常に流動性の高い「公開株」ばかりですので。)
自分から事業を投げ出すことで代表訴訟リスクをも負う可能性のあった堀江氏に比べて、村上氏はファンドの投資家からの訴訟さえ回避できれば、他からの民事訴訟を受ける可能性は小さいかも知れません。
聞けば、阪神株のTOBに応じれば4000億円の総資金のうち3分の2はキャッシュになるとのこと。(それだけ4000億円もの資金を回すというのは至難の業になってきていた、ということかとも思いますが)、全体として大きな利益も計上しているうちにファンドを(実質的に)止めてしまって投資家に返金しても、ファンドの投資家から訴訟を受けるリスクは小さいのではないかと想像します。
それよりも、長期に勾留されて弁護士を通してしか情報がやりとりできないような状況におかれて、ファンドの保有する株の処分に失敗して大損を出すほうがリスクは高い。
また、こういった手に出ることで、「ホリエモンに比べて、なんと潔い」というイメージも形成できるかも知れない。
積極的に自分から罪を認めることで裁判で執行猶予が付く可能性も高くなるかと思います。執行猶予が付いたら、今までどおり普通に生活もできるわけですし。(執行猶予が付くと海外渡航等も制限を受けると聞いていますが、シンガポール等外国に自宅を移している人は、その外国で生活してもいい、ということになるんでしょうか?もしかして、拠点の移動もそのへんも目的だったんでしょうか?)
今回の容疑では(詳細はよく存じませんが)、ライブドアが大量にニッポン放送株を取得したことが発覚するはるか昔(2004年9月11月とかから)の取得が問題にされているようです。
その当時、たとえ、堀江被告や宮内被告から「ニッポン放送を買収したいと思っている」と相談を受けたとしても、(後知恵で今ならそれが絵空事ではないとわかるわけですが)、2004年9月11月当時、ビジネス上の常識のある人ほど、ライブドアが800億円もの資金を調達してそんなことを確実にできるとは考えなかったんじゃないでしょうか
つまり、「ニッポン放送を買おうかと思ってる」とライブドア社の経営幹部から話を聞いたにせよ、「そんなことがライブドアの体力でできると思わなかった」というような167条の要件について争う余地も十分あるのではないかと(法律の専門家ではございませんが)思います。
しかし、それをやらずにあっさり罪を認めちゃったわけですね。
投資・買収の実務にどう影響するか?
今、罪を認めずに逮捕されて長期に勾留されたり裁判が長期化したりすると、テレビをはじめとするマスコミでは、確実に「ワルモノ」として取り扱われるのは確実。
株式を数百円で買えるまで株式分割して、一般投資家を「インベスタマー」という形で顧客層とタブらせる戦略を取っていたライブドア社の場合では、そういうテレビや雑誌を見ている一般大衆の支持を失うということは非常にまずいことだったと思いますが、
村上氏は、罪をとっとと認めて「マスコミネタとしては全く面白みのない状況」に持っていこうとされているんじゃないでしょうか。つまり、マスコミとしては、「村上氏が逮捕されて車に乗り込む瞬間」とか「勾留がとけてうなだれて拘置所から出てくる絵」とかがほしいはずですが、罪を認めて長期に拘束もされないのであれば、そういう感情的な一般庶民対策はほうっておいて、あとは冷静な大口投資家と裁判所だけを向いて合理的に対策を立てればいいだけのはず。
実際、これが裁判になったとしたら、裁判官もあまり重い罪を下すのには戸惑うんじゃないかと思うわけです。(今回の個別事情も判例の動向もよく存じませんので、無罪になるのかどうかとか、執行猶予が付くのかどうかとかは予想できませんけど。)
−−−
というのも、前述のとおり、「大量の資金を動かせる2つの投資家」がいて、一方の投資家が別の投資家に「大量に株を取得しようと考えてるんですけど」と告げるだけでもう片方が証券取引法167条[公開買付者等関係者の禁止行為]違反になるので株式の取得を中止せざるを得ないことを意味するキツい判例が出たとしたら、自分だけが有利に株を買いたいので相手に株を買うのを止めさせようと思う投資家の「言ったもん勝ち」になっちゃうので。
つまり、強敵と目される投資家がいたらランチにでも呼び出して、「実は・・・」と切り出せば、相手の動きを完全に封じることができるようになるわけですな。
(追記:誤解を招きやすい表現だったので、2つ先のエントリの終わりの方をご参照ください。ホントの事実だったら当然アウトですが、「磯崎もニッポン放送の経営権獲得を狙っております」といった、現実味に乏しい情報等によって、どこまで行動を制約しないといけないのか、という「頭の体操」のお話であります。)
実際、もし容疑がTOB等インサイダー(167条)違反だとしても、今回ライブドアはニッポン放送株をTOBすらしてないわけです。TOBする相手にだったらTOB公表後に正面からより高い価格で対抗するという手が取れるわけですが、「市場内」で購入する人から「大量に株を取得しようと考えている」と告げられるだけで購入を止めないといけないとしたら、(TOBなら株主がTOBへの応募を撤回して、より高い価格を提示した自分側に鞍替えさせる可能性も残りますが、市場内の買い付けだとT+3で受け渡しまで済んでしまうわけで、敵方にわたっちゃった分の取り戻しは困難になりますので)、ファンド等をやってる人をはじめとして投資活動に関わる人は、今後、非常に困っちゃうはずだと思うわけです。
(あとで、「やっぱ、アレ、やめました。あはははは。」と言われても文句も言えない。)
つまり、もし村上氏が、このへん冷静に考えたら争う余地があると思うからこそ戦略的に逆に罪を認めたのであれば、非常に頭がいいなあ、というか。
今までも村上氏の取ってきた手法を分析することで非常に証券取引法その他の勉強になったんですが、最後の引き際まで勉強させていただいたなあ、という気分であります。
(今後どうなるか、まだわかりませんが。)
(ではまた。)
(追記)
書き終わってみてみたら、47thさんも同様の趣旨(と思われる)エントリを書かれています。
過去のエントリでも167条関係についてまとめられてますので、ご参考まで。
http://www.ny47th.com/fallin_attorney/archives/2006/06/05-000557.php
M&Aコンサルティングのページに掲載された、村上氏による「ニッポン放送株式の売買について」というリリース
http://www.maconsulting.co.jp/PDF/060605_apology.pdf

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「村上ファンドを捜査」報道

いやー、出ましたね。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060602-00000016-jij-soci

村上ファンドを捜査=ニッポン放送株めぐり−不正取引の疑い浮上・東京地検
 村上世彰氏(46)率いる「村上ファンド」が、ニッポン放送(東京都千代田区)株の売買をめぐり、証券取引法違反に当たる不正な取引をした疑いが浮上し、東京地検特捜部が捜査を進めていることが1日、関係者の話で分かった。特捜部は、村上氏の任意での事情聴取を近く検討するとみられる。
(以下、略)
(時事通信) – 6月2日5時0分更新

「証券取引法違反に当たる不正な取引」ってのも、非常に漠然としてますけど。
数週間前から、いろんなマスコミの方々に「まだ報道できるような段階ではないですけど、もし捜査が入るとしたら、どのへんの取引が怪しそうですか?」という質問をたくさんいただいたのですが、正直まったくわかりませんです。すみません。
ライブドアさんの場合には、有価証券報告書等、大量の情報を(それなりに)開示していたので、それらをつぶさに見ていくことで、「おや?」という点は浮かんできたわけですが、村上ファンドさんというのは、そもそもなるべく開示をしない「潜水艦型」のvehicleなわけですし、風のウワサでは、弁護士さんにいろいろ適法性について相談することはもちろん、アクティビスト活動等で企業の重要事実を耳にしてしまった場合にはファイヤーウォールで仕切られた別vehicleでの売買は即座に停止するなど、コンプラ面にはかなり気を使ってらっしゃるように伺っていたんですが。
「166条じゃなくて167条じゃないか」てなことをおっしゃる方もいらっしゃるようですが、どうなんでしょうか。いずれにせよ、要件が「重要事実(または公開買付け等の事実等)を知つたもの」になってるわけで、村上ファンドがさんが「知っていたかどうか」は、わたしゃ知りませんので、私に何か聞いていただいても、今のところ「わかりません」としか申し上げられませんです。あしからず。
過去のご参考エントリ:
isologueでの「村上ファンド」というキーワードが入っているエントリ一覧は、こちら。
http://tez.com/mt/mt-search.cgi?IncludeBlogs=2&search=%C2%BC%BE%E5%A5%D5%A5%A1%A5%F3%A5%C9
ニッポン放送株式取得とインサイダー取引
https://www.tez.com/blog/archives/000325.htmlここでは、大和証券さんの取得について考察させていただいてますが、このへんは、別のエントリでも検討したとおり、大和証券さんがすでに保有していた信託受益権の信託が解除された、ということによるもの、ということのようですね。
私は主に開示情報だけからいろいろ考察させていただいてますが、先日送っていただいた、
hills_mokujiroku.jpg
この本に、開示情報からはわからないここらへんの事情が、非常に詳しく書かれています。
(ご参考まで。)

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会社法下のストックオプション(注記の基準の変更編)

企業会計基準委員会から、昨日5月31日付で、「『ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針』の改正」というリリースが出ました。
企業会計基準適用指針第11号
「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」の改正
http://www.asb.or.jp/j_technical_topics_reports/stockop2/

 平成17年12月に公表された、企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」(以下「会計基準」という。)及び企業会計基準適用指針第11号「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」(以下「本適用指針」という。)は、会社法(平成17年法律第86号)の施行日(平成18年5月1日)以後に付与されたストック・オプション等から適用することとされていますが、それより前に付与されたストック・オプションであっても会社法の施行日以後に存在するものについては、一定の注記が求められています(会計基準第17項)。このため、これに該当するストック・オプションについては、会計基準第16項(2)及び改正前の本適用指針第25項(8)の規定に基づき、遡って「付与日における公正な評価単価」を算出し注記することが求められるのではないかとの指摘がありました。
 当委員会は、会計基準及び本適用指針の趣旨は、これらに基づく会計処理が求められていない会社法の施行日より前に付与されたストック・オプションについてまで付与日における公正な評価単価の注記を求めるものではないことを確認し、この点を明確にするため、第105回企業会計基準委員会(平成18年5月30日開催)において、本適用指針について次の改正を行うことを承認いたしましたので公表いたします。
 なお、本適用指針の改正は規定の趣旨を明確にするものであるため、公開草案の手続を経ずに公表するものです。
以 上

上記のとおり、会社法施行「前」に発行されたストックオプションについては、(当然、費用計上はしなくていいわけですが)、注記での開示はしなくてはいけないことになってました。
この注記は、会社法施行「後」に発行されたストックオプションよりは項目がかなり省略できることになっているので、「さすがに会社法施行前の分は楽にしてくれてるんだろうなあ」、と思いきや、適用指針25を読むと、最もヘビーな公正価値(オプションバリュー)の計算をしなくてはいけないようにしか読めない内容だったわけです。
このため、
「これは、過去のストックオプションについても公正価値を計算しろ(ブラックショールズ式から勉強せーい!)という趣旨だ」
という条文に沿ったコンサバな解釈(見まわしたところ多数派)や、
「基準の全体のオーラとしては、過去の開示については負担が軽くなるように配慮されてるので、なんかの間違いじゃないの?」
というノーテンキな解釈(見まわしたところ少数派:含む、私)が入り乱れ、よくわからないので、
「1Qの四半期開示で7月までには計算しないといけないってこと?」
「もう、あと1ヶ月ちょっとしか時間がねーぞ!」
「オプションバリューつっても誰が計算すんだ?」
「書店でオプションの計算方法の本を探してきまーす!」
「(そこからかい!)」
など、全国の会計実務の現場では、阿鼻叫喚の地獄が繰り広げられてました。(と、想像。)
詳細
ちなみに、具体的には、今までの「ストック・オプション等に関する会計基準」の16では、

16. 次の事項を注記する。
(1) 本会計基準の適用による財務諸表への影響額
(2)各会計期間において存在したストック・オプションの内容、規模(付与数等)及びその変動状況(行使数や失効数等)。なお、対象となるストック・オプションには、適用開始より前に付与されたものを含む(第17項)。
以下、(3)〜(7)略

とありますが、referされている次の17を見ると、

17. 本会計基準は、会社法の施行日以後に付与されるストック・オプション、自社株式オプション及び交付される自社の株式について適用する。 ただし、第16項(2)の開示については、会社法の施行日より前に付与されたストック・オプションであっても、会社法の施行日以後に存在するものについて適用する。

と、会社法の施行日より前に付与されたストックオプションについては、16の(1)および(3)〜(7)については注記しなくていい、と書いてあります。
こりゃ楽でいいわ、と思っていると、唯一注記しなきゃいけない(2)の「内容等」の具体的項目を定めた、「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」25を読むと、

(ストック・オプションの内容、規模及びその変動状況)
25. 当該会計期間において存在したストック・オプションについて、ストック・オプションの内容、規模及びその変動状況として、次の事項を注記する。
(1) 付与対象者の区分(役員、従業員、などの別)及び人数
(2) ストック・オプションの数(権利行使された場合に交付することとなる株式の数で表示する。当該企業が複数の種類の株式を発行している場合には、株式の種類別に記載を行う。)
(3) 付与日
(4) 権利確定条件(付されていない場合にはその旨)
(5) 対象勤務期間(定めがない場合にはその旨)
(6) 権利行使期間
(7) 権利行使価格
(8) 付与日における公正な評価単価
(9) 権利行使時の株価の平均値(当該会計期間中に権利行使されたものを対象とする。)
(以下略)

となっていて、他の淡々と過去のストックオプションの要項等から書き写すだけの作業でいい項目に対して、もっともヘビーな「公正な評価単価」を(計算して)注記しなければならないとしか読みような書き方になってたわけです。
しかし、
昨日付のリリースで、この(8)の直後に、

(会社法の施行日以後に付与されたストック・オプションに関する評価単価をいう。)

と付記され、会社法施行以前のストックオプションについては、注記しなくていいことが明確になったわけです。
(めでたしめでたし。)
今日あたり、
「せっかく、勉強し始めたのに!」
と、買ってきた「オプション理論入門」的な本を床に叩き付けている経理部門の方々が、全国に約28人、
「よ・・・よかった・・・」
と、涙を浮かべながら床にへたりこむ経理部門の方々が16人・・・程度いらっしゃるのではないかと妄想。
(ではまた。)

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会社法下のストックオプション(現物方式と相殺方式)

昨日の事例URL集にもとづいて、新しい会社法のもとで、みなさんどういったストックオプションの発行実務を行われているのか、というのを見てみましょう。
まず、(Googleで一番上に表示されたこともあり)、野村総研さんの事例
http://www.nri.co.jp/news/2006/060516_5.pdf
を参考に、考えさせていただきたいと思います。
このリリースは、旧商法的な「特に有利な」というような文言も出てこないですし、取締役会への権限「委任」というような考え方でもない・・・つまり、「取締役報酬の『枠』だけ取れば、あとは取締役会権限で発行できる」と考えておられる模様。
また、(単に従業員には付与しないだけかも知れませんが)従業員向けストックオプションのリリースもありませんので、株主総会の承認は不要と考えてらっしゃるのではないでしょうか。
全体として、「会社法のノリ」をよく取り入れたリリースになっているんじゃないかと愚考いたします。

(前略)定時株主総会において、年額10億円以内(中略)とする旨ご承認いただいておりますが、かかる報酬額の範囲内で、譲渡制限付き新株予約権を用いたストックオプションの付与をおこなうことにつき、ご承認をお願いするものであります。

ということで、この部分が会社法第361条第1項第1号(報酬等のうち額の確定しているもの)の承認に相当するということだと思います。
具体的付与方式については、

ストックオプションの付与は、金銭の払込を要しないものとして新株予約権を支給する方法(現物方式、会社法第361条第1項第3号に規定する金銭でない報酬等)、または、オプション評価モデルを用いて合理的に算定された公正価格を払込金額とする新株予約権を割り当てる一方、当該払込金額に相当する金銭報酬を支給することとし、払込に代えて当該金銭報酬請求権により相殺を行う方法(相殺方式)のいずれかの方法によりおこないます。

と書いてあります。この「現物方式」(3号の金銭でない報酬等)としたストックオプションが前述の1号の枠(額の確定しているもの)の外書きなのか内書きなのかですが、前にも「かかる報酬額の範囲内で」とありますし、この続きでも、

具体的な付与数は、上記報酬額の範囲内で、固定報酬、賞与とのバランス、各取締役の職務内容等を勘案して、報酬諮問委員会への諮問を経て取締役会の決議により定めます。

と、現物方式か相殺方式かに係らず、「上記報酬額の範囲内で」と明記してありますので、これは当然、1号の報酬枠の「内書き」ということですね。
(これが無難ですし、「お手盛り」防止のためにもキレイであります。)
現物方式と相殺方式
さて、この現物方式と相殺方式ですが、平たく言うと、
「ストックオプションをタダであげる方法」

「給与天引きで購入する方法」
ということになるかと思います。
会社法の条文でいくと、前者が、
「募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないこととする場合」(238条1項2号−募集事項の決定)
後者が、
「前項の規定にかかわらず、新株予約権者は、株式会社の承諾を得て、同項の規定による払込みに代えて、払込金額に相当する金銭以外の財産を給付し、又は当該株式会社に対する債権を持って相殺することが出来る。」(246条2項−募集新株予約権に係る払込み)
に対応していることになります。
(太田洋弁護士・商事法務1759号43ページ参照)
現物方式の流れ
払込み処理(会社側・従業員等側)
「現物方式」の場合には「無償」なので、払込みは発生しません。
費用計上処理(会社側)
ただ、大きく異なるのが、会社法施行以降、ストックオプション会計基準が適用されて、この新株予約権の公正価値に基づいて費用計上を行わないといけないことになった、という点。
「ストック・オプション等に関する会計基準」4、5、ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」の設例などによると、費用は「権利確定日」までの期間で月割りするなど、費用の額に対応したものを新株予約権として純資産の部に計上する、とあります。
注意しないといけないのは、社債(区分法)の場合、
image001.gif
といった感じで、発行される新株予約権の公正価値「全額」が純資産の部に計上されたわけですが、新株予約権の場合、
image002.gif
といった感じで、当期の費用化分に対応する部分だけが新株予約権として純資産の部に載ってきます。
上記は、行使可能(権利確定)となるまでが2期にまたがるイメージの場合ですが(費用計上額が複数年に分散されている)、発行して即権利確定となると、
image003.gif
上図のように、新株予約権のバリューの全額が付与した期に一括で費用計上されることになります。
税務処理(会社側)
税務上は、ストックオプションが(従業員等にとって)税制適格であれば、(永遠に)損金参入不可。
ストックオプションが税制適格でなければ、権利行使日の属する事業年度において損金参入が行えます。
税務処理(従業員等側)
ストックオプションが税制適格であれば、行使時にはキャピタルゲインは発生せず、行使価格(株式の取得価額)と売却額の差額がキャピタルゲインとして分離課税。(今なら10%だけ。)
別の証券口座を作る必要があり、総合口座にはできないので源泉で税金を引いてくれず、確定申告が必要になります。
ストックオプションが税制適格でなければ、権利行使時の時価と行使価格の差が、「取得する経済的利益」とみなされて、給与所得等といっしょに(累進税率で)総合課税されることになります。
相殺方式の流れ
払込み処理(会社側・従業員等側)
相殺方式は、「給与天引き」で新株予約権を適正な価格で従業員等が購入するということです。従業員は口座振込みをする必要等はなく、給与明細に新株予約権を購入するための給与上乗せ額(収入)と、新株予約権の購入代金(引落し額)が乗っかることになると思います。
費用計上処理(会社側)
会社では、新株予約権の価値とは関係なく、新株予約権を買うために上乗せされた給与額が費用計上されることになります。
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つまり、権利行使までに複数期ある現物方式の費用が、前述のとおり複数年に分散されるのに対し、相殺方式の場合、新株予約権買い付け資金をすべて給与として支払ってしまうと、発行時(給与支払い時)に全額が費用計上されるので、利益へのインパクトは1期に集中してしまうわけですね。
image005.gif
さらに、従業員等はキャッシュインがないのに給与に課税されるので、その納税資金分くらい多めに支払う必要があるかも知れません。
給与の支払額が少なければ、費用計上額は少なくなるわけで、新株予約権の公正価値が巨額になってしまう場合には、「新株予約権購入ローン」的なものを手配すれば、費用計上額は複数年に分散することができることになります。
(どうせ毎年同じ程度の新株予約権を付与していくのであれば、中長期的な費用インパクトは変わらないかも知れない。)
image006.gif
税務処理(会社側)
現物方式のストックオプションと違って、給与等を費用として計上した額が、原則としてそのまま損金参入できます。ただし、役員賞与扱いになっちゃう部分とかに注意。(毎月の給料を底上げするとか、コントロールのしようはあるかと思います。)
税務処理(従業員等側)
「新株予約権の取得価額+行使価格(株式の取得価額)」と売却額の差額がキャピタルゲインとして分離課税。(今なら10%だけ。)
税制適格の要件等も関係ないので、取得半年後から行使可能にするとか、非常に自由な設計が行えると思います。また、従業員も別の証券口座を作る必要もなく、総合口座にすれば確定申告も不要なので、年末調整だけで済んで従業員にとっても楽。
まとめ
以上のように、費用計上のインパクトを複数年に分散させられるかどうかという点を除けば、「どっちにしろ同程度の費用計上が行われるなら」、相殺方式のほうが税務上も、手間の面でも楽そうです。
(以上、ご参考まで。)

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会社法下のストックオプション(事例データベース編)

前のエントリのコメント欄で47thさんに教えを請いながら整理させていただいたんですが、今まで(4月までの旧商法では)、会社が発行する新株予約権については、払い込まれた金額(借方または左っかわ)から判断されて貸方(右)の新株予約権の額が決まっていたのが、
会社法においての「ノリ」としては、基本的には、新株予約権のオプションバリュー(貸方[右])というものが確固として実在するものと認められて、それが決まってから、借方(左)の「費用」や「社債発行差金」が決まってくる、というイメージになるんじゃないかと思います。
会社法における新株予約権の「ノリ」
つまり、借方(左)・貸方(右)の絵で描くと、
image001.gif
・・・上図のように、オプションバリューが「計算の仕方のよくわからない怪しげでフワフワしたもの」という位置づけから「きちっと計算で確定できる確かなもの」という位置づけに変わった、というところが、会社法による大きなパラダイムチェンジじゃないかと考えております。
(法的に厳密な議論かどうかはさておき、「ノリ」としてそんなところではないかと。)
と考えると、転換社債に「一括法」が容認されているというのは、この例外になるわけですね
会社法における株主総会決議省略の可能性
結果として、新株予約権の公正価値が労働の対価等(借方[左側])と比べて「特に有利」でなければ金銭の払込の無い無償発行であっても、従業員分については労働の対価と比べて適切な額であれば(株主総会の決議なしで)取締役会決議だけでも発行できるはずです。
委員会設置会社の取締役については、報酬委員会で報酬を決定するので(会社法第404条3項)、株主総会で報酬枠の設定をすることはもともと不要。取締役から提供される役務の対価として妥当な量の新株予約権であれば、株主総会の決議なしに取締役会で発行できるのではないかと思います。
委員会設置会社でない会社の取締役についても、総会で「枠」(会社法第361条1項1号and/or 3号)さえ決議していれば、新株予約権の発行決議自体は取締役会でできるのではないかと思われます。
事例データベース
・・・と、(法的に厳密な議論はよく存じませんが)、以上のように勝手に解釈してますが、実際のところ、各社さん、6月の総会に向けてどのような議案にされているのでしょうか?
会社法初年度なので、かなり、実務の現場は戸惑ってらっしゃるのではないかと思いまして、遅ればせながら、各社の事例をサーチして、末尾に150事例ほどをURLの形で掲示してみました。
Webに掲載されている各社の開示資料を、「会社法、ストックオプション、新株予約権、取締役会、決議」といったキーワードでGoogleで抽出し、grepをかけてpdfのURLだけを抜き出したものです。(一通りチェックして、明らかにストックオプションのリリースでないものは除いてありますが、重複するものやストックオプションと関係ないものがまじってましたら、すみません。pdfだけなのでhtmlで開示しているものなど、抜けているものも多いかと思います。)
結果の概要
全体を斜め読みしただけの感想ですが。
従業員向けのストックオプションについては、会社法での新解釈に基づいて、「(取締役向けのストックオプションの議案を説明した後)、なお、従業員向けのストックオプションについては、取締役会で別途決議させていただくことがあります。」といった形で、株主総会の決議をまったく受けずに取締役会で発行しようとしてらっしゃる「度胸のある」会社さんも何社か散見されました。
非常に多かったのが、「取締役および従業員に対し、ストックオプションとして発行する新株予約権の募集事項の決定を当社取締役会に委任することにつき承認を求める議案」というような形で、発行について取締役会への委任を求める形で、株主総会の承認を得ようとするパターン。
「新株予約権を発行する理由」等、プレーンな言い回しで理由を説明している会社さんもありますが、「株主以外の者に対し特に有利な条件をもって新株予約権を発行する理由」といった形で、商法っぽい言い回しで説明をしている企業も非常に多いようです。
(前述のような解釈に基くと、従業員等の労働の対価とのバランスが取れていれば「特に有利な条件」ではない、という見方のほうが会社法っぽいと思いますが。)
取締役分の「枠」としては、会社法第361条1項1号(報酬等のうち額の確定しているもの)および3号(報酬等のうち金銭でないもの)の両方で決議を受けようというパターンが多いようです。
47thさん曰く、

条文上そう読むべきかについては議論はあり得るのですが、実務上はSOについては1号決議が必須という方向になるようです(例えば、太田洋・商事1759号43頁等)。実は、3号だけという勇気のある会社さんが出るのを、密かに楽しみにはしているんですが(笑)

とのことですが、オプションバリューの計算方法もよくわからない企業さんが多い中、予定しているストックオプションにつき、付与時点での「額が確定している」とはいえないと考えたのか、「3号」だけ、という企業さんのリリースも見かけたような気もします。(よく読みこんでないので、詳細はまた別途。)
委員会設置会社については、例えばソニーさんの例では、当然、361条の決議をやる予定は書いてありませんが、ソニーおよび子会社の取締役・執行役・従業員に対してストックオプション付与を目的として新株予約権(中略)の決定を取締役会に委任する決議を株主総会で行う予定とのことです。
「特に有利な条件により」という文言が見えるので、株主総会で承認を得ないと、有利発行性についてリスクがある、とお考えなんでしょうか。
野村ホールディングスさんも、ほぼ同様。
その他
「ブラックショールズ式を用いて○月○日現在の株価等を元に新株予約権の公正価値を算定しました」
と意気高らかに書いてらっしゃる会社さんもあったのですが、1円ストックオプション(行使価格が1円)なのに、公正価値がその日の株価より安い(本源的価値を下回ってる)orz、というリリースになっていて、「げげんちょ」という感じであります。
会社法的には、株主総会で有利発行決議を受ければ適法な決議なのかも知れませんが、この額で会計上費用計上したら、「粉飾」ということにもなるんじゃないですかねえ・・・。(監査法人さんが気づくはずなので、大きなお世話ではありますが。)
ちゃんとした公正価値で計算すると取締役報酬の「枠」を超えちゃう場合も、「違法」になっちゃうかも知れませんね。
(よく読んでないので、目の錯覚ならいいんですが・・・。)
(追記:相当未来に行使されるので、本源的価値の現在価値がディスカウントされてるんではないかと考えられます。・・・失礼いたしました。)
以下に、各社の事例のURLを掲げますので、ご興味のある方はご覧ください。
www.nri.co.jp/news/2006/060516_5.pdf
www.netvillage.co.jp/images/20060523_6.pdf
www.netvillage.co.jp/images/20060523_7.pdf
www.aichi-steel.co.jp/topics/data/pdf/topics060515b2.pdf
www.mitsubishicorp.com/jp/pdf/pr/mcpr0605182.pdf
www.gala.jp/pdf/pr_20060518_4.pdf
www.gala.jp/pdf/pr_20060518_3.pdf
www.omron.co.jp/ir/ir/press/pdfs/20060512_stock.pdf
www.shinetsu.co.jp/j/news/pdf/s20060515_2.pdf
www.shinetsu.co.jp/j/news/pdf/s20060515_1.pdf
www.sony.co.jp/SonyInfo/IR/news/qfhh7c000009ib4e-att/qfhh7c000009ib5o.pdf
www.elpida.com/pdfs/pr/2006-04-25j.pdf
www.justsystem.co.jp/just/finance/j0605231.pdf
estore.co.jp/s-company/pdf/Release060525_1.pdf
www.segasammy.co.jp/japanese/pdf/release/20060516_tousha_so_irj_re.pdf
www.segasammy.co.jp/japanese/pdf/release/20060516_kogaishaso_irj_re.pdf
www.sumitomocorp.co.jp/ir/tse/doc/2006/td060518_2.pdf
www.sumitomocorp.co.jp/ir/tse/doc/2006/td060518_3.pdf
www.itx-corp.co.jp/jp/news/2006/pdf/20060517_1.pdf
www.sekisui.co.jp/general/press/060518-2.pdf
www.sekisui.co.jp/general/press/060518-3.pdf
www.mbl.co.jp/company/presspdf/press060519stock2.pdf
www.mbl.co.jp/company/presspdf/press060519stock1.pdf
www.riken.co.jp/ir/pdf/rik060519%20torioption.pdf
www.riken.co.jp/ir/pdf/rik060519%20juoption.pdf
www.mitsubishichem-hd.co.jp/newsreleases/pdf/20060519-1.pdf
www.nicjp.co.jp/data/h18_5_12tori_kansa-stockoption.pdf
www.ngk.co.jp/news/2006/pdf/2006_05_11b.pdf
www.ngk.co.jp/news/2006/pdf/2006_05_11c.pdf
www.nagase.co.jp/news/pdf/20060523-03.pdf
www.toko.co.jp/investors/jp/pdf/indication/6801_stockoptionfuyo.pdf
melco-hd.jp/news/2006/0426-5/stok.pdf
www.nissan-global.com/JP/IR/TEMPO/060517tosho02J.pdf
www.harakosan.co.jp/ir/pdf/20060413.pdf
www.shochiku.co.jp/guide/information/pdf/060424_2.pdf
www.shochiku.co.jp/guide/information/pdf/060424_1.pdf
www.gignosystem.com/pdf/20060523_StockOption.pdf
www.nosan.co.jp/release2006/20060510-5.pdf
www.nosan.co.jp/release2006/20060510-6.pdf
www.hosiden.co.jp/web/ir/pdf/option060511.pdf
www.scl.co.jp/topics/060512_2.pdf
www.scl.co.jp/topics/060512_3.pdf
www.mazda.co.jp/publicity/release/200605/0512b.pdf
www.teac.co.jp/about/achievement/20060519_2.pdf
www.eisai.co.jp/news/news200621pdf.pdf
www.sunfrt.co.jp/pdf/ir/20060522_2.pdf
www.ewave.co.jp/ir/ir20060519-5.pdf
www.santen.co.jp/ir/jp/news/pdf/20060509%20T.pdf
www.santen.co.jp/ir/jp/news/pdf/20060509%20S.pdf
www.matsuzakaya.co.jp/corporate/news/news060413_05.pdf
www.matsuzakaya.co.jp/corporate/news/news060413_06.pdf
www.c-direct.ne.jp/japanese/uj/pdf/10108743/00046571.pdf
www.c-direct.ne.jp/japanese/uj/pdf/10108743/00046572.pdf
www.fmltd.co.jp/irdata/pdfdir/press/87.pdf
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www.j-com.co.jp/ir/pdf/press_060525_stock.pdf
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www.accretech.jp/news/2006/stockoption.pdf/download
www.accretech.jp/news/2006/t_so.pdf/download
www.bemap.co.jp/library_file/cms_file/06052200204.pdf
www.bemap.co.jp/library_file/cms_file/06052200203.pdf
www.taihonet.co.jp/j/2006_04_28_01.pdf
www.taihonet.co.jp/j/2006_04_28_02.pdf
www.sra.co.jp/public/sra/ir/others/20060524-2.pdf
www.unipres.co.jp/ir/pdf/060515_3.pdf
www.sjholdings.co.jp/pdf/ir00-39.pdf
www.sjholdings.co.jp/pdf/ir00-38.pdf
www.jae.co.jp/ir/20060516_03.pdf
www.simplex-tech.co.jp/pdf/ir/press-release20060523.pdf
www.shinpoly.co.jp/ir/pdf/20060427_2.pdf
www.goldwin.co.jp/information/japanese/h19/info/060519_04.PDF
jds.jasdaq.co.jp/documents/tekiji/GKMDHUPVGLXBSBAA.PDF
jds.jasdaq.co.jp/documents/tekiji/KDYJOO0DPQRLSBAA.PDF
www.agc.co.jp/news/2006/0511_2.pdf
www.astellas.com/jp/company/news/2006/pdf/060515a.pdf
www.daj.co.jp/ir/data/20060517-02.pdf
www.core.co.jp/pdf/ir_060524.pdf
www.daikodenshi.jp/ir/images_pdf/20060519_3.pdf
www.aoyama-syouji.co.jp/enterprise/pdfhtml/aoyama_pdf1/060518_stock/060518_stock.pdf
www.assetmanagers.co.jp/pdf/20060509b.pdf
www.ichiyoshi.co.jp/ir/ir/pdf/20060519_stockoption.pdf
www.fujimiinc.co.jp/ir/pdf/2006-5-12-4.pdf
www.fujimiinc.co.jp/ir/pdf/2006-5-12-3.pdf
www.tfp-cg.co.jp/pdf/h18/h180519_stock1.pdf
www.nichias.co.jp/ir/investor/irnews/2006/20060522_01.pdf
www.san-hd.co.jp/files/060518-3.pdf
www.anritsu.co.jp/J/IR/pdf/060426c.pdf
www.anritsu.co.jp/J/IR/pdf/060426d.pdf
www.onward.co.jp/ir/pdf/20060525.pdf
www.nifsmbc.co.jp/ir/press/documents/0517SO_shiyounin.pdf
www.kenko.com/company/ir/pdf/stockoption_060428.pdf
www.shinoken.com/data/ir/pdf/060519_stockoption1.pdf
www.shinoken.com/data/ir/pdf/060519_stockoption2.pdf
www.bookoff.co.jp/ir/pdf/060516_3.pdf
www.tfp-cg.co.jp/pdf/h18/h180519_stock2.pdf
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www.daiso.co.jp/pdf/news060519_4.pdf
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www.kitagin.co.jp/news/pdf/060522_1.pdf
www2.jsda.or.jp/documents/tekiji/I2FRRBE48V778BAA.PDF
www2.jsda.or.jp/documents/tekiji/OCSRBJFPWN78ABAA.PDF
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www.daikin.co.jp/data/investor/zaimu/h18/h18_stock-opution.pdf
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ir.eol.co.jp/EIR/3036?task=download&download_category=tanshin&id=357273&a=b.pdf
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www.sk-japan.co.jp/investors/ir/pdf/syousyu/17/20060508.pdf
tokai.jp/ir/pdf/tokai1803kobetsu.pdf
www.lawson.co.jp/company/ir/library/pdf/syosyu/syosyu_31.pdf

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いまどきのスパムコメント

機械的に見つけ出したblogサイトに対して、プログラムが自動的にコメントを書いていく「スパムコメント」ですが、海外からのものがほとんどなので、英語(英数字、1バイトコード)だけのコメントについては自動的に削除するプログラムを入れて対抗されているブロガーの方も多くなってきているかと思います。
これに対して、ここ数日、海外からのスパムコメントなのに日本語(2バイトコード)の文字列を入れて、この単純な分別法を回避するものが増えてます。
曰く;

いいポスト。また戻ってきます。
このサイトのコメント、いいですね。一早く更新されることを心待ちにしています。
とっても雰囲気のいいサイト!ごきげんよう。
とてもいいサイト。ずっといいサイトでいてください。
とてもいいサイト。次回の更新が待ち遠しい。
何人かの友達がこのサイトのことを教えてくれたんだけど、教えてもらえてほんとによかった。
最高のサイト!ここにいるのが本当に楽しい。
とても個性的なないようですね。本当に好みのサイトです。
この際とは本当に良い情報の源です。
長い間読みこんでしましました。すばらしいサイトです。
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ちょっと、このサイト本当にいいですね。
このサイトは、まさしくネットサーフィンを楽しくするサイト!
とても素敵!このサイト、私のお気に入りです。
楽しみながら読みました。クールなサイトです。
最高!!!
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このサイトにはじめておじゃまさせてもらいました とても有益で面白いサイトを見つけました!.
ここを訪れるのは本当に楽しいです。すばらしい日々をお過ごしください!
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驚愕の内容!素敵な情報をありがとうございます!
このサイト、本当に感動的!
本当におもしろい内容ですね。また絶対、訪ねてきます。
このサイトをあなたが作ったことを本当に感謝しています。とても面白いサイトです。
このサイトには感動させられました。とても個性的で興味深い内容です。
とても良い。またこのサイトに来ます。
これ、好みのブログです。 最高に面白いです。
とても面白い。ずっとこんな良い感じでいてください!
このサイトには本当に楽しませてもらいました。そのことをちゃんと伝えておかなくちゃ。

・・・・スパムコメントとわかっていながら、ここまで褒められるとなんかうれしくなってくる自分が情けないですが・・・。(笑)
「サイト」が「際と」に誤変換されているところを見ると、英語を機械翻訳したのではなくて、日本語のFEP(IME?)で(おそらく日本人の方が)文章を作成されたものなんでしょう。
スパムメールと違って、スパムコメントは削除されて人の目に触れなくなると効果が半減するので、今までの英語のスパムコメントでも、内容を褒めるものが多かったのですが、私の語学力の無さゆえか、英語の表現は日本語よりオーバーだと思っていたせいか、冷徹に削除するのみだったのですが、日本語でここまで褒められると、ちとうれしい。
(わたし、褒められると伸びるタイプなので^^)、感謝しながらバッサリ削除させていただいております。
(ではまた。)

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会社法下の転換社債と「裸の特異点」

47thさんから「会社法下の転換社債(「区分法」と「一括法」)」についてトラックバックをいただきました。
「誰も入ったことのない洞窟」を一人で探検するのは心細いので、ツッコミ大歓迎であります。

「対価の適正性」については、法的には有利発行規制という歯止めが一つあるわけですが、より実態的なレベルの話としては価格決定のプロセス、特に「独立当事者取引」(arm’s length transaction)であったかどうかが重視されます。
(中略)
SOの場合(特に経営陣に対するSOの場合)には、利益相反(自己取引)の要素が否定できません。いわゆる「お手盛り」と言われる話ですが、法的には、その歯止めとして「内容」について株主による承認が求められているわけですが、これにはいくつかの限界があります。

ここで一言。会社法下の転換社債(転換社債の新株予約権部分には価値は無いのか?)にも書きましたが、会社法になってからは、SO(ストックオプション)の量が労働の対価として適切(「特に有利」でない)なら、株主総会決議は不要という解釈になりました。
(追記5/30:すみません、ここは47thさんは総会による『枠』の承認のことをおっしゃってて、私は新株予約権の個別の決議のことを考えていたので、話がかみ合っていませんでした。申し訳ありません。コメント欄ご参照。)
となると、ストックオプションを発行するのを株主総会決議にかけるというのは、「念のため」ということで許されるのか、「労働の対価を考慮しても『特に有利な発行』ということだから、従業員等に『寄付』をする、ということなのか?」ということで、ストックオプション自体の価額算定のややこしさともあいまって、現場は非常に混乱してるのではないかと思います。

中でも大きな問題の一つとして、株式の分散所有構造から生じる「集合行為問題」あるいは「合理的な無関心」と言われる問題があります。個々の株主にとっては、例えば総会に付議されたSOの発行条件を検討して、それが適切かどうかを判断するための情報収集・分析のコストを費やすことは必ずしも合理的ではありません。
オプションの評価は、現金報酬の額とは違って、評価モデルの確定やボラティリティなどの追加情報の入手が必要となり、余計に情報収集・分析のコストは大きくなります。
厳密に考えると、SOの会計的なコスト認識は株主の承認の後にはなりますが、会社が過去に付与したSOについて一定の合理的なオプション評価モデルを利用した評価を示すことによって、株主の情報収集・分析コストを現金報酬と同様のレベルに近づける効果は得られるでしょう。
この意味において、SOの費用認識は、経営陣への報酬の「歯止め」を実効的にすることに役立つことになると思われるのですが、CBをはじめとした第三者との交渉の末に発行条件が決定されるファイナンス目的のオプションの場合には、この趣旨は必ずしも当てはまるものではありません。
(中略)
ただ、SOについては、そもそも対価が金銭的なものではないので、一定の「評価」をかませた数字を会計的に計上するということが「必須」ですが、CBのようなファイナンス目的のオプションについては、発行時点で対価としてのキャッシュが流入していますので、特に会社側で「評価」というプロセスをかませなくても、これまでのどれだけの額のファイナンスがなされたのか新規金融債権者は知り得ます。
(中略)
従って、仮にSOにとっては「評価」に基づく数字を提示することが必要だとしても(※)、そのことから直接にファイナンス目的のオプションの発行について、対価として流入した額以外に、あるいは、それよりも、会社による「評価」の入った数字を計上することが望ましいということにはならないのではないでしょうか?

ということで、47thさんは、ストックオプションと違ってCBの場合には、(社債部分と新株予約権部分がゴッチャとはいえ)、「独立当事者(間)取引」(arm’s length transaction)であったので、新株予約権部分をあえて区分して表示する必要はないんじゃないか?というお考えと読めます。
しかし、これはちょっとおかしいですね。
というのも、「転換社債」の要件を会計上満たさない新株予約権付社債(昔の商法の分離型・非分離型のワラント債など)については、会計上「区分法」が強制され、オプションバリューの部分を表示しないといけないことになっているからです。
「転換社債でない新株予約権付社債」も「独立当事者間取引」として発行されることがほとんどのはずで、会計基準は「arm’s lengthで流入した資金については新株予約権の価額を分離しなくていい」とは考えてないわけです。(それが、まさに「セカンドインパクト」を引き起こした原因だったわけで。)
つまり、会社法による大きな転換は「オプションの公正価額は算定できるのが前提」ということであり、今や(この5月以降)、新株予約権の価額を会計上計上しなくていいのは、「転換社債」の要件を満たす場合だけであって、数学っぽく書くと、下図のように、(特に公開企業の場合)この部分だけが唯一の「特異点」になっているように思えます。
image003.gif
しかも、この特異点は「外部からは観測できない事象の地平線(ブラックホール)の内側」にある特異点ですね。
「費用ゼロ」の資金調達のインセンティブ
ワラント債市場が一夜にして消滅した「セカンドインパクト」の原因を考えてみると、(節税の機会を放棄してまで)「金利コストゼロ(または非常に小さい額)」で資金調達できるというのは、会社の財務担当者にとっては極めて強いインセンティブを持つものだ、ということが言えるのではないかと思います。
(会計上の「見え方」ではなく「実態」を考えてみれば、区分法を採用して社債発行差金償却を費用計上し、キャッシュアウトを減らした方が得なはずで、ここは会計上費用計上した額が永遠に費用計上できない(従業員にとっての)税制適格ストックオプションとは大きく異なるところ。)
会社で一番、財務面での技術的チェックを行う能力があるのは通常、財務部門だと思いますが、その財務部門が「ま、表面上はどこにも出てこないから、多少、株主にしわ寄せが行ってもしゃーないか。金利コストが下がれば我々の手柄になるし。」と判断してCBの発行条件を決める可能性がある場合に、その条件は、本当に「独立当事者間取引だから心配ない」と考えていいんでしょうか?
金利上昇局面でも違和感ないか?
今までは金利がべらぼうに低い局面でしたので、仮に新株予約権の公正価額がちゃんと金利の削減額とほぼ一致しているとするならば、新株予約権の価額もさほど大きなものにならなかったはずです。
しかし、今後金利が急上昇したりして、新株予約権の価額が転換社債の価額のかなりの部分(例えば4割とか)を占める場合でも、それを金利コストとして開示しないというのは、みなさん違和感ないんでしょうか?(ストックオプションの費用は認識されるのに・・・。)
誰がチェックしてるのか?
こうした価額の妥当性については、開示するしないに関わらず、取締役の善管注意義務上当然、チェックする必要があると考えられます。
ただし、見るからにとんでもない条件でMSCBが発行されてるのを見ると、そういう善管注意義務がどこまでちゃんと果たされているのか、大きな疑問を感じざるを得ないですよね?実際、一般の投資家の方が最も株主と経営陣の利益相反の疑義を感じてらっしゃるのが転換社債の部分ではないかと思うわけです。(金額が数百億円単位だったりと巨額なこともあり。)
「独立当事者間取引だからOKっしょ?」とはとても言いにくい雰囲気。
実際、こうしたCBの発行の実務においては、オプション価額の妥当性について「見ているようで誰も見ていない」状況が発生しているのではないかとも思われます。
つまり、CBを引受ける証券会社は、弁護士さんからの「適法である」という意見書がないと発行は行わないはずですが、弁護士さんは「我々はオプションバリュー計算の専門家ではないので」ということで、そこの部分についてはコミットはしないはず。経営陣が「適法であると考えている」という内容の意見書を弁護士に対して出すのでしょうけれど、経営陣が直接、金融工学的計算をできるケースはほとんどないでしょうし、金融工学の専門家の知り合いすらいないのが普通だと思いますので、証券会社が連れてきた金融工学がわかる「第三者」の算定書を取るか、または「独立当事者間取引だから価額は適切に決まるはず」というような理由で、そういった算定書すら取らないで判断しているのが実態ではないかと思います。つまり、「意見書の堂々巡り状態」ですね。
もちろん、「まじめ」にやってらっしゃる企業さんもあるのでしょうけど、「開示もされないんだから、そんなややこしいことを考える必要ないじゃん?」ということで、そのへんがあまり深く考えられないのが今までの実務だったんじゃないでしょうか。
また、従来は、そもそもそういうオプションの公正価額を算定できる人がどこにいるかさえ知られていなかったので、実務上は、それを計算しなかったとしても「著しく注意義務を欠いた」とは判断されなかったかも知れません。
しかし、(良くも悪くも)ストックオプション会計が始まっちゃった今、(区分法を採用するかどうかにかかわらず)、CBにおいてもそういう「オプションバリューの公正な価額が、削減できる金利コストと見合っているか」を考慮することは、取締役の善管注意義務上、欠くべからざるものになった、と考えておく必要があるのではないでしょうか?
もし転換社債に区分法が強制されたら・・・
そして、もし仮に、転換社債にも区分法が強制される(か、または公正な価額について注記くらいは義務づけられるような)ことになったとしたら、その「公正な価額」の算定方法については会計監査人によるチェックが入ることになりますし、一般の投資家の目にもふれることになります。
「特異点」を「事象の地平線」に取り囲まれた外からは見えないものとして取り扱うのか、注記で開示して「裸の特異点」として扱うのか、そもそも他の新株予約権の取扱いと同じにして「特異点」で無くすべきなのか。
この問題は、一般の企業人から見ると、まさに「相対論」と同じくらいややこしいこの問題に映ると思いますが、ややこしいから考えなくていいかどうかは微妙。
ライブドア事件で、ホリエモンは「違法である可能性が高い」と明示的に宮内被告から聞かされていたのか、聞かされていなかったが違法であると判断する注意義務があったのか、それともそこまでの義務は無かったという判決になるのか。
もし、「会計の専門家でない経営者に、そこまでの注意義務は無かった」とされるのであれば、全国の取締役のみなさんはかなり枕を高くして眠れると思いますが、ホリエモンが「有罪」ということになるのであれば、上述の転換社債の問題も(たとえそれがMSCBでなくても)、取締役のみなさんには大いに関連することになる可能性大ではないかと思います。
(続く)

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