会社法下のストックオプション(注記の基準の変更編)

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企業会計基準委員会から、昨日5月31日付で、「『ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針』の改正」というリリースが出ました。
企業会計基準適用指針第11号
「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」の改正
http://www.asb.or.jp/j_technical_topics_reports/stockop2/

 平成17年12月に公表された、企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」(以下「会計基準」という。)及び企業会計基準適用指針第11号「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」(以下「本適用指針」という。)は、会社法(平成17年法律第86号)の施行日(平成18年5月1日)以後に付与されたストック・オプション等から適用することとされていますが、それより前に付与されたストック・オプションであっても会社法の施行日以後に存在するものについては、一定の注記が求められています(会計基準第17項)。このため、これに該当するストック・オプションについては、会計基準第16項(2)及び改正前の本適用指針第25項(8)の規定に基づき、遡って「付与日における公正な評価単価」を算出し注記することが求められるのではないかとの指摘がありました。
 当委員会は、会計基準及び本適用指針の趣旨は、これらに基づく会計処理が求められていない会社法の施行日より前に付与されたストック・オプションについてまで付与日における公正な評価単価の注記を求めるものではないことを確認し、この点を明確にするため、第105回企業会計基準委員会(平成18年5月30日開催)において、本適用指針について次の改正を行うことを承認いたしましたので公表いたします。
 なお、本適用指針の改正は規定の趣旨を明確にするものであるため、公開草案の手続を経ずに公表するものです。
以 上

上記のとおり、会社法施行「前」に発行されたストックオプションについては、(当然、費用計上はしなくていいわけですが)、注記での開示はしなくてはいけないことになってました。
この注記は、会社法施行「後」に発行されたストックオプションよりは項目がかなり省略できることになっているので、「さすがに会社法施行前の分は楽にしてくれてるんだろうなあ」、と思いきや、適用指針25を読むと、最もヘビーな公正価値(オプションバリュー)の計算をしなくてはいけないようにしか読めない内容だったわけです。
このため、
「これは、過去のストックオプションについても公正価値を計算しろ(ブラックショールズ式から勉強せーい!)という趣旨だ」
という条文に沿ったコンサバな解釈(見まわしたところ多数派)や、
「基準の全体のオーラとしては、過去の開示については負担が軽くなるように配慮されてるので、なんかの間違いじゃないの?」
というノーテンキな解釈(見まわしたところ少数派:含む、私)が入り乱れ、よくわからないので、
「1Qの四半期開示で7月までには計算しないといけないってこと?」
「もう、あと1ヶ月ちょっとしか時間がねーぞ!」
「オプションバリューつっても誰が計算すんだ?」
「書店でオプションの計算方法の本を探してきまーす!」
「(そこからかい!)」
など、全国の会計実務の現場では、阿鼻叫喚の地獄が繰り広げられてました。(と、想像。)
詳細
ちなみに、具体的には、今までの「ストック・オプション等に関する会計基準」の16では、

16. 次の事項を注記する。
(1) 本会計基準の適用による財務諸表への影響額
(2)各会計期間において存在したストック・オプションの内容、規模(付与数等)及びその変動状況(行使数や失効数等)。なお、対象となるストック・オプションには、適用開始より前に付与されたものを含む(第17項)。
以下、(3)〜(7)略

とありますが、referされている次の17を見ると、

17. 本会計基準は、会社法の施行日以後に付与されるストック・オプション、自社株式オプション及び交付される自社の株式について適用する。 ただし、第16項(2)の開示については、会社法の施行日より前に付与されたストック・オプションであっても、会社法の施行日以後に存在するものについて適用する。

と、会社法の施行日より前に付与されたストックオプションについては、16の(1)および(3)〜(7)については注記しなくていい、と書いてあります。
こりゃ楽でいいわ、と思っていると、唯一注記しなきゃいけない(2)の「内容等」の具体的項目を定めた、「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」25を読むと、

(ストック・オプションの内容、規模及びその変動状況)
25. 当該会計期間において存在したストック・オプションについて、ストック・オプションの内容、規模及びその変動状況として、次の事項を注記する。
(1) 付与対象者の区分(役員、従業員、などの別)及び人数
(2) ストック・オプションの数(権利行使された場合に交付することとなる株式の数で表示する。当該企業が複数の種類の株式を発行している場合には、株式の種類別に記載を行う。)
(3) 付与日
(4) 権利確定条件(付されていない場合にはその旨)
(5) 対象勤務期間(定めがない場合にはその旨)
(6) 権利行使期間
(7) 権利行使価格
(8) 付与日における公正な評価単価
(9) 権利行使時の株価の平均値(当該会計期間中に権利行使されたものを対象とする。)
(以下略)

となっていて、他の淡々と過去のストックオプションの要項等から書き写すだけの作業でいい項目に対して、もっともヘビーな「公正な評価単価」を(計算して)注記しなければならないとしか読みような書き方になってたわけです。
しかし、
昨日付のリリースで、この(8)の直後に、

(会社法の施行日以後に付与されたストック・オプションに関する評価単価をいう。)

と付記され、会社法施行以前のストックオプションについては、注記しなくていいことが明確になったわけです。
(めでたしめでたし。)
今日あたり、
「せっかく、勉強し始めたのに!」
と、買ってきた「オプション理論入門」的な本を床に叩き付けている経理部門の方々が、全国に約28人、
「よ・・・よかった・・・」
と、涙を浮かべながら床にへたりこむ経理部門の方々が16人・・・程度いらっしゃるのではないかと妄想。
(ではまた。)

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2 thoughts on “会社法下のストックオプション(注記の基準の変更編)

  1. 2006年5月1日付で「ストック・オプション等に関する会計基準」が適用されております。これに準じた会計処理のフローを教えてください。