Verizon・YouTube提携

またしても、YouTubeネタに強いThe Wall Street Journalが第一報。

Verizon, YouTube Aim To Bring Web Videos To Cellphones, TV
Date: Tue, 7 Nov 2006 04:07:05 -0500 (EST):(日本時間18:07)
Verizon Communications Inc. is in advanced talks with YouTube Inc. to bring the popular Web site’s videos to cellphones and television sets, in what would be a landmark link-up between telecom and Internet video.
(以下略)

http://wsj.com/article/SB116287347794115326.html
(有料)
パケット定額の携帯電話でYouTubeが見られるようになったら、少なくともワンセグなんかよりは全然ニーズがあること間違いなし。
(先日、電車に乗りながら、FOMAのM2501で自宅のロケーションフリーにアクセスしたら、家のHDDビデオに録画してあった画像がすごくなめらかにパソコン画面で見られたので、いたく感動しました。つまり、日本も技術的には「どこでもオンデマンドテレビ」は、すでに全く可能なわけです。が、同時に、パケットも10秒で1MB[約150円]くらい平気ですっ飛んでいくので、怖くなって30秒くらいで止めました・・・[苦笑])
ただ、アメリカの携帯の画面やファイバーの普及度って、現在、どんな感じなんでしょうか?
記事中にも、

Verizon said it had 522,000 customers for its fiber-based Internet service and 118,000 TV customers.

などという記述もあり、光ファイバーの普及度では、日本に全然追いついてないようですね。
ということで、日本の方が「技術的なインフラ」ははるかに進んでますが、「電話会社やテレビ局のエラい方々がYouTubeと組む気になるかどうか」といった「マインド面」は、変わるのに非常に時間がかかりそうであります。
かくして、米国でどんどん「既成事実」が作られていって、旧来的なテレビのビジネスモデルが崩れていくのを横目で見る日々が続くんでしょうけど、どう考えても、3〜5年以内には、日本のテレビ業界も、ガラガラと音を立てて変化せざるを得ないんではないかと。
YouTubeとの提携とかいう話となると、またもや、まっさきに「あの会社」さんが、やってくださるんでしょうね、きっと。(1年半後くらいまでには。)
(ではまた。)

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本日の島耕作

新シリーズ第一回目の本日発売号、冒頭のシーンにて。

万亀会長:
島耕作君を専務取締役に選任する議案について決議をとりたいと思います
異議はございませんか
(議場):異議なし
異議なし
万亀会長:
過半数の同意ありと見做し 商法二六〇条の二の規定に従いまして
島耕作君を専務取締役に選任いたしました

ここで2つのことに気づいたんですが。
島耕作は(「ヤング島耕作」と違って)、リアルタイムでドラマが進行してるのかと思ってたんですが(103型のプラズマディスプレイをインドでお披露目するなど)、今週号までの話は、少なくとも今年4月以前のものだ、ということですね。
もう一つ。(私、初芝電産のような大企業のおごそかな取締役会に出たことないのですが)、このクラスの企業になると、取締役会の決議の際に、根拠法令の条文を言うんですかね?
旧商法第二六〇条の二、というのは、

 取締役会ノ決議ハ取締役ノ過半数出席シ其ノ取締役ノ過半数ヲ以テ之ヲ為ス但シ定款ヲ以テ此ノ要件ヲ加重スルコトヲ妨ゲズ
(以下略)

ですが、わざわざ読み上げるには、あまりに一般的な規定なような気も。
おそらく、定款に役付取締役の規定があると思いますので、言うとすれば、「定款第19条の規定に従いまして」、といった感じではないかしらん。
−−−
以前のエントリに書かせていただいたとおり、初芝電産のコーポレートガバナンスは、もともとあまりイケてないような気がしますが、逆に、そういう(あまり意味があるとは思えない「プロトコール」があったりする)方が、日本の大企業を題材とした漫画としては「リアル」かも知れませんね。
(ではまた。)

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プログラマ様に命預けます(2006年車の旅)

7年前に買った前の車の走行距離が、あと7000キロで10万キロ達成という状況になってきたので、先月、思い切って「エスティマ・ハイブリッド」を発注。
学生のときはじめて買った車が、バイト先のガソリンスタンドのOBから買った、「ケンメリ(スカイライン、HKSボルトオンターボ、MOMOのハンドル、ブレーキパッド:フェロード、ホイール:RSワタナベ、強化サス、強化クラッチ)の中古」だったオジサンとしては、「エスティマ=ぬるそ〜」というイメージでしかなかったわけですが、
以前、小倉優子嬢がこりん星から乗って来る「いちごの馬車」が実は「エスティマ」だということをテレビでカミングアウトしているのを見てから(笑)、ちょっと気になってました。
気にしてみると町中でよく見かけるので、統計を見てみると、なんと日本で4番目に売れてる車だとのこと。
hanbai_ranking.jpg
ハイブリッドの生産はラインが混んでいるので納車は来年になりそうですが、ワクワクして待っていたところ、(ハイブリッドではないようですが)エスティマ4WDのリコールがかかってます。

4輪駆動車のABS(アンチロックブレーキシステム)の制御プログラムが不適切なため、凹凸路面等でABSの作動を制限する制御が不十分になる場合があります。そのため、低速走行時に凹凸の続く下り坂の路面においてブレーキ操作した場合に、運転者の予測より制動停止距離が伸びるおそれがあります。

エスティマ・ハイブリッドも、「ブレーキ・バイ・ワイヤ」だとのことで、ブレーキがかかるかどうかは「プログラム」に任されているわけです。(おそらく)
なんでかというと、基本的には、運動エネルギーをブレーキパッドで熱エネルギーに変えるのではなく、なるべく回生ブレーキで電気エネルギーに変えて充電しないといけないので。
ブレーキパッドで「古典的」にブレーキをかけるのか、21世紀的に回生ブレーキを使うのか。その切り替えは、「プログラム」に任されるわけで、私の命、プログラム様にお預けする、ということですね。2001年宇宙の旅みたいにならないようによろしくお願いいたします。
(ではまた。)

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政府系金融機関、格付け最上級に

10月31日、日経新聞朝刊 5面

政府系金融機関、格付け最上級に——ムーディーズ、国債上回る
米格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは三十日、日本政策投資銀行など政府系金融機関の格付けを最上級のAaa(トリプルAに相当)にすると発表した。従来は国債と同格のA2(シングルAに相当)だった。市場では「政府系機関の格付けが国債を上回る逆転現象は疑問」(国内機関投資家)との声が出ている。

そうかなあ。
証券化の世界では、なんでもかんでもごっちゃに入ったドンブリより、一部きれいなところを切り出したvehicleのほうが格付が高くなるのは、非常にmake senseですが。

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あらあら(消費者金融3社、大幅赤字に)

消費者金融3社、大幅赤字に=中間期予想を下方修正−灰色金利、返還で引当金(時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061030-00000096-jij-bus_all

消費者金融大手のアコム、アイフル、プロミスの3社は30日、2006年9月中間期の連結最終損益予想を下方修正し、従来の黒字見通しからそろって大幅な赤字に転落すると発表した。赤字額は、最大のアコムで2821億円。中間期の赤字転落は、3社とも株式上場後初めて。利息制限法の上限(年15〜20%)を超える「灰色金利」の返還に備えて引当金を積み増すため、巨額の特別損失を計上する。

ここしばらく、ノンバンクの経営関係のみなさんと話すと、どなたも「いやーもー、たいへんですわ」的な反応だったので、おぼろげながら予想された事態ではありましたが。
「グレーゾーン(=原則無効)」であっても収益に計上していた部分について、任意弁済の基準が厳しくなったから引当金計上、ということでありましょうが・・・さて、ここで一つ疑問が。
この場合の引当金の計上額算定の方針として正しいものは、次のうちどちらでしょうか。
(1) 法的に返還義務があると認められるグレーゾーン金利の額全額について引当金を計上する。
(2) 法的に返還義務があると認められるグレーゾーン金利の額のうち、実際に返還することになる可能性が高いと合理的に見積もられる金額のみを引当金に計上する。
(1)だと、引当金の計上基準(企業会計原則注解18)からして「過度に保守的(注解4後段)」じゃないか(つまりGAAPに添っていない)という気もしますし、(2)だと、「請求されなきゃ返さない気?この期に及んで、まだ反省が足らん!」と、社会からまたまたバッシングを受けそうであります。
合理的に見積もるといっても、過去に例もないので、どう見積もればいいのか。見積もれないから、結局、法的な返還義務がある部分全額を計上することになるのか?
それとも、過去に任意弁済した人を草の根を分けてでも探し出して、全額返金するんでしょうか?(それも、非現実的。)
各社さん、考え方は同じなのかしらん?日本公認会計士協会等から、何か通達とか出てましたっけ?
(とりあえず、備忘メモまで。)
■追記(31日13:00):
やべっちさんより、コメント欄で、「リサーチ・センター審理情報〔�24〕「「貸金業の規制等に関する法律」のみなし弁済規定の適用に係る最高裁判決を踏まえた消費者金融会社等における監査上の留意事項について」の公表について」に載ってますよ、と教えていただきました。
ありがとうございます。
やっぱ、(2)ということになりますよね。(要するに、法的な観点からは、「グレーな膿」を完全に出し切ったすっきりした状態にはならないが、経済的には「ま、こんなもんかな」ということですね。)
問題の見積もり方法ですが、

過去の返還実績を踏まえ、かつ最近の返還状況を考慮する等により返還額を合理的に見積もり、

とありますが、やっぱり、ここが一番難しいところで、どういうロジックにするかで、各社の対応も分かれているのかも知れません。
(ご参照:http://db.jicpa.or.jp/visitor/search_detail.php?id=514
ただし、「一般の方」という方をクリックしていくと、「このファイルは会員の方のみダウンロードできます」と、ふざけたメッセージが出てきて、会員でない方はご覧になれません。あしからず。
業種別委員会報告第37号
消費者金融会社等の利息返還請求による損失に係る引当金の計上に関する監査上の取扱い
http://db.jicpa.or.jp/member/documents/toshin_dl.php?id=3505

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政治家への資金提供(?)とベンチャー企業のvaluation

2006年10月27日付、朝日新聞の「SBI、自民・小林氏側に3億数千万円の資金 国税指摘」という記事から。
http://www.asahi.com/national/update/1027/TKY200610270244.html

 東京国税局から三十数億円の所得隠しを指摘された総合金融グループの持ち株会社「SBIホールディングス」(東京都港区)が、同社の運営する投資ファンドの株取引にからみ、初当選前の自民党の小林温参議院議員側に約3億数千万円の資金を提供したとの指摘を受けていたことが関係者の話で分かった。国税局は、投資を装った利益供与だったとして、寄付金と認定した模様だ。
 関係者によると、小林氏が社長を務めていたインターネット関連会社は00年4月設立。SBI社が運営する投資ファンド「ソフトバンク・インターネットテクノロジー・ファンド」が同年9月、小林氏の会社の株式を約3億5000万円で取得し、同年12月には小林氏が個人で保有する同社株を3億数千万円で購入したとされる。
 国税局は小林氏が保有していた株の購入について、(1)公認決定の時期に近い(2)購入時点で同社の事業は行き詰まっており、3億数千万円もの高額で購入するのは不自然——などの点から、実質的にはSBI社から小林氏側への寄付金だったと認定した模様だ。
(中略)
 〈SBIホールディングスの話〉 株購入当時、(小林氏が)議員になる意図を有していたとの認識は全くない。これまでも政治家への資金提供を行った事実は一切なく、今後も予定はない。

本件が、実際に有力な立候補予定者への資金提供を意図したものだったのか、それとも純粋な投資だったのかどうかは、もちろん私が知るよしもありませんが、以下、一般論として。
税務当局から見て「不自然」というだけで寄付金にされても困る
上記の記事だと、株式の何%を3億数千万円で購入したのかがよくわかりませんが、2000年のネットバブル当時だと、利益が出てなきゃ実績もないネットベンチャーが数十億円のvaluationで投資を受けるなどというのは日常茶飯事。(・・・というか、その中でも、SBIさんは、当時、大型のファンドを立ち上げ、最も「積極的」な感じで投資をされていた一社であったというのは、みなさんのご記憶に新しいところかと思います。)
一方、東京国税局が「(2)購入時点で同社の事業は行き詰まっており、3億数千万円もの高額で購入するのは不自然」というところの、「事業は行き詰まっており」という部分の認定についてですが。
ベンチャー投資において、単に「赤字であった」とか「その後、会社がつぶれた」というだけで、「寄付金だ!」と言われても、ベンチャー投資の実務家のみなさんはたいへん困るわけです。
今はまだ利益が出ていなかったり、将来どうなるかわからないから「ベンチャー」なのでありまして、特に、創業間もないシード段階の企業が、「赤字だから不自然」とか「投資した後に破綻したじゃないか」と言われましても・・・。
Valuationというのは、経済的にはDCF(Discounted Cash Flow)、つまり、その企業が将来的に産み出すキャッシュの現在価値、を中心として価値が決まってくるはずです。
一方で、特に、税務当局の方は、企業価値(株価)の評価というと、「時価純資産」とか「類似業種比準(純資産、利益、配当等のマルチプル)」的な感覚しかお持ちでなく・・・をベースとしてお持ちでらっしゃるので、「将来の予想キャッシュフローを (1+r)nで割って現在価値を出すので」てなことを申し上げても「何じゃそりゃ」という感じとしかとらえてもらえないでしょうし、寄付金かどうかを争っている時に、疑われてる本人がいくらそんなこと力説しても、「煙に巻こうとしている」と思われるのがオチ。
今後の投資実務はどうすればいいのか
そういう場合に重要なのは、一つにはやはり、「独立性のある第三者の評価」じゃないでしょうか。
(ファンドのGPとして、善管注意義務上、投資する価格を妥当とする根拠を自らきちっと考える必要があるというのは当然とした、その上で、ですが。)
投資を実行する前に、そうした第三者の評価を参考に意思決定した、というエビデンスがあれば、寄付金認定されるリスクも、かなり減るんじゃないかと思いますし、なんであれば、不服審判、裁判などで争っても勝てる可能性はかなり高まるのではないかと思います。
投資したベンチャー企業がその後ツブれたからといって、いくらなんでも、今後は、全部が全部、寄付金認定されるということにはならんでしょうから、これからのベンチャーキャピタルの実務において、すべての案件で必ず第三者の評価を取れ・・・というのも現実的ではないかも知れません。
ただ、政治家に立候補しそうな人が関係者にいる場合など、純粋な投資以外のインセンティブが存在する外観がある場合には、必ず、独立した第三者の評価を取得せよ、といった内規や慣習は作っておいたほうがいいんじゃないでしょうか。
また、上記記事のSBIホールディングスさんのお話として、「株購入当時、(小林氏が)議員になる意図を有していたとの認識は全くない。」とのこと。それでも、寄付金認定されたということは、東京国税局側には「ホントに知らなかった」とは理解してもらえなかったということでしょう。
投資契約の際のベンチャー企業側の「表明と保証」において、「反社会勢力の株主もいないし、そういったところとつきあいも無い」といった条項を入れるのは通例になっているかと思いますが、今後はそういった条項の他に、「政治家に立候補する予定はない」といった項目も付け加える必要があるかも・・・。(苦笑)
今、ベンチャーへの投資は再び加熱期に入っております。まだ利益はおろか実績もあまり出てない、どー見てもイケてなさそうなビジネスモデル会社に、すごいvaluationが付いてるのを見るにつけ、「バブル期か!」とツッコミを入れたくなる今日この頃。
日本は、(増えつつあるとは言え)まだまだベンチャー企業を始めようという元気のある人は、(シリコンバレーなどに比べると)少ないんですが、金融資産だけはあふれるほど存在するため、どうしても需給バランス上、ベンチャー企業の価格は高くなりがちであります。そうなると、取引価格が、前述のDCF的な理論価格すら超えることも頻発しえます。
「需給バランス」や「価格交渉」というのは、資本主義の根幹である市場メカニズムそのものでありますので、そこで決定される価格がDCF等から計算される理論価格を上回っているからといって、たちどころにそれが否定されるべきではないと思います。GoogleやYahoo!も、「会計士等がvaluationした株価に従って投資したから生まれた」わけではないはず。
しかしながら、そういった土壌においては、寄付金認定されるリスクは基本的に高いわけですから、ベンチャー投資を盛り立てていくためにも、今後、そのへんのリスクについても十分、お気を付けあそばされますよう、お願い申し上げます。<(_ _)>
(ではまた。)

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コンテンツと国境

ひさびさに、taka-mojitoさんからコメントいただきました。

磯崎さん、とんとご無沙汰しております。この夏からGoogle本社のご近所にきており、そろそろ日本のテレビ番組が恋しくなってきたもので「一人You Tube」に反応してしまいました。ぼくのために誰かにロケフリを設置してほしいくらいですが、「一人You Tube」でないといろいろ問題がありそうですね(実家にロケフリを設置するのであればセーフかもしれませんが。)。

おひさしぶりです。
先日、ひさびさにブログを拝見して、「あれ、海外に行かれたんだー」と思っておりました。
さて、ご存知かと思いますが、海外へのテレビ番組データの送信の適法性については、以下の差止請求に関する記事がご参考になるかも知れません。
「録画ネット」の事例
録画ネット社裁判記録
http://www.6ga.net/x_shiryo.php
「録画ネット裁判」で明らかになったタブー(2005/12/05)
http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0512/05/news015.html
このサービスでは、ロケフリではなく、サーバーを使っていた、というところが一つのポイントです。
2004年7月30日に、NHKと在京民放5局から東京地裁に対し、「録画ネット(http://www.6ga.net/)」社のサービス停止を求める仮処分の申し立てが行われ、
2004年10月7日に、サービス停止の仮処分。
録画ネット側が異議申し立てを行うものの、2005年5月31日に、異議審で録画ネットが負け、2005年11月15日、知的財産高等裁判所でも、抗告棄却となったようです。
(録画ネット社のリリースを見ると、その後、録画「も」できるサーバーの販売サービスを引き続きやってるようですが・・・。)
この異議審の中で、決定は「業者側の管理・支配の程度等と利用者側の管理・支配の程度等を比較衡量して決するべき」、としてます。
この業者は、利用者に「販売」したサーバーをハウジングするという論理を取っているにも関わらず負けているので、この決定の論理で行くと、「ITに強い友人」などに頼んで金だけ払って機械の設置までやってもらうとアウトかも知れませんし、taka-mojitoさんが帰国された時に自分で設置して、ご実家の方も「ITには弱い?」場合には、自らが操作しているのでOKということになるのかも知れません。(後述の「まねきTV」のケースも参照。)
もう一つ、上記のITMEDIAの記事で、日本の放送局が仮処分申請したのも、オリンピックなどは、放映権の契約上、放送地域を日本国内に限定しなければならないから、としているところが「へー、なるほど」という感じです。
では、視聴者と放送局の関係(契約)において、国外への送信はどう扱われているのか。
民放の場合、民放と視聴者が契約してテレビ番組を見ているんではないと思いますが、NHKの場合、NHKと視聴者が直接契約しているので、この契約の中身が問題になるかも知れません。
NHK受信契約を味わってみる
ということで、子供のころからNHKにお世話になっているにも関わらず、生まれて初めて受信契約(規約)というものを読んでみました。
日本放送協会放送受信規約
http://www3.nhk.or.jp/eigyo/kiyaku/kiyaku_01.html

放送法(昭和25年法律第132号)第32条第1項の規定により締結される放送の受信についての契約は,次の条項によるものとする。

以下、さらっと読む限りでは、「たとえ私的複製であっても、日本国外に複製データの転送等を行ってはならない」といった制限は書いてないようですね。
ただ、海外赴任される方が、実家にロケフリを置く場合に、受信契約をもう一つ締結する必要があるのかどうか、という論点はあります。

放送受信契約の単位
第2条 放送受信契約は,世帯ごとに行なうものとする。ただし,同一の世帯に属する2以上の住居に設置する受信機については,その受信機を設置する住居ごととする。
2 事業所等住居以外の場所に設置する受信機についての放送受信契約は,前項本文の規定にかかわらず,受信機の設置場所ごとに行なうものとする。
3 第1項に規定する世帯とは,住居および生計をともにする者の集まりまたは独立して住居もしくは生計を維持する単身者をいい,世帯構成員の自家用自動車等営業用以外の移動体については住居の一部とみなす。
4 第2項に規定する受信機の設置場所の単位は,部屋,自動車またはこれらに準ずるものの単位による。
5 同一の世帯に属する1の住居または住居以外の同一の場所に2以上の受信機が設置される場合においては,その数にかかわらず,1の放送受信契約とする。この場合において,種類の異なる2以上のテレビジョン受信機を設置した者は,次の順位で適用した種別の放送受信契約を締結するものとする。(以下略)

「子機」側の扱い
まず、私が自宅のロケフリ経由でNHKの放送を事務所で見る場合、事務所のパソコンは、受信規約における「受信機」に相当するのか?
ちなみに、私の事務所の区画には、ビルの共聴アンテナは来てませんし、(パソコン以外の)通常の概念でいうところの「受信機」は、事務所には存在しません。
パソコンや光ファイバー単独で「受信」をすることはできないので、これを「受信機」とするのは、ちょっと厳しいんじゃないかと思います。
法人が同居するオフィスの場合どうなる?
また、上記の第2項の主旨は、ビジネス用のスペースに設置されたものは、住居用とは別に契約しなさいよ、ということだと思いますが、「(略:事業者の場合、)放送受信契約は,前項本文の規定にかかわらず,受信機の設置場所ごとに行なうものとする。」ともあるので、(私の事務所のビル、場所柄、証券化SPCなどの法人が同じ事務所内に多数同居しているところがいっぱいありそうですが)、テレビが1台で同じ住所で法人格が10個ある場合に、「法人ごとに10契約必要だ」てなことは言われなさそうであります。
磯野家の場合は?
一方、第2条第3項には、「第1項に規定する世帯とは,住居および生計をともにする者の集まりまたは独立して住居もしくは生計を維持する単身者をいい,」とあります。
「または」の後が、「独立して住居もしくは生計を維持する単身者をいい」と「or」条件になっているので、「同じ家に住んでても生計が別の単身者は、別に契約しろよ」、という趣旨だと思うのですが、じゃあ、「”マスオさん”のように生計が別で同じ家に住んでいるけど単身者ではない人は、該当しないか?」というと、当然、「磯野家とフグ田家で2契約してもらうこと」を意図しているはず。
なぜ「単身者」なんて言い回しをするんでしょ??
ロケフリ本体は「受信機」か?
第1条第2項には、「受信機(家庭用受信機,携帯用受信機,自動車用受信機,共同受信用受信機等で,NHKのテレビジョン放送を受信することのできる受信設備をいう。 以下同じ。)」とあるので、ロケフリ本体自体は「受信機」に該当するんでしょうね。(「画面」は無くても、「受信」はしてるんでしょう。)
とすると、ご実家と「住居がいっしょでなく、生計も別」であろうtaka-mojitoさんは、当然、NHKの受信契約を、ご実家とは別に結ばなければならない・・・ように思われます。
事業者のカーナビやワンセグは受信料を払わないとあかんのか?
第3項を見ると、家庭用の場合には、「世帯構成員の自家用自動車等営業用以外の移動体については住居の一部とみなす。」とあるので、自家用自動車にカーナビについているテレビや、携帯電話のワンセグについては、別途受信契約は必要ないようです。
一方、第4項を見ると、「第2項(注:事業用)に規定する受信機の設置場所の単位は,部屋,自動車またはこれらに準ずるものの単位による。」とあるので、法人や個人事業で購入した(経費で落としている)車のテレビや携帯についているワンセグについては、それぞれ1台ごとに契約しなくちゃいけないんでしょうね。
事業者の方は、へたにワンセグ付きの携帯を従業員用に買ってはアカン、ということですね。
実際、大企業などは、休憩スペースごとのテレビとか、役員用自動車などのテレビごとに、NHKと受信契約を結んでいるんでしょうか?
まねきTV:ずばり「ロケフリ」を使ったケースの例
同じくITメディアの記事です。
ロケフリ利用の遠隔視聴サービス、中止求めるテレビ局の申し立て却下
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0608/07/news066.html

 国内のテレビ番組をインターネット経由で海外などから視聴できるようにしたサービスが、テレビ局の著作権(送信可能化権)を侵害しているとして、NHKと在京キー局5社が業者にサービス中止を求める仮処分を申し立てていたが、東京地裁(高部眞規子裁判長)はこのほど、申請を却下した。
サービスは永野商店(東京都)の「まねきTV」。ソニーのロケーションフリー(ロケフリ)用ベースステーションを個人ユーザーから預かり、設定済みエアボードを使って海外出張先から番組を視聴できるようにするもの。

同記事にあった、決定文のリンク
http://www.chronoworx.jp/maneki_tv/info/20060804.pdf
・・・・ということで、こちらは今年の8月4日に、業者の方が勝っているもよう。
多目的に使えるサーバーだと負けて、放送データの転送にしか使えないロケフリだと勝つ、というのが、非常におもしろい。
上記資料では、債権者(放送局)側の主張として、「海外の権利者から国内に限った放送としてライセンスを受けている」ので、「本件サービスのような事業が日本法上適法とされてしまうと」、日本の放送局にはライセンスしてもらえなくなるんじゃないか、みたいなことも主張されてます。
また、債務者(業者)側としては、
・ロケフリの保管は業者が行わなくても自分でもできること。
・ソニー自身が「海外在住者向けサポート」として、取付作業や環境設定を行っていること。
・ロケフリは、「社会的に好意的に受け止められている商品」であること。
などを主張しているところが面白いですね。
なお、債務者側が

(ロケフリ自体に、)CMをカットする機能がないので、債権者らのCMスポンサーの利益を損なうことがないこと

をあげてますが、さらっと読んだ限りでは、放送局側はそれについては何も言ってない模様。
HDDビデオメーカー自体にたいして「事を構える」のは、また別の戦略的判断が必要だということでしょう。(「チャプターを飛ばす機能は、放送事業者の利益を著しく損なう」と主張したら、HDDビデオの製造差し止めとかできるんでしょうか。CMを自動的にカットするのはまずいけど、チャプターを飛ばすのは、視聴者の勝手ですから、放送局も、それは厳しいと判断されているのかも知れません。)
弁護側は、藤田 康幸、志村 新、水口洋介、小倉秀夫の4名の弁護士の方々。藤田先生は、「法律業務のためのパソコン徹底活用Book」という本の原稿を書かせていただいた時にお世話になったんですが、他のみなさんもIT系にお強そう。
また、(そうは言ってませんが)、この製品を「ソニー」という企業が作っているところが、決定に大きく影響を与えたのは間違いないところでしょう。
ということで、「ロケフリ」の場合、今のところ「シロ」ということですね。
「まねきTV」のホームページ
http://www.manekitv.com/
を見ると、

NHK及び民放5社より仮処分申立却下決定に対する抗告が申し立てられました。

とのことですので、今後にも注目です。
まとめ
法律上の理屈はともかく、本件の本質は、このネットの時代に、何のプロテクトもかけずに放送されているコンテンツを、国境とか放送・通信といった区分で仕切ること自体、技術的にはほとんど意味が無い(「JM(記憶屋ジョニイ)」的世界だ)、ということでありましょう。
ロケフリやYouTubeは、そうした転換期に、そうした「矛盾」を気づかせてくれる製品であり、サービス、ということかと思います。
5年後、放送って、どうなっちゃってるんでしょうか。
(ではでは。)

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本日の物欲(ソニー「ロケーションフリー」LF-PK20)

ソニーの「ロケフリ」
http://www.ecat.sony.co.jp/visual/airboard/products/index.cfm?PD=25714&KM=LF-PK20
を購入。
「ロケフリは、インターネットの技術に相当詳しい人でも、ファイヤーウォールを超える設定等で、かなり苦労するらしい。」
というウワサを聞いていたので、決死の覚悟でビックカメラに入ったんですが、店頭にちょうど10月に発売されたばかりの新機種が。
家に持って帰って、「かんたん準備ガイド」 に従って、電源とアンテナとネット等を差し込んだら、あっという間に つながっちゃいました。
リアルタイムでテレビ番組も見れますし、HDDビデオやDVDなども、遠隔操作で見ることができます。 
<パソコンからネット経由で自宅のHDDビデオの「笑っていいとも」を再生して見る、の図。>
(♪チャッ。チャ、チャ、チャ。)
IMG_01s.JPG
 
一人YouTube状態。
これで、事務所で徹夜の時でも、深夜に息抜きで大爆笑してから また仕事に戻れるわけであります。
(以上)

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RiSuPiaに行ってきた(+日本の理数系人材戦略の未来)

昨日は、息子2人を連れて、有明にある「松下電器産業(株)が有明のパナソニックセンター東京にて運営する理科と数学(算数)の博物館」RiSuPiaに行ってまいりました。
P13s.JPG
「最近の理数系の教育はなっとらん!」といった高い問題意識を持っていたから・・・というわけではなくて、前日、TBS「王様のブランチ」の「ワンコインで激安体験がしたいの!」という特集で紹介されていたのを子供が見て、「行きたい!行きたい!」とせがんだので・・・という、もろミーハーなきっかけで、であります。
入場料500円、さらに中学生以下は無料!という激安っぷり。
駐車場代もタダ。うーん、これは安い。
 
すんごくよくできた施設
入場する時に、こんな、
P16s.JPG
端末を貸してくれて、中に、怪しく光る「エージェント」という生物が生きていて(写真はタマゴ状態)、いろんなアトラクションを体験する度に、このエージェントが成長していく、という構成。
施設内は撮影禁止ということなので遠慮いたしましたが、現代美術館風の内装の中にいろんなアトラクションがあって、相当金がかかってます。
前日、テレビで紹介されたこともあり、開館の10時前から、相当数の人(小学生の親子連れがほとんどで、中にはカップルも)が並んでました。でも、立地がちょっとナニなので、他の日はもっと空いてるんじゃないかと想像。
中のアトラクションの例としては、たとえば、「素数ホッケー」。
ゲームセンターにある「エアホッケー」の素数版で、天井から投影される「自然数」がパックの代わり。
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上記の例は、「714」という数字が来たのを水色のラケットで打ち返して、数字が「2」と「357」に因数分解されたところ。(357は、さらに3で割り切れるので、跳ね返ってきたのをもう一回打ち返さないといけない。素数でないものを打ち漏らして手前のゴールに入ってしまうと減点。)
他にも、パスカルの三角形やフィボナッチ数列、位置エネルギー等々、を楽しく学べる(相当カネのかかった、ビジュアルもよく練られた)アトラクションがあり、「さすが松下はん」、という感じであります。
セットでオススメ「オイラーの贈物」
小学生でもちゃんと楽しめますが、内容的には非常に高度なことを取り上げていますので、予習していくと、もっと楽しめるかも。
最近、上の子(小学5年生)が「コマネチ大学」や、「誰でもピカソ」を見て、「ネイピア数って何?」「虚数って何?」と質問してきてうるさいので、以前、小飼弾さんのブログで紹介されていた
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「オイラーの贈物—人類の至宝e=-1を学ぶ」

を「読め」と差し出したところ、むさぼるように(現在、真ん中くらいまで)読んでます。
私も、Danさんのエントリのアマゾンのリンクを脊髄反射でクリックして買ったはいいものの「積ん読」になっていて、最近はじめて中身を見た次第ですが・・・この本、すさまじくいいですね。(感謝>Danさん)
頭から読んでいくと、素数、多項式、三角関数、指数関数、虚数、といった概念が、小学生や中学生でもわかるように、やさしく書いてあり、しかも数学の「美しさ」に感動できるように構成されてます。(中学生くらいでこの本に出会えなかったことがホントに残念・・・。)
RiSuPiaの展示も、この本を読んでいくとさらに楽しめると思うので、セットでお勧めいたします。
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ちなみに、出口で、貸してもらった端末に刺さっていたカード
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をもらえて、家で、カードに書いてあるID、パスワードを使ってログインすると、アトラクションを家でも楽しめる、という次第。
こちらは、無料で入れるディスカバリーラボ、というコーナーにおいてあった書籍の一部。
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・・・こういう問題意識で作られた施設なんでしょうね。
日本の理数系人材戦略の未来—「教育」だけでいいか?
30歳前後の理系の皆さんに伺うと、みなさん、「昔に比べて今の日本の理系学生のレベルが恐ろしいほど下がってる」と非常に危機意識を持っておられますし、安倍政権でも教育改革が大きなテーマの一つになってます。
もちろん、日本人のレベルアップもする必要もあるでしょうけど・・・一方で、それだけでいいのかしらん?という気も。
シリコンバレーというのは、アメリカ人約3億人だけじゃなく、インド人11億人、中国人13億人なども含めて、世界数十億人の母集団の中から優秀な技術者が集まる仕組みを作り上げているわけで、どんだけポテンシャルがあるか知りませんが「日本人だけ」の1億人を徹底的に鍛えて、そういった「しくみ」と対抗できるのかしらん?
移民政策、物価、言語の壁、日本企業の仕事のやり方、インセンティブ・賃金体系、オフショアリング、ネットでの協業・・・・といったことを総合的・戦略的に考えていかないとアカン気がします。
(ではまた。)

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