銀行が株式公開助言

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じりじり間合いをつめて来てますねー。本日の一番の注目記事ですね。
銀行が株式公開助言、金融庁、付随業務に認める。3/27, 日経朝刊5ページ
 金融庁は銀行に対し、取引先の企業に株式公開を助言したり、証券会社に公開候補の企業を知らせたりする業務を認める。二十六日に改正した事務指針で、銀行の「付随業務」の一つとして明記した。中小企業など銀行取引先の株式公開の機会を高め、証券市場の活性化も促す。(中略)
証券取引法六五条は銀行の証券業務を禁じており、証券業界の一部には銀行が株式公開の助言まで手掛けることは証取法の禁止規定に触れるとの声も出ていた。これに対し、金融審議会(首相の諮問機関)や総合規制改革会議などは規制緩和を要望、金融庁も勧誘行為を除けば、銀行の業務としても問題ないと判断した。(以下略)

「勧誘行為を除けば、銀行の業務としても問題ないと判断した」とか言っちゃってますが、証取法65条改正により、今年中にこの勧誘行為も認めるつもりなのはご案内のとおりです。
これによって、戦後証取法65条によって作られた日本版グラス・スティーガル法の壁はとっぱらわれ、日本が本格的なユニバーサルバンキングの時代に突入することになります。(あくまで形式上は「仲介業」ではありますが。)
銀行は中小企業に対するアドバイザリーフィーで収入が得られるとともに、65条改正後は、例えば中小企業をグリーンシートに公開させれば、その公開時の引受や売出しの仲介でまたまたフィーが入ることになります。
今まで「融資」という(企業から見て)debtの形で資金供給をしていたのが、自分のB/S(貸借対照表)を通さず、equity(自己資本)の形で企業に資金を供給できる。一般論として、企業の自己資本比率は高まり融資のリスクは下がるし、銀行の自己資本比率も高まってBIS規制のクリアもしやすくなった上、フィーも入る。銀行にとっていいことばかりです。
本来は直接金融で調達すべきものまで借入で調達していたのが、日本がバブル崩壊によりここまで痛手を負ってしまった理由とも言えますので、事業のリスクの性質のよってそれぞれ最適な資金調達手段が行いやすくなるという意味では「いいこと」です。
銀行は証券に比べて、とにかく窓口も多いし、日常的に企業と取引してキャッシュや手形の動きもつかんでますので、そういう意味では(公開の直前だけ一時的に付き合う証券会社の引受部門などよりも)企業(特に中堅中小企業やベンチャー)の真の実態を見たアドバイスができる可能性があります。
ただ、そもそもグラス・スティーガル法が大恐慌以降、銀行の証券業務を封印してきたのは、腐りかけたヤバい企業に債権や株式を発行させて、そのリスクを一般の投資家に押し付けて自分の融資のリスクを減らすというような「ババ抜き」を銀行がやらかしたからなわけですから、そうした行為には要注意です。証取法65条改正がパンドラの箱を開けることではなく、日本再生のスタートになるといいんですけどね。
参考:証券取引法65条
銀行、協同組織金融機関、信託会社その他政令で定める金融機関は、第二条第八項各号に掲げる行為(注:証券業務)を行うことを営業としてはならない。(以下略)

(本日はこのへんで。)

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