財務的に見たソーシャルレンディングの実現可能性

先週は、主に法令や制度面から考えてソーシャルレンディング(ソーシャルファイナンス、P2Pファイナンス)が成立するかどうかを検討し、個人的に想像していたよりはシンプルなスキームでクリアに法律関係を処理できるんじゃないか、というお話をしました。
ただし、法律的に可能であれば事業として成立するかというと、それほど世の中甘くない。ということで、ソーシャルレンディングなるものが日本で成立しうるのかどうか、ということを、今回は財務的な観点から検討してみたいと思います。
消費者金融専業者の財務諸表から推測する
まずは、一番手軽な情報源として、EDINETで消費者金融専業者大手(アイフル、アコム、武富士、プロミス)の有価証券報告書を見て、採算構造の推測の参考にしてみたいと思います。
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「資金調達ハンドブック」ー商事法務

最近も、いろんな方の著書をたくさんいただくのですが、時間がないのと遅読なのとで、なかなかご紹介が追いついていなくて、すみません。
そんな中、本日、西村あさひ法律事務所さんから「資金調達ハンドブック」

資金調達ハンドブック
資金調達ハンドブック

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武井一浩・中山龍太郎・郡谷大輔・有吉尚哉 編著
商事法務
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を送っていただきました。
中山龍太郎弁護士執筆の第3章「行使価額修正条項付新株予約権を用いた資金調達の可能性と課題—MSCBを中心に」の129ページ

(略)その意味では、行使(転換)価額を修正するという仕組みそのものは市場関係者には必ずしも目新しいものではない。にもかかわらず、MSCBが高い注目を集めたのは、転換期間、転換価額の修正頻度、修正幅、修正方向(下方のみ)において従来見られない多様な形態が現れるようになったこと(5)(以下略)

という部分の注で、

(5) こうした傾向を早い時期に明確な形で提示したのは、公認会計士の磯崎哲也氏のブログ(isologue (https://www.tez.com/blog/))である。磯崎氏は、2004年10月の段階で過去1年間に発行されたMSCBの事例200件以上について転換価額の修正頻度や限度について分析を行っている。その成果はブログ上で数回にわたって公表されている(中略)。
筆者自身、磯崎氏のブログのコメント欄や自らのブログを通じてMSCBの問題点について、さまざまな意見を交換させていただいた。本稿も、その際に自らのブログで行った検討が基礎になっている。

と、本ブログのご紹介をいただいてます。
身に余るご紹介、どうもありがとうございます。
当時の議論に加えて、オプションの評価モデルやペイオフ・ダイヤグラム、その後の日証協のMSCB規制等についても書かれてますので、参考にさせていただきたいと思います。
(ではまた。)
目次
第1章 企業の資金調達(概説)
第2章 資金調達に関する会社法の規律
第3章 行使価額修正条項付新株予約権を用いた資金調達の可能性と課題—MSCBを中心に
第4章 資金調達に関する金融商品取引法上の留意点

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日本において、ソーシャルファイナンスの可能性はあるか?(4)

「日本において、ソーシャルファイナンスの可能性はあるか?」では、いろいろ小難しそうなことをあーだこーだ書いたせいか、はてなブックマーク等を拝見しても、
「かなり実現は困難なようだ」
「法律的には難しいようだ」
といったコメントを多くいただいているのですが、私が申し上げたかったことは全く逆であります。
銀行「免許」を取得してすら日本では難しいんじゃないかと思っていた事業が、貸金業+第二種金融商品取引業という、どちらも「登録」で済む、日本の金融業としてはかなり”ライト”な構成でできるかも知れないわけで。
宮崎アニメ的に表現しますと、

アスベル「泣いてるの?」
ナウシカ「うん・・・嬉しいの」

といった感じでありまして、今まで胞子を集めて城の地下500メルテから水をくみ上げて研究してもわからなかったことが、腐海の底でアハ!体験というか、「先行き問題も山積みであろうことに変わりはないけれど、『全体の大きな構造』はつかめたんではないか」というところに、一筋の光明を見た思いなのであります。
(ではまた。)

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日本において、ソーシャルファイナンスの可能性はあるか?(3)

一昨日の「日本において、ソーシャルファイナンスの可能性はあるか?」に、「ホンネの資産運用セミナー」さんからもトラックバックいただきました。

(略)
もうひとつの仕組みとして私が考えたのは、参加者が組合形態のソーシャルファイナンス事業者に一旦出資して、参加者が貸し付けたい借り手ごとに優先引き当て設定をするという仕組み。私はこの分野は素人なのでこのスキームの課題は分からないのだが、どうだろうか?

「どうだろうか?」と訊かれた気がしましたので、考えてみました。
文中の「優先引き当て設定」というのがどういうものを意味するのかが具体的にはよくわからないんですが、図にすると下記のようなイメージでしょうか?
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日本において、ソーシャルファイナンスの可能性はあるか?(2)

昨日の、「日本において、ソーシャルファイナンスの可能性はあるか?」には、多数、コメント、ブックマーク等、ありがとうございました。
「ソーシャルレンディング・ソーシャルファイナンス情報ブログ」さんからいただいたトラックバックに、

1つ気になったのが、図示されているように、匿名組合1つに対して借り手は1人だけである必要があるのかという部分です。1対1にしたほうがいろいろわかりやすいと思いますが、特定の属性のグループに貸す匿名組合ってのも作れそうだし、そのほうがリスクは分散できるし、組合1つあたりの作成コストも下がりそうかなあと。
ちなみに全然法律わかってないので、もしかしたら法律上無理なのかもしれません。。。

とありましたが、
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日本において、ソーシャルファイナンスの可能性はあるか?

かなり前から、「ZOPAPROSPERなどのソーシャルファイナンス(P2Pファイナンス)を日本でやったらどうかなあ?」という問い合わせをいろんな方からいただいていたので、お盆の機会に、ちょっと気合い入れて考えてみました。

■概要
(私は、実際にこれらのサービスに口座を作ったり使ってみたりしたわけではなくて、報道やサイトや法律ををさらっとみて考えてみただけのものですので、あしからず。突っ込みどころがありましたら、ご教示いただければ幸いです。)
いわゆるソーシャルファイナンスというのは、ネット上で資金を調達したい人と提供したい人の情報を仲介して、貸し手が借り手に対して直接お金を貸すような形態を指すことが多いようです。
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明治18年の企業結合会計

「創業時の日本郵船シリーズ」の一応締めくくりとして財務編をお送りしたいと思います。
概要:

  • 「合併」だったのか?
  • 「旧会社勘定」の謎
  • 「のれん」から推察されるvaluationの不公平


————-
日本郵船歴史博物館で買って来た「日本郵船百年史 資料」には、日本郵船設立後以来の財務諸表が載ってます。
特に注目すべきは設立時の郵便汽船三菱会社と共同運輸会社のB/Sです。
「百年も前の財務諸表をちゃんと保存しているというのは、なんと物持ちのいい会社さんだろう!」と思ったのですが、同書の解説によると、

なお本表は、本資料集の編集に際し、現在一橋大学産業経営研究所所蔵の日本郵船の明治期の会計帳簿の記録に基づいて、日本郵船株式会社稲垣純男監査役が初めて作成したものである。

とのことで、一橋大学に保存されていた資料をもとにした当時の監査役の方のご労作とのこと。

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謎の文字クイズ

張作霖爆殺事件の時の首相「田中義一」についてWikipediaで調べたら、「他の言語」のところに何やら見慣れぬ言語が。
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クリックしてみても、初めて見る文字でなんだかよくわからない。
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タイ語など東南アジアの文字っぽく見えるがちょっと違うようです。
ページのソースを見ると、lang=”ka”とある。
「ka」ってのも、見たことないなあ・・・と思って、ISO639の言語コード表を見てみると・・・

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「会社法がない時代」の「会社」

「日本郵船と商法・会社法の歴史」シリーズで、日本郵船歴史博物館のミュージアムショップで「日本郵船百年史 資料」を見つけて、「宝のありかをしるした古地図を発見した少年のような気持ち」になっている磯崎です。
さて、大杉先生からご紹介いただいた本;

会社の誕生 (歴史文化ライブラリー)
会社の誕生 (歴史文化ライブラリー)

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高村 直助
吉川弘文館
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が、Amazonから届きましたので、若干、今までの補足と訂正を。

  • 商法施行以前に「会社」の概念はあったか?
  • 50円額面の普及は日本郵船の設立がきっかけか?
  • 日本郵船の大株主の議決権制限は政府のインボーか?

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