日本の「オンラインスーパー」

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本日は(一応、ビジネスモデルの話ではありますが)、主婦blogっぽい話になりますので(笑)、あしからず。
渡辺聡さんが、CNETで「息を吹き返すオンラインスーパー」について書かれてます。
私も3月24日のエントリーで、ファーストリテーリングの子会社「SKIP」での野菜販売事業の撤退に怒りのコメントを書いたのですが(食い物の恨みは怖い)、4月末でSKIPの宅配も終了するので、仕方がなく、うちの奥さん経由で近所の主婦の方々の情報を3月末から集めました。
ちゃんと儲かるビジネスモデルなんじゃん
調査の結果、「大地宅配」と「らでぃっしゅぼーや」を挙げる方が多かったので、(また破綻されても困るので)信用情報等いろいろチェックかけたのですが、驚いたことに、両社とも百億円以上の売上があり、利益もちゃんと億円単位で出ているんです。
ご参考URL:
http://www.radishbo-ya.co.jp/company/index.html
http://www.daichi.or.jp/pc/index.html?banner_id=35
SKIPはビジネスのツメが甘かった、というだけのことのようですね。
渡辺さんご紹介のパルシステムも、東京、神奈川、埼玉、千葉を合わせて1000億円以上の総供給高(売上)があります。ということは、(よく存じませんが)シェア5割として首都圏の生協だけで2000億円、全国の生協で5000億円くらいの市場規模くらいはあるんじゃないでしょうか。
パルシステムの東京マイコープ(東京地区)の開示情報を見ても、総供給高498億円のうち、グループ購買や店舗、共済等を除いた純粋な個人宅配だけを見ても、337億円、「経常余剰(経常利益)」も13億円もあります。
「日本にはすでに巨大な(しかもprofitableな)オンラインスーパー市場が存在する」と言えるのではないかと思います。
結局、我が家は、ネットで注文ができる(*注)のが決め手で「らでぃっしゅ」に入会し、5月の第一週から商品が届き始めました。
(注:ネット注文は、まだ全商品ではなく、地域によっても違う模様。)
まだ、マークシートの注文書をドアノブにかけておいて配達時に回収するという発注とネットの併用方式ですが、システム的にはこれをネットで代替していくのは、追加コストはほとんどかからないし、100億円以上の売上があれば、むしろコスト削減要因かと思います。
「資本の論理」での追い上げは厳しそう
ただし、VC投資などに向くビジネスモデルかというと、ちょっと疑問。
普通のスーパーと差別化できる、こだわった野菜を作っている農家やハム屋などは供給量も限られますので、それらの生産者との関係を築くには「札ビンタで買い漁る」というわけにはいかず、時間をかけた関係構築が必要ではないかと想像します。
大規模生協や、古典的な「オーナー型非公開会社」モデルで剰余金・利益をコツコツ留保していった会社がすでに競合として存在するわけですから、ここに後から追いつくのは、かなり、難しいのではないかと想像します。
らでぃっしゅに資料請求したところ、さっそく営業マンが飛んできて(ここがECではなくリアルビジネスっぽいですね)、いろいろ説明してくれました。曰く;
「入会金5,250円と年会費5,250円を原資として、農家に対しては作った野菜を基本的にすべて買い取るというコミットをしている。なぜなら、無農薬野菜は、害虫の被害などで全滅するリスクがあるので、市場にその時の価格で出すのではとてもやっていられない。買取をコミットすることで、農家はいい野菜を作ることだけに神経を集中することができる。」(かなり意訳してます。)
とのこと。
なるほど、生産者に対するリスクヘッジ・保険機能や、そのための財務力も必要なわけですね。また、
「うちは規模があるので多数の農家と契約しており、SKIPさんより、いろんな野菜のバリエーションを楽しむことができますよ。」とのこと。
営業マンのおっしゃることなので割り引いて聞く必要があるかも知れませんが、確かに、ニッチ的ではありながら、ある程度規模のメリットも必要な事業ということなんでしょうね。新規参入の後発の追い上げは難しいかも知れません。
以前、我が家も(渡辺さんご紹介のとは違う)生協に入っていたのですが、やれ宅配ケースをちゃんと出しておけとか、おまえも組合員なんだからちゃんと協力しろとか、宅配してくる配送員がつっけんどんだとか、「ビジネスマインド」に欠けるなあという感想を持っていたので、今回は最初から検討対象外にしてしまいました。
が、Webを拝見すると、生協もそうした営利法人との競争の中で、グループ購入から個別宅配へのシフトを進めたり、Webでの発注をできるようにしてみたり、サービス向上してるみたいですね。
「ただのスーパー」のネット版はイケるか?
「スーパーで売っているような普通の商品」(普通の牛乳、普通のインスタントラーメン等)を売っているオンラインスーパーがあったら乗り換えるか、と言われれば、私はあまり使わないと思います。日本だとコンビニもいくらでもあるし。宅配する分、輸送コストだけどうしてもスーパーに負けてしまいます。
通常品は利幅が薄く損益分岐点も高そうです。
また、小規模業者との戦いも考えられます。よく考えたら、何十年も前から「酒屋の御用聞き」とか、電話で注文したら配達してくれる店はありましたわね。電話も「電子」を利用しているので、元祖「電子商取引」。(笑)
小規模な参入には、ほとんど参入障壁がない。
渡辺さんが西友の例をあげてらっしゃいましたが、ファミレスも売上アップのために宅配に参入したように、既存スーパー、コンビニなどが宅配を始めてもおかしくない。というか、以前、AMPMでネットの宅配を受け付けていたのですが、やめちゃったんでしょうか。
マイケル・ポーターのいう「多数乱戦業界(fragmented industry)」の要素もあるということかと思います。
「定期型」のメリットその1−「義務」からの解放
らでぃっしゅぼーやは(SKIPも同じことをやってましたが)、最高週一回の宅配で野菜セットに卵や牛乳などを追加したものが毎週届きます。つまり、いつでも午前中注文したら午後配達してくれるというような「ASKUL型」ではない。これを「ASKUL型」にしたら競争力あるかというと、あまり無いかも知れません。
スーパーの買い物が面倒なのは「重い」こと。それに、野菜、米、牛乳などの定番品は、定期的に必要なので「義務的」でもあります。だから面倒くさい。
たまの休みに、「あなたー、スーパーで○○と△△と□□を買ってきてくれるー?」なんてのは、お父さんとしても勘弁してほしいところ。
こういうのは、毎週必ず同じもの(野菜は先方が選んだ旬の野菜)が届くということで、問題解決です。
また、おやつとかデザートとか、ついでに雑誌を立ち読みするとか、「非定番品」の買い物ってのはそれなりに楽しいじゃないですか。重くないし。
「定期型」のメリットその2−「料理世界のひろがり」
自分で買いに行くと、どうしても買うものが偏っちゃうんですよね。例えば、私がスーパーに行くと、野菜はジャガイモとニンジンと玉ねぎになっちゃう。ウドとか、セロリとか、ちょっと変わったものには手が伸びない。
これが、自動的に送られてくるようになると、その素材にあわせて料理を作らざるを得ないので、料理にもバリエーションが出ます。
らでぃっしゅぼーやの野菜は、SKIPの永田農法ほどではないですが、かなりこだわって作った野菜で、うちの家族の意見としては「うまい」、です。
SKIPで野菜を買うようになってから、「いい野菜」や「いい肉」だと、「いいオリーブ油」でちょっといためて「いい塩」をかけるだけで、「うまい料理」になっちゃうということを発見しました。
「なんだ、高級レストランとの味の違いは、腕の違いもあるだろうけど、素材の違いが大きかったんじゃん。」という感じ。アホくさくて、中食、外食が減りました。奥さんの料理もおだてやすくなります。
また、スーパーに行くと、ちょっとグルメ志向のある人でも、それほど慎重に商品を選択しないですよね?商品選択のための情報も少ない。
A牛乳が210円、B牛乳が「特売170円」だったら、たいていは170円の特売の牛乳を買っちゃいますよね?
流通の業態ごとに顧客の「店内滞留時間」はほぼ決まっていて、百貨店なら30分いるかも知れないが、スーパーならどんな人でもせいぜい十数分、コンビニなら早ければ数十秒で店から出てしまいます。
これが、ネットや宅配だと、カタログや画面などの「ノーガキ」を読んで、「ふむふむ」と頷きながら買える。私、自分がこんなにお買い物好きだとは最近まで気づきませんでした。(笑)
スーパーの素材で原価150円のところが宅配だと250円になったとしても、中食や外食で500円とか700円払うよりははるかに安いのでトータルコストはダウン。これが、上述のように、スーパーだと「うまさ」に気が向かないので、「市場の失敗(?)」が発生します。
アメリカでも「オーガニック」とかにこだわる人はいると思いますが、大衆層にまでグルメ化が進んでいる日本のほうが成立しやすい業態とも考えられます。
物流
一顧客あたりの物流コストは単位面積あたりの人口密度や利用者の密度に比例して下がるはずなので、アメリカより日本の方が断然有利ではないかと思います。渡辺さんも「携帯電話」に例えてらっしゃいましたが、携帯の基地局もカバーできる半径に人口が多いほど成立するので日本やアジアの方が有利だった、という意味でも似てるかもしれませんね。
生協等、既存の業者は自社で配達網を持っていますが、一部の地域はヤマトのクール宅急便を利用している業者も。SKIPは最終的にヤマトを使ってましたが、「夕方6時以降」等の指定ができるのは便利でした。日本以外では「クール宅急便」「お時間指定」みたいのはあるんでしょうか?
既存の業者がこうしたインフラにアウトソースして物流関係の投資を抑えられる可能性があるのも、日本のメリットかも知れません。
(ではまた。)

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9 thoughts on “日本の「オンラインスーパー」

  1. ネットでの野菜販売の件、なるほどと思いました。
    自分の実家は(村ですw)それこそ、はぜ掛けをやっていたり、ボッチと呼ばれる稲を束ねて立てかける方法で
    乾燥させることもあります。
    きのこもありますが、どうしてもはぜ掛け米がご入用でしたら、
    近くの農家でやっていそうなところと交渉もしますがどうされます?(笑)
    田舎は自由市場ですので、その家と作柄で価格が変わるため値段はわかりません。
    ただ仲買人がいないので、交渉次第では、安く買えるかもしれません。くらいです。
    なんなら、自分で田植えも出来ますから、「非情報化社会」と付き合う良いきっかけかもw

  2. 要り様でした。
    すみません。
    ちなみに今年はもう田植えは終わってるので、もう水掛まわりと、他の草取りですね。
    稲刈りも面白いですよ、かなりチクチクしますがw
    (はて、チクチクの意味がわかってもらえるかどうか?やったことが無いとわからないかもしれませんね)

  3. SKIPで、「自然乾燥はさ掛け米」を食べていたのですが、ついに在庫が切れ、先日、スーパーの米(フツーの)を買ってきて食べたら、おいしくなくて大ショック。
    あのプリプリで光沢のある炊き上がりのゴハンが忘れられません。(涙)
    でも、今やネットで手に入らないものは無くなってきましたので、まずは自力で探します。どうもありがとうございます。ではでは。

  4. 良いお米探索応援致します。
    また、ダメであったら言ってください。
    ちなみに誰が言ったか、私の実家の米は幻の???米と言われているそうです。

  5. 追伸
    薫蒸米は最悪ですね。
    もし良かったら、偽物が出にくいササニシキをおすすめします。
    コシヒカリより粘りが少しある気がします。
    あと炊飯器変えるとかなり違うのですが(IH)また
    参考にしてみてください。

  6. 高飛車な書き方があったかもしれません。
    その旨はすみませんでした。