誰が IFRSの強制適用を止められるのか?

昨日のエントリに、「ある経営コンサルタント 」さんからコメントいただきました。
ありがとうございます。

「日本的な解決としては、日本経団連等の経済団体が音頭をとって」の表現、面白く読ませていただきました。

私は、全社強制適用にはならないと思っているのです。上場会社でもある一定以上の資金需要がある規模の会社がIFRSを採用する。外国の投資家は、報告書を丁寧に読むわけで、その会社としての考え方が表れていないと魅力がない、不安を感じるになるような気がします。

外国投資家からの資金も得て、資金調達で国内市場においても有利に立ちたいと思うのであれば、財務報告書は重要なToolであり、横並びを避け、差別化を図るのがやり方だろうと思います。一方、国内市場からの調達のみにするのであれば、わざわざ苦労してIFRSを適用する必要はないだろうと。

 

ちなみに、「私は、全社強制適用にはならないと思っているのです。」とおっしゃるのは、どういった根拠で、でしょうか?

書いていただいたような考え方も一般論としては当然あるわけですが、にも関わらず、現在の流れは、当局も強制適用の方向に舵を切ったわけですが、

「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)(案)」の公表について
http://www.fsa.go.jp/news/20/20090204-1.html

今後、誰が反対して強制適用のプロセスが止まる、という予想でしょうか?

(「大手監査法人」ではないような気がしますが、「会社法学者」? それとも、ケンジ? オッチョ? 🙂

2015年には強制適用にならず、もうちょっと遅れるだろう、ということですか?

それとも、仮にアメリカも含む世界の主要各国がすべてIFRSのアドプションを行っても、日本だけは永久に全社強制適用にはならないだろう、という予想でしょうか?

(取り急ぎ。)

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私が「日本人には IFRS はキツそうだ」と思う理由

【追記:すみません、「はてブ」で教えていただきましたが、サーバでエラーが出て二重に投稿されていたようです。一つ削らせていただきました。】

昨日の「IFRSという名の新興宗教」に、はてなブックマークで id:activecuteさんからいただいたブックマークに、

これはひどい, コンサルは詐欺師, コンサルは帰れ
今の日本会計基準からすると、IFRSとの差より、10年前の日本会計基準との差の方が大きい。無駄に煽るな。

とありましたので、ちょっと補足をば。

まず、私は、「J-SOX導入コンサル」「IFRS導入コンサル」等はやってませんし、これからもやる予定がないので、どちらかというと、「コンサル」に煽られないように、いかにムダなコストは抑えて必要な要件を満たすか、ということを考えないといけない立場側の人間であります。

また、activecuteさんがおっしゃるように、日本の会計基準も、「公正価値(fair value)概念」やストックオプション会計、減損、リース会計、工事進行基準の徹底など、国際的な会計基準との差を埋めるために、かなりヤヤこしいことを既に強制されてきたし、IFRSに対応するための基本的な「技術」は既に手にしているのではないかと思います。
現在の会計基準からIFRSにしても、あまり現在と「数字」が変わらない会社も多いかも知れません。

それでも、日本の企業にとってIFRS(国際財務報告基準)がキツそうだなあと思う理由は、以下の通り。

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IFRSという名の新興宗教

日経BPさんに送っていただいた本。

 

 

この日経BPさんのムックは、会計的な厳密さというよりも、導入する企業の戦略、業務、システム等にどういうインパクトがあるかをオムニバス的にまとめている本なので、経理部門の人もさることながら、経営者とかシステム部門の人が、IFRSのインパクトの全貌をざっと見るのに非常に適していると思います。

(そう。IFRSは、社長が経理部門の人に「よろしくやっといて」では済まない可能性が高いと思われるわけです。)

日経新聞やぐっちーさんを始め、いろんな方が、米国投資銀行等が負債を時価評価して巨額の利益を計上してるのにビックリしたり唖然とされてらっしゃいますが、これからやって来るIFRS(国際財務報告基準)の大津波に比べれば、そんなのはまだ「さざ波」に過ぎない気がします。 

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「ロースクールへ行く前に」(英治出版)

英治出版さんから送っていただいた本。(どうもありがとうございます。) 

 

ロースクールへ行く前に — 司法試験合格後のキャリア不合格後のキャリア
株式会社More-Selections
英治出版
売り上げランキング: 9055
おすすめ度の平均: 5.0

5 法曹を目指す
5 進む道を考える

 

いつも英治出版さんからはいろんな本を送っていただいていながら、(遅読なもので)なかなかご紹介できていなかったんですが、この本は、(一応、私、ロースクールの教員で、内容に興味もあったので)、一気に読ませていただきました。

かなり、おもしろかったです。

 

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週刊isologue(第9号)テレビ業界は今、どうなっているか?

先週で、総会の準備も一段落し、家のリフォームもやっと終わって一段落してます磯崎です。

さて、毎週月曜日に発行しております有料メールマガジン「週刊isologue」、今週第9号は、テレビ業界のビジネスのお話であります。

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日常、われわれが接する情報のかなりの部分はマスコミ経由のものです。
しかし、そのマスコミでは、「マスコミ自身のビジネスに関する情報」が伝えられることは、あまりないんじゃないでしょうか。

特に現在、世界のマスコミは大きな転換点を迎えています。それは、インターネットや携帯電話の登場で、情報がいつでも自由に、限りなく安く手に入るようになってきたため、世界の「情報の流れ方」が大きく変化しつつあるからです。

また、テレビ局は伝統的に、視聴料金ではなく、広告収入を売上の柱としてきました。
ネットは、メディアのボリュームに上限がありませんが、テレビは、よくも悪くも構造が寡占で、なかなかパイを増やしにくい面があります。

このため、海外では、ネットの広告費がテレビのそれを上回る国も出て来て来る昨今ですが、日本もそうなっていくのでしょうか?

今年2月に発表された、電通さんが行った調査「2008年(平成20年)日本の広告費」
http://www.dentsu.co.jp/marketing/adex/adex2008/index.html
によると、

テレビ、新聞、雑誌、ラジオの「マスコミ四媒体広告費」、いわゆる「4マス」の広告費は対前年比7.6%の減少で、4年連続での減少になります。

これに対してインターネットの広告費は、いまだに16.3%という高い伸びを示しています。
このままの伸び率で行くと、今年は、ネットの広告費が新聞を抜く可能性大ですね。

(ただし、ネットというのは、テレビと対極で参入障壁が全く無いので、ネットの広告費全体は伸びていても、個々の媒体が儲かってウハウハかというと、ちょっと様相は違うと考えますが。)

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図表1.媒体別広告費の伸び率と構成比(出所:電通「2008年日本の広告費」)

一方で、全広告費に占めるテレビのシェアは、いまだに28.5%もあって、「4マス」の中ではダントツの1位であります。

今月、小中学生を対象とした進学塾である栄光ゼミナールが、JR東日本のドア上に出している車内広告のコピーは、
「世界一テレビ漬」
で、IEA国際数学・理科教育動向調査(2007年)をもとに「日本の中学生は1日平均2.5時間テレビを視聴。世界49カ国の中で最長。」としています。

裏を返せば、それだけ日本のテレビは「おもしろい」「魅力的な」番組を提供しているということにもなるかと思います。

私は、一日にかなりの「量」のテレビ番組を見ますが、テレビはほとんどHDDビデオに録画して、見る必要がない部分やCMは、飛ばしたり早回ししたりしているので、日本のテレビ番組の「おもしろさ」を感じていると同時に、広告媒体としての認識が日増しに薄まっている印象はあります。

以上のような問題意識の下、今回は、在京キー局を中心にテレビ局にスポットをあて、戦略的ファイナンス的な側面から、テレビ局の経営が今どうなっているのか、について考えてみました。

ライブドア事件が起きる前までは、テレビ局は(上場はしているけど)、ファイナンスの理論や法律に従って何かを考えるとか実行するといった観念があまりない業界、というイメージが強かったのではないかと思います。
(「私がそう思う」というよりも、ギョーカイの中の方々自身が、みなさん、「うちは、あんまりそういうこと考えて行動する会社じゃないからねー」といったことをおっしゃいますので。)

しかし、やはり「ライブドア」「村上ファンド」等の影響が非常に大きかったということだと思いますが、開示資料をつぶさに見て行くと、ここ数年、「ギョーカイ」にも、徐々にファイナンス戦略的な取り組みは増えてきているのではないかと思います。

特に、昨年度のテレビ業界は、ファイナンス的に見ても、非常に面白い1年だったと言えると思います。

ということで、今週は、

  • 村上ファンド、ライブドアから現在までのテレビ局各局の「資本政策」の動向
  • 放送法の「認定放送持株会社」への移行と、「官製買収防衛策」
  • フジテレビの「セシール」買収と、ライブドア(LDH)との和解の関係?
  • 楽天のTBSに対する「反対株主の株式買取請求権」
  • テレビ朝日、日本テレビ、テレビ東京の大株主動向
  • 決算短信等から分析する、各社の業績動向
  • 「資本市場の洗礼」を受けたフジテレビ、TBSと、その他の企業のビジネスの違い
  • 周波数オークションって、日本のテレビ局の実態に照らして、どうなの?
  • 平成21年3月期の各社決算短信など、資料URL

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(ではまた。)

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