日本において、ソーシャルファイナンスの可能性はあるか?

かなり前から、「ZOPAPROSPERなどのソーシャルファイナンス(P2Pファイナンス)を日本でやったらどうかなあ?」という問い合わせをいろんな方からいただいていたので、お盆の機会に、ちょっと気合い入れて考えてみました。

■概要
(私は、実際にこれらのサービスに口座を作ったり使ってみたりしたわけではなくて、報道やサイトや法律ををさらっとみて考えてみただけのものですので、あしからず。突っ込みどころがありましたら、ご教示いただければ幸いです。)
いわゆるソーシャルファイナンスというのは、ネット上で資金を調達したい人と提供したい人の情報を仲介して、貸し手が借り手に対して直接お金を貸すような形態を指すことが多いようです。
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明治18年の企業結合会計

「創業時の日本郵船シリーズ」の一応締めくくりとして財務編をお送りしたいと思います。
概要:

  • 「合併」だったのか?
  • 「旧会社勘定」の謎
  • 「のれん」から推察されるvaluationの不公平


————-
日本郵船歴史博物館で買って来た「日本郵船百年史 資料」には、日本郵船設立後以来の財務諸表が載ってます。
特に注目すべきは設立時の郵便汽船三菱会社と共同運輸会社のB/Sです。
「百年も前の財務諸表をちゃんと保存しているというのは、なんと物持ちのいい会社さんだろう!」と思ったのですが、同書の解説によると、

なお本表は、本資料集の編集に際し、現在一橋大学産業経営研究所所蔵の日本郵船の明治期の会計帳簿の記録に基づいて、日本郵船株式会社稲垣純男監査役が初めて作成したものである。

とのことで、一橋大学に保存されていた資料をもとにした当時の監査役の方のご労作とのこと。

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謎の文字クイズ

張作霖爆殺事件の時の首相「田中義一」についてWikipediaで調べたら、「他の言語」のところに何やら見慣れぬ言語が。
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クリックしてみても、初めて見る文字でなんだかよくわからない。
pic3.png
タイ語など東南アジアの文字っぽく見えるがちょっと違うようです。
ページのソースを見ると、lang=”ka”とある。
「ka」ってのも、見たことないなあ・・・と思って、ISO639の言語コード表を見てみると・・・

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「会社法がない時代」の「会社」

「日本郵船と商法・会社法の歴史」シリーズで、日本郵船歴史博物館のミュージアムショップで「日本郵船百年史 資料」を見つけて、「宝のありかをしるした古地図を発見した少年のような気持ち」になっている磯崎です。
さて、大杉先生からご紹介いただいた本;

会社の誕生 (歴史文化ライブラリー)
会社の誕生 (歴史文化ライブラリー)

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高村 直助
吉川弘文館
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が、Amazonから届きましたので、若干、今までの補足と訂正を。

  • 商法施行以前に「会社」の概念はあったか?
  • 50円額面の普及は日本郵船の設立がきっかけか?
  • 日本郵船の大株主の議決権制限は政府のインボーか?

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ソニック・ヘッジホグ

最近、うちのテレビが地デジ対応になった最大の利点が「放送大学」。
画質がクリアになっただけでなく、最大3チャンネルに分割されて(つまり同時間帯に3つの授業を平行して流せるようになり)、しかも(やっと)EPG対応しました。
以前は、新聞の番組欄で「ちょっとおもしろそうだなー」と思った番組があっても、さすがに時間や分をビデオに入力して録画するのはしんどかったわけですが、今はリモコンのボタンを押すだけで録画してくれて、次回からの分は機械が気を利かせて録画してくれるのであります。
これが見出したら止まらない。
日本のテレビ番組(特にバラエティ)は世界的に見ても非常に面白いと思って拝見してるのですが、放送大学の番組の中身の濃さの前には、1回1千万円単位のお金をかけたテレビ番組も比較的中身の濃いブログも、申し訳ないですが、ちょっと霞んじゃいます。(講師の方が今までの人生でそのテーマについて学んで来た膨大な時間まで含めれば、コンテンツ制作にかけられている時間が桁違いなので、比べる方がかわいそうではありますが。)
こないえーもんがタダで見られる日本に住んでいるというのは、大変ありがたいことであります。
同時に、大学の授業というのも「情報サービス」である以上、一つのことに関しては「最高の先生による最高の授業」が一つ(とまでは言わなくてもいくつか)ありさえすれば、全国で何十、何百も同じような中途半端な内容の授業を中途半端な先生が教える必要はまったくない、と言えるかと思います。
つまり、インターネットの発達で構造が大きく変わりつつある他の情報サービス産業(テレビ、新聞、雑誌、音楽等)と同様、大学というサービスも今後数十年で大きく(つまり例えば、地域等による「fragmented」な市場構造から、特定のセグメント毎の「一人勝ち」的な市場構造の方向に)変わっていくことは間違いないでしょう。
(大学のような制度上の制約が少ない学習塾では、すでにかなり系列化が進んで来ているかと思います。)
さて。で、本日見てたのは7/31日放送の「脳科学の進歩」第15回。
神経細胞が分化していくときに働くタンパク質の名前が「ソニック・ヘッジホグ」という名前だそうで。(下図参照。)
sonic_hedgehog.jpg
(出所:Wikipedia)
Wikipediaで見たら、

The first two discovered, desert hedgehog and Indian hedgehog, were named for species of hedgehogs, while sonic hedgehog was named after Sega’s video game character Sonic the Hedgehog.

・・・だそうです。(下線部筆者。)
もともと、先に2つのhedgehogという物質が見つかっていたので、シャレで3番目はセガのゲームの名前から付けた、ということですね。
(追記:cf. 他に、以下のようなのもあるようです。
ピカチュリン
ポケモン遺伝子
日本のコンテンツって、やっぱり世界的に影響与えてますね。:-)
(ではまた。)

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「いしたにまさきのブロガーウォッチング」に載せてもらいました

インプレスビジネスメディアさんの「Web担当者Forum いしたにまさきのブロガーウォッチング」のコーナーで、
「第4回 底流にテーマを持つことが重要/磯崎哲也さんのブログ論」
という私めのインタビューを公開していただきました。
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2008/08/07/3653
ご笑覧いただければ幸いです。
(ではまた。)

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日本郵船と商法・会社法の歴史(その3)

さて、2つ前のエントリでご紹介した、1885年(明治18年)の設立時の日本郵船さんの原始定款における議決権の定め

第四十四条 株主総会ニ於イテ投票ヲ為スニ当リ其所有株数十株ニ付一個ノ投票権ヲ有ス十一株以上二十株迄ハ毎十株ニ一個二十一株以上百株迄ハ毎二十株ニ一個百一株以上千株迄ハ毎五十株ニ一個千一株以上五千株迄ハ毎百株ニ一個五千一株以上総テ毎二百株ニ一個ヲ増加シ一人ニシテ百個ヲ極度トシ其余ハ投票ノ権ナキモノトス但代理ヲ受ケタル株数ハ其ノ人所有ノ株数ニ通算シテ本文ノ例ニ拠ルヘシ

で、10株1議決権が株数が増えるごとにだんだん逓減していって、100議決権が上限ということはだいたいわかりますが、これによって、岩崎家などの大株主にどの程度の議決権希薄化効果をもたらすのか、Excelでシミュレーションしてみました。
まず、株主名簿の上位30名は以下のようになってまして、創設者岩崎弥太郎の長男久弥が1位で60,917株、株式数で27.7%を保有してます。
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日本郵船と商法・会社法の歴史(その2)

昨日の記事に大杉先生からいただいたコメント;

この議決権の定め方は、持株数が増えるとともに議決権数が逓減し、100個でキャップするというものですよね。
昭和25年改正までは法律がスカスカだったために、そのような定めも許されていて、実際そのような定款規定を置く会社は多かったようで、それによって一部の大株主によって会社が専断的に運営されにくいという安心感を一般の投資家に与えていたようです。(加藤貴仁『株主間の議決権配分』より)。

株主間の議決権配分—一株一議決権原則の機能と限界
株主間の議決権配分—一株一議決権原則の機能と限界

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加藤 貴仁
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我々現代人は「株数が議決権数に比例するのはあたりまえ」という頭になっちゃってますが、「そうでない選択肢」もありうる、ということですよね。

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日本郵船と商法・会社法の歴史(日本郵船歴史博物館、すごくいい!)

いつか入ってみたいと思っていた横浜にある日本郵船歴史博物館に、ついに本日行ってきました。
20080803s.jpg
(弊事務所の大家さんが日本郵船さんだからおだてるわけじゃないですが)、ビジネスをやってる人なら、この博物館は一度は行った方がいいと思います。私はかなり感動しました。
「日本郵船が日本の洋食史にどういう影響を与えて来たか」等、いろんな展示があるんですが、全部書くと膨大な量になるので、今回は、商法・会社法上の発見のみ記載します。

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