M&A専門誌「マール」

レコフさんの発行するM&A専門誌「マール」
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(詳細はこちら
の見本誌をいただきましたので、ご紹介まで。
同社によると、この雑誌、「日本で唯一のM&A専門月刊誌」とのことですが、日経新聞等でも、「M&A件数が前年に対して○○で推移」というような記事は、ほとんど、このレコフさんの情報が元になっているのではないかと思います。
「会社法の現代化でM&Aはどう変わるか」等の特集もありますが、記事の6割は、産業別のM&Aの概略とか、「株式移転、会社分割活用件数」、「TOB活用件数」等の「データ」
これ、個々のディールは自分でWebや新聞を見ても追えないこともないですが、M&A件数も年々増えてきてますし、これだけ網羅的に企業再編の実態を継続して見るというのは、ふつうの個人や法人では事実上不可能。
11月の「IT関係情報」だけで91件もありますので、私も、このデータをパラパラ見て、「あ、ライブドアさん、こんなディールもやってたんだ」と気づくというような、日常の新聞や知り合いルートの情報だけでは追い切れてないケースも多々あります。
日経テレコン21でもレコフさんの提供するM&Aデータの検索はできるんですが、見出し=10円、本文=400円ですから、M&Aに継続的に関わる方や業界再編の動向を把握しておきたいというような方は、定期購読(1月2,000円相当)された方がコスト的には安いんではないかと思います。
(ご参考まで。)

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ナンセンス=マシーンズ

やはり、子供の頃からきちんとアホくさいものを見せとかなあかんということで、本日は、家族で初台のオペラシティICCで開催中の「明和電機 ナンセンス=マシーンズ展」を見てきました。
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あーアホくさかった。子供、大ウケ。親も非常に満足度が高かったです。
パリでのライブビデオも最高でした。
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(今月26日まで。)

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芥川龍之介と日本振興銀行

日本振興銀行のビジネスモデルについて考えていて、「これ、何かに似てるなー」と思ってたんですが、わかりました。芥川龍之介の「蜘蛛の糸」です。
ご案内のとおり、蜘蛛の糸は、御釈迦様がカンダタを地獄から救おうと蜘蛛の糸を地獄に垂らしたにも関わらず、カンダタは糸を独り占めしようとして結局糸が切れ、再び地獄に落ちてしまう、という、お話。
小学校?でこれを習ったときはカンダタを中心に見る視点から、「欲張るといけませんよ」という教訓として教わったわけですが、今になって「お釈迦様」を中心に見る視点から考えてみると、いろいろ違った面が見えてきますね。
まず、なんでお釈迦様はカンダタを救おうとしたのか、という点。
カンダタはまあ放火・殺人・窃盗等を重ねる十分悪いヤツだったわけで、それなりの「判定プロセス」を経て地獄に行くことになったと推測されるわけです。死にかけていた蜘蛛を助けたというならまだしも、「蜘蛛を殺さなかった(それも一回だけ)」というのがそれほど「いいこと」なんでしょうか。(っていうか、他に地獄におるやつは、どんだけ悪いやつやねん?という感じですが。)
そこが、お釈迦様の慈愛の深さ、ということなんだと思いますが。
(貸し剥がしで苦しむ中小企業の方々を地獄で苦しむ罪人に例えるというのも恐縮ですが、そこはお許しいただくとして、)日本の資金供給の中核をなす銀行が不良債権問題で過度にリスクに慎重になり、本当は十分に返済出来るキャッシュフローが期待できたのに資金供給してもらえない企業も中にはあったかも知れません。
しかし、そうした中小企業の経営者は、雨の日がくるときのために経営上の準備をしておく責任はあったわけで、そういう中で「デットIR」しきれずに貸してもらえないというのは、やはり資本主義における「それなりの判定プロセス」を経てそうなっているんだとも考えられるわけです。
木村氏も、どちらかといえば「極楽」におわします方だったわけで、そんなシモジモのことに構う必要もなかったわけですから、恐らく、日本振興銀行の設立に関与した動機は、「中小企業のおやじを食い物に儲けてやろう」というようなことではなく、(金儲けするならもっと楽で儲かることがいっぱいあったはず)、そうした「判定プロセス」のゆがみによって、本来「地獄」にいなくてもいい企業が地獄で苦しんでいるのをなんとかしなければ、というのが率直なところだったんじゃないかと推測いたします。(よく存じませんが。)
しかし、お釈迦様はあくまで「極楽」にいながら地獄に糸を垂らしているわけで、地獄に降りて、血の池に胸までつかりながら本来そこにいるべきでない人を助けようとしたわけではないですね。(つまり、委員会等設置会社の、執行役を兼務しない社外取締役、ということですが。) いえ、それが悪いというわけではなくて。
で、やはり最大のポイントは、お釈迦様ともあろう方が、なぜ他の人に気づかれないよう「カンダタだけ」に糸を垂らすことができなかったのか?という点。つまり、本来返済するのに十分なキャッシュフローが期待できるにも関わらず、そうした「判定プロセスのゆがみによって地獄に落ちている人」だけに対して、「アウトバウンド&ピンポイント」のマーケティングをしなかったのか、という点です。
地獄に糸を垂らしたら、「間違って地獄に堕ちた人」だけじゃなくて、その他の人もみんな糸にすがろうとするのはお釈迦様であれば分かり切ったことじゃなかったんでしょうか。
「糸のキャパシティ」が限られるというのもわかってるはずなわけで、みんながそれに群がれば、「本来助けなきゃいけない人」まで助けられなくなるわけです。
小説ではこの後、お釈迦様は「悲しそうな御顔をなさりながら」またぶらぶらと去っていってしまうわけですが。
●−−−
さて、昨日のエントリーに対し、切込隊長さん(ご本人?)、emerald_blueさんからコメント頂きました。ありがとうございます。
切込隊長blogでもいくつかコメントをいただきました。(私、あんまり他の掲示板等でコメントされることがないので、ちょっとドキドキしますが。)

103 名前: ななしさん :2004年12月16日 17:15 [RES]
TB の isologue 磯崎さんのこの記事への補足修正つっこみぶりが実にいいですね。

おほめいただき、どうもありがとうございます。

110 名前: ななしさん :2004年12月16日 17:51 [RES]
>>103
磯崎という人も微妙に分かってない印象
正しいのは増資の所ぐらいで、
内部監査の下りは明らかに間違い
社外重役が委員で部屋持ってちゃダメよ

そんなことないと思いますよ。
委員会等設置会社の各委員会の過半数は社外取締役じゃないといけないですし、

(商法特例法)第二十一条の八
4 委員会(略)は、それぞれ、取締役三人以上で組織する。ただし、各委員会につき、その過半数は、社外取締役であつて委員会等設置会社の執行役でない者でなければならない。

監査や監督の作業の都合上、(例えば経営方針の妥当性を検討するために人と会うとか、機密性の高い資料を保管する必要があるとかの作業が多いなどの理由で)、鍵のかかる専用の部屋を持つというようなことはOKでしょうし、社外取締役で「会長」というようなことになると、「銀行の会長に個室がないのもなんですなー」という判断になったとしても、「背任」にはならないと思います。
(例えば、ソニーの取締役会議長 中谷 巌 氏は商法第188条第2項第7号ノ2に定める社外取締役の要件を満たしてらっしゃるそうですが、秘書とか机とか部屋とか無いんですかね?)
切込隊長氏のコメントのお返事にも書きましたが、その部屋や秘書を持つという行為が「会社のためになっているのか(私利私欲のためではないのか)」という忠実義務の観点が判定基準となるわけで、単に机があるからダメというわけではないと思います。
ただ、私の個人的趣味としては、「オレに個室もないのか?」というようなことを言う人より「みんなといっしょの場所で十分」というタイプの経営者の方が好きですが。

114 名前: ななしさん :2004年12月16日 18:35 [RES]
磯崎ブログはやはり皆見てるんだ。昔、会社法だの商法だの
中途半端に学んで中途半端にしか理解してないから、読んでいて、
非常に自分がもどかしい。w
 あのコメント欄を見て隊長も普通の言い方ができる真っ当な
社会人なんだと思った。今日のエントリの質問その0までは
人をムカつかせる天才だと思ったので。

117 名前: ななしさん :2004年12月16日 19:22 [RES]
>>114
文章が面白くないのが難点
あんま正確ではないしな

面白くなくってすんませーん。
でも、正確さには気をつかってるつもりでありますので、なにかお気づきの点がありましたらぜひコメントください。
(ではまた。)

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切込隊長blog「木村剛3」の読み方

切込隊長blogに、「木村剛3 〜実は私もビートルズマニアです」
http://kiri.jblog.org/archives/001264.html
が掲載されました。
いやー、いろいろ調べてらっしゃって、大変興味深いです。
事の当否は私はよく存じませんが、そんな中、いろいろ気づいた点についていくつかコメントさせていただければ。

 以下、目下いい具合に懸案となっております木村氏の例のアレに関する質問事項を日本振興銀行関連に絞って掲載しておきます。ゆとり教育でウキウキな世代からの愛の質問状でありますが、証拠物件の関係上質問をとりあえず8つに限定しておきました。
 また、既存の報道で木村氏が事情について語らなかった点についてが中心となっております。

ということで、切込隊長氏が木村剛氏に公開質問をされているのですが、その中から;

0. 「株主の代理人」について
 木村氏は書きました。

 少なくとも「株主の代理人」たる私の場合、日本振興銀行に関する情報発信におきましては、第三者に対して証明できる事実の上に構築される主張でなければならず、しかも、後日訴えられることがあろうとも整斉と説明できるものでなければなりません。

 その通りです。委員会等設置会社ですから、第三者に対して証明できる事実のうえに構築される必要はあるでしょう。

(ここは、あえてつっこませていただければ、委員会等設置会社でなくてもそうですね。)

 つまり、木村氏がブログ開始以来たびたび語られてきた日本振興銀行に関する積極的で前向きなお話は、すべて第三者に対して証明できる内容であるということです。
 例えば、このようなエントリーがあります。

5月19日の時点においては、何ら特別な営業活動を展開していないにもかかわらず、累計で80億円を超える金額のお申し込みをいただいています。

前回のエントリーで書いた、「零細中小企業向け融資のビジネスモデルは、アウトバウンド&ピンポイントでないと成立しにくいのでは?」という仮説からすると、「何ら特別な営業活動を展開していないにもかかわらず、申し込みがたくさん来ちゃってる」という状態は、「うれしい状態」というよりは、かなりヤバい兆候と見た方がよかったのかも知れません。
大半はとても貸せない客だとすると、申し込みを一応にでも審査して、貸せない理由を説明し、「庶民の味方の銀行じゃなかったのかよぅ」等、食い下がってくるせっぱつまった企業側をなだめる、というオペレーション上のコストは、それはそれはデカそうです。このビジネスモデルの場合、普通のビジネスと正反対で、本を書いたりPRしたりする「目立つこと」は、もしかすると「業務効率を下げる要因」だったんではないでしょうか。

2. 日本振興銀行の設立の経緯について
 木村氏は、元衆議院議員の野中広務氏のこの言葉を覚えておられるかと思います。「小泉さんの周りで、民間から政府や審議会に入り、規制緩和だの旗振りをしている人の中に、その分野でしっかり自分の商売をしている人がいる。国民からすれば道義的に許されない話だ」
 本件は木村氏が日本振興銀行を設立する際に、どのようなアプローチで設立に漕ぎ着けたのか?という話です。
 2002年10月に金融庁でまとめられた金融再生プログラムに、「銀行免許認可の迅速化」www5.cao.go.jp/shimon/2002/1030/1030item1.pdfとかいう一文が盛り込まれていますが、通称「竹中プラン」を取りまとめたのは木村氏ご本人ですな。これは木村氏での講演でも語っておられるほどのことで証明するまでもないでしょう。
 で、その「銀行免許認可の迅速化」で受益があったのはどこか。木村氏の手がけた日本振興銀行、それそのものではないですか。金融庁内のヒヤリングにおいても、本件につき問題点を指摘したと聞いています。つまり、自らが金融政策のガイドラインを作り、方針を決めさせて、その一方で素晴らしい速度で銀行予備免許が交付されたと、そういうことでしょうか。

前後関係がよく頭に入ってないのですが、「自分の関与する銀行」立ち上げのために答申を書いたのだったらちょっと問題ですが、答申を書いた後に「銀行を設立すべきだ」と思い立ったんだったら、まあ、アリかなとも思いますが。

同様に、2003年4月10日の段階で、日本振興銀行を設立するための母体となる中小新興企業融資企画株式会社が資本金4億円で設立されています。その企業の目的は、何と「銀行設立に係るコンサルタント業」。何ですかこれは。

これは、ふつうの設立準備会社の定款の目的によく使われる言い回しではないでしょうか。

5.日本振興銀行の増資について
 日本振興銀行は、今年8月から10月にかけて約5億円の増資が行われています。
 2004年8月10日 24億8,000万円→26億7,570万円
 2004年9月25日 26億7,570万円→28億6,070万円
 2004年10月18日 28億6,070万円→29億9,000万円

商法上、増資額の半分までは資本準備金に組み入れられるので(商法284条ノ2�)、資本金が約5億円増えていたら増資額は最大10億円になります。この増資は新聞でもあまり詳細に報道されてないようですが、日経金融の記事によると、

振興銀、筆頭株主に木村剛氏——9月末、11%程度を保有
2004/10/07, 日経金融新聞3面
 日本振興銀行の九月末の筆頭株主に社外取締役の木村剛氏が浮上したことが明らかになった。振興銀は四月の開業以降に八月、九月と二回に分けて第三者割当増資を実施し、引き受け先の一人だった木村氏が九月末時点で発行済み株式総数の一一%程度を保有した。
 振興銀は「将来的に上場するまでは銀行経営に安定感を持たせるため、既存株主を中心に株式を割り当てる方針」としており、今回もその一環と説明している。
 四月開業時の資本金は約二十五億円で、発行済み株式総数は四万九千六百株。木村氏は三%弱の保有比率で、株主順位で上位十位から外れていたという。株式額面は五万円で、八月と九月に増資した結果、九月末の発行済み株式総数は六万四千八百二十八株。資本金は二十八億六千七十万円になった。
 十月半ばにはさらに木村氏個人と木村氏が社長を務めるKFiを相手に第三者割当増資をおこなう計画で、最終的には資本金で三十億円弱、資本準備金が五億円程度になる見通しだ。

とあるので、やはり増資額は10億円だったんじゃないかと思われます。
(どーでもいいですが、額面株式が廃止されて久しいのに、「額面」が5万円ってのもヘンな書き方ですね。)

 改正商法では、日本振興銀行の定款に株式の譲渡制限の定めがあるので、株主以外の者に対する新株発行は、株主総会の特別決議だけではなく、取締役会で「新株の割当を受ける者」「株式の種類・数」についても決議されることが必要です。

どちらかというと、「取締役会だけでなく、株主総会の特別決議も必要となります」の方がいいでしょうね。
先に取締役会で決めてから株主総会にもかける必要があります。(商280条ノ5ノ2)

 しかし、株主に対する新株発行は、授権枠内で取締役会の決議による新株発行が認められます。したがって、基本的には既存株主に対する増資が行われたものと認識しています。
 ところで、木村氏は「株主の代理人」であり、既存株主の便益を保護する立場にあり、正常な業務が行われているか内部監査をする役割にあります。
 この手の増資は、一般的に既存株主の財産が希薄化するものであり、企業が資金調達をする場合は増資以外の方法を充分考慮し選択するよう「株主の代理人」は主張しなければなりませんが、木村氏は本件増資を行うにあたってそのような主張をしましたか。
 また、増資にあたって株主全員にレターを送付しましたか。

商280条ノ5ノ2第1項でいうところの、「株主以外ノ者ニ対シ発行」というのは、商法が非常に不親切な書き方でわかりにくいんですが、「現株主以外の者に対し」ということじゃなくて、「現株主にプロラタ(同比率)で新株を引き受けさせない場合には」という意味なんです。
ですから、現株主の「一部」に新株を引き受けさせる場合であっても、同条の規定により、株主総会の特別決議は必要。(取締役会だけじゃだめ。)
もし、株主総会招集通知(レター?)を送っていなかったとしたら、増資が無効になる可能性があります。(が、さすがに、そんな初歩的なミスはやってないと思いますが。)

第二百八十条ノ五ノ二
 株式ノ譲渡ニ付取締役会ノ承認ヲ要スル旨ノ定款ノ定アル場合ニ於テハ株主ハ新株ノ引受権ヲ有ス但シ株主以外ノ者ニ対シ発行スルコトヲ得ベキ株式ノ種類及数ニ付第三百四十三条ニ定ムル決議アリタルトキハ此ノ限ニ在ラズ(以下略)

取締役会でちゃんとした議論が行われたのかどうかは重要な論点ですが、銀行の場合、BIS規制上の自己資本増強が必要になったら、基本的には増資か劣後debtでの調達しかないわけで、これも(よっぽど独断で決めたりしてない限り)、実際には説明責任が果たせないということはなさそうです。
ちなみに、本件は、「取締役会社間の取引」(商265条。いわゆる利益相反取引)に該当しますので、木村氏分の増資については、木村氏を抜いた取締役たちで決議しないといけません。
(実体上はともかく、これも初歩的な話なので、少なくとも議事録上はそういう形の決議が行われた形になっているものと思われます。)
委員会等設置会社なので、新株発行の内容決定の権限を執行役に権限委譲している可能性もありますが、譲渡制限会社なので取締役会の権限として残してる可能性が高いのではと思います。執行役に権限委譲してる場合でも、商265条で取締役会でも(木村氏を抜いた)決議が必要かと思います。
ちなみに、委員会等設置会社の取締役は、正確に言うと、自分で「内部監査」をしなきゃいけないわけではなく(内部監査は「業務執行」の一部という性質があるので、どちらかというと「やってはいけない」方かも知れません。)、取締役会が「内部監査を含む内部統制の体制」を構築する義務を負っている(商法施行規則193条)、ということです。監査委員会のメンバーになると、より監査っぽいことをやらないといけませんが、それも監査委員としての監査であって内部監査とはちょっとちゃいます。監査委員でも指名監査委員(商法特例法第21条の10)は、ズカズカ現場に乗り込む権限があるわけですが、他の取締役は基本的に「監査」はせずに「監督」をするだけです。

 8.社外取締役の責任免除条項について
日本振興銀行株式会社の全部謄本においては、以下の記載があります。
 (社外取締役の会社に対する責任の制限に関する規定)
「会社は商法266条第19項の規定により、社外取締役との間に、同条第1項第5号の行為による賠償責任を限定する契約を締結することができる。ただし、当該契約に基づく賠償責任の限度は、1000万円以上であらかじめ定めた金額または法令が規定する額のいずれか高い額となる」(1月28日)
「当会社は、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(以下、「特例法」という。)第21条の17第5項で準用する商法代266条第19項の規定により、社外取締役との間に、特例法第21条の17第1項の行為による賠償責任を限定する契約を締結することができる。ただし、当該契約に基づく賠償責任の限度額は、金1000万円以上であらかじめ定めた金額又は法令が規定する額のいずれか高い額となる。」(3月12日)
 これらは、社外取締役に関する規定として一般的なものであり、通常の事業会社が内部監査の目的で社外取締役を起用する場合に利用されるものです。社外取締役の規定は諸種ありますが、基本的には取締役会に出席し、企業の経営そのものに関与しないのが通常です。当然、銀行内に部屋やデスク、秘書などを置かず、経営上問題とされる事項を書類などでチェックし、内部から監査することで初めて社外取締役として責任を制限されるものと認識しております。

これは「内部監査の目的で起用される場合」だけとは限りません。社外取締役は過去にその会社に勤務したことがないなど、商法上の要件を満たすかどうか(その他、独立性の要件があったほうがより望ましいですが)の話であって、部屋やデスクや秘書がいちゃいけないということは全くないです。
もちろん、社外取締役が「業務を執行」しちゃうというのは論外。
また、「経営姿勢」の観点からは、新興のベンチャー的金融機関の社外取締役に個室や専用秘書が必要かというと、ビミョーではありますね。

 ところで、木村氏は例えば役員および従業員の人事に関することや、メモ書き、指示書、あるいは融資審査に関する会議に参加するなど、具体的に経営そのものに関与する、つまり社外取締役以外の業務に関与してきましたか。あるいは、具体的な融資先の選定や、人材の採用、会議の主催や定期的な参加をされてきましたか。事実上、人事や業務面での執行が認められた場合、社外取締役規定が無効となります。
 当然、社外取締役である以上、専用室や専用秘書などは銀行費用では雇用されてないこととは思いますが、一部風評ではそのような事態を指摘されておりましたので、念のため。

取締役は、執行役の業務執行を「監督」しないといけないですし、(木村氏がそうかどうかは存じませんが)指名監査委員なら、むしろ会議にオブザーバーとして出席しないといけないでしょうね。また、「監査」というと、書類だけひっくり返してるイメージがあるのですが、監査の手法にも会議への出席や現場への立ち会い等のいろんな手法があります。
また、単なる「チェック」と違って、監査には「アドバイス機能」的な側面も存在するというのが監査論の基本です。
ただ、もちろん「具体的な融資先の選定や、人材の採用」をやってたとしたらそれはまずいですし、実質的に会社を切り盛りしたりするのはダメです。
・・・ということで、私、双方どちらの方の味方をするものでも批判するものでもございませんが、私の興味あるところについてだけ、ちょっとだけコメントさせていただきました。
(ではまた)

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フィルタリング日和(びより)

スパム・フィルタ
Lessig教授によると、最近のbayesian spamフィルタは、かなりスパムメールを精度がよくなってるみたいですね。
http://blog.japan.cnet.com/lessig/archives/001929.html
ちなみに、bayesianフィルタというのは、ベイズ確率理論を使ったフィルタのこと。
スパムメールというのは人間が見ると一目でスパムとわかるのですが、ベイジアンフィルタ登場前までは、送り元のIPアドレスのブラックリストとかいろんな方法でフィルタしても、手間がかかるわりにコンピュータによる自動的な選り分けの精度が低かったわけです。ベイジアンフィルタは、スパムとそうでないメールを非常にくっきりと選り分けてくれる革命的な「発明」なわけです。
Bayesianってどういう考え方なんだろう
http://hawaii.aist-nara.ac.jp/~shige-o/Tips/Bayes.html
によると、

ベイズ推定の世界では全ての確率は主観的な確率(subjective probability)だとされます。
(中略)
例えば、目の前のサイコロの1の目が出る確率 1/6 という数字を

 そのサイコロの性質である

と考えるのが普通の見方。

 観察者の知識(予測・信念・期待…どんな言葉で呼んでもいいけど)
 の不確かさの性質である
 
と考えるのが主観確率の見方

とのこと。
また、
スパムへの対策 —A Plan for Spam
http://www.shiro.dreamhost.com/scheme/trans/spam-j.html
原典(A Plan for Spam):
http://www.paulgraham.com/spam.html
に、ベイジアンフィルタのスパムへの応用の考え方が載ってます。
要約すると、スパムメールには、「prescription」とか「Viagra」とか、その語があることでスパムの可能性が高い単語が含まれているので、そうした確率を掛け合わせていくと、スパムかそうでないかが非常にくっきりと分別できる、というアイデアです。
リスク管理とベイズ確率
今、ふと思いましたが、オペレーショナルリスクや昨日のモンテカルロシミュレーション、リアルオプションなどでも「確率」を定義するわけですが、この確率もわりと「主観的な」確率ですね。マーケットリスク管理(ポートフォリオレベル)だと、かなり「客観的な」確率という存在するという気持ちになるかも知れませんが、信用リスク管理あたりから、確率というのにかなり「主観」が入ってくる気がします。
先日、銀行でオペレーショナルリスクの管理をされてる方のお話を伺ったのですが、やはり、オペレーションのミスと、その原因と考えられる事象の間には、単純な相関計数的因果関係はほとんど見つからないとのこと。私も、ちらっとやってみたことがあるのですが、分布図が悲しいほどモワーんと球状星団風に散らばっちゃうので、かなり早めに見切りを付けました。
ただ、感覚的には、「ヤバそうな仕事はミスも多い」という関係はあるような気がします。
このへん、ベイズ理論を応用すると、この感覚的な「ヤバさ」を定量化しやすいんじゃないでしょうか。
これ、いいかも知れませんね。
「ベイズ理論の応用によるオペレーショナルリスクの定量化」
てな論文を書いたら、バーゼルあたりでスターになれるかも知れません。
コメントスパム
このisologue、そこそこトラフィックをいただいてはいるのですが、(昨日のfeed meter では、加藤ローサさんのおとなりで36位。)
feedmeter20041214.jpg
なぜか非常にコメントやトラックバックが少なくて、(よく言えば「荒れてない」が、)ちょっぴりさみしいブログでありまして、コメントスパムがコメントのほとんどを占めております。ただこちら、メールと違って「英語=スパム」なので判別は超簡単。「2バイトコードが1つも入ってないコメント→削除」という自動化ができるソースを公開されてらっしゃる方もいらっしゃるようですが、削除に手間もかからないので今のところ手で「草取り」してます。
お米のフィルタリング
地方の知り合いにおいしいお米をいただいたのはいいのですが、自家精米のせいか1mmくらいの小さな小石がときどき入ってまして、ご飯を食べてるときに「ガリッ」ってなことになります。
で、「美味しんぼ」の話を思い出しまして。
海原雄山のところで昔窯たきをしていた元使用人が、海原雄山が訪ねて来るのに高価な食材もないので、どうもてなそうかと考え、黒い盆の上に米を並べて割れた米など不揃いなものを一粒一粒捨てて粒をそろえまして。こうすることにより、米への火のとおり加減が均一になって、めちゃくちゃうまいご飯になる、というエピソード。(第5巻)
「美食を芸術の域まで高める条件は、それは唯一、人の心を感動させることだ。そして人の心を感動させることが出来るのは人の心だけなのだ。材料や技術だけではダメだ。それがわからぬ人間が究極のメニューだなどぬかしおって、お前に味を語る資格はなーい!」
てなことを海原雄山に言われて山岡士郎完敗となるわけですが・・・これ、一度やってみたかったんです。
ということで、嫁さんがメシを作っている間に子供と3人で黒い盆の上で一粒一粒選り分けてみましたが・・・20分で1合も選り分けられなかった・・・・。
大変です、これ。
炊けたらまたご報告します。
(ではまた)

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日本の企業にも「モンテカルロシミュレーション的意志決定」が求められるようになるのか?

「期待値」による意志決定
minoriさんがblog「Law Maniac」で、経営の意志決定についての記事を書かれています。
・あなたは、株主のために、どちらを選びますか
・風を恐れるな − 株主価値の極大化のために
・frontier −チャレンジとリスクと
検討されてらっしゃるのは、例えば以下のような問題。

A社は、1,000億円の資産を持っているとします。
A社の取締役会は、Xという意思決定と、Yという意思決定のいずれかを選択しなければなりません。
 いずれの意思決定についても、10億円の投資を必要とします。
意思決定X
 成功率は75%で、成功した場合、A社は20億円を得ることができますが、失敗すれば投資額の10億円を失います。
意思決定Y
 成功率は90%で、成功した場合、A社は10億円を得ることができ、失敗しても投資した10億円を回収することができます。
取締役会の議論は拮抗しており、代取のあなたの意見が大勢を決します。
あなたは、株主の利益のために、どちらがベストだと判断しますか?

(解答は、上記の記事リンクをご覧ください。)
もちろん(ケチを付けるわけではなくて)、教科書的なシンプルなケースとしては全くこれでいいと思うのですが、実際の企業における意志決定はより複雑なわけで、例えば、75%の成功確率ということが確実にわかってる案件というのは、まず存在しないですよね。(教科書的な例として書かれてらっしゃるわけで、繰り返しになりますがminoriさんにケチを付けてるわけじゃありません。)
もちろん、「意志決定Xの場合20億円が手に入る」というように、キャッシュフローの額が確定してることもめずらしいでしょう。
DCFやNPVによる検討
もちろん、業種や対象によっても意志決定のやり方は異なってくるはずです。不動産の案件とか、大企業のエンタープライズレベルのお話なら、DCF(Discount Cash Flow)法でも説得力があることが多いと思うのですが、(参考文献:例えば、)
4478470723.09.MZZZZZZZ.jpg
多くの案件では、そもそも、将来キャッシュフローやリスクウエイトをどの程度に設定すればいいのかという部分が「鉛筆なめなめ」の世界になってしまうことも多いのではないかと思います。
「総合的に勘案」とは?
実務では、結局、いろんな要素がからみあうので、minoriさんの設問に類似するようなケースでも、「・・・というような損益、および○○、○○、○○等の諸事情を総合的に勘案し」ということになると、上記の「正解」と違う意志決定をしたとしても、経営判断の原則や取締役の善管注意義務違反で取締役の責任を問うことはかなり難しくなる気がします。
(議事録とは違って、ホントは何にも検討せずに社長の独断で決めていた、というような証拠でもない限り。)
絶対に自信のあった案件を「総合的に勘案し」というノリで上司や顧客に握りつぶされたりして、「チキショー、絶対オレの案の方がいいのに・・・」と安酒場で酒を飲みながらグチをこぼした経験をお持ちの方は、今までの人類の歴史の中で、推定1000万人くらいはいらっしゃるんじゃないでしょうか。(ちょっと多いか?)
シナリオによる検討
日本の普通の大企業では、期待値とかDCFで数字的にカチっと意志決定できないようなもので、振れ幅が大きそうなものは、「シナリオ」で意志決定することが多いんじゃないでしょうか。
つまり、「成功したケース」「most likelyなケース」「ワーストケース」みたいに3つくらいシナリオを作って、「ちゃんと検討しました」という形を取る方法です。
モンテカルロシミュレーション的意志決定
このシナリオをより一般化させた方法として、モンテカルロシミュレーションを応用した方法による意志決定が考えられます。
モンテカルロシミュレーションとは、その名の通り、コンピュータに「サイコロ」を振らせて、多数のケースを生成し、それに基づいてシミュレーションをする方法。
基礎からこの理論を勉強されたい方には、参考書
4254275064.09.MZZZZZZZ.jpg
(例えば)も出てますが、よほどσとか√とかがお好きでないとハードかと思います。
たいていの方は、(あまり細かい理屈はわからなくても)実際にシミュレーションができればいいわけで、そういう方のために、(例えば)、構造計画研究所さんから「Crystal Ball」というパッケージが出てます。
この製品のホームページを見てみると、

全米で意思決定支援ソフトウェア市場 シェア1位46%
Fortune 500社の内、85%の企業で導入
全米MBAトップ50校中、45校で講義教材として採用

と書いてありまして、「アメリカではそんなにみなさんモンテカルロシミュレーション的な意志決定をされてらっしゃるのかしらん?」とビックリするわけです。
Crystal Ballは、中身はExcelのアドインになってまして、Excelのシートに設定したセルの条件や数値に従って、好みの分布に従った乱数などを発生させて、モンテカルロシミュレーションを実行してくれます。(何万回とか。)
ここに具体例が載っていますが、下記の図、
case_1_1s.gif
(出所:構造計画研究所)
のとおり、単なる期待値とかNPV(現在価値)等の「一つの値だけ」で評価するわけではなく、いろんなパラメータが変動した場合に、評価する値が全体としてどういう分布を取るか、ということまでわかるわけです。(黒字になる確率とか、1%の確率でしか起こらない損失の値とか。)
こうしたシミュレーションは、「成功ケース」「ワーストケース」といったシナリオがより一般化されている(何万、何十万ケースを検討していることになる)ので、前提さえちゃんと作れば、ツッコミようはより少なくなるはずです。
また、確率分布が上図のようなグラフで出てくれば、(細かいことがよくわからない頭の固い役員等でも)、「リスク」がイメージしやすいかと思いますし、「網羅的に検討しとるな」という感じもより強く出るかと思います。
VaR(Value at Risk)のように、片側99%の点を取れば「最大でも○億円の損失で済みます」というコメントも説得力が増すかも知れません。
一つ一つの前提を設定していくのはちょっと大変かも知れませんが、こうしたツールを使えば、基本的には従来DCF等を計算するために作っていたExcelのワークシートにパラメータを追加するだけです。頭の堅いオジサンに「総合的に勘案し」で逃げられないように、こういうツールを使って「総合的に勘案ちゅーのはこういうことじゃー!」と示して差し上げるのもいいかも知れません。
試用版がこちらから無料でダウンロードもできます。(ご参考まで。)
https://www.kke.co.jp/iit/cb/regist.html
もちろん、日本でもこうしたシミュレーションで意志決定しているケースはあるのでしょうが、まだまだ少数派ではないでしょうか。
もし、上述のように「Fortune 500社の85%の企業が購入」してるとしたら、もしかすると、米国における「経営判断の原則」なり「訴訟に耐えうる意志決定のエビデンス」というのは、こうしたモンテカルロシミュレーションのような、より網羅的でツッコミようのないものが要求されるようになってきているのかも知れませんね。
(ではまた。)

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「高速道路」型クリスマスプレゼント

子供にゲームボーイを買ってやった以降、(1日30分までという制限は付けてますが)、ゲームをしたいがために朝スパッと起きたり、着替えが速攻で済んだりと、比較的いい方向に影響が出てます。とにかく、「ゲームができる」というインセンティブ効果は強い。
親として子供をなんとか「高速道路」(©2004羽生善治,梅田望夫)に乗せてやりたいと常に考えている我々夫婦としては、それを見て目がキラーン。
(ここだけの秘密ですが)、今年は親からのリクエストとしてサンタさんに、これ、
pokemon_ruby.jpg
と、これ
pokemon_sapphire.jpg
をお願いしてみました。
夢中でやってるうちに英語覚えちゃうんじゃないかと。(いう甘い期待。)
私の頃は、確か、小学校5、6年生にならないと「ローマ字」を習わなかったと思いますが、今どきの小学生は普通の公立でも1年生から英語の時間があって、簡単な英単語なら読めるのでびっくりしちゃいますね。
また、うちの近所に米軍の住宅エリアがあり、幼稚園の時にはそこに(なまいきに)英語を習いに行ってました。といっても、米軍住宅に住む奥さんと遊んでおやつを食べて帰ってくるだけですが。
そのレッスンは、「911」以降、その先生のご主人がインビンシブルでインド洋にご出張されることになってそれどころではなくなり、エリアの警備も異様に厳しくなって、残念ながら終わってしまいました。がしかし、その効果はテキメンで、先日も上の息子は自分でNikeのホームページでタイガーウッズがしゃべってるのを聞いていて、「これは、クラブのロフト角が○度で使いやすいっていうようなことを言ってるね」とか、ぬかしてました。
(うーん、高速道路。)
ちなみに、(どうでもいいですが)、その米軍の住宅エリアは多分米軍的にはカリフォルニア州サンディエゴかなんかの住所になってて郵便もそれで届くはずなので、我が家はカリフォルニアまで5分のところにあるというわけです。
(どーでもいい話でした。ではまた。)

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日本振興銀行と中小企業向け融資のビジネスモデル

切込隊長氏がかなり日本振興銀行に興味をお持ちのようで、同行の「内紛劇」に対して、関係各方面にヒアリングしてブログにコメントを書かれていましたが、これに対して木村剛氏から「事実に基づかない風説である」旨の反論が行われて(盛り上がって)ます。
切込隊長BLOG「木村剛2 〜クイズ17人に聞きました」
http://kiri.jblog.org/archives/001251.html
週刊!木村剛「切込隊長、本当に残念です。でも、ありがとう。」
http://kimuratakeshi.cocolog-nifty.com/blog/2004/12/post_20.html
どちらのおっしゃることが本当なのかというのはあまり私の関心事ではないのですが、ベンチャーの資金調達に関連する仕事をしている者として、「既存の銀行の貸付対象先とならない中小企業への資金供給」や、日本振興銀行のビジネスモデル(がうまくいくのかいかないのか)には以前から興味がありました。
以下、上記の切込隊長BLOGからの引用です。(また、この引用には木村氏が「事実に基づかない風説である」と主張される部分が含まれる可能性がありますので、その点ご了承の上、お読みください。)

○ 無担保で貸付をする業態について

経済紙記者「日本振興銀行については初めから採算性に疑問符がついていました」
山本「それは無担保であり不良債権の発生を防ぐ方法がなかったからだということですか」
経済紙記者「それだけではなく、むしろ金利面や審査面でやはり不利だからというのが大きいですね」
山本「それは、信用保証協会つきで5%前後で1,000万までは借りられるからですか」
経済紙記者「話としては、やはり中小企業総合対策の時限立法が消化されて、借りづらくなったからだという意見もあるが、実はこの手のノンバンクも従来の金利で借りてくれる層の筋が悪くなってきて、不良債権率が上がってきたというのが大きい」
山本「日本振興銀行の設立に前後して、ほかの大手ノンバンクが銀行設立の申請を検討したという話に関連するでしょうか」
経済紙記者「ひところの『目玉を売れ』騒ぎが落着してみれば、充分な金利の取れる優良な貸し先のロールオーバーを地銀や信金にかなりもっていかれた」
山本「追い貸し状況が継続していると言うことですか」
経済紙記者「だから、保証人や担保設定をできるところがこれらの銀行より高い金利を設定されて借りに来るはずがないという判断があったのではないだろうか」

山本「無担保で大手から資金を借りることのできない中小企業に貸付をやるというのは、そもそも誰の方針だったんですか」
関係者「私はきちんと担保なり保証人をつけて、ノンバンク的な手法を銀行に持ち込むことが新しいと思って日本振興銀行を立ち上げようとしていたんです。パートナー制度だって、ほかの方法だって、従来の銀行がやりたくてもできない債権回収という手段をどう容易に実施するのかというノウハウを考えてのことだったんですよ」
山本「なるほど。で、日本振興銀行が無担保で貸付を行う方針に固執していた方はどなただったんですか」
関係者「木村氏。うまくいくはずがないでしょう。中小企業なんて長期貸付したって返せませんよ、そんなもの。うち(オレガ)だって貸付をしたその場で引き当てを全額やる。だから不良債権なんて出るわけありません。少しでも不良債権が出るようなやり方は新銀行にとって命取りだ。第一、自己資本だって満足にあるわけじゃないんだから」
山本「それじゃあ15%という金利(註:金融庁が指導する銀行法に基づく最高金利)では融資側がリスク丸被りですしね」
関係者「そうそう。だって中小企業なんて長期で貸付したら年間37%は貸し倒れる。それを債権回収のもっともむつかしい無担保融資なんて業態で、しかも金利15%が上限なんて回るはずがない。リスクを銀行側が過剰に負う仕組みになっている、そういうことですよ」

この「関係者」氏がおっしゃる「中小企業向けの15%以下での貸し付けというビジネスモデルがうまくいくはずがない」というのは、全く当たってないとも言えるし、非常に当たっているとも言えると思います。
銀行以上商工ローン未満の金利の成功例
実は、「銀行以上商工ローン未満の金利」のゾーンでのビジネスは、非常に成功している事例があります。まずオリックスさんが始め、その後三井住友銀行さんも同様の商品を出されたと認識しておりますが、ビジネスモデルの基本コンセプトは、「今までの支店別・地域別の融資ではなく、日本全国の様々な業種の中から本部がポートフォリオ(リスク分散)を考えて指示した多数の企業に分散して融資する」という点。(三井住友銀行さんの商品は詳しくは存じません。)
従来の銀行融資では、地域ごとの支店が様々な「しがらみ」の中で融資を行っており、銀行の資産はいわば「ボトムアップ」的な貸付金の集合体になっていたわけですが、「ボトムアップ」で融資を積み上げれば自動的信用リスクが銀行全体の自己資本で負える範囲に収まるかというと、基本的には収まるわけがないわけで。
これに対して、まず本部で「全体のポートフォリオ像」を考え、「それに合わせた貸出候補先」を営業マンにアタックさせる、というところがミソその1です。
金額についても、銀行融資というのは、数百万円から数千億円までまちまちなわけですが、それも「○千万円まで」といった形で「小口化」するところがミソその2。
「アウトバウンド(&ピンポイント)」が基本?
そして、「融資を申し込みに来た客には貸さない」というのが、最大のミソかと思います。
商工ローンが社会問題化する以前ですが、私、商工ローンマーケットの調査を担当したことがありました。全国の各社にインタビューして、旧日栄や旧商工ファンドにもインタビューを申し込んだところ、(課長さんクラスの方あたりにお話を伺えればと思っていたところ)、松田会長や大島社長が直接出てらっしゃったのでビックリした記憶があります。
そこで、みなさん共通しておっしゃっていたのは、「来店する客に貸せるわけがない」という点。
消費者金融が、ティッシュやテレビなどの広告で集客して「来店した客」にお金を貸す業態であるのに対し、商工ローンは広告は一切打たず、「本部」が信用情報等から抜き出した候補先を、ひたすら営業マンに開拓させる方式を採ってました。
(電話帳にも広告を載せるどころか、フォントを太字にすらしていない・・・)
また、消費者金融は、各社ともすべて基本的に同じビジネスモデルであるのに対し、日本各地の商工ローン業者は、1社1社ビジネスモデルがちょっとづつ違い、それぞれ、営業方法や回収方法に工夫をしてるところが非常に興味深かったですね。
「オーダーメイド」で審査をする既存の銀行型の融資や、「大数の法則」で均質に処理できる「大量生産型」の消費者金融と違って、中小企業向けの金融では「セミオーダー」というか、一定のモデルで準定型的に処理できるセグメント(というかニッチというか切り口)がいくつかに分かれるから、ではないかと思われます。
「ポートフォリオ全体」で見たリスク管理
ということで、商工ローンやオリックスさん等の新型ローンに共通するのは、「本部主導型(結果的にポートフォリオの形重視)」であり、来店客は受け付けない「アウトバウンド(&ピンポイント)型」というところではないかと思います。審査ももちろんするわけでしょうが、恐らく、既存の銀行融資ほど個々の企業の中身を詳細に見ていくというよりは、全体のポートフォリオとしての産業分布とか地域分布とか金額の分散度合いの方が重要かと思います。また、「本部」に「頭のいい」スタッフを置いて全体のリスク管理を行い、現場は「単なる手足」的であるというところも、商工ローンやオリックスさんのビジネスモデルに共通するところかと思います。
旧来の銀行融資が、支店ごとに「インテリジェントな」機能を持っていたにも関わらず、結果として銀行全体で「インテリジェントじゃない」不良債権の積み上がりという事態になってしまった、というのと非常に対照的でおもしろいかと。
また、不良債権問題によって、既存の銀行の内部管理が、「とにかく不良債権が1円でも増える案件はダメ」という状況(貸し渋り、貸し剥がし)に陥ってしまっていたわけですが、実際には、金利を十分に取ってそれが貸倒損失や経費を上回って儲かればビジネスは成立するわけで、そこにアービトラージのチャンスというか、非常に大きな市場の「ゆがみ」が存在することにもなったわけです。(つまり、「不良債権が発生するビジネス」=「悪いビジネス」ではない。)
日本振興銀行さんがどういう審査や営業をされていたのか私は全く存じませんが、そのへんをどうされていたのかというのに非常に興味がありますね。
BIS規制やバーゼル2などに向けて、メガバンククラスの信用リスク管理の手法は、バブル期よりは格段に高度化されていると考えられます。
(参考:三井住友フィナンシャルグループ「信用リスク管理」
このへんは、木村氏は当然、得意中の得意でらっしゃるはずかと思われますので、そういったノウハウがうまく新銀行に取り入れられていたのかどうか、ということですが。
ちなみに上記の引用で「関係者」氏がおっしゃる「15%」というのは利息制限法上の制限のことですね。以前にも書きましたが、図解すると以下の通り。
image002.gif
「ステルス型」のビジネスモデル
上述のとおり、「銀行以上商工ローン未満の金利」のゾーンでの融資ビジネスは、基本的に「アウトバウンド(&ピンポイント)」であり、マス広告を基本的に一切しないものだとすると、その特徴はおのずと「目立たず、非常に地味な」ものになります。井上和香や安田美沙子は登場しえない世界なわけですね。
結果的に、そういう業態が成立することは、一般の人はもちろん、当の中小企業もアプローチされるまでは そうした融資商品があることを知らなかったりするわけです。
新規参入の難しさ
というわけで、「銀行以上商工ローン未満の金利での中小企業向け融資ビジネス」が必ずしも成功しないわけではありません。一方で、やはり、新規参入する銀行には難しい要素があることも事実かと思います。
オリックスさんも三井住友銀行さんも、従来からのリースや融資の膨大な顧客データがあり、日本全国に多数の支店というインフラがあるからこそ、こちらから「アウトバウンド」で攻めることもできるし、日本全体・全産業に分散して、貸倒リスクを統計的に一定の範囲内に封じ込められる「ポートフォリオ」を比較的容易に形成することが可能だと思われるわけですが、新規参入で顧客ベースがない銀行がこれをやるというのは、(加えて、「困ってる企業への融資」を社是としていながら、実態としては「飛び込み」で来る企業には貸せないことがほとんどだとしたらなおさら)、非常に難しい面があるのではないかと想像されます。
「儲かるニッチ」を貸し出しを行う側から摘みに行くのと、「貸し渋りで困っている中小企業に貸します」というの(公益的な香りのするスタンス)はまったく対極の概念とも言えます。
ただし、そうした「公益」と「収益性」が合致するニッチが絶対存在しませんよ、ということを申し上げているわけではありませんので念のため。
(ご参考:「グラミン銀行と小規模融資のビジネスモデル」http://www.tez.com/blog/archives/000091.html
最後に、このビジネスモデルについての切込隊長(山本)氏の金融庁の方とのやりとりについての続きも資料として引用させていただきます。(繰り返しになりますが、この引用には木村氏が「事実に基づかない風説である」と主張される部分が含まれるかも知れませんので、その点ご了承の上、お読みください。)

山本「日本振興銀行の無担保方針についてなんですが、これは当初からその予定でお話があったのでしょうか」
金融庁幹部「どうしても無担保でやりたいという話ではなかったようですが、途中から様相が変わって、担保のない中小企業が資金繰りに苦しいから設立した銀行なのでその方向でいきますというお話はありました」
山本「それはいつごろでしょうか」
金融庁幹部「設立準備会社が設立された直後のことですので、10月ごろではなかったかと思います」
山本「所轄としては、それで問題なし、と?」
金融庁幹部「まあ、要するに天の声というか、実験的措置という説明だったので、審査の体制はしっかりしてくださいというお話はしましたけどね」
山本「開業後、すぐに営業の不振が明らかになりました」
金融庁幹部「5月に社(註:金融庁のこと)で問題になりましたが、まあそういうことになるだろうと思っていたので、説明があったときも、はい、そうですか、という感じでした」
山本「何故です? 貸し倒れる可能性が高いから営業が上手くいかなくても良かったと?」
金融庁幹部「うーん。それもありますが、あまり触りたくなかったというのが正直なところですかね、選挙後に体制が変わるかどうかとか、上の人事とかもありましたんで」
山本「無担保の方針について、誰の主導だったかは分かりますか」
金融庁幹部「私どもとしては、代表の小穴さんと木村さんぐらいとしかお話していないので、銀行全体の方針だと思っていました。誰主導とか、そのあたりの認識はありませんね」
山本「担当レベルで具体的に審査体制について指導しようとかそういう動きはあったんでしょうか」
金融庁幹部「そのあたりはお話できません、すいません」
山本「分かりました」

「天の声」があったかどうかはともかく、こういう「チャレンジしてみないとニッチが存在するかどうかわからない」ベンチャー的なビジネスモデルに免許を出すかどうかというのは、監督官庁さんとしては難しいところですね。
一般の事業なら「原則、参入自由」でまったく問題ないわけですが、銀行の場合、預金の保護に「税金」が投入される可能性があるというところがビミョーではあります。
以前は、全く銀行業への参入の門は閉ざされていたわけで、参入を促して競争を促進することは、基本的にはいい話。しかし、現場レベルでは技術的に(「態勢」等で)要件を満たしていないとツブす口実はいくらでもあるでしょうから(トバッチリを受けるのは結局現場。)、「開放」という政策であれば、ある程度「天の声」がないと、ボトムアップだけに任せておくのも無理があると思われます。といっても「天の声があったから、適当に参入させた」、では困る・・・・「公益」っぽさもないと、「ただの貸金業でやりゃあいいじゃない?」ということにもなってしまうので、採算性とは必ずしも合致しない要素も求められることになってしまう・・・・・ということで、そのへんのバランスが非常に「ビミョー」なわけですが・・・。
(ではまた。)
(追記:切込隊長blogのトラックバックのタイムアウトエラーで、何回もトラックバックを送ってしまいました。すみません。)

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3年後の通勤風景予想図

いよいよ日曜日にPSP発売。

 PSP 「プレイステーション・ポータブル」

CM(麻雀編)じゃないですが、まじめな話、3年後の電車の車内って半分以上の人が携帯ゲーム機をいじってる姿になるんじゃないですか?
息子達が買ったせいかも知れませんが、最近、電車の中でゲームボーイをやってる大人が目に付くようになりました。絶対、新聞や雑誌よりはハマりますからね。
今なら、ドラクエ�を寝不足になりながらやっても、さすがに会社に行くときは解放されるわけです。が、携帯ゲーム機が普及するとこの呪縛が会社の休み時間や得意先に出かける途中にも続くことになるのは必至。
今でも、携帯電話の画面を見ている人が車内の半分以上という時もしばしばありますよね?駅からの帰り道で、携帯の画面にほの白く照らされた顔がいくつも暗闇の中を進んでいくというホラーな光景も結構見られるようになりました。
こんな光景、5年前には想像できなかったんではないでしょうか。
カードや定期券など持ち歩く機能はすべて携帯に包含されていくのかとも思ってましたが、携帯ゲーム機というのは、携帯電話に並ぶすごいプラットフォームになるのかも知れませんね。
(ではまた。)

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デットIR—新時代の戦略財務

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デットIR—新時代の戦略財務

松田 千恵子 (著)
シグマベイスキャピタル

という本をいただいたので、読んだらブログに書評を書こうと思っていましたが、バタバタしててなかなか終わりまでいかないので、とりあえずご紹介だけさせていただきます。
IRというと、通常株式市場向けのIRを想像される方が多いと思いますが、社債をはじめとする負債(デット)についても、投資家向けのリレーションが必要なのは当然のこと。
エクイティとデットでは性質も違いますので、デットはデットなりのIRの方法があるわけですが、デットIRについて書かれた本(和書)は、Amazonで検索しても松田さんの本しか無いようです。
松田さんの以前のご著書:

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格付けはなぜ下がるのか?—大倒産時代の信用リスク入門

松田 千恵子 (著)
日経BP社

について週刊ダイヤモンドに書かせていただいた書評はこちらをご覧ください。
(ではまた。)

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