ORANGE RANGEとミーム

本日は朝からORANGE RANGEの「花」
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の「♪花びらの ように散りゆく中で」というフレーズが頭の中でずーっとリフレインし続けていてウルサいので思わず通りがかりの家電量販店で購入してまいました。
auの着うたフルの仲間由紀恵のCMもそうですが、映画「今、会いにゆきます」の主題歌にもなっているようで。
この「今、会いにゆきます」ですが、以前、ラーメン屋においてあったビッグコミックスペリオールをたまたま手に取ったところ、ちょうどこのマンガ版の最終話が掲載されていてラストシーンを読んでしまったのですが、そこだけで泣けまして。(涙腺が弱くなってきたこともあり。)
ラーメン屋で嗚咽がもれそうになるのを抑えるのに苦労しました。
ということで、映画は見てませんが、映画の出来が相当悪かったとしても、ラストシーンのスタッフロールでこの曲がかかったりしたらもー、号泣必至なので、恥ずかしいので見に行かないことにします。
ストーリーがわかった上で歌詞を意識すると、よりキます。
どうも、脳のセキュリティホール(私だけ?)をチクチク攻撃してくる要素がある気がします。
(ではまた。)

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税理士法人ライブドア誕生、の巻〜

会計系受験生IKEさんにトラックバックいただいて遅ればせながら知ったのですが、「税理士法人ライブドア」が既に(「弥生」買収の前に)設立されていたようですね。
ライブドアさんのプレスリリースを見ても見あたらないようですが、

(社員の資格)
第四十八条の四  税理士法人の社員は、税理士でなければならない。

という税理士法の規定からして、この税理士法人がライブドアさんと資本関係があるはずがないので、適時開示上も全くプレスリリースの義務はないのでしょう。
日本経済新聞をはじめ、朝日、毎日、読売、産経の各紙を検索してみても、記事にはまったくなってないようです。(こんなにおもしろい興味深い話もなかなかないのに。)
以前も書きましたが、税理士法では、

(税理士業務の制限)
第五十二条  税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない。

となってますので、「税務代理」、「税務書類の作成」、「税務相談」の3業務(税理士法第二条第一項)については、たとえ「一回きり」「タダ」であっても行ってはならないという、(ある意味弁護士法等よりキツい)、絶対的な「独占」が法律で定められています。(追記:コメントもご参照のこと。)
当然、前述の記事で書いたような「弥生」と組み合わせたネット的な展開を考えられているのだと思いますが、ライブドアさん的に見て税理士マーケットが、(野球や競馬などと同様)、経済学的に最も「ゆがんだ(おいしい)」マーケットの一つに見えるのは当然すぎるほど当然。
税理士界というのは政治との結びつきも非常に強いわけで、こうした「資本の論理」との対決は見ものですね。
野球では「エスタブリッシュメント的アプローチ」が勝ってしまったわけですが、そこはライブドアさんなので、「既得権益」に正面からぶつかっていくアプローチを期待したいところですが。あまり正面から権益を侵すアプローチを取ると、先日の公証人に関する読売新聞の記事のように、ライブドアさんへの税務調査が厳しくなる、等のイヤガラセ「公正な申告納税推進の徹底」も考えられなくもないわけです。
(義務でなく任意でのプレスリリースをもしなかったのも、「業界を刺激しないように」、という配慮?でしょうか。それにしては、法人名がモロに「ライブドア」で、ヒジョーに刺激的なわけですが。)
(ではまた。)

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民法上の組合に関する課税強化(国際取引)

本日の日経1面の記事「自民税調方針、国際取引課税を強化、ファンド収益源泉徴収」より。

投資ファンドの一種である民法上の組合を通じて日本に投資をして得た所得は原則、海外投資家が日本の税務署に申告して納税しなければならない。しかし、申告漏れが多発しているため、組合から源泉徴収する形式に改めるべきだとの意見が多い。
 ただ、日本の企業再生などで存在感を増している外資系のファンドや金融機関、欧米当局などからの反発も予想される。

法人税基本通達1-1-1で

1-1-1 法第2条第8号《人格のない社団等の意義》に規定する「法人でない社団」とは、多数の者が一定の目的を達成するために結合した団体のうち法人格を有しないもので、単なる個人の集合体でなく、団体としての組織を有して統一された意志の下にその構成員の個性を超越して活動を行うものをいい、次に掲げるようなものは、これに含まれない。
(1) 民法第667条《組合契約》の規定による組合
(2) 商法第535条《匿名組合契約》の規定による匿名組合

となってますので、民法上の組合は法人税の課税対象とはならず、その利益または損失は、持分に応じて組合員(投資家)である法人または個人の収入として、投資家の側で課税されるのが原則なわけで、原則として組合側に源泉徴収義務は無いわけです。(法人税基本通達14-1-1、14-1-2、所得税基本通達36・37共-19、36・37共-20、後記資料参照)
ただし、(投資顧問(一任)の議論と同じで、)その民法上の組合が、「みんなでわいわい」型の組合なのか、事実上「業務執行組合員」が一任的に投資の判断その他の業務のほとんどをやっているのかということでいうと、通常のファンドでは後者が実態ではないかと思いますので、外国法人の場合には、業務執行組合員がその「外国法人のために契約を締結する権限を有するもの=代理人」、つまり、いわゆる「3号PE」(Permanent Establishment=恒久的施設)に該当するのかしないのか、という議論は、以前からありました。
記事では、「反発も予想される」とありますが、「代理人」とみなされると約40%の法人税率で課税ということにもなりますので、むしろ、法律で20%(例えば)とか、源泉税率を決めてもらった方が、税務リスク+負担も小さくて安心、という外国法人もいらっしゃるかと思います。
(以 上)
以下、資料:

(外国法人に係る各事業年度の所得に対する法人税の課税標準)
法人税法第百四十一条
 外国法人に対して課する各事業年度の所得に対する法人税の課税標準は、各事業年度の所得のうち次の各号に掲げる外国法人の区分に応じ当該各号に掲げる国内源泉所得に係る所得の金額とする。
一 国内に支店、工場その他事業を行なう一定の場所で政令で定めるものを有する外国法人 すべての国内源泉所得
二 国内において建設、据付け、組立てその他の作業又はその作業の指揮監督の役務の提供(以下この号において「建設作業等」という。)を一年を超えて行う外国法人(前号に該当する外国法人を除く。) 次に掲げる国内源泉所得
イ 第百三十八条第一号から第三号まで(国内源泉所得)に掲げる国内源泉所得
ロ 第百三十八条第四号から第十一号までに掲げる国内源泉所得のうち、その外国法人が国内において行う建設作業等に係る事業に帰せられるもの
三 国内に自己のために契約を締結する権限のある者その他これに準ずる者で政令で定めるもの(以下この号において「代理人等」という。)を置く外国法人(第一号に該当する外国法人を除く。) 次に掲げる国内源泉所得
イ 第百三十八条第一号から第三号までに掲げる国内源泉所得
ロ 第百三十八条第四号から第十一号までに掲げる国内源泉所得のうち、その外国法人が国内においてその代理人等を通じて行う事業に帰せられるもの
四 前三号に掲げる外国法人以外の外国法人 次に掲げる国内源泉所得
イ 第百三十八条第一号に掲げる国内源泉所得のうち、国内にある資産の運用若しくは保有又は国内にある不動産の譲渡により生ずるものその他政令で定めるもの
ロ 第百三十八条第二号及び第三号に掲げる国内源泉所得

(外国法人の置く代理人等)
法人税法施行令第百八十六条
 法第百四十一条第三号(外国法人に係る法人税の課税標準)に規定する政令で定める者は、次に掲げる者とする。
一 外国法人のために、その事業に関し契約(その外国法人が資産を購入するための契約を除く。以下この条において同じ。)を締結する権限を有し、かつ、これを常習的に行使する者(その外国法人の事業と同一又は類似の事業を営み、かつ、その事業の性質上欠くことができない必要に基づきその外国法人のために当該契約の締結に係る業務を行なう者を除く。)
二 外国法人のために、顧客の通常の要求に応ずる程度の数量の資産を保管し、かつ、当該資産を顧客の要求に応じて引き渡す者
三 もつぱら又は主として一の外国法人(その外国法人の主要な株主等その他その外国法人と特殊の関係のある者を含む。)のために、常習的に、その事業に関し契約を締結するための注文の取得、協議その他の行為のうちの重要な部分をする者

(任意組合から受ける利益等の帰属の時期)
法人税基本通達14-1-1 法人が組合員となっている組合の利益金額又は損失金額のうち組合契約又は民法第674条《損益分配の割合》の規定により利益の分配を受けるべき金額又は損失の負担をすべき金額は、たとえ現実に利益の分配を受け又は損失の負担をしていない場合であっても、当該組合の計算期間の終了の日の属する当該法人の事業年度の益金の額又は損金の額に算入する。ただし、組合が毎年1回以上一定の時期において組合事業の損益を計算しない場合には、当該法人の各事業年度の期間に対応する組合事業の損益を計算して当該法人の当該事業年度の益金の額又は損金の額に算入する。
(注) 同業者の組織する団体で営業活動を行わないものは、この取扱いの適用はない。

(任意組合から分配を受ける利益等の額の計算)
法人税基本通達14-1-2 法人が、組合員となっている組合から分配を受けるべき利益の額又は負担すべき損失の額を14-1-1により各事業年度の益金の額又は損金の額に算入する場合において、次のいずれか一の方法により継続してその利益の額又は損失の額を計算しているときは、これを認める。
(1) 当該組合について計算される利益の額又は損失の額をその分配割合に応じて各組合員に分配又は負担させることとする方法この方法による場合には、各組合員は、当該組合の取引等について、受取配当等の益金不算入、所得税額の控除、引当金の繰入れ、準備金の積立て等の規定の適用はない。
(2) 当該組合の収入金額、その収入金額に係る原価の額及び費用の額並びに損失の額をその分配割合に応じて各組合員のこれらの金額として計算する方法
 この方法による場合には、各組合員は、当該組合の取引等について受取配当等の益金不算入、所得税額の控除等の規定の適用はあるが、引当金の繰入れ、準備金の積立て等の規定の適用はない。
(3) 当該組合の収入金額、支出金額、資産、負債等をその分配割合に応じて各組合員のこれらの金額として計算する方法
(注)1 (1)の方法による場合において、当該組合の支出金額のうちに寄附金又は交際費の額があるときは、当該組合を資本又は出資を有しない法人とみなして法第37条《寄付金の損金不算入》又は措置法第61条の4《交際費等の損金不算入》の規定を適用するものとしたときに計算される利益の額又は損失の額を基としてその分配又は負担させる金額の計算を行うものとする。
  2 (2)又は(3)の方法による場合には、組合員に係るものとして計算される収入金額、支出金額、資産、負債等の額は、組合員における固有のこれらの金額に含めないで別個に計算することができる。

(任意組合の事業に係る利益等の帰属の時期等)
所得税基本通達36・37共-19 任意組合(民法第667条《組合契約》の規定による組合をいう。以下36・37共-20において同じ。)の組合員の当該組合の事業に係る利益の額又は損失の額は、当該組合の計算期間を基として計算し、当該計算期間の終了する日の属する年分の各種所得の金額の計算上総収入金額又は必要経費に算入する。ただし、当該組合が毎年1回以上一定の時期において組合事業の損益を計算しない場合には、その年中における当該組合の事業に係る利益の額又は損失の額を、その年分の各種所得の金額の計算上総収入金額又は必要経費に算入する。

(任意組合の事業に係る利益等の額の計算)
所得税基本通達36・37共-20 36・37共-19により任意組合の組合員の各種所得の金額の計算上総収入金額又は必要経費に算入する利益の額又は損失の額は、次の(1)の方法により計算する。ただし、その者が継続して次の(2)又は(3)の方法により計算している場合には、その計算を認めるものとする。
(1) 当該組合の収入金額、支出金額、資産、負債等を、組合契約又は民法第674条《損益分配の割合》の規定による損益分配の割合(以下この項において「分配割合」という。)に応じて各組合員のこれらの金額として計算する方法
(2) 当該組合の収入金額、その収入金額に係る原価の額及び費用の額並びに損失の額をその分配割合に応じて各組合員のこれらの金額として計算する方法
この方法による場合には、各組合員は、当該組合の取引等について非課税所得、配当控除、確定申告による源泉徴収税額の控除等に関する規定の適用はあるが、引当金、準備金等に関する規定の適用はない。
(3) 当該組合について計算される利益の額又は損失の額をその分配割合に応じて各組合員にあん分する方法
この方法による場合には、各組合員は、当該組合の取引等について、非課税所得、引当金、準備金、配当控除、確定申告による源泉徴収税額の控除等に関する規定の適用はなく、各組合員にあん分される利益の額又は損失の額は、当該組合の主たる事業の内容に従い、不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得のいずれか一の所得に係る収入金額又は必要経費とする。

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発起設立と募集設立

ドラクエ�の途中のエピソードで嗚咽がこみ上げそうになるのを子供達に気づかれないようにおさえるのに苦労した、40越えて涙腺がすっかり弱くなったおじさんの磯崎です。
krpさんより、設立コストのナゼ?シリーズその2:銀行の払込金保管証明書のコストにコメントいただきました。

今回の会社法現代化で発起設立の場合は、「残高証明等の方法によるものとする」こととなり、保管証明はいらなくなります(というか、なる方向で法案まとめるはず)。
募集設立の場合は残るようですけど、VBで募集設立はないですよね?

初めての方のためにおさらいしておきますと、
株式会社の設立には、「発起設立」(商170条)と「募集設立」(商174条)があります。
発起設立とは、会社の設立時に発起人が全株式を引き受ける方法。
募集設立とは、発起人が一部だけを引き受け、残りを募集する方法です。
平成2年の商法改正前は、発起設立だと裁判所の選任する検査役検査が必要だったのですが、その改正後は検査役が不要になったので、今では(作成する書類も少なくて済む)発起設立の方が主流ではないかと思います。
ということで、原則としてベンチャービジネスで募集設立は無いはずなんですが、実は、つい最近、ベンチャービジネスの設立に募集設立を使ったケースがありました。
要は、定款認証を行うまでに設立当初の出資者全員のハンコをもらう時間がなかった、ということなんですが。設立日(=登記申請日)は、「大安がいい」とか「1日付けがいい」、「スキーム上、この日でないとまずい」など、いろんな理由で制約を受けますので、それにあわせて定款認証のデッドラインも決まってきます。
このため、公証人さんに認証してもらう定款には発起人1名だけがハンコを押し、その後他の株主さんにも「株式申込書」の形でハンコをもらって設立、ということにしました。
もちろん、発起設立で発起人が設立直後に他の株主さんに株式を譲渡しても同じことです。しかし、(一般の未公開会社がちゃんとやってるかどうかはともかく)、商法上は株式の譲渡には株券を発行してそれを交付する(引き渡す)ことが必要(商法205条�)ですので、(そういった法律にウルサイ方に)ちゃんと譲渡しようと思ったら面倒だとか、「設立時(設立の瞬間)から株主でないとヤダ」とか「発起人にお金を渡すのはイヤ。株の代金は銀行の別段預金にちゃんと払い込みたい。」というような(ことを言われる可能性のある)出資者の場合には、募集設立を使うという手があった、ということです。
ま、極めて例外的なケースですので、たいていの場合は発起設立で間に合うはずです。今でも、前述のとおり募集設立だと「創立総会議事録」「株式申込書」等よけいな紙を作らないといけないですし、会社法の現代化で保管証明コストが変わってくるということであれば、なおさら募集設立を使う人はいなくなっちゃいそうですね。
(ではまた。)

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公証人シリーズその5「やっぱり重要なGDP浮揚策かも」

やはり、isologueを読んで頂いているみなさん、起業に興味がある方が多いんでしょうか、この「公証人」「起業コスト」シリーズ、おかげさまで過去最高ペースのアクセスをいただいてます。
(ちなみに、私、公証人さんに恨みがあるわけでも何でもなくて、ただ、「非常にめずらしい業態」なので、どんなことになっているのか、ビジネスモデルやガバナンス論の観点から知的好奇心がそそられているだけです。念のため。)
minoriさんよりまたコメントいただきました。

あと、キャリア組(判事・検察)の公証人さんの世界には「経済合同」というギルドがあります。

それは存じませんでした。ありがとうございます。
ということで、Webや新聞記事を調べてみました。
読売・朝日・毎日・産経・日経各紙を調べると、「公証人合同役場」というキーワードの記事は約30年間でたったの23件。しかも、ほとんどが「(地方の)公証人合同役場が○○村で相談会を開催」といったネタで、ネガティブな記事は2001年3月の読売新聞の記事1つだけ。
新聞社は検察と仲良くしないと商売にならないので、「よほどのこと」がないと記事にできないんでしょうね。
この記事が非常によくまとめてらっしゃいますので、引用させていただきますと、

公証人10人が申告漏れ 全員「判事・検事OB」 経費計5000万円水増し
遺言状などの公正証書を作成する公証人約十人が、東京国税局の税務調査を受け、一九九八年までの三年間に総額約五千万円の所得の申告漏れを指摘されていたことが十五日、明らかになった。公証人は、法務大臣が任命する国の公務員で、申告漏れを指摘されたのは、全員が裁判官と検察官のOBだった。(中略)
 申告漏れを指摘された約十人は、東京都内の公証役場で仕事をしている公証人。全員が司法試験に合格後、裁判官や検察官を約三十年務め、地裁所長や地検検事正の経験者がほとんどだった。申告漏れ額は、一人当たり約四百万円から約六百万円で、いずれも修正申告し、加算税を含めた追徴税の納付に応じている。
 関係者によると、これらの公証人は、所得の申告に際し、高級レストランで妻と二人で個人的に食事をした代金や、家族旅行の費用などについて、公正証書を作成するための顧客との懇談・交際費として計上したり、遺言状作成のための出張旅費などとして申告していた。中には、後輩の地検検事正らとのゴルフ代も経費計上していた悪質なケースもあったという。

と、「よほどのこと」があったわけですが、

 公証人は税法上、遺言状や公正証書などの作成手数料から、公証役場の事務所賃借料や事務職員の人件費などの経費を差し引いた所得を個人で申告する個人事業主。

ということで、やっぱり「公務員」であり、かつ、税務上は個人事業主でらっしゃるわけですね。

手数料は公証人手数料令という政令で決められており、手数料収入は毎月と、毎年ごとに管轄の法務局に公証事務一覧月(年)表として報告する。
 このため、公証人の手数料収入はガラス張りで、所得を少なくするには、経費を水増しするしかない。
 公証人法は、法務局や法務局支局単位に公証人を置くと規定しており、法務省によると、昨年十二月現在、全国で五百四十二人(定員六百八十五人)。このうち、裁判官出身者が百六十人、検察官出身者が二百二十七人。残る百五十五人は「特任」と呼ばれる元裁判所書記官や元法務・検察事務官ら。一九九九年の公証人一人平均の手数料収入は三千二百九十八万円。

法務省の統計DBの中のExcelシート
http://www.moj.go.jp/TOUKEI/DB/minji03.xls
によると、平成14年の設立登記は、株式会社15,622件有限会社68,990件で、合計84,612件
定款認証の手数料1件5万円をかけると、42.3億円(一人当たり約780万円)。
収入の約2割を占めているということのようです。
「収入」ということは、ここから公証人役場の賃料とか事務員さんのお給料が引かれるわけでしょうから、やはり定款認証がなくなると、正味の所得としては結構痛そうですね。
さらに、同日の社会面の記事では、より詳しい分析が行われています。

公証人申告漏れ 判事・検事OBが独占システム 高収入、再配分で“保証”
 ◆元書記官らは除外
 公証役場の場所によって差がある公証人の所得の均衡を図るため、「経済合同」という“所得再配分システム”が存在することが分かった。日本公証人連合会では、「質の高いサービスを全国どこでも提供するため」と説明するが、再配分のグループは、所得が多い元裁判官と元検察官だけで組まれており、関係者の間からは、「退官後の所得確保のためではないか」との指摘や、「競争のない排他的なギルドの世界そのもの」などという批判も出ている。〈関連記事1面〉
 同連合会などによると、収入の半分を“上納”する東京の「五割合同」、全収入を平等に再配分する大阪の「十割合同」など、再配分の割合は都道府県ごとに決められている。
 東京の経済合同には、都内四十五役場、百八人の公証人が参加。経理事務を行う「東京公証人合同役場」が置かれ、各役場から上がってくる収入から、合同役場の事務経費などを差し引き、その残額を各公証人に均等に配分している。

法律上でいくと、これは「組合契約」になるんでしょうかね?

(中略) しかし、経済合同は収入の多い元裁判官や元検察官だけで組まれているのが実情だ。収入の低い地域に配置されている元裁判所書記官や元法務・検察事務官ら「特任」の公証人は、広域で経済合同を構成しているが、「やっと生活できる程度」(ある特任公証人)で、元裁判官や元検察官だけが“高額配分”していることに根強い不満がある。
 経済合同は、定年間近の裁判官や検察官に“転職”を勧める際にも都合がいい。大阪公証人会幹部は「大阪の場合、100%合同なので、検察官を辞めた後、どこへ行けと言われても不満が出ない。所得に格差があると、『もう少し検察官をやっていたい』ということになるので、人事配置の面ではデメリットだ」と、本音を明かした。法務省民事局も、「公証人の自主性にゆだねられていることだが、必要に応じて経済合同を行うことは好ましい」との立場だ。
 これに対し、内部からも「働いても働かなくても収入があるという感覚は、自由主義経済の中では通用しない」という自戒の弁も聞かれる。さらに、公証人の任用制度見直しを進めている政府の規制改革委員会の委員長代理、鈴木良男・旭リサーチセンター社長は、「公証人の能力は、間違いない公正証書を作ることで、はやる役場とはやらない役場が出て当然。経済合同などというのは、ギルドの思想そのものであり、忙しい役場ではサービス低下をもたらす」と、厳しく批判した。(中略)

一応、規制改革の検討の対象にはなったことがあるみたいですね。その後、どうなったんでしょうか?

◆国税「申告内容ひどい」と調査
 「公証人の世界はまさに『聖域』。調査したくても、できなかった」。ある国税局関係者は語る。これまで公証人の税務調査に踏み切れなかったのは、検察の存在があるからだ。
 マルサ(査察部)が摘発する脱税事件は、検察が告発の受け手となる。そのため、国税当局は検察との関係を最優先に考えてきた。
 しかし、九八年に東京地検特捜部が摘発した「大蔵接待汚職事件」に際し、この関係が一時、崩れた。
 国税の一部幹部には旧大蔵省(現財務省)の官僚が就いている。事件に関連して、参考人として特捜部に呼ばれた旧大蔵官僚の扱いなどをめぐり、国税当局に不満が噴出したのだ。
 「もう、聖域はない。公証人の税務調査を行う」。国税幹部の指示だった。

うーん。「そっちがやるならこっちも」という論理なわけですね。(笑)
やはり、ガバナンスの基本はあまり仲よくさせずに相互に監視させあう、ということでしょうか。

 公務員という立場にありながら、一部の公証人については、経費で落とすために片っ端から領収書を集めているとの情報もあった。国税関係者は「元裁判官や元検察官とは思えない目に余る申告状況があった」と明かす。
 九八年には、元新潟地検検事正が、親族の相続税の申告漏れをめぐるトラブルに際し、検事正名の抗議文を税務署署長あてに送付していたことも発覚したが、今回の税務調査の過程でも、かつて検事正を務めた公証人から、“圧力”めいたこともあったという。

この記事を書いたあとに、読売新聞さん、「圧力」や取材させてもらえないなどのイヤガラセは受けたりしなかったんでしょうか?、とちょっと心配になりますが。
公証人というのはこの記事によると180億円程度の市場規模しかない「ニッチな」ビジネスですので、多少のことだったら放っておかれるかと思いますが、定款認証を無くして年間42億円の公証人さんの収入(+33億円の印紙代)を削るだけで起業がより(例えば年間10%、10000社くらい)活性化するとしたら、将来、GDPが1兆円単位で変わってくるかも知れませんからね。これはやっぱり、「よほどのこと」なんじゃないでしょうか。
「民間ビジネス」だったら「既得権益」を法改正で削るのは問題かもしれませんが、「公務員」を名乗られるからには、(もし定款認証を無くした方がホントに日本の発展のためになるのであれば)、「公の利益」を最優先していただくべきかも知れません。
(ではまた。)

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公証人シリーズ(その4)

公証人さんって、日頃あまり深く考えたことないので、よくよくみるといろいろ面白いですね。

公証人法第十九条
公証人ハ任命ノ辞令書ヲ受ケタル日ヨリ十五日以内ニ其ノ所属スル法務局又ハ地方法務局ニ身元保証金ヲ納ムヘシ
2 身元保証金ノ額ハ政令ヲ以テ之ヲ定ム

というので、その政令を見てみると、身元保証金の額は、

公証人身元保証金令
第一条  公証人の納むべき身元保証金の額は、次の区別に従う。
東京都の区にある区域又は大阪市に役場を設ける者 三万円
人口七万人以上の地に役場を設ける者       二万円
その他の地に役場を設ける者           一万円

少なっ!(笑)
法制定の趣旨は「信用力が必要な職業なので、保証金を積んでくれ。へんなことしたら取り上げちゃうよ。」ということだったんじゃなかったかと思うんですが、昭和二十四年六月一日に施行されてから一回も改訂されてないようで、これなら女子高生でも払えますね。
役所OBの利害に関することを政令としてその役所に権限移譲するというところが、そもそも牽制が効いてない気がします。
おまけに、お上による非常に細かい地域別参入規制までついてます。
公証人定員規則(別表)
お医者さんの場合、開業の際に医師会が地域で過当競争にならないように開業する場所の調整を行ったりするらしい、というのは昔聞いたことがありますが・・・政府がやるとは・・・。
ほかにここまで丁寧に政府が面倒を見てあげる業態(特に個人資格のもの)ってありますかね?
日本公証人連合会のホームページでは、「公証人は公務員です」と書いてありますが、決まったお給料しかもらえないサラリーマンというよりは、自分で稼いで事業所得?として税務申告する「自営業者」なわけですよね?こういう形態の「公務員」って、他にもあるのかしらん??
(ではまた。)

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設立コストのナゼ?シリーズその3:公証人の「ビジネスモデル」

minoriさんから、前回のエントリーにコメントいただきました。

こんにちは。
公証人さんに認証してもらう前に、類似商号の有無や会社の目的の確認を法務局で取るのはセオリーですが、商業登記に公信力が認められていることを考えると、設立当初の会社の状況を、公の機関が認証することに意義はあると思います。

もちろん、さすがに法改正の現場で、「いやー、うち(法務省)のOBの手前、そこだけはまずいんで、かんべんしてくださいよー。」というような話だけで定款認証の部分に手がついていないとは思えないので、なんらかそういった理屈はついているのだとは思いますが、それって、あくまで「理屈」であって「実態」じゃないですよね?
つまり、公証人さんが必ず発起人本人の口から直接設立の意志を聞くとか、会社の本店の住所まで実際に出向いて確認を行うとかいうならともかく、法務局へも公証人さんへも、代表者個人の印鑑証明と司法書士さんへの委任状等の書類を提出すればよくて発起人本人が法務局や公証人役場に来るとも限らないわけですから、公証人が定款を認証しても、何らかの情報なり価値なりが付加されているということは全く無いのではないかと思うのですが・・・。
つまり、定款認証無しで法務局に設立の登記をするだけでも、「公の機関」である法務局で、印鑑証明書による代表者の実在性や、発起人決定書等への押印による設立の意志や、設立当初の定款の内容等の確認も行えるわけですから。

認証手数料が一律なのは、いかがなものはとは思いますが。

はい。今どき、料金体系が政令で決まっている業界というのも少なくなってきてますよね。
(ご参考:公証人手数料令
こういう時代ですし、ちゃんと競争原理を導入すべきだと思いますが、
ただ、公証人というのは、「元祖Certificate Authority」ですから、電子化の時代に自由に競争させると、(VeriSignなどの電子認証局と同様)、将来は自然に一社(者)独占または数社の寡占に陥る宿命の機能かも知れません。当面、「紙」が法律上の要件になっているものが多いでしょうから、地域ごとの「fragmented」な構造は残ると思いますが・・・。

その認証手数料の5万円も痛いですが、登録免許税は、もっと痛くないですか?「払込資本金の0.7%」といっておきながら、株式会社の場合は最低金額が15万円です。

もちろん、それがコストの中で一番デカいわけですが、そこは変更しても直接には誰の腹も痛まないので、環境さえ整えば比較的楽なんじゃないかと思うのですが。
(特に「アジアのデラウエア」をめざそう、なんてことを考える場合には。)
公証人さんの場合、「個人事業主」であり(ですよね?)ながら、兼業も禁止されており(公証人法第五条)、しかも、まさに法律というルールの総元締めである法務省のOBでらっしゃる、というところが非常に「そのへんの法律が変わっていかなさそーな感じがする」、ということであります。
(ではまた。)

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