ストックオプションの財務諸表への計上方法は?

昨日、インボイスさんが今回発行するストックオプションは、従業員等へのストックオプションが費用計上されたあかつきには、財務諸表にどう計上されるの方法はどうなるだろうか?
という問題提起をさせていただきました。
これに対してminoriさんからコメントいただきました。ありがとうございます。それも参考にさせていただいて、追記いたします。
minoriさん曰く、

海外の類する会計基準は Share based payment(株式報酬)とあらわしていますし、日本の財務会計基準機構も、費用化の対象になるのは、
・ 従業員等に報酬として付与する場合
・ 企業が財貨やサービスを取得する取引の対価として付与する場合
だと想定しているようなので、今回のインボイスさんのストックオプションは、費用計上の必要がないのではないでしょうか。

ということですし、おそらく日本での会計基準も費用化に関してそういう方向で進むのではないかと思います。
私の問題意識は、昨日の記事の最後にも書きました、
image003.gif
という図の通りで、新株予約権を発行したときに、「借方」(つまり費用計上等)の方から決めていくのか、「貸方」つまり新株予約権の額から決めていくのか、という「思想」の問題になります。
新株予約権を発行したら、まず「貸方(新株予約権:紫色部分)」の額がそのときの「時価」で決まって、それに「つられて」借方の費用の額(水色部分)が決まる、というのは、それはそれで一貫しています。
ただ、今の日本の会計基準も今後の会計基準も、どちらかというと、借方の費用に該当するかどうか(水色部分)が先に決まって、それにつられて貸方の新株予約権(紫色部分)が決まるという発想のような気がします。
上記のminoriさんのコメントに対して私がコメントさせていただいたのが、

(略)経済的実態が同じなのに、例えば、
・付与先が従業員の場合は費用計上で、外部の提携先企業なら費用計上しない。じゃ、限りなく従業員に近い下請けさんや営業譲渡してアウトソースした会社へのストックオプションはどっち?とか。
・従業員以外への新株予約権のみの発行の場合には負債に計上しないが、ワラント債の場合には負債計上するとか、
経済的に同じ事象なのに利益額が違ってくるというのは、大変にキモチが悪い。
雇用契約を請負契約に変えたり、部門ごと他社に売却してそこに発注を出すとかはリストラやアウトソーシングの時代にはありがちですが、給与だろうが外注費だろうが支払額が同じなら利益の額は同じになるはずですが、ストックオプションについてはそうした形態を変えるだけで利益の額が変わっちゃうというのは大変おかしい。
実態が同じなのに処理によって大きな「段差」があれば、それは利益調整に使われることにもなりますし、そうした「基準」によって表示される「利益額」が会社のパフォーマンスを正しく映さなくなる可能性もあります

ということです。
これに対してminoriさん曰く;

インボイスさんは、「株主」にストックオプションを付与しているので、新たな会計基準が導入されても費用計上の必要はありませんが、磯崎さんのご指摘になっているところは機構も十分に認識しているようです。
会員向けの発表資料によると、
「企業が交換取引における対価として自社株式ストックオプションを用いる場合の会計処理は、取引の相手方が従業員等以外である場合であっても、また、取得するものが労働サービス以外のサービスである場合であっても、特に異なった会計処理をする理由は見当たらない。さらに、取得するものが財貨である場合にも、財貨とサービスの性質の違いから生じる会計処理上の差異を除いては、その会計処理の考え方には共通のものが求められるはずである。」
として、「企業が交換取引における対価として、自社株式ストック・オプションを用いる場合」も、費用計上せよ、ということにするそうなので、外注先への付与にも適用されますね。

とのこと。
「対価であるかどうか」で費用計上するかどうかを決めているので明確な気もしますが、はたしてそうなのか、という気もします。
従業員に対するストックオプションの付与は労働の対価とみなせばすっきりすると思いますが、ただし、取引先企業などへの付与だと、これが供給される製品等の値段がその分割り引かれるなどの「対価性」があるものなのか、それとも、もっと漠然とした「提携の証」的なものなのかはわかりにくいのではないかと。
ファイナンスに関するものも、新株予約権付社債の場合には新株予約権が負債として計上されるわけです。これは、新株予約権が付く分、調達金利が下がるなどの「対価」があると考えられるからだと思いますが、全株主に対する付与も、密かに何かの「見返り」を期待しているからかも知れません。
「何の”見返り”も期待せずに、ストックオプションを発行することは無いのではないか」という考え方もできるかと思います。(つまり、「貸方(紫)」の新株予約権の額から先に考える考え方。)
では、新株予約権を発行する場合、必ず、時価で評価するということにすればいいかというと、これも先日書かせていただいたとおり、「時価」というものの計算方法自体が非常に複雑ですし、パラメータやシナリオを変更すれば額が変わってくる可能性があるため、問題が無いわけではありません。
・・・とまあ疑問は尽きないわけですが、まだ、日本のみならずアメリカでもストックオプションの会計処理がどうなるかはバチッと定まっていないわけですので、今日のところはこのへんで。
こういうケースに直面すると、いつも中学校のときの地図帳に載っていた「メルカトル図法」とか「ホモロサイン図法」とかの地図投影法思い出します。地図は3次元の地球を2次元に投影することなので、面積を正しく表示しようと亀裂がはいっちゃったりとか、経緯線を直角に交わらせるとグリーンランドがデカく表示されちゃうとか、必ずどこかに「歪み」が出ます。
会計も、企業活動という非常に複雑な現象を単なる「数字」に写像するということです。今までは「赤道」に比較的近い事象を扱ってきたのでそれほど大きな矛盾はなかったのが、だんだん緯度が高くなってきて、ストックオプションというのは「グリーンランド」くらいに相当するお話なのかも知れません。
(ではまた。)

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ストックオプションとは何か

昨日、インボイスが17日に発表したオプション買取制度を検討しましたが、本日はその続きということで、そもそもストックオプションというのはどういう風に処理されていて、今後、その処理がどう変わりそうなのかというあたりのお話を。
ストックオプションとは
そもそもストックオプション(新株予約権)とは何でしょうか。
新株予約権は、会社がこの権利を持っている人に対して「新株を発行し又は代わりに持っている自己株式を渡す義務を負う」権利(商法280条ノ19)のことをいいます。
経済的に言うと、会社に対するその株式のコール・オプション、ということになります。
(コール)オプションで、一定の価格で株式を買うかどうかの損得を考えてみると、以下の図のようになります。
image002.gif
行使価格が22,300円の株が30,000円になれば(図の「C」)、新株予約権を行使して株を手に入れ、それを売却すれば差額の7,700円が儲かります。(図のCの赤い矢印。)
逆に、株価が行使価格より下がって株価が10,000円になれば、もし新株予約権を行使してしまうと22,300円かかったものが10,000円でしか売れないので差し引き12,300円損してしまいます(図のAの赤い破線)ので、誰も行使しないはずです。
オプションの価値
以上より単純に考えると、オプションの価値は以下のような途中で屈折した線(青色)になるはずです。例えば、行使価格と株価が同じ(点「B」)以下なら、オプションを行使してもしょうがないので、オプションの価値はゼロのはずです。
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しかし、よく考えてみると、もし株価が行使価格と同じBのところであっても、オプションが「タダ」なら誰でも欲しがりますよね?オプションは行使してもしなくてもいいわけですから、行使期間がまだあれば、「将来へのお楽しみ」が残っています。
このため、オプションの「本当の価値」は、下図のように図の青い線よりちょっとだけ上の紫の線のようになるはずです。
image006.gif
オプション理論では、この紫の線と青い線の差額の部分を「時間的価値(time value)」、青い線の価値を「本質(本源)的価値(intrinsic value)」と呼んでいます。
「時間的価値」+「本質的価値」=オプションの価値、になります。
オプション・プライシング・モデル
では、この紫色の線(つまり、オプションの「時価」)はどうやって計算するのでしょうか?
オプション理論をご存じの方は、まず有名なブラック・ショールズ式が思い浮かぶかも知れません。
ブラック・ショールズ式は、以下のような式です。

image008.gif

ここで
S0 は、原資産(例えば普通株式)の現在価格
N(d) は、d の累積正規確率
X は、行使価格
T は、満期までの期間
r は、リスクフリーの金利
e は、自然対数の底(ネピア数)
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ブラック・ショールズ式は、行使期間の最後にだけオプションが行使できるという「ヨーロピアン・オプション」の価値の計算式ですが、通常のストックオプションでは、「2年間は行使できない」等の行使制限期間(cliff)や、「その後4年間で1/4ずつ行使可能に」等のベスティング(vesting)など、いろいろ複雑な条件が付きますので、厳密に言うとブラック・ショールズ式では完全に理論的というわけではなくなります。国際会計基準の案では、より複雑なケース分けに基づく「lattice model」などが提案されてます。
参考:7月2日「オプションの費用計上−株主様のご意向は明確だが」
https://www.tez.com/blog/archives/000129.html
ま、計算はいろいろ複雑ですが、どうやるにせよ、オプションの価値は、上記の図で紫色の線のような感じの曲線になるということです。
また、ストックオプションが費用計上されるようになった場合には、「将来行使したときの株式の時価」との差ではなく、発行したときのストックオプションの時価(紫色)と発行価格(通常ゼロ)との差になりますので、ご注意を。(将来の株価上昇分まで費用計上しなきゃいけないとしたら、えらいことです・・・。)
米国の現状
ちなみに、米国では、95年の10月に発表されたFAS123「Accounting for Stock-Based Compensation」という会計基準と、APB25という会計基準があります。
FAS123では上記の「紫色」の線のvalueが、APB25では「青色」のintrinsic valueのみがストックオプションの費用として計上されることになってます。
ストックオプションを付与するときには、ストックオプションの行使価格は株式の時価以下以上であることがほとんどですので、APB25の方式、すなわちintrinsic value(青色の線)で見たオプションの価値はゼロとなり、財務諸表に費用計上する必要は無くなります。今のところ、どちらの基準を採用してもいいことになっているため、APB25の採用の方が多い模様。
以下の解説はインテルの実例等が入っていてわかりやすいです。
日本政策投資銀行Washington Topics「ストック・オプション制度の費用化問題」
こちらもご参照:中央青山監査法人「連載 ストック・オプション」
新株予約権付社債の会計処理(日本)
金曜日の日経新聞朝刊一面に「ストックオプション、人件費計上を義務付けへ」という記事が載ったのですが、日本でも新株予約権について全く財務諸表に計上しないわけではなくて、新株予約権付の社債の場合には、このオプション価値を財務諸表上計上することになってます。

新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い(実務対応報告第1号)(平成14年3月29日 企業会計基準委員会)

Q3 改正商法のもとにおいて改正前の商法における分離型新株引受権付社債と同じ内容で資金調達を行う場合には、社債と新株予約権とを同時に募集し、かつ、両者を同時に割り当てることにより行われる。この場合、当該社債及び新株予約権の会計処理をどのように行うか?
(A)社債と新株予約権は別々に証券が発行されるので発行後には個別に流通することになるが、社債と新株予約権とを同時に募集し、かつ、両者を同時に割り当てる場合には発行時において両者は実質的に一体のものとみられるため、その経済的実質は従来の分離型新株引受権付社債と同一であるものと考えられる。金融商品会計基準第六・一・1では、新株引受権付社債について区分法を適用するものとしているので、その会計処理はそれぞれの発行価額を合計した上で区分法(Q2のA3(1)参照)により行うことが適当であると考えられる。

金融商品会計に関する実務指針(会計制度委員会報告第14号)
351.発行体における新株引受権付社債の新株引受権の区分処理
金融商品会計基準(第六.一.1.(1))において、「新株引受権付社債の発行価額は、社債の対価部分と新株引受権の対価部分とに区分する。」とされている。
新株引受権付社債には新株引受権が付されているため、新株引受権付社債の利子率は普通社債を発行した場合の利子率と比べ低く設定されている。行使されないで償還する場合の元利のキャッシュ・フローを普通社債の利子率で現在価値に引き直したものが、発行時における普通社債相当部分の価額である。この発行時の普通社債相当額と新株引受権付社債の発行価額との差額は、新株引受権というオプションの売建てに係る受取オプション料である。両者を区分して負債に計上するが、普通社債相当部分については債務額である額面金額で計上することになる結果、当該普通社債相当部分と額面金額との差額は社債発行差金(借方)として計上されることになる(第126項参照)。

つまり、下記の図のような感じ。
image014.gif
つまり、(最近あまり見かけませんが)分離型の新株予約権付社債を発行して社債部分だけを償還したら、新株予約権が負債の部に残ることになります。
新株予約権の発行の会計処理(日本)
これに対して、新株予約権だけを発行したときの基準は、下記の通り。

Q1 新株予約権の会計処理をどのように行うか?
3.新株予約権の会計処理
(1)発行者側の会計処理
現行の金融商品会計基準等は、新株引受権を単独で発行した場合の会計処理については明示していないが、上記2の整理と新株引受権付社債の会計処理(金融商品会計基準第六・一)を勘案すれば、新株予約権を以下のように会計処理することが適当であると考えられる。
「新株予約権の発行価額は負債の部に計上し、権利が行使されたときは資本金又は資本金及び資本準備金に振り替え、権利が行使されずに権利行使期限が到来したときは利益として処理する。 」
新株予約権は、発行時点における時価での発行のほか、無償での発行等多様な価格での発行が可能である(改正商法第280条ノ20第2項第3号、第13号)ため、新株予約権が時価未満で発行される場合において時価と発行価額(受取対価)との差額につき発行者側において費用認識すべきか否かが論点となりうるが、当面は現行の会計基準等に則して、新株予約権をその発行価額により仮勘定として負債の部に計上することが適当であると考えられる。
なお、新株予約権が行使された場合、その発行価額は株式発行の対価としての性格が認められる。このため、改正商法では新株予約権の発行価額とその行使に伴う払込金額との合計額の一株当たりの額をその新株一株の発行価額とみなしており(改正商法第280条ノ20第4項)、新株の発行価額中資本に組み入れない額を決議している場合(改正商法第280条ノ20第2項第10号)には、新株の発行価額を資本及び資本準備金に組み入れる(商法第284条ノ2第2項、第288条ノ2第1項第1号)が、それ以外の場合には新株の発行価額の総額を資本に組み入れる(商法第284条ノ2第1項)ことに留意する。
また、新株予約権の行使に伴い保有する自己株式を新株予約権者に移転する場合の会計処理は、企業会計基準適用指針第2号「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準適用指針」第8項に準拠し、以下のように行われる。
「 新株予約権の行使に伴い自己株式を新株予約権者に交付する場合の自己株式処分差額の会計処理は、新株発行の手続きを準用して自己株式を処分する場合の自己株式処分差額の会計処理と同様に扱う。なお、自己株式処分差額を計算する際の自己株式処分の対価は、新株予約権の行使の際の払込額と新株予約権の発行価額の合計とする。」
なお、新株予約権の会計処理については、拠出資本への算入と権利行使との関係等、今後本質的な検討が行われる可能性があり、その結果によっては上記の結論に影響を与える余地がある(企業会計基準適用指針第2号第31項)。

つまり、有償でストックオプションを発行した場合には負債に計上するが、無償で発行した場合(従業員向けのストックオプションなどはこのケースが多い)については、負債には計上しなくていいよ、というわけです。
つまり、経済的実態は全く同じであっても、前述のように(分離型の)新株予約権付社債を発行してすぐ社債部分だけを償還した場合には新株予約権は負債になるのに、新株予約権だけ単発で発行した場合には負債に計上しなくていいわけです。
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インボイスのストックオプションの財務諸表への計上方法は?
さて、それではここで問題です。
世の中の流れは、従業員などにストックオプションを無償発行した場合に費用を計上するべきだという方向ですが、将来そういう会計基準になった場合、今回のインボイスの株主へのストックオプション無償交付は費用計上すべきでしょうか、どうでしょうか?
あれほど大量のストックオプションですから、費用計上したらすごい額になります。(仮に計算されたオプションバリューが時価の1%程度であったとしても、18億円もの利益低下要因。)
まったく行使されなかったら将来特別利益が同額発生するわけで、単なる利益の繰延ってことにもなっちゃいますね。
また、あれほど大量のストックオプションを発行した場合には、相当、dilution(希薄化)が発生するわけですから、単純に通常のオプション・プライシング・モデルを使って計算していいものやらどうやら・・・。
・・・等々、インボイスさんのストックオプション発行は、いろんな問題提起になります。
(本日は、これにて。)

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インボイスの新株予約権買取制度

9月6日の記事「インボイス、分割後の自己株買い(第5回)」に対して、taishookun44さんから以下のようなご質問をいただきました。

(前略)9月17日付けで「新株予約権の買い取り及び売り出しの実施」というものが開示されました。内容は,SOの権利取得をした株主の新株予約権を「インボイス」が買い取り,その権利を第三者(証券会社等)に譲渡するというものです。このような行為が法的な問題(個人的には社会常識に反すると考えているのですが。)とならないかにつきまして,ご教示いただきたく思います。

参照:「当社の株主に付与する新株予約権の買取および売出しの実施に関するお知らせ」
http://www.invoice.ne.jp/pdf/9448_20040917.pdf
私の個人的な感想といたしましては、「当然、法的な側面については十分検討されてらっしゃると思いますので明らかに法的な問題があるわけではないとは思いますが、(いい悪いではなく)”常識的”という範疇に収まるもんでもないですなあ。」という感じです。
昨日の日経一面に「ストックオプション、人件費計上を義務付けへ」という記事が載ったので、これも多数の方から「具体的にどうやるの?」というお問い合わせをいただきましたが、実はこのインボイスさんの買取制度はこの問題と表裏一体のところもあって、非常に興味深いです。
以下、詳細に見ていきたいと思います。
買い取り手続きの概要
上記プレスリリースの「3.当社が行う買取および売出しにご参加の上、新株予約権を売却する場合の手順概要」を見ていきますと、、

(1) 新株予約権申込証提出(返送)時における売却の意思表示
本新株予約権の付与対象である当社の株主の皆様のお手元には平成16年10月22日発送にて本新株予約権の申込証等ご案内を郵送にて送付させていただきます。(中略)その際に、取得後の新株予約権を本買取および売出しにて売却される意向がある場合には、当社に対し、新株予約権申込証の所定欄にて意向を表明していただきます。

ということで、「買取」というのは、「市場」のように、いつでも新株予約権の売却ができるのではなく、ストックオプションの付与を申し出るのと同時に、「売却希望!」と手を挙げておかなければならない方法のようです。(後で、売却株数・取り消し可能。)

(3) 売却申込個数の確定
発行日(平成16年11月12日)以降速やかに当社は証券会社等第三者による入札により買取価格を決定し、これを開示いたします。(中略)

(4) 売却成立個数の確定(約定)
追って定める約定日をもって、当社の株主の皆様の希望売却個数と、証券会社等第三者の取得希望個数のマッチングを当社にて行います。証券会社等第三者の取得希望総数が、当社の株主の皆様の売却希望総数を下回る場合には、希望される売却個数より少ない個数しか成立しない場合がございます。

invoice_so_kaitori.jpg
つまり、上記の図のように、最終的には、インボイス自身がストックオプションを買い取ってストックするわけではなくて、証券会社等第三者による入札をして、株主からは、証券会社等が買うのと同じ分量を同じ値段で(?)しか買い取らない、ということのようです。
これは、自分の新株予約権のストックをインボイスが抱える場合に比べて、(とりあえず)商法上、会計上の評価・表示の問題が表面化しない方法のように思います。
「(自己)新株予約権」の処理
以前のエントリーで見てきたとおり、自己株式の買い取りについては、商法や政令、東証のQ&A等で買い取り可能額その他の買い取り時のルール等がいろいろ決められていますが、新株予約権については、商法を見ても会計基準を見ても、発行や消却、行使をする場合のことについては書いてあるものの、会社が自分の発行した新株予約権を買い取る場合については何も書いてありません。(と、思いますがどうでしょうか?)
これも、今回のインボイスさんのアクションの(隠れた)問題提起の一つではないかと思います。
今回は買い取ってそのまま保有するということがないので、この問題は表面化しませんが、新株予約権を買い取ってストックする場合、商法上および会計上、どう「(自己)新株予約権」を評価し表示するのか、(つまり、自己株式の買い取りのように資本充実の原則と関係あるのか無いのか、これが資本取引なのか損益取引なのか、等)という問題は非常に興味深いところです。(が、それはまた、後日。)
開示上の問題
今回インボイスは、新株予約権を発行するわけですし、その証券を買い取った後に売り出すわけで、証券取引法に定められた開示を正しく行うのかどうかが問題になりえます。
ただ、これについては、以下の通り恐らく問題ないのではないかと考えます。
まず、インボイスさんは、新株予約権の発行時にはちゃんと届け出をするものと考えられます。証券取引法第四条に定められている、届け出が必要な有価証券の募集又は売出しの例として、

� 有価証券の募集又は売出し(略)が一定の日において株主名簿(略)に記載され、又は記録されている株主(略)に対し行われる場合には、当該募集又は売出しに関する前二項の規定による届出は、その日の二十五日前までにしなければならない。ただし、有価証券の発行価格又は売出価格その他の事情を勘案して内閣府令で定める場合は、この限りでない。

とあり、「企業内容等の開示に関する内閣府令」で、

第二条(届出を要しない有価証券の募集又は売出し)
 法第四条第一項第三号に規定する発行価額又は売出価額の総額が一億円未満の有価証券の募集又は売出しで内閣府令で定めるものは、次の各号に掲げるもの以外の募集又は売出しとする。
一 募集又は売出しに係る有価証券が新株予約権証券である場合で、当該新株予約権証券の発行価額又は売出価額の総額に当該新株予約権証券に係る新株予約権の行使に際して払い込むべき金額の合計額を合算した金額が一億円以上となる場合における当該募集又は売出し

とあります。今回のストックオプションは全部払い込むと1千億円以上になるわけですから、当然、開示の対象となると考えられます。
一方、証券会社等を相手方として売出しをするようですが、この「証券会社等」というのが50名以下の場合には、そもそも「有価証券の売出し」(証券取引法第二条�、証券取引法施行令第一条の八�)に該当しないので、届け出も必要ないということになります。
その他証券取引法上の問題はあるか?
先の図を見ると、この買取および売出しは、自分で発行した新株予約権とはいえ、証券会社しかやっちゃいけない証券の売買や媒介、売出しの取扱い等に該当していないか、という気がする方もいらっしゃるかと思います。
しかし、証券取引法では、

第二条� この法律において「証券業」とは、(中略)次に掲げる行為のいずれかを行う営業をいう。(以下略)

と、「営業」と書いてあります。
今回のスキームですと、新株予約権は一回こっきり買い取るだけで反復継続してませんし、これに関して手数料を取るわけでもなさそうですので「営業」とは言えなさそう。
ということで、非常に証券会社っぽく見える行為ではありますが、その点から証券取引法違反、ということにはならなさそうです。
当初、インボイスは、いつでも売却が可能な「市場」っぽい売買の場を提供するんじゃないかという観測もあったかと思うのですが、そうではなく「一回こっきり方式」にしたというのも、そういった証券取引法上の規定に配慮したのかも知れません。(←ジャスト推測)
というわけで、(保証するわけではありませんが、恐らく)「明らかに違法」というようなことはやってらっしゃらないのではないかと思います。
ご参考まで。
(to be continued)

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知恵の晴れ上がり

(私はオジサンなので一番最初のシリーズしか見てませんが、)機動戦士ガンダムに、「ミノフスキー粒子」という架空の粒子が出てきます。ミノフスキー粒子が散布された空間では、可視光線以外の電磁波が伝わらない、という設定。
現実の宇宙空間では電波ではるか遠くまでが見渡せるので、宇宙空間で戦争するとしたら、相手をレーダーで探知して長距離の誘導兵器をブチ込むことで一瞬にして戦闘が終了してしまい、全く「絵」になりません。モビルスーツが有視界の接近戦を演じるという世界が存在するためには、ミノフスキー粒子は無くてはならない前提なわけです。
現実の宇宙で今から150億年前の宇宙の誕生にさかのぼると、ビッグバン直後の宇宙は非常に高温で、陽子や中性子、電子といった素粒子がすごい勢いで飛び回っていたわけですが、ビッグバン後、数十万年程度経つと宇宙の温度は3000度K程度まで下がり、水素やヘリウムの原子核が電子を捕らえるようによって、今まで電子にぶつかりまくっていた光(電磁波)が自由に空間を進めるようになり、宇宙を遠くまで見渡せるようになったと言われています。
これが「宇宙の晴れ上がり」と呼ばれる現象です。
知識の歴史における「晴れ上がり」
ひるがえって人類の保有する「情報」の空間に目を転じて見ますと、インターネット+Googleなどの検索エンジンの出現は、人類の知識の歴史における「晴れ上がり」に匹敵する出来事かと思います。
つまり、今まで人類の生み出した「知」は、どこに何があるかほとんどわからなかったわけですが、今やGoogleなどの検索エンジンを使うことで地球の裏側の小学生が書いた日記の内容までが見通せるようになりました。
正確には、まだ「知の空間」は完全に晴れ上がったわけじゃなくて、今ちょうど晴れ上がりつつあるところ、といったほうがいいでしょう。まだ、視界が開けつつあるということに気づかない人もいるし、気づいていても開けつつあるということの意味がわからない人やわかろうとしない人もたくさん存在します。
梅田望夫さん渡辺聡さん田中良和さんが取り上げておられるサーチエンジンの各種の取り組みは、こうして人類の知識の世界を晴れ上がらせる営みと位置づけられるかと思います。
「知能」は晴れ上がるか
「すべての知識が見渡せるようになる」ということは、単なる個別の情報だけではなく、「知能」というものの様態にも変化を及ぼすことになります。
渡辺千賀さんが取り上げておられるマイクロソフトの「Ask MSR」というプロジェクトは、自然文の検索の答えを見つけ出す検索ツールだそうですが、例えば、「When was Marilyn Monroe born?(マリリンモンローが生まれたのはいつか?)」という文章を入れると、単語を並べ替えて「Marilyn was Monroe born」とか「Marilyn Monroe was born」とかいう文章をいろいろ生成し、それを検索エンジンで検索すると、当然、「Marilyn was Monroe born」というような文章でひっかかるページはほとんどなくて、「Marilyn Monroe was born」というような正しい文章でひっかかるページの方が多くなるわけで、要は検索エンジンがため込んだデータベースを力ずくで検索し倒す、というシンプルなアイデアです。
ECONOMISTの記事も参照。)
「そんなことオレだって(自然に)やってるよ」という方も多いかと思います。
私も、自分や他人の書いた英語が「ジャパニーズ・イングリッシュ」になってたり、間違った日本語の使い方になってるんじゃないかどうかチェックするのにGoogleをよく使います。
例えば、「利益剰余金」は「profit surplus」とは言わんよなあと思ってgoogleで引くと、確かに全体でも900件、上位に表示される「profit surplus」という句として使っているページは日本企業数社の英文財務諸表のページだけだったりしますので、「こりゃ英語とちゃう」ということがわかります。「retained earnings」で検索すると、25万ページがひっかかりますので、こちらが正しい英語だということがわかる。つまり、検索エンジンは今でももうすでに人工知能的な使い方ができるというわけです。
昔、第五世代コンピュータという人工知能のプロジェクトがあって、その責任者の淵一博氏がおっしゃっていたことで印象に残っているのが「(量より質が大切とか言うが)、圧倒的な量の違いは質の違いになる」ということ。
つまり、ロケットのスピードと赤ちゃんがハイハイするスピードというのは、同じ「速度」という量で表せるが、赤ちゃんとロケットでは同じ速度でも「質」がまったく違う。インターネットと検索エンジンの登場は、「知識」だけでなく「知能」のあり方についても質的な違いを生み出しつつあるのではないかと思います。
当然、こうした環境下で行われるビジネスの様態も、遠くが見通せなかった「接近戦」の世界から、「超長距離からの誘導兵器の攻撃一発でカタがついてしまう世界」に変わりつつあるわけです。今まで「肉体のぶつかりあい」で勝負をしてきたビジネスはもとより、「情報」で勝負してきた証券アナリスト、マスコミといったビジネスも、今、転機を迎えてます。単純な知識でなく「知恵」で勝負しているビジネスは安泰なのか?というのが私の最近の関心事ですが、当然、「知恵」が勝負の鍵になっていくことは間違いないものの、それが今までと同じようにfragmentedで個人の才能に依拠した市場構造になるのか、ポータルやサーチエンジンのように寡占・独占構造に近づいていくのか、というと、明らかに後者。すなわち、情報のオープンな社会の「winner takes all」という構造は、「知恵」の領域まで侵食するのではないかと思います。
以上
(Googleで検索すると、”winner takes all”で61,000件、” winner take all”だと119,000件も出てくるんだけど、なんででしょ?三単現のsを付けなくてもいいのかな?winnerの複数形はwinnersですよね・・・。
まだ、「知恵」の部分は検索エンジンだけではわからないことも多いですね。[苦笑])

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東京三菱のUFJへの出資の「毒薬」度

すみません、先週発表されていたのに見落としてましたが、MTFGがUFJ銀行に対して出資を行う優先株スキームの詳細が発表されています。
東京三菱東京フィナンシャル・グループによるUFJグループへの資本増強への協力について(9月10日17:00公開)
http://www.ufjbank.co.jp/news/investor/20040910d.pdf
いざというときに「優先株から別の優先株へ」という転換を行えるとともに、「トリガー条項」を定めて、TOB等のトリガーが発生した場合には、UFJホールディングスに3割増しの条件等で株式を買い取らせる協定書を結ぶことで「ポイズンピル」的性質を持たせるようにしています。
ただし、この「3割増し(2100億円)」ってところが非常にビミョーですね。
割り増しを付けないとMTFGが株主から訴訟されそうですし、「3倍で買い取れ」というようなTOBが事実上不可能になるような条件を付けたら、「三井住友により高く売る機会を完全に放棄した」ということで、今度はUFJの株主からお叱りを受けそうです。
また、「転換社債から普通株式へ」とか「優先株から普通株式へ」といった転換はよく見かけるが「優先株から別の優先株へ」というのはあまり見かけたことはないかも知れませんが、ある意味あたりまえというか非常に合理的なスキームかと思います。
(以下、詳細。)
1.株式の種類
「株式会社UFJ銀行第一回戊種優先株式」という種類の名称となります。
甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の「戊」、です。
2.発行数、発行価額
35億株×200円(うち100円分を資本組入)で、7000億円。
3.優先配当金
年14円。つまり、200円の発行価額に対して7%。(高っ!と思いますが、まあこんなもんですかね。)
これを払えないときには、昨日の政府のUFJホールディングス(銀行に直接ではない)への公的資金の優先株と同様、この戊種優先株にも議決権が発生します。(上記プレスリリース9 (5)項参照。)
6月の株主総会でUFJホールディングスが政府に対して優先配当金を支払わないということは、ホールディングスが持つUFJ銀行の優先株式の優先配当金も支払わないということでしょうから(きっとそうですよね?)、結局、6月以降、MTFGはUFJ銀行の議決権を持つということになるのではないでしょうか。
UFJ「銀行」の他の優先株はすべて(政府でなく)UFJホールディングスが保有していて、議決権を有しなので、下の表にまとめたとおりMTFGの議決権の割合は約43.6%になることになります。
過半数ではありませんが、MTFGの同意がないとUFJホールディングス単独で(2/3以上の賛成が必要な)特別決議はできないということになります。
image002.gif
(出所:上記プレスリリース17項「その他の事項」等より作成)
4.種類株主総会決議事項
さらに念を入れて、たとえ議決権がない状態でも、UFJホールディングス単独で勝手にUFJ銀行の資産を処分したり合併等ができないように、そうした事項についてはこのMTFGが持つ優先株の種類株主総会の決議が必要な旨が定められています。(9(6) 項参照)

� 定款の変更
� 合併、株式交換、株式移転、会社分割又は営業の譲渡もしくは譲受
� 最終の監査済みの貸借対照表上の純資産の5%以上の財産の処分又は譲受
� 株式の発行(優先株式の転換による株式を発行する場合を除く)、新株予約権の発行又は新株予約権付社債の発行
� 資本減少又は法定準備金の減少
� 株式の分割又は併合
� 取締役の選任又は解任
� 利益処分又は損失処理

つまり、「他のところに鞍替えしようとしてもだめだよ」ということ以外にも、取締役すらUFJホールディングス単独では選べないことになるわけです。
利益処分もできませんので、MTFGが「優先配当するな」と言えば配当できない。・・・ということは、来年の定時株主総会以降、議決権を発生させるもさせないもMTFGの腹一つになった、ということです。
ちなみに、9(7)項で、この優先株式については株式の併合・分割等は行わないことになってるので、株式の分割又は併合や株式の発行の権限もUFJホールディングス単独ではできないようにしておかないと、議決権の割合が変わって来るので、�と�で、そこをブロックしています。
5.優先順位
9(9)項で、配当金と残余財産の優先順位について定めています。
配当金は他の優先株と同順位ですが、残余財産は他の優先株主(UFJホールディングスのみ)より優先して配当を受けられます。
6.己種優先株式への転換予約権
さて、いよいよ本題ですが。
9(8)で、戊種優先株主は、払込期日(9月29日)の翌日以降いつでも、己種優先株式への転換を請求することができることになってます。これが、ポイズンピルに相当する条項の一つになります。
己種優先株式は優先配当や残余財産分配権等の条件は基本的に戊種優先株式と全く同様の優先権がありながら、なおかつ議決権を持っています。(つまり危機が迫ると、戊種優先株式は「最強のカード」にヘンシンするのだ。)
また、己種をさらに普通株式などの別の株式に転換する予約権は付いていません。つまり、この己種を消す方法は、このリリースを読む限りではUFJ銀行による買い受け・消却しかありません。
すなわち、いったん己種にヘンシンしてしまうと、己種は長期にわたって存在し続けるということになります。(ハヤタ隊員に戻れないウルトラマン、攻撃色の消えない王蟲てな感じ。)
このため、戊種や他の優先株式と違って、株式分割や新株引受権の付与が行われるときには、9(10)(チ)項で普通株式と連動した調整を行うようにしています。
7.株主間協定書
実際どういう条件の場合に転換請求が行われるかは、優先株式(本体)の要項ではなく、別途UFJとMTFGが9月10日付で締結した資本増強に関する協定書の中で定められています。(第16項参照)
(1) トリガー条項
まず「本件転換予約権トリガー事由」を定め、このトリガーが発生するとき以外は、戊種から己種への転換は行わないことを取り決めています。(16(1)(イ)項。)

・ UFJホールディングス(以下「UFJHD」)、MTFG以外の者がUFJ銀行の株主になったとき。
・ UFJHDがMTFG以外の者と合併等をするとき。
・ UFJHDが新株等を発行するとき。
・ UFJHDの株式の1/3を取得するものが現れたとき。
・ UFJHDに対してTOBが行われて20%以上の株が取得されたとき。
・ UFJHDとMTFGの合併等の議案が普通株主総会以外の種類株主総会で承認されなかったとき。

(2) 転換するなら全部
また、部分転換はダメ。転換するなら全部。(16(1) (ロ)項。)
(3) 譲渡制限
UFJHDとMTFGが保有するUFJ銀行の株式は、第三者に譲渡等はしない。(16(2)項。)
(4) 表明違反、契約違反
また、UFJHDが表明・保証違反をした(ウソついてた)場合や契約違反した場合には、7000億円の1.3倍で買い取らないといけない。(16(3)(イ)�項参照。つまり、2100億円上乗せ。)
(5) TOBがかかった場合等
さらに、TOBがかかって1/3超の株式を取得するものが現れた場合等にも、MTFGはUFJHD(またはUFJHDが指定する第三者)に優先株式を買い取らせることができることになってます。(16(3)(イ)�項参照。)
ということは、三井住友FGがTOBをかけてきて1/3超を取得した場合には、MTFGは「やーめた」と言えるわけですね。この場合は、(2100億円の)上乗せ無しでOK。
(6) 株主総会での統合の否決
種類株主総会でMTFGとの統合が2回連続で否決された場合にも(上乗せ無しで)買い取らなければならない他(16(3)(イ)�項参照。)ほか、平成17年3月期後の定時株主総会ともう一回の株主総会でMTFGとの統合が否決された場合には、1.3倍で買い取らなければなりません。(16(3)(イ)�項参照。)
この条項は、経営陣だけでなくUFJHDの株主にもプレッシャーをかけることになります。
(7) 「敵」との統合の場合
また、(なんと)UFJHDの取締役会以外の者が提出する経営統合の議案が株主総会で承認されたときにも、1.3倍で買い取りということになります。また、UFJ側も1.3倍出せばMTFGから優先株式を買い取れる権利があります
つまり上記の通り、三井住友がTOBで買収するのは「絶対禁止」ではなく、余分に2100億円出すならOKということになります。
2100億円。すごくビミョーな金額ですね。世界のトップバンクに躍り出ることを考えれば三井住友が出せない金額ではないかも知れないですが、もしかしたら「罠」かも知れません。
(すでに彼氏のいる女の子を誘って、「あんたとなんか絶対イヤッ!」と言われるならある意味スッキリするところが、「そんなことしたら彼氏にしかられちゃいますぅ〜」(うふっ)と微笑まれているような感じ?)
ホントに金だけ出せば買えるのかどうか、ここから先は、「こちらがこう打つと、相手がそれをこう取って、こちらはこう出る」というように、詰め将棋のようにちゃんと詰まるかどうか考えてTOBをかけないといけませんね。
さあ、どうする三井住友?
(以上)

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政府は いつUFJの議決権を持つのか

UFJが今期無配をアナウンスしたので、報道を見ているだけだと、すぐにでも政府がUFJの議決権を持つかのように思えてしまいますが、よく調べてみると、違うようです。
今週月曜日(9月13日)の会見で、金融庁長官いわく;

問)
 UFJの業績下方修正で、優先株の無配が決定しまして、今後12%の議決権が発生すると、それで国としてはどのように議決権の行使をしていくかというのをお答えください。

答)
 今後のお話ということでありまして、議決権が復活しますのは定時株主総会で優先配当金を受ける旨の議案が提出されない場合ということですので、現時点では議決権は復活していません。17年3月期に優先株式が無配となる見通しが公表されたに止まるだけでございます。

確かに、UFJの有価証券報告書2004年3月期の51ページ以下を見ると、以下の通り、「議案を提出しないときの総会から」議決権が発生すると書いてあります。

注3.第二回第二種優先株式の内容は次のとおりであります。(中略)
(5) 本優先株主は、株主総会において議決権を有しない。ただし、優先配当金を受ける旨の議案が提出されないときはその総会より、その議案が定時株主総会で否決されたときはその総会の集結の時より優先配当金を受ける旨の決議がある時までは議決権を有する。

以下、第三回第三種、第四回第四種、第五回第五種、第六回第六種、第七回第七種の優先株式の内容の注についても、まったく同じ記述があります。(「第一回第一種」については議決権についての記述はありません。)
確かに、優先株式の要項の取り決めとしては、配当の予想を出しただけで議決権が発生するというのは非常にあいまいですので、「議案の提出が無い」というイベントの発生をきっかけに議決権が発生するというような形にせざるを得ないかと思います。
とすると、この9月末に東京三菱より7000億円の優先株が払い込まれるなどして資本増強が行われ、その資本準備金等を取り崩して配当原資にしたりすれば、業績回復の動向を見ながら、来年6月の株主総会で優先配当を行う旨の議案を提出して政府の議決権が発生しないようにするという可能性もまだ無いわけではないですね。
(それよりも、「ポイズンピル」的条項を盛り込んだ東京三菱の優先株式による増資の具体的中身がどんな内容になっているのか、非常に興味深いです。:-)発表されましたら、また。
(追記:18:49)
失礼、もう発表されてました。見逃してました。(すみません。)
http://www.ufjbank.co.jp/news/investor/20040910d.pdf
中身については、また、後日。
(では。)

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インボイスの自社株買いは法令違反か?

インボイスの自社株買い付けについて、証券取引法上の「相場操縦的行為」等にならないようにするには、どういう発注をすればいいのか?という疑問の答え、その2ですが。(その1はこちら
本日は、東京証券取引所さんが出している、「東証市場を利用した自己株式取得」をベースに考えてみます。
歴史をさかのぼると、まず、東証が平成10年12月15日に自己株式取得に関するガイドライン(内容古い)を出し、その後平成13年9月21日に、前回ご説明した「上場等株券の発行者である会社が行う上場等株券の売買等に関する内閣府令」が出たようです。両者の表現は微妙に異なってますが、この内閣府令は上記の東証のガイドラインを参考にしたもののようです。
一方、経団連の意見書のホームページを見ると、この内閣府令が出るちょっと前の2001年8月31日に「『上場等株券の発行者である会社が行う上場等株券の売買等に関する内閣府令(仮称) 』(案)に関する意見」というのを出していますが、この中で、

1.ルールの位置付けが、いわゆるセーフハーバールールであることを明確化すべきである。
本内閣府令案は、「取引所有価証券市場又は店頭売買有価証券市場における上場等株券の相場を操縦する行為を防止するため」(改正後の証取162条の2)に定めるルールとしては、159条で禁止される相場操縦とは別の新たな規制となる。従って、自己株式を取得しようとする企業が、内閣府令違反を警戒して過度に萎縮することがないよう、少なくとも内閣府令の形式要件を充足する取引であれば相場操縦には当たらないことを明確化し周知を図るべきである。
また、形式的には内閣府令に抵触するような取引であっても、明らかに不公正取引の意思のない取引については、実質的な判断により過料(行政罰)の対象としないことを明確化し周知を図るべきである。

という提言を行ってます。
「セーフハーバールール」というのは、「その規則さえ守っていれば絶対罪には問われない、ということを保証したルール」、ということ。
しかし、経団連さん、これはちょっと無理というもんです。
証券取引法に抵触する相場操縦等のやり方というのは極めていろいろな方法が考えられるので、こんな簡単な内閣府令で網羅的にすべてを免罪してしまうというのは非常にまずいです。
東証がまとめた「東証市場を利用した自己株式取得に関するQA集」においても、

Q4:内閣府令における価格規制を遵守すれば、相場操縦や相場釘付け等の行為は免責されるのでしょうか。
内閣府令は、自己株式の買付けについて遵守すべき事項を具体的に定めたものであり、従来の相場操縦禁止規定とは目的・要件を異にするものです。
したがって、証取法第162条の2に基づいて定める内閣府令の要件を形式的に満たしていたとしても、例えば、仮装取引・通謀取引などの行為があれば、法第159条の相場操縦にあたる場合があり得ますし、価格規制を遵守しても必ずしも相場釘付けが免責されるわけでありません。

と書いてあり、「他の(細々とした)ルールもちゃんと守ってね」ということになってます。
分割時の数量上限に関する考え方
さて、このQ&Aを見ていくと、投資単位が変わった場合についての東証のお考えも載っています。

Q8:算定期間中に投資単位のくくり直しを行った場合はどうなるのでしょうか。
投資単位のくくり直しを行った場合は、くくり直し後の売買単位で算出することとなります。投資単位が1,000株であった銘柄を100株にくくり直した場合は以下のとおりとなり、1,000株までの買付け注文が可能です。
kukuri_naoshi.jpg
(注)数量の調整等を行うケースとしては、算定期間中に他の取引所等から弊所に上場された場合や株式分割等が考えられます。

ということですので、この「注」の部分から判断すると、東証さんの解釈は「11分割したら、算定根拠となる過去の売買数量は11倍して考えていいよ」ということのようです。
ちょっと待ってください!
売買単位を1000株から100株にするなど単元のくくり直しを行った場合には、過去の売買単位の10倍の流動性が生まれると考えていいですが、分割した場合には、ご案内のとおり2ヶ月は子株が流通しないわけです。
ということは、上場等株券の発行者である会社が行う上場等株券の売買等に関する内閣府令第3条第4項イ(上記「基準数量1」)の規定

イ 上場等株券の買付けを行う日(以下「買付日」という。)の属する週の前四週間における当該取引所有価証券市場における当該上場等株券の売買数量(中略)を当該四週間の当該取引所有価証券市場における売買立会が行われた日数で除した数量を売買単位(証券取引所が定める当該上場等株券の売買単位をいう。以下同じ。)で表した売買単位数(以下この号において「一日平均売買単位数」という。)に百分の二十五を乗じた売買単位数

に基づけば、11分割した直後に自己株の買い付けをすると、1日あたり、過去4週間の平均売買単位の2.75倍(!)を買い付けられることになっちゃいますね。
image002.gif
8月27日の日経朝刊の記事では、

金庫株の解禁、ストックオプションの付与対象の拡大など一連の商法改正を受け、合法的な範囲で取り組んでいるもよう。関係者からは「子株還流前の自社株買いなど釈然としないが、内閣府令を守った買い方ならば規制しにくい」(金融庁幹部)、

と書いてありますが、もし、インボイスさんが、東証さんのいう「過去4週間の平均売買単位(分割調整前)の275%以下ではあるが、内閣府令の「過去4週間の平均売買単位(分割調整前)の25%」を上回った買付をしていたとしたら、(東証の見解にはあっているが)内閣府令違反の可能性も出てきます。
(内閣府令からは、分割した場合に調整していい、とは読みにくい。)
肝心な売買高の資料を分析してないので、インボイスさんのケースがどの範囲に収まるのか、よくわかりませんが、前回も申し上げたとおり、わざわざ分割直後に買い付ける意味というのは、今のところこれしか思いつきません。
(他に何か思いつかれた方がいらっしゃれば、ご教授頂ければ幸いです。)
単純に、上記の東証さんの見解をもとに分割調整前の275%まで買っちゃうのは、法令違反にならないかどうか、結構怖いです。前述の「セーフハーバールール」じゃないですが、分割の場合に売買単位の上限をどう考えればいいのかについては、ちゃんと政令で定めるべきかと思います。
では。

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ゴルゴ13の口座はまだスイスにあるか?

ゴルゴ13には、よく「スイス銀行」の口座が出てきます。(最近あまり見かけないような気もしますが、)本日は、「まだゴルゴの口座はスイスにあるのか?」というお話。
ゴルゴ13の資金はマネロン規制の対象となるか?
世界のマネー・ロンダリングとテロリスト資金対策については、FATF(Financial Action Task Force)という国際機関において、政策が策定されてます。

The Financial Action Task Force (FATF) is an inter-governmental body whose purpose is the development and promotion of policies, both at national and international levels, to combat money laundering and terrorist financing. The Task Force is therefore a “policy-making body” which works to generate the necessary political will to bring about national legislative and regulatory reforms in these areas.

この組織は1989年に設立されたのですが、当初は麻薬に関する資金のマネー・ロンダリングだけを対象としていたのが、1995年のハリファクス・サミットを受けてマネロンの対象犯罪を麻薬関連から「重大な犯罪」に拡大、さらに2001年の「911」の後、テロリストの資金も規制の対象としました。
ということで、ゴルゴ13の資金も現在ではズバリ、マネロン対策の対象に該当することになっています。
日本での対応
日本においては、このFATFの行った「40の勧告」(和訳はこちら)の第26番目の勧告、

各国は、国の中央機関として、疑わしい取引の届出や他の潜在的な資金洗浄又はテロ資金供与に関する情報を受理し(かつ可能であれば要請し)、分析し、提供する役目を果たすFIU を設立すべきである。FIU は、疑わしい取引の届出の分析を含め、その機能を適切に遂行する上で必要となる金融情報、行政情報及び法執行に関する情報に、時機を失することなく、直接的又は間接的にアクセスすべきである。

で、FIU(Financial Intelligence Unit)の設置が義務づけられているのを受けて、金融庁の総務課の中に「特定金融情報室(Japan Financial Intelligence Office)」が設置されてます。
また、金融機関等は「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」第54条に規定する「疑わしい取引の届出」を行う義務があり、具体的には「疑わしい取引の参考事例」で「こういう取引は当局に届け出ろ」という例が定められています。
こちらにあるように、疑わしい取引の届出件数は急増していますが、下図のように、届け出る業態はほとんど銀行等。
money_todokede.jpg
(出所:金融庁特定金融情報室)
特定金融情報室では、マネー・ローンダリング対策に非協力的な国・地域のリストを作っていますが(http://www.fsa.go.jp/fiu/fiuj/fn001.html参照)、過去一年あまりで、バハマ、ケイマン、リヒテンシュタイン、パナマ、イスラエル、レバノン、ロシア連邦、グレナダ、セントビンセント、グレナディーン諸島、グアテマラやウクライナなどの、「いかにも」というタックスヘイブンや国際スパイ小説に出てくるような国も、法律の制定や取り組み体制を作って「協力的」になったとして、次々にリストからはずされていきました。
平成16年7月13日付「疑わしい取引の届出に関して特別の注意を払うべき取引の該当国の削除について」によると、未だに「非協力的」な国は、

クック諸島、インドネシア共和国、ミャンマー連邦、ナウル共和国、ナイジェリア連邦共和国、フィリピン共和国

6カ国だけとのこと。
リビアとかイランとか、いかにもそれっぽい国も入ってませんが、それ以外に「スイス」は「先進国」でもあり、また、仮にも銀行に関する「BIS規制」で有名なバーゼルの国際決済銀行(Bank of International Settlement)ある国でもありまして、「非協力的な国」には入っていないことに注目です。
スイスのプライベートバンキングとマネロン規制
スイス公共放送のサイトswissinfo.org「マネーロンダリング取り締まり スイスの実態」という記事によると、

スイスの金融機関はマネーロンダリング防止法により、入金があった場合、組織犯罪などに係わっている疑いがあるだけで、当局へ報告する義務がある。

とのこと。
一方で、スイスでは銀行員は顧客の秘密を漏らすと懲役刑まである他、「脱税」は犯罪ではなく国と納税者の「民事」の話だとして、こうしたマネーロンダリング規制による通報の対象とはしないという話もあります。さらに、スパイ映画等に出てくるスイスのプライベートバンクのイメージだと、銀行側は極力、顧客に都合のいいように「気づかなかった」という解釈を取ることとは想像されますが、さすがに、その資金がマスコミ等で大っぴらに犯罪者のものだとバレてしまった場合には、凍結等のアクションを起こさないと行政処分を受けることにはなっているのではないかと思います。
同記事においても、

マネーロンダリング管理当局は年間、数百件のマネーロンダリングの疑いがある資金の流れを調査しているが、2003年に営業差し止めとなった機関は7件だった。
「件数が実態をあらわしているわけではない」と語るのは、同管理局のディナ・バレギール氏。3年前から、銀行以外の金融機関を担当する。マネーロンダリングとしての事件が管理局から摘発される件数は少ないが、これは「各金融機関が、顧客情報を徹底して集めるようになったため。マネーロンダリングが目的の客は、受け付けなくなっている」と今の制度が効果的に機能していると自信がある。
 通常、管理局は企業の届け出リストや新聞などの報道を通して、違法行為を発見しているが、警察などの関係当局および個人の通報も寄せられるという。

と、まだまだ不十分としながらも、スイスのプライベートバンクであっても治外法権ではなく、国際的なガバナンスの枠組みに組み込まれつつあることが伺えます。
また、記事にもあるとおり、実際に、日本の「ヤミ金の帝王」やロシアの石油王等の口座が次々に凍結されているのもご存じの通り。
まあ、ゴルゴ13の場合には、通報したり預金を凍結しようとしたりしようものなら、そいつの眉間に、
「ボッ」
という音とともに黒い穴が開くことになると思いますので、まだスイスに資金を置いているのかも知れませんが。
(ではまた。)

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ネットによる紙の代替 (例:オンライン証券六法)

Googleニュース日本版で新聞に与える影響について以前、述べましたが、書籍への影響はどう考えられるでしょうか。
青空文庫プロジェクト・グーテンベルグなどのように、著作権の切れたテキストがタダで読めるというようなことをまず思いつきますが、最新の情報でも専門書などでは影響があるかも知れません。
例えば、法律分野で考えてみると、「模範六法」
mohan_roppo.jpg

などになると、主な判例等が条文のあとに掲載したり、索引を付けたり、かなり「加工度」が高いのですが、法令の原文はe-japanのサイト「法令データ提供システム」 等に載っていますので、加工度の低い「業界六法」系の書籍などは、かなりネットで代替できそうです。
試しに、証券六法 (平成16年版)
shoken_roppo.jpg

で、どこまでネット上の無料のリソースで代替できるか調査してみました。
結果、法令データ提供システムの他、東証、日本証券業協会などのサイトで、主要な条文等はタダで入手可能ということが判明。(官による民業圧迫?)
事務所で分厚い本をたくさん並べてそこで仕事をされる方は、紙の方がまだまだ使いやすい面も多いかと思いますが、私のようにあちこちクライアントのところに伺う「ゴルゴ13型業態」の者としては、分厚い六法系の書籍を持ち歩かなくて済むのは非常にありがたい。
「軽い」だけでなく、文字列検索もでき、参照条文にリンクも張ってあり、常に最新の条文にアップデートされているので、紙の書籍より便利な面もあります。
一方、通達レベルなどはweb上にまだ無いものも多いですし、図表(商法施行規則等)は「法令データ提供システム」には掲載されていません。
また、「法令データ提供システム」では、すでに国会は通っているけど、まだ施行されてない部分を併記したりしてくれてません。(証券六法もしてくれてませんが。)
まだ、紙の捨てがたいところも多々ありますね。
A4で30ページもの「大作」になりますので、以下追記に「オンライン証券六法」を掲載します。ご興味のある方は、クリックしてご覧ください。
証券六法ではカットされている法令・規則等についても、一部掲載して網羅性を高めてあります。

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