本日のブルドック(大量保有報告書の怪)

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最高裁の判断も定まり、新株予約権が取得されることが確定的になったため、本日はブルドック株がストップ安比例配分。100円安の530円まで下がって4万3000株の売買成立、15万7000株の売り注文を残した、と報道されてます。
(「ハンカチ落とし」で音楽が止まって「わー」てな感じですね。)


 
TOBでそこそこの量の株式が集まるのか?
一方、スティールパートナーズはTOB価格を4分の1の425円まで引き下げ、TOB期間も8月23日まで延長。
ブルドック側は、午前中425円に「未確認」のリリースを出しており、今のところ、EDINETにスティール側の公開買付けの訂正報告書も出てないようですが、公開買付代理人であるウツミ屋証券株式会社さんのホームページにスティールのリリースが出ています。
http://www.utsumiya.co.jp/document/20070808TOBReleaseFinal.pdf
ブルドックの7月11日付けのリリースによると、「平成19年8月17日までに日本証券代行宛にご返送下さい」とあり、

なお、「ほふり」に株券を預託されていない株主の皆様は、当社による本新株予約権の取得により交付される株式に係る株券が届いた時点で、法律上は当該株券の売却が可能となります(中略)
例えば、証券会社等では、偽造株券等に関する犯罪の未然防止として、お持ち込みいただいた株券等は、真贋チェック等が必要となり、お持ち込み日の翌日から売却の注文を受け付けるまで、概ね13営業日を必要としているとのことです。

と書いてありましたが、その後7月24日付のリリースによると、

「送付先指定書」及び「預託承諾書」の双方を遅くとも平成19年8月17日(到着)までに日本証券代行株式会社(以下「日本証券代行」といいます。)宛にご返送をしていただくと、「ほふり」に株券を預託されている一般株主の皆様につきましては、当社から株券が交付されることなく「ほふり」に預託することができ、8月末から9月上旬を目処に各証券会社における一般株主の皆様の口座に株式数の増加が反映され、預託後の速やかな売却等が可能となります。なお、関係各位との調整により、「送付先指定書」及び「預託承諾書」の双方を日本証券代行宛に平成19年7月31日(火曜日)(到着)までにご返送いただいた場合には、本新株予約権の取得の日(本年8月9日)の翌日(8月10日)に、各証券会社における一般株主の皆様の口座の株式数が増加いたします。(なお、売却等の際の証券会社における手続に関しましては、各証券会社にお問い合わせ下さい。)。

と、書いてあります。(下線部は磯崎による。)

  • ほふりに預けている株主の割合。
  • 7月31日までに書類を返送した人がどのくらいいたか。
  • 8月10日に証券会社の口座の株式数が増えるとして、実際、それぞれの証券会社ごとに、いつから売買可能になるのか?(「すぐに」なのか、それとも「9月初旬」くらいまでずれ込むのか?)。

等が、23日までにTOBに応募する株券がどの程度集まるのかのキーファクターの一部になるかと思います。
(もちろん、価格の妥当性とか、現在の浮動株の割合とか、のほうが重要かとは思いますが。)
おそらく、「関係各位との調整により」というのは、株式分割の場合などと同様、少なくとも「ほふり」保管分は10日以降、売買もできるし、TOBにも応じられるということになるのではないかと思います。
また、10日以降、売り圧力が高まるということであれば、価格も、TOB価格の425円を切ってくる、という可能性もあるかと思います。
株式分割すると一般的に株主数は増えますが、あれは、株数が増えたので、「一部、売っとこか」という気持ちになるからだと思いますが、
そうすると、意外にスティールのTOBに応募する比率は高まるかも知れないですね
大量保有報告書の怪
スティールの公開買付届出書の訂正報告書は出てないかい?と思ってEDINETの「発行者以外の提出書類および関連書類」の一覧を見たところ、7月23日以降、

  • 第一生命保険相互会社:8.55%
  • みずほ銀行:10.56%
  • 日本生命保険相互会社:13.09%
  • 凸版印刷:10.36 %
  • 間組:7.22%

の5社から大量保有報告書が提出されています。
上記5社だけで約5割の「株券等保有割合」になるので、「ブルドックソースは、市場外で、新株予約権を譲渡(取締役会で譲渡承認)して、着々と安定株主対策を進めていたのか?(やるじゃん?)」・・・・と思いきや、さにあらず。
大量保有報告書の「上記提出者の株券等保有割合(%) (R/(S+T)×100)」というのは、
「R:保有株券等の数(総数)(=潜在込みの数)」、を
「T:発行済株式等総数」と
「S:保有潜在株式の数(=潜在分のみ)」の合計で割ったものなので、他の株主が保有する新株予約権は、分母(S+T)には含まれてないんですね。
ということで、どの会社も大量保有報告が不要な5%未満の比率だったのに、(実質的な持株比率は変わってないにも関わらず)、いきなり大株主として浮上、(うち2社は、単純ミスで訂正報告書も提出)、9日以降、株式が発行されたら、また5%を切ったという報告をしないといけないということかと思います。
(つまり、「いい迷惑」。)
ブルドックの有価証券報告書には、今年3月末の大株主として、他にも、

  • 興和株式會社
  • ブルドック持株会
  • 養命酒製造株式会社
  • 株式会社福岡銀行

などの名前もあがってますが、もしかしたら、法律上、大量保有報告書の提出義務がある(というのも かわいそうな限りですが)のに、提出してない株主さんもいらっしゃるんじゃないでしょうか?
スティールは大量保有の変更報告書を提出しなくていいのか?
となると、最大の株主である「スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド(オフショア)、エル・ピー」は、新株予約権が増えたことによる大量保有報告書の変更報告書の提出はいらないのでしょうか?
「株券等の大量保有の状況の開示に関する内閣府令」第5条1項2号によると、新株予約権証券については、「新株予約権の目的である株式の数とする方法」によって、証券取引法27条の23第4項に規定する株式に換算した数を計算することになってますが、ブルドックの新株予約権の要項には、「6. 本新株予約権の目的である株式の種類及び数」に、1個に対して1株と書いてあるので、変更報告書の提出義務はある、という法解釈も可能かと思います。(ただし、スティールは行使できない。)
(ブルドックの取締役会の承認が必要ですが)一応、新株予約権の譲渡は可能で、スティール以外が保有すれば行使または普通株式との交換もできたわけですから、まったく、潜在株式としての性質を持っていなかったとも言えないですね。
他の株主さんも含め、これで、「報告書提出義務違反」

証券取引法第百九十七条の二  次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。(注:インサイダー取引並。)
五 (中略)第二十七条の二十三第一項若しくは第二十七条の二十六第一項の規定による大量保有報告書又は第二十七条の二十五第一項若しくは第二十七条の二十六第二項の規定による変更報告書を提出しない者
(以下略。)

とか言われたら、私なら、「ふざけんな!」と、ちゃぶ台をひっくり返したくなるかも知れませんが。
ブルドックは開示しなくていいの?
上記で株券等保有割合が10%を超える株主が出現しているわけで、ブルドックさんが適時開示や臨時報告書の提出をしなくていいか、という点ですが、「主要株主」の定義は、

証券取引法第百六十三条  [略]・・・主要株主(自己又は他人(仮設人を含む。)の名義をもつて総株主の議決権(第三十二条第五項に規定する議決権をいう。)の百分の十以上の議決権(取得又は保有の態様その他の事情を勘案して内閣府令で定めるものを除く。)を保有している株主をいう。以下この条から第百六十六条までにおいて同じ。)[以下略]

と、「議決権ベース」になってますので、提出しなくていいんでしょうね。
こうした単純事務ミスでも「懲役5年」といったリスクがあるかも知れない時代なので、他人事ながら、地雷原を歩いているような恐怖感が味わえるんじゃないかと思います。・・・ああ、世知辛い世の中・・・。)
(ではまた。)

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7 thoughts on “本日のブルドック(大量保有報告書の怪)

  1. 磯崎先生はじめまして。いつも楽しく拝読させていただいています。
    >意外にスティールのTOBに応募する比率は高まるかも知れないですね。
    スティールのTOB続行は本気ではないと思います。最高裁の抗告棄却を受けて即撤回では体裁が悪いのでとりあえず続行したというところではないでしょうか。
    だいたい取扱い窓口がウツミ屋証券であったり、買取り価格が市場価格以下であったり、全株取得を表明しながら、多くの株主に応募してもらおうという意欲が感じられません。何か事務的で投げやりな感じさえします。
    天竜製鋸のTOBのときは、結局応募株式数はわずか14万3000株(発行済み株式数の約2.57%)で、これに対するスティールのコメントは次のようなものでした。
    「天竜製鋸の株主がTOBに応じるか否かを自ら判断できたことを喜ばしく思う。われわれは同社の将来性を高く評価し、今後も継続的な成功を支援していきたい」
    ブルドックソースのTOBも天竜製鋸のときと似たような結果になって、同じようなコメントが出るのではないでしょうか。

  2. コメントありがとうございます。
    うーん、どうせやるなら本気でやっていただきたいですねぇ。
    本日は前日比8円安の522円(前場終値)ですが、新株が本日交付され、明日から一部売却可能になるとすると、明日以降の価格と、TOB価格の425円との価格の関係も注目されますね。
    (ではまた。)

  3. 磯崎先生
    株券の売買ができるのは、株券が届いた後、又はほふりへの預託が終わった後だとは思いますが、TOBへの申し込み自体は、株券がなくても、理論的にはできるような気もするのですが、どうでしょう?
    まあ、スティールのTOBの申し込み方法としては、株券を添えて申し込むことが書かれていますので、やっぱり株券がなくてはだめ、となるのかもしれませんが、スティールが「別にこうは書いてあるけど、今回は特殊事情もあることだし、株券なくてもいいから申し込んでね。」といえるものなのか、疑問に思っているところです。

  4. 磯崎様
    hondaと申します。個人的に株式投資をしている者です。
    いつも興味深いトピックスをありがとうございます。
    今回は自分自身が当事者なので投稿します。
    ブルドックソースの新株についてです。
    私は松井証券に口座を持っております。そこから手紙が届きました。それを読んだ後、ブルドックソースの7月24日プレスリリース(当社新株予約権の(一部)取得に関するお知らせ」を確認しました。それの2ページの記述には、「ほふりに預託されている一般株主の皆様につきましては、・・・・中略・・・・ブルドックソースの新株取得の手続きの書類を7月31日までに送付していただければ新株予約権の取得の日の翌日(8月10日)に口座に反映されます」とありました。
    私はあわてて手続きしました。7月30日に届くように手続きをしましたので、松井証券から書類受領のお知らせを受けました。ところが、新株が反映されたのは8月11日土曜日だったのです。
    これに関して松井証券に問い合わせましたが、「8/10当社で入庫のための手続きを行ったため8/11午前5時以後となりました。10日より売却可能となった証券会社もありますが、詳細につきましては当社では分かりかねます」とのこと。。
    松井証券の手続きミスなのか、ブルドックソースのプレスリリース担当者が証券業界の慣習を知らなかったのか、私には検証するすべがありません。
    問題があるとすれば、誰にあるのでしょうか。
    プレスリリースの内容に記載ミスをしたブルドックソースでしょうか?
    スケジュールどおりに処理をしなかった松井証券でしょうか?
    それとも私自身になにか不手際があったのでしょうか?
    ・・そもそも、このような場合に誰に相談したら良いかも分かりません。

  5. コメントありがとうございます。
    今回、まったく(世界でも)初めてではないかというようなケースなので、事務手続きが1日遅くなったことを責められても、関係者の方々もつらいところはあると思いますが、
    一方で、株主の方にとっては、1日違うだけでも売却可能になるのが次の週になってしまうわけですから、特に今回のような局面では、シャレにならないという面もあるわけですよね・・・。
    (あまり、ご参考にならないコメントですみません。)
    (ではまた。)

  6. 磯崎様
    お忙しい中、コメントいただきましてありがとうございました。
    ここでの記入は、不適切だったかもしれません。
    そうであれば、お詫び申し上げます。
    ところで、おそらく先生も仕事柄、今後このような場面に出会うかもしれません。その際は、会社の人たちや証券関係の人たちと上手く協力して、みなが納得できる活動の出来るよう配慮いただければ幸いです。よろしくお願いします。

  7. いえいえ、不適切とは思いません。
    私のほうは大変参考にさせていただきました。
    やっぱり、いろいろなとばっちりを考えると、このpillは、結構副作用がありますね。やっぱり、極力、発動しないほうがよろしいんじゃないでしょうか。
    (ではまた。)