昨日のブルドッグ関係(会計・税務の方針が、ついに!)

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昨日、ブルドック関係で、いろいろリリースが出ています。
・ 平成20年3月期 第1四半期財務・業績の概況
 http://www.bulldog.co.jp/company/pdf/070807_IR1.pdf
・ 当社新株予約権の消却に関するお知らせ
 http://www.bulldog.co.jp/company/pdf/070807_IR4.pdf
・ 特別損失の計上および業績予想の修正に関するお知らせ
 http://www.bulldog.co.jp/company/pdf/070807_IR3.pdf
・ 平成20年3月期配当予想の修正に関するお知らせ
 http://www.bulldog.co.jp/company/pdf/070807_IR2.pdf
・ 新株予約権発行差止仮処分命令申立てに係る特別抗告及び許可抗告の棄却について
 http://www.bulldog.co.jp/company/pdf/070807_IR5.pdf
最高裁がスティール側の特別抗告及び許可抗告を棄却したということもさることながら、明日付けで行われる新株予約権の取得に関連して、業績予想の修正が行われている(つまり会計、税務処理の片鱗が見える)ところが要注目です。


結局、新株予約権の消却は「資本取引」ではなく「損益取引」として取り扱われるというご方針ということ。これはある意味「保守的」な考え方だとは思います。
ただ、発表された修正数値から考えると、下記の表;
bull_kessan_yoso.jpg
(水色の部分は磯崎のざっくりした推測)
のとおり、法人税等として見込んである数値は、40%ちょっとなので、つまり、この新株予約権の消却額は、全額損金参入可能と判断されてらっしゃる、ということかと思います。
これは税務当局とも相談された結果、ということなんでしょうか?
税務当局のご判断(判断したとしたら)は、今回が買収防衛策関連だから、という特殊ケースとしてそう判断されているのか、一般的に株主割当した新株予約権については、常にこのような処理をしてかまわないのか・・・非常に興味深いところです。
もしそうなら、以前に書いたとおり、株主に無償割当てした新株予約権を使って、海外の株主に対して源泉徴収無しに実質的な配当や残余財産の分配を行ったり・・・といった、いろんな新しいタックス・プランニングが可能になるんじゃないかと思われますので・・・。
今回は、行使可能期間が短いので、消却を損失扱いするとしたら半期の損益に含めないといけないことになりますが、一般論として、もうちょっと期間の長い新株予約権を取得して、損益にあわせて一部だけ消却すると、当期利益や法人の所得を自由にコントロールできることになるのかどうか、とか。
興味深くて、ワクワクしますね。
(取り急ぎ。)

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3 thoughts on “昨日のブルドッグ関係(会計・税務の方針が、ついに!)

  1. 検索で初めてこのサイトに来させてもらいました
    突然失礼します
    いくつか質問させてください
    資本取引か損益取引かと何度か書かれていたように思えますが、新株予約権は現在株主との取引ではなく、償却しないで行使を待てば良いものを無理矢理償却するので、損益取引なのは当然ではないでしょうか?
    次の投稿で、大量報告書の報告義務について書かれていましたが、ちょっと全部は読めてないのであれなのですが、証取法上、会社側が勝手に新株予約権の償却+新株交付してしまって5%超になってしまっても、元々5%未満なら提出義務はないのではないでしょうか?
    最後に、これが調べたくて来たのですが、スティールのTOBの条件変更(買付価格の引き下げ)は証取法上問題ないのでしょうか?他サイトものぞいた結果、証取法施行令か何かの引き下げ対象となる行為に該当するので良いのでしょうか?

  2. こんにちは。
    >損益取引なのは当然ではないでしょうか?
    もちろん、そういう考えもあると思います。(普通、というか、今まではそういう考えで問題なかったと思います。)
    ただ、投資事業組合を使ったライブドアの自己株式売却の時と同じですが、公認会計士的観点というのは、単に「個別の会計基準に文言上どう書いてあるか」ではなく、「その取引の経済的実態が何なのか」ということを考える必要があると思います。
    株式を4分割して、その株式を取得するなら資本取引で、4分割とほぼ同じことを新株予約権で行うと損益取引ということだと、いくらでも利益操作できてしまうわけですが、ほんとにそれでいいですか?というところを考える必要があると思います。
    試験的に正解がひとつに限られるということではないかと思いますが、ライブドア事件以降の会計士試験の問題としては、こういう点を考えさせる問題というのは、いい問題かもしれないですね。
    >証取法上、会社側が勝手に新株予約権の償却+新株交付してしまって5%超になってしまっても、元々5%未満なら提出義務はないのではないでしょうか?
    これも、いまだかつてこういう事態はなかったので、法をどう解釈するかの問題かと思います。
    計算式は次の記事に書いたとおりですが、もし法律上そう解釈されないのに自分の比率が4倍弱にもなったという大量保有報告書を提出したら、提出した5社は「虚偽報告」ということにもなりますし、報告すべきと解釈されるとしたら、提出していない4社は「報告義務違反」ということにもなるかと思います。
    (さて、どっちでしょうか。)
    >スティールのTOBの条件変更(買付価格の引き下げ)は証取法上問題ないのでしょうか?
    これは、TOB価格が原則禁止されていることをいいことにTOB中に株式分割をするという買収防衛策が出てきた中、現在では、株式分割等の場合には引き下げ可能という法改正が行われています。
    (こちらをご参照ください。
    http://www.tez.com/blog/archives/000943.html)
    なお、新株予約権は、「償却」ではなく「消却」になります。
    論文試験、がんばってください。
    (ではまた。)

  3. お忙しい中、すばやいお返事有り難うございます
    「償却」は単なるタイプミスです。ご指摘ありがとうございます
    やはり、知らぬ間に法改正してたのですね。証取法はそこまで詳しくは習わなかったので、自分の知識不足かと調べてました。情報ありがとうございます
    今回のブルドックv.s.スティールの出来事を見てるだけでも、世の中には色々な会計理論(今回の新株予約権消却が実質4分割なのは気付いており、確かに仰る通りだとも思います)、色々な法解釈(僕には、今回の新株予約権株主割当→特定株主は現金買取と一連を考えると、本質的には会社法109条1項株主平等原則に反しているとしか思えません)、株主総会での防衛策の圧倒的多数の賛成、証券市場でのブルドック株の不可解な値動きなど、説明しづらく、難しいことが多いですね
    試験頑張ります。一言いただきましてとても嬉しく思います。ではまたこのサイトを訪ねることもあると思いますので、またよろしくお願いします