ブルドックの高裁も却下+その経済的インパクト

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ブルドックの買収防衛策、高裁も申し立てを却下したとのこと。
さーて、これで、「(実質)世界初の買収防衛策発動」というになるかと思いますが、その場合の、社会(経済)に与えるインパクトを改めて考えてみたいと思います。


 

ブルドック買収防衛策、東京高裁も認める(16:20、日経速報ニュース)
 米投資ファンドのスティール・パートナーズがブルドックソースの買収防衛策差し止めを求めた仮処分申請の即時抗告審で、東京高裁(藤村啓裁判長)は9日、申し立てを却下した東京地裁決定を支持、スティールの抗告を棄却する決定をした。同高裁はスティールについて「濫用(らんよう)的買収者と認めるのが相当」と認定した。(以下略。)

海外の人はどうこれを見るのか?
海外メディアが、これをどう報じるか、が注目ですね。
「ブルドック、what?」と、あまり関心を示さないのか、はたまた、「買収者に損害を与えない買収防衛策だって(笑)」といった扱いになるのか。
「家に黙って入ったやつは、撃ち殺されても文句言えない」という国の人は、「ミサイルに燃料注入した段階で”防衛”の範囲にあたるのかどうか」と議論している国の発想はよくわからないかも知れないですし、アメリカとヨーロッパでも反応は違いそうですね。
税務&会計上のインパクト
また、ここ一連のエントリで書かせていただいたとおり、私は、この「買収防衛策」そのものもさることながら、これに関連して、税務当局や監査法人が下す結論による税務や会計処理の方の社会的インパクトもかなり強い気がします。(つまり、本震は、ずっと後に来る。のでは。)
昨日書いたような解釈で行けるとすれば、さほど影響もない(八方、ほぼ丸く収まる)かとは思いますが、特に税務については、QWERTYさんからもコメントあったように、現行法の条文を読む限り、必ずしもすんなりとその結論に達しません。(かなり「柔軟な」解釈が必要そうですし、柔軟に解釈した場合の、他への影響も読みきれないところ。)
また、当該解釈が採用できないとすると、現金での取得条件付の新株予約権を株主に割当てることで、非常にフレキシブルに、配当の源泉税を回避したり、自己株取得の「みなし配当」を回避したり、利益を圧縮して法人税を回避できる可能性が出てきますし、会計上も、(経済的実質は自己株の取得だから資本取引的なのに)、巨額の損失が発生する、ということにもなりえます。
特に今回の買収防衛策は、「株主総会様」がお決めになっており、取締役会が買収者との交渉でフレキシブルに発動を止められるようにも必ずしも読めないので、もし、今後、税務や会計処理の結論がとんでもないことになったら、どないするんでしょうか。
(もう、時限爆弾のカウンターは、解除できない?)
 
買収は止まるのか?(追記18:18)
買収防衛策が発動しても、スティール側の買収を食い止めることはできるんでしょうか?
(「損害」が発生しないなら、スティールには買収を止めるインセンティブはないはず。)
スティールへの現金支払額が、上述の「みなし配当」としての課税を受けるのか、全額丸々渡されるのか、も若干影響するんじゃないかと思いますが。
(ではまた。)

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