フジテレビのTOB条件変更は「アリ」?

  • Facebook
  • Twitter
  • はてなブックマーク
  • Delicious
  • Evernote
  • Tumblr

12日の記事「渋い一手?フジテレビのTOB目標引き下げ」に、「student」さんからコメントいただきました。

そもそも、いったん公表した公開買付の買受予定株式総数を減少させることは許されるのでしょうか?
証券取引法第27条の6第3項を見ると
「買付け等の価格の引下げ、買付予定の株券等の数の減少、買付け等の期間の短縮その他の政令で定める買付条件等の変更は、前二項の規定にかかわらず、行うことができない。 」とあるのですが・・・。

「fujiko」さんにもお答えいただいてますが、フジテレビさんとしては証券取引法に禁止された変更ではないという解釈なんでしょうね。同じくトラックバックいただいたtaka-mojitoさんの「フジテレビ、『買付予定株式数』を25%超に引き下げ」に詳しく解説されてますので、詳しくはそちらをご覧いただければ、と思います。
taka-mojitoさんは、

「買付予定の株券等の数」というのは、法律が予定する原則的な形態においては、一応の指標というくらいの意味しかなく、例外として許されている条件を付けて初めて下限や上限を画す機能を持つことになるということになります。つまり、「買付予定の株券等の数」の定義自体には、もともと上限という意味はないし、ましてや今回のフジテレビは「買付予定の株券等の数」によって上限を画しているわけではないということです。

とされてますが、一方、職場の同僚の方が今回のフジテレビのTOB条件の変更と同様のケースを金融庁に問い合わせたところ、「それは『買付予定の株数等の数の減少』に当たる」と言われて、(追記:その、「後から下限を下げられない」という結論に対して)「何と非常識な」と思われたとのことで、結論は留保されて、47thさんにフッてらっしゃいますので、お二人のやりとりを見守ることといたしまして・・・。
米国の場合
ちなみに、
「敵対的M&A」防衛マニュアル—平時の予防策 緊急時の対抗策
450237640X.09.MZZZZZZZ.jpg
野村証券IBコンサルティング部 (編集) 中央経済社
では、

米国の場合、TOB期間中におけるTOB価格の引き下げは可能である。
(1934年米国証券取引法 Rule 4e-1(b))

として、オラクルがピープルソフトへのTOBの途中でTOB価格を引き下げた事例を紹介しています。(同書81ページ)
ということは、(今回の件が日本の法律でどう解釈されるかどうかはおいといて)、TOB中に応募者に不利益な変更しちゃダメというのは、あまり普遍性のある法理ではないんでしょうね。
これの意味するところは、「応募した人が機会損失を負ってもしゃあない」ということですからちょっとビックリしますが、欧米では株式を対価とするTOBも多く、(買収側の株式の価値は刻々と変化するし)、機会損失を言い出したらキリがないから、そんな規制しても意味がないということでしょうか?(←思いつきによる推測。)
(ではまた。)

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

12 thoughts on “フジテレビのTOB条件変更は「アリ」?

  1. フジテレビ、「買付予定株式数」を25%超に引き下げ

    すでにご存知のとおり、フジテレビが、ニッポン放送株の「買付予定株式数」を50%超から25%超に引き下げました。
    プレスリリースはこちら。
    そこで、今日は、証取法上、TOBの条件の変更がどのように規制されているのかという点を簡単に整理してみようと思います。T…

  2. 記事をとりあげていただいてありがとうございます。47thさんと短いやりとりがありましたが、結局、お茶を濁して今後の推移を見守るという逃げに入ることにしました(笑)。応募株主の利益に関していえば、昔の証取法では、買付開始から10日間だけ撤回権を認めていたようですが、現在の証取法は、公開買付中はいつでも撤回できるようになっているので、変更後の条件に縛られることはなく、嫌なら売らなければよいということになります。ただ、「条件を変更するなら、その前の株価の高かったときに市場で売れたのに。」という主張は出てくる可能性はありますよね。

  3. taka-mojitoさん、
    コメントありがとうございます。
    トラックバックいただいた記事で追記された部分、当方の記事にも追記させていただきました。
    (ではまた。)

  4. 磯崎さん
    オラクルの事例、ありがとうございます。
    夜のテレビで社長自らのコメントとして、
    LDの意思も明白になりましたね。

  5. 今回の変更は買付株数の変更ではありませんよ。
    買付”下限”株数の変更ですので、証券取引法で禁止されてもいませんし、投資家側にも不利な変更にはなりません。
    なぜなら、これまでは「50%以上の応募がないとTOBを成立させません」といっていたのを「25%の応募があればTOBを成立させます」ということにしたのですから、TOBが成立しやすくなっただけです。
    プレスと公告をちゃんと読めば解りますね。
    因みに私は証券会社でTOBは何件も手がけているので、実務に関しては専門家です。

  6. kantさま、
    ま、実際フジテレビはやっちゃってるわけですし、実態として問題ないと私も思うわけですが、理論的にどう解釈すればいいかについて、バリバリの弁護士さんがとりあえず結論を留保されているので、弁護士さんお二人の議論の成り行きを興味深く見守っているわけです。
    (ではでは。)

  7. TOBについてバリバリの弁護士さんって、正直見たことないですが(笑)
    議論があるのは、「買付下限株数」なる条件を設置することが適法か?というところですよね。ここは実務上アンタッチャブルで通しちゃってることは確かですが。
    あとで「買付下限株数」を動かせるかどうかについては、不利益変更でなければよいという解釈で通っているはずです。

  8. >TOBについてバリバリの弁護士さんって、正直見たことないですが(笑)
    証券法の専門家でも、けっこう証券六法と首っ引きであ〜だ、こ〜だ、という感じですね。実際、なれ合いTOB以外のTOBはまれなんで、実例(いわんや判例)が少ないのでしょう。アメリカとの実績の積み重ねが大きいので、声が大きい弁護士の、やったもの勝ち、というのが実情では。
    今回の25%への変更は、実際にTOB成立のバーを下げたのものなので(世間はそう感じてないように思いますが)、問題はないと思います。半可通の感想でした。

  9. ライブドアVSフジテレビ(レフェリー金融庁)

    フジテレビ証券取引法違反?
    この件、日経新聞は取り上げたみたいですね。追随する新聞は出てくるのかな?

  10. フジテレビの会長は サラリーマンです。会社の所有者では在りません。大株主が経営について 意見交換を求めた場合、それを拒否できるのでしょうか。馬鹿呼ばわりできるのでしょうか。委任契約上問題はないのでしょうか。教えてください。

  11. TOBに賛成で買い付けに応じる株主には有利な変更だが、
    反対の株主には、当初50%以上が買い付けに応じなければ成立しなかったTOBが
    25%に下げる事で成立してしまう点で不利ではないですか?
    それに、目的を経営権の取得としながら25%に下げる事は矛盾する。
    ライブドアの影響力排除のためのTOBならそれを公開買付け報告書に記載しないのは問題
    だと思います。公開買付けの目的も報告書記載事項です。

  12. ライブドアvsフジテレビ

    就活生の皆さん、この戦いは面白いと他人事で片付けてよい
    問題ではありません!
    ある意味、私たちの将来の命運を分ける21世紀の歴史に語り
    継がれる戦になる可能性があるのです。