週刊isologue(第113号)ソフトバンクの電力参入とコーポレートガバナンス

ソフトバンクの孫正義社長は今月下旬、太陽光や風力など自然エネルギーの普及・促進を目的とする協議会を、地方自治体とともに設立すると発表し、ソフトバンクも法人としてこの事業に加わることが報道されています。

巷では、
「原子力発電をやめることはいいことであり、孫社長のような人が積極的に『自然エネルギー』を推進してくれることはいいことだ」
という意見がある一方で、
「まだ電気通信事業の借入金も大量に残っている段階で、採算性も見えない電力事業に思い付きで参入するのはけしからん」
という意見の人たちもいます。

 

今回は、このソフトバンクの電力参入についての技術的な成否ではなく、こうした判断がどのようなコーポレートガバナンスの下で行われ、また、この発電に冠する定款変更の議案は株主総会で可決されるのか、それとも否決される可能性もあるのか、といった点について考えます。

 

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目次とキーワード:

  • 定款変更案の概要
  • ソフトバンクの取締役、監査役の概要
  • 役員の年齢構成
  • (データで見る)孫社長は占いを参考にしているか?
  • 孫社長は、ヤフーとソフトバンク両社をいかに切り盛りしているか?
  • 株主総会のスケジュール
  • 議長
  • 定款変更の気合いの入り具合
  • 現行の定款
  • 「目的」の順番
  • 定款目的外の行為
  • 過去の決議の状況
  • 特別決議は通るのか?
  • シミュレーション結果
  • まとめ

(ではまた。)

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本日は、表参道も爆撃を受けた山手大空襲の日

3月10日の東京大空襲に比べればあまり知られていないですが、本日5月25日は弊事務所がある表参道も爆撃を受けた山の手大空襲の日です。
Wikipediaの「東京大空襲」の項による説明は以下の通り。

それまで空襲を受けていなかった山の手に470機ものB29が来襲した。皇居も被災し宮殿が焼失した。これにより死傷者は7415人、被害家屋は約22万戸と3月10日に次ぐ被害となった。 また当時、東京陸軍刑務所に収容されていた62人のアメリカ人捕虜が焼死している(東京陸軍刑務所飛行士焼死事件)

この山の手大空襲についての手記をまとめた「表参道が燃えた日」(「表参道が燃えた日」編集委員会)という本があります。

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残念ながらAmazonでは取り扱っていないですが、表参道の角にある山陽堂書店さんで求めることができます。(現在、改装で休業中)

その夜の爆撃で、表参道の交差点は焼け焦げた遺体の山になり、今もある大きな石灯籠には、焼夷弾で燃えた方の油で体の形のあとが残ったとか、

当時の安田銀行(その後富士銀行、現在の みずほ銀行青山支店)の入り口に火を逃れる人が押し掛け、折り重なって亡くなっていたとか(山陽堂書店さんは建物を解放して中に逃げ込んで助かった人がいるようですが、安田銀行はドアを開けてくれなかった、という記述もあります。銀行の中に人を入れて略奪やパニック等が発生した場合を考えた究極の選択だったのかも知れませんが)、

表参道を逃げようとして、焼夷弾の油で路面がすべるくらいだったとか、

小学生が明治神宮まで逃げようとしたものの、吹き上げる火災の風で表参道を下れなかったとか、

遺体をトラックに山積みにして運んで、青山墓地の北(現在の都立大田桜台高校)の土地に大量に埋めたら、その後の夜、リンが燃えるのが遠くから見えたとか、

・・・・凄惨を極める状況が、体験された方々の手記として書かれています。

今はおしゃれな店が立ち並ぶ表参道・青山地区からは容易には想像できないですが、同書には当時の地図も掲げられているので、今の店や団地、学校等が当時はどうなっていたのか、対比すると、今の表参道の生活のありがたさが身にしみて感じられます。

毎年5月25日には、表参道交差点の細い道を入った所にある善光寺さんで法要があるとのことですが、今朝、犬の散歩の際に見てみたところ、特に掲示はされていませんでした。(一般の人には案内していないのかも知れないですね。)

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ご参考まで。

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週刊isologue(第112号)東京電力の「意外?な好決算」を読み解く

先週末(5月20日金曜日午後3時半)、遅れていた東京電力の平成23年3月期の公表がついに行われました。

決算短信(pdf)
決算概要(pdf)
アナリスト向け決算説明会資料(pdf)

 

今回の決算は、一言でいうと対前年比で増収・経常利益増益のすごくいい決算になっています。
当期純利益が1.2兆円の超ド赤字ですが、債務超過にはなっていません。

昨年12月末の純資産が約3兆円もあったので1.2兆円の損失程度では債務超過にはならないわけですが、手元のキャッシュに至っては、銀行から2兆円を調達したおかげで、3月末のキャッシュはなんと2.2兆円以上、昨年度末比で12.5倍というかなり潤沢なキャッシュを保持しています。

実態はどうなのか、詳しくこの決算の中身を見て行きたいと思います。

 

(ではまた。)

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Yomiuri Online連載第6回目「なぜイケてる上場企業が少ないのか?」

Yomiuri Onlineに連載させていただいている「磯崎哲也の『起業案内』」第6回目が掲載されました。

http://www.yomiuri.co.jp/job/entrepreneurship/isozaki/20110516-OYT8T00737.htm

 

今回のテーマは「なぜイケてる上場企業が少ないのか?」。

「株主が悪い」「証券会社や証券取引所、監督官庁が悪い」というのが、本質的な原因なんでしょうか?という話です。

ご参考まで。

 

(ではまた。)

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週刊isologue(第111号)東京電力の原発事故賠償スキームの分析

先週13日、東京電力の原発事故の賠償のスキームについて、関係閣僚会合の決定が行われました。

枝野官房長官が、銀行に対して債務免除を求めたため、
「本来、まずは『株主責任』を問う(100%減資する)べきじゃないか」
「政府は、資本主義の基本的なルールがわかっていないのではないか」
といった意見も出ているようです。

今週は、この東京電力の原発事故賠償スキームが、どういった性質のものなのかについて分析してみたいと思います。

 

目次とキーワード:

  • 賠償スキーム案の概要
  • 東京電力の利害関係者(ステークホルダー)の整理
  • 経費、遊休資産、本業の資産のリストラ
  • 負担金の「相互扶助」スキームの「うまさ」
  • 「交付国債」とは何か?
    (預金保険機構スキームと今回の「機構」)
  • 株主構成
    (「株主責任」を取らせなかったのは何故?)
  • 「注入」される優先株にはどんな条件が付くか?
  • 難しい「普通株と優先株の分け前」

 

(ではまた。)

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【aho計算】 わんこは放射性物質をどのくらい放出しているか?

生物の体内にはカリウムがあり、その中には一定量の放射性カリウムが含まれていて、これが日常の内部被曝の最大要因になっていると言われています。

東京もすでに被曝、1平方cmあたり3ベクレル」「東京オワタ\(^o^)/」というようなことがネットで語られているのを以前見まして、ずっと気になっていたのが、「うちのわんこが散歩の時におしっこをすることで、どのくらいの放射性物質を排出してしまっているのか?」という点。

上記のような低濃度の放射能であれば、へたすると、うちのわんこも放出したりしてしまっていないでしょうか。

この点について、ネットを参考に、高校の物理や数学を思い出しつつ計算してみました。

(「竹中平蔵氏の確率計算」の話が話題になってましたが、この「複利の計算」がわかれば、すっきり解決です。)

 

うちのわんこは 40kgあるのでw、

 

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(クリックで拡大)

 

尿量は人間とほぼ同じと仮定して1日1リットル、小出しに分けるので1回あたり100ccと想定。

 

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週刊isologue(第110号)首相の原発停止要請と中部電力のコーポレートガバナンス

先週金曜日(5月6日)に菅首相から中部電力に対して、浜岡原発のすべての原子炉の運転を停止する要請がありました。

原子力発電は(少なくとも会計上の)コストは安いので、これを火力に切り替えることで、「燃料費増により年間約2500億円の費用負担が生じ、赤字転落は確実な情勢」(2011.5.9 09:54 、msn産経ニュース)等と報道されており、これを受けて本日は株価も先週末比で10.3%下落しました。

ネット等では、「これをそのまま受諾したら、中部電力の役員は株主代表訴訟で負けるのは確実だ」「いや、安全のために原発を停止するのは普通の話なので、代表訴訟に負けるわけがない」といった議論もあります。

今週は、このような企業が自社に損失が発生するような圧力を受けた場合に、取締役や監査役がその職責として、どのような対応をするべきなのか、中部電力の役員の方々は、どのような判断をしそうなのか[したのか]、等について考察してみたいと思います。

 

(15時半から中部電力の取締役会が開催されており、今後の発表や報道等によっては内容が変わる可能性がありますが[つまり、例によって、まだ執筆中ですが]、本日23時50分ごろ配信予定です。)

 

(ではまた。)

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Yomiuri Online連載第5回目「なぜ、この時代のこの日本に生まれたんだろう?」

Yomiuri Onlineの「磯崎哲也の『起業案内』」第5回目が掲載されました。

http://www.yomiuri.co.jp/job/entrepreneurship/isozaki/20110502-OYT8T00862.htm

 

今回のテーマは「なぜ、この時代のこの日本に生まれたんだろう?」。

かなり「厨二」な話で恐縮ですがw、「我々、自分の思い通りにビジネスをするには、かなり面白い時代と場所に生まれたんじゃないか?」という内容であります。

 

(ではまた。)

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週刊isologue(第109号)東京電力(電力料金への影響編)

今週は、ゴールデンウィーク中でもありますので、今までの復習とまとめを兼ねて、
東京電力の原発被災者への補償や、経営の悪化で社債の金利等が上がることによって、電気の料金にどう影響があるか?
ということを考えてみましょう。

 

電力料金を2割上げれば、原発被災者への賠償は簡単に行える
電気料金は『総括原価方式』で決定されているので、賠償額や廃炉の費用、金利の上昇分は、料金に転嫁されてしまう
といった意見や不安も出ているようですが、これは本当でしょうか

根拠条文や会計上の原価の考え方等に遡って、これらを検証してみましょう。

(連休なので、あっさり10ページくらいであっさりまとめようと思って書き出したら、30ページというかつて無い大作になってしまいました…orz。)

 

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目次とキーワード:

  • 電力料金の算定規則
  • 総括原価方式
  • 「営業費」の中身
  • 電力事業営業費の全体像イメージ
  • 「法人税等」が営業費?
  • 「補償費」は総括原価に入るか?
  • 今まで補償費が一番多く支払われてきた設備は何か?(原発か?)
  • 過去の料金変更はどのくらいの頻度で行われたか?
  • 燃料費調整制度のしくみ
  • 電力10社の平均燃料価格
  • 燃料費(価格と使用量の基準と実績、料金との関係)
  • 「事業報酬」(ファイナンスコスト)の中身
  • WACC(Weighted Average Cost of Capital=加重平均資本コスト)とどう違うか?
  • 支払利息負担増による影響
  • 「東京電力の料金は総括原価方式で計算されるから、今後調達コストが上がって高い金利を払うよりは、社債等がデフォルトしちゃった方が、利用者の電気料金の負担は減る」は、正しい?
  • まとめ

 

(ではまた。)

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