企業買収防衛戦略II

47thさんから、
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企業買収防衛戦略II
武井 一浩、中山 龍太郎 (編著)
商事法務

を送っていただいたので、遅ればせながらご紹介させていただくとともに、この場をおかりして御礼申し上げます。
(私の名前も137ページの脚注に8pointくらいの小さな字で、ちらっと載せていただいてます。)
以前、ご紹介させていただいた条件決議型ワクチン・プランなどについてもまとめられています。
−−−
ちなみに、今、Amazonのアフィリエイトのページで当ブログのリンクから発注された商品数を確認したところ、前の企業買収防衛戦略(以前のご紹介記事はこちら)は現在、累計売上数第3位。
一位は、なんと、

B0001X9BMY.09._PE35_SCMZZZZZZZ_.jpg
スター・ウォーズ トリロジー DVD-BOX

と、松本啓二先生の
4322108350.09._OU09_PE0_SCMZZZZZZZ_.jpg
クロス・ボーダー証券取引とコーポレート・ファイナンス
社団法人金融財政事情研究会 刊

(ご紹介エントリは、こちら
が、同数で1位。
(スターウォーズのDVD-BOXと、クロス・ボーダー証券取引が同率一位の書店って、全国どこを探しても無いでしょうね。[笑])
「企業買収防衛戦略」(1)が僅差でその後を追ってらっしゃいますので、I、IIをあわせれば、たぶん、ここ数日で、逆転で1位獲得・・・かも知れません。
(ご参考まで。)

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グーグルは「すごい」のか「すごくない」のか(財務的に見たGoogle)

(追記04/25 16:40:コメント欄に池田さんから米国の広告市場規模についての訂正をいただきましたので、このエントリのグーグルの広告モデル内のみでの成長性の部分については、大幅に書き直しました。)
某雑誌の方から、連休後に出る予定の特集に関連して、「グーグルについて定性的な分析をされる方はいらっしゃるんですが、財務的な観点から見てどうなのかコメントがほしいんですが」、という依頼があったので、ひさびさにGoogleの開示資料(10-K)を見てみました。
Googleの損益計算書は、下記のような感じになってます。
image002.gif
池田信夫さんのブログの記事「グーグルという神話」には、

(略)グーグルが日本でこうも崇拝されるのはなぜだろうか。先日も、田原総一朗氏に「グーグルのどこがすごいの?」と聞かれて、答に困った。検索エンジンとしての性能は、今ではヤフーやMSNなどもそう変わらない。広告というのは卸し売りのビジネスなので、市場規模は限られている。日本ではGDPの1%、米国では3%(追記:約1%に訂正)でほぼ一定している成熟産業である。グーグルの時価総額がインテルを抜いたというのは、かつてのライブドアと同じような「局所的バブル」である疑いが強い。

と書いてあります。
この記事を参考にさせていただいて、以下、財務的な観点からグーグルのビジネスについて考えてみます。
売上は今後も延びるのか?
前掲のP/Lのとおり、Googleは昨年度で6,138Mドル(1ドル115円[以下同様]として7,058億円)もの売上を既にあげています。
そして一昨年から昨年にかけての売上の伸びは92%。(つまり、ほぼ倍増。)
(追記)池田氏によると、「広告というのは(中略)日本ではGDPの1%」で、コメント欄でご紹介いただいた資料によると、米国では下表のとおり2005年度が広告費全体で143.3Bドル、インターネット広告はそのうち5.81%のシェアで、8,322.7Mドルのマーケットですが、当然のことながら、対前年比で13.3%と、メディア別の市場の中では最大の伸びを示しています。
image003.gif
広告市場全体の対GDP比は、米国のGDP 11兆7,343億ドル(外務省HPによる。名目2004年。)に対しては、やはり1%程度。グーグルの売上6,138Mドルは当然海外売上げも含まれていますが、米国インターネット市場に対する単純な割合を取ると、約7割にもなります。
今後、インターネット広告市場が当面は加速を続け、対前年比20%→25%→30%→35%程度で成長すると仮定すると、2009年のマーケットは21,908Mドルで、広告市場全体のサイズは横ばいとすると、インターネット広告が約15%を占めるということになります。
(それほど非現実的な仮定ではないかと。)
Googleの成長率92%が、今後、85%→75%→65%→55%70%→30%→20%→10%(広告費のみ)と鈍化していくとすると、4年後の2009年の売上は50,826M 17,907Mドルで、上記の米国広告市場比で約12.5%(当然、全世界市場比でいくと、もっと低い)になります。(/追記)
基本的にネット広告は既存の広告メディアより効率もよく、また顧客の行動も見えやすい等のメリットがあるので、広告費全体は横ばいでも、今後もネット広告のシェアが増えていくのは間違いないところでしょう。そのネット広告の中でも、グーグルのシェアがダントツになる可能性は高いので、4年後に米国市場比で12.5%(当然、全世界市場比でいくと、もっと低い)をGoogleが取るというのは、これもそれほど非現実的なシナリオではないと思います。
従来型広告代理店よりもはるかに高い利益率
Googleは、上記のP/Lのとおり、売上の約24%が純利益になるという高収益率のビジネスです。(売上高税引前利益率だと34.9%。)
電通さんの2005年3月期の売上1.9兆円に対して純利益が275億円(利益率約1.4%)というイメージで考えると、「広告はそんなにおいしいビジネスじゃなさそう」と思えるかも知れませんが、税引後で売上の4分の1もが手元に残るというなら話は違ってきます。
では、この利益率は、今後どう変化していくでしょうか。
変動費らしき科目
「Cost of revenues」と「Sales and marketing」の売上比を見てみると、3期ともだいたい合計で50%前後。(追記)「Sales and marketing」の方は固定費的要素もあると考えて、売上高比昨年7.2%のところ、7.0%→6.5%→6.0%→5.5%と下がっていくと仮定します。(/追記)
研究開発費と販管費
一方、「Research and development」とか「General and administrative」というのは、基本的には固定費でしょう。Googleは研究開発に力を入れてますので、研究開発費は極力増やそうとするでしょうけど、(追記)昨年555億円の研究費を、売上に比例して増やしていくのはそれなりに大変そうなので、毎年100Mドルづつ増加させる想定とします。
(現実には、Googleははるかに大きな金額を投資するでしょうけど、売上は広告モデルの域を出ないと仮定しているので、そのための研究開発費は2009年で884Mドルもあればいい、と想定しています。)(/追記)
資金運用による収益
また、B/Sを見て頂くと、Googleは昨年末で「Cash等」+「Marketable securities」合計で9,000億円(!) ほどのお金を貯め込んでます。上述のようなペースで利益があがっていくと、(新たなファイナンスをしなくても、)4年後には3兆円を超えるキャッシュを持つことになります。
昨年末と一昨年末のキャッシュの平均残高に対する「Interest income and other, net」の割合(利回り)は約1.2%程度。下記のシミュレーションでは、こうしたキャッシュの平残の2%をそうした営業外収益として見込んでいますが、これはハーバードの2兆円超のファンドが10%超で運用されていることを考えるとちょっと低めな想定かも知れません。(つまり、全部キャッシュでため込んで低利で運用することを想定していて、「ROE20%の事業を買収する」といったことは前提条件に入れてないわけです。当然、キャッシュを投資せずに4年後に3兆円抱えているという戦略は、実際にはありえません。)
数年後にトヨタの利益を超える?
それでも、一所懸命コストの使い途を考えて、4年後の利益率が現状からやや上がる程度としても、2009年の純利益は10Bドル(1.15兆円)
6,675Mドル(約7600億円)となりますので、日本企業で純利益第二位のNTTドコモを超えることになります。(1位は、製造業利益世界一のトヨタ自動車1.17兆円。)
また、上記は、基本的にはグーグルのビジネスモデルが広告モデルの域を出ないことを仮定していたシミュレーションなわけですが、実際にはグーグルは新しいrevenue streamを作り出す可能性は高い。グーグルは、「広告業」を目指したいわけではなくて、大量の情報をハンドルするエージェントになりたいわけなので、「分母」を広告費に限定するつもりもないのではないかと思います。
経済学的には「利益率の高い企業が小さな市場で大もうけ」というのはトリビアルな話かも知れませんが、財務的に見れば、グーグルはすでに世界の企業の中でもかなり「すごい」企業だと言っていいんじゃないでしょうか。
池田さんが説明に苦労されたという田原総一朗氏にも、「数年前にスタンフォードの若者2人が作った企業が、このままいくとあと数年でトヨタの利益を抜きそうきかねない勢いなんですよ」と説明すれば、素直に「そりゃすごいね」と感心していただけるのではないかと思います。
以上をまとめたのが、以下のような予想P/L。
(基本的に、非常に荒っぽいシミュレーションですので、ご注意ください。)
image007.gif
グーグルは「バブル」か?
Google(GOOG)の本日のMarket Capは129.92Bドル(約15兆円)で、確かにインテル(INTC)の112.13Bドルを抜いてます。
ただし、インテルの売上は去年38,826Mドル、net income は8,664Mドルのほどあるものの、グーグルと違って売上の伸びはここ数年10%台に留まっており、完全に安定成長モード。
グーグルが成長を続けて前述のように世界の広告市場のちょっとした割合を獲得するとしたら、4年後にPER10倍20倍台まで落ち込むとしても、10兆円台の時価総額は十分説明がつくことになります。
今後の売上がホントに上記のように伸びるかどうかは、あくまで将来の想定を含みますので、そういう意味ではバブルの可能性はゼロではないですが、現時点ですでにちゃんと7,000億円以上もの売上を計上しているわけですから、ライブドアのように、買収した企業の売上を足しあわせて数字を作っていた企業と違って、大企業としての「実態」がすでにあるという点は、かなり違うのではないかと思います。
ご注意:
本分析は、上述の通り、基本的には現状の勢いで今後も数年成長するという仮定に基づいてますので、強力なコンペティターが現れるなど今後何が起こるかわかりませんし、今後のGoogleの儲けを私が保証するもんではありませんので、悪しからず。
(ご参考まで。)

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グレーゾーンの効用

昨日のエントリに、ユリウス・カエサルさんからコメントいただきました。

私が理解してもらいたいのは、「業者の収益の中には民事上違法な金利に相当する額が含まれている」ことです。
貴方は別の記事で「一部の人のために、上限金利を下げて業界全体の収益性を圧迫することは、闇金の発生等、「市場のゆがみ」を発生させ、社会全体の厚生度を大きく下げることになると思う」と述べていますが、上記の法論理をあてはめると、貴方は「業界が今以上に民事上違法な利息相当額を徴収してもよい」と言っているのと同じなのです。意識されてますか?
私は、法論理を無視して、更なる「違法金利」の徴収を是認させようとする立場からの意見の方が「法論理を無視した、感情的な」意見だと考えています。
もし貴方が「利息制限法は経済学的プロセスにあわない法律だし、こういう法律があるから業界全体の収益性をスポイルしてしまう。だから廃止してしまえ」という意見まで述べるのなら、法論理を踏まえた上での話ということになりますが、いかがですか?そこまで述べられますか?

「もちろんですとも。」と書きかけて、ハタと考えました。
ユリウス・カエサルさんは、「グレーゾーン金利=悪」と考えてらっしゃるようですし、私も完全な「悪」とまでは思わないまでも、「いつかは解消されるべき、決してよろしくはない状態」と思っていたのですが、よくよく考えてみると、これは非常によく出来た制度かも知れないなあ、と思いはじめました。
1月の最高裁判決3連発を受けて、bewaadさんのエントリでも流れはグレーゾーン廃止の方向に進んでいるようですので、「よくできた制度だった」と過去形にしないといけないのかも知れませんが。
高金利の何がいけないのか?
まず、そもそも論に立ち返って、実態として高金利のどこがいけないのでしょうか?
私は消費者金融専業者のローンは利用したことがないですが、社会人になったばかりの時にはお金がなくて、給料日までのつなぎとして、銀行系クレジットのキャッシングは よく利用させてもらいました。
当時、翌月一括払いで3%の手数料だったので、年利36%もの高金利!・・・でしたが、5万円借りたとして手数料が1,500円。ビンボーな若者にとっても、まったく負担可能な額です。会社の同僚に5万円も借りようものなら、後でお礼に飲み代をおごらされたりして、それどころのコストではなくなるわけで。
また、例えば、土曜日にお金がないことに気づいて、月曜の給料日までお金が2万円必要だとします。
仮に普通預金の定期預金があるので銀行からおろした場合の借入は0.1%の金利で済むが、銀行のATMでおろすと105円手数料がかかる。
ところが、消費者金融のATMだと手数料は(たいてい)タダ。
国債や銀行の貸出の金利等を知っている「教養のある人」ほど、年利数十%の金利は「銀行預金の何万倍」の暴利に見えるわけですが、1万円借りて1日あたり十数円のコストなわけです。
上記の例だと、銀行の方が「低利」だが「高コスト」ということになります。
つまり何を申し上げたいかというと、「高金利」のまずいところは、「大量に長く」借りるところなわけです。
消費者金融数社から合計100万円(まともな業者なら通常maxに近い金額)を借りた場合、上限金利規制が適用されて金利が仮に5%下がったとして1年間で5万円の差にしかならないわけです。月に4,000円程度。 1年間元本均等返済ならさらにその半分の月2000円。その程度の金利差で、自殺したり、一家離散したり自己破産したりといった社会問題が防止できるわけがないわけで。
行うべきことは、「トイチ」といった年利何万%で貸し付ける出資法違反のヤミ金業者を取り締まることであって、出資法の上限金利を下げることではないんじゃないでしょうか。
昨日ご紹介した早稲田大学消費者金融研究所のペーパー「消費者金融顧客の自己破産−その特徴と原因−」にもありましたが、多重債務に陥る最大の要因は、リストラのような収入の計画が狂うイベントの発生や、他の住宅ローンなどであって、通常サラリーマンが消費者金融で借りられる多くても100万円程度の残高×20%台の金利そのものが社会問題につながる現象を発生させている、とは考えにくいわけです。
グレーゾーン金利の経済的効果
グレーゾーン金利というのは、「民事上は無効だが任意弁済すれば有効」なわけですから、上記のように利用者が「元気」なうちは任意で金利を支払い、いざ、利用者がリストラにあうなどネガティブなイベントが発生して返済不能に陥った場合には、以降の(弁護士さんなどの交渉により「それ以前」の分も含め)金利を利息制限法の上限までに削る効果があるわけです。
つまり、従来の制度は、「いざというときの金利減免オプション付き契約を、法律で義務づける」のと同様の経済的効果があったと言えます。
ところが、グレーゾーンが無くなってしまうと、返済不能に陥った「弱者」は、(交渉の余地が全く無くなるわけではないですが)、民事再生・破産とか、はたまた、夜逃げ、自殺、といった手段とのクッションが薄くなるわけですね。
人権派の弁護士の先生方は、みなさん、「出資法の上限金利を下げてグレーゾーン金利をなくせ」、という主張のようですが、消費者金融業者と債務カットの交渉をする場合にも、「民事上無効」という切り札が無くなることで、交渉はその分大変になるんじゃないでしょうか。
交渉に時間を要すると、その分、債務者のフィーの負担が重くなるか、弁護士さんの収益性が悪くなるかのどちらかなわけですが、「面倒なので、自己破産しましょう」ということが増えるんじゃないでしょうか。
意外なことに、大手のノンバンクや消費者金融業者さんの反応は、「我々は、上限金利が下がってもビジネスは出来るんですよ。リスクの高い人には貸さなければ、収益性は保てるので。」と、あまりあわててないご様子。
しかし、社会全体でマクロ的に見ると、今までは、貸金業者が返済不能に陥った人の債務を切り捨てることで、そういう人たちの生活費補填になっていたわけですが、その資金の流れが断たれると、誰か別の人(国庫や地方自治体等)がそこへの資金供給をしないとバランスが合わなくなるはず。
ということで、一見「善意」に見える金利の引き下げが、ほんとに「弱者救済」につながるのかどうか、非常に不安だ、というお話でした。
(ではまた。)

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早稲田大学消費者金融サービス研究所の論文より

Webを検索していて、早稲田大学消費者金融サービス研究所が出されているワーキングペーパーを発見。
中でも、
■上限金利規制が消費者金融市場と日本経済に与える影響
http://www.waseda.jp/prj-ircfs/pdf/ircfs06-002.pdf
■消費者金融顧客の自己破産−その特徴と原因−
(早稲田大学大学院商学研究科 樋口大輔)
(早稲田大学商学部 坂野友昭)
http://www.waseda.jp/prj-ircfs/pdf/ircfs04-002.pdf
■上限金利引き下げ影響に関する考察
(東京情報大学経営情報学部 助教授 堂下浩 )
http://www.waseda.jp/prj-ircfs/pdf/ircfs03-002.pdf
などは、昨日から取り上げさせていただいているテーマ
http://www.tez.com/blog/archives/000672.html
http://www.tez.com/blog/archives/000673.html
に近いお話をされているのではないかと思います。
以下、さらっと拝見しただけですが;
最初の「上限金利規制が消費者金融市場と日本経済に与える影響」という論文は、いわゆる「経済学っぽい」分析で、海外の研究事例などを引用しており、「上限金利が引き下げられると、多くの顧客が借入できなくなり、GDPの減少につながる」というような結論になっています。
二番目の「消費者金融顧客の自己破産−その特徴と原因−」は、自己破産に至った人のデータを統計的に解析したもので、自己破産に至る原因をもっともよく説明しうる要因は(業者の無理な貸付等ではなく)「減収というライフイベント」という(あまりジャーナリスティックには面白くない)結論に達しています。
「本研究の限界」として、「本研究のサンプルは大手消費者金融会社のみから提供を受けたサンプルであるため、その会社の顧客層を反映した結果となっている可能性があるといえる。」ということを掲げられてますが、自己破産するということは、そもそも弁護士さんなどにも相談する「比較的合理的な」客層となっているはずで、「一家心中しちゃう」といった経済学的には非合理的で、かつ、ジャーナリズム的には取り上げられやすい「多重債務問題の典型的イメージ」の客層とズレたサンプルになっている可能性はありますね。
最後の、「上限金利引き下げ影響に関する考察」は、イメージ的にわかりやすい迫力あるお話になってます。

今日、健全な中小の消費者金融が撤退する中で闇金融を始めるに当たりわざわざ貸金業登録を受ける業者数が増えている。本来、非合法業者は規制当局に参入意思を知らせる必要はない。ところが、最近の闇金融は東京都の貸金業登録を受けて営業するケースも見られる。登録は簡単な申請書類と4万円程度の手数料などで原則、誰でも取得することができる。一部の闇金融は客を呼び寄せるため登録という行政の「お墨付き」を悪用するケースが目立ってきた。一方で、こうした闇金融は営業実態を精査される貸金業協会には入会しない。したがって、健全な消費者金融の会社数は登録業者ではなく、協会会員数と連動することになる。

ということで、下記のようなグラフを掲げられています。
yamikin.jpg
(論文のとおりだとすると)、上限金利の引き下げにより、まっとうな業者が減少して「闇金」が増殖していく様が、驚くほどわかりやすく示されてますね。
下記のような概念図も掲げられています。
jogen_kinri.jpg
「弱者を助けよう」として「上限金利を引き下げる」という政策をとった結果、「弱者がますます窮地に追い込まれている」、という図になります。
研究費がどこから出ているのか、といえば、多重債務者の方々から出るわけないわけで、「業者寄りの論理」になっている可能性はありますが、上記のようなペーパーを素直に読めば、「だから(「感情的」立法プロセスではなく)経済学的立法プロセスが必要だ」ということが、よく理解できるのではないかと思います。
(ご参考まで。)

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消費者金融的経済学

昨日のエントリでやや言葉足らずだったところを補足しようと思ってgoogleで検索していたら、おもしろいものを発見。
chinese_law_and_economics.jpg
(一部、レイアウトを変えてあります。)
http://translate.adaffiliate.net/first.cgi?url=www.tez.com/review/k199902.htm
これ、私のホームページの、昔、週刊ダイヤモンドの書評に書かせていただいた「会社法の経済学」の書評の中国語訳なんですが、ということは、中国の方に私のホームページを読んでいただいている、ということでしょうか?
(SEO的に、URLを大量に自動生成してGoogleに食わせているだけかとも思ったのですが、どのサイトでも引っかかるわけでもないようで。)
理論的には、翻訳ソフトをかませれば、世界どこの国の人でも私のホームページを読めるとわかっていても、実際に自分の書いたものが中国語に翻訳されて読まれているのを見ると、ドキーっとしますね。(日本でしか通用しないようなアホなこと書いてなかったか、とか、ちょっぴり「ワールドカップ日本代表」的な(笑)身の引き締まる気持ちであります。)
で、本題の「舌足らずだった部分」ですが
「ローエコ」的な観点は日本にもっと導入されないといけないし、未だに、経済関係の法令の立法の際に、そうした観点が必ずしも考慮されてないのは大問題だと思います。
今回も、47thさんに「消費者金融問題に対して経済学的な考え方を適用するのは無理無理〜」と申し上げている話ではなく、全く逆でして、「(ご両親がいらっしゃったり、試験だったりで大変でしょうけど)期待してますので〜(わくわく)」という意味ですので、念のため。
「死」と経済学
ただ、消費者金融業界に経済学を適用する場合に、やはり、いくつか注意しないといけない点はあるとは思います。
普通の経済行為の場合については、例外的な挙動をする人についても、たいていは放っとけばいいわけです。独占禁止法などが想定する「市場の失敗」が発生するようなケースでも、異常なケースは除いた形で立法しても十分機能すると思いますし、また例えば、生活が破綻するほどブランド物を買っちゃう人がいても、「だからブランド業者に規制をかけろ」というような議論も出てきません。
ところが、多重債務者は、へたすると死んじゃったり、一家離散しちゃったりするわけですね。「死」とか「一家離散」とかいった、「金で解決できない」事態に対して、「だって人が死んでるんですよ、キーッ」と攻撃されると、(やや抽象的な)経済学的な思考をする側としても、なかなか(政治や立法の面で)防戦が難しい面があるのではないかと思います。
(もちろん、「だから経済学的な考え方はやめときましょう」という話ではありませんので、念のため。)
「普通の人」の合理性
「ウシジマくん」に出てくるのは、かなり「異常値」的な方々ですし、多重債務者問題といっても、そうしたことに陥るような人は利用者の全体のほんの数%程度で、大半の人は満足して消費者金融のサービスを利用しているわけです。
では、そういう大半の「普通の人」は、経済学的な観点から見て「普通」なのか?
以下は、私が80年代の後半(まだ大手専業者も上場していない時代)、消費者金融業界についてリサーチしていて、某(現在は一部上場の)消費者金融業者の企画部の方にヒアリングに行ったときに、「貸出量の金利弾力性」みたいな文脈で出てきた話なんですが;

うちで、顧客の金利に対する感度を見るために、一部上場企業の課長クラスを無作為に2グループにわけて、DMを出してみたんです。
1つのグループに出したDMには10%台の金利が書いてあって、もうひとつのグループは30%台の金利。
ところが、驚いたことに、この2つのグループからのレスポンス率は、まったく同じだったわけです。
一部上場企業の課長クラスですよ?
どう考えても一般常識を十分に持っている客層だと思うんですが、そういう人たちでさえ、消費者金融の金利に対する感度というのは、全くないとも考えられるデータでしょ?

そのDMの母集団が偏っていたのかどうかわかりませんし、いまや「しっかり計画しましょう」「事前によく確認しましょう」と大量にCMが流されることで、利用者教育も図られ、話は変わってきている・・・のかも知れませんが、ちょっと経済学をよく勉強されておられる方の一般常識とは違った需要関数が存在するかも、と疑わざるを得ないお話で、大変びっくりした記憶があります。
(もちろん、これも、「だから経済学が適用できない」という話ではありませんので、念のため。)
かねてから私が考えている仮説ですが、日本人の教育水準は、ほとんどの人が足し算、掛け算はできるけど、2回以上の掛け算(つまり、(1+r)nといった複利の計算)が体感的にわかっている人は、人口の5%くらいなんじゃないかな、と思っておりまして。
まじめな話、小学校や中学校で、他の授業を多少削ってでも、「複利の恐怖」に関する授業をみっちりやった方がいいと思います。
で、金利は(少なくとも上限40.004%くらいまでは)自由化。
ただし、昨日申し上げたように、貸金業法に従って業務が行われているかどうかは、モニタリングを強化、闇金は徹底的に摘発、とするのがよろしいんじゃないかと思いますが、どうでしょうか?
(貸金業法は、すでにいろいろ細かくやってはいけないことを定めているので、それをenforceするしくみを作ればいいだけのことでは?)
「一部の人」のために、上限金利を下げて業界全体の収益性を圧迫することは、闇金の発生等、「市場のゆがみ」を発生させ、社会全体の厚生度を大きく下げることになると思うんですが。
(ではまた。)

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なぜ過剰取立は起きるのか?(47thさんの記事より)

47thさんの記事「なぜ過剰取立は起きるのか?(イントロ)」で、消費者金融業界の過剰取立の問題を「ローエコ的な発想」で検討される、とあります。
個人的には、刑事罰のある金利の下限を引き下げて業者を締め付けるよりは、「説明義務」等を強化するなど利用者の合理性を高めたり、業務のモニタリングの仕組みを強化する方向で考えるのが好きなのですが、

ご参考:消費者金融の金利は「安すぎる」?
http://tez.com/blog/archives/000114.html

多重債務者問題は「経済学」が通用する世界なのか?
下記のマンガ
ushijima_kun.jpg
闇金ウシジマくん

を読むと、ちょっとそんな考えもふっとびます。
ナニワ金融道
naniwa_kinyu.jpg
は、まだ貸す方も借りる方も「人間」って感じがしたのですが、「ウシジマくん」に出てくる方々は、どちらも、私がお付き合いのある「人間」からはほど遠い方々で。実態をよく存じませんが、あまりのリアルさに、やはりそういう実態も実在するんだろうなあ、と想像する次第です。
そうした、「説明義務だモニタリングだと工夫したところで、とてもマトモな挙動をしてくれなさそうな人たち」を、法がどこまでどのように規制したり保護したりしなきゃいけないのか、というのが、「経済学」的な考察から導かれるものなのかどうか、(上限金利の引き下げで合法的には成り立たない顧客層への貸付が闇金業者に流れたり、そういった闇業者と同じ土俵で回収しなければならない「一部上場企業」がどういう状況に陥っているか、返済困難に陥ってる人とか多重債務者が、実際にどんな人たちなのかを見ることもなしに語れるのかどうか)、このマンガを読んで悩んでしまった次第です。
違法性のコスト
私が中学生のころ、「某大手ファーストフードチェーンの肉にはネコ肉が混ぜられている」という都市伝説?が流行ったのですが、子供心に、「ネコ肉で削減できるコストより、その機密管理をするコストのほうが高くつくんじゃないの?」と思ったのを記憶しています。
同様に、消費者金融業者の場合も、(金利が100何%のころは、男性社員が個別に外出して取り立ててもペイするかも知れないが)、20%台前半の金利ともなると、大規模コールセンターから電話して、定められた督促プロセス(法的な書面の郵送等を含む)を踏んだにも関わらずそれでも回収困難と判断されるものは一定の基準で償却しちゃうほうが、個別に違法性のある強引な取立てをするよりもコストが安く付くのではないかと考えておりましたので、今回の「一部上場企業」の事件には、ちょっとびっくりしました。(同社は、電話の内容を否定されているようですが。)
残高が一定とすると、上限金利が引き下げられたら、回収率を上げないと利益は伸びませんので、そうしたプレッシャーが働いたということはないんでしょうか?
前にも、他の一部上場貸金業者の会長が盗聴に関わったりしてましたので、単にコーポレートガバナンスが機能していないだけかも知れません。
例えば、独立取締役を過半数(は、いきなり無理としても数名くらいでも)入れるとともに、内部統制を強化し、債権回収部門の電話はインバウンド・アウトバウンドともすべて録音、リアルタイムで上長のモニタリングを受けたり、後から内部監査もできるようにしておいて、外出しての回収を例外的に行う場合には、日報等で細かく記録を残す・・・てな対応じゃよくならないんですかね?
金融庁検査って無いの?
ところで、貸金業者というのは、銀行や証券会社と違って、金融庁さんの「検査マニュアル」みたいのはないんでしたっけ?
金融庁の所管の法令・ガイドライン等
http://www.fsa.go.jp/common/law/index.html
のページを見ても、貸金業者に対する検査マニュアル、というのが見当たらないんですが。(他の場所にあるんでしょうか?)
体系的・定期的検査が入ってないのであれば、上限金利を下げるのではなく、金融庁が検査して、利用者への説明義務の履行状況や回収状況のモニタリングを機能させれば、一発でよくなる気もしますが、どうなんでしょう?
(ではまた。)

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ラマヌジャンの頭の中を垣間見る

イギリスの数学者ハーディが、彼が見つけ出したインドの天才数学者ラマヌジャン(イギリスの風土が体に合わなかったのか入院中)を見舞った時に、

「今、乗ってきたタクシーのナンバーは、1729というつまらない数だった」

というと、ラマヌジャンは、すぐさま、

「それはつまらない数などではなく、正の3乗数の和で2通りに表すことができる最小の自然数です。」

と答えた・・・というのを、先日の「たけしの誰でもピカソ」でやってました。
(ビートたけし氏は、最近、数学にハマってらっしゃるそうです。)
で、問題の1729ですが、
1729=123 + 13 = 103 + 93
と、2つの3乗数の和で2通りに表されるのですが、「なんでそんなことが一瞬でわかるんじゃい!」と思いますよね? 私も、すごい人もいたもんだ、と思ってたんですが、先日、朝目覚めた時に、ぱっとひらめいて、なんとなくラマヌジャンの頭の中が垣間見れたような気がしました。
フェルマー予想
数学者にとっては、x3 + y3という形は非常に馴染み深いものだったはずです。
なぜなら、「3 以上の自然数 n について、xn + yn = zn となる 0 でない自然数 (x, y, z) の組み合わせが存在しない」、というフェルマー予想(フェルマーの最終定理)の証明は、数学者にとっては最大の夢のひとつだったはずなので。
インド人は99×99まで九九を習う?
ほんとかどうか存じませんが、インド人の九九は99×99まであるとか。
1729というと、非常にデカい数のような気がしますが、(99×99の話がホントなら)天才数学者でなく、普通のインド人にとっても、かなり「小さいほう」の数なんじゃないでしょうか。
(追記:いただいたコメントやwebなどを見ると、2桁の九九はかなり一般的だが、99×99まで覚えている人は、かなりマレのようですね。)
実際、20までの3乗数を一覧表にしてみると、下記のとおりですが、
image005.jpg
黄色い色をつけたあたりは、実は、インド人じゃないみなさんでも比較的見覚えがある数字じゃないでしょうか。
9の3乗数(81×9)までは、インドの九九のテーブルに(ほぼ)含まれる数字なわけですね。ラマヌジャンだったら、20の3乗数くらいまでは、ぜんぶ「馴染み深い」数字だったんじゃないかと。
と考えると・・
「1729」という数字を見た時に、まず必ずや、「1728(=123)と1違いじゃん」というのはラマヌジャンの頭の中に一瞬で思い浮かんだはずです。(この間、0.01秒
1=13というのは日本の小学生でもわかりますから、フェルマー予想に慣れた頭なら、1729=123 + 13という絵はすぐ思い浮かんだはず。
もひとつ、「1729」という数字を見ると、「729」という数字が容易に見てとれます。
729は前記のテーブルのとおり、9の3乗数。1000が10の3乗数だということは、これも日本の小学生でもわかりますので、1729=103 + 93と表せるのは、ラマヌジャンなら、同じく0.01秒で頭の中に浮かんだのではないかと思います。
ラマヌジャンは数学の専門家なので、「つまらない」と言われると「ほんとにつまらないかな?」という職業的猜疑心が働いたはず。この2通りの3乗数で表される数が特別な意味を持つには、あと何の「役」がつけばいいか?
2つの3乗数の和だけなら、9=13 + 23とか、もっと小さい数があるのは自明。(0.01秒)
1729が、他の2つの3乗数の和で表せないのも自明。1と9と10と12を使ってしまっているので、後は113を使うしかないが、これは当てはまらない。(0.02秒)
とすると、1729が「2つの3乗数の和で表せる最小の数」というのはどうだ?(0.1秒)
・・・というところまでは一瞬で到達したと思うのですが、この先(1729が要件を満たす最小の自然数であることの証明)が、ちょっと凡人では想像が難しくなってきます。
113が入る1729未満のケースは上記でつぶしたとして、103+93の和より小さい異なる数の3乗数の組み合わせは、下記のとおり、45通りしかありませんので、ラマヌジャンならしらみつぶしでも一瞬で解けたとは思いますが、もうちょっとエレガントなひらめきがあるんでしょうか?
image006.jpg
前述のフェルマー予想をn=3で実際に数字を当てはめてみたことがあったとすると、上記のような数字たちは、ラマヌジャンにとっては、すでに「メモリー上に展開されている」ものだったかも知れません。
(後半、エレガントなひらめきが出なかったのが悔しいですが・・・ではまた。)

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なぜこじゃれたオフィスの受付電話はみんなBang & Olufsenなのか?

外資系企業など、ちょっと こじゃれたオフィスの受付に置いてある電話は、なぜみんな、Bang & Olufsen
bang_and_olufsen.jpg

なんだろう?、と疑問をお持ちになったことのある方はいらっしゃいませんでしょうか?
今回、弊オフィスの受付電話を選ぶにあたって、Bang & Olufsenは(も、確かにカッコいいのですが)、「そっち系」のオフィスではあまりにありふれているので、もっと他にこじゃれた電話機はないかいな?と思って探してみたんですが、このモノが大量にあふれる豊かな日本で、そういったデザイン性に優れた受付用電話というのは、驚くほど選択肢が少ないことに気づきました。
大型の量販店も、通りかかるたびに何軒か見てみたものの、あるのは日本の大手メーカーの家庭用の多機能電話機ばかりで、シンプルでデザイン性に優れたオフィス(受付)向けのものは皆無。
ネットで検索しても、驚くほど選択肢が少なく・・・。インターネットは、「ロングテール」なはずなんですけどねえ。
−−−
で、なぜこんな状況に陥るのかを考えてみたのですが;

マーケットは意外に小さそう
まず、平成16年6月1日現在の我が国の総民営事業所数は592万事業所(しかないわけ)で、この事業所の10%が「こじゃれた」受付電話のニーズがあるとして、その受付に置く電話の数は、約60万台。
5年に一回、設備更新が発生するとすると、年間約12万台しか市場がないことになります。
年間何百万台も売れる携帯電話市場などからすると、非常に小さい市場ですね。
(受付電話は外資系メーカーの電話機でも、PBXとの相性の関係などで、オフィス内でも同じメーカーのものを使ってる例は見たことがありません・・・。)

通信端末の認定制度
おまけに、電話機は、ただデザインすればいいというもんじゃなくて、電気通信事業法上の登録認定機関の認定を受けないとダメのようで。

電気通信事業法
第二章 電気通信事業/第五節 指定試験機関等/第二款 登録認定機関(第八十六条〜)

この登録認定機関は、JATE(財団法人電気通信端末機器審査協会)さんだけでなく、テュフ ラインランド(TÜV Rheinland)ジャパンさんなどもやっているようで、
JATEの報告書(6ページ)によると、認定機器台数ベースのシェアで、JATE65.2%、テュフ21.1%・・・等となっております。
この「最大手」のJATEさんですら、認定の手数料合計で年間2億円弱の収入しかなく、1件当たり単純平均で、20万円ちょっと。認証/認定の申込に必要な書類一覧というのを見ても、かなりいろんな専門的書類を用意しないといけないようで、こういうのを専門家に作成を頼んだら1台デザインするのに、認定だけで最低100万円くらいはお金がかかりそうですね。
そのほかにも、肝心のデザインフィーや、実際の電話の機械の設計費用も当然かかります。
つまり、オーバーヘッドのコストが意外にかかりそうです。
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というわけで、オフィスの「顔」で、すごく目立つわりに、時計のように「ムーブメント」だけ大手メーカーから買ってきて、いろんなデザインが競い合う・・・というわけにいかない市場なのかも知れませんねえ・・・。
(・・・というようなことが、疑問が浮かんでから30分程度で調べられてしまう今のインターネットというのも、スゴいですが・・・)

(ではまた。)

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遠山記念館

先日、白洲次郎夫妻が住んでいた「武相荘」をご紹介しましたが、同じく、東京近郊にあるあまり知られてない いいとこシリーズ。
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白洲次郎の前日にご紹介させていただいたSoup Stock Tokyoの遠山正道会長ですが、雑誌の記事を見ると、お父様は日興証券(現日興コーディアルグループ)の副社長だったとのこと。日興証券の創業者も「遠山」姓ですので、創業者一族でらっしゃるんでしょうね。
そんな日興証券創業者の遠山元一氏が建てたのが、埼玉の川島町にある現遠山記念館
teitaku.jpg

遠山記念館の邸宅は、川島町出身である日興證券の創立者遠山元一(明治23年〜昭和47年)が幼少時に没落した生家を再興し、苦労した母・美以(慶応2年〜昭和23年)の住まいとするために建てたものです。長屋門、渡り廊下でつながる東棟・中棟・西棟から構成される伝統的日本建築は、室岡惣七氏設計、全国各地の銘木と選りすぐられた技術により、2年7ヶ月を費やして昭和11年に完成しました。
美以没後は主として遠山元一の接客に使用されましたが、その後邸宅の保存と遠山元一が長年にわたって蒐集した美術品を、広く一般に公開することを目的に、昭和43年に財団法人の認可を受け敷地内に美術館を付設し、財団法人遠山記念館として昭和45年に開館しました。

以前、埼玉奥地に住んでたときに一度行ったことがあるのですが、この邸宅が、とにかくすばらしい。現代の職人では再現不可能というような、日本建築のすごい技術(華美ではなく、しぶい「いい仕事」)がふんだんに盛り込まれてます。
ベンチャーを立ち上げて親孝行してやろうという志のある方は、お近くに行かれた際は(あまり川島町に行く機会というのも無いでしょうけど)ぜひ一度見に行くことをオススメします。
(こういう「ホンモノ」のいいものを幼少の頃から見て、ご先祖の苦労した話を聞かされていると、目も肥えるし、社内ベンチャーも成功するのかも知れません。)
ちなみに、同じく川島町には、本田航空の飛行場があって、日本郵船さんの飛行船(よく東京上空で広告のために飛んでいるやつ)のほか、お金持ちのプライベートジェットなども置いてありますので、こちらも行ってみると立身出世欲が沸いてくるかも知れません。
(ではまた。)

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日本版restricted stock試案

(以下、あくまで「思考実験」中のものですので、このとおりにやってうまくいくことを保証しているものではありませんし、こうした方法をオススメしているものでもありません。念のため。)
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「地獄を見るか?『ストックオプションの費用化』」というエントリで、上場企業(特にボラティリティの高いベンチャー企業等)については、ストックオプションの費用化ですごい額の費用が計上されることもあるんじゃないか、ということを書かせていただきました。
たとえば、時価総額4000億円の企業が発行済株式総数の0.5%の株式を目的とするストックオプションを発行し、ボラティリティが大きいので株価の50%ものオプションバリューが発生してしまった、とします。
すると、4000億円の0.5%の50%ですから、ストックオプションだけで10億円もの「費用」が計上されることになります。
アメリカでは、こうした「高コスト(計上)」や、役職員への税務上のリスクを嫌って、ストックオプションをやめて「restricted stock」に切り替える企業も増えてきているようです。
Microsoftさんもrestricted stockに切り替えた模様。

参考文献:
About.com:「Restricted Stock Is Better Than Stock Options」
http://management.about.com/cs/adminaccounting/a/restrictedstock.htm
About.com:「Restricted Stock FAQ」
http://management.about.com/cs/money/a/ResStkFAQ1203.htm
(「Generally, restricted stock awards are smaller than stock option grants by a factor of two or three (one half or one third the size). If a stock option grant were 100 shares, a restricted stock award would usually range from 33 to 50 shares. 」、というようなことも書いてあります。)
株式関連報酬を巡る所得課税上の諸問題(百瀬 智浩 税務大学校研究部教育官)
http://www.ntc.nta.go.jp/kenkyu/ronsou/36/momose/ronsou.pdf

では、日本でも、こうしたrestricted stock方式で費用計上を極力回避する方法はないか?ということを考えるのが、本エントリの目的です。
基本的なアイデア
基本的には、新株予約権を長期間保有するのではなく、(生の)株式を発行し、それを一定期間ロックアップして部分的に売却可能としていく(べスティングを付ける)ことによって、ストックオプションと同様のインセンティブを発生させよう、ということです。
アイデアA(単純な株式の有利発行)の概要
真っ先に思い浮かぶのは、単純な株式の有利発行のケースです。

  • 株主総会で株式の有利発行の決議をします。発行価額は「1株1円」。(特別決議)
  • ただし、その株式は、会社やその他の第三者が保管して、契約で役職員が自由には引き出せないようになってます。
  • 上場企業でも「1円ストックオプション」を発行した企業は多いので、それと同じことですから、(株主総会でのあまり合理的とは限らない反感はともかく)、理屈としてはこれもアリのはずです。
    また、ストックオプションと違って、税制適格の要件(2年間据え置きとか行使額1200万円まで等)に関係なく、インセンティブプランが設計できる可能性があります。
    ところが、これは「ストックオプション」ではないので費用計上しなくていいかというとそうではなくて、「ストックオプション等に関する会計基準(平成17年12月27日)」の、15項「財貨またはサービスの取得の対価として自社の株式を交付する取引」に該当すると考えられるので、時価と1円の差額が「費用」として計上されちゃって、ストックオプション費用の計上回避にはつながりません。(time value分は回避できている、という言い方もできますが。)
    アイデアB(新株予約権発行・即行使)の概要
    税務を考えてみると、前項のアイデアA(単純な株式の有利発行)で、1円の株式を受け取った役職員等は、時価と1円の差額が給与所得として(総合)課税されることになります。
    ところが、改正法人税法54条と関係する政令では、新株予約権は該当しても、株式の有利発行は対象にしてないとすると、「本源的価値」を費用計上しなければならない上に損金参入もできなくて、踏んだり蹴ったりです。
    そこで、1円ストックオプションを発行してすぐ行使する、というアイデアが浮かびます。

  • 株主総会で新株予約権の有利発行の決議をします。(特別決議)
  • 行使価額は「1株1円」
  • 行使可能期間を、「発行の当日のみ行使できる」ものとします。(こうすることによって、time valueをゼロにするところがミソ。)
  • このため、取締役会で発行決議をし、発行した当日に行使、1円を払い込み。(給与天引き等)
  • 行使して取得した株式を、会社やその他の第三者が保管して、契約で役職員が自由には引き出せないようになっているのは、アイデアAと同じ。
  • こうした場合、「本源的価値(時価-1円)」を費用計上しないといけないのは「アイデアA」と同じですが、その費用計上した額を計上時に(おそらく)損金参入できるところがミソ。
    つまり、新株予約権の発行時に貸借対照表の「純資産の部」に新株予約権、反対勘定として費用が計上され、すぐに新株予約権は払込資本に振り替えられるわけですが、税効果を考えれば、総発行額(約株価時価×株式数)の実効税率40%分、純資産は増大します。また、純利益へのインパクトも株価の60%で済むわけです。
    時間的価値(time value)で株価の60%でも、本源的価値(intrinsic value)で60%でも同じじゃないか、と思われるかも知れませんが、アイデアAやアイデアBでは、役職員は、株価×株数分だけ給料をもらっているのと同じですが、time valueだけで60%になってしまうストックオプションだと、役職員はまだ何ももらってないのに費用だけ計上される、ということになります。会社も、それなら株をあげちゃったほうがいい、という判断になるかも知れません。
     
    アイデアC(給与を払って新株時価発行)の概要
    どうせ時価分全額費用計上されるのであれば、よく考えたら、その分給与を払って天引きし、払い込みに当てれば、同じことですね。

  • 取締役会で株式の時価発行の決議をします。(公開会社であれば株主総会不要。)
  • 発行された株式は、第三者等が保管して、契約で役職員が自由には引き出せないようにします。
  • アイデアA、アイデアBと違って、株主総会決議も不要(公開会社であって、取締役報酬の枠をオーバーするようなことがなければ。)で、総務部門などはかなり気が楽。
    アイデアA、アイデアBは、株をもらった従業員が、自分で確定申告をしないといけないですが、この案だと会社の年末調整で済んでしまうので、トータルで見た事務手続きはかなり楽なはず。
    ただし、アイデアA、アイデアBと同様、所得税がドーンとかかる分について、よけいにキャッシュで給料を支払わないといけないので、結局、トータルの(税効果前)コストは株の時価以上にかかることになります。
    アイデアD(新株時価発行&拘束案)の概要
    今回、ストックオプションの費用計上を回避しようとしているのに、アイデアAやアイデアBでは、結局、株価の何十%もの費用が計上されてしまいます。
    もうちょっとなんとかならんもんでしょうか。
    そこで、ファイナンスを付けてくれる第三者(ノンバンク等)がいれば、以下のようなスキームも考えられます。

  • 取締役会で株式の時価発行の決議をします。(公開会社であれば株主総会不要。)
  • 例えば、1年は売却不可で、1年毎に1/4づつ売却可能になっていくべスティング条件の場合、発行時に会社が25%くらいを給与で支給、残り75%を銀行・ノンバンク等がファイナンスして払い込みます。
  • 発行された株式は、ファイナンスをしたノンバンク等またはその他の第三者が保管して、契約で役職員が自由には引き出せないようにします。
  • 会社は、金利負担も考えて毎年一定額の追加の給与または報酬を支払い、天引きでファイナンスをしたノンバンク等の資金を返済していきます。
  • ノンバンクの内規上の掛け目も考えて、最終的にファイナンスの額が時価の(例えば)30%までに達したら、給与の支払いはストップ。(将来、株価が順調に上がれば、会社の費用計上額は小さくて済む。)
  • image001.gif
    (株価が横ばいだとした場合の模式図。)
    image003.gif
    所得税申告手続きへの配慮
    この方式は、複数年度に分散して給与が支払われるので、特に累進税率がキツくなっている方にはよりマイルドな方法になります。
    また、アイデアCと同様、確定申告不要。
    アイデアA・B・Cも同様ですが、この預けておく口座を特定口座にしておけば、ストックオプションと違って、売却について確定申告する必要もありません。
    従業員のリスクへの配慮
    一方で、借り入れは実質的にノンリコース的な条件になっていて、従業員が株価の思わぬ下落で損失を被らないように考慮する必要があります。
    「見せ金」とみなされない配慮
    会社が直接、従業員にローンで金を貸したりすると、「見せ金」とどう違うのか、というようなことになると思いますが、取引銀行が従業員向けにローンを出して、会社がその銀行に預金を積んでおく、というのも微妙そうです。
    第三者のノンバンクが貸せば大丈夫か、具体的な契約内容が詰まってきた段階で、弁護士の意見書等取っておく必要があるかも知れませんね。
    相場への影響の配慮
    また、相場が急落して、貸し付けてるノンバンクが担保を処分する場合、市場で売却して相場の下落にさらに拍車がかかる可能性をどう考慮するか、とか。
    その場合に、自社株の買い付けをするかどうか、それが証取法上問題ないか、とか。
    逆に、株価が50%下落した場合には、強制売却して手仕舞う等、レンダーの都合上、ノックアウト条項的な条項も入れておく必要があるかも。
    このへん、モンテカルロシュミレーション的に、ボラティリティの値がどれくらいだと、ストックオプションにした場合に費用がどのくらい、アイデアDだと、1年後にノックアウトする確率がどのくらい、等、やってみると非常に面白そうです。
    「インセンティブ」になるかどうかへの配慮
    そもそも2年目で株価が50%くらいになっちゃったらストックオプションを発行していたとしても「こりゃ、行使するチャンス無いかも・・・」と悲壮感が漂っているでしょうから、例えば株が○%下がったらそこで強制的に終わり、というようなことでも、あまり問題はないかも知れません。
    会社は株価が高い(100%の)ときにファイナンスできたわけですから、ストックオプションを発行した場合より、「得した」とも考えられるわけです。
    付与量(株数)をストックオプションに比べて減らす手もある
    また、前記「ご参考」のabout.comのFAQに書いてあるように、ストックオプションに比べて、付与する株数を1/2とか1/3にする、ということでもいいかも知れません。ストックオプションと違って、「本源的価値」の部分も会社が出してくれるわけですからね。
    以上、just思い付き、でまとまりがなくてすみません。
    実際には、付与する役職員等の年収や金利、株価の変動、税額等を考慮して、Excel等でちゃんとシミュレーションする必要があるかと思います。

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