部分株式交換(CCSのケース、の巻)

以前、「部分的な買収をするには?」で、部分的な株式交換のスキームについてお話しましたが、同じGMO(さん)が、また同様のスキームで会社を買収したようです。
Venturenowのニュースによると、

株式会社エムティーアイ(本社:東京都新宿区、代表:前多俊宏)は、7月26日開催の取締役会において、同社が保有する株式会社カードコマースサービスの株式による現物出資により子会社CCSホールディング株式会社(以下CCSH、本社:東京都渋谷区、代表:斎藤忠久)を設立。
 その後、7月28日開催の取締役会、及び同日開催のCCSHの取締役会において、同年9月14日を期日とする株式交換により、CCSHがグローバルメディアオンライン株式会社(以下GMO、本社:東京都渋谷区、代表:熊谷正寿)の完全子会社となることを決議した。
 CCSHは、株式会社カードコマースサービスの株式を所有する管理会社として、2004年7月26日設立。資本金283,900千円、発行済株式総数4,053.8株。

つまり、
image009.gif
こういう感じで株式を保有していたところで、MTIがCCSの株式を現物出資して、
image010.gif
こういう↑形で持株会社CCSHを設立(上の青の四角)。
この持株会社をGMOとの株式交換で、
image011.gif
こういう形に持って行く、ということになります。
前回、この持株会社(青色の四角)を作るのに、「現物出資または持株会社への譲渡で持株会社を作るという手が一番シンプルではないかと思います。」と申し上げましたが、やはり現物出資で持株会社を設立していたようです。しかも、既存の法人に現物出資するのではなく、株式を現物出資して法人を設立する、「(単独)新設現物出資」のもよう。
税務上・会計上の取り扱い
この現物出資は税務上、税制適格なのか、また税制適格にする必要があるのかどうか、を考える必要があるわけですが、現物出資が税制適格かどうかの判定は、(非常にざっくり表現すると)以下のとおり。
image012.gif
いずれもその現物出資で得た株式を継続的に保有することが要件となっておりますので、今回の場合、税制適格ではない、ということになるかと思います。(つまり、税務上、キャピタルゲインが認識される。)
会計上も、現物出資時にキャピタルゲインを認識することになります。
企業価値評価と交換比率

(株式会社カードコマースサービス(CCS)は、)資本金 113,894千円。CCSHが株式2,839株(65.7%)を所有。

CCCHの資本金が283,900千円ですから、CCSの株式1株あたり10万円と評価して現物出資したということでしょうか。
設立時だけでなく、増資と2回に分けて半分を資本準備金にすれば、登録免許税(資本金の0.7%)が100万円弱倹約できたし、外形標準課税的にもお得な気がしますが・・・「でかいディールなので、ケチなことは言うな」って感じですかね・・・。

CCSHの株式1株に対し、GMOの株式1,881.4株が割当てられ、株式交換により発行されるGMOの新株式数は、小数点以下を四捨五入し、普通株式1,881,400株となる。

ん?
CCSHの株式1株に対し、GMOの株式1,881.4株が割当てられて普通株式1,881,400株が発行されるとすると、CCCHの株式は1,000株になるはずですが、前の「発行済株式総数4,053.8株」という記述と合いませんね・・・。
GMOのプレスリリースを見ても、1,000株と書いてあるので、1,000株が正解でしょう。設立時にいきなり端株があるというのも違和感がありました。
この話、他にも非常にいろんな論点があって、ごはん何杯でもいけちゃうんですが、とりあえず、本日はこんなところで。
(以下、条文等資料)

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ヘッジファンド規制と日本のオルタナティブ投資

UFJモテモテで世間は盛り上がってるようです。(「三井住友、UFJに統合申し入れへ 三菱東京との争いに」)が、
それはさておき、先日、「証取法改正でシリコンバレー的ファンド等の運営に影響が出るか?」というエントリーで、証取法改正により、投資組合、匿名組合といった投資vehicleへの出資についても証取法上の「証券」として取り扱われることになるため、ファンドを運営する主体(GP)が「投資顧問業」にならざるを得なくなる可能性があるのではないか、ということをご紹介させていただきました。
投資一任契約ができる投資顧問業になるには、安くなったとはいえ5000万円以上の資本金の株式会社になる必要がありますし、金融庁への登録や報告義務等も発生します。
ベンチャー、コンテンツや不動産ファンド等の「新しいもの」に対して資金供給を行うには、「新しい視点」が必要です。銀行や金融機関系VCが悪いとは全く申しませんが、「それだけ」では困る。多様な資金供給仲介者がいてこそ、多様な「可能性」に資金が供給され、市場メカニズムが適切に働くのではないかと思います。
今後制定される「政令」で具体的にどの範囲の組合等への出資が「証券」として扱われるかにもよりますが、広くオルタナティブな投資に網をかけることは、「資本主義の危機」と言っても言い過ぎではないと思います。
そんなことを考えている中で、先日、日経金融新聞の複眼独眼の欄で「正鵠」氏が「SECのヘッジファンド規制」を紹介されてました。

米国証券取引委員会(SEC)は七月中旬、ヘッジファンドに登録義務を課すこと等を内容とする規則案を公表し、関係者の注目を集めている。ヘッジファンドは一九九三年以来その運用資産が十五倍に成長し、証券市場に大きな影響力を持つようになった。現在八千に近いヘッジファンドが八千五百億ドルを超える資産を運用しており、間もなく一兆ドルに達すると予想される。

とのこと。
その、今月20日に出たヘッジファンド規制案というのは、以下のURLになります。
http://www.sec.gov/rules/proposed/ia-2266.htm
昨年9月に出たヘッジファンドに関する報告書は、以下のURL。
http://www.sec.gov/news/studies/hedgefunds0903.pdf
前述のコラムによると「今回の規制案にはSEC内部にも反対論があり、三対二の多数決による決定となった」とのこと。
現在規制されていない日本の「オルタナティブ」な投資は百兆円どころかへたすると一兆円いくかいかないかなんじゃないかと思いますので、少なくとも、マクロ経済学的な見地からこれを規制する意味合いはほとんど無いでしょう。
ミクロ的な、適合性原則(個人投資家等の保護)の観点からも、やみくもにすべてを規制するのではなく、投資主体、投資ロット等で、適用除外の範囲を大きく取るように配慮していただきたいと強く思います。
大げさではなく、この規制に「日本の資本主義の未来」がかかっていると思います。
(とりあえず、本日はこれまで。)

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住友信託-UFJの「基本合意書」の真相は?

おとといの「UFJの統合交渉禁止の仮処分」ですが、昨日伺った会社で、「磯崎さんにしては、結構、あっさりしか書いてませんでしたねー」といわれたので、本日は、もうちょっと「こってり」と書いてみます。
krpさんの書かれた「法的拘束力のある基本合意書」を引用させていただきますと、

私が気にしていたのは、なんで基本合意書そのものに法的拘束力があるみたいな報道をするんだろう、ということです。私の経験では、M&Aについて基本的に合意した段階で取り交わす文書(「Letter of Intent」とか「Memorandum of Understanding」とかいう文書名を当時は使いました)は、「legally non binding」(法的に拘束力がない)と明記していました。

このへん、一般的にはその通りではないかと思います。なぜかというと、krpさんおっしゃるとおり、

基本合意段階では、デューディリジェンスも不十分ですし、条件の詳細も詰まっていません。この段階の合意に「Agreement」並の法的拘束力を持たせると、買い手側に不利だというのが根底にあります。また、売り手側もよりよい条件での売却の可能性を残しておきたいという事情があったりするときもあります。

ということなので。
しかし、krpさんは、

28日付朝日新聞「UFJ「仕込み」裏目に」 によると、
「「第三者との合併等に関する情報提供または協議を行ってはならない」——。27日、東京地裁が下した仮処分命令は、「国民経済に甚大な影響が出る」と情状酌量を訴えたUFJグループの主張をあっさり退けた。信託売却をめぐるUFJと住友信託銀行の約2カ月の交渉経過をたどると、破談を恐れて基本合意書に法的拘束力を仕込んだのは、むしろUFJ側だったという皮肉な構図が浮かんでくる。」
結局、UFJ側が焦って基本合意書を法的拘束力のあるものにしたようです。

とお考えですが、私はちょっと違った予想をしています。
通常、合併交渉や投資の交渉の際の基本合意書(Term Sheet)は、前述のとおり全体としては「法的拘束力がない(legally non-binding)」とすると思うのですが、今回問題になっている独占交渉権や機密保持条項等の部分に限っては、「法的拘束力がある(binding)」とするのが通常ではないかと思います。
なぜかというと、基本合意書のすべての条項について法的拘束力がないとすると、お互いに出し合った営業上の秘密も使われちゃうし、他の人とも交渉し放題なら、そもそも基本合意書という形で約束をする意味がまったくないからです。
今回の基本合意書には何と書いてあったのか?
昨日の日経金融新聞に載っていた東京地裁の仮処分決定の主文の要旨によると、

一般に、当事者間で権利義務を定めた一定の合意内容を証する書面が作成された場合、特段の事情がない限り、当事者は合意内容に拘束される意思を有していたと推認するのが相当である。
 基本合意書と独占交渉権を定めた条項は、原案を債権者側が作成し、債務者ユーエフジェイホールディングスの顧問弁護士による検討、債権者及び債務者ユーエフジェイホールディングスの各担当者による修正等を経て、最終的には債権者及び債務者らの各代表取締役の記名押印によって締結された。法的拘束力を有すると認められる。

とあります。
もし、基本合意書に「この基本合意書は(または独占交渉権については)法的拘束力を持つ」と明確に書いてあるならば、裁判官はわざわざ上記のようなことをウダウダ書く必要はないですよね?「契約書に法的拘束力を持つと書いてあるから法的拘束力を持つに決まってる」でいいはずです。
私は、この決定の主文要旨を見て、「基本合意書には、法的拘束力を持つとも持たないとも書いてなかった」というのが真実ではないかと推測します。法的拘束力を持つと明示してあるんだったら、いくらなんでも、そもそも交渉期間が残っているのに白紙撤回を宣言して、他の銀行との統合を表明する、なんてことはできなんじゃないでしょうか。双方の解釈に食い違いが生じるようなあいまいさが残るものだったからこそ、法廷に持ち込まれたということではないかと思います。(あくまで推測。)
前述の朝日新聞の推測も、この観点からは疑わしくなってきます。
もし、基本合意書に「両者は合併する」と明記してあるのだとすると、「(UFJが)破談を恐れて基本合意書に法的拘束力を仕込んだ」という推測もアリだと思いますが、さすがにそれはないんじゃないでしょうか。krpさんおっしゃるように、まだデューデリも済んでないわけですから。
結婚に例えると
「結婚」に例えますと、通常、基本合意書というのは「結婚を前提として付き合ってください」ということであって、「婚約」ではないです。
ステディに付き合ってる間に、「この人と一生暮らしていけるだろうか」と、いろいろな観点から「デューデリ」するわけで、「婚約」にあたるのは「合併契約書」(商法408条1項前段)ということになるかと思います。
合併承認のための株主総会(商法408条1項後段)を開催するのが「両親にも会ってくれないか」。(・・・ちょっと苦しいか・・・。「結納」?)
で、(債権者保護手続等を経て)本当に合併作業を行うのが「結婚」。
image002.gif
住友信託は、「ステディに付き合うっていったのに、他の男と付き合うなんて」ということで裁判所に訴えたはずであって、「結婚してくれなかった」から訴えたわけじゃないですよね?(気持ち的にはそうであったとしても、法律的には。)
デューデリも済んでない(つまり、どんな不良債権等の爆弾が隠されているかわからない)信託銀行と法的拘束力のある合併契約を結んでしまったんだとしたら、住友信託の経営陣が正当な注意義務を欠いていると言わざるを得ないし株主からも訴えられるかも知れない。
(つきあったこともないのにいきなり「婚約」するのは「軽すぎ」。)
さすがにそれはないとすると、基本合意書に書かれていた内容は、「婚約」ではなく、あくまで「結婚を前提にしばらくおつきあいしましょう」という内容ではないかと推測されます。
もし仮に、基本合意書に「両社は合併する」と明記してあったとするなら、逆に住友信託から破談にするときには、「あの基本合意書には法的拘束力があるなんて書いてなかった」という主張をしたはずではないかと思います。(仮にそうだとしたら、住信、ちょっとズルいね。)
逆に、もし「あくまでステディな交渉」と書いてあるだけなら、「UFJが焦って法的拘束力があるものに」という推測は意味がないです。(独占交渉権を法的拘束力があるものにしても、「必ず結婚してもらえる」わけではないので。「それもわからないくらい焦ってた」というのはないとして、ですが。)
ちなみに、昨日、弁護士さんと会ったので、おとといのエントリーで疑問として出てきた「仮処分の効力はいつまでということになるんでしょうか?」というのを聞いてみたら、「主文の詳細が報道ではわからないので何とも言えないが、当然、基本合意書にある期間まででしょう。」とのご意見でした。
そうであれば、基本合意書の期間を過ぎれば、UFJ信託もMTFGに合流できる、ということになりますし、この仮処分は「他の男とは結婚させない」という拘束ではなく、単なる時間の引き延ばしにすぎない、ということになります。
(ではまた。)

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PayPal集団訴訟の和解金がもらえる・・・

PayPalの集団訴訟の和解金の支払いのメールが来ました。(メールはあとに添付。)
internet.comの2004年6月16日付の記事「PayPal、集団代表訴訟で和解金支払いに合意」によると

eBay 傘下のオンライン決済サービス会社 PayPal が、顧客から口座のトラブルで訴えられていた件で、同社は和解金を支払うことで合意したと発表した。
これは2002年3月に、顧客3人が起こした集団代表訴訟で、PayPal の手違いで口座を凍結または預金を引き落とされたと主張するものだ。(中略)
PayPal は14日、同訴訟に関して、顧客に和解金を支払うことで仮の合意に達したことを明らかにした。ただし、原告のいずれの主張も認めたわけではない。(中略)
和解条件のもと、PayPal は合計925万ドルにのぼる和解費用の中から、弁護士費用を差し引いた分を該当顧客に支払う。Pires 氏によると、原告側の弁護人には弁護費用として330万ドル、プラス諸経費13万5000ドルを支払うという。和解金の支払い対象となるのは、1999年10月1日から2004年1月31日の間に PayPal で口座を開設したすべての顧客。

とのこと。
顧客は、4500万人もいるそうですが、そのほとんどにこのメールを送ってるんでしょうね。ご苦労様です・・・。
送られてきたメール
以下、メールですが:

From: PayPal <settlement@paypal.com>
To: “Tetsuya Isozaki” < ****@tez.com>
Date: 28 Jul 2004 07:51:34 -0000
Subject: Notice of Pendency of Class Action and Proposed Settlement
Dear Tetsuya Isozaki,
IF YOU OPENED A PAYPAL ACCOUNT BETWEEN OCTOBER 1999 AND JANUARY 2004, YOU MAY BE ENTITLED TO A PAYMENT FROM A CLASS ACTION SETTLEMENT.

いきなりフィッシング詐欺っぽい出だしで身構えてしまいますが、名前まで知っているというのは(もし詐欺だとすると)かなり凝ってます。

PLEASE READ THIS NOTICE CAREFULLY.
UNITED STATES DISTRICT COURT
NORTHERN DISTRICT OF CALIFORNIA
SAN JOSE DIVISION
In re PayPal litigation
Case No. CV-02-01227-JF (PVT)

「In re」は「〜に関して」。

NOTICE OF PENDENCY OF CLASS ACTION AND PROPOSED SETTLEMENT
1. WHY DID I GET THIS NOTICE?
You have been sent this Notice because the records of PayPal, Inc. indicate you are a current or former PayPal account holder. This means you may be eligible to receive a payment from the proposed class action settlement in the lawsuit In re PayPal Litigation, Case No. 02 1227 JF PVT, pending in the United States District Court for the Northern District of California in San Jose. This Notice provides a summary of the terms of the proposed settlement. It also explains the lawsuit, your legal rights under the settlement, what benefits are available to you under the settlement, and how to get them.

私は(もちろん、というか)集団訴訟に係わったことはないので、自分がいつの間にか原告側だったというのは不思議な気持ちですね。
「あなたの知らないハワイの大富豪の叔父さんが亡くなられて、あなたに遺産を残しました」と、いきなり弁護士が訪ねてきたような気分・・・。(タダでお金がもらえるというのは、ほんのちょっとワクワク・・・。)

2. WHAT IS A CLASS ACTION?
In a class action, one or more people, called Class Representatives (in this case Roberta Toher and Jeffrey Resnick), sue on behalf of people who have similar claims. All of these people are members of the Class. One court resolves the issues for all Class Members, except for those who exclude themselves from the Class. United States District Judge Jeremy Fogel is in charge of this class action.

「class action」は、通常、集団代表訴訟とか集団訴訟と翻訳されますが、「class」は、集団とか代表というより、文字通り、オブジェクト指向プログラミングの「クラス」の概念の方がぴったりあてはまると思います。
つまり、一定の性質を持つ「抽象的な集合」が企業等を訴えるのが「class action」。私は、そのクラスの「インスタンス」に該当しうるわけですね。
以下、全文は長いので追記の方に書きます。ご興味ある方はお読みください。↓

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UFJの統合交渉禁止の仮処分

出ましたね。
http://www.sankei.co.jp/news/040727/kei086.htm

 UFJ信託銀行の売却を白紙撤回したのは不当だとして、住友信託銀行がUFJグループと三菱東京フィナンシャル・グループとの経営統合交渉の差し止めを求めた仮処分申請で、東京地裁の鬼沢友直裁判長は27日、申請を認め交渉を禁じる決定を出した。
 決定理由で鬼沢裁判長は「5月にUFJと住友信託側の間で結んだ独占交渉権に関する基本合意には法的拘束力がある」と判断。「UFJが第三者と統合交渉した場合、住友信託側に著しい損害や差し迫る危険が生じることは明らか」との判断を示した。(中略)
UFJは直ちに異議を申し立て、命令が確定するまで統合交渉を継続するとみられる。

ちなみに、鬼沢友直裁判官は、週刊文春に対し田中真紀子氏の長女の記事を差し止める仮処分を決定した裁判官として有名な方。
(ちなみに、田中真紀子氏の長女のケースでは、文春側の保全異議を東京地裁が却下決定。その後、東京高裁ではこの却下決定が取り消されています。)
興味あるのは、この仮処分がアリだとして、いつまで交渉が禁止されるのか、というところ。
基本合意書には必ず「exclusiveな交渉期間はいつまで」と書いてあるはず。実際に合意書にどう書かれているのかは存じませんが、例えばそれが7月末までだったとして、仮処分の効力はいつまでということになっているんでしょうか?
もし、基本合意書に定めた期間(だけ)は他と交渉しちゃだめよ、ということなら、この基本合意書が信託銀行部分だけということも合わせて考えると、あまり実効性はないような気もします。(グループ全体の統合の話はどんどん進められるわけですので。)
exclusiveな交渉期間の間に「浮気」しちゃったから、そのexclusiveな期間を超えてずっと交渉しないといけない、というのも、それはそれで酷かと。
(ではまた。)

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浮動株指数と株式の流動性

先週末に、東証が浮動株指数の導入について、そのやり方を決定して発表しました。
浮動株指数の導入について(東京証券取引所)
http://www.tse.or.jp/news/200407/040723_b.html
浮動株指数の導入について
http://www.tse.or.jp/news/200407/040723_b01.pdf
今週号と先週号(7.31号、7.24号)の週刊ダイヤモンドでUFJ総研の山崎元氏がこの浮動株指数への変更時の危険性について述べてらっしゃいます。タイミング的に、この先週末の東証の発表を読まれる前のコメントだと思いますが、大変参考になりますので、ご興味のある方はお読みいただければと思います。
このコラムによると、

2000年4月の日経平均の銘柄入れ替えで、日経平均連動のパッシブ運用資金(日経平均連動投信など)が小さく見積もっても資金額の10%以上、入れ替えが要因の損を被った。この関連取引では、証券会社の自己売買部門が、業界全体で2000億円程度の利益を上げたと言われている。

とのこと。
この日経平均の銘柄入れ替えは大きなバッシングを受けましたので、今回の東証の指数の変更ではパブリックコメントなども受け入れて、以下のように、変更を三段階に分けて影響を分散させようとしています。
image001.jpg
(出所:東京証券取引所ホームページ)

(3段階の移行に加え、当該2指数の利用で更に多様なタイミングで分散の機会が得られることになります。)
(注) TOPIXへの浮動株反映は、例えば、TOPIX浮動株比率が0.70の銘柄であれば、第一回反映で0.90、第二回反映で0.80、最終回反映で0.70と、0.10ずつ3回に分けて段階的に反映(同ホームページのコメント)

ただし、山崎氏によると、

予想されるTOPIXの銘柄入れ替えの影響は、入れ替わる銘柄があのときの日経平均の51%強ほどには大きくない(十数パーセントと予想されている)。だがTOPIXに連動するパッシブ運用資金は、公的年金の資金をはじめとして十数兆円と試算され、たぶん約二兆円だったはずの2000年の日経平均連動資金よりもケタ違いに大きい。

とのこと。3回に分けることで影響度の総額は小さくなるにしても、入れ替えの影響が完全にはぬぐえないという点は同じです。
TOPIXは東証上場の全銘柄が対象ですので、個別銘柄を見ると、中には1回目2回目のときには大きな入れ替えの対象にならないものでも、2回目の後にTOBや株主同士の合併のような要因で固定株比率が大きく変わり、結局最後の1回の取引にドーンと売り買いの圧力が大きくかかることも考えられますので。
なぜ浮動株比率に変更するか
なぜ、浮動株比率に変更するかというと、株価指数自体が株価に影響を与えてしまう「再帰性」を排除するため、と言えます。
下記のように、浮動株の比率が多い企業と少ない企業が両方とも時価総額に応じて株価指数に組み入れられていれば、当然、(A)のような浮動株比率の低い企業の方が需給バランスはキツくなる。結果として株価があがると、この企業の時価総額も上がるので、新たに指数連動のパッシブ運用に投入される資金は、ますます大きな比率で(A)株を保有しなければならず、ますます買いが入って株価が上がり・・・というポジティブ・フィードバックを繰り返すことになります。
image003.gif
山崎氏によると、

有名な例では、1999年から2000年前半にかけてのネットバブルの頃のソフトバンクや光通信の株でこのようなことが起こった。

とのこと。
分割は考慮しなくていいか?
つい最近も似たようなことがありましたね。はい、ライブドア等の大型分割ラッシュです。
株式分割した子株が流通する前に、親株に大口の需要が発生すると、需給バランスから親株の価格が大きく跳ね上がってしまうわけです。
上記の東証の資料「浮動株指数の導入について」に、この浮動株比率の決定方法などの詳細が記載されてますが、株式分割については触れられてないようです。
分割で子株が流通するまでというのは「長期固定」というよりはまさに「短期」の出来事なわけですが、子株は流通するまでは「固定株」の中に臨時に入れておかないと、同じ理由で需給バランスに大きな影響を与えるのではないかと思います。
・・・というようなことを考え始めると、実は、浮動株比率というのは、文字どおり、非常にフワフワした概念だということがわかります。大株主に名を連ねている会社の持株も、実は保有株を貸株などに回せば、実質的な流動性はあるかも知れませんし、そもそも昔のように、本当の意味で長期に安定株主になってくれるところは非常に減ってきているわけですから、本当の意味で何が「浮動」なのかはよくわかりません。
アマゾン河に入る牛の群れ
しかし、パッシブ運用資金という「手の内をすべてさらけ出しちゃった」資金がTOPIX関連だけでも十数兆円もあるというのは、なんだか、牛の群れがピラニアのいるアマゾン河にトコトコ歩いて入っていくのを見るようですね。
驚くことに、オンライン証券によっては顧客のパフォーマンス合計が日経平均などの株価指数をほとんど常に超えているようです。プロでも株価指数を上回るパフォーマンスを出すのは難しいと言われてますが、プロかどうかというより、「図体の大きさと小回りがどの程度効くかどうか」「手の内が読まれているかどうか」の方が、勝敗には大きく影響するということでしょう。
上述のとおり、株式市場は経済学の教科書に出てくるような「フリクション・ゼロ」の完全市場ではなく、流動性(liquidity)が有限で銘柄が多数ある「アマゾンのようなところ」といったほうが実態に近いですし、株式売買は将棋や囲碁のような完全情報ゲームではなく、ポーカーのように手札をいかに悟られないかが勝負の不完全情報ゲームですので。
(ではまた。)

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個人情報保護法でディストピア的未来は防げるか

日本では来年4月から個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)が本格的に施行されるので、利用規約や約款の変更や顧客の情報管理の改善などの対応に追われている企業さんも多いのではないかと思います。
5000名超の個人情報を持っている企業はこの法律に縛られることになります。(令第2条)
そんな中、伊藤穣一さんのblogで紹介されていた、アメリカ自由人権協会(ACLU = American Civil Liberties Union)のフラッシュ。
http://www.aclu.org/pizza/index.html?orgid=EA071904&MX=1414&H=1
いやーおもしろい。また、こういうことにならないように大企業や政府などの行動について監視していくことも必要だと思いますが、個人情報保護法のように、かなり明確に個人情報の保護について規定した法律ができた場合に、上記のフラッシュのピザ屋のシステムのようなものが民間企業で作られるような未来社会になるのかというと、どうなんでしょうか。
(よく存じませんが)、アメリカでの個人情報保護に関する法令とその運用状況はどんな感じなんでしょう?大手のピザチェーンがこういうシステムを適法に(または違法だけどバレずに)作れる可能性がまだ残されている状況なんでしょうか。
例えば、英語のスパムメールは毎日山ほど来るけど、日本語のスパムメールって、ほとんど来ないですよね?日本の規制の方が(良くも悪くも)「進んで」るってことありますでしょうか?
(本日はこのへんで。)
参考URL:
特定電子メールの送信の適正化等に関する法律の概要(総務省)
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/top/meiwaku.html
個人情報の保護に関する法律(内閣府の解説)
http://www5.cao.go.jp/seikatsu/kojin/
個人情報の保護に関する法律(電子政府版。7月25日現在、来年4月施行部分は載っていない。)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H15/H15HO057.html
個人情報の保護に関する法律施行令
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H15/H15SE507.html
行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S63/S63HO095.html
行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律施行令
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H01/H01SE260.html
警察の保有する電子計算機処理に係る個人情報の取扱いに関する規則
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H02/H02F30301000002.html

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オブジェクト指向な社会とコンプライアンスの意味

本日、企業におけるコンプライアンスについての弁護士さんのお話を聞いていたら、
「営業部門の強い会社などでコンプラ部門の人と話をしていると、よく『我々コンプラ部門はブレーキ』『営業部門が暴走しがちなので、我々が時々ブレーキをかけないと』というような発言が聞かれるが、コンプライアンスや法令を遵守するという心構えは『ブレーキ』という機能として捉えられるべきではない。コンプラとは企業の底辺にあるべきもっと「あたりまえ」の活動であって、社員の普通の活動の中にとけこんでいなければならない。」
ということをおっしゃってました。
実は、私も過去何度かこのblogで、コンプラとかガバナンスの機能を「ブレーキ」に例えてきたんですが、

「企業統治とアクセル、ブレーキ」「監査役にはどんな要件が必要とされるのか」、等

私は、ブレーキという機能は、単に「足をひっぱる」という機能ではなく「より速く走るために必要なインフラ」なんだということが言いたかったので、上記の弁護士さんと趣旨は同じなのではありますが、そもそも企業としては、全社員に「インフラ」としてコンプラ意識が行き渡っていた方が理想なのは間違いありません。
つまり、「ボケとツッコミ」というような対峙する機能というよりは、企業の機能の一番底辺にある「物理層」のすぐ上くらいに「コンプラ層」があるというくらい、基本的・インフラ的な概念であるべきである、というようなことかと思います。
なぜ「信用」が大切なのか
これは、「商売で一番大切なのは『信用』でっせ」
ということにも関連するかと思います。
信用とは何か。というと、信用とは「分業を支える基礎概念」であり、プリンシパルがエージェントに関して「思考停止」できるための条件なわけです。
(ご参考:http://www.tez.com/blog/archives/000089.htmlなど)
y=f(x)
という関数があるとして、「f」がお金を払うと食べられる餃子を返す関数かと思っていたら生ゴミ餃子が値として返ってきたり、安全な自動車を返す関数かと思ったら炎上するトラックという値を返してきたり、ということだと、「f」は「信用できない」わけです。
「オブジェクト指向な社会」で、「使ってもらえる関数やライブラリ」になるためには、「いつも正しく動作する」ことが絶対条件であり、コンプライアンス態勢というのは、「ときどきはブレーキもかけます」というようなものじゃなくて、法令や契約、仕様等といったものに従っ(complyし)て、常に正しく作動しているものでないと困るわけですね。
「信用」されない企業は使ってもらえないし、使ってもらえない企業は儲からないだけじゃなくて、社会に存在する意味がないわけですから。
そういう意味で「ブレーキ」という例えはミスリーディングだったかも知れないな、と、ちょっと反省した次第です。もちろん、なかなかそう理想的どおりにはいかないので、独立してコンプラを考える部門とかガバナンスを行う機能が必要になるわけですけどね。
(ではまた。)

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ライブドア証券株主総会公告

本日の日経16面に、ライブドア証券株式会社の「臨時株主総会招集のための基準日設定公告」が載ってます。(なにを決議するんでしょう?)
さらっと見る限り、新聞記事やプレスリリース等も見あたらないですが。
社名がすでに変わっているので、定款変更(特別決議)のための株主総会は(証券会社は必ず3月決算なのでおそらく6月の定時株主総会で)済んでいるのでしょうから、目的変更や取締役の追加でもなさそうです。
ライブドア証券は未公開企業なので、株式に譲渡制限がついている可能性大。とすると、資本増強のための増資あたりでしょうか。(商法280条ノ5ノ2で譲渡制限株式の場合、第三者割当増資をするには株主総会の特別決議が必要。)
証券会社は、証券取引法第五十二条第一項に規定する「自己資本規制比率」(自己資本比率、ではない)を一定の比率に保たないといけないのですが、

証券取引法 第五十二条
 証券会社は、資本、準備金その他の内閣府令で定めるものの額の合計額から固定資産その他の内閣府令で定めるものの額の合計額を控除した額の、保有する有価証券の価格の変動その他の理由により発生し得る危険に対応する額として内閣府令で定めるものの合計額に対する比率(以下「自己資本規制比率」という。)を算出し、毎月末及び内閣府令で定める場合に、内閣総理大臣に届け出なければならない。
2  証券会社は、自己資本規制比率が百二十パーセントを下回ることのないようにしなければならない。

140%を下回ると金融庁や東証に届出や報告が必要になりますので、だいたい200%くらいまで下がってくると警戒信号です。
オンライン証券をやりはじめると、設備投資をすると分子の自己資本から設備の額が控除され、オペレーション費用が膨らむことになると分母の「基礎的リスク相当額」が増加し、個人の信用取引が増えると同じく分母の「取引先リスク相当額」が増加するので、自己資本規制比率は下がる可能性があります。
ただ、下記の東証発表の自己資本規制比率一覧によると、今年3月末の日本グローバル証券の自己資本規制比率は388.4%。すぐに資本増強しないといけないかどうかは、これだけからはちょっとわかりません。
うーん。なにを決議するんでしょうか。
(とりあえず、本日はこれにて。)
(参考)
自己資本規制比率  〜証券会社の財務の健全性を測る指標〜(東京証券取引所)
http://www.tse.or.jp/guide/member/shihon.html
総合取引参加者の自己資本規制比率(東証発表:平成16年3月末)
http://www.tse.or.jp/guide/member/jiko.pdf
直前期決算公告
http://ir.nikkei.co.jp/data/pdf/20040626/04065385.pdf
証券会社の自己資本規制に関する内閣府令
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H13/H13F10001000023.html

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法律中心主義の税務と「宗教改革」

Krpさんが、「国税庁関係者の本は信じてはいけないの?」で、パチンコ機器メーカー大手「平和」(群馬県桐生市)の元会長への追徴課税に関する最高裁判決を紹介されています。
元会長は、追徴課税されたことを不服とし、「国税当局者が編者に名を連ねた解説書に『個人から法人への無利子融資は課税されない』との見解が記載されていた」と主張して、国税当局を相手に課税処分の取り消しを求めていましたが、最高裁第三小法廷は二審での過少申告加算税計約34億円の課税処分を取り消しを破棄し、元会長側の訴えを退けました。
Krpさんは、「事前にその旨意思表示しないで問答無用に徴税実務を変えてしまうという国税庁のやり方には疑問を感じます。」と、ネガティブなご評価。国税当局が徴税方針をコロコロ変えるのはそれはそれで困りますが、私は、「国税庁関係者の本を信じられない」というのはある意味、いい流れではないかと思います。
税は経理部の仕事から法務部の仕事に
日経ビジネス2004年7月19日号の特集「人気弁護士ランキング」で税務部門第1位になった鳥飼重和弁護士が「税は法務部の仕事になった」という受賞コメントをされてます。

従来、上場企業は税務問題で国税庁などと戦うことはあまりなかった。我々弁護士は、ようやく訴訟を起こすという段階になって関与することが多かったが、最近は国税による税務調査段階から依頼が来るようになった。
更正処分の内容がひどく、法的手段で戦わないと株主に対しても問題になるといった背景があるようだ。(中略)
そこで大事なのは、税法で認められる処理をしたという証拠を残すこと。これは会計でなく、法律知識が必要になる。税は経理部専管ではなく、法務部に関係するものになっている。

とのこと。
今まで、税の実務というのは、「○○税務署の署長まで務められた当社の顧問税理士△△先生が、”おれが税務署とかけあってやるから”とおっしゃってくださってるので安心」てな感じで、課税がオープンなルール(つまり法律)ではなく、特定の「人脈」や「利権」によって左右されていた面が多分にありました。
こうした状況は、16世紀ヨーロッパの宗教改革の流れと似ているかも知れません。宗教改革前には、聖職者が「この免罪符を買えば、あなたも天国にいけます」てなことをやっていたわけですが、宗教革命では、「免罪符を買ったら天国に行けるなんて聖書のどこにも書いてないじゃん」「直接、聖書を読め」ということになったわけです。
今の税に関する状況も、そういう転換点を迎えているかも知れません。つまり「誰が言ったか」ではなく、「直接法律を読んで」「法律としてそう解釈できるかどうか」が重要になってきているのではないかと思います。
宗教改革は、15世紀中盤にグーテンベルグが活版印刷を発明し、聖書が「コモディティ化」して安く大量に普及してきていたことが前提にあったわけですが。現在の税の状況も、インターネットによって、税務関係の法律そのものももちろん、その解釈や判例についても「オープン」になり、無料で情報入手できるようになりつつあります。
オープンな世界では、「マニュアルを嫁」「過去ログを嫁」ってことになるわけですが、情報のオープン化で、税務においても「法律を読め」「判例を読め」という法律中心主義に向かう力が働くのかも知れません。
もちろん、税と法律の両方の感覚を持った弁護士さん税理士さんや法務部部員の方もまだ少ないわけで、急にそちらにドドっと流れがシフトするのも難しいかも知れませんが、まあ、文盲率の高かった宗教改革時に人々に聖書を読ませるのに比べれば、企業が「訴訟になったら勝てるか?」という観点から税務を見るようになる方が、かなりやさしいのではないかとも思います。:-)
(ではまた。)

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