お笑い会計参与制度

ちょっと古い号になりますが、商事法務2005年1月5日号の「『会社法制の現代化に関する要綱案』の基本的な考え方」という新春座談会のテーマの一つとして、新会社法で採用される予定の「会計参与」制度について語られてます。
いやー、商事法務を読んで爆笑したのは初めてですが、これ、もう涙出そうです。
以下、部分的に引用いたしますので、読んでいただければと思います。
(ちなみに、以下、登場された先生方に文句を言ってるのでは全くございませんので、念のため。というか、座談会でこんな話をしゃべらなければならなかった先生方に深く同情いたします。)

武井(一浩 弁護士):今回の要綱案で初めて「会計参与」という提案が出て来ています。この点について、神田先生から少しご説明いただけますでしょうか。

神田(秀樹 東京大学教授):私も、なぜ会計参与という制度が出て来たのかよくわからないのですけれども、ある日突然出てまいりまして、部会の審議を通ってしまったという制度です。

(ここでまず一回、爆笑をお願いいたします。)
神田大先生がよくわからんものが通っちゃうというのは、日本の立法の検討プロセスは大丈夫なんでしょうか?

武井:(略)公開会社にはそもそも会計参与制度というのはそぐわないのだという意見も出されていたようです。この点に関しては、いかがでしょうか。

神田:制度論としてはそういったご意見は正当だと思うのですけれども、従来争ってきた二つの勢力が合意して提出したものですから、ちょっと修正の余地がないというような感じに私は受け止めましたけれども。

要は、公認会計士協会と税理士会がやっと合意に達した制度なので誰もツッコめない、ということですが・・・・ほんとに誰もツッコまなくてよろしいんでしょうか?

武井:西川さん、実際に公開会社で、この会計参与を設置する機運はあるのでしょうか。
西川(元啓 新日本製鐵常任顧問):(略)日本経団連の企画部会で、これを公開会社で採用するところはあるのだろうかと聞いてみましたが、自発的にこれを設けようと言う会社は、当然のことながら一社もありませんでした。(略)
ただ一方で、このような制度が設けられるということになりますと、規制当局から、会計参与設置の要請ないしは慫慂(しょうよう)がなされるのではないかと、そう警戒する声が一部にありましたね。
「変なものができたっちゃなあ……」という気持ちですね。

これだけの識者の方々に、生まれる前から「変なもの」呼ばわりされちゃってるモノが、今後、国会を通っちゃうんですかね?日本の立法府は、それでいいんでしょうか?

森本(滋 京都大学教授):これは妥協の産物ということで仕方のないことなのでしょうが、会計参与の基本的役割がもう一つわからないのです。(以下略)

ご専門家の方にわからないものが、一般国民にわかるんでしょうか?
ちなみに、私にはわかりません。
−−−
これは「会社法制の現代化」についてディスカッションしている座談会なわけですが、
もし、その会社法のまさに対象となる「企業」の内部で新しいルールを作る際に、こうした最高レベルの識者の方々がまったく必要性も感じてもいなければ どう使っていいかイメージもわかないような制度が、一部の部門のわけのわからない都合で通っちゃったとしたら、「ちゃんと仕事してる」とはとても考えてもらえないと思いますし、妥当性監査したらアウトの宣告を下されるお話ではないでしょうか。
そうした企業を規律する法律を作るときには、そういうことが許されるんでしょうか?
「会社法制の現代化」と言いますが、これホントに「現代」のお話なんですかね?
(ではまた。)
参考:
会計参与制度と訴訟対応、ブランディング
https://www.tez.com/blog/archives/000186.html
会計参与制度はビジネスとして成り立つのか?
https://www.tez.com/blog/archives/000185.html

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

ファンドの外国人投資家への課税「強化」、ですって?

「ファンドの外国人投資家への課税強化」についてのあちこちで盛り上がってるようなので、遅ればせながら参戦。
(しかし、こんな投資ファンドの税務というようなマニアックな話でブログ界が盛り上がるとは、半年前には想像もつきませんでしたが・・・。日本のブログ界もなかなかディープになって来ましたねー。)
isologueのスタンスとしては、こういう場合、いきなり「課税強化?ざけんじゃねー!」と叫ぶよりは、まずは「原典」に立ち返って冷静に考えてみたいと思います。
以下、長いので要旨を申し上げておきますと、
「みなさん、本件を新たな課税ととらえてらっしゃるようですが、税法上今でもすでに外国人投資家が払わないといけない(誤解を恐れずに平たく言えば「脱税」してるともいえる)税金を払えと言ってるだけじゃないの?
これを考えた方は「低能」どころか、批判を浴びている株転がし的なファンドを含む事業投資的ファンドへの外国人投資家を中心に、日本が取るべき税金をきっちり確保するとともに、VCをはじめとする一般的な株式投資には比較的影響が出ないようにし、さらに税率も過度に高いものとならないことにするという、なかなかうまい落としどころを考えたもんだと思いますし、これで対日投資が減るというような大げさなもんでもないでしょう。」
ということです。
自民党税制改正大綱
そもそもの発端になった、自民党税制改正大綱(平成16年12月15日)の該当部分は以下の通り。
http://www.jimin.jp/jimin/saishin04/pdf/seisaku-027a.pdf(11ページ参照)

非居住者・外国法人に係る事業譲渡類似株式の譲渡益課税について、次の措置を講ずる。
(1)特殊関係株主等の範囲に、非居住者・外国法人が民法に規定する組合契約その他これに類する契約による組合(外国におけるこれらに類するものを含む。3及び4において「民法組合等」という。)を通じて内国法人の株式等を所有する場合における当該民法組合等の他の組合員を加える。
(2)対象となる株式等の譲渡の範囲に、減資による払戻しを受ける場合等(一定の要件を満たす場合に限る。)における株式等の譲渡等を加える。
(注) 上記の改正は、非居住者は平成18 年分以後の所得税について、外国法人は平成17 年4月1日以後に開始する事業年度の法人税について適用する。

民法組合等の組合員である非居住者・外国法人(以下「外国組合員」という。)が受ける申告納税の対象とされている利益(当該民法組合等が国内で行う事業から生ずるものに限る。)の分配について、次の措置を講ずる。
(1)民法組合等の外国組合員が受けるべき利益の分配については、当該民法組合等の各計算期間の末日の翌日から2月を経過する日(同日前に当該利益の分配が行われた場合には、分配が行われた日)に、20%の税率により源泉徴収を行う。
(2)国内に組合事業以外の事業に係る恒久的施設を有する外国組合員については、一定の要件の下、上記(1)の源泉徴収は行わない。
(3)外国組合員が上記(1)の各計算期間に受けるべき利益の分配に係る支払調書制度の整備を行う。
(4)その他所要の措置を講ずる。
(注) 上記の改正は、平成17 年4月1日以後に開始する計算期間に係る利益の分配について適用する。

これを素直に読むと、自民党もファンドのすべてのキャピタルゲインに課税しようというわけではなくて、非居住者や外国法人等の「申告納税の対象とされている利益」について源泉徴収しようというだけというように読めます。
「申告」というのは、当然、「日本政府への」申告のことでしょう。では、外国法人等は、どのような場合に(今でも既に)日本で納税しなきゃいけないのでしょうか。
今でも外国法人等が日本で納税しなければいけない場合とは
税法上の原則では、日本に支店等のない外国法人等は株式の譲渡益には課税されません。そういうことすると、それこそ海外からの日本への投資が減っちゃいますので。
今回の改正でも、投資先企業の25%までの持分を持っているベンチャーキャピタル等が株を売却するような場合には、源泉徴収の対象にはならないと解されるわけです。
ただし、以下の条文のように25%以上の株式を保有している内国法人の株が譲渡された場合には、(今回の自民党税制改正大綱で新たに決まったことではなく、「今でも既に」)、外国法人や非居住者であっても、確定申告して納税しなきゃいけない義務があります。
つまり、ちょっとした株の譲渡じゃなくて、25%も株を持ってるような場合には、そりゃあなた「日本国内で(自ら)やってた」事業を譲渡したのと同じでしょ?、
もしそうなら、それは「日本で儲けたお金」=国内源泉所得だから、日本に税金払うのはあたりまえでしょ?、という趣旨です。

(恒久的施設を有しない外国法人の課税所得)
法人税法施行令第百八十七条
法第百四十一条第四号(外国法人に係る法人税の課税標準)に規定する政令で定める国内源泉所得は、次に掲げる所得とする。(中略)
三 内国法人の発行する株券(株券の発行がない株式及び第十一条第一号(有価証券に準ずるものの範囲)に掲げる端数の部分並びに株式の引受けによる権利及び新株の引受権を含む。)その他内国法人の出資者の持分(特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律等の一部を改正する法律第一条(特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律の一部改正)の規定による改正前の特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律第二条第二項(定義)に規定する特定目的会社の出資者の持分を除く。以下この条において「株券等」という。)の譲渡による所得で次に掲げるもの
イ 同一銘柄の内国法人の株券等の買集めをし、その所有者である地位を利用して、当該株券等をその内国法人若しくはその特殊関係者に対し、又はこれらの者若しくはその依頼する者のあつせんにより売却することによる所得
ロ 内国法人の特殊関係株主等である外国法人が行うその内国法人の株券等の譲渡による所得
(中略)
2 前項第三号イに規定する株券等の買集めとは、証券取引所又は証券業協会がその会員(証券取引法第二条第十九項(定義)に規定する取引参加者を含む。)に対し特定の銘柄の株式につき価格の変動その他売買状況等に異常な動きをもたらす基因となると認められる相当数の株式の買集めがあり、又はその疑いがあるものとしてその売買内容等につき報告又は資料の提出を求めた場合における買集めその他これに類する買集めをいう。
3 第一項第三号イに規定する特殊関係者とは、同号イの内国法人の役員又は主要な株主等(同号イに規定する株券等の買集めをした者から当該株券等を取得することによりその内国法人の主要な株主等となることとなる者を含む。)、これらの者の親族、これらの者の支配する法人、その内国法人の主要な取引先その他その内国法人とこれらに準ずる特殊の関係のある者をいう。
4 第一項第三号ロに規定する特殊関係株主等とは、同号ロの内国法人の株主等及び当該株主等と第四条(同族関係者の範囲)に規定する特殊の関係その他これに準ずる関係のある者をいう。
5 第一項第三号ロに規定する株券等の譲渡は、次の各号に掲げる要件を満たす場合の同項第三号ロの外国法人の当該譲渡の日の属する事業年度(以下この項において「譲渡事業年度」という。)における第二号に規定する株券等の譲渡に限るものとする。
一 譲渡事業年度終了の日以前三年内のいずれかの時において、第一項第三号ロの内国法人の特殊関係株主等がその内国法人の発行済株式の総数又は出資金額の百分の二十五以上に相当する数又は金額の株式又は出資を所有していたこと。
二 譲渡事業年度において、第一項第三号ロの外国法人を含む同号ロの内国法人の特殊関係株主等がその内国法人の発行済株式の総数又は出資金額の百分の五(当該事業年度が一年に満たない場合には、百分の五に当該事業年度の月数を乗じたものを十二で除して計算した割合)以上に相当する数又は金額の株式又は出資の譲渡をしたこと。

6 前項の月数は、暦に従つて計算し、一月に満たない端数を生じたときは、これを一月とする。

所得税法施行令にも同様の条文があります。

(恒久的施設を有しない非居住者の課税所得)
所得税法施行令第二百九十一条
法第百六十四条第一項第四号(非居住者に対する課税の方法)に規定する政令で定める国内源泉所得は、次に掲げる所得とする。
(以下同様。)

ファンドの投資家は一人一人バラバラで考えるべきか?
組合というのは法人ではなく、民法上財産も「共有」(民668条)になってます。税務上も、組合の損益は分配割合に応じて(一人一人バラバラに)各組合員(投資家)の損益に加算されて課税されるわけです。
ここまでは問題ないかと思います。
問題は、上述の「25%」という持株比率を判定する際に、一人一人バラバラに考えるべきなのか、ファンドでまとめて考えるべきなのか、ということ。つまり、上述の「特殊関係株主等」の定義にある、「株主等及び当該株主等と第四条(同族関係者の範囲)に規定する特殊の関係その他これに準ずる関係のある者をいう。」の「これに準ずる関係」という文言について組合員があてはまるかどうかですね。
法人税基本通達だと、

法人税基本通達20-2-10(その他これに準ずる関係のある者の範囲)
2-3-20《その他これに準ずる関係のある者の範囲》は、令第187条第4項《特殊関係株主等の範囲》に規定する「その他これに準ずる関係のある者」の範囲について準用する。

法人税基本通達2-3-20(その他これに準ずる関係のある者の範囲)
 令第119条の2第2項第2号《企業支配株式等の意義》に規定する「その他これに準ずる関係のある者」には、会社以外の法人で令第4条第2項各号及び第3項《特殊関係法人》に規定する特殊の関係のある者が含まれる。したがって、例えば、株主の1人及びこれと令第4条に規定する特殊の関係のある個人又は法人が有する会社以外の法人の出資の金額が当該法人の出資金額の50%を超える金額に相当する場合における当該会社以外の法人はこれに該当する。

という規定がありますが、これらに該当しなければ「特殊関係株主等」に該当しないよ、とは読めません。
個々の投資家がバラバラに投資をしていると考えるのであれば、ファンドとして25%以上を保有していても「個々の投資家一人一人は25%以上は持ってませんから」ということになるのでしょうが、実際にはGPがまとめて投資してるわけですし、株主名簿では「25%の株主」として開示するんでしょうし、(公開株等を保有しているのであれば)大量保有報告書でも「ファンドが25%以上持ってます」と報告してるわけですよね?
であれば、一般のフツーの人の感覚であれば、「個々の投資家一人一人は25%以上は持ってませんから」というのは、むしろ詭弁に聞こえるんじゃないでしょうか。

以上のように、現行の法律の解釈でも、ファンドとして25%以上持っていた株式を譲渡した場合には、そもそも事業譲渡類似株式の譲渡として、外国法人等の利益に課税される可能性もあるかと思います。
ただし、徴税側からすると、確実に組合で合算して考えると読めますとも言いにくい。
ということで、今回の改正案で、そのへんを「明確に」しようということになったのかと考えられます。
外国投資家は既に「脱税」してる?
仮に、上記の通り、現行の法律でも税金を払わなければならないのに、払ってないとしたら、それって「脱税」なわけです。(もうちょっと表現をやわらかくすると、法が予定していなかった形式による、「租税回避」。)
ただ、実際問題、日本の税務当局が海外の投資家のところまで押しかけていって、確定申告しろとか納税しろとか言うというのは相当難しい・・・。
この辺の事情については、大和総研さんの下記のレポートによくまとまっていますので、興味ある方はご一読ください。
2004 年12 月10 日海外用投資ファンドの課税強化 大和総研制度調査部 吉井一洋
http://www.dir.co.jp/research/report/law-research/tax/041210tax.pdf
結局、今回の税制大綱の立場は、
もともと「脱税」が多かった領域にも関わらず、解釈があやふやだったために取るものも取れなかった点について「明確化」し、そもそも(今でも)日本で納税義務があるんだから、払うものは払ってちょうだい。20%の源泉徴収におまけしときますよ。
ということではないかと思われます。
さらに恐ろしいアプローチ
ファンドの歴史の浅い日本では、「組合」をファンド用の「入れもの」として利用するいうのは、まだ法的にいろいろ確定してない要素も多いわけです。(以前申し上げた「投資一任契約の投資顧問業ではないか?」というような話を含め。)
こうした国際的なファンドのストラクチャリングに詳しい某税理士さんは、
「そこまでやるかどうかはともかく、税務当局がGPをPEとみなす手でチャレンジしてくる可能性も否定できない。」
てなことをおっしゃってます。
すなわち、前項までの議論はあくまで、投資家である外国法人等が、「国内に、支店や代理人などの恒久的施設(Permanent Establishment=PE)を持っていない」という前提でのお話。国内にPEがあるとみなされたら、そもそも株の譲渡に係わる所得も、すべて(何%持ってるかとかに関係なく)、法人税の課税対象なわけです。(法人税法第138条�)
このため、国内にいるファンドのGP(業務執行組合員とか無限責任組合員)が、外国投資家に代わって資産を運用している「代理人」(法人税法141条�)とみなされると、25%以下の持株比率であっても、法人税率で課税されてきてしまうことになります。
それよりかは、現在の匿名組合による源泉徴収のように、20%だけの課税で勘弁してもらえた方がいいという考え方もあるんじゃないでしょうか。
税務上のリスクが無い方が投資が呼び込めるのでは?
そう。任意組合等ではなく、匿名組合を使ったスキームの場合には、外国の投資家への利益の分配は、すでに源泉徴収されてるわけです。(租税条約上、一部の国とケースでは別。)
不動産ファンドなんかは匿名組合スキームを使うわけですが、源泉徴収したからといって、海外からの不動産投資の資金の流入が止まる様子なんてまったくないですよね?「こりゃ儲かる」と思えば、税金が多少かかろうがかかるまいがカネは流れ込んでくるわけです。
それに、課税関係が明確に定まっている方が、対内投資が促進されるという考え方もあるんじゃないでしょうか。
少なくとも、私がファンドのGPだったら、税務上のリスクがあるのに、「ま、大丈夫じゃないすか?」とムニャムニャ言って外国投資家に投資してもらうよりは、税務関係が明確になった上で、「これだけ税金は引かれますけど、これ以上税金で持ってかれるリスクは非常に小さいです」、と説明して投資してもらうほうが気持ちがいいなあ。
源泉徴収の事務はめんどくさいといえばめんどくさいですが、それに何十万円もコストがかかるわけでもない。「もともと払わなければならない税金だった」と考えれば、それを源泉徴収したところで税金は変わらないかまたは逆に安くなるわけですから、それで対日投資が減るわけないとも言えます。
以下、大人の事情(笑)によるコメント
・・・と、以上はあくまで理屈のお話でございますが(へらへら)、私、いろんなファンドのみなさまとシガラミがないわけでもございませんので、日本人はやっぱり和を大切にしないといけませんよねぇ、ということで、最後に声を大にして申し上げておきます。
「外国人投資家への課税強化、絶対はんたーい!」

(追記)・・・と言おうかとおもったけど、私はブログでポジショントークはしないことにしているので、やっぱり、信念に従って、「どっちでもいいです」と申し上げておきます。
(ではまた。)<(_ _)>
以下、主要な(私がたまたま見つけた)ウェブ上での議論一覧
isologue:民法上の組合に関する課税強化(国際取引)(2004年12月6日)
https://www.tez.com/blog/archives/000285.html
堀義人氏:「ダボス会議での憂鬱」
http://blog.globis.co.jp/hori/2005/02/post.html
R30氏:「財務省の役人は救いがたい低能である件について」
http://shinta.tea-nifty.com/nikki/2005/02/suck_mof.html
diwase氏:「投資ファンドへの課税」
http://hbslife.exblog.jp/1865227/
Richstyles!:「外資とうまく付き合えない日本」
http://www.richstyles.net/archives/2005/02/eaaaaaeaaaa.html
切込隊長氏:海外ファンドへの課税でそっち業界の人が騒いでいる件について
http://kiri.jblog.org/archives/001373.html
小林雅氏:「海外ファンドへの課税でそっち業界の人が騒いでいる件について」
http://blog.drecom.jp/kobayashimasashi/archive/162
ちなみに、同じグロービスの上述の堀さんの記事では、「ベンチャーキャピタル業界に多大な影響を与える」とおっしゃってるのに、小林さんは、「弊社の運用しているファンドは、ベンチャーキャピタルファンドであるため、今回の海外ファンドの課税に関しては、運用上大きな影響はない。 」とおっしゃってます。
(追加)
Bewaad Institute@Kasumigaseki:「バカには正しくバカと言おう」
http://bewaad.com/20050205.html
現役霞ヶ関官僚の方のブログ。

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

ネット投資家の参入による「新しい生態系」

マクロミルのネット証券取引調査
本日の朝日新聞朝刊12面に「ネット株長者、道険し」という、マクロミルさんの調査による調査結果が載ってました。(以下、磯崎による要約。)

調査は20歳以上の5千人を対象にインターネット上で実施。
「ネット証券を利用している」と答えた人は全体の18.5%で
ネット以外の手段で株式を入手したとする15.1%を上回った。
現在株式を保有していない人のうち43.2%が株式投資に「興味がある」
その理由としては「インターネットなどで手軽に取引できそう」が68.4%で首位。
年代別のネット証券利用者は男性60代が29.8%で首位。
女性では50代の19.6%が最も多く、シニア世代へ浸透。
保有株式が「値上がりした」とする人は25.0%
「値下がりした」は52.3%

分母がネット利用者とはいえ、18.5%がネット証券を利用しているというのは驚きです。
ネット証券大手6社の口座数は、だいたい1社20万人〜50万人程度。相当程度重複があると考えられますが、市場全体で200万人としても、インターネット白書2004による日本のインターネット人口6,284万4千人(2004年2月末時点)との比率から比べると3%程度のはず。18.5%という数字は非常に高いですね。そもそも株に興味がある人が回答してるんでしょうね。同様に、「現在株式を保有していない人のうち43.2%が株式投資に興味がある」というのもかなり多めの数字でしょう。
年代別で3割が60代というのもすごいですね。実際のオンライン証券利用者の分布とはちょっとずれてる気がします。「時間に余裕のある」方が回答されたのかも知れません。
とすると、「値上がりした」25%、「値下がりした」52.3%というのも、全体のパフォーマンスの傾向を示しているのかどうか。当ブログにもみなさんからコメントもいただいてますが、ベンチマークをどうするかでパフォーマンスの評価も変わってきますので、普通のアンケートで聞くのは難しそうですね。少なくともインデックスに対しての上下の話ではないでしょうし、いつ投資したのか等、いろんな要因がからみますので。
株式投資のリスクは縮小したか
週刊ダイヤモンド今週号(2005/2/5号)の山崎元氏のコラム、「株式投資のリスクは縮小したのだろうか」(P63)によると、以下の通り、国内株のリスク(ボラティリティ)はかなり下がっているようです。
株以外の専門家の方のお話でも、最近は先進国のあらゆる市場でスプレッドが小さくなっているようで、そういう意味ではmake senceですね。(以下、磯崎による要約。)

山崎氏は、投資の初心者向けに株式投資のリスクを説明する場合、「投資信託のようによく分散投資されていれば、一年間で最悪三割の損がメド」「数銘柄程度の分散投資であれば、四割くらいの損がメド」と説明してきた。
最悪というのは、平均から2標準偏差マイナスを想定。

TOPIXは歴史的にはリスクが17〜22%くらい。
バブル崩壊前後のデータを含めると20%超。
厚生年金基金連合会の基本ポートフォリオは、国内株式について24%と大きめに推計。

ところが、日立製作所のRiskscopeという分析ソフトの最近のデータだと、TOPIXの推定リスクがやや長期のデータを含む週次モデルで11.85%、最近のデータが中心の日次モデルで推計したものだと、なんと9.56%まで下がってる。

原因として考えられるのは、一つは現在の東証1部の平均PERが20倍前後と納得しやすい水準で、業績も安定してきたこと。
もう一つは、デイトレーダー的な個人投資家の厚みが増したという要素が考えられる。リスクの推計を行っているプロのあいだでは、ネット投資家の参加が多い銘柄と少ない銘柄では値動きの癖、ひいてはリスクの大きさが違うことが指摘されており、これをどう分析に取り込むかが研究テーマになっている。

ちなみに、Riskscopeの週次モデルによる個別銘柄の推定リスクだと、
トヨタ自動車:21.9%
UFJ銀行:32.7%
であり、分散投資よりはリスクが高いが、従来の一銘柄のリスクより小さい。
トヨタ、セブンイレブン、武田薬品工業、3社の1000株づつのポートフォリオだと、15.8%。

山崎氏自身は、ホントに長期的にリスクが低下しているのかにはまだ懐疑的。

(山崎氏、いつの間にか肩書きが「楽天証券経済研究所客員研究員」になってらっしゃいます。)
さて、もしネット投資家の参加により株のボラティリティが下がっているという仮説が本当だとしたら、私が昨日申し上げた「ネット投資家は資本市場の”潤滑油”の役割を果たしているのではないか」というのもあたっていることになり、ネット投資家の行動は、マーケットに対しても、十分、貢献していることになります。
現実の市場の運営を考える際に最も重要なことの一つは「流動性(liquidity)をいかに供給するか」ということですからね。
東京証券取引所は、ニューヨーク証券取引所の「スペシャリスト(よくテレビでNYSE場内に立っているのがうつってる、自己ポジで流動性を供給している業者たち)」や、ナスダックのマーケットメイカー等のように、「制度」として流動性を供給するしくみがない純粋なオークション市場で、伝統的には証券会社の自己ポジションの売買が主な流動性の供給主体となってましたので、(もちろん全体としてはだいたいうまく機能していたわけですが)、細かい部分を拡大してみると、「歪み」が大きいところも、ちょこちょこあったのかも知れませんね。
例え話で恐縮ですが、今まで「大型の肉食獣」しかいなかった世界に「アリさん」達が入ってきて、肉食獣が興味を示さなかったものや その食べ残しも、アリさんがきれいにかたずけてくれる新しい生態系ができあがった、みたいな。
昔、伊藤穣一さんが、
「人類は地球上で一番成功している生きものの一つだが、世界中のアリの体積を足すと、全人類の体積の合計を上回る。つまり、アリの『戦略』は、それはそれで生物として成功しているともいえる。」
というような趣旨のことをおっしゃってました。
アリさんは「分散ネットワーク型」の行動をするので、「おいおいどっちいくんだよ」みたいな方向に歩いていっちゃう(一見無駄な)行動をするアリさんもいるわけですが、そういうあらぬ方向に行ったアリさんが、肉食獣からは見えない岩の陰で思わぬ「大物」を見つけて、仲間に知らせたりするわけです。
一匹のアリさんに注目すると、必ずしも合理的な行動をしてないし、そのアリさんが必ずオイシイ思いをできるとは限らないわけですが、「上長の命令で一糸乱れぬ行進をする」のではなく、各自バラバラに(一見無駄な)行動もするところがアリさんのいいところだし、戦略的に優れているところかも知れません。
(本日はこれにて。)

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

号外:「日本のアルファブロガー、ベストイレブン」に選ばれました

FPNさんの「日本のアルファブロガーを探せ2004、ベストイレブン」に選んでいただきました。
応援していただいたみなさま、ありがとうございました。<(_ _)>
alpha0.gif
選ばれた11のブログが4つの部門に分かれているのですが、わたしゃ「論壇系ブロガー部門」だそうで。(ちょっと、おっかなそうなネーミング。[笑])
詳細はこちらをご覧ください。
http://www.future-planning.net/x/modules/news/article.php?storyid=386
(取り急ぎご報告まで。)

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

「オンライン証券会社の増収は株価の下げ圧力」か?

CNETの情報化社会の航海図で渡辺聡さんが、板倉雄一郎さんの記事
「オンライン証券会社の増収は株価の下げ圧力」
「ゴールドラッシュに例えて」
を引用されて「インターネットが生み出したもの:証券市場の事例」という記事を書かれていらっしゃいますが、「はあ?」って感じですので、ちょっと突っ込ませていただきます。
まず元の板倉雄一郎氏の記事ですが。

何度も書いていることですが、企業にとっての資本コストは、投資家にとっての期待収益率です。(中略)
これまた何度も書いていることですが、企業が価値創造を実現できる根源的な理屈は、すなわち・・・
Economic Profit = (ROIC-WACC=Spread)*IC
当該企業の経済的付加価値=
[投下資本利益率−加重平均資本コスト=スプレッド]*投下資本
です。
(中略)
さてここで、「一取引辺りの手数料」がオンライン証券会社のおかげで、劇的に低下したのは確かですが、それ以上に「取引回数(市場全体では「出来高」)」が上昇したからこそ、オンライン証券会社の増収増益となったわけですよね。
つまり、これは、市場全体として「取引手数料総額が上昇した」ということです。

(と、ここが違っちゃってるわけですが、)

ちなみに、資本コストが上昇したからと言って、ROICが増加するわけでもありませんし、ICはむしろ増やしにくくなるわけですから、株価は(企業が生み出すキャッシュフローに対して相対的に)自ずと下がります。
以上をもっての結論は、
「オンライン証券会社の増収は、株価の下げ圧力」というわけです。

とあります。数式が書いてあるので理論的なようですが、良く読むと途中で論理が飛躍してますよね。
ちなみに、板倉雄一郎氏は「オンライン証券会社の増収は株価の下げ圧力である」とおっしゃってるのに、渡辺氏の記事では、

以上がインターネットの普及で証券市場にどのような影響が出るのかという問いへの回答例となる。勘の良い方であれば、上記がバブルの発生要因にもなりうることはお気づきかと思う。

と、全く逆の結論になってしまってますが。
証券各社の実像
主な証券各社の昨年度の決算数値は以下のようになってます。
image001.gif
これをわかりやすくグラフ化してみると以下の通り。
image002.gif
見て頂いておわかりのとおり、まだオンライン証券大手(下の6社)といっても、収益(売上)は大手証券と比べると象とアリほどの差があります。オンライン証券の収益が多少増えたところで、資本市場全体の「コスト」(=証券会社の売上)が上昇するなんてことはありえないわけです。
株式の委託手数料だけ取ってみても、野村ホールディングスさんのセグメント情報によると、2002年3月期が932億円、2003年3月期が775億円、2004年3月期が1374億円と、大きく変動してますが、この2003年から2004年にかけての変動幅600億円だけで、オンライン証券上位4社の収益の合計に匹敵します。
「売上高が」じゃなくて「売上の変動額が」です。
(「太陽表面のフレア一つが、地球よりはるかにでかい」ってな感じですね。)
合成の誤謬(fallacy of composition)ってやつですが、市場全体のマクロなことを考えるには、「ミクロな論理の積み重ね」や「例え話」でなく、マクロの「実データ」や「総額」でホントにそうなっているのかをチェックする必要があるんじゃないかと思います。
資本のコストは「手数料」だけではない
もう一つ。証券の取引コストというと、普通「手数料」だけを考えてしまうんですが、これも以前申し上げたように、手数料コストというのは投資家から見た証券の取引コストのほんの一部、「氷山の一角」であって、全体のコストとしては、マーケットインパクトとかタイミングコストとかのほうが大きいわけです。
image002.gif
総合証券は、こうした投資家から見た株式の委託手数料以外のセカンダリー市場の収益の他、引受手数料など発行市場でも収益を上げてます。
ちなみに野村証券さんの場合、収益約1兆1千億円に対して、株式委託手数料はその8分の1の1374億円に過ぎません。(これだけでオンライン証券市場全体の売上より多いわけですが。)
こうした証券会社の売上の(ほとんど)全部が、板倉氏のおっしゃる資本市場の「コスト」になってるわけです。
構造変化要因が大きい
というわけで、オンライン証券会社は資本市場全体の中では絶対値がまだ非常に小さいので「伸び幅」で見ると増収増益ということになりますが、その伸びがマクロ経済や株価に影響を与えるなんてのは、おこがましい限りで・・・。
CNETさんの昔の記事「オンライン証券の軒並み最高益に死角はないのか」にもありますとおり、資本市場全体は右上がりで漫然と膨らんでいるわけではなく、激しい競争によって、対面営業の大手や準大手証券の売買シェアがオンライン証券に移り、オンライン証券の中でも中小が淘汰されて大手へのシェア集中が進みつつあるという「構造変化」によるものが大きいかと思います。
オンライン証券では、それまで取引金額に対して1%だった手数料が、同0.1%を切る水準の手数料になってます。今まで対面証券で取引をしていたお客さんがオンライン証券に移って平均売買量が仮に5倍に増えたとしても、手数料が10分の1になれば、市場全体で見てそのお客さんについての「コスト」は2分の1。そういう顧客の移動が急増しているので、オンライン証券の売上げは増えてますが、それは市場全体のコストを押し上げているかというと全く逆で、全体としてはより低コストで「なめらか」な証券執行が行える市場環境が形成されてきているかと思います。
世の中に価格が10倍も違うものってもなかなか無いので、普通の感覚から想像される現象とは違ってくるかも知れません。
オンライン証券の顧客像
板倉氏の書きっぷりを見ても、「オンライン証券の顧客は、投資理論もよくわからずに売買を繰り返しているアホな人たち」という先入観が非常に強くてらっしゃるんじゃないでしょうか。
しかし、実際、私の知ってるオンライン証券の利用者というのは、理系の研究所の方だったり、外資系コンサルティング会社のパートナーだったり、医学部の教授だったり、銀行員だったり、会計士だったり、SEの方だったり、CNETでブログを書いてらっしゃる方だったりと、知的水準が世間の平均より高い方々が多いんじゃないかと思います。
実際、(先日以降分析の深掘りが進んでませんが)、オンライン証券のお客さんの平均パフォーマンスは市場平均よりいいようなんですよね。
少なくともパソコンが使えないと取引ができないわけですし、ネットの様々な情報を見ながら自分の意思で取引をしているわけですから、(もちろん全員が必ず儲かるなんてことは決して申しませんが)、「営業マンに強引に勧められてよくわからないのに取引しちゃう」というような投資家よりは平均パフォーマンスがよくてあたりまえかと思います。
ハイパーネット
ハイパーネット時代の板倉氏に一度お会いしたことがありますが、ハイパーネットは、私が生まれて初めて「こりゃすごい!」と思った情報通信系のビジネスモデルです。間違いなく、当時のハイパーネットのセンスは世界最高水準を行ってたと思いますし、それをあの時代に考えつかれた板倉氏はすごい。
それにつけても、今の日本の資本市場が仮に「あのとき」存在していれば、ハイパーネットが世界に羽ばたけた可能性は非常に大きかったわけで、ハイパーネットの倒産は、その後「日本の資本市場をなんとかせにゃ」という私の(ささやかな)思いにも非常に大きく影響しました。また、オンライン証券は(売上は小さいながらも)その「新しい資本市場」の「潤滑油」として非常に重要な役割を果たしているのではないかと思ってます。
(と、ハイパーネットの経緯をいろいろ考えてみると、板倉氏は、オンライン証券会社(の特定の方)があまりお好きでないということもあるのかも知れませんね。:-)
(ではまた。)
★追記:
板倉雄一郎さんから、直々にコメントいただきました。(コメント欄参照↓)

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

終身雇用的社会と実名ブログ

昨日、「ゲートキーパー業務」という記事で、「米国では個人が金融のニッチに進出している領域について、日本では大企業系が勢力が強いという、”違った生態系”が成立しているなあ」という趣旨のことを申し上げました。
その原因の一つとしては、日本がまだまだ終身雇用的社会だということがあるかも知れません。
また、同じその終身雇用的社会という環境が、「優秀な人材が大企業に抱え込まれていてなかなかベンチャーの世界に飛び込んでこない」とか、「スタートアップ期をすぎて大きな組織に成長していこうというときに、それを引き受ける”プロの経営者”の層がまだ薄い」とか、いろんなところに影響しているのではないかと思います。
先日、某金融機関系VCの方と話をしていて、
「私も以前、ブログのようなものを書いたりしていたのですが、やはり書きたいことがあっても、いろいろしがらみを考えると書けないことが多くて・・・。」
というようなことをおっしゃってました。
なるほどー。あまり大きな組織に勤める人の立場に立ってブログについて考えたことがありませんでしたが、確かに、所属している組織の立場に立って(慎ましめに)考えると、組織が巨大で歴史があるほど、書けないことだらけになっちゃうかも知れませんね。そう考えてみると、日本の実名ブログって、社長ブログとか芸能人ブログとか、「ピン」で売ってる人のブログにほぼ限られるような。
「アメリカでは実名でブログを書いている人が多いのに比べて日本で匿名のブログが多いのはなぜか?」というようなことがよく言われるわけですが、「日本人は自分の意見を言うのが苦手だから」というような理由だけではないかも知れませんね。ましてや、日本人は慎ましいとか、文章力がないとか、オモロイこと考えつく能力がアメリカ人に比べて劣っている、というわけでは全くないでしょう。
2ちゃんねるなんか、客観的に見てコンテンツとして非常におもしろいですよね?才能を感じさせる文章に出会うことも多いし、「慎まし」くもない。
ただし「匿名」なわけです。
「実名では書けないようなヤバいこと書いてます」というならともかく、大企業に勤めていても実名でブログに書いて差し障りのない切り口は実は結構あるんじゃないかと。
特に、「会社は仮の居場所であって、自分は自分の”腕”にあわせて最適な組織やキャリアパスを選ぶんだ」と考えている人にとって、ブログというのは自分の名前を売るための非常に有効なツールなんじゃないかと思います。(っていうか、「ありえねー」ってほどの大チャンス到来!って感じ?)
というわけで、本日は、「終身雇用的社会」が日本人の情報発信の形態にも影響を与えているんじゃないか、てなお話でした。
(ではまた。)

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

ゲートキーパー業務

従来の銀行中心の間接金融では、調達も銀行、審査も銀行、リスクを取るのも銀行と、資金供給に必要なあらゆる機能をすべて銀行自前で行ってきたわけです。
これに対して、資本市場というのは、証券会社が全部1社でやるのではなく、リスクを取るのは投資家、情報はアナリスト、情報サービス会社や格付機関等が提供するなど、いろんな「エージェント」が登場して機能を分担するところが特色。
みなさん、日本は昔から資本主義の国だと思ってらっしゃるかも知れませんが、製造業や流通業はともかく、こと肝心の資本の流れについては、日本はいわば「(世界一成功した)共産主義の国」だったという見方のほうが的を射ているんじゃないでしょうか。おかげで世界一貧富の格差の少ない平等な国になった反面、そうした政府や政府のコントロール下にある銀行を中心とする「計画経済的」なやり方は、複雑化する社会にはついていけなかったわけです。
バブル崩壊後1990年代後半から証券化の進展や証券手数料自由化、プライベートエクイティやベンチャーファイアンスの活発化等、日本も徐々に「資本主義」への転換が進んで来ましたが、例えば、アメリカのプライベートエクイティやベンチャーキャピタルが、個人のキャラに大きく依存した主体であるのに対し、日本の大手のベンチャーキャピタルは軒並み大手金融機関の関連会社であるなど、海外とは違った「生態系」が成立しているのも事実。未だに、個人金融資産の大半は無リスクの「預金」の形で銀行や郵貯を経由して供給されているわけですから、当然といえば当然ではありますが。
ゲートキーパーとは
こうした中で、日本で一般にはあまり知られていない機能の一つとして「ゲートキーパー業務」があるのではないかと思います。これは、年金等の機関投資家に対しどのファンドに投資をすればいいかをアドバイスする機能。
なぜ日本にゲートキーパーがいない(目立たない)のか
(私の仮説ですが)、現在の日本はゲートキーパーが食っていけるほどまだファンドを経由した資金のボリュームが存在しないんでしょう。ゲートキーパーが(ほとんど)存在しないので大規模にファンドに資金が流入しないという「卵とニワトリ」も言えますが、1999年ごろのことを思い返していただければおわかりのように、ただ資金だけが流入しても、投資する対象や資金仲介者であるファンド等の実態が伴わないと「バブル」になるだけです。
やはり、まだ「それだけの市場規模がない」と考える方が適切かなと。
また、今はファンドの数も少ないので、そうしたゲートキーパーのような情報仲介者が必要とされないのかも知れませんね。ファンドのコミュニティの中にいらっしゃる方々はみなさんお知り合いなので。
またちゃんとトラックレコードがある方がやってらっしゃる「ちゃんとした」ファンドは概ね資金集めに成功されているんじゃないかと思いますので、資金集めに苦労しているのは「イケてない」ファンドということなのかも知れません。
「分析するほど情報がない」ということもあるかと。
PEやVCとは違いますが、映画の領域でもハリウッドでは監督やテーマで膨大なデータが存在しているので、どこに投資するとどれくらいのリスクでどのくらいのリターンが見込めそうかということが(もっともらしく)分析できるけど日本の映画市場ではそれができない。
日本でも、スタジオジブリやプロダクション I.G作品なら、「かなりの確率で当たりまっせ」ということが合理的に説明もできると思うのですが、そこはもう「資金はいりまへん」ということで、昔から投資されている方々(TさんとかNさんとかDさんとかMさんとか)しか投資できない世界になっており、そこに資金を導入するビジネスなんぞ成り立たないのとある意味似た構造なのかも知れません。「スタジオジブリの映画に投資したら儲かる可能性大でっせ」なんてことは、しろうとでも言えますしね。
引き続き、ゲートキーパーについては(個人的に)勉強していきたいと思いますが、以下、「ゲートキーパー」等のキーワードでググッたリンクを掲げておきます。
参考文献
「ゲートキーパーの欧米における実態と日本における可能性」
産業基盤整備基金(平成14年3月)
http://www.smrj.go.jp/isif/hoho/jyoho/doc/gate_h13.doc
三菱総研さんの作。107ページの大作で、Web上で入手できるものとしては、これが一番詳しそうです。(「生wordファイル」になります。)
(関連?図表)
http://www.smrj.go.jp/jasmec/venture/report_h13/df/pdf/df03.pdf
エー・アイ・キャピタル株式会社
三菱商事さん系の会社。日本でゲートキーパー業務をうたっている数少ない会社の一つ。
総合商社さんの「立ち位置」は、ゲートキーパー業務には向いてるかも知れませんね。
「本邦初!米パスウエイ社と提携し、プライベートエクイティファンドへの投資一任・助言業務を開始」東京海上アセットマネジメント投信株式会社
http://www.tokiomarine-nichido.co.jp/j0201/pdf/021129.pdf
2002年とちょっと古いリリースですが。
どうも三菱系のプレイヤーが多いような。
資金調達・投資制度についての課題(平成14年4月26日経済産業省)http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g20426lj.pdf
P35「米国との大きな違いとして、ゲートキーパーなどの資金の出し手に対する資金運用の助言・ファンドのパフォーマンスをウォッチして選別する主体の有無が指摘される。」
という部分だけですが。
三菱総合研究所「2004年 日本バイアウト市場関係者ディレクトリー」販売のご案内
http://www.mri.co.jp/REPORT/OTHER/2004/20040617_imu01.htmlここでは、ゲートキーパーとして、前出のエー・アイ・キャピタル、東京海上アセットマネジメント投信のほか、「WestLB証券会社 東京支店」というのがあげられています。
(ディレクトリーの内容は不明。)
米国のベンチャーキャピタル − 通説と本質 −(小野 正人)
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-PaloAlto/8285/usvc2.htm
米国のゲートキーパーについて実名がいくつか掲げられています。
かいせつ「ベンチャーキャピタルファンドなるものについて」(小野 正人)
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-PaloAlto/8285/fund-2.html
G.W. Fenn, N.Liang and S. Prowse, The Economics of the Private Equity Market, Staff Paper of Governors of the Federal Reserve System, 1995」という、ゲートキーパーの実態について触れているFRBのレポートを紹介。
大和総研「年金運用受託者責任とファンド・オブ・ファンズ投資」 資産運用評価本部長 飛田 公治
http://www.dir.co.jp/consulting/report/library/viewpoint/0020.html
ニッセイ基礎研究所「オルタナティブ投資(代替投資)の基礎知識− ヘッジファンド・ブームのかげにリスクあり−」(金融研究部門 中窪 文男)
http://www.nli-research.co.jp/doc/eco0208b.pdf
オルタナティブ投資入門—ヘッジファンドのすべて
山内 英貴 (著) 東洋経済新報社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492653104/
(読んでませんが、Amazonでは☆5つですね。)
運用難時代を切り拓くオルタナティブ投資
大塚 明生 (著), 神谷 智 (著) 金融財政事情研究会
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4322102921/
(これも読んでませんが、同☆5つ。)

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

ニッポン放送株の潜水艦戦(その4)

昨日までは、大和さんが法律に違反しないようにスキームを組んだとしたら、どのようなスキームの流れだったんだろうというのをいろいろ推測してみたわけですが、結論として、新聞等の報道を重ね合わせると、やっぱり、信託受益権を売買したというのが一番つじつまが合うかなあというところに落ち着いてきたわけです。
ニッポン放送が「知らなかった」場合
今度はニッポン放送の側から見たらどうでしょうか。
もし、フジテレビとニッポン放送の相談にもいろいろ乗っている大和さんが、両社に断りもなく黙って鹿内家と8%もの株を売買したのだとしたら、法律に触れるかどうかはともかく、ちょっとナニですよね。
ニッポン放送が「知っていた」場合
一方、大和さんはフジテレビやニッポン放送の意を汲んで、鹿内家から信託受益権なり株なりを譲り受けたとしたら、ニッポン放送の開示としてはどうすれば良かったんでしょうか?
これ、信託にどういう契約が付帯しているかにもよりますが、もし、やはり昨年5月に信託受益権は売買されていて、実質的に鹿内家にニッポン放送株が戻ることはないという契約になっており、もしニッポン放送がそれを知っていたとすると、たとえ株主名簿や大量保有報告書では昨年5月時点では鹿内家が株主になっていたとしても、ニッポン放送は大株主の状況の注記などで、「鹿内家所有の株式は実質的には大和証券SMBCが取得しています」というのを開示しないといけなかったんじゃないでしょうか?
もし鹿内家−大和間の取引の実態を知ってたら、昨年暮れに、あれだけ金融庁や東証から「株主関係についての開示をちゃんと見直せ」と言われて、訂正報告書を山のように出したにもかかわらず、そこについて一言も触れないというのは、許されないんじゃないでしょうか。
だって、コクドの名義になってる株が実質は堤家のものだと西武鉄道が知っていたというのとまったく同じ性質の話ですよね?
昨日までの、「証券会社が守るべき法律の話」というのは、一般の方はほとんどご興味がなかったのではないかと思いますが、「放送局の有価証券報告書の”虚偽”記載」という話になると、マスコミさんもがぜん目がキラーンと光るかも知れません。(結構、株主関係で訂正報告書を提出したマスコミって多いので、お互いにそこの傷には触れないという暗黙の了解ができあがっているかも知れませんが。[苦笑])
以上もあくまでニッポン放送さんが実質的に売買されたのを知っていたらとしたら、のお話ですので念のため。
残された謎
信託受益権を昨年の5月に売買して取得していたとすると、なぜ1月4日に信託契約を解除して大和さんは株券を取得しちゃったんでしょうか。もし、この信託受益権を使ったのが、秘密裏に株式を移動するための手段だったとすると、せっかくここまで引っ張ったんだからTOB発表後まで秘密のままで引っ張るとか、TOBにも信託勘定として応募するとか、もっとこっそりやる方法はあったんじゃないかと思いますが。
1月4日に取得して1月7日に発表というのも未だにナゾですよね。発表を1月7日にしたかったのなら、1月7日に取得して1月7日に発表してもよかったのに、なぜ1月4日だったんでしょうか。
いずれにせよ、今回の一連の流れは、「あちらを立てればこちらが立たず」で、関係者全員が無傷というわけにはいかない感じもします。
「こういう解釈をすれば、全員、ピカピカの真っ白ですよ」というアイデアがありましたら、どなたかご教授いただければ幸いです。
(ではまた。)

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

ニッポン放送株の潜水艦戦(その3)

ひやしあめさんからまたコメントいただきました。

で、勝手な想像ですが、鹿内氏は信託設定する際に、議決権だけは自分に残しておいたんじゃないですかねぇ。

なるほど、これはあるかも知れませんね。
バラバラ譲渡説
つまり、ニッポン放送株に係わる経済的な権利と議決権をバラバラに譲渡した、ということですね。
大量保有報告書によると、昨年5月に鹿内氏は、「保有有価証券を受益者のために管理する目的をもって信託銀行に信託」してますが、このとき(またはこのときから今年の1月4日までのどこかで)、信託受益権(経済的な権利の部分)を大和さんに譲渡。
ただ、その信託と鹿内氏の間で議決権の行使に関しては鹿内氏が行う旨の契約が結ばれていた、と。
で、1月4日にその信託契約を解除したので、受益権を持っている大和さんに株式が交付された、という説ですね。
「保有者」は誰か
ここで大量保有報告書で開示する「保有者」とは誰なのかが問題になるわけですが、報告書のそもそもの目的や条文からして、経済的利益を誰が享受しているかではなく、「議決権を誰が持っているか」に注目して判断するということではないかと思われます。

第二十七条の二十三 第1項�
第一項の保有者には、自己又は他人(仮設人を含む。)の名義をもつて株券等を所有する者(売買その他の契約に基づき株券等の引渡請求権を有する者その他これに準ずる者として政令で定める者を含む。)のほか、次に掲げる者を含むものとする。ただし、第一号に掲げる者については、同号に規定する権限を有することを知つた日において、当該権限を有することを知つた株券(株券に係る権利を表示する第二条第一項第十号の三に掲げる有価証券その他の内閣府令で定める有価証券を含む。以下この項及び次条において同じ。)に限り、保有者となつたものとみなす。
一 金銭の信託契約その他の契約又は法律の規定に基づき、株券の発行者である会社の株主としての議決権を行使することができる権限又は当該議決権の行使について指図を行うことができる権限を有する者(次号に該当する者を除く。)であつて、当該会社の事業活動を支配する目的を有する者
二 投資一任契約(有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律(昭和六十一年法律第七十四号)第二条第四項に規定する投資一任契約をいう。)その他の契約又は法律の規定に基づき、株券等に投資をするのに必要な権限を有する者

投資一任契約でも、実質的な受益者ではなく、運用している人が開示されるわけです。「村上ファンド」でも、実際のリターンは村上ファンドの出資者に行くわけですが、その投資家の名前は開示されません。
その解釈でいいとすると、「経済的権利」だけを譲渡しても、議決権が残っていれば、まだ自分が「保有」してるものとして開示するということになるということでしょうね。
鹿内家はちゃんと昨年5月に信託設定したことを開示してます。ので、本来、そこで「なんのために信託設定したんだ?」「何かニッポン放送の株主構成に大きな変化があるんじゃないのか?」と、いぶかしがらないといけなかったわけですね。
教訓その1:「大株主が株式を信託したら、実質的に譲渡したんじゃないか(これからする気なんじゃないか)と怪しむこと。」
譲渡所得に対する税率は?
さて、譲渡や議決権はそうだったとしても、税金の問題というのもあります。
ご案内のとおり、上場株の譲渡所得の税率は分離課税で10%ですが、株とか不動産以外の普通のモノを譲渡した場合、総合課税になって最高50%もの税率になってきます。
今回、鹿内家から譲渡されたニッポン放送株は100億円を超えますので、税率がどうなるかは極めて重要。税率によって、手取りが何十億円も違ってくるわけですから。
租税特別措置法では、この分離課税となる「株式等」の範囲を以下のように定めています。

租税特別措置法第三十七条の十
3 前二項に規定する株式等とは、次に掲げるもの(外国法人に係るものを含むものとし、ゴルフ場その他の施設の利用に関する権利に類するものとして政令で定める株式又は出資者の持分を除く。)をいう。
一 株式(株式の引受けによる権利、新株の引受権及び新株予約権を含む。)
二 特別の法律により設立された法人の出資者の持分、合名会社、合資会社又は有限会社の社員の持分、法人税法第二条第七号に規定する協同組合等の組合員又は会員の持分その他法人の出資者の持分(第四号に掲げるものを除く。)
三 新株予約権付社債(資産の流動化に関する法律第百十三条の二第一項に規定する転換特定社債及び同法第百十三条の四第一項に規定する新優先出資引受権付特定社債を含む。)
四 協同組織金融機関の優先出資に関する法律(平成五年法律第四十四号)に規定する優先出資(優先出資の引受けによる権利及び優先出資を引き受けることができる権利を含む。)及び資産の流動化に関する法律第二条第五項に規定する優先出資(優先出資の引受けによる権利及び同法第五条第一項第二号ニ(2)に規定する引受権並びに優先出資に類する出資として政令で定めるものを含む。)
五 公社債投資信託以外の証券投資信託(第五項において「株式等証券投資信託」という。)の受益証券及び証券投資信託以外の投資信託で公社債等運用投資信託に該当しないもの(同項において「非公社債等投資信託」という。)の受益証券
六 第八条の二第一項第二号に規定する社債的受益証券以外の特定目的信託の受益証券

今回の信託は、これらには該当しないと考えられますので、「じゃ、半分は税金でもってかれちゃうの?」と思うわけですが・・・
所得税法第十三条(信託財産に係る収入及び支出の帰属)で、「信託財産に帰せられる収入及び支出については、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める者がその信託財産を有するものとみなして、この法律の規定を適用する。」と「信託導管理論」に基づく規定がありますが、これが受益権自体の譲渡にも適用されるのかどうか。
土地信託に関する通達
実は、土地に関しては通達が出てまして、信託受益権を譲渡した場合には、その信託の目的物を譲渡したものとみなす、とはっきり書いてあります。

土地信託に関する所得税、法人税並びに相続税及び贈与税の取扱いについて
昭和61年7月9日
http://www.nta.go.jp/category/tutatu/kobetu/houzin/853/00.htm

ところが上場株を信託した信託受益権を譲渡したらどうなるかについては通達が見あたらないんですね。土地なら、信託にしたほうが譲渡の際の登録免許税が安くなるなど明らかなメリットがありますが、上場株の譲渡はそんなにコストのかかるもんじゃないので、わざわざ信託にする人はあまりいないでしょうからね。
土地がそうなら上場株でも同じ扱いのはずじゃないか、という説もあるようですが、通達はあくまで「土地信託」となってますので、そこはリスクはあるわけです。上場株をそのまま譲渡したら明らかに税率は10%なのに、分離課税でもいいけど税率は20%になるよというだけでも、10億円以上手取りが違ってきてしまいますから。
そういえばロンドンに引っ越されてました
そこまで考えて「はっ」と気づきましたが。
以前のエントリーにも書きましたが、鹿内氏は、昨年の5月の報告書を出したときには(確か)もうロンドンに引っ越されていたんですね。イギリスの税法がどうなっているかよく存じませんが、日本にいるより10億円単位で手取りが増えるのであれば、私だってロンドンに1年くらい移住してもいいです。(笑)
うーん。お金持ちの世界はすごい・・・。
上場会社の支配権移動をめぐる信託受益権の活用
ちなみに、もし、大量保有報告書の開示が上記の仮定のとおりでいいとすると、この信託受益権による譲渡のスキームは、国内の法人にはより適用しやすいことになります。
つまり、生の株で譲渡しようと信託で包んでリボンを付けて譲渡しようと、課税される法人税率は変わりませんからね。
信託を使われると、表面上の株主に変化がないので安心していたら、実は、いつの間にか知らない人に実質的な権利が移って買収の準備が進められていた、という恐ろしい事態も考えられるわけです。
同じく、ひやしあめさんのコメントでご紹介いただいたホームページに、「あさひ・狛法律事務所」の川東憲治さんという弁護士の方が「上場会社の支配権移動をめぐる信託受益権の活用」という発表をされていることが載ってます。(2004年5月26日発表)
http://www.alo.jp/practice/practice02_1g.html
偶然のいたずらか?、信託設定が記載された鹿内家の大量保有報告書が提出される前日ですねー。
(偶然なんですかねー?それとも、まさに、この方が担当されたんでしょうか?)
(ではまた。)

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。