リーマンのライブドア株売却の「裏の裏」を読む

本日の日経朝刊11面の記事、「リーマン、ライブドア株、一部売却——大量保有報告書、比率5.88%に」より。

 リーマン・ブラザーズ証券が十七日に関東財務局に提出した大量保有報告書から、同証券グループがライブドアの発行済み株式の一・三八%に相当する八百九十万株を、十日に市場で売却していたことが明らかになった。売却した株はリーマンがライブドアの筆頭株主である堀江貴文社長から十日に借りていた四千六百七十二万株(七・二六%)の一部。売却後の保有比率は五・八八%(三千七百八十二万株)になった。(中略)
 リーマンがライブドア株を市場で売却した狙いは不明だが、市場関係者の間では「借りてきたライブドア株を市場で売ることにより、同社株の下落を狙ったのではないか」との見方も出ている。株価が下落するほど、リーマンがCBを転換して入手できるライブドア株が増える仕組みになっているからだ。

これだけ読むと、単純に「ほらやっぱりMSCBこえー。ライブドア、売りだ売りだー!」と思ってしまうわけですが、昨日のエントリーで証券取引法第二十七条の二十六(特例対象株券等の大量保有者による報告書の提出)の規定をお勉強したよい子のみんなは、「ちょっと待てよ」ですよね?
リーマン・ブラザーズ証券は、外国証券会社ですから、株券等の大量保有の状況の開示に関する内閣府令第十一条(特例対象株券等の保有者である証券会社等の者)第一項第二号に定める外国証券等に該当します。(よね?)
このため、7.26%取得して1.38%売却して5.88%になっただけ(今のところ5%超10%以下)ですから、証取法27条の26(第1項)の規定により、3ヶ月毎の基準日で締めて、その翌月15日(仮にリーマンの基準日が2月末であったとしても、3月15日)までに開示すればOKなはず。
(注:ちなみに、財務局に確認したところ、この「基準日」が各証券会社ごとに何月かは開示されない情報である、とのことです。)
(追記、12:23:
「どらえもん」さんから、

リーマンが売った貸し株は、もともとホリエモンの株なので、リーマンが投資一任勘定を持っていようがいまいが、個人の株として「5日以内の報告義務」という本則が適用されるはずです。

というコメントをいただきました。そうだとしたら素直に開示しただけということになりますが、法令とどう対応するのか確認中。今日は夜まで予定が詰まってますので、確認が遅くなったら済みません。)
しかも、今月末までに5%未満になるまで売ってしまえば、永久に開示しなくていいわけです。(よね?)今、5.88%ですから、あとたった0.88%売るだけです。
かように、義務でないにも関わらず17日にあえてこれを開示したということは、あと0.88%売っちゃうと、開示するチャンスが永久に無くなるので、あえてここで、「リーマン・ブラザーズ証券はライブドア株を売るような行動をするんですよ」ということをアピールしたいからと考えるのが素直ですよね。
では、なぜ「リーマン・ブラザーズ証券はライブドア株を売りますよ」とアピールしたいかというと・・・・それは今後株価がどんどん下がっていけば、MSCBの転換価格を下げられるからと考えるのが素直じゃないすか。(それじゃ、結局、結論同じじゃん!)
と、単純に考えていいもんでしょうか。それとも、巨人の星の星一徹のように、もっと、裏の裏の、さらに裏を考える必要があるんでしょうか?
よく考えると、ライブドアのMSCB発行はまだ発行もされてないわけです。今回のこのニュースによって株価が下落しても、CBの転換ができるわけではないし、CBによってすぐにリーマンが儲かるわけでもない。
仮に、リーマンが本当にライブドアのことを考えて誠実に行動すると仮定すれば、ですね、(爆笑しちゃだめですよ!)、転換社債が発行されてから、転換価額を下げるために株を売り崩すなんてことはありえないわけです。相場操縦の疑いも持たれるわけですし。
ということは、この借株で儲けられるチャンスは今しかない。ここで価格を下げておいて、後で価格が戻すという何らかの(むにゃむにゃ)確信があれば・・・・・・ということがあるかも知れませんね。いえ、1.38%を売却したというのは事実でしょうし、相場操縦のために情報を流したというようなことを申し上げているわけではありませんので悪しからず。
以上、あくまで報道等の情報から考えられる一つの仮説ですのでご注意ください。また、本記事の内容につきましてはよく考えたつもりでおりますが、その内容を私が保証するものではありません。この情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。
また、本サイトのコンテンツは投資勧誘または投資のための情報提供を目的としたものではありませんので、よろしくお願いいたします。
(取り急ぎ。)

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敵艦スクリュー音、未だ無し!(ニッポン放送株:解決編)

durianさんからコメントいただきました。

ロイターのニュースに、投資一任勘定を持って運用している業者に対しては、大量保有報告書の提出に特別ルールが設けられているとの記事がありましたが、本当ですかね。

紹介していただいたのは以下の記事です。
http://charge.biz.yahoo.co.jp/vip/news/rtr/050217/050217_mbiz2396764.html

2005年 2月17日(木) 14時52分
[アングル]村上ファンド保有のニッポン放送株の行方、3月15日か4月15日に判明
鈴木 透編集委員
(中略)
 [東京 17日 ロイター] フジテレビジョン<4676>とライブドア<4753>がニッポン放送<4660>株式の争奪戦を繰り広げる中、ニッポン放送の大株主であるM&Aコンサルティング(村上世彰代表・通称「村上ファンド」)の動向が注目されている。16日に公表された株式大量保有報告書には同社の届出はなく、同社がニッポン放送株式を売却したか否かは、依然として不明のまま。
 投資ファンドに認められている大量保有報告書提出の特別ルールに照らせば、村上ファンドが売却していた場合には、売却割合によって3月15日か4月15日に大量保有報告書が提出され、売却先が判明する。
 2月8日にライブドアが東証の時間外取引でニッポン放送株の29.63%を取得したと発表した時、市場関係者などの多くは、ライブドアにニッポン放送株を売却したのは村上ファンドではないか、との想像を巡らせた。これは、村上ファンドが1月5日現在、ニッポン放送株の18.57%を保有していたからだ。
 しかし、M&Aコンサルティングも村上代表も一貫して、「個別銘柄の売買についてはコメントできない」との姿勢を貫いているため、いまだに村上ファンドがライブドアにニッポン放送株を売却したのか否かは判明していない。M&Aコンサルティング側が明らかにしない以上、事実確認の手段は株式の大量保有報告書に頼らざる得ない。(中略)
 このため、16日に村上ファンドからの届出がなかったことで、村上ファンドはライブドアにニッポン放送株を売却していなかったといった一部報道もされている。
 しかし、M&Aコンサルティングのように投資一任勘定を持ち運用を行っている業者には、大量保有報告書の提出に特別ルールが設けられている。これは、1)保有比率が1%以上変動した場合には、各業者の定める基準日の翌月の15日までに大量保有報告書を提出する、2)2.5%以上変動した場合には、翌月の15日までに大量保有報告書を提出する—というもの。
 このルールに照らした場合、村上ファンドがニッポン放送株を2.5%以上売却していれば、3月15日が大量保有報告書を提出期限に、1%以上であれば村上ファンドの定めている基準日が3、6、9、12月となっているため、4月15日が提出期限となる。

 「16日に大量保有報告書が提出されていないことから村上ファンドはライブドアにニッポン放送株を売却していなかった」との一部報道に対しても、M&Aコンサルティングの関係者は、「3月15日か4月15日を過ぎるまでは、何も言えない」としており、事実が明らかになるまでは、今しばらく時間がかかりそうだ。

どうりで大和証券さんの大量保有報告書も出てないわけですね。てっきり(単純に)「翌月」15日かと勘違いしていました。3ヶ月毎の月末だけで考えればいいわけですね。大変失礼いたしました。<(_ _)>
つまり、TOBの場合に、誰がどれだけ「手札」を持ってるかを悟られたくない場合には、証券会社や投資顧問業者を間にかませるのが手っ取り早いわけですね。「村上ファンド」がL.P.や任意組合から直接投資をせずに、投資顧問業者である「株式会社MACアセットマネジメント」に投資一任契約で一任しているのも、そういうフレキシビリティがあるからかも知れません。
鹿内氏が昨年のうちに信託受益権を大和証券に譲渡していたにもかかわらず、1月7日にプレスリリースしたのは、フジテレビのTOBを成功させるために、「鹿内氏はもう手札を持ってない」ことをアピールするためだったのかも知れませんね。(なぜ1月7日だったのかは、未だによくわかりませんが・・・。鹿内家が大量保有報告書を提出する12日に合わせてもよかったのでは。)
村上ファンドも、今までは、例えば1月5日に株券等保有割合が16.01%→18.57%まで2.56%上がった時も、(2.5%超なので)翌月2月15日までに大量保有報告書を提出すればよかったにもかかわらず、あえて1月13日に開示したんでしょうね。
「ここまで株を握ってるぞ」というのを見せつけておいて、その後、「機関停止!」とスクリューを止め、音を完全に消し去って、今はじーっと海底に潜んでるわけですね。
(うーん。)
以下資料
すみません、証券取引法第二十七条の二十六をよく読みこんでませんでした。(反省)

第二十七条の二十六  証券会社、銀行その他の内閣府令で定める者(第三項に規定する基準日を内閣総理大臣に届け出た者に限る。)が保有する株券等で当該株券等の発行者である会社の事業活動を支配することを保有の目的としないもの(株券等保有割合が内閣府令で定める数を超えた場合及び保有の態様その他の事情を勘案して内閣府令で定める場合を除く。)又は国、地方公共団体その他の内閣府令で定める者(第三項に規定する基準日を内閣総理大臣に届け出た者に限る。)が保有する株券等(以下この条において「特例対象株券等」という。)に係る大量保有報告書は、第二十七条の二十三第一項本文の規定にかかわらず、株券等保有割合が初めて百分の五を超えることとなつた基準日における当該株券等の保有状況に関する事項で内閣府令で定めるものを記載したものを、内閣府令で定めるところにより、当該基準日の属する月の翌月十五日までに、内閣総理大臣に提出しなければならない。
○2  特例対象株券等に係る変更報告書(当該株券等が特例対象株券等以外の株券等になる場合の変更に係るものを除く。)は、第二十七条の二十五第一項本文の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める日までに、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に提出しなければならない。
一  前項の大量保有報告書に係る基準日の後の基準日における株券等保有割合が当該大量保有報告書に記載された株券等保有割合より百分の一以上増加し又は減少した場合その他の当該大量保有報告書に記載すべき重要な事項の変更があつた場合 当該後の基準日の属する月の翌月十五日
二  当該大量保有報告書に係る基準日の属する月の後の月の末日において株券等保有割合が大幅に増加し又は減少した場合として内閣府令で定める基準に該当することとなつた場合 当該末日の属する月の翌月十五日
三  変更報告書に係る基準日の後の基準日における株券等保有割合が当該変更報告書に記載された株券等保有割合より百分の一以上増加し又は減少した場合その他の当該大量保有報告書に記載すべき重要な事項の変更があつた場合 当該後の基準日の属する月の翌月十五日
四  前三号に準ずる場合として内閣府令で定める場合 内閣府令で定める日
○3  前二項の基準日とは、特例対象株券等の保有者が内閣府令で定めるところにより内閣総理大臣に届出をした三月ごとの月の末日をいう。

つまり、証券会社や銀行以外にも、内閣府令(株券等の大量保有の状況の開示に関する内閣府令)で特例となる業者が定められているわけです。

(特例対象株券等の保有者である証券会社等の者)
第十一条  法第二十七条の二十六第一項 に規定する証券会社、銀行その他の内閣府令で定める者は、次に掲げる者とする。
一  証券会社、銀行、信託会社(信託業法 (平成十六年法律第百五十四号)第三条 又は同法第五十三条第一項 の免許を受けたものに限る。)、保険会社、投資信託委託業者、投資顧問業者(有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律 (昭和六十一年法律第七十四号)第二十四条第一項 の認可を受けたものに限る。)、農林中央金庫及び商工組合中央金庫

投資顧問業法の第二十四条第一項の認可を受けたものとは、「投資一任契約」をできる投資顧問業者のことです。
また、特例とならないのは、以下の通り10%以上の場合。

(特例対象株券等から除外される場合の株券等保有割合の基準)
第十二条  法第二十七条の二十六第一項 に規定する内閣府令で定める数は、百分の十とする。

また、「株券等保有割合が大幅に増加し又は減少した場合として内閣府令で定める基準」というのは、以下の通り、第16条で「2.5%」と定められています。

(株券等保有割合が大幅に増加し又は減少した場合として定める基準)
第十六条  法第二十七条の二十六第二項第二号 に規定する内閣府令で定める基準は、株券等保有割合が同条第一項 に規定する大量保有報告書に記載された株券等保有割合より百分の二・五以上増加し又は減少したこととする。

(以 上)

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敵艦スクリュー音、未だ無し!(ニッポン放送株:本日の速報)

本日も、今さっき都内某所でニッポン放送株の大量保有報告書を閲覧。
やはり、16日付けでもニッポン放送の大量保有報告書は提出されてませんでした。
(追記:「解決編」参照。)
窓口のおばさん曰く;
「閲覧ですか?大量保有報告書?ニッポン放送でしょ?EDINETコードは681004だから、それをここの欄に記入してくださいね。」
「(苦笑) やっぱ、ニッポン放送見に来る人多いんですか?お忙しそうですね。」
「そうなのよー。もうそればっかり。『ここに載ってないものがあるんじゃないか?』『今、来たんじゃないか?』とか聞かれてもねえ。機械に入ってるのが全部なのにねえ。
いつになったら終わるのかしらねえ。TOBの期限が3月2日だっけ?そうしたら、ちょっとは落ち着くのかしらねえ。」
とのことです。
いつもはヒマなんでしょうねえ。すみませんねえ、私がブログで紹介したおかげで閲覧しに行った人も2〜3人はいるかも知れませんので。<(_ _)>
おばさんに言ってもしょうがないですが、大量保有報告書をインターネットで開示してくれれば、誰もこんなとこまでわざわざ来ないんですけど。
(ではまた。)

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大量保有報告書、遅れて提出って、それアリ?(その2)

遅れて大量保有報告書を提出した場合の罰則について、bewaad institute@
kasumigasekiさんとminoriさんにトラックバックいただきました。それぞれ、行政の方と実務の方なので、大変興味深いです。
minoriさんのご意見
http://www.minori.com/archives/law/2005/02/filing.html
minoriさんは、遅れただけでは「罰則無い」、というお立場。
実際に、提出でご苦労されたエピソードも紹介されていて非常にためになります。

罰則があった場合、タイムアウトの次の瞬間から隠蔽に走ると思います。法人も個人も。
 「次のタイミングで帳尻を合わせよう」とか、「すぐ売っちゃうから、ま、いいか」とか。
 遅れても正直に提出した者だけが罰される、という矛盾も生じますし。
 かえって市場が不透明になります。

というご意見。

 と、大上段に構えて書いてはみるものの、閲覧できる場所・時間が限定されているのでほんとに投資家のみなさんの役に立っているのかしら、と、つねづね疑問を感じています。

少なくとも、敵対的買収を受ける発行会社側にとっては、ちゃんと開示してもらえないと怖いですね。そうでないと、怖くて株式公開できません。
bewaad institute@kasumigasekiさんのご意見
bewaadさんは原則論的なお立場から説明されてます。
http://bewaad.com/20050217.html#p02
参照されている条文は以下の通り。

証券取引法第百九十八条
次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。(中略)
五  第二十四条第一項若しくは第三項(これらの規定を同条第五項(第二十七条において準用する場合を含む。)及び第二十七条において準用する場合を含む。)若しくは第二十四条第六項(第二十七条において準用する場合を含む。)の規定による有価証券報告書若しくはその添付書類、第二十四条の二第一項(第二十七条において準用する場合を含む。)において準用する第十条第一項の規定による訂正報告書、第二十七条の三第二項(第二十七条の二十二の二第二項において準用する場合を含む。)の規定による公開買付届出書、第二十七条の十一第三項(第二十七条の二十二の二第二項において準用する場合を含む。)の規定による公開買付撤回届出書、第二十七条の十三第二項(第二十七条の二十二の二第二項において準用する場合を含む。)の規定による公開買付報告書、第二十七条の二十三第一項若しくは第二十七条の二十六第一項の規定による大量保有報告書又は第二十七条の二十五第一項若しくは第二十七条の二十六第二項の規定による変更報告書を提出しない者

#6日めに出していなければ、その時点で「提出しない者」になるので、その後提出しても過去の違法は治癒されないと思います。

なるほど、1日でも遅れたら、その時点では「提出しない者」になるというお考えですね。
実際、提出せずに罰せられたケースを解説しているページを紹介されてます。
「東天紅事件 〜証券取引法5%ルールについて〜」
栄光綜合法律事務所 弁護士 池田佳史
http://www.eiko.gr.jp/6topics/topics055.htm

中華レストラン「東天紅」の株式公開買い付け(TOB)をめぐり、発行済み株式の5%を超える同社株を保有しながら大量保有報告書を提出しなかった等の事件で、平成14年11月8日、被告人に対して懲役2年、執行猶予4年、罰金600万円の判決がなされました。
これは証券取引法27条の23に規定する「5%ルール」に違反するもので、同条違反の最高刑は懲役3年以下または300万円以下の罰金となっています(同法198条5号)。
この事件は「5%ルール」違反での刑事事件としては初めてだということです。

ま、実際には、東天紅事件くらい有名でひどいケースでないと実刑ということにはならないんでしょうね。

なお、実際の運用を見ますと、告発の実績もありますが、まずは行政指導で対応がなされている(略)ようです。

元の記事がオンライン上にないので、新聞の方を当たりますと、2003年12月29日読売新聞朝刊27面に記事があります。

武井被告と一族企業、武富士株の保有を7年間報告怠る 309件急きょ提出
(略)
 消費者金融最大手「武富士」(東京都新宿区)の前会長で、電気通信事業法違反で起訴された武井保雄被告(73)(拘置執行停止中)やファミリー企業などが、同社の大株主として義務づけられた「大量保有報告書」の提出を七年間にわたって怠り、関東財務局の厳重注意を受けていたことが分かった。(中略)
 武富士が株式を店頭公開した直後の一九九六年十一月以降、一部親族やファミリー企業が、武富士株を担保に設定して地方銀行やノンバンクなどから繰り返し融資を受けていたのに、武井被告らは報告書を全く提出せず、その保有実態は明らかになっていなかった。
 関東財務局から「証取法違反に当たる」と指摘を受けた武井被告らは、今年八月下旬から先月中旬にかけ、九六年分までさかのぼって膨大な報告書を次々に提出した。遅れて出された報告書を積み上げると約一メートルにもなるという。(中略)
 武井被告らが報告書の提出を怠ったことについて、武富士は「コメントする立場にない」としている。
 
 〈大量保有報告書〉株式の保有状況を一般投資家に公表する報告書。バブル期に仕手集団による株の買い占めが相次いだことを受け、1990年に提出が義務付けられた。

minoriさんのおっしゃるように、実務としては「うっかり」ということもありますから、1日遅れただけで懲役三年というのは勘弁して欲しいところ。(私も、もしなるとしたら、司法や行政の側というよりは、提出者側関係者ということになると思いますので(笑))、悪質でなく軽過失の場合には、ぜひ、ちょっとしかられるくらいで許して頂きたいところです。
ただ、「ゲームのかけひき」として、わざと軽い違反を行う、としたら、ちょっと許せません。
いずれにせよ、期日通りに提出すれば問題ないわけですから、よい子のみんなは、ちゃんと期日までに大量保有報告書を提出しましょうね。
「課徴金ブーム」(笑)なので、「懲役三年」と「厳重注意」の間をとって、例えば「購入金額×5%×提出が遅れた日数/365日」くらいの課徴金を課す、というのも手かも知れません。
(では。)

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大量保有報告書、遅れて提出って、それアリ?

本日コピーしてきたニッポン放送の大量保有報告書をよく見たら、サウスイースタン社、平成17年1月20日と21日が報告義務発生日なのに、提出がどちらも2月8日になってますね。
(追記:2/17、サウスイースタン社が外国の投資顧問業者[株券等の大量保有の状況の開示に関する内閣府令第十一条�(2)]に該当するとしたら、報告期限は後ろに伸びます。社名に「アセットマネジメント」と入ってますので、たぶん該当するんでしょう。
「解決編」参照。以下、そうでないとした場合のお話としてお聞きください。)
つまり、証取法第27条の23に、

大量保有者となつた日から五日(日曜日その他政令で定める休日の日数は、算入しない。第二十七条の二十五第一項において同じ。)以内に、内閣総理大臣に提出しなければならない。

と書いてあるにもかかわらず、3週間弱も経ってから提出されてるわけです。
「第二十七条の二十三」で証取法を検索してみましたが、罰則のところには(もちろん、虚偽記載には罰則がありますが)、提出遅れちゃいましたというのには罰則が無いように見えますが、そうなの?
(追記:トラックバックいただいた内容を、2月17日のエントリー「その2」にまとめました。)
「罰則がないから、遅れて出しちゃえ〜」というんじゃ、困りますね。
(オンラインで見られないので、なおさら迷惑だー。ヽ(`Д´)ノ)
というか、そもそも外国法人等を処罰することは、法的・実務的に可能なのか知らん?
(もしやりたい放題だとしたら、非常にコワイ話ですね・・・)
(追記)これについても、「属地主義」等について、bewaad institute@kasumigasekiさんからトラックバックいただいてます。
(以上)

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艦長、敵艦捕捉不能ですっ!(ニッポン放送株:速報)

すみません、電話があったりして、午前中に出遅れたんですが、霞ヶ関まで大量保有報告書の閲覧にやってきました。
が、結論としては、「Southeastern Asset Management, Inc.」から、1月20日時点で13.25%→11.88%に、1月21日時点で11.88%→10.62%に株券等保有割合が変わった旨の変更報告書が出ているだけで、後はライブドアからの変更報告書しか出てないですね・・・。
よく見ると、このサウスイースタン社も「Inc.」だし、やはりパートナーシップ等で保有している株券は純投資であれば大量保有報告書の開示義務は無いのかしらん?
証券会社の保有株式の開示はどうなってるのかしらん?
この大量保有報告書の提出状況を信じれば、村上ファンドやサウスイースタン社はまだ株を保有しているようにも見えます。
(追記2/17:ナゾの答については、「解決編」を参照のこと。)
閲覧室のおじさんによると、15日までに提出された情報はすべて端末から見られるはず、とのこと。
(そう、紙で提出されたものも、ちゃんと「電子化」されてるんです。なんでインターネットで見れんのじゃ!)
チラ見したところ、まわりのおじさんやおねいさん達(証券会社や記者さん風)もみんな端末でニッポン放送の大量保有報告書を見ていたようです。
−−−
今の状況は、潜水艦戦というかポーカーというかと全く同じですから、手札がどうそろっているかを相手に悟られないようにするのが大原則。あらゆる規制上の網をくぐって、大量保有報告書で開示しなくて済むようにしてるんでしょうか。
大きなナゾが残りますが、取り急ぎ、速報まで。
(追記)
よく考えたら、先週金曜日、休日でした・・・。
また明日、時間があったら行ってみます。
ではまた。

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ニッポン放送株について(ライブドアと大和証券と村上ファンド)

47thさんの「そういえば・・・いろいろ」より。

そろそろアレの大量保有報告書がファイリングされる時期ですねぇ・・・
アメリカなら最近のものはEDGARで見られるのに、EDINETは、まだ紙ベースでもOKというあたりで、NYにいると物理的にアクセスできないのが残念です。

お呼びでありますか?明日、財務局か東証さんあたりで自分が見てくるでありますっ。
( `Д´)ゞビシッ! (©R30氏)
ライブドアさんの2月8日分は昨日(?)開示されてたようですが、売却された方だけじゃなく、奇しくも1月4日の大和証券さんのニッポン放送株8%取得についても、本日15日が期限ですね。(証券会社の特例:ニッポン放送株の潜水艦戦(その2)参照)
信託受益権の説明については、すでに堀江社長の「インサイダー」発言を受けて、大和証券さんが「昨年中に売買したもの」とおっしゃっているようですが、大量保有報告書で何か新しい記述が出てるでしょうか。

実は、もっと興味深いのはMファンド関係の大量保有報告書(変更報告書)ですねぇ・・・
いきなり保有株式数がゼロになってて、売却日と売却金額を付け合せると、あらびっくり・・・なんていうことがあると、楽しそうですねぇ(完全に見物気分)・・・

実際の「票読み」についてはあんまり興味もないし押さえてもいないのですが、ちまたのウワサでは、村上ファンドさんはまだ大半を保有していて、ライブドアさんと足すと、もしかして50%超になるんじゃないかということで、みなさん騒いでらっしゃるんじゃないんでしょうか?
>どなたかお詳しい方がいらっしゃったら、教えていただければ幸いです。
ファンドと短期売買差益規制

ところで、ファンドといえば、トリビアを一つ。
普通の主要株主は6か月以内の売買で差益を得ると、会社に差益の返還請求権が発生するのですが・・・なんと、組合(パートナーシップ)形式ファンドの場合は、10%の判定は背後の投資家単位でやるということで、ファンドがいくら持っていても、それだけでは短期売買差益の問題は出ないんですよねぇ・・・
実は、これについては、Mファンド自身が、金融庁からノー・アクション・レターをとっていたりしますが・・・(照会回答。まあ、これは会社に売り付けをしようとした時に短期売買差益規制が確認しないことを確認しようとしたようですが・・・)。

(追記2005/10/12:上記リンクは、リンク切れ。)
照会:http://www.fsa.go.jp/common/noact/kaitou/032/032_01a.pdf
回答:http://www.fsa.go.jp/common/noact/kaitou/032/032_01b.pdf

げげっ。マジすか?
ちなみに、今年の1月13日に提出されている、いわゆる「村上ファンド」の大量保有報告書の届出は、株式会社MACアセットマネジメント(代表取締役 岡田裕久氏)から出ていて、「取得資金の内訳」は、全額「投資一任契約に基づく顧客資金」となってます。
また、「当該株券等の関する担保契約等の重要な契約」には「SNFE MAC Japan Active Shareholder Fund, L.P.保有株のうち3,064,230株については、株式会社M&Aコンサルティングに貸株を行っている。」とあります。この「SNFE〜, L.P.」というのは、47thさんの参照されている照会のペーパーにも記載されており、パススルーのvehicleですね。
もう一つ、「MAC2000投資事業組合」という日本の民法上の任意組合もあるようです。
居住者と非居住者と、投資家別にvehicleを分けているんでしょうか。イマイチ、どこからどう資金が流れてるのか、これらの資料だけからではわからんですが。
ファンドと大量保有報告
大量保有報告書は、ファンド単位で必要ですよね?(違うのかな?業務執行組合員やGPは、「当該会社の事業活動を支配する」場合には、証取法27条の23�項1号の「金銭の信託契約その他の契約又は法律の規定に基づき、株券の発行者である会社の株主としての議決権の行使について指図を行うことができる権限を有する者」に該当するんじゃないでしょうか。ということは「支配を目的としない場合」には、ファンドでいくら買っても開示しなくてOKなの?)
「村上ファンド」さんは、投資一任契約(証取法27条の23�項2号)に、わざと該当させたりさせなかったりして、潜水艦を浮上させたり沈ませたりしてらっしゃるんでしょうか?
ファンドと事業譲渡類似株式の譲渡
先日の「課税強化」の記事のとおり、「事業譲渡類似株式の譲渡」の25%以上の判定は、組合でまとめて行うことになったわけです。
SPVを使った上場株式の譲渡

そうそう、短期売買差益といえば、文言上は、ライブドアがライブドア・ファイナンス(30%を保有)の株式を誰かに売却するには、TOB手続にのせる必要もないし、短期売買差益の問題も出ないような気がするのは、気のせいかな?(あくまで文言上の話で脱法とかそういう議論はあり得るでしょうけど・・・TosTNeT使うよりはリモートではないかと)・・・まあ、ライブドア・ファイナンスが他に色々と資産を持っていると、売却はしにくいでしょうけど・・・

「ライブドア・パートナーズ」、ですか?
昨年9月末の有価証券報告書の関係会社の状況には社名が載ってないようですし、当然、そういうことをするためのSPVだと思ってました。SPVなので、他に色々と資産を持っているということもないんでしょうね。
なるほど。短期売買差益の問題も出ないわけですね。
堀江社長、「6ヶ月は売ったら売買益を返さないといけないですから」とか言っておいて、パートナーズ株を6ヶ月以内に売却することになったら・・・かぐわしいですねえ。
(ではまた。)

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野村證券、ロスチャイルドと提携

本日の日経一面の記事より。M&A仲介等を強化するそうです。
ロスチャイルドと言えば、ナポレオン軍とイギリス軍の1815年の「ワーテルローの戦い」の時にイギリス軍勝利の情報をいち早くつかみ、証券取引所でイギリス国債をまず売って、周りの人に「ロスチャイルドが売ってるってことはイギリス軍敗北?」思わせて国債を暴落させ、紙くずになったところを買い集めて巨万の富を築いたとされてますが。
(今、日本でやると、証取法159条違反(相場操縦等)などになる可能性があるので、よい子のみんなはマネしないでね。)
ロスチャイルドと聞くと、石造りのお城とかがオフィスって感じがしますが、そういうわけで、いまだに、
情報通信×金融
の領域には大変ご関心がおありだとか。
確か、2000年のイギリスの周波数オークションでも政府側のアドバイザーを務めて、巨万のフィーを得られたと聞いております。(落札額が、4兆円弱でしたからね。)
ぶどう畑もお持ちなので、大きめのディールが決まると、ビンテージもののワインを開けて乾杯されるとか。
わたし、ワインはまったくよくわかりませんが(現在、「神の雫」(週刊モーニング)で勉強中)、シャトー・ラフィット・ロートシルト(Chateau Lafite Rothschild)とかいうやつでしょうか。(違ってたらどなたかご教授ください。)
(ではまた。)

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テレビの将来性、ネットの将来性

一連のライブドア関連記事では、みなさまから非常に多くのトラフィックをいただきまして、ありがとうございました。昨日は、なんと初めて2万人、6万ページビューを超えまして。
「アルファブロガー」(にがわらい)というのは、「毎日20,000もの影響力のある読者に読まれている」ブログを書いてる人とのことなので、やっとその領域に達したと思いたいところですが、単なる一過性の可能性大。
Alexaでも初の10,000位突破。(9,346位) 宮里・北田組は世界1位になったというのに、なんと小さい>オレ。でも、二度と4桁にならなかったら悲しいので、ここにペーストして登頂記念とさせていただきます。
alexa_tez_20050212.gif
しかしアレですね。Google等でキーワード検索すると比較的このブログがひっかかりやすいからなのか、在京キー局各局(もちろん、フジテレビを除く)の方々から、いっせいにライブドアのTOBやMSCBについてのお問い合わせをいただきまして。
改めてブログのパワーを思い知ったというか。そもそも、ネット企業であるライブドアがテレビ局を価値があると思って買いに入っているにも関わらず、そのテレビ局の方々はネットでネタを探しているという構図が、なんだかすごく面白かったです。はい。
(ではまた。)

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「MPO」が野村證券の商標らしい、という件について

「ライブドアのMSCBとMPOについて、ちらっと考えてみた」に、「クロ」さんからコメントいただきました。

MPO(これは野村證券の商標らしいです)

ほんとだ。↓
http://www1.ipdl.ncipi.go.jp/syutsugan/TM_AREA_A.cgi →で、「MPO」を検索。

(111) 【登録番号】 第4816683号
(151) 【登録日】 平成16年(2004)11月12日
(210) 【出願番号】 商願2004−14737
(220) 【出願日】 平成16年(2004)2月19日
    【先願権発生日】 平成16年(2004)2月19日
    【最終処分日】
    【最終処分種別】  
    【出願種別】

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    【商標(検索用)】 MPO
(541) 【標準文字商標】 MPO
(561) 【称呼】 エムピイオオ
(531) 【ウィーン図形分類】

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(732) 【権利者】
    【氏名又は名称】 野村證券株式会社

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    【類似群】 36A01 36A02 36A03 36B01 36B02 36C01 36D01 36E01 36F01 36F02 36H01 36K01 36M01
    【国際分類版表示】 第8版
(500) 【区分数】 1
(511) (512) 【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
36 預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,両替,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定著物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の募集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,割賦購入のあっせん,前払式証票の発行,ガス料金又は電話料金の徴収の代行,有価証券の売買,有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,商品市場における先物取引の受託,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供,骨董品の評価,美術品の評価,宝玉の評価,中古自動車の評価,企業の信用に関する調査,慈善のための募金,紙幣・硬貨計算機の貸与,現金支払機・現金自動預け払い機の貸与

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