東証の決算短信XBRLデータ試験公開とGoogle

さて、東証さんが決算短信のXBRLデータを試験公開されはじめました。
(リリースはこちら。)
XBRLとは
XBRLについては、以前、「EDINET開示の義務化とXBRL」という記事で取り上げさせていただきましたが、平たく言うと「会計版のXML」です。
今までの企業の開示データ(決算短信など)は、webに開示されているものもhtmlやPDFで作成されてるので、人間様ならば「その会社の売り上げがいくらか」といった情報を抽出することが可能ですが、コンピュータは、どこに売上とか利益とかのデータが書いてあるか皆目わからない。これがXMLとなると、タグ付けされた特定の項目をアルゴリズム的に拾うことによって、直接、コンピュータが「○○社の売上はいくら」と答えられるようになるわけです。
仮に、すべての上場企業や有価証券報告書を発行している企業などがXBRLで情報開示するようになった暁には、プログラミングがちょっとできる人なら、高価なデータやインプット要員がいなくても、Yahoo!ファイナンスの企業情報とか決算情報と同様の(または、より複雑な)ページを、チョチョっと作成して公開する、なんてことも可能になるはず。
換言すると、XML化というのは、その情報の持つ「意味」のレイヤーと「表現」のレイヤーをアンバンドル(分離)する、ということでもあります。
実際にデモを見ると「おおっ!」と感動するんですが、ちょっとしたexcelのマクロで、日本語の財務諸表が一瞬にして英語(米国会計基準[風])の財務諸表に変わったり、韓国語の財務諸表に変わったりします。しかも単なる「翻訳」ではないので、会計基準の違いによって、特定の科目が資産の部に表示されたり、自己資本に表示されたり、といった表示方法も変更されるわけです。
「意味づけされたデータ」の意味
こういう「規格モノ」は、一定以上の利用がはじまればポジティブ・フィードバックが働いて利用が急速に増えるわけですが、逆に言えば、一定の「しきい値」に達するまでは、その規格に対応しても誰も使ってくれない → 誰も取り組まない → 誰も使わない、という逆のフィードバックが重くのしかかります。
ということで、わたしは、こうした「セマンティック(semantic)」なウェブやデータというのは、「理想はともかく現実的には普及しないんじゃねーの?」と思ってました。が、ここへ来て、ブログのブームでRSSやatomが大きく普及して、大成功例がひとつ出来ちゃいましたね。
数年前から伊藤穣一さんが「ブログ、ブログ」とおっしゃってるのを聞いても、「んなもん、流行らんでしょ・・・」と冷めた目で拝見してまして、RSSの配信やトラックバック等、プッシュ的ツールのスパイラル的効果もあって「ブログ」が流行語大賞のトップテンに入るまでなるなどという未来像はまったく予想できてませんでした。(そんな私が、今、ブログを書いて大量のトラフィックをいただいている、というのも皮肉なお話であります。)
そのお詫びと、isologueを本の中でご紹介いただいた御礼とを兼ねて、ちょっと伊藤穣一さん(とTechnoratiのシフリーCEO等)のご著書のご紹介。
blog_no_shotai.jpg
伊藤 穣一+デヴィッド・L・シフリー&デジタルガレージグループ (著)

また、ビジネス系の情報がXML化された未来を妄想したものとして、
「オープンな法体系(SF小説風)」
というものも過去に書いてますので、お暇な方はご覧ください。
「意味づけされたデータ」とGoogle
こうした「セマンティックな」データとしてよく引き合いに出される例として、商品の価格情報があります。
例えば、現在ネットで商売している人は、楽天(さん)に商品を掲載したり、カカクコム(さん)に情報を出したりして、トラフィックを呼び込んでいるわけです。つまり、ただホームページを作って待っていても客は誰も来てくれない。商品コードや価格情報タグ等が付されたメタなRSS等での「セマンティックな」データが配信されて、世界中すべての「ある商品」の価格等の情報が「横串」で突き刺して検索・比較できる状況を想定すれば、楽天・カカクコム・ヤフオク・eBay等のどこにモノが出品されているかに関係なく、消費者は全世界を文字通り「ひとつの市場」として利用することができるという、劇的な変化が想定されます。もちろん、RSS配信などで、(ほぼ)リアルタイムで情報を入手することも可能。
楽天・カカクコム・ヤフオク・eBayといったサイトは、そのような「透明な器」になるのは直接的には商売のマイナスになる(気がする)ので、少なくとも当初は対応したがらないはずですが、一度「しきい値」を超えると、そうした情報配信に対応していないと出店者の商売にマイナスなので、対応せざるを得なくなるはず。
話がそれますが、GoogleのAdSenseも単なる「広告」というよりは、こうしたモールやオークションの提供しているサービス(トラフィック誘導機能)を一部代替しているとも考えられますし、Googleの今後のポテンシャルを考える場合にも、「広告費」だけを上限として考える必然性はなくて、「モール」「オークション」「店舗コスト」「営業マンの人件費」等、ビジネスをするためのありとあらゆるコストやマーケット規模が分母になってくる可能性があるわけです。
(もちろん、そうした「メタな検索」での勝者がGoogleになると決まってるわけではありませんが。)
同様に、XBRLの普及は、投資家が現在、アナリスト情報や金融情報サービスに払っている代金の一部を、「単なる検索技術」が代替する可能性・・・でもありえます。
XMLのマーケティング
以上のように、XBRLは「コンピュータが読めるデータである」ことが本質であると考えると、東証さんの決算短信XBRLデータ試験公開サイト
http://www.tse.or.jp/listing/xbrl/top.html
は、その「真逆」になっているところが非常に面白いですね。
TSE_XBRL.jpg
トップページでは、まずflashの画像がチカチカ表示されますが、これは人間に対してもさることながら、「Google様」にとってはほとんど意味が無いデータ。続いて表示されるメニューも、なぜか英語のみ。おまけに、文字は全部「画像」で表示されてまして、ボタンの画像の「alt」タグも全部ブランクですから、コンピュータに全く読めないことはもちろん、視覚障害者の方々にも読めませんし、はたまた英語がわからない日本人にも、なんだかよくわからないメニューになってます。
もちろん、普及のターゲットはまずは「人間様」なのでしょうけど、ブログの成功を見ても、鍵は今や「コンピュータ様」にいかに理解してもらうかなので、こういう「徹底的に反SEO的なつくり」は、普及の妨げにはなってもプラスにはならないんじゃないかと思った次第です。(平たく言って、Googleで上位に表示されないのでは?)
XBRLから話がそれますが、(ブログの成功に習うなら)、一足飛びにXBRLを普及させようという大上段なアプローチよりは、例えば東証さんのTDnet情報をRSSで配信したりしたら、XML的投資情報普及のマーケティングとしてはものすごく大きなインパクトがあるんじゃないでしょうか。
例えばパソコンのスクリーンセーバーや常駐ソフトにRSSリーダーの機能が組み込まれていれば、投資家は自分の興味ある会社や業種の発表を「リアルタイム」に「直接」知ることができるわけですから、投資家層や金融ビジネス関係者に、RSSリーダー機能[を持ったスクリーンセーバーや常駐ソフト]が爆発的に普及するのはほぼ確実かと。
(追記:投資情報をRSS等でばら撒く場合、証取法上も情報の真贋が極めて重要な問題(風説の流布等)になりえますが、東証さんはすでにTDnetの開示情報に対するデジタル署名サービスをはじめてらっしゃいますし、技術的に簡単にクリアできる話だと思います。)
XBRLとかXMLのような「オープンな規格」を普及させるためには、まずは、利用者側の「マインド」を高めることや、周辺の「ツール」を作れる人の層を分厚くしておくことが重要なはず。一度、そうした層の厚さが「しきい値」に達したら、後はポジティブ・フィードバックで坂道を転げ落ちる岩のように普及が進む・・・はずです。
見る人が多ければ、開示する企業の側も(多少手間がかかっても)XBRLに対応するインセンティブも沸いてきます。また、ベースとしての「リーダー(reader)」が普及していれば(普及していてこそ)、追加的なタグ情報(つまりXBRL)の処理機能を載せるのはわけない、というもんじゃないかと。
そういう「web2.0っぽい」XBRLのマーケティング策はいかがかな、という思いつきでした。
(ではまた。)

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フォーシーズンズホテル椿山荘東京(連休モード)

連休最終日は、フォーシーズンズホテル椿山荘東京に宿泊。
やっぱ緑が多くて、落ち着きますなあ。
南北朝時代から椿で有名だったとのことで、明治時代に山縣有朋が手に入れた場所。
http://www.fourseasons-tokyo.com/garden/guide/history.html
非常に目立ちませんが、庭園に、伊藤若沖の下絵による五百羅漢(京都南伏見の某寺にあったものを移設)も20体あります。
(ちなみに、ここはインターネット接続無料。)
渋滞もなく飛行機の待ち時間もない、大変のんびりとできた3泊4日間でした。
(おしまい。)

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ホテルニューオータニ東京&若冲(連休モード)

ウェスティンは一泊だけで、次のホテルニューオータニに移動。
長期間同じホテルで過ごすてのは「欧米か!」ってな感じですが、わたしゃビンボーな日本人なので、同じ金を払うなら、いろんなところを楽しませていただきたいわけでして。
ニューオータニ(オフィス棟の「ガーデンコート」)は、以前、勤めていたことがある懐かしの場所なんですが、宿泊したことはなかったので この機会に。(泊まったのは「メイン館」で、もちろんガーデンコートに泊まったわけじゃないです。)
T052387_s.jpg
当時はバブルの絶頂期直後で、銀行系、生保系等、日本の金融機関系のテナントが占めてましたが、今や、オラクルさん、ボスコンさん等、テナントもほとんど入れ替わって時代の移り変わりを感じます。
私、入居時のパソコン&LANまわりの工事担当責任者だったんですが、それまで使っていた太さ1cmもある10base5のケーブルをやめて、パッチパネルで10base-TのLANを引いてみたりしました。
200人ほどの研究所員のパソコンを結んだだけだったんですが、アンガバンバスさん(だったかネットワンさんだったか)によると、民間では当時「日本最大のLAN」だとのこと。今では信じられないかも知れませんが、LANボードが1枚10万円もしたんじゃなかったっけな。
もちろん、”ラップトップ”パソコンにLANボードが入るわけもないので、トースターほどもある巨大外付けボックスを付けたりとか。NECのPC9801系では○に1、2・・・といった数字がちゃんとプリンタに出るのに、東芝だと外字のコードが違ってうまくプリントアウトできなくて怒られたりとか・・・。
(・・・じじいの昔話でした。)
−−−
さて、行ってから気づいたのですが、ニューオータニのメイン館では現在、100億円かけて「ハイブリッドホテルプロジェクト」というプロジェクトが進行中。
目的に、「新空調システムの導入、高度IT社会への対応」等とありますが、確かに、空調は部屋ごとの微妙な調節ができずに、温度をいくら低く設定しても、室温が27度以下に下がらない。客室係の人が来てくれて、「今、ちょうど移り変わりの時期でして、送風が暖房になっているので・・・」と恐縮してましたが、解決策は、「特殊な工具で窓を開ける」でした。
あと、インターネット接続(有料:2100円なり)はあるんですが、今どきのホテルでは必ずあるVOD(ビデオ・オン・デマンド)がないとか、確かに「高度IT社会への対応」が必要かも・・・知れません。
ただし、ホテルマンの練度は さすが。石ノ森章太郎の「ホテル」を見てるかのようであります。
料金も(上記のような事情のせいか)連休中にもかかわらずリーズナブル(ウェスティンの約半分)だったし、ステイを堪能させていただきました。
−−−
で、そのニューオータニで自転車を借りて、家族で早朝東宮御所一周の後、皇居を一周。(→紀尾井町ビル→FM東京から、皇居北回りで。)
今まで、皇居の周りを走ってるおっさんを見て、「何が楽しいのかねえ」と冷ややかな目で見てましたが、自転車で新緑の中を走るというのは、大変気持ちよござんすね。未だマラソンをする気にはなりませんが(というか、肉体の鍛え方的にちょっとムリ。)、チャリなら小学生でも楽勝で1周出来ます。
途中、大手門から城内に入って三の丸尚蔵館でやってる「花鳥−愛でる心、彩る技 <若冲を中心に>」を鑑賞。
jakuchu40-2.jpg
奥さんと長男は第1期を見てますが、私は見逃して、現在、第2期。会場が狭いせいか、9月まで5回に分けて展示される予定。
その後、奥さんと子供達はパレスホテル対面の噴水の公園で遊んで、私だけオフィスによって、ちょっくら仕事。
(面倒くさがらずに、9月までオフィスから三の丸尚蔵館まで歩いて見に行けばいいわけですな。)
その後再び合流して、桜田門→最高裁→赤坂見附交差点ときて、じゃんがらでラーメンを食って、ニューオータニに帰還。
(続く)

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東京都庭園美術館(連休モード)

ウェスティンからほど近い東京都庭園美術館に行って参りました。
teien.jpg
ホームページ
http://www.teien-art-museum.ne.jp/
によると、

東京都庭園美術館は朝香宮邸(朝香宮殿下は久邇宮家第8王子、妃殿下は明治天皇第8皇女)として1933年(昭和8年) に建てられた建物を、そのまま美術館として公開したものです。戦後の一時期、外務大臣・首相公邸、国の迎賓館などとして使われてきましたが、建設から半世紀後の1983年(昭和58年)10月 1日、美術館として新しく生まれかわりました。
 この建物は1920年代から1930年代にかけてヨーロッパの装飾美術を席巻したアール・デコ様式を 現在に伝えるものです。フランス人デザイナーが、主要部分を設計、内部装飾もフランスをはじめとする 外国から輸入されたものが多用されています。また基本設計と内装の一部は宮内省内匠寮[たくみりょう]の建築家が担当 し、アール・デコ様式に日本独特の感性を付け加えています。 当館は従来の美術館とは異なり、建物自体が美術品といえます。

ということで、戦後、吉田茂外相・首相の公邸としても利用されたもの。
同館に置いてあった「東京都庭園美術館ニュース」No.27[April22, 2006]によると、吉田首相の夫人亡き後に吉田氏を支えた三女和子氏曰く、

じつは陛下から、「朝香宮のところから借りてやってくれないか」とのご依頼があってのことだったという事情を、当時の秘書官から聞いています。

とのことで、当時、朝香宮家をはじめ各宮家は昭和22年3月までの期限で財産税の納付を迫られて事情があっての経緯とのことです。
−−−
さて、建物と庭園もすばらしかったのですが、入り口脇に新しく出来たカフェ「酒洒(サーシャ)」が、なかなかよござんした。
運営を「金田中」がやっていて、食事が非常に淡泊かつ繊細な味わいの和食で、行列が出来てましたね。大変、おいしゅうございました。(岸朝子調)
(ではまた。)

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ウェスティン(連休モード)

連休を利用して、ホテル新御三家の中で唯一泊まったことのなかった恵比寿のウェスティンホテル東京に宿泊。
地方や海外に行ったところで、混んでて交通費もかかって疲れるだけですし、子供はどうせベッドの間をピョンピョン跳ねて回るだけなので、都心のちょっといいホテルに泊まるのが、交通費まで含めたトータル・コストは安くて非日常感もあるかと。
以前

で、通信環境ですが、なんと部屋にLANケーブルを置いていない。しかも、インターネット有料ですと。
思うに、映画のペイパービューやルームサービスのように、ホテルにとって変動費が発生するものは、高い料金をチャージされても「ま、しゃあないか」という気になりますが、例えば地上波のテレビを見るのにお金が取られるとしたら、場末のビジネスホテルみたいですよね?

てなことを書きましたが、ウェスティンもインターネット接続は有料でありました。
もしかしたら、インターネット接続というのは、(もちろん、できる人は何の問題もなくつなげるわけですが)、「設定がDHCPなんたら」と言われても、わからない人は「わからん!」という問い合わせの頻度が高かったりして、ホテルにとっては固定費的というよりは、変動費的サービスの要素が強いのかも、と思ったりしました。
夜は、一家で、
penguin.jpg
皇帝ペンギン

のペイパービューを鑑賞。
(これは、DVDを買って聞き込めば、フランス語のいい教材になるかも。)
しかし、フランス人が作ると、ペンギンの生態が大変、哲学的になりますなあ。
これをもしフジテレビ(さん)が作ったら、まったく違う作品になるに違いない(笑)、と思いました。
(ではまた。)

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村上開新堂(連休モード)

自宅に来た親戚に、村上開新堂のクッキーを頂きまして。
このお店、ホームページによると、

明治3年(1870)。洋式接待も急務となり、宮内省大膳所(お食事係)に勤めていた村上光保(みつやす)は横浜外人居留地に派遣され、3年間、フランス人サミュエル・ペール氏からフランス菓子を学ぶことになりました。その後大膳職に復職。明治7年(1874)に、麹町山元町(現在の千代田区麹町)に村上開新堂を創業いたしました。

という、大変由緒のあるお店とのことですが、

当店は創業以来手作りを続けておりますため、一日に出来ます量が非常に限られております。そのため、ご紹介いただいた方にのみ、ご予約にてご用意させていただいております。皆様には大変ご不便をおかけいたしますが、初めてご注文されるお客様は、当店をご利用いただいております方からご紹介をいただき、お名前をご登録いただいた後にご予約を承っております。

ということで、一見さんでは購入すらできない、というシロモノ。(あまりそういった世界に縁がないもので、このお店の名前もついぞ存じませんでした。)
クッキーなので、それほどロス率が高いとも思えず、完全予約制というのが、お金儲け上は合理性があるというわけでもなさそうで、単にリスクを負ってまで規模を拡大したくないということか、はたまたクオリティを守るために、そういう体制が必要ということなのか。
(追記:googleでもひっかからない、というようなことを書きましたが、漢字が「開進堂」と間違っておりました。大変失礼しました。)
(ご参考まで。)

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企業買収防衛戦略II

47thさんから、
kigyo_baishu_boei_2.jpg
企業買収防衛戦略II
武井 一浩、中山 龍太郎 (編著)
商事法務

を送っていただいたので、遅ればせながらご紹介させていただくとともに、この場をおかりして御礼申し上げます。
(私の名前も137ページの脚注に8pointくらいの小さな字で、ちらっと載せていただいてます。)
以前、ご紹介させていただいた条件決議型ワクチン・プランなどについてもまとめられています。
−−−
ちなみに、今、Amazonのアフィリエイトのページで当ブログのリンクから発注された商品数を確認したところ、前の企業買収防衛戦略(以前のご紹介記事はこちら)は現在、累計売上数第3位。
一位は、なんと、

B0001X9BMY.09._PE35_SCMZZZZZZZ_.jpg
スター・ウォーズ トリロジー DVD-BOX

と、松本啓二先生の
4322108350.09._OU09_PE0_SCMZZZZZZZ_.jpg
クロス・ボーダー証券取引とコーポレート・ファイナンス
社団法人金融財政事情研究会 刊

(ご紹介エントリは、こちら
が、同数で1位。
(スターウォーズのDVD-BOXと、クロス・ボーダー証券取引が同率一位の書店って、全国どこを探しても無いでしょうね。[笑])
「企業買収防衛戦略」(1)が僅差でその後を追ってらっしゃいますので、I、IIをあわせれば、たぶん、ここ数日で、逆転で1位獲得・・・かも知れません。
(ご参考まで。)

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グーグルは「すごい」のか「すごくない」のか(財務的に見たGoogle)

(追記04/25 16:40:コメント欄に池田さんから米国の広告市場規模についての訂正をいただきましたので、このエントリのグーグルの広告モデル内のみでの成長性の部分については、大幅に書き直しました。)
某雑誌の方から、連休後に出る予定の特集に関連して、「グーグルについて定性的な分析をされる方はいらっしゃるんですが、財務的な観点から見てどうなのかコメントがほしいんですが」、という依頼があったので、ひさびさにGoogleの開示資料(10-K)を見てみました。
Googleの損益計算書は、下記のような感じになってます。
image002.gif
池田信夫さんのブログの記事「グーグルという神話」には、

(略)グーグルが日本でこうも崇拝されるのはなぜだろうか。先日も、田原総一朗氏に「グーグルのどこがすごいの?」と聞かれて、答に困った。検索エンジンとしての性能は、今ではヤフーやMSNなどもそう変わらない。広告というのは卸し売りのビジネスなので、市場規模は限られている。日本ではGDPの1%、米国では3%(追記:約1%に訂正)でほぼ一定している成熟産業である。グーグルの時価総額がインテルを抜いたというのは、かつてのライブドアと同じような「局所的バブル」である疑いが強い。

と書いてあります。
この記事を参考にさせていただいて、以下、財務的な観点からグーグルのビジネスについて考えてみます。
売上は今後も延びるのか?
前掲のP/Lのとおり、Googleは昨年度で6,138Mドル(1ドル115円[以下同様]として7,058億円)もの売上を既にあげています。
そして一昨年から昨年にかけての売上の伸びは92%。(つまり、ほぼ倍増。)
(追記)池田氏によると、「広告というのは(中略)日本ではGDPの1%」で、コメント欄でご紹介いただいた資料によると、米国では下表のとおり2005年度が広告費全体で143.3Bドル、インターネット広告はそのうち5.81%のシェアで、8,322.7Mドルのマーケットですが、当然のことながら、対前年比で13.3%と、メディア別の市場の中では最大の伸びを示しています。
image003.gif
広告市場全体の対GDP比は、米国のGDP 11兆7,343億ドル(外務省HPによる。名目2004年。)に対しては、やはり1%程度。グーグルの売上6,138Mドルは当然海外売上げも含まれていますが、米国インターネット市場に対する単純な割合を取ると、約7割にもなります。
今後、インターネット広告市場が当面は加速を続け、対前年比20%→25%→30%→35%程度で成長すると仮定すると、2009年のマーケットは21,908Mドルで、広告市場全体のサイズは横ばいとすると、インターネット広告が約15%を占めるということになります。
(それほど非現実的な仮定ではないかと。)
Googleの成長率92%が、今後、85%→75%→65%→55%70%→30%→20%→10%(広告費のみ)と鈍化していくとすると、4年後の2009年の売上は50,826M 17,907Mドルで、上記の米国広告市場比で約12.5%(当然、全世界市場比でいくと、もっと低い)になります。(/追記)
基本的にネット広告は既存の広告メディアより効率もよく、また顧客の行動も見えやすい等のメリットがあるので、広告費全体は横ばいでも、今後もネット広告のシェアが増えていくのは間違いないところでしょう。そのネット広告の中でも、グーグルのシェアがダントツになる可能性は高いので、4年後に米国市場比で12.5%(当然、全世界市場比でいくと、もっと低い)をGoogleが取るというのは、これもそれほど非現実的なシナリオではないと思います。
従来型広告代理店よりもはるかに高い利益率
Googleは、上記のP/Lのとおり、売上の約24%が純利益になるという高収益率のビジネスです。(売上高税引前利益率だと34.9%。)
電通さんの2005年3月期の売上1.9兆円に対して純利益が275億円(利益率約1.4%)というイメージで考えると、「広告はそんなにおいしいビジネスじゃなさそう」と思えるかも知れませんが、税引後で売上の4分の1もが手元に残るというなら話は違ってきます。
では、この利益率は、今後どう変化していくでしょうか。
変動費らしき科目
「Cost of revenues」と「Sales and marketing」の売上比を見てみると、3期ともだいたい合計で50%前後。(追記)「Sales and marketing」の方は固定費的要素もあると考えて、売上高比昨年7.2%のところ、7.0%→6.5%→6.0%→5.5%と下がっていくと仮定します。(/追記)
研究開発費と販管費
一方、「Research and development」とか「General and administrative」というのは、基本的には固定費でしょう。Googleは研究開発に力を入れてますので、研究開発費は極力増やそうとするでしょうけど、(追記)昨年555億円の研究費を、売上に比例して増やしていくのはそれなりに大変そうなので、毎年100Mドルづつ増加させる想定とします。
(現実には、Googleははるかに大きな金額を投資するでしょうけど、売上は広告モデルの域を出ないと仮定しているので、そのための研究開発費は2009年で884Mドルもあればいい、と想定しています。)(/追記)
資金運用による収益
また、B/Sを見て頂くと、Googleは昨年末で「Cash等」+「Marketable securities」合計で9,000億円(!) ほどのお金を貯め込んでます。上述のようなペースで利益があがっていくと、(新たなファイナンスをしなくても、)4年後には3兆円を超えるキャッシュを持つことになります。
昨年末と一昨年末のキャッシュの平均残高に対する「Interest income and other, net」の割合(利回り)は約1.2%程度。下記のシミュレーションでは、こうしたキャッシュの平残の2%をそうした営業外収益として見込んでいますが、これはハーバードの2兆円超のファンドが10%超で運用されていることを考えるとちょっと低めな想定かも知れません。(つまり、全部キャッシュでため込んで低利で運用することを想定していて、「ROE20%の事業を買収する」といったことは前提条件に入れてないわけです。当然、キャッシュを投資せずに4年後に3兆円抱えているという戦略は、実際にはありえません。)
数年後にトヨタの利益を超える?
それでも、一所懸命コストの使い途を考えて、4年後の利益率が現状からやや上がる程度としても、2009年の純利益は10Bドル(1.15兆円)
6,675Mドル(約7600億円)となりますので、日本企業で純利益第二位のNTTドコモを超えることになります。(1位は、製造業利益世界一のトヨタ自動車1.17兆円。)
また、上記は、基本的にはグーグルのビジネスモデルが広告モデルの域を出ないことを仮定していたシミュレーションなわけですが、実際にはグーグルは新しいrevenue streamを作り出す可能性は高い。グーグルは、「広告業」を目指したいわけではなくて、大量の情報をハンドルするエージェントになりたいわけなので、「分母」を広告費に限定するつもりもないのではないかと思います。
経済学的には「利益率の高い企業が小さな市場で大もうけ」というのはトリビアルな話かも知れませんが、財務的に見れば、グーグルはすでに世界の企業の中でもかなり「すごい」企業だと言っていいんじゃないでしょうか。
池田さんが説明に苦労されたという田原総一朗氏にも、「数年前にスタンフォードの若者2人が作った企業が、このままいくとあと数年でトヨタの利益を抜きそうきかねない勢いなんですよ」と説明すれば、素直に「そりゃすごいね」と感心していただけるのではないかと思います。
以上をまとめたのが、以下のような予想P/L。
(基本的に、非常に荒っぽいシミュレーションですので、ご注意ください。)
image007.gif
グーグルは「バブル」か?
Google(GOOG)の本日のMarket Capは129.92Bドル(約15兆円)で、確かにインテル(INTC)の112.13Bドルを抜いてます。
ただし、インテルの売上は去年38,826Mドル、net income は8,664Mドルのほどあるものの、グーグルと違って売上の伸びはここ数年10%台に留まっており、完全に安定成長モード。
グーグルが成長を続けて前述のように世界の広告市場のちょっとした割合を獲得するとしたら、4年後にPER10倍20倍台まで落ち込むとしても、10兆円台の時価総額は十分説明がつくことになります。
今後の売上がホントに上記のように伸びるかどうかは、あくまで将来の想定を含みますので、そういう意味ではバブルの可能性はゼロではないですが、現時点ですでにちゃんと7,000億円以上もの売上を計上しているわけですから、ライブドアのように、買収した企業の売上を足しあわせて数字を作っていた企業と違って、大企業としての「実態」がすでにあるという点は、かなり違うのではないかと思います。
ご注意:
本分析は、上述の通り、基本的には現状の勢いで今後も数年成長するという仮定に基づいてますので、強力なコンペティターが現れるなど今後何が起こるかわかりませんし、今後のGoogleの儲けを私が保証するもんではありませんので、悪しからず。
(ご参考まで。)

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グレーゾーンの効用

昨日のエントリに、ユリウス・カエサルさんからコメントいただきました。

私が理解してもらいたいのは、「業者の収益の中には民事上違法な金利に相当する額が含まれている」ことです。
貴方は別の記事で「一部の人のために、上限金利を下げて業界全体の収益性を圧迫することは、闇金の発生等、「市場のゆがみ」を発生させ、社会全体の厚生度を大きく下げることになると思う」と述べていますが、上記の法論理をあてはめると、貴方は「業界が今以上に民事上違法な利息相当額を徴収してもよい」と言っているのと同じなのです。意識されてますか?
私は、法論理を無視して、更なる「違法金利」の徴収を是認させようとする立場からの意見の方が「法論理を無視した、感情的な」意見だと考えています。
もし貴方が「利息制限法は経済学的プロセスにあわない法律だし、こういう法律があるから業界全体の収益性をスポイルしてしまう。だから廃止してしまえ」という意見まで述べるのなら、法論理を踏まえた上での話ということになりますが、いかがですか?そこまで述べられますか?

「もちろんですとも。」と書きかけて、ハタと考えました。
ユリウス・カエサルさんは、「グレーゾーン金利=悪」と考えてらっしゃるようですし、私も完全な「悪」とまでは思わないまでも、「いつかは解消されるべき、決してよろしくはない状態」と思っていたのですが、よくよく考えてみると、これは非常によく出来た制度かも知れないなあ、と思いはじめました。
1月の最高裁判決3連発を受けて、bewaadさんのエントリでも流れはグレーゾーン廃止の方向に進んでいるようですので、「よくできた制度だった」と過去形にしないといけないのかも知れませんが。
高金利の何がいけないのか?
まず、そもそも論に立ち返って、実態として高金利のどこがいけないのでしょうか?
私は消費者金融専業者のローンは利用したことがないですが、社会人になったばかりの時にはお金がなくて、給料日までのつなぎとして、銀行系クレジットのキャッシングは よく利用させてもらいました。
当時、翌月一括払いで3%の手数料だったので、年利36%もの高金利!・・・でしたが、5万円借りたとして手数料が1,500円。ビンボーな若者にとっても、まったく負担可能な額です。会社の同僚に5万円も借りようものなら、後でお礼に飲み代をおごらされたりして、それどころのコストではなくなるわけで。
また、例えば、土曜日にお金がないことに気づいて、月曜の給料日までお金が2万円必要だとします。
仮に普通預金の定期預金があるので銀行からおろした場合の借入は0.1%の金利で済むが、銀行のATMでおろすと105円手数料がかかる。
ところが、消費者金融のATMだと手数料は(たいてい)タダ。
国債や銀行の貸出の金利等を知っている「教養のある人」ほど、年利数十%の金利は「銀行預金の何万倍」の暴利に見えるわけですが、1万円借りて1日あたり十数円のコストなわけです。
上記の例だと、銀行の方が「低利」だが「高コスト」ということになります。
つまり何を申し上げたいかというと、「高金利」のまずいところは、「大量に長く」借りるところなわけです。
消費者金融数社から合計100万円(まともな業者なら通常maxに近い金額)を借りた場合、上限金利規制が適用されて金利が仮に5%下がったとして1年間で5万円の差にしかならないわけです。月に4,000円程度。 1年間元本均等返済ならさらにその半分の月2000円。その程度の金利差で、自殺したり、一家離散したり自己破産したりといった社会問題が防止できるわけがないわけで。
行うべきことは、「トイチ」といった年利何万%で貸し付ける出資法違反のヤミ金業者を取り締まることであって、出資法の上限金利を下げることではないんじゃないでしょうか。
昨日ご紹介した早稲田大学消費者金融研究所のペーパー「消費者金融顧客の自己破産−その特徴と原因−」にもありましたが、多重債務に陥る最大の要因は、リストラのような収入の計画が狂うイベントの発生や、他の住宅ローンなどであって、通常サラリーマンが消費者金融で借りられる多くても100万円程度の残高×20%台の金利そのものが社会問題につながる現象を発生させている、とは考えにくいわけです。
グレーゾーン金利の経済的効果
グレーゾーン金利というのは、「民事上は無効だが任意弁済すれば有効」なわけですから、上記のように利用者が「元気」なうちは任意で金利を支払い、いざ、利用者がリストラにあうなどネガティブなイベントが発生して返済不能に陥った場合には、以降の(弁護士さんなどの交渉により「それ以前」の分も含め)金利を利息制限法の上限までに削る効果があるわけです。
つまり、従来の制度は、「いざというときの金利減免オプション付き契約を、法律で義務づける」のと同様の経済的効果があったと言えます。
ところが、グレーゾーンが無くなってしまうと、返済不能に陥った「弱者」は、(交渉の余地が全く無くなるわけではないですが)、民事再生・破産とか、はたまた、夜逃げ、自殺、といった手段とのクッションが薄くなるわけですね。
人権派の弁護士の先生方は、みなさん、「出資法の上限金利を下げてグレーゾーン金利をなくせ」、という主張のようですが、消費者金融業者と債務カットの交渉をする場合にも、「民事上無効」という切り札が無くなることで、交渉はその分大変になるんじゃないでしょうか。
交渉に時間を要すると、その分、債務者のフィーの負担が重くなるか、弁護士さんの収益性が悪くなるかのどちらかなわけですが、「面倒なので、自己破産しましょう」ということが増えるんじゃないでしょうか。
意外なことに、大手のノンバンクや消費者金融業者さんの反応は、「我々は、上限金利が下がってもビジネスは出来るんですよ。リスクの高い人には貸さなければ、収益性は保てるので。」と、あまりあわててないご様子。
しかし、社会全体でマクロ的に見ると、今までは、貸金業者が返済不能に陥った人の債務を切り捨てることで、そういう人たちの生活費補填になっていたわけですが、その資金の流れが断たれると、誰か別の人(国庫や地方自治体等)がそこへの資金供給をしないとバランスが合わなくなるはず。
ということで、一見「善意」に見える金利の引き下げが、ほんとに「弱者救済」につながるのかどうか、非常に不安だ、というお話でした。
(ではまた。)

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早稲田大学消費者金融サービス研究所の論文より

Webを検索していて、早稲田大学消費者金融サービス研究所が出されているワーキングペーパーを発見。
中でも、
■上限金利規制が消費者金融市場と日本経済に与える影響
http://www.waseda.jp/prj-ircfs/pdf/ircfs06-002.pdf
■消費者金融顧客の自己破産−その特徴と原因−
(早稲田大学大学院商学研究科 樋口大輔)
(早稲田大学商学部 坂野友昭)
http://www.waseda.jp/prj-ircfs/pdf/ircfs04-002.pdf
■上限金利引き下げ影響に関する考察
(東京情報大学経営情報学部 助教授 堂下浩 )
http://www.waseda.jp/prj-ircfs/pdf/ircfs03-002.pdf
などは、昨日から取り上げさせていただいているテーマ
https://www.tez.com/blog/archives/000672.html
https://www.tez.com/blog/archives/000673.html
に近いお話をされているのではないかと思います。
以下、さらっと拝見しただけですが;
最初の「上限金利規制が消費者金融市場と日本経済に与える影響」という論文は、いわゆる「経済学っぽい」分析で、海外の研究事例などを引用しており、「上限金利が引き下げられると、多くの顧客が借入できなくなり、GDPの減少につながる」というような結論になっています。
二番目の「消費者金融顧客の自己破産−その特徴と原因−」は、自己破産に至った人のデータを統計的に解析したもので、自己破産に至る原因をもっともよく説明しうる要因は(業者の無理な貸付等ではなく)「減収というライフイベント」という(あまりジャーナリスティックには面白くない)結論に達しています。
「本研究の限界」として、「本研究のサンプルは大手消費者金融会社のみから提供を受けたサンプルであるため、その会社の顧客層を反映した結果となっている可能性があるといえる。」ということを掲げられてますが、自己破産するということは、そもそも弁護士さんなどにも相談する「比較的合理的な」客層となっているはずで、「一家心中しちゃう」といった経済学的には非合理的で、かつ、ジャーナリズム的には取り上げられやすい「多重債務問題の典型的イメージ」の客層とズレたサンプルになっている可能性はありますね。
最後の、「上限金利引き下げ影響に関する考察」は、イメージ的にわかりやすい迫力あるお話になってます。

今日、健全な中小の消費者金融が撤退する中で闇金融を始めるに当たりわざわざ貸金業登録を受ける業者数が増えている。本来、非合法業者は規制当局に参入意思を知らせる必要はない。ところが、最近の闇金融は東京都の貸金業登録を受けて営業するケースも見られる。登録は簡単な申請書類と4万円程度の手数料などで原則、誰でも取得することができる。一部の闇金融は客を呼び寄せるため登録という行政の「お墨付き」を悪用するケースが目立ってきた。一方で、こうした闇金融は営業実態を精査される貸金業協会には入会しない。したがって、健全な消費者金融の会社数は登録業者ではなく、協会会員数と連動することになる。

ということで、下記のようなグラフを掲げられています。
yamikin.jpg
(論文のとおりだとすると)、上限金利の引き下げにより、まっとうな業者が減少して「闇金」が増殖していく様が、驚くほどわかりやすく示されてますね。
下記のような概念図も掲げられています。
jogen_kinri.jpg
「弱者を助けよう」として「上限金利を引き下げる」という政策をとった結果、「弱者がますます窮地に追い込まれている」、という図になります。
研究費がどこから出ているのか、といえば、多重債務者の方々から出るわけないわけで、「業者寄りの論理」になっている可能性はありますが、上記のようなペーパーを素直に読めば、「だから(「感情的」立法プロセスではなく)経済学的立法プロセスが必要だ」ということが、よく理解できるのではないかと思います。
(ご参考まで。)

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