集客力2題(商店街と動物園)

お盆シーズンでネタもないので、本日はほとんどオフ的なネタとなりますが。
本日、ムショーに餃子が食べたくなったのでネットで検索してホワイト餃子に行ってきましたが、この店が「横浜のアメ横」と呼ばれる洪福寺松原商店街にありまして、この商店街がすごい人出。
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ウワサには聞いてましたが、これほどすごいとは。
店もすべてボロいので昭和の面影を残しているので、昭和40年代にタイムスリップしたような感じ。商品も激安で、「昭和」の価格です。
一種のテーマパーク感覚が、集客力の秘密じゃないでしょうか。
「激安→粗利がそんなに取れない→店を小ジャレた感じに改装したりできない→ボロさ昭和の面影を保てる→激安で勝負するしかない」という「好循環」が成立しているようです。
夕方になってきたので、以前からチェックしていたナイト・ズーラシア
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に行ってきました。
こちらも、すごい人出。広大な駐車場がみるみる埋まっていきますが、園内も広大なので押し合いというほどではなく、動物も適度に見られます。
開園すぐに行ったときには、まだ木々も生えそろわず人工的な感じが残ってましたが、開園後5年も経つと樹木なども落ち着いてきて、ジャングルの中っぽい感じは上昇。
また、なにせ、夜は涼しい。
市街地だと夜になってもムシムシしますが、ここまで人里離れて森の中に日本最大級の広大な敷地ということになると、涼しくて過ごしやすい感じです。
夜は、昼間ぐでーっとしている動物たち(夜行性)の動きも良くなるので、本来の動物の様子を楽しむという点でも夜の方がいいですね。
混み合うというほどではないが2人きりになれる場所は基本的に無いので、自分もどーぶつになろうというカップルにはあまりオススメでないかも知れません。
(ではまた。)

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アニメ制作費の融資スキーム

8月19日の日経朝刊4面の記事。

東京三菱銀など新手法、アニメ制作費著作権で融資、コンテンツ向け多様化
東京三菱銀行とUFJ銀行、日本政策投資銀行はアニメーションが将来生む収益に着目した国内初の協調融資に乗り出す。(略)第一号は民放各局向けなどのアニメ制作会社のGDH(東京・新宿)。
 三行による協調融資は流動化の枠組みを取り入れたのが大きな特徴。制作会社はアニメ著作権を特別目的会社(SPC)に譲渡、その対価として制作費用を調達する。銀行団はSPCに協調融資するほか、外部投資家にも出資を求める。
 アニメが生むキャッシュフロー(現金収支)を銀行が審査し、企業側はその収益力を担保に迅速に資金を手にできることになる。
 初適用となるGDHは二つの作品の著作権をSPCに譲渡、合計九億円の制作資金を調達した。テレビ放映権なども今後SPCを通じて販売し、放映料など売り上げの回収を進める。

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出所:日本経済新聞
ということで、資金繰りの難しいアニメ制作会社にとっては、大変結構なことではないかと思います。
記事で気になるのは、以下のような点。
「過去の著作権」か「今後の著作権か」
日経新聞の図を見ますと「著作権譲渡」と書いてありますし9億円という高額でもありまるので、すでにキャッシュフローが見えている過去の作品をSPCに売却してその資金を制作費に回すのかなとも思えるわけですが、株式会社GDHのリリースを見ると、今後作成するアニメの資金のファンド、ということのようですね。
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日経新聞の図を見ると銀行融資が主体のように見えますが、実績がある会社でも今後制作する作品のキャッシュフローは読みにくいと思うので、融資(debt)と匿名組合出資(equity)だと、かなり匿名組合出資の比率が高いのではないかと想像します。
組成の手数料
銀行や証券など、かなり「大御所」が並んでらっしゃいますし、総額9億円ということで、資金調達としては(アニメとしては大きめでしょうけど、世間一般の資金調達の中では)「小粒」の部類に入るのではないかと思いますので、こうしたスキームを組成して投資家を集める手数料も、それなりに取られるのではないかと想像いたしますが、どのくらいの%でやっていただけるもんなんでしょうか。
取られた%だけ、つまりはアニメの制作費が上がるか、制作会社または投資家の取り分が減るか、なわけですから、結構、「みんなにおいしくみえる」スキームを組むためのバランスが難しそうです。
著作権が制作会社に残るのかどうか
日経新聞の図では「著作権譲渡」と書いてあるので、(著作人格権ではない著作財産権の部分について)「売却」しちゃって制作会社の手元に何も残らないようにも見えるんですが、株式会社GDHのリリースによると、SPCがアニメの制作依頼を(これから)し、「著作権が製作会社に残る」としています。(著作人格権だけが残る、という意味?)
「GDH及び外部投資家は匿名組合出資契約を締結致しました」とあるので、著作財産権から発生する今後のキャッシュフローの一部について制作会社にもリターンがあるしくみになっているようです。(そういうインセンティブが制作会社に残らないと、外部投資家も怖くて出資できないですよね。)
匿名組合出資の条件の差
株式でfounderと外部投資家で株価に差を付けて出資をするように、この匿名組合で制作会社と外部投資家の間に条件で差を付けているのでしょうか?
まったく同じ条件で外部の投資家と制作会社が匿名組合出資をするとなると、当然、制作会社側は、資金需要が旺盛な(お金がない)のでこういったスキームを組んで調達を行ってるわけで、単純な出したお金の比率で権利が外部投資家にいってしまうと、ちょっとかわいそうな気がします。
そのへんは、SPCがアニメの制作依頼をするときの粗利をどれくらい乗せるかとのバランスにもよると思いますが。
どんな会社?
参加する銀行もなかなか大どころを引っ張ってきてますが、この制作会社ってどんな会社なのかな、と思って会社概要を見てみると、、、
某ファンド(http://www.globis.co.jp/gcp/)の方とか、ファイナンスにお強い外部役員の方々が並んでらっしゃいますね。
なるほど、なるほど:-)。
(ではでは。)

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ストックオプション課税の高裁判決

日経ビジネス2004年7月19日号の特集「人気弁護士ランキング」で税務部門第1位になった鳥飼重和弁護士の鳥飼総合法律事務所のホームページに、東京高裁ストックオプション訴訟の判決文(平成16年8月4日)が載りました。
東京高裁の判決文(PDF)
http://www.torikai.gr.jp/zsoshou/stock/news/stock040804.pdf
日本のコンパック株式会社の従業員だった人(被控訴人)が米国コンパック社からもらったストックオプションを一時所得でなく給与所得であるとして更正処分をされたことについて争っていたものです。
前記の判決文を読むと、「ストックオプションとは何か」「ストックオプションから得られる所得というのはどういう性質の所得なのか」「日本におけるストックオプションの歴史と、税務署がストックオプションに対してどういう指導をして、その指導がどう変遷してきたか」、というのがよくわかって非常にためになります。
8月5日の日経新聞朝刊の記事は以下の通り。

ストックオプション(株式購入権)で得た利益は所得税法上の「一時所得」か、税額が約二倍になる「給与所得」かが争われた訴訟の控訴審判決が四日、東京高裁であった。秋山寿延裁判長は「労務の対価として使用者から受ける給付に当たり給与所得に該当する」との判断を示した。
 その上で、国税当局の課税処分取り消しを求めた米コンパック・コンピューター(現ヒューレット・パッカード)日本法人の元監査役の請求を認めた一審・東京地裁判決を取り消し、請求を棄却した。
 同種訴訟の地裁レベルの判断は分かれているが、高裁判決は今回が五件目で、いずれも給与所得と判断して国税側が勝訴している。

まあ、確かに広い意味での労働の対価として付与されているのは明らかですからね。
ただ、ひどいのは、税務署は昔はストックオプションを一時所得として指導してきたのに、平成10年頃から給与所得であるという風に指導を変えてきて、被控訴人はそうした指導に従って申告したのに更正処分をされた点。
高裁判決はこの点について、「ま、怒るのもわかるけどね」(P40)と言いつつも、理屈としてはやはり給与所得だし、他の人は給与所得として申告してるのだから、
「課税処分が信義則に違反して違法となるためには、このような租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお、被控訴人の信頼利益等を保護しなければ正義の要請に反するといえるような特段の事情が必要であるというべきである」
が、被控訴人にそれほど特段の事情もないので、これを給与所得として課税しないと
「給与所得として申告し、納税した者との間に著しい不公平を生ずることになり、かえって正義に反する事態が生ずるといわざるを得ない」
ということで、あっさりうっちゃってます。
鳥飼総合法律事務所の高裁判決に対する反論
http://www.torikai.gr.jp/zsoshou/stock/news/040818.html
では、この信義則違反をどうしてくれるんだ、という点と、ストックオプションの行使益は親会社じゃなくて株式市場からもらったもんだし、親会社もストックオプションを費用計上してないじゃないか、という2点について反論しています。
2番目の反論も、ストックオプションの費用計上問題でちょっと弱含みですが。
前にも申し上げましたが、やはり、今後は「税務署の人が書いた本にこう書いてあった」とか「税務署に聞いたらこう言ってた」ということでなく、法律そのものをよく読んで、理論的にはどう解釈できるんだ?ということを考えないといけないようですね。
大変参考になりますので、ご興味のある方はぜひ、ご一読を。
(では。)

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適格合併の判定

本日はコレといったネタがありませんので、税法上の適格合併の判定図とその条文をお楽しみください。<(_ _)>
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税法上の適格合併でなくても(商法上の要件を満たせば)合併はできますが、適格合併になると、
・被合併会社の株主が、税務上、解散する被合併会社の含み損益を認識しない
 (してはならない。)
・被合併会社の未処理欠損金(税務上の繰越欠損金)を引き継げる
ということになるところがポイントです。
以下、合併会社と被合併会社に持株関係が(50%以下しか)ない場合にも税制適格となる「共同事業要件」の場合の関連条文。
カッコが多くて読みにくいので、文脈が取りやすいように主要なところだけ下線を引いておきます。
法人税法第2条十二の八 適格合併
次のいずれかに該当する合併で被合併法人の株主等に合併法人の株式及び出資以外の資産(当該株主等に対する利益の配当又は剰余金の分配(出資に係るものに限る。第十二号の十一において同じ。)として交付される金銭その他の資産を除く。)が交付されないものをいう。
イ (注:100%保有のケース、省略)
ロ (注:50%超保有のケース、省略)
ハ その合併に係る被合併法人と合併法人(当該合併が新設合併である場合にあつては、当該被合併法人と他の被合併法人)とが共同で事業を営むための合併として政令で定めるもの
法人税法施行令第四条の二(適格組織再編成における株式の保有関係等)
3 法第二条第十二号の八ハに規定する政令で定めるものは、同号イ又はロに該当する合併以外の合併のうち、次に掲げる要件(当該合併に係る被合併法人の株主等の数が五十人以上である場合には、第一号から第四号までに掲げる要件)のすべてに該当するものとする。
一 合併に係る被合併法人の被合併事業
(当該被合併法人の当該合併前に営む主要な事業のうちのいずれかの事業をいう。以下この項において同じ。)と当該合併に係る合併法人の合併事業(当該合併法人の当該合併前に営む事業のうちのいずれかの事業をいい、当該合併が新設合併である場合にあつては、他の被合併法人の被合併事業をいう。次号及び第四号において同じ。)とが相互に関連するものであること。
二 合併に係る被合併法人の被合併事業と当該合併に係る合併法人の合併事業(当該被合併事業と関連する事業に限る。)のそれぞれの売上金額、当該被合併事業と合併事業のそれぞれの従業者の数、当該被合併法人と合併法人(当該合併が新設合併である場合にあつては、当該被合併法人と他の被合併法人)のそれぞれの資本の金額(出資金額を含む。)若しくはこれらに準ずるものの規模の割合がおおむね五倍を超えないこと又は当該合併前の当該被合併法人の特定役員(社長、副社長、代表取締役、専務取締役、常務取締役又はこれらに準ずる者で法人の経営に従事している者をいう。以下この条において同じ。)のいずれかと当該合併法人(当該合併が新設合併である場合にあつては、他の被合併法人)の特定役員のいずれかとが当該合併後に当該合併に係る合併法人の特定役員となることが見込まれていること。

法人税基本通達1-4-6 (事業規模を比較する場合の売上金額等に準ずるもの)
 令第4条の2第3項第2号《適格合併に係る共同事業要件》、第6項第2号《適格分割に係る共同事業要件》又は第10項第2号《適格現物出資に係る共同事業要件》に規定する「これらに準ずるものの規模」とは、例えば、金融機関における預金量等、客観的・外形的にその事業の規模を表すものと認められる指標をいう
(注) 事業の規模の割合がおおむね5倍を超えないかどうかは、これらの号に規定するいずれか一の指標が要件を満たすかどうかにより判定する。

三 合併に係る被合併法人の当該合併の直前の従業者のうち、その総数のおおむね百分の八十以上に相当する数の者が当該合併後に当該合併に係る合併法人の業務に従事することが見込まれていること(当該合併後に当該合併法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には、当該相当する数の者が、当該合併後に当該合併法人の業務に従事し、当該適格合併後に当該適格合併に係る合併法人の業務に従事することが見込まれていること。)。

法人税基本通達1-4-4 (従業者の範囲)
法第2条第12号の8ロ(1)若しくは令第4条の2第3項第3号《適格合併の要件》、法第2条第12号の11ロ(2)若しくは令第4条の2第6項第4号《適格分割の要件》又は法第2条第12号の14ロ(2)若しくは令第4条の2第10項第4号《適格現物出資の要件》に規定する「従業者」とは、役員、使用人その他の者で、合併、分割又は現物出資の直前において被合併法人の合併前に営む事業、分割事業(令第4条の2第6項第1号に規定する分割事業をいう。以下この節において同じ。)又は現物出資事業(令第4条の2第10項第1号に規定する現物出資事業をいう。以下この節において同じ。)に現に従事する者をいうものとする。ただし、これらの事業に従事する者であっても、例えば日々雇い入れられる者で従事した日ごとに給与等の支払を受ける者について、法人が従業者の数に含めないこととしている場合は、これを認める。
令第4条の2第3項第2号、第6項第2号又は第10項第2号《共同事業要件》の従業者の範囲についても同様とする。
(注)1 出向により受け入れている者等であっても、被合併法人の合併前に営む事業、分割事業又は現物出資事業に現に従事する者であれば従業者に含まれることに留意する。
  2 下請先の従業員は、例えば自己の工場内でその業務の特定部分を継続的に請け負っている企業の従業員であっても、従業者には該当しない。
  3 分割事業又は現物出資事業とその他の事業とのいずれにも従事している者については、主として当該分割事業又は現物出資事業に従事しているかどうかにより判定する。

四 合併に係る被合併法人の被合併事業(当該合併に係る合併法人の合併事業と関連する事業に限る。)が当該合併後に当該合併法人において引き続き営まれることが見込まれていること(当該合併後に当該合併法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には、当該被合併事業が、当該合併後に当該合併法人において営まれ、当該適格合併後に当該適格合併に係る合併法人において引き続き営まれることが見込まれていること。)。
五 合併の直前の当該合併に係る被合併法人の株主等で当該合併により交付を受ける合併法人の株式(当該合併法人以外の株主等が交付を受けるもので議決権のないものを除く。)の全部を継続して保有することが見込まれる者(当該合併後に当該者を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には当該合併後に当該者が当該株式の全部を保有し、当該適格合併後に当該適格合併に係る合併法人が当該株式の全部を継続して保有することが見込まれるときの当該者とし、当該合併後に当該合併法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には当該合併の時から当該適格合併の直前の時まで当該株式の全部を継続して保有することが見込まれるときの当該者とする。)が有する当該被合併法人の株式(議決権のないものを除く。)の数を合計した数が当該被合併法人の発行済株式等(議決権のないもの及びみなし割当(法第六十一条の二第四項(合併及び分割型分割による株式割当等がない場合の譲渡利益額又は譲渡損失額の計算)に規定する場合における同項の規定による同項に規定する株式割当等をいう。)があるものを除く。)の百分の八十以上であること。

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違約金条項の盛り込みにヒヨった私

昨日のエントリー「独占交渉権のオプション価値」に対してLaw Maniacのminoriさんよりトラックバックいただきました。ありがとうございます。大変参考になります。
一点だけ。minoriさん曰く;
「(高裁は)独占交渉権に法的な保護を与える必要はない、といっているのですから。」
というのはどうなんでしょうか。
引用されている高裁の決定理由の要旨では、
「基本合意のうち少なくとも本件条項については、その性質上、将来に向かってその効力を失ったものと解するのが相当であり」
とあります。
たしかにちょっと「むむっ?」という感じはしますが、
高裁は、「将来に向かって」その効力を失ったと解しているわけで、過去については効力があったと考えているということでしょうし、他の損害賠償請求権などについては含みを残した形になっているかと思いますので、少なくとも「独占交渉権に対する法的保護の可能性を全否定している」のではないと思います。
例えば、
『差し止め請求権の観点からは』将来に向かってその効力を失ったものと解するのが相当であり」
というように、差し止め請求権についてのみのお話だよ、と高裁が言葉を足してくれていれば、もうちょっと腹に落ちやすかったのではないかと思いますが。
−−−−−
さて、昨日、
「独占交渉権のように、信頼関係が崩れると契約で縛っても経済的な意味があまりない条項については、(可能なら)違約金を条項に盛り込んでおく」
「違約金は、独占交渉権のオプション価値として考えられるのでは?」
というようなご提案をした私めでございますが、
奇遇なことに、たまたま本日、依頼されまして基本合意書的なものの素案を作成いたしておったのですが、昨日、「この高裁決定等のおかげで違約金条項も盛り込みやすくなるのでは?」というようなことを申し上げたにもかかわらず、いざ自分で書いてみると、やはり「違約金」というのは躊躇しますし、オプション価値としていくらか、というようなとんでもない金額を盛り込むのもかなり抵抗がありますね。(苦笑)
基本合意書で、投資とかM&Aとかを検討していこうという段階では、まだ、先方の会社さんと当方との間に、ちゃんとした「心の架け橋」ができていないことも多いので、いきなり「違約金○億円」なんてことは、トゲトゲしくて非常に書きづらいのが一般的ではないかという気もしてきました。(特に日本においては。)
当方と先方の力関係によっては、「オプション価値」といった仰々しい額を違約金に盛り込めるケースというのも全く無いわけではないでしょうが、ほとんどの場合では、
「独占交渉権が期間内に破棄された場合、(破棄された側が支払った)正式契約書策定までのデューデリ費用等の全額を(破棄した側が)負担する」
くらいのことを費用分担に関連して盛り込むのが関の山かも知れません。
実際に、例えば投資を専業としているような会社であれば、破棄による損害といっても、直接費用としてはそんなもんでしょうし・・・。(機会費用は大きいかも知れませんが。)
(ではまた。)

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独占交渉権のオプション価値

遅ればせながら、東京高裁がUFJの信託部門の統合交渉の差し止めを命じた東京地裁の仮処分決定を取り消した件について。
仮処分とは何か
まず、そもそも今回の「差し止め」とは、民事保全法の「仮処分」にあたるものです。
民事保全法は、

第一条 (趣旨)
 民事訴訟の本案の権利の実現を保全するための仮差押え及び係争物に関する仮処分並びに民事訴訟の本案の権利関係につき仮の地位を定めるための仮処分(以下「民事保全」と総称する。)については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。

という趣旨の法律で、六法全書では、民事訴訟法や民事執行法と並んで載っており、仮処分命令は、

第二十三条(仮処分命令の必要性等)
 係争物に関する仮処分命令は、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
2  仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。
3  第二十条第二項の規定(注:債権が条件付又は期限付である場合においても、これを発することができる)は、仮処分命令について準用する。
(以下、略)

という場合に出せることになってます。
地裁は、「争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするとき」に該当するとして仮処分命令を出したのでしょうし、高裁は、「独占交渉権には法的拘束力があ」り、「UFJによる七月十四日付けの住友信託への解約通知に法的根拠は無い」としつつも、「両社の信頼関係はすでに破壊されており、最終合意に向けて協議を続けることは不可能」なので、仮処分を行っても「著しい損害又は急迫の危険を避ける」ことにはならないと考えて、仮処分命令は取り消しという判断としたのではないかと思います。
各方面のご反応
日経新聞8月12日朝刊4面のコメントによると、

決定について、渡部晃・学習院大法科大学院教授は「海外の事例を見ても、独占交渉権の法的拘束力について他との交渉を差し止める権利までは認めないのが一般的で結論は妥当」と認める。
 ただ「信頼関係の破壊により差し止めの権利が失効した」との論理構成には、「一方的に契約を破棄すれば権利を失効させられることになり、疑問もある」と指摘する。
 また、企業法務に詳しい外立憲治弁護士は「こうしたケースで信頼関係が壊れるのは当然だが、それを理由に独占交渉権の効力を否定したら『独占交渉』の意味は失われる」と批判する。

また、同日の朝日新聞朝刊7面では、

近藤光男・神戸大大学院教授(商法)
基本合意書の法的拘束力を認めながら、交渉差し止めを認めないというのは意外な決定だ。法的拘束力を否定して基本合意書に効力がないというのであれば筋が通るが、信頼関係が悪化したという結果を理由にするのであれば法的拘束力の意味がない。こういうケースでは、損害賠償は認められる可能性が高いが、差し止めは難しいということになる。今後、企業の統合話は「状況が変わった」という理由でいつでも相手方に逃げられることを覚悟しなければならなくなり、約束や合意の意味が薄れてしまう。

神田秀樹・東大教授(商法)
 UFJグループと三菱東京グループとの統合協議を差し止めてまで、住友信託がUFJ信託との統合交渉を進めても、信頼関係は元に戻ることはないというのが今回の裁判所の判断で、ありうる考えだ。住友信託は今後、UFJに対して損害賠償を求めることができる。かつてなら、企業間の争いはお互いの話し合いの中で解決することが多かったが、株主への説明責任が重要視される中で、裁判所の判断を仰ぐケースは銀行に限らず増えそうだ。訴訟を利用しながら企業が活動する「訴訟社会」に入りつつある。

ということで、賛否両論ですね。
Blog系では、

強いていうならばそれは何かの間違いでしょう!?
http://krp.web.infoseek.co.jp/mt/archives/000200.html
「双方の信頼関係はすでに破壊され」という理由で仮処分決定を取り消したのはどうかなと思います。どちらかが信頼関係を壊したら、法的拘束力のある独占交渉権が無効になってしまうのでは、独占交渉権は無意味だといっているようなもので、独占交渉権の法的拘束力を認めていることと矛盾していると思います。
(中略)
「仮処分決定がなくても、損害賠償請求ができるではないか」という意見もあるでしょうが、仮処分決定があるからこそ、損害をこうむった側が優位に交渉ができるという考えはできないでしょうか。

minori_takahashiさん;
http://www.minori.com/archives/law/2004/08/post_1.html
住友信託銀行との合意を反故にしたUFJグループに「お墨付き」を与えた高裁の判断には、背筋が寒くなりました。

と、比較的高裁の判断に対して批判的なご意見が多いように思います。
今回の教訓
確かに、「契約書に書いてあることを守らない」のはいけないことですが、それに対して民事保全を行う必要があるかどうか、というのは、またちょっと違うことも確かです。
krpさん曰く「仮処分決定があるからこそ、損害をこうむった側が優位に交渉ができるという考えはできないでしょうか」とのことですが、(確かにそりゃそうですけど裁判所が過度に被害者の肩を持つことはないわけで)、いずれにせよUFJが交渉のテーブルに着くことは無いとすると、すでに損害賠償請求で認められうる、今回の独占交渉権破棄による「直接」かつ「現実」に発生した通常の損害部分というのは、ある程度確定してしまっていて、仮処分決定があってもなくても、その部分の損害が増えたり減ったりすることもないとも考えられます。
ご案内の通り、不法行為による損害賠償請求では、因果関係がいくら存在しても、間接的な損害については一般に認められない(でないと、「バタフライ効果」または「風が吹けば桶屋が儲かる」で世界中のすべての事象について賠償しなければならない)ですし、現実に発生していない将来の損害(例えば、信託一位になれなかったことによる機会損失)などまで請求するのは厳しいかと思います。
今後、損害賠償請求の裁判にもなるのではないかと思いますが、その際に、裁判所がどの範囲を不法行為責任と認めるのか(例えば、交渉をしていた事務方の人件費やコピー代だけだとしたらちょっと安すぎる気もしますし、「株価が下落した」というなのが直接の損害に入るのかどうかというと入らないような気もしますし)、というのにも非常に興味があるところです。
また、これを機に、世の中の企業が契約書に書いてあることを守らなくなっちゃったら、確かに「背筋が寒く」なりますが、高裁は基本合意書自体に法的拘束力が無いということは全く言ってません。
むしろ(前向きに考えれば)、この高裁の判断をはじめとする一連のドタバタは、日本におけるM&Aの実務に「背筋が寒くならない」ための実務を定着させるために、非常にプラスだったんではないでしょうか。
つまり、今回の教訓として、今後やるべきことは、
・基本合意書には、必ず法的拘束力がある範囲を明示する。
・独占交渉権のように、信頼関係が崩れると契約で縛っても経済的な意味があまりない条項については、(可能なら)違約金を条項に盛り込んでおく。
ということ(で十分)ではないかと思います。(「強制執行または仮処分が可能である」、というような条項を入れることも考えましたが、上述の渡部晃教授の「海外の事例を見ても、独占交渉権の法的拘束力について他との交渉を差し止める権利までは認めないのが一般的」とあるので、どうなんでしょうか?)
今後、合意書にこれを盛り込めば今回のようなトラブルにはならないし、今回のドタバタがあったおかげで今後は、「違約金っていうと仰々しいですけど、”あの事件”みたいになっちゃってもなんですしね〜。ははは。」てな感じで言えば、以前よりも格段に(あたりさわりなく)、上記のような条項を合意書に盛り込めるんじゃないでしょうか。
「オプション」としての独占交渉権
ここで、「違約金として、いくらくらいを盛り込めばいいのか」という問題が発生します。
違約金条項のある独占交渉権を基本合意書に盛り込むということは、経済的に考えると、「いざ交渉を破棄された場合に、○○億円もらえる権利」というオプションまたはデリバティブを無償で発行する(しあう)行為、と考えられるのではないかと思います。
違約金条項として盛り込むのであれば、必ずしも損害賠償の裁判で取れる直接的な損害部分だけでなく、間接的な損害や将来の損害も含めることができるのではないかと思いますし。(法令や公序良俗に反しない範囲で。)
この違約金の額がいくらになるかというのは、一筋縄では出てこないと思いますが、この額をいくらにすればいいのかというvaluationの方法は、ちょっと考えてみても非常〜におもしろい。
(少なくとも、合併契約書を交わした後にそれを破棄した場合に考えられる損害額よりはかなり小さいのではないでしょうか。)
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交渉に入る両者の「気合い」やこの交渉の「位置づけ」も違約金の額をどれくらいに設定するかで見えてくるというもんですし、そもそも、オプション価値という観点から考えておけば、何年もにまたがる独占交渉権の期間など設定するわけがないわけで。:-(
(ではまた。)

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国際課税と租税条約

昨日のエントリーでは、(面倒なので)匿名組合の配当等に対する課税のうち、非居住者に対するものについては述べませんでしたが、投資スキームの構築上は、外国の(お金持ちな)投資家からの投資を呼び込んだり、また、海外への投資を行ったりする必要があるので、国際課税については検討しなければならないのが通例です。
日本の中では当然、税金に関する法律が一番「強い」わけですが、国際課税となると(ご案内のとおり)、国内法より「条約」が優先することになります。
そうした国際課税について学ぶためのホームページを以下に参考までに掲げておきます。
(本日は、これにて。)
国際課税に関する資料(財務省)
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/kokusai.htm
租税条約改正等(租税条約の改正等をチェックできるページ)
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/kokusaiz.htm
わが国の租税条約ネットワーク(45条約、55カ国適用/平成16年6月現在)
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/182.htm
●西欧(15)
アイルランド
イギリス
イタリア
オーストリア
オランダ
スイス
スウェーデン
スペイン
デンマーク
ドイツ
ノールウェー
フィンランド
フランス
ベルギー
ルクセンブルグ
●東欧(16)
アルメニア*1
ウクライナ*1
ウズベキスタン*1
キルギス*1
グルジア*1
タジキスタン*1
トルクメニスタン*1
ベラルーシ*1
モルドヴァ*1
ロシア*1
スロヴァキア*2
チェッコ*2
ハンガリー
ブルガリア
ポーランド
ルーマニア
●アジア(12)
インド
インドネシア
韓 国
シンガポール
スリ・ランカ
タイ
中 国*3
パキスタン
バングラデシュ
フィリピン
ヴィエトナム
マレイシア
●アフリカ・中東(5)
イスラエル
エジプト
ザンビア
トルコ
南アフリカ
●大洋州(3)
オーストラリア
ニュー・ジーランド
フィジー*4
●北米・中南米(4)
アメリカ
カナダ
ブラジル
メキシコ
*1 旧ソ連との条約が適用されている。
*2 旧チェッコ・スロヴァキアとの条約が適用されている。
*3 香港、マカオには適用されない。
*4 フィジーにはイギリスとの旧条約が承継されている。

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匿名組合型ファンドと税務

昨日ご紹介したとおり、ベンチャーファンドは、今までは通常、民法上の組合(任意組合)や投資事業有限責任組合をvehicleとして使うことが多く、匿名組合を使うことはあまりなかったかと思います。
匿名組合方式自体は、「ゲームファンドときめきメモリアル」「新人グラビア☆アイドルファンド」など、株式投資以外の投資を行うファンドにはよく使われてました。
(正確には「ときメモ」ファンドでは、投資家は直接匿名組合出資を持つのでうはなく、ケイマンに作った特別目的会社「ときめきカンパニーリミテッド」の発行する社債に投資し、同SPCが調達した資金を、コナミ自身が営業者となる匿名組合に出資することになってました。)
任意組合と匿名組合の税務の違い
一般的に、投資を行うvehicleで税金が問題になるのは、以下の3点かと思います。
image002.gif
�の「組合レベルで法人税が課せられないかどうか」というのは、民法上の組合も匿名組合も、以下のように法人税基本通達で法人税が課せられない(人格なき社団としては扱われない)ことが定められているので、疑問の余地無しです。

法人税基本通達1-1-1
法第2条第8号(人格のない社団等の意義)に規定する「法人でない社団」とは、多数の者が一定の目的を達成するために結合した団体のうち法人格を有しないもので、単なる個人の集合体でなく、団体としての組織を有して統一された意志の下にその構成員の個性を超越して活動を行うものをいい、次に掲げるようなものは、これに含まれない。
(1) 民法第667条(組合契約)の規定による組合
(2) 商法第535条(匿名組合契約)の規定による匿名組合

�の源泉税ですが、匿名組合の場合、日本の居住者については、匿名組合員が10名以上いる場合には、利益の分配の20%が源泉徴収の対象になります。
つまり、このファンドのように、小口化されて匿名組合員がたくさんいるようなファンドでは、必ず分配される利益の20%は天引きされていることになります。
民法上の組合の場合、特に組合員が何名以上だと源泉徴収しないといけないというような規定はなく、個々の組合員として考えた場合に、法律上源泉徴収が必要なものについては、源泉徴収が行われることになります。
問題は�ですが、法人については、他の所得と同様、法人税等が同じ税率でかかってくるだけで特に問題とはなりませんが、個人は、所得の区分によって処理が違ってきます。
法律上明文の規定がないのですが、個人が匿名組合から受ける所得は、「雑所得」に区分されると考えられています。「雑所得」の場合には、他の給与所得などと合計して総所得金額を計算し課税されることになります。
つまり、個人が直接証券投資を行う場合であれば分離課税となり、未公開株のキャピタルゲインで20%、公開株のキャピタルゲインで10%の税金で済みますし、特定口座にしておけば確定申告もしなくていいところが、雑所得となると、確定申告もしなきゃいけないし、所得税率の高い人だと、他の所得と合算して、20%以上の税金を支払わないといけないことにもなります。
なぜこのスキームが選ばれたのか?
なぜこの匿名組合を使ったスキームが選ばれたのか、ですが。(以下、まったく私の推測に過ぎませんが。)
1つには、小口ということがあるかも知れません。
今まで、投資事業組合の出資というと、一口1億円くらいだったりすることも多かったので、税務上の解釈がちょっとずれても大きな影響が出ることになったわけですが、このファンドは一口100万円。この程度であれば、ちゃんと源泉徴収もしておけば、どういう解釈になっても大して問題にはならない、ということがあったかも知れません。
2つめには、従来、民法上の組合等だと、経費の処理が不明確だった、ということがあるかも知れません。
従来、個人が民法上の組合等を通じて株式に投資をした場合、その組合からの所得が、譲渡所得になるのか、雑所得や事業所得になるのか等が不明確で、組合でかかった経費についても、成功報酬その他については必要経費として認められるのか認められないのかがわからなかったりしており、実務上混乱を招いてました。
しかし、つい先日(6月18日)、経済産業省から国税庁への照会に回答があり、こうした処理の明確化が図られました。
回答
http://www.nta.go.jp/category/tutatu/bunsyo/02/houzin/2633/01.htm
照会
投資事業有限責任組合及び民法上の任意組合を通じた株式等への投資に係る所得税の取扱いについて(照会)

http://www.nta.go.jp/category/tutatu/bunsyo/02/houzin/2633/02.htm

これによると、
� 株式等への投資を主たる目的事業としていること
� 各組合員において収益の区分把握が可能であること
� 民法上の任意組合が前提とする共同事業性が担保されていること
� 投資組合が営利目的で組成されていること
� 投資対象が単一銘柄に限定されないこと
� 投資組合の存続期間が概ね5年以上であること
の6つの要件を満たす組合からの所得については、「株雑所得」または「株事業所得」に該当するものとし、GPの成功報酬や監査法人に支払った監査報酬その他の経費が、必要経費として認められることが確認されています。
もし、今回のファンドの組成のスキームをいろいろ検討していたときには、まだ、この事前照会に対する回答が出ていなかったため、小口の投資家の税務上の質問に対して明確な答えができないのもまずいと考えて、こうした点がより明確な匿名組合でGOをかけてドキュメンテーションしちゃったところにこの回答が出ちゃったのかも知れませんね。
3つめとして、以前お伝えしたとおり(証取法改正で「シリコンバレー的ファンド」等の運営に影響が出るか?)、来年4月から証券取引法上、投資事業有限責任組合や匿名組合の出資が「有価証券」として扱われることになることが何か影響しているのかとも考えましたが、政令案もまだ発表されてませんし、これによって税務が変わるということも無いかもしれないので、あんまりそれは関係ないかも知れません。
(ではまた。)

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匿名組合方式によるベンチャー投資ファンド

某証券会社より、「SBIブロードバンドキャピタル投資事業匿名組合」のDMをいただきました。(追記:リンク切れになってます。2006/8/14)
ソフトバンクインベストメント(さん)が組成したブロードバンド関連のベンチャー企業に投資するファンドですが、このファンドのおもしろいのは「匿名組合契約」で資金を集めるところ。
通常、日本の投資事業組合というのは、「民法上の組合」または「投資事業有限責任組合」で組成されることが多いかと思います。匿名組合による投資ファンドというのは、ちょっとめずらしいし、非常に興味深いスキームです。
ということで、今回は、ちょっとこのファンドを教材に勉強させていただこうかと思います。
組合とは?
ここで、簡単に基礎的なことをおさらいしておきます。
「組合」というのは、民法上の組合契約(民667〜688条)に基づくものです。

民法第六百六十七条
組合契約ハ各当事者カ出資ヲ為シテ共同ノ事業ヲ営ムコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ス
2 出資ハ労務ヲ以テ其目的ト為スコトヲ得

image002.gif
組合は、基本的には「みんなでワイワイやってこうぜ」という感じのvehicleで、組合の財産は組合員の共有(民668条)ですし、意志決定は組合員の過半数での決議(民670条1項)が原則となり、各組合員は無限責任を負うと解されています。
例えは悪いですが、株式会社などの法人が「人格」を持ち、様々な機能をもつ「機関」を有する、多細胞生物の中でも高等?な生物だとすると、組合は同質な細胞が寄り集まっただけの、より「原始的な」多細胞生物、というイメージです。
ただし、多数決で意志決定するというのは、ベンチャー投資には向きませんので、一般に投資事業組合では、「業務執行組合員」(民670条3項)を定めて、その人がかなり単独で機動的に意志決定できるように権限委譲されているのが通常です。
この業務執行組合員には、日本では通常、いわゆる「ベンチャーキャピタル会社」が就任するわけです。
また、各組合員は原則無限責任ではありますが、投資するのが有限責任の「株式」等のみになるため、組合で借り入れさえ起こさなければ、通常、出資を超えて損失を補填しないといけないということはないようになってます。
投資事業有限責任組合は、民法でなく「投資事業有限責任組合契約に関する法律」によって規定される組合で、民法上の組合と違って、業務執行を行う組合員(無限責任組合員:法7条)以外は有限責任になるとか、登記が必要(第4条)等の違いはありますが、基本は民法上の組合をベースにしています。
匿名組合とは?
組合契約が「みんなで決めよう」というのが原則の「集合体」であったのに対し、匿名組合は、より「中心人物」がいて、その人に対して出資を行う、というイメージになります。
その「中心人物」は通常「営業者」と呼ばれます。
image004.gif
組合が民法で決められている契約であるのに対し、匿名組合は「商法」で定められている契約。(商535〜542条)
組合で組合員が出資した財産が「共有」であったのに対し、匿名組合員の行った出資は営業者の財産になってしまいます(商536条�)し、匿名組合の出資者は有限責任が原則となります(商536条�)。
匿名組合員といっても、ことさらに出資者の名前を隠しまくらないといけないというわけではないのですが、「合名会社」というと出資者の「名」が全面に出るのに対しての「匿名」(有限責任)という感じです。
事業の責任については、営業者が「主」で、出資者はあくまで「従」ということですね。
組合と匿名組合の違いは?
組合と匿名組合の違いは、税務上の取り扱いの違いということになってくるのではないかと思いますし、匿名組合があまりベンチャー投資に利用されないのもこの税務上の理由によるところが大きかったのではないかと思いますが、その件については、また明日にでも。
(ではまた。)
民法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M29/M29HO089.html
投資事業有限責任組合契約に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H10/H10HO090.html
商法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M32/M32HO048.html

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休み(その2)

(本日分も、お盆休みとさせていただきました。<(_ _)>)
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(以下、オフのお話。)
今週火曜日は、月曜日に引き続き、栃木のホンダのサーキット「ツインリング茂木」でオフしてました。
ここのホテル、なかなかいい感じです。森の中の丘の上で、おまけに全室サーキットが遠望できます。サーキットだけでなく、ホンダのミュージアムや、ASIMOなどのロボットショーなどもありまして、ホテルともどもちょっと採算度外視っぽい感じでお得感が。
1000円払うと、ASIMOが(Logitechのコントローラーで)操縦させてもらえます。
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500円くらいで電動バイクにも乗れます。プロテクターつけてくれたりするので、普通の遊園地では、なかなか採算に乗りにくいのではないかと。
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ミュージアムも、本田宗一郎氏のベンチャースピリットを吸収しに行くにはいいところではないかと思います。
(では。)

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