アニメ制作費の融資スキーム

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8月19日の日経朝刊4面の記事。

東京三菱銀など新手法、アニメ制作費著作権で融資、コンテンツ向け多様化
東京三菱銀行とUFJ銀行、日本政策投資銀行はアニメーションが将来生む収益に着目した国内初の協調融資に乗り出す。(略)第一号は民放各局向けなどのアニメ制作会社のGDH(東京・新宿)。
 三行による協調融資は流動化の枠組みを取り入れたのが大きな特徴。制作会社はアニメ著作権を特別目的会社(SPC)に譲渡、その対価として制作費用を調達する。銀行団はSPCに協調融資するほか、外部投資家にも出資を求める。
 アニメが生むキャッシュフロー(現金収支)を銀行が審査し、企業側はその収益力を担保に迅速に資金を手にできることになる。
 初適用となるGDHは二つの作品の著作権をSPCに譲渡、合計九億円の制作資金を調達した。テレビ放映権なども今後SPCを通じて販売し、放映料など売り上げの回収を進める。

anime_spc.jpg
出所:日本経済新聞
ということで、資金繰りの難しいアニメ制作会社にとっては、大変結構なことではないかと思います。
記事で気になるのは、以下のような点。
「過去の著作権」か「今後の著作権か」
日経新聞の図を見ますと「著作権譲渡」と書いてありますし9億円という高額でもありまるので、すでにキャッシュフローが見えている過去の作品をSPCに売却してその資金を制作費に回すのかなとも思えるわけですが、株式会社GDHのリリースを見ると、今後作成するアニメの資金のファンド、ということのようですね。
zu0726.gif
日経新聞の図を見ると銀行融資が主体のように見えますが、実績がある会社でも今後制作する作品のキャッシュフローは読みにくいと思うので、融資(debt)と匿名組合出資(equity)だと、かなり匿名組合出資の比率が高いのではないかと想像します。
組成の手数料
銀行や証券など、かなり「大御所」が並んでらっしゃいますし、総額9億円ということで、資金調達としては(アニメとしては大きめでしょうけど、世間一般の資金調達の中では)「小粒」の部類に入るのではないかと思いますので、こうしたスキームを組成して投資家を集める手数料も、それなりに取られるのではないかと想像いたしますが、どのくらいの%でやっていただけるもんなんでしょうか。
取られた%だけ、つまりはアニメの制作費が上がるか、制作会社または投資家の取り分が減るか、なわけですから、結構、「みんなにおいしくみえる」スキームを組むためのバランスが難しそうです。
著作権が制作会社に残るのかどうか
日経新聞の図では「著作権譲渡」と書いてあるので、(著作人格権ではない著作財産権の部分について)「売却」しちゃって制作会社の手元に何も残らないようにも見えるんですが、株式会社GDHのリリースによると、SPCがアニメの制作依頼を(これから)し、「著作権が製作会社に残る」としています。(著作人格権だけが残る、という意味?)
「GDH及び外部投資家は匿名組合出資契約を締結致しました」とあるので、著作財産権から発生する今後のキャッシュフローの一部について制作会社にもリターンがあるしくみになっているようです。(そういうインセンティブが制作会社に残らないと、外部投資家も怖くて出資できないですよね。)
匿名組合出資の条件の差
株式でfounderと外部投資家で株価に差を付けて出資をするように、この匿名組合で制作会社と外部投資家の間に条件で差を付けているのでしょうか?
まったく同じ条件で外部の投資家と制作会社が匿名組合出資をするとなると、当然、制作会社側は、資金需要が旺盛な(お金がない)のでこういったスキームを組んで調達を行ってるわけで、単純な出したお金の比率で権利が外部投資家にいってしまうと、ちょっとかわいそうな気がします。
そのへんは、SPCがアニメの制作依頼をするときの粗利をどれくらい乗せるかとのバランスにもよると思いますが。
どんな会社?
参加する銀行もなかなか大どころを引っ張ってきてますが、この制作会社ってどんな会社なのかな、と思って会社概要を見てみると、、、
某ファンド(http://www.globis.co.jp/gcp/)の方とか、ファイナンスにお強い外部役員の方々が並んでらっしゃいますね。
なるほど、なるほど:-)。
(ではでは。)

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5 thoughts on “アニメ制作費の融資スキーム

  1. こんにちは
    著作権については制作会社が持ち、一定期間(ファンドの期間5年)の窓口権と収益をファンドが得るといったところでしょうか。

  2. コメントどうもありがとうございます。
    >といったところでしょうか。
    といったところですかね。
    ではまた。/

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