「運王」とリスク

6日のエントリー「神とリスク」の続き、です。
(kataさんからコメントいただきました。ありがとうございます。)
「リスク」というと普通は「ダウンサイド・リスク」を想像するかもしれませんが、広義のリスクは「分散」「ばらつき」「σ」「ボラティリティ」などと同様の概念で、アップサイドも含んでます。
つまり「リスク=運」とも言えますね。
以下、今週発売の「イブニング」で最終回を迎えた「運王」より。
まあ、ただのマージャン漫画と言ってしまえばそれまでですが、「運とは何か」を考察したマンガでした。
(これから読む方は、ネタバレ注意。)
image001.jpg (Amazon.co.jp)

日本を支配するほどの巨万の富を得た後、すべてを失った照夜(写真)が、主人公「ゲッツー」に向かって問いかけるシーン。
(照)なァ ゲッツー 教えてくれよ
   運って何なんだ?
(ゲ)運は・・・・・・エレベーターだ
(照)エレベーター?
(ゲ)そうさ
   俺たちを上へも下へも連れてってくれる
   だけど大切なのは その位置じゃねェ
   屋上にいようと地下にいようと・・・
   大事なのはエレベーターに乗ってる中身なんだよ
(照)なァ ゲッツー
(ゲ)うん?
(照)俺はもう一度上に昇れるか?
(ゲ)上行きのボタンを押せ
   そしてゆっくり待って開いたら
   迷わず飛び乗るんだ

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三菱自動車工業の優先株式

本日の日経朝刊28面に三菱自動車の優先株の発行決議の(全面!)公告が載ってます。
http://ir.nikkei.co.jp/data/pdf/20040609/04060049.pdf (5MB。注意!)
本日は、これをちょっと掘り下げてみたいと思います。
A種とG種
中身は、
第1回A種優先株式
第2回A種優先株式
第1回G種優先株式
の3種類の優先株式の発行要項。
B種、C種、D種、E種、F種が抜けてますが、これは、今後、フェニックス・キャピタルやJPモルガンが発行する分への割当になるんではないかと想像します。
「第1回A種」は、三菱重工、三菱商事、東京三菱銀行、三菱信託が引き受け、
「第2回A種」は、中華汽車工業股イ分有限公司(台湾の生産販売会社)、東京海上、明治安田生命、その他三菱グループ会社5社、
「第1回G種」は、東京三菱銀行と三菱信託が引き受けるとのこと。
EDINETに開示されている5月21日付臨時報告書では、「第2回A」の記載がなかったのですが、今回増枠したということでしょうか。
優先順位、議決権
要項の「18」に記載された優先順位を見ると、優先配当金、優先中間配当金、残余財産分配権の別に、下図のような優先順位がついています。
image003.gif
今回発行されるA種とG種は議決権がついてませんが、おそらく、フェニックス・キャピタルやJPモルガンが入れる場合には(ホントにまだ入れるんですかね?)、当然、議決権付きで、かつB種とかF種とかの優先順位の強いところを取ってくるんでしょう。
A種もG種も、非累積型で非参加型の優先配当金が付きますので、「ある時払い」の劣後債的な優先株式ということになります。
転換予約権
優先株主は、来年の10月以降いつでも普通株式への転換が行えます。
この場合の転換条件を、以前のエントリーで書いた横浜銀行の転換社債の転換条件の事例と比べて見ると、
横浜銀行のは20連続取引日の東証の「終値」の平均値が有効な転換価額下回る場合には、転換価額が引き下げられることとなっていて、株価が上がってきても転換価額は一度下がったら二度と上がらない条件(下限「80%」)となっていましたが、
この三菱自動車の転換条件は、20取引日の「売買高加重平均価格」の平均値で修正されることになっており、株価が上がってくれば転換価額も復活するしくみとなっています。
「売買高加重平均価格」のほうが、単純な終値より「終値関与」的な操作では転換条件を変えにくいことになり、より安定的な方式と言えます。
ただし、下限は当初転換価額の「50%」まで。上限は当初転換価額までです。
またおもしろいことに、今回発行される3種のうち、「第2回A種」だけは下限に「50%(但し、下限を30円とする)」という条件がついてるんです。当初転換価額は6月25日から45取引日の売買高加重平均価格の平均で決まるので、三菱自動車の昨日の終値は201円ですが、7月8月で50円割れくらいまで下がることも想定しているということでしょうか。

「売買高加重平均価格」とは、株式会社東京証券取引所が、関連する取引日における当社の普通株式の普通取引の売買高総額を当該取引日における普通株式の普通取引の売買株式総数で除することにより、当該取引日における普通株式の売買高加重平均価格として計算し提示する価格をいう。但し、株式会社東京証券取引所がかかる価格を提示しない場合は、ブルームバーグ・エル・ピー(Bloomberg L.P.)が当該取引日の午前10時から11時の間(ロンドン時間)において提示する7211ジェイティー・エクイティ・エーキューアール(7211JT Equity AQR)の画面(又はそれに代わる画面若しくはサービス。以下「参照画面」という。)に表示された価格(当該取引日において当該参照画面が提示されない場合には、当該取引日の株式会社東京証券取引所における普通株式の普通取引の終値(気配表示を含む。))をいう。

転換枠の優先権
この優先株のちょっとおもしろいところは、普通株に転換できる枠に優先順位があるところ。
現在の発行済普通株の総数は、Yahoo!ファイナンスによると、1,483,438,934株で、昨年9月の中間期の有価証券報告書の発行済(普通)株式総数と変わらず。
当時の授権枠(会社の発行する株式の総数)は、発行済の2倍くらいしかなかったのですが、今回、優先株式を発行するために定款変更をしたはずなので、その時に、商法の上限の発行済株式数の4倍まで広げているはずです。(商法347条)
優先株式は1株100万円とデカいですが、それでも1株とカウントしますので、今回の2950億円の発行で29.5万株にしかなりません。(無視できるくらい少ない。)
image004.gif
問題は、普通株式に転換されるときにドッと株数が増えること。
例えば、転換価額が100円で現在想定されている最大4,950億円分転換すると、約50億株も増えてしまい、授権枠の余りがなくなってしまいます。
もちろん、普通株式が増えた後に株主総会で定款変更を行えば授権枠は増やせるのですが、承認されないリスクや、それまでの間の価格変動リスクを負ってしまいます。
ということで、この条項は、EDINET5月21日付臨時報告書には記載されていないのですが、第1回A種とG種(重工、銀行や商事等)が引く形で、他の三菱グループの株主(東京海上等)の転換を優先する条件を付けたということではないかと考えられます。
C種からF種までの記載がないので、それも、第3回A種から第3回B種までよりは一歩下がった転換枠になるということでしょうか。
上図で、第1回A種と第1回G種の株主は、それぞれ転換請求を出した株数×(A)/(B)の株数しか転換させてもらえません。
もっとも、今後、同社が破綻するようなことになれば、残余財産分配権がついた優先株式のまま取っておいた方が有利なので、「我先に」と転換に殺到するような状況というのは当面考えにくいわけですが。
(ではまた。)
参考:公告の規定(第1回A種優先株式の転換予約権の部分の一部):
mmc_p_stock0077.JPG

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自社株買い定款変更

昨日の日経夕刊3面より。

日本企業の自社株買い定款変更、英機関投資家が反対、取締役会の独断危ぐ。
 英大手機関投資家ハーミーズは六月末に集中する日本企業の株主総会で、自社株買いを株主総会ではなく取締役会で決めるようにする定款の変更議案に反対票を投じる方針を決めた。株主の関与が薄れ、自社株買いの決定過程が分かりにくくなると判断した。米機関投資家も同様の対応を検討し始めた。
(中略)
 発行済みの株式を企業が買い戻す自社株買いは過剰な発行済み株式を吸収し資本効率を改善させ、一株利益の増加につながるとして、欧米の投資家も積極的に求めてきた経緯がある。ハーミーズも自社株買い自体には反対していないものの、新制度が取締役会の独断につながりかねないと判断した。
例えば、より有効な資金使途があるのに自社株買いに手元資金を使えば長期的に株主価値を損ねるとみている。

うーん。
そりゃそうですが、そもそもそれは、取締役を変えたほうがいいかも知れませんねえ。

 株主総会での議決権行使について機関投資家に助言する米国のコンサルティング会社、ISS(インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシズ)も一部の企業には自社株買いの定款変更に反対票を投じるよう顧客投資家に助言し始めた。例えば、持ち株比率が五〇%近い大株主がいる企業の場合、取締役会が決めた自社株買いで発行済み株式数が減っていくと、一般株主の知らぬ間に、大株主が実質五〇%以上を握ってしまう場合があると説明している。
(ロンドン=田村篤士、ニューヨーク=藤田和明)(以下略)

基本的には、株式の発行(増やすほう)については、株式譲渡制限のついていない会社は、「授権枠」(最大で発行済株式数の4倍)まで自由に発行できてしまうので、自社株買い(減らすほう)も、ある程度自由にできてもいいと思うんですけどねえ・・。
毎年株主総会で特別決議を経るというのも、実務としてはしんどい。
改正商法でも、以下のように、配当可能利益の範囲という制限もありますし、TOBまたは市場での買いつけでやらないとだめですから、すべての株主に平等ではあります。

第二百十一条ノ三
会社ハ左ニ掲グル場合ニハ取締役会ノ決議ヲ以テ自己ノ株式ヲ買受クルコトヲ得
一 其ノ子会社ノ有スル自己ノ株式ヲ買受クルトキ
二 取締役会ノ決議ヲ以テ自己ノ株式ヲ買受クル旨ノ定款ノ定アル場合ニ於テ第二百十条第九項本文ニ規定スル方法ニ依リ自己ノ株式ヲ買受クルトキ
� 前項ノ決議ハ買受クベキ株式ノ種類、総数及取得価額ノ総額ニ付之ヲ為スコトヲ要ス
� 前項ノ取得価額ノ総額ハ最終ノ貸借対照表上ノ純資産額ヨリ第二百九十三条ノ五第三項第一号乃至第四号ノ金額及同条第一項ノ規定ニ依リ分配シタル金銭ノ額ノ合計額ヲ控除シタル残額ニ同条第三項第五号乃至第七号ノ金額ヲ加算シタル額ヲ超ユルコトヲ得ズ
� 第一項ノ決議ニ依リ自己ノ株式ヲ買受ケタル場合(同項第一号ニ掲グル場合ヲ除ク)ニ於テハ其ノ決議前ニ終結シタル最後ニ招集セラレタル定時総会ノ終結後ニ買受ケタル自己ノ株式ノ買受ヲ必要トシタル理由並ニ其ノ株式ノ種類、数及取得価額ノ総額ヲ同項ノ決議ニ依ル買受後最初ニ招集セラレタル定時総会ニ於テ報告スルコトヲ要ス

第二百十条
� 第一項ノ決議ニ基キ株式ヲ買受クルニハ市場ニ於テスル取引又ハ証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二章の二第二節ニ定ムル公開買付けノ方法ニ依ルコトヲ要ス但シ第二項第二号ニ掲グル事項ニ付決議アルトキハ此ノ限ニ在ラズ

同じ面の記事で、NTTドコモは、

改正商法に対応した定款変更に加え、昨年同様、六千億円の自社株買い枠設定の二つを提案する。平田正之常務は「定款変更は不測の事態に備えるため」と説明。それとは別に従来方式を使って「平時の利益配分方針を株主に明示する必要がある」と語る。
(中略)
株価安定や円滑な総会運営を意識し、NTTドコモ方式を検討する企業が相次ぎそうだ。

とのこと。
枠の法的意味はなんなんでしょうか。
決議までしなくても、方針を明示するだけでいいような気もしますが・・・。
(ではまた。)

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外資による買収、租税条約

昨日の日経新聞から。

合併対価に外国株・現金、外資主導の再編容易に——法制審方針。
2004/06/06 日本経済新聞 朝刊1面
 法相の諮問機関である法制審議会は企業合併の際、相手先の株主に渡す対価として、新たに外国株式を含めた他社株式、社債、現金を充てることを認める方針を固めた。企業の再編を促すため、日本経団連や米国が求めているもので、外国企業にとっても日本企業を合併・買収(M&A)しやすくなる。法務省が来年の通常国会に提出する会社法案に盛り込み、二〇〇七年中の施行を目指す。(中略)
 新制度は、法制審の会社法部会が秋にまとめる会社法案の要綱案に明記し、来年二月をめどに法相に答申する。

つまり、「買う側」の外国企業は「カネ」で買う以外に、自分で印刷した自社の「株券」を「カレンシー」として使って日本の会社を買うことができる、ということです。
これによって日本の会社が買いやすくなれば、需給バランスから会社の価格もつりあがる要因となる可能性があります。例えば、IT系のマーケットの例をあげると、今だと「売却先としては○フトバンクか○天か○イブドアくらいかなあ」というように売り先が数社に限られてしまうところが、海外の企業も候補に上ってくる可能性があるということ。(ただし当然、相手が欲しがるような会社であれば、ですが。)
また、日本の企業に売却(合併)するのと違って、まだまだ「言葉の壁」が交渉のネックになるかも知れません。気の効いた仲介者がいればいいとも言えますが、やはり一般的には、会社の魅力を最も上手に伝えられるのはその会社の社長だし、株主を一番まとめられるのも社長だし、社長自身が交渉の経過を直接理解できれば、話も早い。
しかし、2007年というのはずいぶんと先の話ですなあ。それまでは、外国企業との合併、売却は別のスキームで対応する必要があります。(今でもできないわけではないので、本当に欲しがられれば手はあります。)

(続き)
 外国企業が日本企業を傘下に収める場合、日本に設立した子会社が日本企業と合併する「三角合併」といわれる方式が一般的。だが、相手先企業の株主に存続会社の株式を与えなければならないため、存続会社の経営権を完全に握ることができない。
(中略)
 合併対価への現金の使用については現在、株式を交付する際に、株式だけでは調整不可能な部分を現金で渡す「合併交付金」が認められている。新制度では、消滅会社の株主に金銭のみを支給する「キャッシュアウト・マージャー」といわれる合併も選択可能になるため、潤沢な資金を持つ外国企業にとって、日本企業のM&Aが容易になる。

もう一つ、対内投資にフィナンシャルな要因で影響を与える可能性のある事象について。

本日 日本経済新聞朝刊13面「今週の予定」
7日(月)大安
租税条約の改正交渉
対オランダ、東京で。投資促進と租税回避防止が目的。
欧州各国との改正交渉の第一弾。

租税条約の関係で、オランダにある投資用のvehicleから投資されるケースは多いです。例えば、新生銀行(旧日本長期信用銀行)に投資した「New LTCB Partners CV」とかもそう。CVというのは、オランダ法上のLimited Partnershipです。
(以上)
以下、ご参考記事、URL:
株主を追い出す(スクイーズ・アウト)
https://www.tez.com/blog/archives/000034.html
課税方式別に見た事業体(パススルー型・ハイブリッド型)の取り扱い(KPMG税理士法人)
(↑web上のコンテンツとしては、かなり詳しく書かれてらっしゃいます。)
http://www.kpmg.or.jp/tax/newsletter/s04_04_19.html
日米租税条約(新条約)の署名について(平成15年11月 財務省)
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy151107.htm
所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国との間の条約(和文)
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy151107a1.pdf
(同英文)
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy151107a2.pdf
2004/01/28 日本経済新聞 夕刊18面

旺文社逆転敗訴、租税回避いたちごっこ——相次ぐ新手法、国税庁の対策後手
(中略)
 消費者金融の旧「ディックファイナンス」、米証券大手「モルガン・スタンレー」の両グループは、商法の「匿名組合」契約を結んだオランダの関連会社から事業資金を調達し、収益を同国に送金。匿名組合の分配金には日本で課税できないという日蘭租税条約の規定を利用し、課税を逃れていたことが、一昨年から昨年にかけ判明した。
(中略)
 ただ、租税回避行為は違法ではなく、企業側が裁判で争うことも少なくない。国税庁は租税条約や法令の改正で“抜け穴”を事前にふさぐ作業も進めているが、新手のスキームの後追いになっているのが実情だ。

「外国税額控除制度の改正に関する提言」
2003年9月 社団法人日本貿易会経理委員会、KPMGジャパン税務グループ
(注:国際的な税金の「取り合い」と今後の提言が、非常にわかりやすくまとまってます。)
http://www.jftc.or.jp/proposals/2003/2003_09_18a_details.pdf
http://www.kpmg.or.jp/tax/newsletter/pdf/gaikokuzei.pdf

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神とリスク

Ronald Reagan元大統領が亡くなられたそうです。ご冥福をお祈りいたします。

NEWS ALERT from The Wall Street Journal
Former President Ronald Reagan died Saturday at age 93. Mr. Reagan, who had lived longer than any other U.S. president, had been out of the public eye since disclosing a decade ago that he had Alzheimer’s disease.

アメリカの大統領は演説の中で「GOD」という言葉を多用しますね。日本の首相が国会演説で「神が・・・」と言ったら極めて違和感があると思いますし、首相は退任を迫られるのではないかと思います。
アメリカでも政教分離という概念はあるようですが、

合衆国憲法 修正第一条(Amendment I)
Congress shall make no law respecting an establishment of religion, or prohibiting the free exercise thereof; or abridging the freedom of speech, or of the press; or the right of the people peaceably to assemble, and to petition the government for a redress of grievances.

そもそも「GODが存在すること自体」は、アメリカ人にとっては「当然」のことなんでしょう。

さて、その「GOD」という言葉は、日本語の「神」という言葉とはちょっとニュアンスが違う、ということがよく言われますが、ぴったりじゃないかと思う言葉があります。
それは「リスク」です。(←日本語やないやん・・・。)

映画「ケープ・フィアー」で、自分を弁護した弁護士を逆恨みしたロバート・デニーロが「エステル記と詩篇の間を読め」とスゴむシーンがあったのですが、旧約聖書のエステル記と詩篇の間が「ヨブ記」という物語です。(ご参考URLは例えばこちら
この「ヨブ記」は、キリスト教やイスラム教やユダヤ教の人が思い描く「GOD」のイメージを非常によく表しているのではないでしょうか。
ヨブ記は、世界で最も信心深く真面目で幸せに暮らしている主人公ヨブに対して、神が、その家族も財産もすべて奪い、病魔に苦しめさせるという超ハードSM的仕打ちをして、絶望のどん底に突き落とすという物語です。そこには「何か悪いことをしたから報いを受けた」という「因果関係」は存在しません。
この「神」は、「商売繁盛を祈願したら必ず応えてくれる便利な存在」ではなく、森羅万象すべてを司り物理法則をも包含する全能者のイメージです。

私は子供の頃、21世紀にもなれば宗教のような「非科学的な」ものは消えうせているんじゃないかと予測していたんですが、その予測は見事にはずれました。共産主義諸国が崩壊して宗教が復活し、世界の宗教を信じる人の比率は減るどころか益々増えているのではないかと思います。
日本でも、経営トップについては、信心深かったり風水を気にしたりする人は非常に多いですね。超優良企業とされる一部上場企業の社長まで、「方角が悪いので今年はあちらの地方には出店しない」とか。
「真面目に努力していれば必ず報われる」という環境に置かれている人は、あまり神の必要性を感じないんじゃないでしょうか。戦後の日本の高度成長期はまさにこうした環境に合致するものではなかったかと思います。
上の人の指示を受けて働いていればいいサラリーマンは、事業リスクからは隔離されてきたし、自分のやったことがうまくいかなかったら、「上の指示が悪かったから」と人のせいにもできるわけです。個人金融資産の過半が預貯金だということは、自分の資産についてもまったくリスクを負ってこなかった、ということでもあります。
が、今までも、企業のトップに立ってリスクを一人で背負っている経営トップは、「がんばったらその分報われる」「よく考えれば必ず成功する」というだけではない「リスク」を一番感じていて、何らかの形でそれをマネジする必要に迫られていたのではないかと思います。

今まで、日本は「よく勉強すればいい学校に入れて、いい会社や役所に勤められて、そこでがんばれば出世できる」という「因果」が成り立っている社会だったわけです。これって、資本主義社会というよりは、「世界で最も成功した共産主義国家」だった、と言えるかも知れません。が、終身雇用制度が崩壊し、大企業に勤めて真面目に働いていても、明日どうなるかわからない、本当の意味での「市場経済」的な社会になってきたわけです。

ここ数年ずっと、日本もシリコンバレーのように、わずかな可能性にかけてチャレンジすることが賞賛されるような社会になれるのかどうかということを考えてきたのですが、その要因の一つとして、こうした「神」のインフラがあるかないかは非常に大きいのではないかという気もしています。
すべてが「因果」で考えられてしまう社会では、失敗したら「そいつの能力がなかったからだ」ということにしかなりません。失敗した上に無能者扱いされるのでは、チャレンジする気も失せるというもんですわね。
失敗は「神(≒リスク)」のせいだ、ということであれば、失敗しても「Good try!」ということになります。「科学的な」説明をすれば、因果は存在するにしても、それは世界中の様々な条件が複雑にからみあったカオスであり、いくらシミュレーションしても結果は予測できない、つまりその部分は「リスク」が残存する(んだから、しゃーないじゃん)、ということになるかと思います。

こういうリスクに対するマネジメント(特に精神面でのマネジメント)が、日本の社会的インフラの課題なんではないかという気がしています。

When I find myself in times of trouble,
mother Mary comes to me,
speaking words of wisdom, let it be.
(以下略)

(ではまた。)

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「経営判断の原則」

「電車男」、読みました。前評判があまりに高くてちょっと期待しすぎたところはありましたが、かなり楽しませていただきました。初めてデートした時のドキドキ感とか思い出しましたね。「あらゆるケース」を想定していろいろシミュレーションしたりシナリオ書いたりとか。(笑)
でも、当たり前ですが、初めてのことをいくら頭で考えても限界があるわけで、絶対シミュレーションどおりでないことが発生するんですよね。w
ということで、(本題に入りますと)、本日は、経営上「やってみなけりゃわからない」ことについてのチャレンジとその法的責任についてのお話。
経営にはリスクがあります。
株式公開すると(しなくても)経営者は株主代表訴訟される可能性もあるわけですが、「やってみなきゃわかんない」ことも多いのに、失敗したからと言ってなんでもかんでも訴えられたんではたまったもんじゃない。特に、ベンチャー企業というのは、誰もやっていないこと、成功確率の低い(だけど成功すれば成果も大きい)ことにもチャレンジしていかないといけないわけです。
どこまでなら訴えられてもOKで、どの線を越えるとアウトなのか?というのは、その企業の置かれている環境にもよるので、一概には言えないわけですが、その問いに対する一つの答えが「経営判断の原則」という概念になります。
以下、今年2月に改定された日本監査役協会が発表した「監査役監査基準」について、旬刊「商事法務」5月5・15合併号(No.1697号)で、「「監査役監査基準」全面改定の背景と実務対応」という座談会が行われてますので、その内容から。(下線部筆者)

(武井一浩氏)大きな点としては、平成五年商法改正以降の株主代表訴訟の増加に伴う、いわゆる「経営判断の原則」に関する下級審判例の修正、それから大規模公開会社の取締役に対する内部統制システムの構築義務です。これらはいずれも取締役の善管注意義務に関する判例法を通じた解釈論の動きであり、取締役の善管注意義務に違反が無いかをチェックする監査役の職責にも当然影響する話になります。
(中略)
(尾崎安央氏)ビジネス・ジャッジメント・ルールですが、これはアメリカの判例法理であることはご存知だと思います。要するに、ビジネス・ジャッジメントについては司法判断しないということだろうと考えますが、アメリカの判例の進展において、意思決定のプロセスの適正性が重要視されてきたことも周知のことかと思います。そのような内容が十四条で明確化したわけです。つまり、取締役会が意思決定をする際にどれだけ十分な情報を得ているか、具体的なシミュレーションをどれだけやっているか、必要な場合に専門家のアドバイスを適切に受けているかなどを監査する。こういった厳格なプロセスのもとに経営判断したならば、結果は問わない。ときにリスクを取る経営判断があるかもしれませんが、予想されたリスクが発生したとしても、慎重な審議をした結果ならば責任は問わない。いい加減な意思決定をしていたならば、責任を取ってくださいということになるわけで、そこのところを具体的に、十四条一項で一号から五号という形で明瞭にしたつもりです。

ググってみますと、legal-definitions.comというオンライン辞書サイトでは、

in corporate law, business judgment rule is doctrine that protects officers and directors of a corporation from personal liability so long as the actors acted in good faith, with due care, and within the officer or director’s authority.

と、一歩進んで「取締役等をprotectする」原則であると言ってますね。(下線部筆者)
こうした原則が明確になるによって、取締役は思う存分新しいことに「チャレンジ」することができます。
ただし、訴訟等を恐れてビビりすぎるのも困りますが、逆に失敗の恐怖のヒューズが壊れてて、「何事も、やってみなきゃわかんない」と、テキトーな判断で新事業とかやっちゃうベンチャー経営者も(よくいらっしゃるんですが)困ります。経営者がわからなくても、誰か専門家に聞いたり部下に調べさせればわかる話というのも多いわけです。
チャレンジも大切ですが、その会社にとっての「in good faith」とか「due care」とはどういった水準なのか、というのもよーく考えて行動したほうがいいと思います。
(ではまた。)
(以下参考資料)
監査役監査基準
http://www.kansa.or.jp/cc01.html
II 改定の視点
 取締役会その他における意思決定に関しては、取締役の善管注意義務履行の判断基準としていわゆる経営判断の原則が判例で定着しつつあることに鑑み、十分な情報と適切な意思決定過程に基づいた合理的決定がなされているか否かという観点を、監査役監査基準に盛り込むこととした。
(中略)
(取締役会等の意思決定の監査)
第14条
1.監査役は、取締役会決議その他において行われる取締役の意思決定に関して、善管注意義務、忠実義務等の法的義務の履行状況を、以下の観点から監視し検証しなければならない。
(1)事実認識に重要かつ不注意な誤りがないこと
(2)意思決定過程が合理的であること
(3)意思決定内容が法令又は定款に違反していないこと
(4)意思決定内容が通常の企業経営者として明らかに不合理ではないこと
(5)意思決定が会社の利益を第一に考えてなされていること
2.前項に関して必要あると認めたときは、監査役は、取締役に対し助言もしくは勧告をし、又は差止めの請求を行わなければならない。

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(大きなお世話?)はてな等への(潜在的)設備投資圧力

最近、ときどき「はてな」や「gree」が重たいことがあるような気がして。(気のせいならいいんですけど・・・。)
「Blogによるコミュニケーションの変化(仮説) 」および
「Blogによるコミュニケーションの変化(仮説)その2」
で書かせてもらったのは、
「トラフィックが特定の『ブランド』サイトからblogなどの『ノンブランド』サイトに分散化されつつあるのではないか」
「その分散化を後ろで支えるはずなのが、(ポータルやサーチエンジンなどの他に)、分散化されたサイトを個々の利用者向けに切り出す、『はてな』等のエージェント的なサービスではないか」
という仮説でした。
Hatena_Gree_Mixi.jpg
(出典:Alexa)
ネットワーク的なサービスは、「ムーアの法則を超えた」トラフィックの増加をするものが多く、恐らく、上記のようなサービスも今後トラフィックが急増し、(うれしい反面)、様々な問題、特に設備投資の資金負担・資金調達の問題が大きくなってくるのではないかと思います。
以下、実際、各サービスの内部データ等拝見したわけでもなんでもないので、ホームページに開示されている内容だけからの推測ですが、
株式会社はてなは、会社概要を見ると資本金1000万円とのことで、まだ、VC等からの資金は入れてらっしゃらない模様。(当然、ラブコール殺到でしょうけど。)
mixiを運営している株式会社イー・マーキュリーは、資本金6,420万円。増資時に資本準備金に半分繰り入れているとしても、1億円程度の調達額かと推測されます。同社が経営しているFindJob! はキャッシュを生みそうなビジネスモデルですが、それでも、ホームページに開示されている情報を見ると、2002年度実績(2年前ですが)で売上1億5200万円。従業員数 29名(契約社員等含む)というところからしても、利益は出ている可能性がありますが、以上のデータから推測する限り、サーバー等にガンガンいくらでも投資をできるほどキャッシュが湧いているという感じでもないですね。
Greeは、「グリーの運営は、上記のメッセージに基づき、そのミッションを実現するため、開発者である田中良和により、個人的なボランタリーで企画/開発/運営が行われています。」とのことで、個人で運営されているようですが、orkutと同様、個人とは言えバックに「超大物」がついてらっしゃっるので、ちょっとやそっとの資金には困らないのかも知れません。(よく存じませんが。)
梅田望夫さんが、「公開資料からかいま見えるGoogleのコンピュータシステム」というエントリーで、

S-1資料によれば、Googleがこれまでに投じたシステムコストは、ハードウェア機器に対して2億5000万ドル。そこから、今Googleは4万5000台から8万台のサーバーを管理しているのではないかと推測している。

というTNL.Netの「How many Google machines」という記事を紹介されてます。
このGoogleの1/30の設備投資で済むとしても、10億円オーダーの設備投資が必要になってくることになります。
ネットバブルの頃は、ハードやミドルウエアのベンダーさんが、ベンチャー向けに破格の値段で製品を提供してくれたりしたもんですが、今はどうなんでしょうか。
小池良治さんの、「モジュラー・データセンターとサーバー・バーチャライゼーション」(←これ、最高おもしろいです。)を読むと、データ処理量が急速に増えていく場合、単にサーバーの数を増やしていけばいいわけではなく、機器間の最適化のマネジメントや3層構成(Three-Tier Server Model)の見直しまで含む様々な技術的問題を解決していかないといけないということがイメージされます。
つまり、大規模なシステム運営を前提としたイケてる技術者の方々なども採用していく必要があるし、そのためにはそういう方々が「勤めたい」と思わせる会社の環境や条件も整備しないといけないはず。
こうした「トラフィックの増加がムーアの法則を追い抜く」タイプのビジネスモデルの場合、技術はいいのにファイナンス面から成長の限界が来たりすると非常にもったいないですね。
Googleが、Kleiner PerkinsやSequoia Capitalから投資を受けたように、こうした日本発の可能性のあるサービスに、「50億円だろうが100億円だろうが出しまっせ。金のことは心配せず、君らはとにかく世界があっと驚くようなサービスを作ってくれ」というような超太っ腹な投資家が資金的なバックアップとして付いたりすれば、非常に「レース」がおもしろくなるんですけど。
1億円投資してもらって喜んでいたら、実は腰の引けた投資家で、「上と相談いたしましたが、御社にはもうこれ以上投資できないということになりまして〜」と追加投資が得られなかったり、20億円くらいのvaluationですぐバイアウトやIPOを勧められるようなことになると悲しいかも知れません。
え?大きなお世話だ?
こりゃまた、どうも失礼いたしましたー。m(_ _)m
(ではまた。)

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銀行の証券仲介業解禁決定!

非常に小さい記事ですが、

改正証取法が成立(本日 日本経済新聞朝刊4面)
 銀行への証券仲介業解禁や、不公正な取引への課徴金などを盛り込んだ改正証券取引法が二日、参院本会議で賛成多数で可決、成立した。金融庁が今国会に提出していたもの。(中略)
証券仲介業の解禁は、証券会社への株式売買の取り次ぎや顧客の勧誘を金融機関に認めるという内容。十二月一日から施行する。

映画の予告編的に言うと、
(カメラ、古ぼけた扉の鍵穴にズームしていく)
NA:「70年間眠り続けたあの怪物が・・・今、よ・み・が・え・る〜」
(鍵穴からのぞくと、暗闇の中に赤く光る目が・・・)
SE:「キシャーーーッッ!」
NA:「12月1日、日本が震撼する〜」
ってな感じでしょうか。
というわけで、今国会での成立は厳しいんじゃないかというウワサも一部ありましたが、さすが金融庁(様)、(実質)ユニバーサルバンキングの時代が日本にやってきます。
銀行のオンラインバンキングのホームページで株も取引できるというようなことになれば、かなりフツーの人まで株の取引を始めて、相当な量(数年で百兆円規模!?)の資金が預金から株式市場にシフトすることも十分考えられます。
ご参考図:
financial_assets3.JPG
出典:日本銀行調査統計局の「資金循環の日米比較:2003年4Q」
一方で、こんな法律も成立。

(続き)企業に株券の廃止を義務付ける株式ぺーパーレス化に向けた商法などの改正法も成立した。

今、公開しようとしている会社は、株券の印刷費払うのがバカみたいですね。
(ではまた)
ご参考エントリー:
「証券仲介業とは何か」https://www.tez.com/blog/archives/000010.html
「グリーンシートの『本当の意味』」https://www.tez.com/blog/archives/000008.html
「ネットVS金融」https://www.tez.com/blog/archives/000007.html
以下、ご参考資料:
(出典:参議院ホームページ
日程第一〇 証券取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
日程第一一 株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
  右の両案は、財政金融委員長から委員会審査の経過及び結果の報告
  があった後、押しボタン式投票をもって採決の結果、賛成一七〇、
  反対一七にて可決された。
証券取引法等の一部を改正する法律案(閣法第八三号)(衆議院送付)要旨
本法律案は、内外の経済・金融情勢の変化に対応し、市場機能を中核とする金融システムを改善・強化する必要性にかんがみ、証券取引における課徴金制度の導入及び証券取引等監視委員会の検査範囲の拡大による市場監視機能の強化並びに銀行等の金融機関の証券業務の範囲の見直しによる有価証券の販売経路の拡充を行うとともに、有価証券の対象範囲の拡大、目論見書制度の合理化、最良執行義務に係る規定の整備等、所要の措置を講ずるものであり、その主な内容は次のとおりである。
一、証券取引法等の一部改正
 1 投資事業有限責任組合契約に基づく権利、投資事業有限責任組合契約に類似する組合契約に基づく権利等を有価証券とみなして、証券取引法の投資者保護等に係る規定を適用する。
 2 一定の有価証券に係る目論見書制度の合理化を図り、目論見書の交付を受けないことについて同意した一定の者については、目論見書を交付しないことができる。
 3 有価証券報告書等の虚偽記載等による損害賠償請求権の規定を整備し、虚偽記載等の公表日前後の平均価額の差額を一定の範囲内で損害額と推定する。
 4 証券会社に対して、証券取引に係る顧客の注文を最良の条件で執行する義務(以下「最良執行義務」という。)を課すほか、最良執行義務の履行に関して、所要の規定を整備する。
 5 銀行等の金融機関が証券会社等との間で株式等の売買の媒介等の業務を営むこと等を解禁する。
 6 証券取引法上の違反行為を行った者に対して、課徴金を課する制度を設けるほか、課徴金の賦課の対象となる違反行為、課徴金額の算定方法及び課徴金の賦課手続等について、所要の規定を設ける。
 7 証券会社等、外国証券会社の支店等及び金融先物取引業者等に対する検査権限の証券取引等監視委員会への委任について、その範囲を拡大するほか、社債等登録法等に基づく検査権限を新たに証券取引等監視委員会に委任する。
(以下略)
株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律案(閣法第八四号)(衆議院送付)要旨
本法律案は、より安全で、効率性の高い証券決済制度等を構築していく必要性にかんがみ、株式、新株引受権、投資法人が発行する投資口その他の有価証券に表示されるべき権利等(以下「株式等」という。)の取引に係る決済の合理化を図るため、株式等を振替制度の対象に加えるとともに、株券不発行制度の整備を行う等、所要の措置を講ずるものであり、その主な内容は次のとおりである。
一、社債等の振替に関する法律の一部改正
 1 社債、国債等の振替による権利移転を規定する現行の法律を改正し、振替の対象となる有価証券に株式等を加える。これに伴い、法律の題名を「社債、株式等の振替に関する法律」に改める。
 2 株券不発行会社(株式の譲渡制限会社を除く。)の株式で振替機関が取り扱うもの(以下「振替株式」という。)についての権利の帰属は、振替口座簿の記載又は記録により定まることとし、振替株式について振替手続等の整備を行うほか、権利行使等について商法の特例となる規定を設ける。
 3 新株引受権、投資口等についても、株式と同様の振替が行えるよう規定を整備する。
二、商法の一部改正
1 会社は、定款で株券を発行しない旨の定めをすることができることとし、その会社の株式の移転は、取得者の氏名及び住所を株主名簿に記載又は記録しなければ、第三者に対抗できない。
 2 株式の譲渡制限のある会社は、株主の請求がない限り株券を発行することを要しない。
 3 株主名簿の閉鎖期間を廃止する等その他所要の規定の整備を行う。
三、その他
 1 この法律は、公布の日から起算して五年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、株券不発行制度の整備のための二及びその他所要の改正については公布の日から一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
 2 「株券等の保管及び振替に関する法律」(以下「保管振替法」という。)に基づく保管振替株券に係る株式を、一の施行日に振替株式とする等の特例措置を設けるとともに、保管振替法を廃止する。
 3 その他所要の規定の整備を行うとともに、経過措置等を定める。
金融機関の証券仲介業務、12月から解禁——証取法改正案成立へ。
2004/06/02日付日本経済新聞 朝刊 4面
(本文略)
【表】証券取引法改正案のポイントとそれぞれの施行時期
▽2004年12月1日
○金融機関への証券仲介業解禁
○投資信託目論見書の内容合理化
○組合型ファンドの投資家保護強化
▽2005年4月1日
○不公正取引などへの課徴金制度創設
▽2005年7月1日
○証券会社への検査を証券取引等監視委員会に一本化

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情報は『愛』に似ている(笑)

昨日のエントリーにて、私said;

KM(ナレッジマネジメント)の運用で最も難しいことの一つは、「ネタをどう個人から吐き出させるか」ということかと思います。私もブログを始める前に「ネタが尽きちゃうんじゃないか」とか、「他人にノウハウを盗まれちゃうんじゃないか」というようなセコいことが頭をよぎりましたが、やってみると意外にも、いくら吐き出しても、デメリットより、自分の考えがまとまったり、後で自分で利用できたり、他人の意見にインスパイアされて新しい発想が浮かんだり、というメリットの方が格段に大きい。

なぞなぞ:「人にあげてもあげても無くならないものは、なーに?」
答   :「情報」
「愛」
という答えもあるかも。
この意味で、「情報は『愛』に似ている」と言えるかも知れません。(言ってて口がカユいですが。[笑])
けは人のためならず」、とも申します。
kushさんからトラックバックいただきました。

以前、梅田望夫氏とGoogleのIPOを巡って真っ向議論を交わしていた磯崎哲也氏が、blogとそれ以外のコミュニケーションツールの比較分析を行っている。
(中略)
まず、わたしが「面白いな」と思ったのは、磯崎氏の作成した図解に「メーリングリスト」はあっても「メール」が存在しないこと。これは業務上のコミュニケーションの多くをメール(電話より多い)に依存している身としては、不思議な感じがした。“コミュニケーション・ツール”としてでなく、“メディア”としての論議であれば「電話・IM」が入るのはおかしいしね。もしかしたら“(複数人による)コミュニケーション”が前提なので、狭義の「メーリングリスト(名詞)」でなく、「メール」を含めた意味で使ってるのかもしれないけど。「掲示板」ではなく「2ch」という呼称を使ってるぐらいだし(笑)

おっしゃるとおりですね。ディスカッションがテーマだったので、練りに練った図というよりは、ディスカッションしながらホワイトボードにフリーハンドで書いたような図で、後から理屈を考えている次第でして・・。
ツッコミどころたっぷり隙アリアリの図です。
メールの他にメルマガってのもあったよなー、とか。
ご意見を取り入れて修正しようかとも思いましたが、直しだすとキリが無い(昨日のエントリーで述べさせていただいたように、実際には、「利用人数×平均リプライ期間」などで点としてプロットしたものをグルーピングするようなことをしないと厳密な議論にはならない)ので、恐れ入りますが、そのままとさせていただきます。m(_ _)m
(ではまた。)

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Blogによるコミュニケーションの変化(仮説)その2

磯崎(@ハニーフラーッシュ!)です。
editechさんよりコメントいただきました。

はじめまして。editech です。

はじめまして。よろしくお願いいたします。

この図解は定性的な分析なので、実際にはそのBlogサイトがどのポジションにいるのかは別問題ですね。

image002.gif
(再掲)
そうですね。
ただ、アバウトでよければ定量化もできるかも、とも思います。
縦軸が「ディスカッションへの参加人数」とか。
横軸は、日経デジタルコアのMLでは、横軸は「同期・非同期」「コミュニケーションの強要度」てなことになりつつあります。同MLで太田秀一さんがおっしゃってた「皆から期待されている反応速度」というような尺度が使えるかも知れません。「レスポンスまでの平均時間」とか。
(どうやるかはさておき)、そういうののデータをとって散布図にプロットしてみて、ドットが濃いところを丸で囲むと、似たような図ができるかも知れません。
(日経デジタルコアのMLでのやりとりもご紹介したいところですが、原則「クローズド」な規約なので。以前、MLでの発言が外に漏れて国会にまで飛び火したりして、「大変なこと」になりましたので、残念ながら転載は見合させていただきます。)

『(blogは)論旨もまとまっているので、読み手は「ふーん」で終わってしまい』
これも一般的な性質としては、そのとおりだと思います。
でも、「ふーん」で終わらないBlogもあります。

おっしゃるとおりですね。例えば、「切込隊長BLOG」なんかは2chとほぼ同じノリとも言えます。
以下、上述のMLでの私の発言部分(一部)だけ転載します。

「コミュニケーションの強要度」または「同期性」について
「電話」は「同期通信的」なので、かかってくるとコミュニケーションせざるを得ない。
「IM」だと、相手のステイタスを見て話しかけてくるので、同期通信的ではありますが、ややコミュニケーションの強要度は低くなります。
「メール」は返事はすぐにしなくてもいいがずっと返事しないと気まずい。
「メルマガ」は文字通り「雑誌」「新聞」と同じ。
「blog」はコメントもできるし、見るだけで返事しなくても全く気にしなくていいところが楽です。
「2ch」はコミュニケーションを強要されるわけではないですが、よく考えて見ると、かなり独自の「プロトコール」があって、初めての人が気軽に入っていけるところではない、かと思います。
媒体ごとの自由さと、ブログの「駄文」の効用
10年前くらいから、いくつかメーリングリストを運営してみて、活発なメーリングリストの参加者の上限は500人くらいという感じがしてました。
blogだと、そのblogを認知している人が例えば数万人いて、その中から、毎日、1000人なり2000人なりが見に来る、ということが可能です。
初めてメーリングリストというものに接したとき、「社会的な地位やら場所やら関係なく、対等にコミュニケーションできるこんなメディアがあったなんて!」と感動したもんですが、今にして思えば、メーリングリストは制約だらけ、です。
(私もよくしかられますが)読みたくも無い長文のメールを送りつけられるほうは「スパム」と同じです。また、そう思うと遠慮して発言を控えてしまう人も多い。メーリングリストは、個々人の情報発信意欲に「我慢」を強いる媒体ですね。
ブログのサイトをはじめて見た時に、「こんなどこの誰が書いたかわからないダラダラした文章を読みたがるやつがどれだけいるんだろ?」(ブログなんて、そんなにはやんないんじゃねーの?)と思いましたが、実は、「そんなこと」でも書けてしまう「自由度」というか「マイペース度」がブログのいいところなんだと気づいてきました。
それが面白いと思う人もいるわけで。「絞込み」は「エージェント」がすればいいわけです。
以前、「美味しんぼ」で、カレー粉とガラムマサラの違い、というのがあって、栗田ゆう子が、「ガラムマサラは、スパイスの種類ごとの香りが引き立って、個性が失われて無いのよ!」てなことを言って感動する、という場面がありました。
既存の媒体は、新聞にしても雑誌にしてもwebのコンテンツにしても、何らかの「制約」「我慢」や「没個性化」の下に成立しているわけで、それはそれで、手間隙かけたフランス風カレーのようなすばらしさはあるわけですが、スパイスを自分で調合してガラムマサラを作る本格インド風カレーの味の鮮烈さを味わうと、そうした既存媒体のカレーは、やや「もったり」したふうに感じられてしまう、というか。
それに気づいて、トラフィックのシフトが起こり始めているのかも知れません。
blogはスピーディなディスカッションには使えない?、というご意見に対して。
そう思いまして「右下」に位置づけてみました。
「最近の若い人」は、そういう会議的・同期的・強制的なディスカッションは「メッセンジャー」でやっちゃってますね。
先日、ある会社でシステム障害が発生した時の緊急会議に「間違いinvite」されまして、「なんだなんだ?」と思っているうちにどんどん、シリコンバレーと日本をまたいで会話がスピーディに進行して行くのを見て、(いまさらながら)「おおーっ」と感動いたしまして。
よくSF映画で、ホログラフィー的な立体画像で世界中から集まって会議をするシーンがありますが、IMでは実質的にそれと同じことがすでにできて、しかも現実にビジネスで利用されているわけです。(しかも「タダ」で。外資系などでは、昔からPolycomなどの電話機を会議机の真ん中に置いたりしてやってましたが・・。)
後はブロードバンド化していけば、テキスト→音声→動画と言う風に利用の中心帯がシフトしていくのは明らかかと思います。
つまり、「そういったディスカッション」はIMの延長線上にあるもので、blogの先にあるものとはちょっと違う気がします。
KM(ナレッジマネジメント)ツールとしてのblogについて
ただ、ブログの階層構造は全く「フラット」のままであっても、今やGoogleなどのメチャ強力なサーチエンジンがあるというところが10年前とは違うなあ、と。
自分で思いついたことや、気になるURLを書き留めておくだけで、(他の人によくわかるかどうかはともかく)、「確か、それ書きとめておいたはず」という「メタ記憶」さえあれば、あとはそれらしいキーワードをぶち込むだけで望むコンテンツがgetできます。
(これ、海馬の機能が衰えてきたオジサンには最高!です。)
つまり(中略)「KM」が「タダ」でできるようになってきちゃったのが、blog+サーチエンジン時代という感じで理解しているのですが・・・。
(秘密でないナレッジに限られますが。)
KMの運用で最も難しいことの一つは、「ネタをどう個人から吐き出させるか」ということかと思います。私もブログを始める前に「ネタが尽きちゃうんじゃないか」とか、「他人にノウハウを盗まれちゃうんじゃないか」というようなセコいことが頭をよぎりましたが、やってみると意外にも、いくら吐き出してもデメリットより、自分の考えがまとまったり、後で自分で利用できたり、他人の意見にインスパイアされて新しい発想が浮かんだり、というメリットの方が格段に大きい。

ではまた。

[PR]
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