よくトラックバックをいただく「債券・株・為替 中年金融マンぐっちーさんの金持ちまっしぐら」さんのブログで、非常に興味深い記事がありました。
債券相場とサラリーマンのふか〜い関係
という記事ですが、曰く、「日本の債券市場はサラリーマンと役人しか参加していないから、へんてこりんなマーケット」だということで、お知り合いが1999年から現在まで6年間の債券先物市場を分析したところ、この6年間の債券先物の15ポイントの値上がりのうち、前場の上げ幅合計がわずか0.3ポイント、残りは全部後場だという結果が出たとか。
曜日別に見ると、金曜日に15ポイント中7ポイントが集中とのこと。
ご本人もおっしゃってますが、にわかには信じがたいデータですね。
「サラリーマン」によって市場は歪められているか
この現象に対するぐっちーさんの説明としては、
これこそサラリーマン相場の特徴だったんです。
個人の判断ではなく会社の判断で買うぞ、と月曜日の会議かなんかで決まる訳です。よーし、買うんなら今買っちゃおうぜ、とはならない。サラリーマンたるものじっくり買うタイミングを待つ訳です。そして、結局買えずにずるずる週末を向かえ、やみくもに買う、というサラリーマン心理の典型が表れるわけです。月曜日に買って仮にさがったりなんかすると、「軽率だ」という評価を受けますが、金曜日に買ってやられても「慎重な判断に基づいてのことだった」といういいわけがたつ訳です。サラリーマンの世界では軽率な奴が一番出世できません。あほでもばかでも慎重なやつが出世するというのがおきまりです。(中略)
この法則は債券に関しては恐ろしくあてはまります。先送り相場・・・という訳ですね。すなわち、その日の末、週末、月末、年度末・・・・すべて買いは末に集中する傾向にあるんです。
とのこと。
上記のデータについては、私が直接分析したわけではないので何とも申せません。理屈として考えれば、それだけわかりやすい市場のゆがみがあるなら、適当なアービトラージャーが登場すれば、そのサヤは取れるはずなので市場としては均されていくはずなんですが。ただ、「サラリーマン・ファンドマネージャー」の行動についてのご説明は、「さもありなん」という感じはしますね。
短期売買は「アホな」投資方法なのか
仮に、こうした「サラリーマン」の行動が株式市場にも当てはまるとすると、個人投資家の信用評価率が市場平均に対して勝っているという(これもにわかには信じられない)現象も説明が可能な気がしてきます。
つまり、オンライン証券が登場する前は、日本の市場はやはり「サラリーマン」中心の市場だったわけで、銀行の持ち合い解消で機関投資家による売買が減少する中、外人投資家とともに個人投資家が参入、流動性のかなりの部分を供給する主体になってます。(個人投資家にサラリーマンが含まれないという意味ではありませんので念のため。)
よく、「短期売買するやつはアホだ」「長期保有のバリュー投資こそが正しい」というようなことをおっしゃる方がいらっしゃるわけですが、短期売買も実際にはただヤミクモに売買してるだけではなくて、(マクロ的に見ると結果として)背景に存在する上述のような市場の大きな「ゆがみ」を短期でアービトラージしていることになっているとも考えられます。
もし短期売買が「アホな」投資スタイルだとしたら、そういう投資家の方は損失の発生により自然に資金を失ってマクロ的な影響は無くなるはずなので放っておけばいいわけですし、もし短期売買をする層がマクロ的に見た影響力を有するようになってくるということであれば、それは、やはり何らかの「理由」のある投資方法だということが言えるのではないかと思います。
私もバックグラウンド的にはどちらかというと「バリュー」的な教育を受けてきたし、デイトレの手法もよくわからない部分がありますが、バリュー投資というのも「理論的に考えられる企業価値と実際の株価との差に注目した一種のアービトラージ」とも考えられますので、もしかしたら、長期に保有するバリュー投資よりも、短期的にポジションを手仕舞ってリスクヘッジしていくデイトレ的な手法の方がリスク−リターンがよくなってきているのかも知れません。
最近発見した中岡望氏のブログの記事で、ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハザウエイのパフォーマンスについて詳しく解説されてますが、同社のパフォーマンスも2003年から市場平均を下回ってきているとのことですので、一部の信者の方による「バフェット=神様」という説も、説得力が無くなりはじめている気もします。
ブログと個人投資家の相似性
少なくとも、インターネットの普及やコンテンツの充実で、投資に必要な情報流通の様態がこの5年間で全く変わってしまったということだけは確かでしょう。従来であれば、数ヶ月・数百万円の調査コストのかかるような情報が、現在は個人でも数分の検索でタダで手に入れられるようになってきています。
ネットで既存のジャーナリズムとブログの関係が盛んに議論されてますが、機関投資家と個人投資家の関係も、これと非常によく似た構造に見えます。
つまり既存の大組織を全否定するわけではないし、個人のパワーを全面的に礼賛するわけでもないですが、個人ならではの優位性のあるニッチは確実に存在するのではないかという気がします。(そして、その「新しく出てきた領域」が「長期保有のバリュー投資」であるとはちょっと考えにくい。)
「サラリーマン市場」は続く?
債券市場と違って、株式市場は今や、よりバラエティに富んだ市場参加者によって構成されてますので、こうした「ゆがみ」は解消されてきている・・・かと思いきや、預金保険機構の玉木氏の著書;
年金2008年問題—市場を歪める巨大資金
玉木 伸介 (著)
のとおり、公的年金の資金150兆円!(150億円とか1兆5千億円とかじゃなくて150兆円!)が2008年まで市場に流入しつつあるとのこと。
市場というのは生き物であって、「必ず儲かる手法」があるんだったらみんなそれをやるはずですので、基本的に「この投資手法が絶対である」という話には眉に唾をつけておいた方がよろしいのではないかと思います。
が、上記の公的年金の資金のほとんどすべては「サラリーマン」によって運用が決められることになるんでしょうから、もしかしたら今後も当面、「市場の構造的なゆがみ」は簡単には消えないのかも知れません。
(ではまた。)
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