世界一のブロードバンド大国ニッポンと資本市場

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本日もバタバタしてまして、茶飲み話で恐縮ですが。
先日、シリコンバレーから電話をいただくことになっていたのに、自宅の仕事用の電話番号を間違って伝えたりして右往左往した末にやっとつながって、「すみません、いつも事務所でも家でも外出先でも、最近はクライアントとのやりとりがほとんどメールで、電話を受けるということがあまり無いもんで。」と言い訳をしたところ、
「いやー、いかにも日本の方、って感じですね。」
と言われまして。
日本人のひがみ根性で、「いかにも日本の方」と言われると「バカにされてる」と思っちゃうわけですが、念のため「なんで?」と聞くと、
「シリコンバレーじゃ、モバイル端末なんて使ってるやつはまずいない。
営業マンで、シンプルなモバイル端末を使っているやつはいることはいるが、それもそんなに多くはない。
企業の回線もT1の1.5メガの回線。しかも、月650ドルもする。(!)
家庭用だとケーブルテレビがあるので、もうちょっと速くて安いが、企業は『ケーブルを引き込む配管がない』とか言われて、結局T1を使ってるケースが多い。」
とのこと。
日本じゃ、73歳になる私のオフクロですら、100MのBフレッツ光を使ってますぜ。しかも月50ドル未満。
「T1」は、90年代中頃に庶民が「ピ〜ロ〜、ピー、ガー、ザー」と28.8Kとか56Kのモデムで通信していた時代には、一部の大企業だけの特権でありブルジョワ〜な雲の上のあこがれ的存在としての響きがあったわけですが、21世紀になってからはついぞ聞いたことがありませんでした・・・。
ノートパソコンもKDDIのCDMA1Xwinで最大2.4Mbpsで快調ですし。
「いかにも日本の方」ってのはホメ言葉だったわけですね。
いつの間にか、あの「シリコンバレー様」よりスゴいブロードバンド環境になっていようとは。
−−−
聞くところによると、オンライン証券の手数料も、日本はすでに世界最安値になっている、とか。
韓国もアメリカに比べるとかなり激安らしいですが、日本はさらにそれより安くて、すでに取引額に対して数ベーシス(0.0X%)程度の競争になってます。
−−−
日本って、ダメなところをことさら強調して、「このままじゃ、世界に置いて行かれるー」とか「日本が地盤沈下するー」とか騒ぎますが、世界一になって見るとそれをひけらかすこともないわけで・・・なんと危機意識が強く、かつ控えめな国なんでしょう。
日本がこういう「消費者にやさしい」激烈な業者間競争が行われる国になったというのも、官庁がリーダーシップを発揮したとか、既存の大手キャリアが率先してやった、というよりは(のもさることながら)、元水天宮にあったあの会社のあの方のおかげ、という面が強い気もします。
−−−
ひるがえって、資本市場の方ですが。
数年後に、(仮に)日本が名実ともに世界一の株式市場がある国になったときに、(上述の通り、そのときはたぶん、それをあまり意識しなくなると思いますが)、冷静に振り返って考えてみると、「ホリエモンの(反面教師の)おかげで、今の日本の株式市場があるなあ」という日がくるような気もします。
KKRミルケン氏とかエンロンもそうですが、資本市場というのは、その変革または止揚に貢献した(やりすぎちゃった)人を犯罪者という人柱にしてしか成長できない魔性の生き物なのかも知れませんね。
(ではまた。)

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15 thoughts on “世界一のブロードバンド大国ニッポンと資本市場

  1. 元国務長官のコリン・パウエルの息子で前連邦通信委員会(FCC)委員長のマイケル・パウエルが「日本には後先考えずリスクを取る企業があって羨ましい」と、当の「ご本人」に言ったとか。なんだかええ話や(ぇ
    後段も含めて納得のエントリーでした。
    いつも楽しませていただいてます。感謝。

  2. 磯崎さん
    はじめまして、いつも楽しく読ませて頂いております。
    「KKRとかエンロンもそうですが、資本市場というのは、その変革または止揚に貢献した(やりすぎちゃった)人を犯罪者という人柱にしてしか成長できない魔性の生き物なのかも知れませんね。」
    っと言うのは、悲しいですね。
    100分割とか投資事業組合とかを使って不当な利益を得ている会社がいると言うのは、多くの市場関係者が知っていた事だと思いますが、それを誰も止めなかったのですもんね。
    ホリエモンは宮内取締役が大丈夫と言う言葉を信じて軽い気持ちでイケイケドンドンとやっていた可能性もあると思いますが、それを市場関係者の方が止める事が出来なかったと言うのは、市場関係者の中で、市場の公正性、信頼性よりも儲け主義が先行してしまった結果なのでしょうね。
    これを機会に、世界で一番、公正性、信頼性のある市場に育てていこうと言う事で、先手先手で良い市場をつくっていければと思います。

  3. ベンチャーにふさわしい企業を並べてみる。
    古野電気。世界初、魚探を作ったメーカー。
    技術的には乏しいが、知恵とアイデアで勝った商品。
    当時としてはベンチャーに該当するだろう。
    ホソカワミクロンは、今やってる化粧品の宣伝ではナノテクのホソカワと言っているが、
    粉砕機がメインということではナノテクを名乗るにはちと物足りない。
    されど粉体応用製品は数多く存在し、シェアも高い。
    ナノテクのベンチャーというなら、許せるところだろう。
    図研は、基盤屋専用の価格の高いフォトショップもどきがメインである。
    されど業界標準、事実上国内オンリーワンツール、お化け商品なので需要がある。
    M&Aを手控える理由も独特である。
    カルチュアコンビニはビデオのレンタル。これは…説明するまでもない。
    要は何が言いたいのかと言うと、
    数年で寿命が尽きるようなものをベンチャーと捕らえたらダメだってことなのよ。

  4. 一代の天才が時代を動かし庶民は奈落に沈む

    isologueさんが「世界一のブロードバンド大国ニッポンと資本市場」という記事

  5. >数年で寿命が尽きるようなものをベンチャーと捕らえたらダメだってことなのよ。
    私も自分のクライアントには、数年で寿命が尽きないような体制を整えてもらうように努力してますし、誰かが投資する場合でもそういう堅実な企業をオススメしたいところですが、ひるがえって世の中全体として考えてみると、数年で寿命が尽きるようなベンチャーもどんどん登場する社会でないと困る、というのが私が本文で申し上げたかった趣旨です。
    換言すれば、「『確実に成功するベンチャー』ってのは、ベンチャーじゃない」わけでして。
    (ベンチャーのたとえとしては不適切かも知れませんが)、精子は「受精できた精子だけが本当の精子」、ってわけじゃなくて、ほとんどの精子が死ぬから精子なわけですし、「死んだ精子は本当の精子じゃなかった」、というわけでもありません。
    同様に、ベンチャーも「確実に成功するからやる」のではなく、「失敗するかもしれないけどやってみる」というところに(社会的な)価値があるんじゃないかと思います。
    (もちろん、犯罪までやっていい、というわけじゃありませんから念のため。)

  6. >元水天宮にあったあの会社のあの方のおかげ
    めちゃめちゃそう思います。w
    個人的には好きなタイプのお方ではないってのが正直なところなんですが、この方が大暴れしたおかげで今の日本の通信環境があるというのはシンパならずとも認めざるを得ないところです。
    これがベンチャーの効用なのだ、というのは本当に同感です。
    しかしそのおかげで、今度は固定回線事業者やISPが「Gyaoに潰される〜」と悲鳴を上げてる状況なんかもあったりするわけでして。
    お時間がありましたら、日経コミュニケーションの2.15号など読んでいただくとおもしろいですよ。(そんなん読まないか…)

  7. KKR自体が、犯罪をしているわけでもないので、それは、Drexel BurnhamのMichael Milkenというべきでしょうね。

  8. 大変失礼いたしました。申し上げたかったのはミルケン氏の話だったんで、訂正させていただきました。(取り急ぎ。)

  9. 日本の株式市場には、「退場」のルールがないから、あとは退場ルールを作ったほうがいいんではないでしょうかね?
    企業は一度上場すると、市場から資金調達するっていう特権を与えられるから、よほどのことが無い限り倒産しない。だからそれを利用して、市場から一方的に資金を集めることだけが目的のボロ企業がはびこるようになってしまった。
    そのようなゾンビ企業を退場してもらうために、「株券印刷業」的な企業には退場してもらう、上場廃止基準が必要だとは思いますね。

  10. 磯崎さん
    始めまして。いつもためになる話、面白い話、どちらも楽しく読ませて頂いております。
    もしかしたら「人柱」が必要なのは市場に限らないかも……とちょっと寂しい事を思いました。
    数年後、「ホリエモンのおかげで……」と同様に「姉○元建築士のおかげで……」という言葉が出て来そうな気がします。
    昔を振り返れば、「人柱」(犠牲)の存在が公になって、初めて事態が動いた、と言う事は数多くあるのかも。(私が最初に思いつくのは「危険運転」「水俣病」でした)
    でも、そういう時も後から振り返れば、このライブドア事件の時も、磯崎さんのように「危うさ(うさんくささ)」を指摘してた人は居たんですよね。ただ皆聞いていなかった、知らなかった。そして事件になって「そういえばあの時に……」となってしまう。
    平時の時にこそ、調子がいい時にこそ、ちょっと立ち止まって振り返って、そういう事を考えてみる、ってのが大事なのかなぁ、と思いました。

  11. 内容と異なるコメントで申し訳ございません。
    税理士の吉澤と申します。
    特殊支配同族会社の役員報酬に関する規制について、
    改正案を読んでいるのですが、疑問に思う点がございます。
    もしよろしかったら、私の理解でよろしいのかプロフェッショナルの方々の
    ご意見をお聞かせ頂けないでしょうか。
    内容は当事務所のブログに記載させて頂いております。
    よろしくお願い致します。

  12. ATMの引き出し、手数料はまだ取られてますよね?
    未確認なんですが、ネットバンキングも手数料取られる、ということで
    普及がイマイチ、と聞きました。本当ですか?
    個人間のネットバンキングによる送金だと、
    EU内は手数料ナシ、になったんですが、
    それからすると、日本の銀行関連の手数料は手厚く守られているなあと思います。
    ずれたコメントですみません。

  13. 日本の銀行は個人から手数料取りすぎですね。プロのマーケットで勝負して勝てないんで、何も言わない従順な個人から取るしか収益源がないのでしょうか?
    20年前ですらオーストラリアは夜間でもATMが稼動しており、違う銀行のカードで引き落としても手数料は無料。
    10年前のアメリカは既にコンビニで引きだせ、こちらも異なる銀行のカードの引き出しも手数料が無料。もちろん24時間稼動のサービス。
    要するに、諸外国での商業銀行のサービスの認識はこういったものなのですが、日本人はどうして文句を言わないのでしょうね?
    他国の事情にフィルターを通して報道しない、それとも情報ソース(なんていえるほどのものじゃないでしょ!)がないマスゴミが悪いのか??

  14. 人柱に関するご意見、私も同感です。
    人柱を出しつつも新しいもの、良いものを取り入れていかないと、社会や科学技術の発展はありません。米国の資本市場や経済政策も、日本ではあまり報道されていないところで、失敗を重ねたうえに、現在の繁栄があります。
    と、ここまで書いてて気付いたのですが、新技術に対してはそこそこリスクをとることがあっても、社会の変革に対しては慎重になる人が多く、何か歪みや失敗が発見されると、その変革そのものが間違いだった、と結論付ける人が多いのは気のせいでしょうか?
    どこかで聞いた話ですが、人間の知恵というのは文化圏を問わず、社会科学に関する知恵のほうが科学技術の知恵よりも劣るもの、なのだそうです。なので、人類の歴史を振り返ると、科学技術は進歩する一方なのに、社会では戦争や混乱が絶えない、と。
    社会の仕組みの改善を望むなら、ひとつの方法は社会の仕組みをよく勉強して考えることでしょうし、いまひとつの方法は、ある程度考えたら実行してみる、ということではないでしょうか。
    熟考型にしろ試行錯誤型にしろ、何がしかのダイナミズムがないと、世の中は進歩しません。水天宮の会社に関してはいろいろ不評も多く(六本木豚の手法の元祖)、私自身はあまり好きではありませんが、USENなんて技術革新の先陣を切ってるようなところがあり、私は好きです。
    如何でしょうか?

  15. はじめまして。ホリエモンvsフジTVのころから、趣味・志向が合うと思って、愛読しています。
    BB大国日本をもたらせた立役者に、元箱崎・今汐留のSさん(S社)をあげるのはもっともですが、そのインフラ(メタルと光ファイバー両方のネットワーク)は、これまで我々ユーザーが加入権とバカ高い通信料金を営々と払いつづけて来た蓄積の結果だと思います。
    NTTがそれを死蔵または独占しようとしたのをSさんが阻止して、国民に解放したわけですが、Sさんにしてもボランティアでも、義賊でもないわけで、創業者利潤をこれからどう得ようとしているのか、監視する必要はあるでしょうね。