財政構造改革と預金課税論(再び)

  • Facebook
  • Twitter
  • はてなブックマーク
  • Delicious
  • Evernote
  • Tumblr

遅ればせながら、小飼弾氏とR30氏が、日本の財政問題についてやりとりしている以下のエントリを拝読して。
404 Blog Not Found:
備忘録-日本政府のB/S2003年度分
素人の、素人による、素人のための経済学
R30::マーケティング社会時評:
マクロ経済って本当に難しい
小飼氏曰く;

まあ、私がそういう心配をするのが大きなお世話なのかも知れない。私自身は家族を含め別に日本でなくとも生きていけるのだし。私よりもずっと日本に対する依存度が高そうなR30さんが心配無用といい、私が要注意というのは滑稽ですらある。

そう言われて私の周囲の人たちを見回してみると、国債残高やキャピタル・フライトに危機感を抱いている度合いは、「日本でなくても生きていけそう度」が高い人ほど高い、という傾向がおもしろいほど当てはまりますね。(R30氏が日本でないと生きていけないという感じもしなかったので、エントリを拝見したときに「お。例外が。」と思ったのですが。)
まったく違う話でのたとえになりますが、ちょっと昔を思い起こして見ると、技術的な知識がある方ほど「linuxのような優れたOSが無料で手に入るんだから、数年後にはWindowsは滅びているはずだ」てなことをおっしゃる傾向があったように思えますが、実際はそうなっていないようなもんでしょうか。物事がよくわかってる方ほど、一般庶民のアホさというか「慣性」というか「stickiness」というかの度合いがピンとこないもんなのかも知れません。
私σ(^-^;)ですか? 私は、(「日本でなくても生きていける度」が低いにもかかわらず)、日本の財政構造には非常に危機感がありまして、以前、こんな文章を週刊エコノミスト誌(2002年2月5日号)に載っけていただきました。(当時大阪大学にいらっしゃった跡田先生のコメント記事もいただけまして。今、どうお考えかはよく存じませんが。)
(これもR30さんに言わせると「マクロ経済をちょこっとかじっただけの素人コンサル」の書いた電波論文でしょうけど、)一言でいうと預金に対する課税論です。
yokin_kazei.jpg
預貯金をリスクマネー(この場合国債も含む)にシフトさせることで、市場経済を発達させるとともに、銀行や企業の財務を不良債権問題の再発を防止する構造へ転換し、かつ、年間十兆円規模の税収を確保して財政再建にも寄与する、というアイデアです。
当時は調整インフレ論なども盛んだったのですが、インフレより預金税の方がステアリングのレスポンスはいいんじゃないかと思ってるんですが。
また、路地裏の商店までのレジやシステムの大規模な変更が必要な消費税に比べて、銀行のシステムをちょこっと修正すればいいだけの預金税の方が、民間の現場に対する痛みも少ないし、「徴税」もはるかに楽なはず。
当時はとにかく景気も悪くてどうしようもなかったのですが、景気がよくなってきた今も、国の財政の課題は強く残っているわけでして。その場合に消費税を上げるよりは、預金に対して課税する方が、いろいろな意味でうまくいく気がします。
本質は「税」なんですが、「増税」というのが抵抗があるなら、「預金者負担の預金保険」とか「高齢化社会目的税」とか、もうちょっとマイルドな味付けにしていただいて。税にすると税率の変更が大変そうなので、預金者負担の預金保険等の名目で、率は日銀なり財務省なりが景気や金利や預金の減少動向を見ながら機動的に変更できる方がいいかも知れないですね。
ちなみに、当時、私の周囲の金融がわかってる方々には、「そんなことやったら海外に資金流出して終わりでしょ」と一蹴されましたが、もうちょっと日本国民の預金の日本の銀行へのstickinessは強いんじゃないかと私は思ってます。海外での資産運用のノウハウが日本国民に蓄積されるのは悪いことじゃないですしね。実際には、海外に資金を移すのも面倒がって、移動する資金の大部分は「預金税」のかからない国債にシフトして終わりだと思いますが。
任期中に消費税を上げないという小泉首相の公約にも違反しませんし。:-)
(ただ、売上税導入に失敗した中曽根内閣と同じになっても私は責任持てませんので悪しからず。)
ご興味のある方は、こちらをご覧ください。
エコノミスト 2002年2月5日号掲載
経済再生を強力に推し進める「構造改革税」の導入を

預貯金に対する課税は、初めて聞くと違和感の強いアイデアであるが、深く考察していくと極めて優れた特質を持っている。預貯金をリスクマネーにシフトさせ、不良債権問題の再発を防止するだけでなく、デフレを退治し、市場経済を発達させ、かつ、年間十兆円規模の税収を確保して財政再建にも寄与する。今後、人口が減少していく成熟国家である日本が二十一世紀の市場経済の中で発展していくために必要な税であると考えられる。・・・・・・

(追記10月1日)
Bewaadさんが本日からトラックバック受付再開、とのことなので、記念にトラックバックさせていただきました。:-)

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

9 thoughts on “財政構造改革と預金課税論(再び)

  1. 少し議論とズレるかもしれませんが…
    磯崎さんは論文の中で
    「名目金利が低くても実質金利が高いこと」
    を預貯金の人気が根強い原因として指摘されていますよね。
    これに加えて
    「ホントはリスクマネーにお金を移すのが面倒くさい、よく分からない、怖い」
    という要素もあるのではないでしょうか。
    故に国内預金でならば負う必要の無い為替リスクを背負う事になり、
    国内預金に比べれば手間ひまのかかる海外への資金移転は、
    磯崎さんの周囲の金融がわかってる方々が思うほどには進まないのではないか、と。
    最近では各金融機関がCM等を通じて退職金獲得合戦を繰り広げていますが、
    私はこの機に金融知識を身につけることが日本経済の重要な一歩となると考えています。
    そうは言っても銀行や信託銀行に丸投げする方が多数を占めるのでしょうね(^^;
    磯崎さんの主張される預金課税は論文から3年経った現在でも優れた制度だと思います。
    導入するのであれば金融教育や課税対象の議論が必要かとは思いますが、
    安易に消費税導入するのとは比較にならないメリットがありそうです。
    強烈かつ強引なリーダーシップを持つ首相の時代にこそ導入の議論をしても良いですよね。

  2. コメントどうもありがとうございます。
    >「ホントはリスクマネーにお金を移すのが面倒くさい、よく分からない、怖い」
    という要素もあるのではないでしょうか。
    まさに、そう思いますね。

  3. 素朴な疑問-マイナス金利下でのNPV

    わーい、今度は磯崎さんからTBだぁ。
    この預金税のアイディア、理念は気に入っているのだけど、磯崎さん自身の首も占めかねない点が一つあると気づきました。
    isologue −by 磯崎哲也事務所 Tetsuya Isozaki & Associates: 財政構造改革と預金課税論(再び)(これもR30…

  4. >一般庶民のアホさというか「慣性」というか「stickiness」というかの度合いがピンとこないもんなのかも知れません。
    というか、単純に戦後一貫して終身雇用前提のサラリーマン世帯の比率が増加してきたことが原因ではないかと。正社員の比率が減れば、リスクマネー投資は増えるかもしれませんね。

  5. 経済学は難しい10

    9月30日付けの読売新聞朝刊には中々面白い記事が出ていた。福井日銀総裁の発言が発端となり、竹中大臣や谷垣大臣は「デフレ懸念は続いており、量的緩和解除については慎重な判断が必要」との認識を示した。その一方で、岩田日銀副総裁はインフレ目標導入を述べており、須溺..

  6. 税の取り様はいろいろある話

    「財政構造改革と預金課税論(再び)」 (こちらがオリジナル論文) 徴税の技術論の

  7. 日本の税政抜本改革と財政規律のためには、法人税を廃止し、消費税を2%に、低率の付加価値税、預金資産税を導入する以外に道はないと思っています。
    預金が、海外に流れないように、規制を設ける必要もあります。
    また、私は、雇用の創出のためには、中小企業には、付加価値税から、従業員が支払った所得税の半額を控除する仕組みをいれるべきだと考えています。
    中小企業以上の企業にも、従業員が、納税した所得税分の控除が一定認められると言うことならば、雇用に協力することで、会社も助かる公正感があります。
    財政規律は、社会正義の感覚を、各責任者が持つべきだという法律思想を徹底させる必要があります。官僚の不正には、公務員職権濫用罪の時効の撤廃も設けるべきです。