「で、ナンボ儲かるんや?」

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ある関西系大企業にお勤めの女性が以前、
「うちの会社のおじさん達ったら下品でさあ。新規事業の会議の時に私とかがプレゼンしてるじゃない?そしたら、必ず最後に、
『で、ナンボ儲かるんや?』
って聞くのよー。」
ってなことをおっしゃってました。
私は、「で、ナンボ儲かるんや?」ってのは非常に「アリ」なんじゃないかと。その企業さんでは、関西弁が社内の標準語になっており、関西出身でない方でも関西弁でしゃべるようになるそうで。私は、その企業さんの社風が非常にフランクで好きなのですが、その社風の根源も関西弁にあるんではないかと想像してます。
確かに日常生活では、あまりお金のことばかり持ち出す人って、ちょっとナニなわけです。
(「ゴーストバスターズ」でリック・モラニスが演じていた会計士とか、「エロイカより愛をこめて」のジェームス君とか(・・・・って、両方、会計士じゃん・・・。))
ただし、企業というのは利潤を追求する場であり、そこでの意思決定というのは、基本的に株主に対してどちらが有利かという「カネ」の話で決めないといけないわけです。
ところが、日本語の標準語というのは、あまり「カネ」の話をするのに向いているとは言えないようで。
「○○や○○というような諸事情を鑑みまして・・・」
というような抽象的なことを ああだこうだ言うのには向いてますが、「本質がなんなのか」をズバっと言うには向いてない。
バブルの時の大企業内の意思決定のありさまを覚えてらっしゃる方は思い出していただきたいのですが、
「グローバルな○○を希求するために、当社においても○○を○○し・・・」
みたいな美辞麗句におどらされて、「リスクを抑えてカネを稼ぐ」という企業の本質からはずれた行動をしちゃった例が多数思い浮かびませんか?
また、
「その案は、○○常務のお好みには合わないなあ。」
てな、「カネ以外の要因」によって意思決定が影響されるようになってくると、その会社ももう官僚主義にどっぷり浸かりはじめているわけです。
「で、ナンボ儲かるんや?」
という疑問文は、そうしたビジネスの本質からはずれた要因をフッとばす強力な呪文ではないかと思います。
英語が国際的なビジネスの共通語になったのも、(フランス語なんかより)、「で、ナンボ儲かるんや?」と聞きやすいからではないかと想像いたします。
私も東京育ちですので、デパートで「もっとまかりまへんか?」とはとても聞けない人ではありますが、企業の意思決定にたずさわる際には、(多少お下品になろうとも)、極力「カネ」の話に置き換えて議論をするように心がけております。
(ではまた。)

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5 thoughts on “「で、ナンボ儲かるんや?」

  1. こんにちは。
    話の本質ではないところで、ひとつ質問があります。
    磯崎さんは「意思」ではなく、「意志」をお使いになるのですが、なにか意図されるところがおありですか?
    法律屋は「意思表示」・「意思決定」を使うのですが、経済の世界では、「意志表示」・「意志決定」がスタンダードですか?

  2. いえ、ATOKの変換のおもむくままに書いておりました。
    ちなみに、「意思決定vs意志決定」について調べたこんなURLがありました。
    http://homepage3.nifty.com/hiway/dm/dectra.htm
    手元の辞書を2,3見て見ても「いし」と「決定」をつなげた用例が見あたらないようですし、どちらが間違った日本語というわけでもないようですが、googleでも「意思」の方が多めですし、「意思決定」の方が字面が好きなので、今後、「意思」決定に統一することにします。
    ご指摘どうもありがとうございました。
    ではでは。

  3. 初めまして、切込隊長vsキムタケさんへのトラックバックから流れてきました。
    関西でWebサイトの構築等を生業にしております。ナンボ儲かるか?の質問を【呪文】と捉えるのは面白いですね。これ聞かれて詰まるなら、今までの話は何?ってことに。(笑)
     元々広告業界の出で、その質問への反応はエントリ冒頭の女性と同じだったのですが、Webサイトの構築を手がけた頃から、肯定派に転向しました。
     その言葉の反対に、けむに巻く言葉として【考えときますわ/検討しときます】があります。
    考えることもないのに、そのような遠回しな表現で話を打ち切るんですが、この二つの言葉を見ると、そのまま関心度の強さを現してるんですね。
     だから、【ナンボ…】と聞かれたら、その関心への回答をちょっと見せてあげれば、おじさんたち、素直に「落ちる」のでは(笑)
     「関西のおじさん」たちの擁護を込めて。
    駄文失礼しました。

  4. takeさん、
    コメント、どうもありがとうございます。
    会話が全部「お笑い」をベースにしているのも、「ナンボ儲かるんや?」に代表される、あまりにビジネスライクな側面を補完する機能があるのかなあ、と想像したりもしてます。(笑)
    ではまた。

  5. >「その案は、○○常務のお好みには合わないなあ。」
    というのは下々の者が推察して言っているだけであって、実は、○○常務は、
    「で、儲かるんか?」と聞いてたりすることがありますよね…
    あっ、これ、別に経験談ではなくって、あくまで、一般的な事例です、ハイ(^^;