ベンチャーの資金集めと証券取引法

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3月6日に「誰がベンチャーを助けてくれるの?」日本の未公開株市場の構造で、日本の法律は証券会社以外が増資の手助けをする事業を行うことを基本的に認めておらず、これに違反した場合には、懲役を含むかなり重い罪が待っている、ということについてコメントさせていただきました。
本日(3月19日)の日経16面「投資ファンドの実力」で、バイオ系ベンチャーの資金集めにVCが非常によく協力してくれたという話が載っています。いい話ですし、VCが他のVCを誘ってco-investする、ということは実務上は非常によく行われることですが、これは、先の証券取引法の規定に照らして適法でしょうか?
証券取引法第2条(定義)第8項を読み返してみると、
この法律において「証券業」とは、銀行(略)その他政令で定める金融機関以外の者が次に掲げる行為のいずれかを行う営業をいう。
(中略)
6.有価証券の募集若しくは売出しの取扱い又は私募の取扱い

となってます。
例えば、増資を考えている有望なベンチャー企業があるというので、ボランティア的にその会社の社長を投資家に紹介してあげた、というのであれば、「有価証券の募集若しくは売出しの取扱い又は私募の取扱い」にもあたらないと思いますし、証券取引法がいう「営業」が「営利目的のために反覆継続的に行うこと」であるとすると、「営業」にもあたらない気がしますので、かなりセーフかと思います。(ここまで禁じたら、ベンチャーはどうやって資金集めをすればいいんだ?ということになります。)
ただ、上述の新聞記事では、
「(バイオベンチャーの)A社長に会わないまま(VCの)K氏の説明で出資を決めた投資家もいたという。」
てなことが書いてありまして、こう言ってしまうと、単なる「会社や経営者の紹介」ではなく、「有価証券の募集若しくは売出しの取扱い又は私募の取扱い」に該当する可能性が高まってしまいます。

(追記:2005/7/7)本日、この「K氏」とお会いする機会がありまして、いろいろバイオ業界への投資についてお話をお聞きできて大変勉強になりました。新聞記事には書いてありませんでしたが、K氏はこの会社の役員をされておられた、とのことなので、上記のケースは問題ない、ということになります。(失礼いたしました。>Kさん)

VCは他のVC等の投資家を紹介してくれても、その会社自体がうまくいけばキャピタルゲインで潤うので、VCは資金集めでフィーを取らないことも多いです。これであれば「営業」には該当しない可能性が高いかと思います。(ただ、本業である投資を成功させようとしているので、まったくのボランティアということでもありません。また、VCなら必ずタダで手伝ってくれるわけではなくて、「お金を集めてきたのでフィーをください」というところもありますが、それはどうなんでしょうか?)
ベンチャー企業からフィーをとって「資金を集めますよ」というのを本業にうたっちゃっている会社は完全にアウトだと思いますが、VCが他の投資家を誘ってco-investするというなのはセーフということにしてくれないと、誰がベンチャーを助けてくれるのか、ということになってしまいます。
「ここまではセーフ」というのに参考となる判例とか通達とか、ベンチャーの支援を安心してできる基準はどこかに存在してないでしょうか?
(以上の法解釈は、私の私見にすぎませんので、ご注意ください。)
ではでは。

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