続・日経ビジネスが金商法違反になる日(「投資助言」の境界線)

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日経ビジネスが金商法違反になる日(「投資助言」の境界線)」に対して、ブクマ、コメント等いただいたので、ちょっと補足させていただきます。

はてなブックマークで、id:doudemoiiyoさん曰く;

自分の業務一つ一つに対して、投資助言に当たるか否かを最近よく考えている。メルマガがそれに当たるか否かというのは、かなりの拡大解釈だと感じるが、現状それぐらい曖昧にしか決められていないのが実情だ。

ブクマ、どうもありがとうございます。

でも、「メルマガが拡大解釈」ということについては、必ずしも危惧しすぎということでもないと思います。

絵で描きますと、以下のようになるんじゃないかと思いますが;

昔は、顧客数や単価で考えてみると、

200904032237.jpg

といった感じで、基本的には「雑誌」か「投資助言」かは、直感的にもスパッと明確に区別できたんではないかと思いますが、今や、

200904032239.jpg

というように、何人顧客がいてどのくらいの単価を取るかというのは、技術的にはいろんな可能性が出て来てしまっており、投資助言かそうでないかのクラスタにはスパっと直感的には分けられなくなってしまったし、こうした投資助言の規定は、「表現の自由」に対する重大な危機になっているんじゃないかと思う次第です。

私が書いた、『「有価証券の価値」「有価証券関連オプションの対価の額」「有価証券指標」の3つが「OR(又は)」で結ばれており、それら3つの「動向」のことをいうのだと読めるのではないかと思います。』という部分に対して、「hodaka」さんにいただいたコメント

「有価証券の価値等」の定義ですが、「動向」は「有価証券指標」にのみ係り、「有価証券の価値」「有価証券関連オプションの対価の額」「有価証券指標の動向」の3つを指していると思います。

「動向」が3つに係るのでしたら、「有価証券の価値等」ではなく、「有価証券の価値の動向等」と記載すると思いますので。

日本語として見ると、確かに「有価証券の価値の動向等」でなく「有価証券の価値等」という名称なのに、「動向」がすべてにかかっていると考えるのはおかしい気もします。

しかし、「動向」が「有価証券の価値」にかかっていないとすると、株価算定等をやっている会計士などは、すべて無登録で金融商品取引業をやっていることになってしまう・・・・・ということもさることながら、

「有価証券の価値」「有価証券関連オプションの対価の額」「有価証券指標」のどれも、それだけでは「(特定の)金額」の話で、数学的に言うとスカラー量というか、時間を含まない数字1つだけの概念ですが、「動向」がつくと時間概念を含む「数列」「ベクトル」的な概念になるわけで、もし「動向」が「有価証券指標」のみにかかるとすると、それだけが3つの中で異質なものになると思います。

法律用語では、例えば、「鯛」と「鯖」に加えて「犬」という異質な概念を三つ並べて、「(鯛 OR 鯖)OR犬」ということを言いたい場合には、

鯛、鯖又は犬

ではなく、「若しくは」を使って、

鯛若しくは鯖又は犬

と表記するようですし、実際、前述の「有価証券指標」を説明するカッコの中では、

有価証券の価格若しくは利率その他これに準ずるものとして内閣府令で定めるもの又はこれらに基づいて算出した数値をいう。

と、「若しくは」と「又は」を使ってますので、立法担当者の方が、「若しくは」の使い方をご存じなかったというわけではなさそうです。

とは言っても、私も自信がないので、財務局のご担当に問い合わせてみたところ、

うーん。動向は、「有価証券指標」だけにかかる気がしますけどねえ・・・。確実に確認されたいのであれば、金融庁の証券局の担当に問い合わせていただく方がよろしいかと思いますが・・・。

とおっしゃるので、証券局さんに問い合わせてみたんですが、ご担当が話し中とのことなので断念。

「株価算定しただけで金商法違反(懲役三年以下他)」ということだと、全国の株価算定等をやってる会計士等の方は枕を高くして眠れないと思いますので、他の用のついでに(失礼!)某法律専門家の方に伺ってみたところ、

最初は、私も、意味を考えずに日本語の流れだけを読めば、また「有価証券の価値等」という用語との整合性で行けば、「動向」は「有価証券指標」のみにかかると考えました。 しかし、内容を考えると、磯崎氏の言うように読まないとおかしいということ、また、 結論として「有価証券の価値」についての助言がすべて業になってしまうとはなはだマズいことから、そのように読むのだろう(読むべきであろう)と思い直しました。
「又は」と「若しくは」の使い分けは、すべての法令でちゃんとしているわけではないけれど、金商法が新しい法令であることを考えると、「鯛、鯖又は犬」とはならないはずで、この文面からは磯崎氏のように読むことが法令の文言上予定されていると思います。
でも、そう読むとしても、エントリーに書かれていたように、この規定全体がかなり危ない(日経ビジネスが「業」に 含まれかねない)文言になっているなあと感じました。(まっとうな言論活動の妨げとなる危惧がある。)

といったご趣旨のコメントをいただきました。
とりあえず、私の書いていたことも全くのデタラメではないようで、「ほっ」ですが、この法律専門家の方も最初は「有価証券指標のみにかかる」と思ったとのことですし、財務局のご担当の方すらそうおっしゃってるわけで。
「まさかそんなことは」と思っていたことに対して、(民主党の小沢代表の件のように)突然、当局が乗り込んでくるという事態は・・・・単なる妄想とはとても思えないわけであります。

(ではまた。)

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4 thoughts on “続・日経ビジネスが金商法違反になる日(「投資助言」の境界線)

  1. オソロシイのは解釈次第で遡って問われる可能性が「ゼロではない」ことで、今の社会では裁判結果が有罪無罪を問わず「逮捕されてしまうこと自体に社会的罰」が存在しますから、十分なリスクですよね。
    今の風潮を見ると、解釈できれば使ってくる可能性は十分に高いですし(関連されている会社などで問題が起きた場合のスケープゴートにされないためにも)磯崎さんほど有名になってきたのであれば気をつけたほうがよいのかもしれません。

  2. こちら
    http://www.tez.com/blog/archives/001331.html
    にも書きましたけど、今回利用する「まぐまぐプレミアム」のシステムでは、購読者と発行者が直接に契約を結ぶわけではない(私からは誰が購読されてるのかもわからない)ので、法律上、どう見ても投資顧問契約を結んでいるとはされ得ないと思います。
    (中身も、投資には直接関係ないですし。)
    が、他の仕事で「有価証券の価値」に言及する際には、注意する必要があるなあ、と改めて気を引き締めた次第です。
    どうもありがとうございます。
    (ではまた。)

  3. 証券会社でも監査法人でもコンサルティング会社でも、株価算定書って、有価証券の価値等に係る「助言」には当たらないというディスクレーマーが入っていると思いますので、先生メルマガも(仮に直接購読契約を結んでも)お付けになっているディスクレーマーついて読者が必ず目にする箇所に表示することによってセーフというのが現行の実務慣習とは思います。もちろん、お役人さんは後だしジャンケンの名手ですので、100%セーフとはいえませんが...。

  4. >ディスクレーマーついて読者が必ず目にする箇所に表示することによってセーフというのが現行の実務慣習とは思います。
    もちろん、ディスクレーマーを付ければ必ずセーフというわけでもない(「実態」が重要だ)と思うんですが、付けて置くことで、最初から「助言」を意図していたのではないということが明確になる効果はあるかと思います。
    しかし、「マスコミ」の一形態として投資関連情報を提供する場合には、こういったディスクレーマーを付ける風習もなければ、もしかしたら「意地でも」付けないかも知れないな、と思って、コワいかも、と思った次第であります。
    (ではまた。)