三菱自動車工業の優先株式(第二弾)

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世間はライブドアが近鉄球団の買収に乗り出したとかで盛り上がってますが、シブいところで、三菱自動車の優先株式発行第二弾と行きたいと思います。
本日の日経33〜32面に1と1/3ページにわたって三菱自動車工業の新株発行に関する取締役会決議の公告が載ってます。これ、商法上の公告としては過去最大級のデカさ、ではないでしょうか。
4種類の株式を発行するわけですが、内容の9割くらいは重複しているので、雛形をつくってそれを参照したりすれば、公告の面積は1/2くらいに減らせると思うんですけど。しかも、これを何回も繰り返すわけですから、公告の表示の仕方を工夫するだけで1億円近く広告費が違ってくるのではないかとも思います。そんなところにジャブジャブコストを使ってていいんでしょうか?という気もします。
A種とB種
前回は、第1回・第2回A種優先株式と、第1回G種優先株式が発行されたわけですが、今回は、
第3回A種優先株式
第1回B種優先株式
第2回B種優先株式
第3回B種優先株式
の4種を発行することになります。
A種は新日本石油株式会社(10億円)、B種はどの回もすべてJPモルガン・セキュリティーズ・リミテッド(500億円×3=1500億円)に割り当てることになってます。
image004.gif
前回も掲げた優先順位の図を修正したものですが、前回のA種とG種に続き、今回はB種が新たにその姿をあらわしたわけです。「南総里見八犬伝」とか「セーラームーン」とかの最初のころのように、残りのキャラ(C、D、E、F)が、いつ、どんな感じで登場するのかワクワクしますよね。(しませんか?)
前回は、「おそらく、フェニックス・キャピタルやJPモルガンが入れる場合には(中略)、当然、議決権付きで、かつB種とかF種とかの優先順位の強いところを取ってくるんでしょう。」と予想しました。確かにJPモルガンがB種を取ってきましたが、議決権は無しですね。ということは、F種が議決権つきの優先株で、フェニックス・キャピタルはF種で出資する、ということになるんじゃないでしょうか。
B種の優先配当金(10.優先配当金)
図のように、B種というのは一番「おいしい」ところの一つです。
ただし、B種はA種等の発行要項(19.優先順位)によると、優先配当、優先中間配当の優先順位が1位ということになってますが、今回のB種はすべて優先配当・優先中間配当は「0」となってます。
(なぜでしょうか?)
どーせ優先配当なんか出ない気もしますし、あまり他の株式に対して圧倒的に有利な条件になるのもフェアで無い、というような配慮なのでしょうか?(不明。)
B種の転換を請求し得べき期間(15.転換予約権)
A種は平成17年10月1日(1年以上先)から平成26年6月10日までとなっているのに対して、B種の第1回第2回は平成16年8月10日(買ってすぐ)から平成19年7月16日まで。B種の第3回は平成16年9月10日(買ってわりとすぐ)から平成19年9月10日まで。
また、A種株主は毎月10日にしか転換を請求できないのに対し、B種は期間内の営業日なら「いつでも」転換を請求できます。
つまり、転換権をオプションと見ると、B種のほうがより「アメリカ〜ン」なオプションであり、フレキシビリティが高いわけです。Lattice model的にオプション価値を考えると、(他の条件が同じなら)B種のほうが価値が高いという結果になると思います。
当初転換価額
A種は、7月16日に始まる45取引日の売買高加重平均価格の平均値で当初の普通株式への転換価額が決まることになってます。これに対して、B種のほうは、
第1回が7月16日に始まる10取引日
第2回が7月16日以降11取引日以降の10取引日
第3回が7月16日以降21取引日以降の10取引日
の売買高加重平均価格の平均値で当初転換価額が決まることになってます。
なぜ、転換価額(の決定日)を3つ分けたのでしょうか?(興味深いですね。)
転換価額の修正
A種は転換請求可能日前の20取引日の売買高加重平均価格の平均値転換価額を修正することになってます。(50%、30円が下限。)
これに対してB種では、転換請求可能日前の5取引日の売買高加重平均価格の93%が転換価額を下回る場合には、転換価額を下方修正することになってます。
つまり、B種のほうは5日だけ下落しても下がってしまうし、たとえ株価が横ばいでも7%下がってしまう。しかも、一度下がったら二度と上がらないことになってます。(こちらも50%、30円が下限。つまり、下方への「ラチェット」がかかってしまう構造になっている。これに対して、A種は株価がまた上がれば当初転換価額の100%までは転換価額が復活する可能性がある。)
以上のように、B種というのはA種等より、非常に投資家にとって有利な内容になっています。かなり「ヤバい」状況の会社に大量の資金を投下するわけですから、レピュテーション・リスクや持ち合い株の価額下落リスクが直接降りかかってくる三菱グループ企業の支援と、なんの義理もない純粋なフィナンシャル・インベスターとでは条件が違って当然ではありますが。
(ではまた。)

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