証券仲介業とは何か

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前述のとおり、今年はローソンや楽天をはじめ(証取法改正を経て)銀行が「証券仲介業」に参入する予定ですが、どんな制度になるんでしょうか。平成16年4月1日施行分の証券取引法の条文を見て、イメージ出しをしてみます。
結論としては以下の通り、(銀行など「堅いノリ」になれてる企業はもちろんOKとしても)、ゆるーい社風のネット系企業をはじめとする一般事業会社には、かなりキツい運用になるんじゃないかと想像いたします。
まず、定義ですが、
証券取引法第2条(定義)
� この法律において「証券仲介業」とは、証券会社、外国証券会社(略)の委託を受けて、次に掲げる行為のいずれかを当該証券会社、外国証券会社又は登録金融機関のために行う営業をいう。
一 有価証券の売買(有価証券先渡取引を除く。)の媒介(第八項第七号に掲げるものを除く。)
二 第八項第三号に掲げる媒介(注:有価証券の売買等の媒介)
三 第八項第六号に掲げる行為(注:「有価証券の募集若しくは売出しの取扱い又は私募の取扱い」)

となってます。「媒介」ですので、「代理」のように仲介業者がOKしたら法律上効力が発生するのではなく、あくまで委託元の証券会社が取引についてOKと言わなければOKできません。実際には、インターネット等の画面でこのへんの情報伝達は瞬時に行われることになるイメージだと思います。
第六十六条の二から「第三章の二」として「証券仲介業者」の章が新設されてます。
第六十六条の二
銀行、協同組織金融機関、信託会社その他政令で定める金融機関以外の者(略)は、第二十八条の規定にかかわらず、内閣総理大臣の登録を受けて、証券仲介業を営むことができる。

銀行証券を分離する「第65条」で証券業を営めないことになっている金融機関以外は、証券仲介業になれることになっております。
nagataさんのコメントにもあったように金融審議会第一部会の答申で、「一般事業会社にできることを、銀行にだけ制度的にできないままにしておくことは、もはや国民に対して説明できない段階にきていると考えられる。」てなこといってますが、逆に証券仲介業制度の導入のほうが第65条の鎖を解き放つための「前ふり(伏線)」じゃないの?って感じもします。
あとこの「登録」というのは、「免許」よりは敷居が低いですが証券会社の設立と同じなので、実務上、これがどこまで簡単に行えるのかが注目ポイントです。
第六十六条の四
内閣総理大臣は、第六十六条の二の登録の申請があつた場合においては、次条の規定により登録を拒否する場合を除くほか、次に掲げる事項を証券仲介業者登録簿に登録しなければならない。(略)

という感じで、「登録したい人は原則断れないよ」となってはいますが、
第六十六条の五
内閣総理大臣は、登録申請者が次の各号のいずれかに該当するとき(略)は、その登録を拒否しなければならない。
(中略)
三 他に営んでいる事業が公益に反すると認められる者
四 証券仲介業を適確に遂行することができる知識及び経験を有しないと認められる者
(略)

の「四」で、登録させるかどうかの裁量権は実質的には当局側にかなりあることになると思います。証券業協会の外務員や内部管理責任者の資格保持者がいたり、規程がそろっていたりというような「態勢整備」が求められるんでしょうね。
このへん、積極的に仲介業者を募集している証券会社では、規定のひな形やマニュアルなどが用意されるという感じになるんでしょうね。(参考:事務ガイドライン改正)
第六十六条の十五
証券仲介業者は、営業年度又は事業年度ごとに、内閣府令で定めるところにより、証券仲介業に関する報告書を作成し、毎営業年度又は事業年度経過後三月以内に、これを内閣総理大臣に提出しなければならない。
� 内閣総理大臣は、内閣府令で定めるところにより、前項の証券仲介業に関する報告書のうち、顧客の秘密を害するおそれのある事項及び当該証券仲介業者の業務の遂行上不当な不利益を与えるおそれのある事項を除き、投資者の保護に必要と認められる部分を公衆の縦覧に供しなければならない。

ということになります。となると、未公開の法人や個人事業である会計事務所などについても、証券仲介業になると、実際、公開会社に準ずるような開示を求められるということになります。証券仲介業がどこまで開示するかについての内閣府令はまだ見て無いですが、これはかなりキツそう。体制を拡充するための人件費等でへたすると年間1千万円〜2千万円くらいかかかるんじゃないでしょうか。
公開会社はいいですが、未公開会社はこの開示をすごくいやがるんじゃないかと思います。
(または、vehicleを別に分けるか。)
加えて、
第六十六条の二十
内閣総理大臣は、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、証券仲介業者若しくはこれと取引をする者に対し当該証券仲介業者の証券仲介業務に関し参考となるべき報告若しくは資料の提出を命じ、又は当該職員をして当該証券仲介業者の証券仲介業務の状況若しくは書類その他の物件の検査をさせることができる。

という(証券会社における第五十九条の命令権および検査権と同様の)規定があります。
一般事業会社は、監査法人や税務署以外の外部の人にはあまり会社の中身までつっこんで見られた経験のないところが多いので、これは「やだなー」という感じじゃないでしょうか。今まで金融庁の検査が入る会社というのは基本的に銀行とか保険会社とか証券会社などの「堅い」会社だったわけですが、今後は例えばネット系企業で首からIDカードをぶら下げた茶髪とかロン毛の人の脇で背広を着た金融庁の方々が何か検査してるという(笑)光景が見られることになるんじゃないかと。
証券仲介業者は、一般事業会社やFPが手を上げれば登録できるわけじゃなくて、必ず、どこかの証券会社と組まないとできない、というところが大きな制約になります。
証券仲介業者に委託する証券会社としても、
第六十六条の二十二
証券仲介業者の所属証券会社等は、その委託を行つた証券仲介業者が証券仲介業につき顧客に加えた損害を賠償する責めに任ずる。(略)

というような恐ろしい条文があるので、(特に最初のうちは)怖くて、あまり個人事業的な人は仲介業者に指定できないんじゃないかと思いますが。
(今回は、このへんで。)

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One thought on “証券仲介業とは何か

  1. 証券仲介業ですが、地銀レベルでも始まってきております。複数の証券会社と提携して、(しかも似通った大手証券)やることになっているのですが、最良執行制度というもので、説明義務がやたらと加えられてしまいそうで、困っております。取扱商品の区分けをしないとどうしょうもないのですが、上層部の方針としてフルラインでやる雰囲気があります。動き辛いですわ。。。最良執行制度の対応についてアドバイスいただけませんでしょうか?