EDINET開示の義務化とXBRL

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もう20年以上も前の話になりますが、私が社会人になってはじめてやった新人研修の一つが、「有価証券報告書の書き写し」。今頃6月の時期は、3月期決算の会社の有価証券報告書が大量に提出され一年で最も忙しい時期になるので、新人研修と称して手伝わされるわけです。有価証券報告書に記載されている財務諸表は、各社科目の表記がバラバラなので、単純にコンピュータに入力しても他社比較や統計処理ができない。このため、科目の意味を解釈しながら、「人力で」有価証券報告書に記入されている数字を、一つ一つ統一された勘定科目体系の中に書き写していくのです。_| ̄|○
しかも、NECのPC9801のパソコンが会社に一台あるかどうか、OSもN88-BASIC(MS-DOSとかってのがあるみたいだけど、なんじゃそれ? )という古代のお話ですので、当然のことながら、書き写す先は「紙」。検算は電卓。その部門のプロのおねいさん方はそろばん、でした。
これを磁気テープに落として、1ユーザー1年分確か数百万円(!)で売っていたと記憶しています。当時は、大手銀行などの金融機関など、審査をやるようなところはそのくらいコストをかけるニーズがあったのでしょう。
EDINET開示の義務化
本日の日経に、この6月から、有価証券報告書はすべてEDINETへの電子的な開示が義務付けられることになっている、という記事が載ってます。
EDINET:http://info.edinet.go.jp/
今回のEDINET提出のデータフォーマットは、ただのHTML等のようです。HTMLというのは単に「人間」が読むためのフォーマットに過ぎませんので、その中身が何を意味するのかは「機械」にはわからない。こうしたデータをコンピュータが理解できる(自動処理できる)ようにしようというのが、ご案内のとおり、XMLです。有価証券報告書などの財務諸表部分も当然、XML化が検討されていますが、それが「XBRL」です。
XBRL Japan (リンク切れ等多い・・。)
http://www.xbrl-jp.org/
XBRL International
http://www.xbrl.org/
関連記事:
http://bizns.nikkeibp.co.jp/cgi-bin/search/wcs-bun.cgi?ID=125430&FORM=biztechnews
XBRLとは何か
XBRL とは「eXtensible Business Reporting Language」の略。会計版のXMLです。
詳しくは、下記の「FACT BOOK」に詳しく書かれています。
http://www.xbrl-jp.org/download/XBRLFACTBOOK_ver.3.1.pdf
会計というのは、比較的定義がきちっとしているわりに、理解するのはややこしいので、まさにXML化がバシッ!っとハマるところではないかと思います。
XBRL Japanの会員には、メジャーな銀行、コンピュータベンダー、会計パッケージ会社や証券印刷会社さんなども参加し、税務申告や有価証券報告書にも使う検討が進んでいるなど、日本のXBRLに対する取り組みは、海外と比べても比較的熱い感じになっているようです。
参考過去log(XBRLではありませんが、税務申告書もXML化されました。):
https://www.tez.com/blog/archives/000013.html
https://www.tez.com/blog/archives/000014.html
XBRL普及の影響
で、XBRLを導入するとどうなるか、というのは、まず、前述のような私がやったような書き写し読み替えの手間がいらない。「何という科目の金額は、売上原価に入る科目」だ、というのは、XMLで定義されているわけなので、自動的に共通フォーマットにもなるし、比較もできやすくなる、というわけです。
ま、でも、それって、何百社も分析する人ならまだしも、数社程度の財務諸表を見るような一般の人にそれほどメリットがあることってわけでもない・・・。
私も、昨年7月に開催されたXBRLの「第6回シンポジウムに、(半分、「XMLになったからって、どーなのよ?」という気持ちで)参加したのですが、一番「ワオ!」って感じだったのが、外国の財務諸表が一瞬にして他の国の財務諸表にコンバートできるデモ。
例えば、中国の財務諸表だったらま漢字なのでまだ何となく意味が取れても、ハングルで書かれた財務諸表とかフランス語で書かれた財務諸表などは読んでもワケが分かりまへーん、という感じでしたが、そういうものも一瞬にして日本語とか英語の財務諸表に変身するわけです。
しかも、科目の「意味」や、その国の会計基準も電子的に定義されていますので、単純に科目の名称を「翻訳」するだけでなく、表示まで自動で変更することが可能。例えば、自己株式を資産の部に計上している国の財務諸表が、ボタン一つで資本の部のマイナスで表示されるとか。
XBRLが普及してくると、例えば、海外企業への投資のデューデリをするとか、海外企業からの買収を受ける際の初期の交渉なんかが、相当スピードアップするかも知れません。
海外証券市場への上場や、海外企業の日本の証券市場への上場などの際も、開示のためのコストの大幅な削減につながるかも。
また、有価証券報告書というのは、そもそも株式投資をする人のためにあるわけですが、現在、有価証券報告書をちゃんと読んで投資をしている個人投資家の方というのはほとんどいらっしゃらないんじゃないでしょうか。
XBRLはXMLなので、Excelのマクロで処理できてしまうところもお手軽です。
XBRLの周辺モジュールとして、グラフを書いたり、計数分析したりというようなEXCELベース等のものがいっぱいできてくると、財務分析のノウハウは急速に「コモディティ化」するかも知れません。
また、投資したい証券の銘柄を指定すると、XBRLベースの財務諸表データを自動的に引っ張ってきて、同業他社比較や財務的問題点などの財務分析をビジュアルに瞬時に表示してくれるような「エージェント」的なサービスもYahoo!ファイナンスとかLivedoorファイナンスなどの投資情報サービスには必ず付いてくることになるんでしょうね。
ご参考まで。
参考:
2003.10.24発表:税務用財務諸表XBRLタクソノミー(セット)の一部(クリックで拡大)

jp-bs-2003-08-31(s).jpg

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7 thoughts on “EDINET開示の義務化とXBRL

  1. 始めまして。何時もながら磯崎さんのご興味の広さと指摘の鋭さには感服します。
    テクノロジーの進歩と通信の発達によって、世界がどんどん狭くなりますね。
    国によって同じ勘定科目でも中身が少々違うなどはないのですか?例えば日本と米国の失業率とか弁護士の分類とか、のような。

  2. 遅レスですみません。
    また、過分なお言葉、恐縮です。
    「国によって同じ勘定科目でも中身が少々違う」ということは、あると思いますが、科目もかなり細かく設定されているので、かなり実用になるんではないかとは想像してます。
    「科目の処理自体」が違う影響の方が大きいんではないでしょうか。例えば、減価償却の方法とか、営業権を償却するのか何年で償却するのか、とか・・・。

  3. ご回答をありがとうございます。
    処理の方が影響するんですか。償却方法とか年数というと法律と絡むと言うことですね。
    参考になりました。ありがとうございました。

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