社会は「計算」できるか?

「タメグチ」的ガバナンスの歴史に、長谷川敦士さんからトラックバックいただきました。(ごぶさたしてます。)

磯崎さんによる、ヨーロッパ的なガバナンスのしくみが「なぜ」生まれていったかについての、情報処理コスト力学の観点から分析。 (中略)
磯崎さんはそうは言っていませんが、情報処理コストの概念をいれている時点で、力学系として解釈した考え方だと思った。

さすが、物理学の人。するどいですね。実は、そのへんに発想(妄想)のヒントがありまして。

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「思考のコスト」と市場

(この話ばっかりで恐縮ですが)、「タメグチ」的ガバナンスの歴史に、石橋秀仁さんからコメントをいただきました。
 

読み応えのあるエントリでした。内容から察するに、トマス・W. マローン『フューチャー・オブ・ワーク』

フューチャー・オブ・ワーク (Harvard business school press)
トマス・W. マローン
ランダムハウス講談社
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おすすめ度の平均: 4.0

4 モチベーションと創造性を高める分散型マネジメント
4 分散化されている組織をまとめるのはビジョン
4 情報伝達コストの低下がもたらす世界
4 新時代の組織論
4 「調整と育成」のマネジメント

は読まれてますよね。

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「歴史のif」は許されるのではないか?

元日経新聞の編集委員の牧野洋さんからメールいただきました。
牧野さんと言えば、当ブログの一昨年の売上No1になった

不思議の国のM&A—世界の常識 日本の非常識

も書かれた方ですが、「ワーク・ライフ・バランス」を掲げて一昨年 日経新聞を退職し、昨年からは南カリフォルニアに家族と住んで、「大手町からカリフォルニア」というブログ
http://worklifebalance.justblog.jp/blog/
を立ち上げられたところです。
(追記2010/4/8:ジャストシステムのブログが終了したことにより、リンク切れ。新しいURLは、
http://worklifebalance.typepad.jp/blog/)

このブログ、現時点でネットで検索しても結果ほぼゼロなので、まだ一般にはあまり知られてないと思いますが、これから充実されていくとのことなので、要注目かと思います。

さて、一点、牧野さんに教えていただいたのですが、
牧野さんが昨年翻訳された、アメリカのシンクタンクランド研究所について書かれた本「ランド」
 

ランド 世界を支配した研究所
 

に次のような一文が出てくるそうで、
 

Over the past few years, a growingly serious branch of American history sometimes called allohistory or counterfactual history has devoted itself to what might be called the ‘what if.’ What if the Confederacy had defeated the Union in the Civil War? What if Archduke Ferdinand had not been assassinated and World War I never happened? What if Hitler had invaded England? What if Al Gore had won Florida in 2000? It is a wonderful kind of speculation, meant to explore the essential capriciousness of fate, to examine the rationale for people’s actions and the way certain forces are considered by historians to be immutable.

アメリカの歴史学会の中に「アローヒストリー」と呼ばれる学派がある。「反事実的歴史」とも言える学派で、その活動はますます本格的なものになっている。ここ数年、この学派が集中的に取り組んでいる問題は「歴史に『もし』が許されたら」である。つまり、もし南北戦争で南部連合国が北部諸州に勝利していたら? もしオーストリア・ハンガリー帝国のフェルディナント皇太子が暗殺されずに、第一次世界大戦が起こらなかったら? もしナチスドイツのヒトラーがイギリスの侵略に成功していたら? もし二〇〇〇年の大統領選中にアル・ゴアがフロリダ州で勝っていたら? 
これらは頭の体操である。運命が本質的に気まぐれであることを探究したり、歴史上の人物の行動の背後にある合理性を考察したり、なぜ一定の歴史的な流れは変えようがないと歴史家が考えるのかを調査したりするには、このような方法が欠かせない。

 

先日私が書いた「タメグチ的ガバナンスの歴史」は、この 「allohistory」(counterfactual history)と共通する部分があるように思います、 とのことです。

「歴史のifに意味が無い」というのは、「歴史は『カオス』的であって、ほんのわずかな条件の差でその後が大きく変わってしまうから、あまり『what-if』を考えてもしょうがない」、または、「もう起こっちゃったことは変えられないんだから、考えても意味がない」といったことかと思いますが、

確かに、「来年がどうなるかを予測したい」といった目的に使えるかどうかはともかく、例えば、その歴史上のできごとが単なる「偶然」なのか、それともそのイベントがなくてもいつかは必ず同様のことが発生する「必然」なのかを考えることは、特に、「自由」「市場」「民主主義」といった、現代の世界を支える根幹のしくみの意味を多角的に考えてみるのには、絶対必要ではないかと考える次第であります。

SF小説やマンガなどでは、「もし、あのとき」というのは、よく使われる手法じゃないかと思いますが、学問としてそういう手法が存在するのは存じませんでした。どうもありがとうございます。>牧野さん

また、元シンクタンク研究員であるにも関わらず、不勉強にも上記の「ランド」もまだ読んでませんでしたので、早速買って読ませていただきます。

(ではまた。)

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「タメグチ」的ガバナンスの歴史(補足メモ)

昨日の、「タメグチ」的ガバナンスの歴史には、多数のブックマーク、コメント、トラックバックありがとうございました。
ブックマークでも おほめのコメントをたくさんいただきましたが(ありがとうございます)、特に、小飼弾さんにこんなに気に入っていただけるとは!

さて、昨日の話は、一言で言うと「意思決定のコストがガバナンスの形を決める」という仮説ですが、大陸スケール、数百年スケールのざっくりした話の場合ともかく、歴史の具体的事象と突合するには、もちろん「人口密度」でコストを考えるのは話がおおざっぱすぎますので、ちょっと補足のメモです。

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47thさん復活!

いつの間にか(というか先週末13日から)、”伝説の” 47thさんのブログが復活してるのを発見!
http://d.hatena.ne.jp/ny47th/
こりゃー楽しみです。
(取り急ぎ。)

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「タメグチ」的ガバナンスの歴史

本日は、一言でいうと、「欧米的なガバナンスのノリは、いかに形成されたのか」というお話であります。

  • なぜ、アメリカの社長は「Hi!, John」なんて気安く名前で呼ばれるけど、日本ではそうではないのか。
  • なぜ、日本では社外取締役や委員会設置会社が普及しないのか。
  • なぜ、ヨーロッパでは歴史上、繰り返し民主主義的な発想の体制が出てくるのに、アジアではそれほどでないのか。
  • なんでキリスト教はヨーロッパ方向では大成功したのに、アジアの方の普及はさほどでないのか。
  • なぜ、日本は市場経済的な運営がヘタクソなのか。

といった日頃の疑問から考え始めて、
もしアメリカ大陸がなかったら
もし、アメリカ大陸が日本の近くにあったら
もし、アメリカ大陸が日本の近くにあったら(続き)
「宗教」vs「科学」
等で考察してきたことを、(一般的な歴史学の観点というよりは)、「情報処理メカニズム」的な観点から整理してみたものであります。

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女性参政権運動と「監査役制度改造論」

放送大学の「アメリカの歴史と文化(’08)」で何人かいらっしゃる講師のうち、東京女子大学の小檜山ルイ教授は女性史的な観点を多く取り入れて講義されているのですが、この中で、女性参政権を獲得する過程の議論がおもしろかったので、メモであります。
「女性参政権の歴史」と聞いて多くの人がイメージするのは、

女性も男性も同じ平等な人間だから女性にも参政権があるのは当然中の当然。にも関わらず、男性中心社会の横暴でそのあるべき状態が達成されていなかったものを、「本来的な状態」に戻す過程

または、

なんで男だけ参政権持ってんのよ。私たちにもよこしなさいよ!(キーッ。)

といった(一方向的な)イメージなんじゃないかと思います。
ところが、

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「漢検」で思った、公益法人の利益についての素朴な疑問

連日、日本漢字能力検定協会への文部科学省の実地検査の報道が行われていて思ったんですが。
もちろん、仮に、資金の余剰が出ているのをいいことに理事が高額の報酬を得たり、獲得した資金を理事の関連会社に資金を流していたりしたとしたら、それがいいことでないのは言うまでもありません。
しかし、「公益法人としては認められない巨額の利益を上げ」「文科省は『毎年の利益水準が大きすぎる』とみており」などと報道されているように、日本の公益法人は、活動にかかる費用を上回る利益があるのはダメ、というノリになっているわけです。

公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律
(公益認定の基準)
第五条  
六  その行う公益目的事業について、当該公益目的事業に係る収入がその実施に要する適正な費用を償う額を超えないと見込まれるものであること。

でも、「あるべき公益法人の姿」は、本当にそれでいいんでしょうか?

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