名義書換代理人をおかない上場会社があったとは・・・

昨日の日経新聞朝刊11面の記事。

株式事務外部委託、東証、例外なく義務化
 東京証券取引所は西武鉄道の問題を受け、全上場企業に例外なく株式事務の作業を外部の専門機関に委託することを義務づける方針だ。株式の実質的な保有者などの状況を専門機関のチェックを受けさせ、情報開示の透明性を高める。
 現在、名義書き換えなどの株式事務を自社で行っているのは西武鉄道のほかに、西武鉄道グループの伊豆箱根鉄道、タクシー大手の大和自動車交通(ともに市場第二部上場)の二社。有価証券報告書には「大株主の状況」という欄があり、西武は誤った株式保有比率を記載し続けていたことになる。有価証券報告書は会社の責任で金融庁に提出するため、東証にチェックする義務はないが、再発防止のため株式事務の外部委託を徹底する。

この西武鉄道の初期の報道で「西武鉄道が親会社であるコクドからの指示で株式の名義を書き換えていた」というのを聞いたとき、「実務上、名義書換代理人とはどう情報をやりとりしてたんだろう?」と疑問に思ったんですが、名義書き換えを全部西武鉄道自身でやってたんですね。
日経会社情報を見ても名義書換代理人の欄に「本社」と書いてあります。
商法上は確かに、「定款ヲ以テ名義書換代理人ヲ置ク旨ヲ定ムルコトヲ得」(商法206条�)とありますので、置かなくてもいいわけですが・・・。それで事務が回っていたというところもある意味すごいかも知れません。
(ではまた。)

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西武鉄道株売却がなぜインサイダー取引になるのか

(今日のできごと。元町・中華街駅のエレベータで、はなさんと乗り合わせた。モデルさんだけに、でかかった・・・。)
本日は、西武鉄道株のインサイダー取引疑惑の機会に、インサイダー取引規制のおさらいをしておきたいと思います。
根拠条文は、下記の通り、証券取引法第166条が中心となります。

証券取引法第一六六条(会社関係者による内部者取引の禁止)
 次の各号に掲げる者(以下この条において「会社関係者」という。)であつて、上場会社等に係る業務等に関する重要事実(当該上場会社等の子会社に係る会社関係者(当該上場会社等に係る会社関係者に該当する者を除く。)については、当該子会社の業務等に関する重要事実であつて、次項第五号から第八号までに規定するものに限る。以下同じ。)を当該各号に定めるところにより知つたものは、当該業務等に関する重要事実の公表がされた後でなければ、当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買その他の有償の譲渡若しくは譲受け又は有価証券指数等先物取引、有価証券オプション取引、外国市場証券先物取引若しくは有価証券店頭デリバティブ取引(以下この条において「売買等」という。)をしてはならない。当該上場会社等に係る業務等に関する重要事実を次の各号に定めるところにより知つた会社関係者であつて、当該各号に掲げる会社関係者でなくなつた後一年以内のものについても、同様とする。
一 当該上場会社等(当該上場会社等の親会社及び子会社を含む。以下この項において同じ。)の役員、代理人、使用人その他の従業者(以下この条及び次条において「役員等」という。) その者の職務に関し知つたとき。
二 当該上場会社等の商法第二百九十三条ノ六第一項に定める権利を有する株主若しくは優先出資法に規定する普通出資者のうちこれに類する権利を有するものとして内閣府令で定める者、商法第二百九十三条ノ八第一項に定める権利を有する株主又は有限会社法(昭和十三年法律第七十四号)第四十四条ノ三に定める権利を有する社員(これらの株主、普通出資者又は社員が法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この条及び次条において同じ。)であるときはその役員等を、これらの株主、普通出資者又は社員が法人以外の者であるときはその代理人又は使用人を含む。) 当該権利の行使に関し知つたとき。
三 当該上場会社等に対する法令に基づく権限を有する者 当該権限の行使に関し知つたとき。
四 当該上場会社等と契約を締結している者又は締結の交渉をしている者(その者が法人であるときはその役員等を、その者が法人以外の者であるときはその代理人又は使用人を含む。)であつて、当該上場会社等の役員等以外のもの 当該契約の締結若しくはその交渉又は履行に関し知つたとき。
五 第二号又は前号に掲げる者であつて法人であるものの役員等(その者が役員等である当該法人の他の役員等が、それぞれ第二号又は前号に定めるところにより当該上場会社等に係る業務等に関する重要事実を知つた場合におけるその者に限る。) その者の職務に関し知つたとき。

つまり、上記で定義される上場企業の「会社関係者」(役職員、帳簿閲覧権のある株主、取引先等)については、「重要事実」について知ったときには、株式等の売買等を行ってはいけないということですが、では、何が「重要事実」に該当するかというと、次の第2項の定めの通りとなります。

� 前項に規定する業務等に関する重要事実とは、次に掲げる事実(第一号、第二号、第五号及び第六号に掲げる事実にあつては、投資者の投資判断に及ぼす影響が軽微なものとして内閣府令で定める基準に該当するものを除く。)をいう。
一 当該上場会社等の業務執行を決定する機関が次に掲げる事項を行うことについての決定をしたこと又は当該機関が当該決定(公表がされたものに限る。)に係る事項を行わないことを決定したこと。
イ 株式(優先出資法に規定する優先出資を含む。へにおいて同じ。)、新株予約権及び新株予約権付社債の発行
ロ 資本の減少
ハ 資本準備金又は利益準備金の減少
ニ 商法第二百十条若しくは第二百十一条ノ三の規定又はこれらに相当する外国の法令の規定(当該上場会社等が外国会社である場合に限る。以下この条において同じ。)による自己の株式の取得
ホ 商法第二百十一条の規定又はこれに相当する外国の法令の規定による自己の株式の処分
ヘ 株式の分割
ト 利益若しくは剰余金の配当又は商法第二百九十三条ノ五に定める営業年度中の金銭の分配(その一株若しくは一口当たりの額又は方法が直近の利益若しくは剰余金の配当又は金銭の分配と異なるものに限る。)
チ 株式交換
リ 株式移転
ヌ 合併
ル 会社の分割
ヲ 営業又は事業の全部又は一部の譲渡又は譲受け
ワ 解散(合併による解散を除く。)
カ 新製品又は新技術の企業化
ヨ 業務上の提携その他のイからカまでに掲げる事項に準ずる事項として政令で定める事項
二 当該上場会社等に次に掲げる事実が発生したこと。
イ 災害に起因する損害又は業務遂行の過程で生じた損害
ロ 主要株主の異動
ハ 特定有価証券又は特定有価証券に係るオプションの上場の廃止又は登録の取消しの原因となる事実
ニ イからハまでに掲げる事実に準ずる事実として政令で定める事実
三 当該上場会社等の売上高、経常利益若しくは純利益(以下この条において「売上高等」という。)若しくは第一号トに規定する配当若しくは分配又は当該上場会社等の属する企業集団の売上高等について、公表がされた直近の予想値(当該予想値がない場合は、公表がされた前事業年度の実績値)に比較して当該上場会社等が新たに算出した予想値又は当事業年度の決算において差異(投資者の投資判断に及ぼす影響が重要なものとして内閣府令で定める基準に該当するものに限る。)が生じたこと。
四 前三号に掲げる事実を除き、当該上場会社等の運営、業務又は財産に関する重要な事実であつて投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの
五 当該上場会社等の子会社の業務執行を決定する機関が当該子会社について次に掲げる事項を行うことについての決定をしたこと又は当該機関が当該決定(公表がされたものに限る。)に係る事項を行わないことを決定したこと。
イ 株式交換
ロ 株式移転
ハ 合併
ニ 会社の分割
ホ 営業又は事業の全部又は一部の譲渡又は譲受け
ヘ 解散(合併による解散を除く。)
ト 新製品又は新技術の企業化
チ 業務上の提携その他のイからトまでに掲げる事項に準ずる事項として政令で定める事項
六 当該上場会社等の子会社に次に掲げる事実が発生したこと。
イ 災害に起因する損害又は業務遂行の過程で生じた損害
ロ イに掲げる事実に準ずる事実として政令で定める事実
七 当該上場会社等の子会社(第二条第一項第四号、第五号の二又は第六号に掲げる有価証券で証券取引所に上場されているものの発行者その他の内閣府令で定めるものに限る。)の売上高等について、公表がされた直近の予想値(当該予想値がない場合は、公表がされた前事業年度の実績値)に比較して当該子会社が新たに算出した予想値又は当事業年度の決算において差異(投資者の投資判断に及ぼす影響が重要なものとして内閣府令で定める基準に該当するものに限る。)が生じたこと。
八 前三号に掲げる事実を除き、当該上場会社等の子会社の運営、業務又は財産に関する重要な事実であつて投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの

今回の西武鉄道株の疑惑は、第�項第二号ハの「特定有価証券又は特定有価証券に係るオプションの上場の廃止又は登録の取消しの原因となる事実」に該当するのではないかと考えられます。
ここでいう「特定有価証券」とは、第百六十三条で、「当該上場会社等の同項(第2条第1項)第四号、第五号の二若しくは第六号に掲げる有価証券(政令で定めるものを除く。)その他の政令で定める有価証券(以下この条から第百六十六条までにおいて「特定有価証券」という。)」と定められておりまして、社債(四号)、優先出資証券(五号の二)、株券、新株引受権証券、新株予約権証券(六号)のこと。(「政令」関係は、証券取引法施行令第二七条〜第二七条の三あたりを参照。)
いずれにせよ、株券はずばり対象です。

� 会社関係者(第一項後段に規定する者を含む。以下この項において同じ。)から当該会社関係者が第一項各号に定めるところにより知つた同項に規定する業務等に関する重要事実の伝達を受けた者(同項各号に掲げる者であつて、当該各号に定めるところにより当該業務等に関する重要事実を知つたものを除く。)又は職務上当該伝達を受けた者が所属する法人の他の役員等であつて、その者の職務に関し当該業務等に関する重要事実を知つたものは、当該業務等に関する重要事実の公表がされた後でなければ、当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買等をしてはならない。

当然、その証券を発行する会社の「会社関係者」だけじゃなくて、その「会社関係者」から情報を入手した人も取引しちゃダメ、ということですね。

� 第一項、第二項第一号、第三号、第五号及び第七号並びに前項の公表がされたとは、上場会社等に係る第一項に規定する業務等に関する重要事実、上場会社等の業務執行を決定する機関の決定、上場会社等の売上高等若しくは第二項第一号トに規定する配当若しくは分配、上場会社等の属する企業集団の売上高等、上場会社等の子会社の業務執行を決定する機関の決定又は上場会社等の子会社の売上高等について、当該上場会社等又は当該上場会社等の子会社(子会社については、当該子会社の第一項に規定する業務等に関する重要事実、当該子会社の業務執行を決定する機関の決定又は当該子会社の売上高等に限る。以下この項において同じ。)により多数の者の知り得る状態に置く措置として政令で定める措置がとられたこと又は当該上場会社等若しくは当該上場会社等の子会社が提出した第二十五条第一項に規定する書類(同項第七号に掲げる書類を除く。)にこれらの事項が記載されている場合において、当該書類が同項の規定により公衆の縦覧に供されたことをいう。

「多数の者の知り得る状態に置く措置として政令で定める措置」とは、2004年2月1日からいわゆる「12時間ルール」が改正、施行され、2つ以上の新聞やテレビ等に公開されて12時間以上経った時(施行令第三〇条第一項一号)だけでなく、当該情報が自主規制機関のホームページに掲載された時点でOKになってます。(「同第二号(略)、その発行する有価証券を上場する各証券取引所の規則で定めるところにより、重要事実等又は公開買付け等事実(略)を当該証券取引所に通知し、かつ、当該通知された重要事実等又は公開買付け等事実が、内閣府令で定めるところにより、当該証券取引所において公衆の縦覧に供されたこと。」)
いずれにせよ、まったくこうした重要事実を公表していなかったらアウト。

� 第一項及び次条において「親会社」とは、他の会社(協同組織金融機関を含む。以下この項において同じ。)を支配する会社として政令で定めるものをいい、この条において「子会社」とは、他の会社が提出した第五条第一項の規定による届出書、第二十四条第一項の規定による有価証券報告書又は第二十四条の五第一項の規定による半期報告書で第二十五条第一項の規定により公衆の縦覧に供された直近のものにおいて、当該他の会社の属する企業集団に属する会社として記載されたものをいう。

以下、適用除外事項が列挙されてますが、

� 第一項及び第三項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 新株引受権(優先出資法に規定する優先出資引受権を含む。以下この号において同じ。)を有する者が当該新株引受権を行使することにより株券(優先出資証券を含む。)を取得する場合
二 新株予約権を有する者が当該新株予約権を行使することにより株券を取得する場合
二の二 特定有価証券等に係るオプションを取得している者が当該オプションを行使することにより特定有価証券等に係る売買等をする場合
三 商法第二百四十五条ノ二第一項、第二百四十五条ノ五第三項、第三百四十九条第一項、第三百五十五条第一項(同法第三百七十一条第二項において準用する場合を含む。)、第三百五十八条第五項、第三百七十四条ノ三第一項(同法第三百七十四条ノ三十一第三項において準用する場合を含む。)、第三百七十四条ノ二十三第五項、第四百八条ノ三第一項若しくは第四百十三条ノ三第五項若しくは有限会社法第六十四条ノ二第一項の規定による株式の買取りの請求又は法令上の義務に基づき売買等をする場合
四 当該上場会社等の株券等(第二十七条の二第一項に規定する株券等をいう。)に係る同項に規定する公開買付け(同項本文の規定の適用を受ける場合に限る。)又はこれに準ずる行為として政令で定めるものに対抗するため当該上場会社等の取締役会が決定した要請(委員会等設置会社にあつては、執行役の決定した要請を含む。)に基づいて、当該上場会社等の特定有価証券等又は特定有価証券等の売買に係るオプション(当該オプションの行使により当該行使をした者が当該オプションに係る特定有価証券等の売買において買主としての地位を取得するものに限る。)の買付け(オプションにあつては、取得をいう。次号において同じ。)その他の有償の譲受けをする場合
四の二 商法第二百十条若しくは第二百十一条ノ三の規定又はこれらに相当する外国の法令の規定による自己の株式の取得についての当該上場会社等の商法第二百十条第一項の規定による定時総会の決議若しくは第二百十一条ノ三第一項に規定する取締役会の決議(委員会等設置会社にあつては、執行役の決定を含む。)(同条第二項に規定する事項に係るものに限る。)又はこれらに相当する外国の法令の規定に基づいて行う決議等(以下この号において「定時総会決議等」という。)について第一項に規定する公表(当該定時総会決議等の内容が当該上場会社等の業務執行を決定する機関の決定と同一の内容であり、かつ、当該定時総会決議等の前に当該決定について同項に規定する公表がされている場合の当該公表を含む。)がされた後、当該定時総会決議等に基づいて当該自己の株式に係る株券若しくは株券に係る権利を表示する第二条第一項第十号の三に掲げる有価証券その他の政令で定める有価証券(以下この号において「株券等」という。)又は株券等の売買に係るオプション(当該オプションの行使により当該行使をした者が当該オプションに係る株券等の売買において買主としての地位を取得するものに限る。以下この号において同じ。)の買付けをする場合(当該自己の株式の取得についての当該上場会社等の業務執行を決定する機関の決定以外の第一項に規定する業務等に関する重要事実について、同項に規定する公表がされていない場合(当該自己の株式の取得以外の商法第二百十条若しくは第二百十一条ノ三の規定又はこれらに相当する外国の法令の規定による自己の株式の取得について、この号の規定に基づいて当該自己の株式に係る株券等又は株券等の売買に係るオプションの買付けをする場合を除く。)を除く。)
五 第百五十九条第三項(同条第四項において準用する場合を含む。)の政令で定めるところにより売買等をする場合
六 社債券(新株予約権付社債券を除く。)その他の政令で定める有価証券に係る売買等をする場合(内閣府令で定める場合を除く。)

等、ストックオプションの行使や、自己株式の買付の場合については除外されております。さらに、西武鉄道の場合に該当する可能性があるのは、以下の市場外で取引する場合の除外ですが、

七 第一項又は第三項の規定に該当する者の間において、売買等を取引所有価証券市場又は店頭売買有価証券市場によらないでする場合(当該売買等をする者の双方において、当該売買等に係る特定有価証券等について、更に第一項又は第三項の規定に違反して売買等が行われることとなることを知つている場合を除く。)

上記の通り、「第一項又は第三項の規定に該当する者の間において」となってますので、事情を知らずに株式を交わされたビール会社等の場合には、これに該当しないことになります。

八 上場会社等に係る第一項に規定する業務等に関する重要事実を知る前に締結された当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買等に関する契約の履行又は上場会社等に係る同項に規定する業務等に関する重要事実を知る前に決定された当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買等の計画の実行として売買等をする場合その他これに準ずる特別の事情に基づく売買等であることが明らかな売買等をする場合(内閣府令で定める場合に限る。)

しかし、すごいチャートですね。
9002.t.gif
(出所:Yahoo!ファイナンス)
(以 上)

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SUICAは「電子マネー」の本命になるか

SUICAが電子マネーのデファクト(?)獲得に本気(?)になってる気がします。
90年代後半の「電子マネー決済実験」みたいなノリとは異なり、かなり便利(?)。
(・・・ちょっと語尾上げ気味。)
KIOSK
まず、こちらですが。
東京駅八重洲口のKIOSKで、なんとSUICAを使って「セルフ」でお買い物ができるようになっててびっくり。
suica_kiosk.jpg
ちょっと写真が小さくて見にくいかと思いますが、スポーツ紙はタッチパネルのボタンを押してSUICAを当てる。バーコードのある商品は、バーコードをカメラにかざして、SUICAを当てる、という段取りです。
キヨスクの試験店舗でのお買い物方法

http://www.jreast.co.jp/press/2004_1/20040914/pdf/20040914_2.pdf

「おばちゃん、ここ100円置いとくよー」てなノリは、電子マネーではかなり難しいんじゃないかと思ってましたが、「セルフ」と来ましたか。KIOSKを「人間が見張ってる自動販売機」にしようということですね。(ちょっと面倒なので、そうはならない気もします。)
グリーン車
先週土曜日からJRのグリーン車の料金体系が変わり、SUICAも使えるようになったというので、今日、横浜−新宿間(湘南新宿ライン)で試乗してみました。
ホームであらかじめグリーン券を買っておけば750円ですが、社内で買うと1000円(!)と250円も多く取られることになったので、当然ホームで購入。
が、ホームの券売機でSUICAでグリーン券を購入したのに、券が出てこない。「あれっ?」って感じですが、実は「紙」の切符は出てこないでSUICAのカード内に「電子的に」グリーン券が書き込まれる、というわけです。
このアフォーダンス(?)は、かなり直感的に理解しにくいと見たのか、駅ホームに応援とおぼしき社員の方が立って、「はじめてですか?」と聞いて説明してくれます。(確かに、グリーン車のメイン客層であるお年寄りには、かなり理解がキビシイかも。)
このように、座席のそれぞれの上の天井のLEDがオレンジに光ってるんですが(写真は窓側と通路側の2つ。)
suica_green1.jpg
電子チケットの入ったSUICAで触れると緑色に変わります。
suica_green2.jpg
SUICAには「どこまでグリーン券を買ったか」という情報も書き込まれているはずなので、その区間をすぎると、またLEDの色が変わるんでしょう。
(この方式、まだ湘南新宿ラインなどだけで、東海道線ではまだやってません。)
グリーンに乗ってると、車掌がまわってきて「乗車券とグリーン券を見せろ」というのが非常にうざったいのですが、新方式だと若いコンパニオンのお姉さんがランプを確認して通り過ぎていくだけなので、非常にいいです。
そう。今までは「この客は切符チェック済」「この客は小田原まで、こっちは平塚まで」というようなことを記憶してないといけないので、おっさんベテランの車掌さんでないと対応できなかったわけですが、新方式だとバイトの女の子でも検札ができるわけです。(人件費節約、おじさん斬り。)
ちなみに、「グリーンなんぞぜいたくな」とお思いの方も多いかと思いますが、ちょっとパソコンで調べ物をしたいが一般車両は座れない、というようなときに、座ってテーブルで作業できるなら、「ちょっと高めのマンガ喫茶」と思えば750円もまあリーズナブルかと思います。これでパソコン用の電源と無線LANがあったりするとさらにグー(死語)なんですけどね。(かなりご年配の方が客層の中心なので、あまりニーズないかも。)
suica_green3.jpg
(座席の前の説明書き。)
Suicaでの普通列車グリーン車のご利用について

http://www.jreast.co.jp/suica/etc/green/index.html

(では。)

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UFJ vs 住友信託の訴訟の行方

10月17日に日経新聞が、「三菱東京・UFJ統合交渉、住友信託が差し止め提訴へ」という記事を報じました。
UFJグループがUFJ信託銀行の住友信託銀行への売却を白紙撤回したのを受けて、住友信託は三菱東京とUFJの統合交渉の一部差し止めを求める仮処分を申し立て、最高裁は「独占交渉権に法的拘束力はあるが、仮処分を認めなければ住友信託に著しい損害が生じるとは言えない」として仮処分は行わなかったわけですが、一方で最高裁は、「住友信託の損害は事後の賠償によって償える」としているので、「じゃ、その事後の賠償とやらをしてもらいましょうか」ということになるのは当然予想された結果ではあります。
また、やらないと住友信託さんが株主から訴訟を受けかねない。
一方、以前ご紹介した旬刊商事法務9月15日号の手塚裕之・弁護士・ニューヨーク州弁護士が書かれた論文では、米国デラウエア州最高裁の考え方なども紹介した上で、今回の仮処分の検討については、地裁から最高裁まで、基本的に契約法的検討しか行っておらず、「コーポレートガバナンス」の観点が全く欠如しており、そもそもUFJと住友信託の2年もの長期の独占交渉権自体が無効、としています。
別の日経新聞の報道では、UFJグループに東京三菱の優先株出資等の条件のアドバイスをしたのは岩倉正和弁護士という方とのこと。(東京都との銀行への外形標準課税に関する訴訟で、銀行側に立って勝訴を勝ち取った方ですね。)
上述の論文を書いた手塚弁護士は同じ西村ときわ法律事務所の方ですから、ちょっと(UFJ寄りの意見じゃないかと)割り引いて考える必要もあるのかも知れませんが、デラウエア州最高裁のコーポレートガバナンスの観点に立った論理的な判決も参考にすると、やはり、商法で「親(株主)が認めなければ結婚(合併等)できない」と決まっているわけですから、「親の了承を得ずに、子供(取締役)同士で、事実上結婚せざるを得ないような約束をしても無効」というほうが筋が通っているような気もします。
また、損害の額をいくらとするのか、というのも興味深いところ。
確かに「交渉」だけでも、人件費や弁護士費用等で十億円とか三十億円のコストがかかっていてもおかしくないですが、さすがに報道されたような数百億円となると、まだ発生していない損害や間接的な損害を含んでいる金額としか思えませんので、そこまでは認められないんじゃないかしらん?
裁判になれば、UFJグループと住友信託との間で、どういった約束が交わされていたのか、等のより詳細な情報もわかるでしょうし、この「戦い」の行方、引き続き要チェキラかと。
(ではまた。)

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(休み)

本日、休載させていただきます。

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過激な条件のMSCBは商法違反ではないのか?

MSCB(転換価額修正条項付転換社債、Moving Strike Convertible Bond)について、いろいろ見てきましたが、過激な条件のMSCB(例えば、毎日、前日の株価で転換価額が下方にのみ修正され、しかも下限が無いもの)などは、商法違反になることもあるのではないでしょうか?
転換社債(転換社債型新株予約権付社債)を発行する際の公告には、下記のようなことが記載されているのですが、

本新株予約権の発行価額及び本新株予約券の行使に際して払込をなすべき金額の算定の理由
新株予約権は、転換社債型新株予約権付社債に付されたものであり、本社債からの分離譲渡はできず、かつ本新株予約権が行使されると代用払込により本社債は消滅し、本社債と本新株予約権が相互に密接に関連すること、並びに、本社債の利率及び発行価額等のその他の発行条件により得られる経済的な価値と市場環境等を勘案した本新株予約権の価値を考慮し、その発行価額を無償とした。また、本新株予約権付社債が転換社債型新株予約権付社債であることから本新株予約権1個の行使に際して払込をなすべき額は本社債の発行価額と同額とし、当初転換価額は2004年9月21日の東京証券取引所における当社普通株式の普通取引の終値を47.08%上回る額とした。
(10月19日に発行される日立製作所のCBの例。途中2回のみ転換価額を修正。)

公開会社の最近のCBは、額面どおりの価額で発行され利息も付かないことが多いので、すわなち、新株予約権のオプション価値が、その企業が新株予約権の付かない普通社債なら支払うべき利息の代わりに、新株予約権を付与しているというのが経済的実体かと思います。
また、こうした転換社債の発行は、ほとんどすべて、取締役会(または委員会等設置会社において権限を委任された執行役)が決定しているわけですが、

第三百四十一条ノ三
� 第二百八十条ノ二第三項第四項及第二百八十条ノ二十一第一項ノ規定ハ株主以外ノ者ニ対シ特ニ有利ナル条件ノ新株予約権ヲ付シタル新株予約権付社債ヲ発行スル場合ニ之ヲ準用ス

ということで、新株予約権付社債の場合においても、「特に有利なる条件」で第三者に対して新株予約権を発行することになる場合には、商法280条ノ21を準用して、

第二百八十条ノ二十一
 株主以外ノ者ニ対シ特ニ有利ナル条件ヲ以テ新株予約権ヲ発行スルニハ定款ニ之ニ関スル定アルトキト雖モ其ノ新株予約権ニ付テノ前条第二項第一号、第二号及第四号乃至第八号ニ掲グル事項並ニ各新株予約権ノ最低発行価額(無償ニテ発行スル場合ニハ其ノ旨)ニ付第三百四十三条ニ定ムル決議アルコトヲ要ス此ノ場合ニ於テハ取締役ハ株主総会ニ於テ株主以外ノ者ニ対シ特ニ有利ナル条件ヲ以テ新株予約権ヲ発行スルコトヲ必要トスル理由ヲ開示スルコトヲ要ス

株主総会の特別決議(出席株主の3分の2以上の賛成)を必要とすることになってます。
つまり、オプションの内容が「特に有利なる条件」になっているにもかかわらず、株主総会決議を経ないで発行した転換社債は、商法違反であり、「無効」ということにもなりかねないと思われますが、どうなんでしょうか。
(続く)

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プロ野球とレントとガバナンス

私、プロ野球をほとんど見たことがないので、プロ野球に関する知識は、基本的に30年以上前の巨人の星のときのものに毛が生えた程度しかないのですが_| ̄|○、
さすがにこれだけニュースになるといやでも目にとまります。

阪神、中日、巨人、ヤクルト、広島、横浜
ダイエー、西武、近鉄、ロッテ、日本ハム、オリックス

・・・と球団名を見てみると、巨人、ダイエー、西武等、なんでこんなに問題噴出の企業ばっかりなんでしょう?という感じですね。
球団のガバナンス
オリックスの宮内氏はコーポレートガバナンス最先端のイメージがありますが、その他の会社は、なんとなくコーポレートガバナンスの香りがしない会社が多いような。
問題続出なのも、一気に球界のウミを出そうという人たちがいろいろインボーを画策しているという可能性もあるかと思いますが、基本的にはそもそもコーポレートガバナンスがうまくいってないところが問題の根源なのでしょう。
(そもそも、何で100%球団の株式持っているわけでもなさそうな個人を「オーナー」と呼ぶのか、コーポレートガバナンス的観点からは、よう理解できんとです。)
親会社事業構造とレントの発生
よく見てみると、電鉄、メディア等、そもそも事業構造に「経済的レント(地代・準地代)」(または独占・寡占による超過利潤)が発生している企業が多そうですね。レントとは、レントの発生→経営者があまり努力しなくても儲かる→誰も文句言えない→経営者の権力が強大に・・・って感じでしょうか。
鉄道は、「地代」の文字通り、その駅の近所に住んでる人は基本的にその路線しか使えないわけです。近鉄も球団を合併しなきゃいけないほどなのでグループ自体ド赤字で苦しんでいるのかと思いきや、前期は334億円も経常利益が出てますし。
食品なども棚の割当で経済的レントが発生する構造なのでしょうか?
ダイエーは、創業以来、先行者としていい立地を抑えることで「レント」が発生していたのでしょうけど、その「土地を押さえる」というのの延長線で来てしまった戦略が、バブル崩壊後は「逆レント」として働いてしまって今に至る、という感じでしょうか。
ネット時代の「レント」
で、楽天とライブドアですが。
「ネット上のモール」や「ポータル」という業態は、まさにネット時代の「レント」が発生する業態かも知れませんね。(ただし、「No.1」になればの話で。また、当然、今のところキャッシュフローとしても、事業構造としても、楽天の方が安定感があります。)
「レント、あるの?」という意味では楽天は球団を持つ資格ありかも。株式市場のガバナンスの下にもちゃんと収まっている感じもします。
ただし、今後、ECをやっているサイトのトラフィックが、モールからのものよりサーチエンジンからのものの方が増えてくるようになった場合、(ダイエーのように)レントが一瞬にして消失するということにもなりかねませんね。
機構への説明では三木谷社長の方がウケがよかったように見えますが、(経常利益はともかく)、前期(平成15年12月期)の楽天の連結純損失526億円というのが「連結調整勘定の償却額なので大丈夫なのかどうか」というのが機構の方々に理解できるのか(または気づかないのか)どうか、というあたりも興味があるところです。
(ではまた。)

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ネット上の録画サービスの違法性

「サーバー」による「ローカル処理」の代替に対して、noglogさんからコメントいただきました。
(プロフィールを拝見すると「野口 祥吾」さんとありますが、あの野口 祥吾さんですね?おひさしぶりです。)

録画機能付きストレージ貸しサービスですが、実際にやっちゃった人がいますよね。
テレビ局が東京地裁にサービス停止を求める仮処分申請を行ない、申請は認められたようです。ご参考まで。
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2004/10/08/4924.html

ありがとうございます。
ITRCのIHK(インターネット放送協会)分科会のメーリングリストでも、この東京地裁の決定が「録画ネット」のホームページに載っていることが紹介されてました。
http://www.6ga.net/kettei.pdf
おっしゃるとおり、結局、以下の主文のとおり放送の録画禁止との決定ですが、後述のとおり、オンライン上の録画を全否定しているわけでもないところに注目かと思います。

主文
債務者は、債務者が「録画ネット」との名称で運営している放送番組の複製・送信サービスにおいて、別紙放送目録記載の放送に係る音又は映像を、録音又は録画の対象としてはならない。

「第2 事案の概要 2.争点」では、

(1) 本件サービスにおける放送番組の複製の主体は、債務者であると評価できるか。
(2) 本件サービスによる放送番組の複製は、「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いた複製」(著作権法30条1項1号)といえるか。
(3) 保全の必要性

の3つをあげてます。(5ページ)
こうしたサービスの場合、前回の「サーバーによるローカル処理の代替」でも申し上げたとおり、著作権法30条1項についての判断が問題になるわけですが、当然、放送事業者側は「録画ネットの事業者が公衆の使用に供することを目的としてやってるんだ」と主張し、録画ネット側は「いや、録画してるのは、利用者自身だ」という主張が交わされたようです。
また、放送事業者側が本件を違法とする根拠として、クラブ・キャッツアイ事件最高裁判決(最判昭和63年3月15日民集42巻3号199頁)、ファイルローグ事件判決(東京地判平成14年4月11日)等が引用されてますが、それに対して、録画ネット側は、「クラブ・キャッツアイ事件最高裁判決はあくまで事例判例であり、カラオケスナックにおいて客に歌唱の機会を提供することが、演奏権侵害に当たると判断されたにすぎない」「また、ファイルローグ事件は、利用者の行為が著作権侵害に当」たるので、これとも違う、と主張しています。
裁判所の判断ですが、争点1の複製の主体については、著作権法30条1項が「私的使用のための複製を、複製権侵害の例外として適法として」おり、「それが第三者により業としてなされる場合であっても、適法行為の『幇助』にすぎない。例えば、ビデオデッキや本件のようなテレビパソコンを製造、販売する行為を違法と解することはできないし、さらに、それらの機器を使用した複製ができるよう、機器の設定や接続等を行うことも、それ自体は適法というべきである。」とした上で、「他方、私的複製と認められるためには、使用者自身が複製行為を行うことが要件であるから、第三者が複製を行う場合は、例え使用者に依頼され、その手足として複製を行う場合であっても、そのものが家族、友人など『個人的又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内』の者である場合を除き、私的複製とは認められないことになる。」としています。
そして、このサービスでは利用者がテレビパソコンをそれぞれ購入することによって運営されているのですが、裁判所は、「イ 債務者の管理・支配性」において、「本件サイトを経由してのみ録画予約が可能になって」いることなどを理由として、債務者の管理・支配性が強いものであり、利用者による私的複製と評価することはできない、という決定としました。
ただ、この裁判官の方は、ネット上の録画を全面否定するのではなくて、やや含みを持たせてまして、

なお、債務者が主張するように、パソコンの性能の向上、インターネットやネットワーク技術の発達により、私的複製の領域が拡大していることは否定できない。その結果、著作物の使用者による私的複製が、第三者の管理・支配下にない状態で、しかも本件サービスの利用者のそれと同じような簡便さで可能となることは、十分考えられる。

というようなこともおっしゃってます。
ソニーのコクーンは違法か?
実際、先日話題にさせていただいたソニーのCoCoonで利用できる「カモン!マイキャスター」というサービスがあります。私も使ってますが、利用者はインターネットからソニーのサーバーに録画予約を行い、利用者の自宅のCoCoonがネットを通じて定期的にこのソニーのサーバーに予約情報を参照しに行きCoCoonが録画してくれるんです。
このサービスって、録画する機械がローカルにあるかリモートにあるかの違いだけで、この「録画ネット」とやってることの差は事実上ほとんどないですよね?
今回の東京地裁の決定のロジックでいくと、この「カモン!マイキャスター」は、録画に用いる機械がソニーのサーバーを参照しにいくのであって、ソニーのサーバーが機械に録画の指示を与えるものではないし、利用者は機械に直接予約情報を入力することもできる。よって、ソニーの管理・支配は少ないと言えるため、カモン!マイキャスターによる録画は、利用者による私的複製と評価することができる(つまり、ソニーは違法なことをやっていない。)」という判断になるのでしょうか?それとも「ソニーのサーバーの指示」による録画は違法だ、ということになるのでしょうか?
そもそもCoCoon自体も、私は個別の番組を具体的に指示して録画することはほとんど無くて、CoCoonのキーワード(例えば「バラエティ」とか「ニュース」とか)で引っかかって録画されたものから「ビデオオンデマンド」的に利用しているわけです。
これって、録画はほとんど全自動でソニー(のプログラム)がやってくれてることなわけですから、「ソニーの管理・支配性が強いものであり利用者による私的複製と評価することはできない。(ソニーは違法)」ということにならないんでしょうか。今度のVAIOのように、全チャンネル1週間分録画した「テラバイト」単位の番組の中からオンデマンド的に視聴するというようなことになると、「私的複製」というような控えめなイメージからはかけはなれてきますし、録画代行サービスとどこが違うの?ということにもなります。少なくとも、テレビ局の経営に与えるインパクトは、数百人しか利用者がいない「録画ネット」の比でないことは明らか。
下記のように、「録画の予約を行うサイト」と「サーバーレンタル(テレビアンテナ付)」がアンバンドル(分離)されていて、ハードディスクビデオなりパソコンなりを、自宅でなくリモートにおいているだけという形で、「カモン!マイキャスター」と同じことをやったらどうなるのか、ということも考えてみたのですが、これだと、「カモン!マイキャスター」に近づいて違法性が薄まるどころか、かえって「第三者に録画してもらってる」という感じが強くなっちゃいます。
rokuga_x2.jpg
明らかに、ローカルかリモートかというのは利用者から見て本質的な差ではないので、何か「機械がリモートにおいてあっても第三者が支配していない」と明確に言えるアイデアがあるとおもしろいのですが。
(ご参考まで。)

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「サーバー」による「ローカル処理」の代替

磯崎@比叡山、です。
「ハードディスクビデオと電通の未来」に対して、赤羽さんからコメントいただきました。

この記事を読んで、僕がNAで実現しようとした「いつでもTV」というビジネスを思い出しました。
「いつでもTV」はひとことで言うと「録画機能付きストレージ貸しサービス」。優れたTV番組(地上波TV・衛星放送、CATV)を、インターネットを使って、世界中から、いつでも、手軽に見られる環境を実現しようというもの。ハードディスクビデオとの大きな違いは、
・インターネット接続環境さえあればどこでも見れる
・見たいけど、自分の地域は放送されない人(地方、海外の人)も見れる
・見たいと思ったら終わってた(見逃した)番組も見れる
です。
過去番組は、過去番組流通用のP2Pプラットフォームを組む予定でした。
最終的には、著作権法のある条項をクリアできずにプロジェクトは停止してしまいました。
著作権法何条だったか忘れましたが、個人で楽しむための個人による録画は許されているので「ハードディスクビデオ」は合法なんですが、「録画機能付きストレージ貸しサービス」はなんと違法になってしまうのですよ、残念ですが。。

著作権法第30条、でしょうか。

(私的使用のための複製)第30条
著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
1.公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合
2.技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第120条の2第1号及び第2号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合
(以下略)

特許
そのアイデアは、著作権だけでなく特許権的にもナニかも知れませんね。

公開番号 : 特許公開2002−305703(出願日:2001年4月5日)
発明の名称 : 放送番組配信装置、放送番組配信方法、そのためのプログラム及び記録媒体

image002.jpg

上記の特許は、あくまで「ユーザーが」ディスクを借りて自分で録画の指示を出す、というものだと思います。が、それでも著作権法に触れちゃうのかしらん?上述の「公衆の使用に供することを目的」とした複製装置には必ずしも該当しない気もするのですが・・・。
競争の構造
昔、プッシュホンが始まったときに、電卓のサービスってのがありました。プッシュホンでボタンを押すことで、かなり複雑な計算もできる電卓機能を(なんとセンター側の大型コンピュータで)やってくれる、という(今思えばゼイタクな)もの。
その後、電卓が超低価格化していくことで、当然、そんなサービスを使う人は誰もいなくなるわけです。
それから、Oracleの「NC」とか「thin client」ってな構想もありましたね。
ということで、ローカルでも似たことができることを集中的に行うビジネスモデルは、要注意かと思います。
「オークション」とか「検索エンジン」とか「コミュニティ」とか、何か「集積のメリット」や「ネットワーク外部性」が働くような構造を作らないと、ね。
「いつでもTV」も、たとえ著作権法をクリアできたとしても、
・ハードディスクは今後も死ぬほど安くなっていきますので、地方のTVは見られないにしても、ハードディスクビデオでほぼ同じ機能は達成できる、
・P2Pでタダで番組を(違法に)ゲットするのとも競合、
・同様のサービスが出てきたときに、(特許権等以外で)参入障壁を構築したり、差別化するのが難しそう、
・・・ということで、ビジネスモデルとしては、かなり問題アリアリだったんじゃないかと思います。
やんなくてよかったですね。:-)
(ではでは。)

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「知識」による「知恵」の代替

磯崎@こんぴらさん、です。
中妻穣太さんからトラックバックいただきました。ありがとうございます。

私もしばらくGoogle Newsをトップページにしてましたがもうやめました。Yahoo!のトップページに出ているニュースタイトルラインナップのほうが「おもしろい」のです。人間の手によって、ニュースがおもしろく切られているわけです。「4人殺害 かばい合う?容疑者」とか「くりぃむしちゅーでセカジュー」とか、大して興味もないのに「なんだそりゃ?」とクリックしてしまうように、(たぶん*2)人間がうまくコピーを作ってるんですね。夕刊紙の見出し作りに近いかも。

そうそう、Yahoo!のトピックスの方が「おもしろい」んですよね。・・・と私も思うのですが、「おもしろいかどうか」と、ビジネスとして「おいしいかどうか」は、また別のお話。
つまり、結構ユーモアのセンスのあるプータローのA君(24歳)が、Googleニュースや各社のニュースサイトを見たおして、Yahoo!トピックスのような「おもしろい」見出しを付けまくる、というサイトがあったら、(Yahoo!のトップページ並みのトラフィックを獲得することは無いにしても)、どうでしょうか、ということです。(すでに、あまたのblogサイト自体が、そうした生情報ソースを「おもしろさ」というフィルターで漉す機能を果たしてきてますが。)
私も実際、(朝日新聞を購読しているのは「ののちゃん」を読むだけのため、、、とは申しませんが)、Yahoo!をホームページに設定してるのはYahoo!トピックスのためだけ、とは、かなり言える状態になりつつあります。
先日、SWさんとお会いしたときに、
「米国の法律相談サイト(?)で人気No.1になった回答者が、実は小学生だった、ということが発覚して、大きな話題になったことがある」(サイト名聞き忘れました。)
という例を紹介してもらって、「はー」と思ったのですが。
もちろん、法律相談サイトで人気No.1になったからといって、小学生が法廷で弁護できるわけではないのですが、それにしても、法律知識を操るという(いかにも高度そうな)能力が「たかだかその程度のこと」かも知れないというのは、「専門的能力」で食ってる人には、かなり衝撃的な事実かと思います。
つまり「検索エンジンだけ」で人間を代替するのは、まだまだ相当時間がかかりそうですが、「検索エンジンに小学生の脳みそを足すだけ」で弁護士風に振舞える、ということです。
ソフトバンクが通信事業に参入しても、NTTが「なくなる」わけではない、ただ事業としての「おいしさ」はかなり減少した、というのと同じで、強力な代替サービスの出現が、じりじりと既存サービスの体力を奪っていくということは十分あり得ると思います。
(本日は、これにて。)

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