「なぜ世界は不況に陥ったのか」

話題の「イケ・イケ本」のご紹介です。
 

なぜ世界は不況に陥ったのか 集中講義・金融危機と経済学
池尾 和人 池田 信夫
日経BP社
売り上げランキング: 87
おすすめ度の平均: 4.0

2 長い目で見なくても・・・・
5 現在の世界不況を経済学で読み解いている。
5 論理と現実の好ましいブレンド
4 経済学の視点から冷静な分析
5 歴史を振り返り、包括的に解説している

 
日経BPさん(池田さん)から、送っていただきました。どうもありがとうございます。
しかし、来週池尾先生にお会いする予定もあったりして、待ちきれずにもう自腹で1冊購入させていただいておりました。

この本、現在の金融危機の発生メカニズムの全体像を把握するには、非常にまとまっていて、いい本だと思います。

続きを読む

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

こんぷらくんのインサイダー取引規制「ディープ編」を希望します

日本公認会計士協会は、日本で最も組織的に教育を行っているプロフェッショナル団体の一つではないかと思います。(会計士は毎年年間40単位以上とらないといけません。)
その会計士協会のCPE(Continuing Professional Education)で、東京証券取引所自主規制法人制作の「こんぷらくんのインサイダー取引規制」(入門編・応用編)が無料で利用できるという案内が来たので、(今年度のCPEの単位がちょうどあと1単位足りないところだったこともあり)、やってみました。
 
konpurakun.gif
 
(一般の企業等の研修でも、1人あたり数百円で使えるそうです。下記URL参照。
http://www.tse.or.jp/sr/comlec/e-learning.html
 

続きを読む

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

「わが国に経営判断原則は存在していたのか」

旬刊商事法務2/25日号の巻頭に載っていた東北大学の森田果(はつる)准教授による論文。

会社の役員等が経営判断を行う際には、広い裁量が認められるべきであり、仮にその判断が会社に損害をもたらす結果を事後的に生ぜしめたとしても、行為時点の状況に照らして不合理な意思決定を行ったのではない限り、当該役員等の善管注意義務違反・忠実義務違反の責任を問うべきではない、という考え方

である、「経営判断原則」について、「法ルールの形成主体である裁判所や当事者の行動メカニズムに着目」して検討されている論文です。
いいですねー、この「わが国に経営判断原則は存在していたのか」という問題意識。
「経営判断原則」について考えるということは、上場企業の役員が自分の身を守るために勉強するという意味だけではないと思います。
現在巷にあふれている「市場原理主義」論争は、市場メカニズムを否定する側も肯定する側も、問題を財政支出がどうのケインズ政策がどうのというマクロ経済学的なものとして語ることが多いし、ミクロの話になっても、「今回の金融危機は、エージェンシー問題に根ざしている」といったおおざっぱな話で終わってしまっていて、どういったプリンシパル=エージェント関係が望ましいのか?という具体的な提案までいっていないと思います。
コーポレートガバナンス、監査や内部統制といった「事前の」規制の話に比べて、「悪い」エージェントかどうかを「事後的に」(司法が)判断する基準については、市場を機能させるためのプリンシパル=エージェント関係の観点からは語られていないことが多いと思いますので、これを掘り下げることは、非常に意義があることではないかと考える次第です。

続きを読む

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

社会は「計算」できるか?

「タメグチ」的ガバナンスの歴史に、長谷川敦士さんからトラックバックいただきました。(ごぶさたしてます。)

磯崎さんによる、ヨーロッパ的なガバナンスのしくみが「なぜ」生まれていったかについての、情報処理コスト力学の観点から分析。 (中略)
磯崎さんはそうは言っていませんが、情報処理コストの概念をいれている時点で、力学系として解釈した考え方だと思った。

さすが、物理学の人。するどいですね。実は、そのへんに発想(妄想)のヒントがありまして。

続きを読む

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

「思考のコスト」と市場

(この話ばっかりで恐縮ですが)、「タメグチ」的ガバナンスの歴史に、石橋秀仁さんからコメントをいただきました。
 

読み応えのあるエントリでした。内容から察するに、トマス・W. マローン『フューチャー・オブ・ワーク』

フューチャー・オブ・ワーク (Harvard business school press)
トマス・W. マローン
ランダムハウス講談社
売り上げランキング: 113959
おすすめ度の平均: 4.0

4 モチベーションと創造性を高める分散型マネジメント
4 分散化されている組織をまとめるのはビジョン
4 情報伝達コストの低下がもたらす世界
4 新時代の組織論
4 「調整と育成」のマネジメント

は読まれてますよね。

続きを読む

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

「歴史のif」は許されるのではないか?

元日経新聞の編集委員の牧野洋さんからメールいただきました。
牧野さんと言えば、当ブログの一昨年の売上No1になった

不思議の国のM&A—世界の常識 日本の非常識

も書かれた方ですが、「ワーク・ライフ・バランス」を掲げて一昨年 日経新聞を退職し、昨年からは南カリフォルニアに家族と住んで、「大手町からカリフォルニア」というブログ
http://worklifebalance.justblog.jp/blog/
を立ち上げられたところです。
(追記2010/4/8:ジャストシステムのブログが終了したことにより、リンク切れ。新しいURLは、
http://worklifebalance.typepad.jp/blog/)

このブログ、現時点でネットで検索しても結果ほぼゼロなので、まだ一般にはあまり知られてないと思いますが、これから充実されていくとのことなので、要注目かと思います。

さて、一点、牧野さんに教えていただいたのですが、
牧野さんが昨年翻訳された、アメリカのシンクタンクランド研究所について書かれた本「ランド」
 

ランド 世界を支配した研究所
 

に次のような一文が出てくるそうで、
 

Over the past few years, a growingly serious branch of American history sometimes called allohistory or counterfactual history has devoted itself to what might be called the ‘what if.’ What if the Confederacy had defeated the Union in the Civil War? What if Archduke Ferdinand had not been assassinated and World War I never happened? What if Hitler had invaded England? What if Al Gore had won Florida in 2000? It is a wonderful kind of speculation, meant to explore the essential capriciousness of fate, to examine the rationale for people’s actions and the way certain forces are considered by historians to be immutable.

アメリカの歴史学会の中に「アローヒストリー」と呼ばれる学派がある。「反事実的歴史」とも言える学派で、その活動はますます本格的なものになっている。ここ数年、この学派が集中的に取り組んでいる問題は「歴史に『もし』が許されたら」である。つまり、もし南北戦争で南部連合国が北部諸州に勝利していたら? もしオーストリア・ハンガリー帝国のフェルディナント皇太子が暗殺されずに、第一次世界大戦が起こらなかったら? もしナチスドイツのヒトラーがイギリスの侵略に成功していたら? もし二〇〇〇年の大統領選中にアル・ゴアがフロリダ州で勝っていたら? 
これらは頭の体操である。運命が本質的に気まぐれであることを探究したり、歴史上の人物の行動の背後にある合理性を考察したり、なぜ一定の歴史的な流れは変えようがないと歴史家が考えるのかを調査したりするには、このような方法が欠かせない。

 

先日私が書いた「タメグチ的ガバナンスの歴史」は、この 「allohistory」(counterfactual history)と共通する部分があるように思います、 とのことです。

「歴史のifに意味が無い」というのは、「歴史は『カオス』的であって、ほんのわずかな条件の差でその後が大きく変わってしまうから、あまり『what-if』を考えてもしょうがない」、または、「もう起こっちゃったことは変えられないんだから、考えても意味がない」といったことかと思いますが、

確かに、「来年がどうなるかを予測したい」といった目的に使えるかどうかはともかく、例えば、その歴史上のできごとが単なる「偶然」なのか、それともそのイベントがなくてもいつかは必ず同様のことが発生する「必然」なのかを考えることは、特に、「自由」「市場」「民主主義」といった、現代の世界を支える根幹のしくみの意味を多角的に考えてみるのには、絶対必要ではないかと考える次第であります。

SF小説やマンガなどでは、「もし、あのとき」というのは、よく使われる手法じゃないかと思いますが、学問としてそういう手法が存在するのは存じませんでした。どうもありがとうございます。>牧野さん

また、元シンクタンク研究員であるにも関わらず、不勉強にも上記の「ランド」もまだ読んでませんでしたので、早速買って読ませていただきます。

(ではまた。)

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

「タメグチ」的ガバナンスの歴史(補足メモ)

昨日の、「タメグチ」的ガバナンスの歴史には、多数のブックマーク、コメント、トラックバックありがとうございました。
ブックマークでも おほめのコメントをたくさんいただきましたが(ありがとうございます)、特に、小飼弾さんにこんなに気に入っていただけるとは!

さて、昨日の話は、一言で言うと「意思決定のコストがガバナンスの形を決める」という仮説ですが、大陸スケール、数百年スケールのざっくりした話の場合ともかく、歴史の具体的事象と突合するには、もちろん「人口密度」でコストを考えるのは話がおおざっぱすぎますので、ちょっと補足のメモです。

続きを読む

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

47thさん復活!

いつの間にか(というか先週末13日から)、”伝説の” 47thさんのブログが復活してるのを発見!
http://d.hatena.ne.jp/ny47th/
こりゃー楽しみです。
(取り急ぎ。)

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。