ライブドアの価値(「弥生」編 第1回)

昨日は、平松庚三氏のライブドア社長就任を記念して、弥生の最新版
yayoi.jpg
を購入してきました。
定価42,000円のところ、近所の量販店で29,800円。
青色申告シーズンだから安くなってるのか、それともライブドア・ショックで値引き販売してるのかしらん?
昨年から買わないといけないと思ってたんですけど、もしかしたら今月まで待って得したかも。
ライブドアの将来を握る?弥生
さて、弥生は会計ソフトの中でも価格も安くて直感的に使いやすいと昔から評判いいですが、ライブドアの関連会社の中でも圧倒的にキャッシュフローがストロングな感じがしますし、平松社長もライブドア社長に就任したということで、今後のライブドアの行く末を考える上ではキーになる会社であることは間違いありません。
一方で、弥生自体はずっと未公開の会社だったので、財務内容についてはイマイチよくわかりませんし、そもそも、昔の「ミルキーウェイ」時代から、米intuitの子会社になったり、アドバンテッジパートナーズさんとMBOしたり、と、経緯も複雑。
また、今回のライブドアとの取引でも、
2004年11月15日:「種類株式」にてライブドアに30億円第三者割当。
2004年11月22日:発行済普通株式と新株予約権を対価100億円でライブドアが譲り受け。
2004年12月16日:株式交換によりライブドアが残りの株式を取得。
と、複雑なスキームになっていて、直感的には理解出来にくくなっています。
(もちろん、相手はライブドア支配下のファンドなんかじゃなくて、アドバンテッジパートナーズさんというプロの第三者との取引ですので、おそらく、経済合理性のある理由があるものと想像されます。)
というわけで、例によって開示資料からこのへんのスキームや財務内容を解きほぐしていきたいと考えます。
資本の推移(推定)
弥生に関するライブドアのプレスリリースは、
平成16年11月9日「弥生株式会社の株式等取得に関するお知らせ」
http://corp.livedoor.com/investor/pdf/000000/000000ec.pdf
平成16年11月25日「株式交換による弥生株式会社の完全子会社化に関するお知らせ」
http://finance.livedoor.com/img/ir/4753/news/041125.pdf
などがあります。
これらに書かれている2004年7月31日現在の大株主は、
yayoi_ookabunushi.jpg
といった感じになっていますが、その他、記述されている第三者割当や新株予約権の移動を表にすると、下記のような感じになるかと思います。
image002(s).gif
(クリックで拡大)
ここから、実際にどの程度、弥生のexitによって、関係者のみなさんがキャッシュインしたのか、というのを推測してみたいわけですが、(ライブドアの種類株式による第三者割当は既存株主のキャッシュインには関係ないので)、まずは、11月中旬の株式と新株予約権の譲渡によるキャッシュインを考えてみたいと思います。
11月9日のプレスリリースによると、

2. 株式等取得の内容
弥生株主から、弥生の発行済議決権付普通株式298,517 株及び新株予約権11,457 個を
譲り受けます。
3. 株式等譲渡元の情報(譲渡潜在株式を含む譲渡株式等数上位5 名)
yayoi_joto.jpg
4. 株式等取得の対価
当社は本件株式等譲渡の対価として、弥生株主に対して金10,000,000,000 円を支払います。

と、書いてありますが、個別の株式1株と新株予約権1個の値段が書いてありません。
単価はいくら?
ここで、株式の価格をP(s)円/株、新株予約権の価格をP(o)円/個とすると、
298,517株×P(s)円 +[11,457個×P(o)円]=100億円
ですから、新株予約権1個の価格P(o)は、
P(o)=(100億円−(298,517株×P(s)円))/11,457個
という式で表せます。
ここで、いくつか仮定を置かないと、単価はわからないんですが。
(仮定1)株価も新株予約権の価格も、おそらく整数(自然数)だろう
譲渡契約書の文面を念力で透視してみると、おそらく各自の合計金額だけではなく「1株あたり○○円」等と単価が書かれているかと思われます。単価は必ずしも端数があってはいけないというわけではないと思いますが、端数の処理が人によって違ってくるのが気持ち悪いですし、1株当たりの価格も数万円で、整数部だけでも有効数字5桁ですから、価格は自然数になっていたと考えるのが素直ではないかと。
(仮定2)新株予約権1個を行使して得られる普通株式は1株、だろう
普通、そんな感じが多いかと思いますので。
新株予約権の種類も1種類のみと仮定。
(仮定3)株価の方が新株予約権の価格より高い、だろう
行使価格がゼロ円に近い新株予約権なら、タイムバリューが付くと新株予約権の価格の方が株価より高くなる可能性も無くはないですが、歴史のある会社でもあり、それなりに1株あたりの純資産価格はあったと考えられますので、税務上の時価がゼロに近かったということもなさそうで、素直に税制適格ストックオプションにしているとすると、行使価格は、それなりのプラスの値のはず。
スキーム上、ライブドアは、当然、この新株予約権を行使または消却することを考えていたと思われますので、行使価格を上回るタイムバリューが付いているとも思えません。
と考えると、新株予約権の価格は、株式数と新株予約権数を合計したもので単純平均した価格約32,260円より安いはず。
image005.gif
・・・といった仮定から考えると、実は、前述の数式を満たす株価と新株予約権の価格の自然数の組み合わせは一つしか無くて、株価が32,636円/株、新株予約権が22,484円/個となります。
image001.gif
(ストックオプション発行時より株価が約3倍でexitというのは、リアリティがあるかと思います。)
おそらく、新株予約権の行使価格は1万円くらいに設定されていて、合計がぴったり100億円になるように、タイムバリューを1個あたり152円くらいと見たのかも知れません。または、単に行使価格が10,152円でタイムバリュー・ゼロとしたのかも知れませんが。(でも、そううまくは、数字は合わないはず。)
行使価格等、新株予約権の内容については、登記簿を見れば載っているはずですので、お時間のある方はチェックしてみられては。
結局、いくらだったのか?
結果として、下記の表のように、各株主に現金およびライブドア株式がわたったのではないかと推定されますが、

image003(s).gif

(クリックで拡大)
現金と株がちょうどそれぞれ100億円づつ、というディールだった、ということのようですね。
アドバンテッジパートナーズさんはともかく、平松社長は意外に少額ですね。(10億円の単位かと想像してましたが・・・。)
特に、ライブドア株式については、各株主にいつまでロックアップをかける条件になっていたか、が注目されます。とっくに売っぱらっていたならセーフですが、現在までずっと保有させられる条件になっていたとしたら、ライブドア株下落で目も当てられません。
平松氏がライブドア社長に就任するという話を聞いて、「ライブドア株でもらって、ロックアップが解けていない部分があまりに多すぎて(たとえば数十億円分とか)、これ以上のライブドア株の価値低減を防ぐために自ら社長になって立て直しを図ろうとした」のかなあ、とも想像したのですが、株でもらった金額が上述の程度なのであれば、(そこだけ見れば)、とっととライブドアを辞めて、他に就職したほうがよかったかも知れません。なぜ、わざわざ火中の栗を拾いにいったのでしょうか?
(その辺のナゾも含めて、次回に続く。)

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本日のDoCoMo関係

モバイルSUICAにしたのはいいけど、自宅でFOMAの電波が入らないという悲しい事実を目の当たりにして、本日はDoCoMoショップで「デュアルネットワークサービス」を申し込んできました。
月額315円払うと、従来使っていたmova(800MHz帯)の携帯電話(旧)にも切り替えて使える、というもの。局番なしの「1540」にかけて、暗証番号を押すだけなので切り替えは想像よりもカンタン。
量販店で、「山間部によく行かれる方は、申し込まれた方がいいかも知れませんよ」と説明を受けたサービスなんですが、(結構、都会に住んでるつもりだったんですけど)、まさかこんなもんを使うことになるとは・・・。
(もちろん、movaの方は、我が家でも「バリIII」で電波が来ています。)
DoCoMoショップでとなりに座ってた方も、「FOMAに変えたらつながらない」とクレームをつけてらっしゃったようなので、エリアマップ
kanto_f_tokyomapimg[1].gif
で見ると、東京近郊はすべて網羅してるかのようですが、実際には「なんじゃこりゃ」と思ってる人はまだ多いのかも知れません。
もしこのままの状態が続くようなら、番号ポータビリティがはじまったら、とっとと由紀恵さんの仲間になることにいたします。
(ではまた。)
[追記:翌0:09]
今、教えてもらったのですが、FOMAをはじめとして携帯電話の電波の人口カバー率って、
「各市町村の役所・役場がエリアに入れば、その市町村の人口分はカバーしたということになっている」
というのは、ほんとでしょうか?
ホントだとしたら、かなり反則ですね。説明無しに開示資料にカバー率が書いてあるんだとしたら、ライブドアの粉飾決算疑惑よりも「風説の流布」とか「偽計取引」に該当するんじゃないかと思うほどですが・・・。
(ではまた。)

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モバイルSUICAを早速使ってみた

先週土曜日(28日)から始まったモバイルSUICA。
MovileSuica.jpg

携帯も902iに変えて、
p902i.jpg
さっそく使ってみました。
ICカード同士の干渉
2年半くらい携帯を変えてなくて、そろそろあちこち壊れてきたとか、物欲にかられた、ということもありますが、考えたことの一つに「ICカードの干渉」ということがあります。
最近では、ビルの入退室も非接触型のICカードが増えて、そういうカードとかSUICAとかを定期入れに入れてゲートを通ろうとすると、うまく読めなくて毎回「ピピピッ」と引っかかって腹立たしい思いをしてる方も多いかと。
SUICAとかEdyとかのFelica系は、携帯電話の中にしまってしまえば、干渉しなくなるはず。
設定の複雑さは?
機種変更に小一時間かかるので、その間にJRのホームページで「仮登録」を実行。(膨大な登録項目を、全部 携帯から打ち込むのは、コギャルならともかく、おじさんにはつらい。)機種変更後、早速SUICAのアプリをダウンロードして、SUICAが使えるようにしてみました。
しかしなんと、モバイルSUICAが使えるようになるまで、3つもiアプリをダウンロードしなければならないのであります。(携帯なので、アプリケーションのサイズが限定されるからか?一つのアプリから他のアプリを呼ぶ、とかできないんでしたっけ?)
これは、すくなくともうちの親(70歳代)には、複雑すぎて使えないことは間違いなし。
ビックカメラのポイントカードもFelica対応に
ビックカメラで購入したのですが、ビックのポイントカードも携帯の中に収まりました。
こちらは、携帯の設定自体はかんたん。ただ、既存のカードからポイントを移すのに、書類をたくさん書かないといけなくて、そこは面倒くさい。
Edyってどうよ?
今まで、Edyって、記念品でもらったりはするけど、持ち歩くのも面倒だったわけですが、こうして携帯で1本化できれば、使う機会も増えるかも知れませんね。
改札を通過
さて、いよいよ改札を通過。
パスワードや携帯のメールアドレスなど、ログインにたくさん文字を打ち込まないといけないので、改札を通る手前で毎回パスワードを入れたりしないといけないとしたら悲劇だと思ったのですが・・・そんなことはなかったのでご安心を。ただ、改札にかざすだけで通れます。
グリーン券の購入は?
最近は、グリーン券もSUICAに入るようになって、ホームで駅員さんが販売せずに、券売機に行列して買わないといけなくなったので、それがオンラインで買えるところも魅力だと思ったのですが・・・・グリーン券購入のメニューを開くと、「乗車駅(を入れろ)」と出てきます。券売機と違ってSUICA氏は今自分がどこにいるかはわからないわけですね。
しかも、(考えてみれば当然ですが)、湘南新宿ラインなど、車両がSUICA対応している路線の駅名しか出てきません。
電源が切れていても使えるのか?
電車の中でいろいろ新機種をいじくっていたら、途中で電池が切れて、「もしかして、電池が切れてると改札を出られない?!」という不吉な予感。しかし、携帯の電源が入って無くても、無事改札は通れました。(ほっ。)
今までのカードのSUICAと同様、ゲート側からの電波のエネルギーだけでチップが駆動する、ということですね。
−−−
で、家に到着して気づいたこと。
我が家は、FOMAだとアンテナが圏外と1・2本の間をふらふらしていて、電波が入らないんだった・・・。_| ̄|○
(おしまい)

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トラフィック急増、ご愛読多謝

某新聞社さんの取材用の談話室みたいなところで取材を受けていたら、隣の席が急に騒がしくなって、「オヤジがね・・・」とかいう声が聞こえて来たのでふと見ると、山本譲二(氏)だった。「新曲のサビはね、♪〜」とかワンフレーズ歌ったりしてサービス満点で取材を受けてらっしゃいました。
芸能界でもかなり「大御所」の領域に達してらっしゃると思いますが、個別の新聞社さんにもセールスプロモーションに行かれるんですね。ご苦労様です。
−−−
さて、今回の「ホリエモン・ショック」で、おかげさまで、昨年の3月に匹敵する数の方々に見に来ていただいております。ありがとうございます。とは言え、ピークで1日5万ページビュー(PV)弱くらいですので、1日20万PVといわれる「真鍋かをりブログ」には遠く及びませんが。(笑)
ただ、私のような一般人には、20万PVというのは遠い世界かと思ってたのですが、先日、同じく通常は数万PV/日のブログを書かれている某氏からひさびさにお電話いただきまして、「テレビに出演したときに、『ブログを書いてまして』『私のブログにもありますが』とか、3回くらい『ブログ』と唱えると、トラフィックが20万PVくらいに跳ね上がるよ。」と教えていただきました。
なるほど〜。(今度機会があったらやってみよう。)
読者層ですが、前回、昨年春のときには、同じPVでもかなりコメント欄が荒れたんですが、今回は、おかげさまで、ネガティブな書き込みは基本的にゼロ。日本では「検察の捜査が入った=悪人」という観念になりがちということもあり、良くも悪くも「ホリエモンがいいか悪いか」というような議論にならなかった、という事件の性質もあるのかと思いますが。
というわけで、ピーク時には瞬間風速で世界7031位(Alexaベース)のトラフィック・ランクにまで到達しましたので、登頂記念にここにグラフを貼らせていただきます。
(7031)20060121alexa.png
こうなると、恐ろしいことに、日本で年間数億円の広告収入がある商業ネットサイトのトラフィックにも近づいてくるわけで、「オレにも1億円くらい貰えんもんだろうか」という考えも頭をよぎるわけですが、ただご案内の通りAdSenseなどいわゆる「(ロング)テール型」の広告だけだと、せいぜい数十万円程度の収入にしかならないはず。日本第4位(世界で20位台)のトラフィックを持つライブドアですら、広告収入は数億円程度だったそうですので、やっぱり、トラフィックも大事だけど、それをどう収益に結びつけるかという「ビジネスモデル」のほうがもっと大事なんでしょうね。
ではまた。

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ライブドアの価値(オプションバリュー等の観点から)

前回のエントリでは、ライブドアの純資産価値的または清算価値的な観点からの価値を考えてみましたが、ライブドアの大きな特性の一つとして、「株式の一単元が非常に小さく、1株百数十円から売買できる」ということがあるかと思います。
もちろん、1株だけだと証券会社に支払う手数料の方が高くなっちゃうでしょうし、99年の証券自由化前の対面の証券会社だったら(もしかしたら今でも)迷惑がられて非常にイヤーな顔をされたかも知れませんが、オンライン証券会社で気兼ねなく百円だけの買い物ができるようになったのも、ここ5年で日本の証券市場が大きく変わったところではないかと思います。
さて、ライブドアのような知名度が高い会社が事件に巻き込まれているときに1単元が小さいと、前回書いたような会社全体のファンダメンタルな観点から見た「マクロなストラクチャー」と違って、「マイクロストラクチャー」的な効果がいろいろ強く出てきます。ニュートン力学では、ボールがまっすぐ転がるのが当たり前と思っていたものが、ミクロな世界に入ると量子力学的に位置や速度がボヤけた世界になるのと同じでしょうか。(ちゃうちゃう。)
「需給」という観点から理解すると、「100円でなら記念に買ってみたい」というような人が買い注文を出すことで、(売買高はともかく)値は付く可能性が非常に高まります。
「オプションバリュー」という観点からも、(上場廃止寸前のボロ株などによく見られる現象ですが)、「価格変動をする可能性(ボラティリティ、σ)」によるバリューが、会社の純資産といった「イントリンジックな([intrinsic]、本源的な、実体のある)」価値より高まってくるわけですね。
image001.gif
100円近辺で1日に10円も株価が動けば、すごいボラティリティで儲けのチャンスもあるわけですので、これにオプションバリューを認めるというのも、非常に経済合理的な話ではあります。
前回のエントリではどちらかというと悲観的な観点から純資産または清算価値[上図の青い線]の観点から考えてみましたが、粉飾決算の疑いがあるということは、需給による価格の不確実性のみならず、開示された純資産の(イントリンジックな)額についても不確実性が発生するわけで、(市場として全く望ましい姿ではないですが)、経済学的にはオプションバリュー計算式的な観点からの「実態」が出てしまうことになります。(上図の紫色の線でバリューが示されるイメージ。)
「株主総会出席権(券)」として
ライブドアの株主は、今、約20万人いるそうですが、「記念に一株くらい残しておこうか」とか、「株主総会で役員を糾弾してやる」とか、「応援したい」とか、「ホリエモンが挨拶に来るかも」とか、今まで株主でなかった人が「紛糾する株主総会を見てみたい」ということで、1株くらい買っておこうか、というニーズは結構ありそうです。
株主が、あと10万人増えて30万人になって、うち3万人株主総会に来るとすると、もうホテルの宴会場とかで入るところは無いはずなので、東京ドームくらいでしか株主総会が開催できなくなると思いますが。(笑)
ライブドアさん、昨年の中頃までは、登記上の本店が新宿区歌舞伎町になってたんですが、今見たら六本木ヒルズに移ってました。
現行商法ですと、招集地に関する規定が、

第二百三十三条  総会ハ定款ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外本店ノ所在地又ハ之ニ隣接スル地ニ之ヲ招集スルコトヲ要ス

となってまして、(定款に定めてない限り)、港区本店だと文京区の東京ドームは使えないはず。新宿区なら文京区はお隣だったんですが・・・。(追記:ライブドアは、定款で全国どこでも株主総会を開催できるようにしたようです。コメント欄参照。)
4月からの会社法では、招集地に関する規定が削除されてますので、新社長の取締役選任などのために臨時株主総会を開催するのは4月以降と大胆な予測をしてみたりして。
(または、ホテルの宴会場等で、会場に入りきれない株主が、会場周辺で怒号を飛ばす、という姿か。)
いずれにしても、信託銀行の証券代行部さん等の想像を超えた前代未聞の株主総会になる可能性は、かなり高いかと思います。
もし、東京ドームとか同様のクラスで「歴史的なイベント」が行われるとしたら、その入場券が113円(本日終値)というのは、めちゃくちゃ安いですね。
マスコミの方々なども、各部・各番組などで1株づつ買うんじゃないでしょうか?
(ではまた。)

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ライブドアの価値はどのくらいあるのか?(単体編)

25日は7日ぶりにライブドアの株価が付いて、終値も137円となりましたが、さて、ライブドアの株価は、どの辺で下げ止まるのでしょうか?
まずは、ライブドアの単体の貸借対照表(B/S)をビジュアライズしてみると、以下の通り、ライブドアの特性がよくわかるかと思います。
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「営業っぽさ」がほとんどない
まず驚かされるのは、BSの右っかわは、ほとんど負債がなくて、資本金と資本準備金のみ。
まだライブドアさんは破綻したわけでもないので縁起でもないことを言うようですが、仮に今後破綻したとしたら、上場企業としては過去最高の自己資本比率での(負債の比率が極端に少ない)破綻、ということになるんじゃないでしょうか。
これは、増資や転換社債の転換、株式交換等による「ファイナンス」的活動の結果です。左っかわの資産を見てみても、現預金、短期貸付金、関係会社株式、関係会社長期貸付金等、「ファイナンス的」資産がほとんどを占めてまして、普通の会社に見られる「売掛金」とか「買掛金」といった営業っぽい項目は、全体のうちのほんのわずか。固定資産などの営業用の設備も微々たるものです。
利益剰余金も、まだ27億円程度で総資産の1.5%程度に過ぎません。
結果として、(やはり)ライブドア(単体)というのは、web制作やポータルやブログ等の「ネット」の会社というよりは、「ホールディングカンパニー」「投資会社」というのが、数字から見た実態かと思います。
ほんとに1,800億円あるのか?
報道では、「外資ファンドがライブドア買収に乗り出した」というような記事もあり、根拠として、「ライブドアの純資産は1,800億円くらいあるから、発行済株式総数10億株で割ると、180円くらいの価値はあるので、それ以下なら買い時」てなことが言われています。
が、ちょっと待っていただくと、今回、ライブドアには粉飾の容疑もかかっているわけで、まず、「純資産が1,800億円ある」という前提自体を疑ってかかる必要があるのは言うまでもありません。
もちろん、「生きている(「継続企業の前提」がある)」企業の場合には、企業価値はPERとかDCFとか、将来生み出すキャッシュフローを前提とした見方ではかられるわけですが、「24」に出てくるテロリスト風に言って「you’re a dead man.」、日本風?に言って「おまえはすでに死んでいる」という状態だと考えると、企業価値は純資産からさらに清算コスト(資産の処分価格と帳簿価格の差額などを含む)を差し引いた額にしかなりません。
企業が破綻するたびに「実質、債務超過だった!」てなことが報道されるわけですが、「生きていることを前提とした」値段と「死体」の値段では、当然、価格は変わってきます。(企業会計は、「継続企業の前提」のもとに作成されているのであって、「死ぬ」ことを前提にした数字は、「過度な保守的な会計処理」ということになりますので、死んで帳簿価格と違うのは、ある意味あたりまえです。)
以下、主立った項目を見ていきますと、
現預金
さすがに、会計監査で現金実査や預金の残高確認は行っているとすれば、昨年9月末時点の資産価値(純資産価値じゃなく)は、456億円くらいはありそうです。が、
貸付金
他の資産、短期貸付金(277億円)や関係会社長期貸付金(373億円)などは、実態のない企業や投資事業組合などに貸し出されているものだとすると、回収可能性(ほんとに返してもらえるのかどうか)が大きく問題になりそうですね。
関係会社株式
関係会社株式(501億円)のうち、株式交換で手に入れた会社のものは、おそらく相手の簿価純資産の価額でB/Sに載っていると思われますので、普通なら、それ以上の価格で売れるはずです。ただし、今回、実態のない会社や実質債務超過の会社をたくさん買収している可能性がありますので、そういうものは帳簿に記載された価格では処分できない(というか、ほとんど価値ゼロ)の可能性も。
弥生はキャッシュフローがストロングな感じがしますが(よく存じませんが)、セシールなどは少なくとも2004年12月期までは100億円近い赤字を出していた会社のようですし、買った価格で売れるんでしょうか。(まだ、詳細は見てません。)
偶発債務
で、今後、フジテレビをはじめとしたいろんな企業・個人から訴訟を受けることになりそうです。
フジテレビの出資が450億円で、ちょうど昨年9月末のキャッシュと同じくらいですから、フジテレビが訴訟で勝つ可能性が高まるほど→ライブドアの実質純資産は減って→その分またフジテレビの保有する株式の価値も目減りして損失も膨らむので→ライブドアの支払う賠償額は大きくなる・・・ということで、他の株式交換で株式を取得された会社の方々(投資事業組合に株式を買い取ってもらった方々はともかく、交換後ロックアップをかけられたなどで、まだライブドア株を処分されてなかった方々がいたとしたら)も、「だまされた」と訴訟して勝ったら・・・めぼしい資産(≒純資産→株価)はほとんど無くなってしまいそうですよね。
((気が向けば)続く。)

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リーガル・リサーチ(LEGAL RESEARCH)第二版

おそれ多くも、日本評論社さんの「リーガル・リサーチ(LEGAL RESEARCH)第二版」に、isologueを載せていただきました。
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日本評論社
いしかわ まりこ、村井 のり子、藤井 康子(著)
(監修) 指宿 信 夏井 高人、井田 良、山野目 章夫

46ページに「インターネット上のリソース」のブログ編として引用していただいてます。
toshi先生のブログ(ビジネス法務の部屋)から始まって、11ほどブログが紹介されています。が、「なぜ、あのブログが載ってないの?」というものもいくつかあって、私のブログなんぞを載せていただくのは恐縮であります。
ネットだけでなくリアルの情報源も含めて、リーガル・リサーチの方法やリソースについてまとめてらっしゃいます。
ご参考まで。

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今夜

複数のマスコミさんからの情報によると、大きな動きがあるようですね。

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フジテレビのデューデリジェンスの責任

先日、知り合いのファンドの責任者の方から電話がかかってきて、
「いやー、昨年磯崎さんの話を聞いておいてよかった。うちのファンドは磯崎さんのおかげで救われたよ。」
とのこと。
以前の記事に書いたとおり、昨年3月頃にライブドアの開示資料の分析をしたところ、かなり「普通とは違う」取引をしてことが明らかだったので、「こうしたことが、仮に”違法”と判断されることになった場合には、ライブドア株のバリューがクラッシュするリスクもありますよ」という話をしたところ、「それまではかなり頻繁にライブドア株を売買していたのだが、その話を聞いて、その後一切手を出さなかったので助かったよ。」とのことです。
(投資はすべてそうですが)、これもあくまで結果論の話でありまして、このままライブドアが摘発されなかったら昨年3月から12月末まででライブドアの株価は倍増していたわけで、逆に大きな機会損失になったかも知れないわけですが、ともあれ、「役に立った」と言っていただくことは、コンサルタントの何よりの喜びであります。
フジテレビのデューデリジェンス
ブログの読者の方には、「そんな情報があるなら、なんでその時にブログに書かんのじゃい!」とお叱りを受けるかも知れませんが、当然、開示資料だけから「確実に違法」ということがわかるわけもないので(今ですら、まだ判決が出たわけでもないです)、違法性があることを前提にブログを書くわけにもいきませんでしたのでご容赦ください。
(しかたがないので、昨年4月下旬に「1級デューデリジェンス士過去問題例」と、わかる人にはわかる形で問題提起させてもらいました。)
(というわけで、私のことはご容赦いただくとして)、私が密かに期待していたのは、フジテレビがライブドアとの和解で出資をするときのデューデリジェンスの作業で、もしかして一波乱あるんじゃないか、ということ。
以前のエントリでもふれたように、開示されている資料からも、ライブドアというのは売り上げや利益の大半をITではなく「ファイナンス」関連で計上しており、また、投資事業組合や営業投資有価証券の名目で「グルグル」させている可能性は見て取れたわけで、ライブドアの財務デューデリを行う方は、当然、この点も深く追求してしかるべきだったかと思われます。
もちろん、適正意見の監査報告書がついた財務諸表に対してケチを付けるなんてことは普通では考えなくてもいいでしょう。しかし、友好的な資本提携ならともかく、フジテレビさんは直前まで「ライブドアは違法性のある行為(時間外取引の件)を行う企業」ということを公言していたわけですから、通常のデューデリより、さらに懐疑的になってしかるべきだった、とは言えるかと思います。
一方で、通常のデューデリ作業で今回報道されているようなからくりまで解き明かせる可能性というのは極めて低いことも確か。
ただ、監査法人も「違法」との確証を得られなくても「意見差し控え」とか会計監査人を辞任するとかの行為に出れば、世間に対して「ライブドア、なんか怪しそう」というワーニングにはなったのと同様、ここでフジテレビさんが、「デューデリの結果、出資によって当社の企業価値を損なうことにならないという確証が得られなかった」というような理由で、出資を取りやめたら、ライブドアにはかなりの打撃となったことは間違いありません。
ただ、あの時の状況では、それをやると「人質」になっているニッポン放送株の救出が困難になったわけで、たとえライブドア株によって損失が出る可能性を認識していたとしても、これ以上の混乱が起こることを回避し、ニッポン放送株の取得コストを高めに設定したと考えれば、経営判断としては許される範囲だったかと思います。一般の企業だったら間違いなくそうでしょう。
私自身は「放送事業の公共性」というのがいまいちピンと来ないので、どちらでもいいんですが、世間の人は、「公共性の高い」(とご自分でおっしゃる)放送事業を営むフジテレビさんがライブドアに出資するというのは、法的責任はともかく道義的な責任としてどうだったのか、という疑問があるかも知れませんが。
では、また。

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ライブドア問題は「日本のエンロン事件」になるか?

監査法人の責任
前回のエントリに関して「ぬえ」さんからコメントいただきました。

ところで今回は監査法人にあんまり注目が集まっていないような気がしますが、そのへんはちょっと不思議です。

ですよねえ。
私もちょっと不思議に思っていたのですが、一昨日あたりからマスコミ各社の方々から、今回の監査法人についてどう思うか?というご質問をいただきはじめました。
「粉飾に協力してたんでしょうか?」というようなご質問も受けるんですが・・・んなことわかるわけないですよね。(粉飾かどうかもまだ判決が出たわけじゃないのに。)
「全く気付かなかった」か
「うすうす気付いてはいたがあえて触れなかった」か
「気付いていたが、適正だと判断した」か
「不適正と判断したが黙っていた」か
のどれかということになりますが、
売上に占める金額も非常に大きいので、これを全く気づかなかったとしたら監査法人としてはまずいですし、気付いていて触れないのは論外。「取引内容は理解していたがこれを適正だと判断した」というのは、今回の場合、かなり「クリエイティブ」な考え方ですよね。
つまり、詰め将棋的に考えて、どう転んでも今回の場合、監査法人さんの責任問題というのはキビシそうな気はいたしますが・・・・その辺は、今後の捜査や報道でわかってくることかと思いますので、このへんで。
波及効果
本当に報道されているように、ライブドアさんがSPV(というか投資事業組合)を関与させて決算を水増ししたのだとしたら、そういう意味では米国のエンロン事件に非常に似ていると言えます。
今回ご担当の監査法人さんは、パートナー数12名(ホームページによる)の中堅監査法人でしたので、売上に占めるライブドア関連会社からの報酬の比率も非常に高かったはず。これも、アーサー・アンダーセンのケースと同じ「経済的独立性」の話なのかも知れません。
いずれにせよ、あまり目新しい論点ではない、ということですね。
一方で、エンロンのケースと大きく違うのは、アンダーセンがたった1件の事件をきっかけに(真面目にやってた人を含め)世界数万人の組織が崩壊してしまったのに対し、今回は仮に監査法人さんが積極的に関与していたにしても、(トバッチリを食う人や企業には申し訳ないですが)、その影響は小さそうだ、というところでしょうか。
ライブドアさんが取った(という)手法も、「他の企業も結構やってる手法」ではなく極めて独自性が高いものじゃないかと予想しますので、そういう意味でも社会全体への影響は非常に小さいのではないかと想像します。
「小さい」といっても金額ベースで株式全体の時価総額の数%程度の影響(数兆円)にはなるかも知れませんが。ト○タさんとか新○鐵さんとかがもしこんなことをやってたのだとしたら、日本市場の信頼は確実に大崩壊するでしょうけど、この株高・景気回復トレンドの時に開示やコーポレートガバナンスに一石を投じるというのは、資産価値が実態から大きく乖離するバブルを牽制する意味でも、非常に費用対効果が高かったかと思います。
今後の世論の流れが、「企業価値の向上を追求することが”悪”なのではなく、コーポレートガバナンスが効いていないことが”悪”なのだ」という方向に行ってくれると、健全でいいんですけどね。
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ちなみに、昨年11月の終わりに、知り合いの某氏から、「ライブドア担当の監査法人の代表社員○○さんと千葉でゴルフするんだけど、磯崎さんも来ない?」とお誘いをいただいたのですが、私は昨年3月にちょっと前に書いたエントリのような分析をしていたので、「ライブドアのBSに出資金勘定がありますけど、この出資先のファンドはライブドアさんが事実上コントロールしたりしてません?」とか「営業投資有価証券の売却を売上に立てたりしてません?」というようなことを聞きたくて聞きたくてしょうがなくなってゴルフどころじゃないと思ったので、「えー、その日はちょっと用がありまして〜」という感じでパスさせていただきました。
お会いしてたら、今回の一連のブログの記事も書くのがはばかられたと思いますので、お会いしなくてよかったかも知れませんね。:-)
(ではまた。)

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