監査役にはどんな要件が必要とされるのか

昨日につづいて、監査役についての考察をもう一発。
Law Maniac「その、監査役を選ぶのは、誰か」より。

 私は、メディアではなく、上場各社の株をお持ちの株主さんに申し上げたい。
取締役や監査役の職務遂行に、ダイレクトにYES・NOをつきつけられるのは、株主さんだけです。
 株主総会に足を運んで質問したり、委任状によるとしても議案ごとに議決権を行使したり、株主としての責任を、積極的に果たしてください。
 その積み重ねが、会社を「良く」する原動力になります。

おっしゃるとおりですごい正論なんですが、実際問題としてはちょっとキツい面もあるかと思います。
株主総会がどう関わればいいのか?
昨日、監査役は、独立性が強く保証された「裁判官」の位置づけに非常によく似ていると申し上げたんですが、株主総会での監査役の選任ってのも「最高裁判所裁判官の国民審査」に非常にノリが似てませんか?
選挙に出かけるとき、衆議院議員に誰を選ぶかは結構新聞等をよく読んで検討する人はそこそこいらっしゃると思うんですが、そういう結構マジメな人でも、投票所に行って見ると、「ん?最高裁判所裁判官の国民審査?あー、そんなのあったっけね。よくわかんねーからテキトーで。」ということになる人が98%以上(磯崎推定)ではないかと思います。
日本の三権の一つを国民が直接審査するわけで、これって、非常に大切なことのはずですが・・・そんなもんです。
参考:最高裁判所裁判官国民審査法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO136.html
監査役に求められる「素養」
最高裁判所の裁判官というのは、司法試験も受かって司法修習や実務も経験している「プロ」なわけですから、まあそんなもんでいいかも知れません。
また、衆議院や参議院の議員になるのに試験が不要なのと同様、取締役になるのには試験は不要だと思います。新しい発想やバランス感覚なんてのは試験じゃわからないので。
ところが、裁判官になるのに試験は必要だが、監査役に試験が不要と言っていいかどうかというと、ちょっとビミョーです。
だって、監査役がチェックする必要のあることその1、「監査法人の監査の相当性」を判断しろつっても、「会計監査とはどのように行われるべきか」というのがわかってないと監査法人にツッコミの入れようがないですよね?
そのレベルって、公認会計士試験に受かれとは言わないまでも、少なくとも、試験範囲(簿記・原価計算・財務諸表論・監査論・商法・経営学・経済学・民法・税法)あたりの一通りの知識は欲しいところじゃないですか?
「○○監査法人の監査の方法および結果は、相当とは認められない。」てなことを監査役が監査報告書に書いたら、株価も大暴落だし、その監査法人の信用にまで大きく傷が付く大問題になります。生半可な会計監査の知識しか持たない人が、そんな会社を潰しかねない判断をするとしたら、非常に怖いお話で。(しかも、誰もそれを止められない!)
その2「適法性」の監査についても、司法試験に受かれとは言わないまでも、民法、会社法、手形小切手法などの商売の基礎的な法律知識をベースとして、その会社の業務に必要な法律の一通りの知識は必要ですよね。でないと、生半可な知識で「取締役の職務遂行に関して、法令若しくは定款に違反する重大な事実を認めた。」なんて言ってもらっても、これまた困っちゃいます。
これも会社を潰しかねない話なわけですから、指摘される取締役も死に物狂いで反論してくるはず。それを論破するためには、非常に高度な知識と論理構成力が必要になります。
以上は「お勉強」的なお話ですが、今度の監査役監査基準では、今まで監査役の業務の範囲からははずれるというのが通説だったその3「妥当性監査」についても監査役の監査範囲に取り込んでいます。(isologueバックナンバー、「経営判断の原則」参照)
つまり、取締役が意思決定をする際の、情報収集、シミュレーション、専門家のアドバイス等は適切に活用されているかどうか、経費の効率や投資のリスクとリターンはどうなのか等が十分かどうか、的確なバランス感覚で判断が行えることが必要になります。
これも、MBAを取れとは言わないものの、それに準ずるような一通りの知識や実務経験が必要ですよね?
つまり、監査役というのは、マジメにやろうと思えば、ものすごい知識と見識が求められる役職なわけです。
昨日のエントリーに書いたとおり、監査役としての注意義務は果たしてました、という「訴えられてもなんとか勝てるレベル」はそれほど高いレベルは必要とされません。ただし、みなさんが監査役に求められているのは、取締役を論破し、または説き伏せ、経営の変革に火をつけるようなレベルであって、それは、公認会計士や弁護士と対等に会計や法律や経営についてディスカッションできるようなレベルじゃないすか?
山口さん曰く「会計士は(少しは)変わった。今度は監査役」
確かに会計士はもともとプロとしての知識と経験はあったわけですから、あとは気合を入れて倫理観を高めればよかったかも知れません。
ただ、監査役は「やる気」だけで「変われる」でしょうか?
image002.gif
訴えられて勝てるレベルと「あるべき(?)」監査役のレベルって、ブレーキ性能に例えたら、軽自動車のドラムブレーキとBremboのディスクブレーキくらい違うかと。
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(© Brembo)

Law Maniacのminoriさん曰く
「株主総会に足を運んで質問したり、委任状によるとしても議案ごとに議決権を行使したり、株主としての責任を、積極的に果たしてください。その積み重ねが、会社を「良く」する原動力になります。」
・・・って、積み重ねても原動力にならないと思うなあ。
経営陣自らが監査機能の重要性に気づくか、機関投資家や再生ファンドなどがガツーンと「監査役に弁護士と公認会計士(レベルの人)を入れろ」とか言わないと、変わらないと思うですよ。
そういうのが「本質論」であり、「感情の赴くまま、その時任せの論調」でない、「現実を踏まえた地に足のついた議論」ではありまへんでっしゃろか。
(ではまた。)

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監査役の権限と「オーラ」

週刊!木村剛「マスコミが指摘しないカネボウと三菱自動車の共通点は何か?」で、木村剛さんが、監査役の責任についてコメントされているので、本日はそれについて。

じつは、ひとつ、マスコミが全く取り上げていない重大なポイントがある。
 それは、監査役の責任論だ。
 カネボウのケースは、簡単に言えば粉飾決算に関する容疑なのだから、その件に関して、監査役は当然に責任を負っている。三菱自動車の件も法律違反が対象となっているので、これも当然に監査役の責任範囲にあるはず。ところが不思議なことに、マスコミでは、この2件に対して監査役の責任を問う声が全く聞かれない。何たることか。

日本の監査役制度がうまく機能していないんじゃないかという問題意識については、私もまったく同感です。しかし、マスコミがこの2件の監査役の責任を問わないのは、監査役制度に無関心ということもさることながら、監査役の責任が実際問題として「問えない」部分があるからではないかとも思います。
監査役の「オーラ」
社団法人日本監査役協会は、毎年、6月の定時株主総会シーズンの後に、新任監査役のための基礎知識講座というのを開催します。日本監査役協会ってどんなところ?というのに前からちょっと興味があったんですが、昨年、(ついに?)この会に出席する機会がやってきました。
昨年のソレは、有楽町の東京国際フォーラムの5千人以上入れる大ホールで開催。会場に近づくと、一目でそれとわかる新任監査役のオジサマ方が会場に向かってたくさん歩いてらっしゃいます。全員グレー系の地味なスーツで年齢もほとんどが60歳以上。みなさんを包む「オーラ」は「枯れている」という表現がぴったりの感じ。よく経営者にいる「顔から脂がしたたってる」とか「首の太い」タイプの方は皆無。
東京国際フォーラムの超近代的な建物の巨大な階段を、グレーのスーツに身を包んだ数百人もの初老の方々が黙々と登っていかれる。これ、「ガタカ」とかの未来SFの1シーンを見ているようで、非常にシュールでございました。
会場に入ると、千人は超えようという出席者のうち、女性は数名。
私は、ユニクロのシャツとズボンてな格好で行ったのですが、そんな格好してるやつも、40代前半以下の人も(私が見る限り)皆無でした。
監査役の権限は絶大
以前、結構有名なベンチャー企業の社長とメシを食っているときに、「ところで、監査役って何する人なんですか?うちにもいるけど何やってるかよくわかんなくて。」と言われて、結構びっくり。(苦笑)
ことほどさようによく知られていない監査役は、その「オーラ」から、あまり権限がないと思われていることも多いのですが、やることは取締役の「見張り」で、組織図上も取締役会の「上」、株主総会の直下に書かれていることが多いですし、実は、商法上も絶大な権力を持っています。
例えば、

第二百七十五条ノ二
 取締役ガ会社ノ目的ノ範囲内ニ在ラザル行為其ノ他法令又ハ定款ニ違反スル行為ヲ為シ之ニ因リ会社ニ著シキ損害ヲ生ズル虞アル場合ニ於テハ監査役ハ取締役ニ対シ其ノ行為ヲ止ムベキコトヲ請求スルコトヲ得
� 裁判所ハ仮処分ヲ以テ取締役ニ対シ其ノ行為ヲ止ムベキコトヲ命ズルニハ担保ヲ立テシムルコトヲ要セズ

ということで、取締役の行為を強制的に差し止める権限もありますし、

商法第二百七十五条ノ四
 会社ガ取締役ニ対シ又ハ取締役ガ会社ニ対シ訴ヲ提起スル場合ニ於テハ其ノ訴ニ付テハ監査役会社ヲ代表ス(以下略)

と、取締役を訴えることもできる。その場合は監査役が会社の「代表者」です。
また、監査役が監査報告書に「取締役が不適法なことをやっていた」てなことを書いたらその会社「アウト」ですし、前回の商法改正で任期も4年に。クビにしようとしても、株主総会で「不当に辞めさせられた!」と陳述することもできます

第二百七十五条ノ三ノ二
 監査役ヲ辞任シタル者ハ其ノ後最初ニ招集セラレタル株主総会ニ出席シ其ノ旨及理由ヲ述ブルコトヲ得

こうした強大な権限をうまく使えば、「制度上、会社をちょっと脅せば、監査役は居座ろうと思えば永遠に居座れる(笑)」てなことをおっしゃる弁護士さんもいらっしゃいます。
つまり、監査役は誰にも監査されない。天敵がいない。
株主総会だけは監査役を解任させられますが、監査役の解任決議を取締役会が株主総会に上げられなかったら実際には解任できない。解任させられたという話も聞いたことがない。
また、監査役は「独任制」を取っており、原則として各監査役は「監査役会」の決議にも拘束されません。裁判官が法律で独立性を保証されているのと同様、監査役にも極めて高い独立性が保証されているわけです。
こんな強大な権限を持っている監査役に「顔の脂ぎった人」「野心マンマンな人」などをすえた日には、もしかしたらとんでもないことになるかも知れない、ということで、おのずと企業はそういう人ではなく、「無害」っぽい「枯れた」人を据えよう、ということになる。
戦後の監査役制度の歴史は、監査役の権限を強化する歴史だったわけです。しかし、日本の監査役制度の問題点は、権限が小さすぎることではなく、むしろ権限が大きすぎることに問題があるのかも知れません。
監査役の責任は限定的
会社の不祥事などで監査役が訴えられた判例というのはいくつかあるようですが、よほどあからさまに悪いことをしない限り裁判ではほぼ「全勝」のようです。
また、木村さん曰く、

カネボウのケースは、簡単に言えば粉飾決算に関する容疑なのだから、その件に関して、監査役は当然に責任を負っている。

とのことですが、「当然」かどうかは結構ビミョーなところです。
商法上の中会社以下の会社の監査役は、会計に関して監査を行う必要がありますが、大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上)は、会計部分はプロである監査法人に任せ、監査役は、その監査法人の監査方法および結果が「相当」であったかどうかの判断を行うだけです。(株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律第14条3項1号)
「相当」というのは、「明らかにヘンなことをやっていたというわけではない」くらいの意味で、「適切」とか「妥当」とかよりかなり弱い言葉です。
もちろん、監査役には監査法人に文句を言う権限はあるわけですが、会計の専門家とも限らない監査役に、会計のプロである監査法人のやり方が「明らかにヘンでっせ」と指摘させるというのは、一般論としてはちょっと無理があるかと思います。
「監査役も自分で独自に帳簿とかチェックすりゃいいじゃん?」と思われる方も多いと思いますが、従業員100人の会社ならまだしも、カネボウは連結で14,027人、売上で4300億円以上もあります。そんな会社の大量の帳簿を専門家でない方が見ても、何か発見できる可能性は低い。
監査役には、その他、適法性のチェックや重要な会議への出席などの仕事もあるので、帳簿を自分でひっくり返さなかったとしても、監査役に求められる注意義務を怠った、ということにも必ずしもならないと思われます。
木村さんの「コーポレートガバナンスにおいて監査役が機能してないんじゃないか?」という問題意識は非常に正しいと思うのですが、「なぜ、責任を問わないのだ?」というのの答えは簡単で、「実際問題責任が問えない(可能性が高い)から」ではないかと思います。
孤高の監査役
監査役の「手足」をどうするのかというのは、商法理論上、結構議論のあるところです。
会社には「内部監査室」みたいな組織があるところもあり、監査役とそういう部門が協調してワークすることで効果的な監査をやったらどうか、ということも当然考えられます。が、そういう「内部監査室」も取締役が設置し役職員がやっているため、監査役にとっては「監査対象」に相当するわけで、「部下」として使えるかというとビミョーなところ。
「監査役室」みたいのも、秘書機能くらいしかないところも多いです。
監査法人であれば、大人数でチームを組んで現場に乗り込んで、ということもできるわけですが、「手足の無い」監査役は、一人孤高に監査をしなければならない、って感じ。
監査役が10人いる会社というのもヘンですし、10人いたとしても、監査役は「独任制」ですので、それを「チーム」として束ねることは商法理論上は難しい。(当然、協力しても全然OKなのですが。)裁判官などと同じく各自「勝手に」判断して「勝手に」行動する権限が法律上保証されてます。
もちろん、外部のコンサルファームなどにフィーを払って、そのチームに社内の監査の作業をやらせてその陣頭指揮を執る、というような監査役の姿も考えられなくもないですし、その費用を請求する権利も商法上保証されています(商法279条ノ2)。が、そこまでやるのが一般的とか、それをやらないと裁判で負けるかというと、そうはなってないかと思います。
両社の監査役はどんな人?
EDINET で両社の監査役を見てみると、
カネボウの前期の有価証券報告書を見ると、監査役は4名、常勤2名。(ちなみに、お生まれは、それぞれお、昭和11年、18年、17年、9年・・・。)
弁護士の方が1名いらっしゃいますが、他の3名は、40年来カネボウの役職員だった方々です。
平成17年5月以降施行の商法では、社外監査役は半数以上いなければいけなくて、その定義も「(生まれてから一度も)その会社の役職員でなかった者」(商法特例法第18条1項)になるのですが、改正までは定義が、「その就任の前五年間会社又はその子会社の役職員でなかった者」なので、5年間会社から離れてホトボリを冷ましていれば社外監査役に該当します。カネボウの「社外監査役」のうち弁護士でない方の方は、平成元年に「ファッション経理部長」を勤められていた経歴のある、モロ元従業員の方です。

商法特例法第18条1項
(平成14年5月 改正前)
会社にあつては、監査役は、三人以上で、そのうち一人以上は、その就任の前五年間会社又はその子会社の取締役又は支配人その他の使用人でなかつた者でなければならない。
(平成17年5月1日 施行分)
 大会社にあつては、監査役は、三人以上で、そのうち半数以上は、その就任前に大会社又はその子大会社の取締役、執行役又は支配人その他の使用人となつたことがない者でなければならない。

三菱自動車の前期の有価証券報告書を見ると、こちらも監査役4名、常勤2名。
こちらは、経歴を拝見する限り、カネボウよりはかなりマシかと。社外監査役は、三菱重工の常務と、東京三菱銀行の副頭取(両方現職)です。
(ちなみに、お生まれは昭和17年、18年、20年、16年。)
特にこのお二人は、リコールについて法令違反などの事実をつかんでいたら、当然、「ちゃんとやれ!」と言いそうですし、社会的にも言える立場にはあったかと思います。が実際、そうした情報が監査役に入るしくみになっていたとも思えないですし、また、現場を訪ねて、書類を自らひっくり返すというような作業をやられる方とは思えません。
監査役は、取締役が構築するそうした「しくみ」を監査して文句を言えるだけで、自ら(監査対象である)従業員を指揮してそうした内部統制システムを作り上げる、ということをやっていいかどうかというのも商法上は、ビミョーなわけで。
委員会等設置会社の監査委員会
かように、監査役というのは強大な権限を持っておりながら、責任については必ずしも明確とは言えない。そんな人に暴れられてはたまったもんじゃないから、もともと「枯れた」人が据えられる。
「天敵のいない生物」がいる生態系をうまくいかせようというのは、そもそもビミョーなところがあるわけです。
こうした問題点の反省を元に、14年の商法改正で「委員会等設置会社」が導入されました。
この会社では、監査役は廃止され、アメリカのboardシステムと同様、取締役で構成される「監査委員会」が監査役と同様の監査を行うことになります。
取締役は「相互監視」が基本ですので、「監査委員」にも「天敵」が存在することになります。
ある程度「やる気のある」人を据えても、制度上、監査役よりは暴走する可能性は小さい。
監査委員会メンバー自体も、株主総会でなく、取締役の中から取締役会の決定で選任されることになります。
また、監査委員も「取締役」ですので、「監査役」という言葉が持つ「アガっちゃった感」が薄まってるかも知れないですね。取締役会メンバーでもあるので、経営の意思決定の決議にも参画します。
監査役は「ツッコミ専門」だったのが、監査委員は「ノリツッコミOK」になるわけです。
監査委員の独立性も保った上で、「監査委員会」は「チーム」として活動することが法律上も前提となりましたし、監査委員会の「手足」となる部隊を持てるようになったことも大きい。内部統制システム、コンプラやリスク管理との関連も明確に定義されました。(商法特例法21条の7第1項2号、商法施行規則第193条)
木村さんは「監査役の責任を追及せよ」とおっしゃいますが、以上のとおりそれら2社の監査役はよほどの「ヘマ」をやってない限り責任追求するのは難しいと思います。以上のように、法が想定しているのは、まさに「裁判官」のように基本的には裁判所に座ってるイメージで、(権限はあっても)「刑事」の機能まで強制されているとは考えにくいからです。
また、今さら監査役中心にコーポレートガバナンスを強化するよりは、例えば、上場会社には委員会等設置会社、または、それに準ずるしくみで、(見識のある)社外取締役や内部統制システムと連動したガバナンスのシステムを取り入れるように促していくというほうが建設的な気もします。
監査役制度の最大の問題が「監査役自身に対する監査は誰がするの?」ということだとしても、監査役を取締役に見張らせるのは、「監査役の権限を弱める」ことになるので、そちら方向への法改正は難しいと思われるわけです。
ご参考:isologue過去エントリー
「ベンチャーこそ委員会等設置会社」
https://www.tez.com/blog/archives/000031.html
「Googleのガバナンス構造の整理」
https://www.tez.com/blog/archives/000074.html
7月の上旬に、日本監査役協会で委員会等設置会社に移行した企業の監査委員の方々の会合に出席させていただく予定になってます。ご案内のとおり、委員会等設置会社に移行した企業はまだ少数ですが、ソニー、野村ホールディングス、オリックス、東芝など、コーポレートガバナンスに積極的と考えられる会社さんばかりなので、ちょっと楽しみにしております。
過去の出席者の資料を拝見すると、やはり年齢は私より20歳くらい上の方が多いようなので、「ノリ」が合うのか、ちょっと不安ではありますが・・・。
(ではまた。)

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買収対抗策←種類株式の充実?

本日の日経朝刊19面「大機小機、種類株式制度の充実を」(「悠憂」氏)より。
Googleの公開でも話題になった、種類株式による買収防衛策のお話です。
コラムの要旨は、

外資の中には日本の投資ファンドと組んで敵対的なTOBをするやつがいるが、これは一昔前、小糸製作所を襲った「グリーンメイラー」の再来である。
こうした乗っ取り防止の対価は大きく、将来の設備投資や社員の給与が抑制されるのは明白。
近年の商法改正の過程で、わが国固有の経営理念や倫理観が失われている。
市場の変質が明らかなだけに、株主平等の原則にこだわれずに、短期利益に走る投機家の活動を防ぐ手だてを各界がもっと真剣に検討すべきである。(磯崎による要約)

と、かなり敵対的買収に批判的な内容。
そういう活動に注意したほうがいいよ、というのはまあそうかと思うのですが、

(略)差し当たりは種類株式制度を整備充実することで健全な証券市場育成の促進を図ることなどが考えられよう。
日本の産業が確信技術を基礎にして回復しつつあるだけに脆弱化した金融、資本機能によって足をすくわれることのないよう行政、立法機関は株式の制度改革に十分に配慮すべきである。

というところはちょっと注意する必要はあります。
種類株式制度の問題か?
すでに種類株式制度はかなり柔軟になってますので、もうこれでかなりのことはできます。
いつ準備するか、ですが、公開前の準備で、Googleのdual class株式のように、議決権の違う比率のものを経営陣に持たせる方法などは、既に活用できると考えられます。
以前ご紹介した、下記の「企業買収防衛戦略」
image001.jpg
武井 一浩、太田 洋、中山 竜太郎 (編著) 商事法務(2004/04)

では、
「商法222条9項に規定する拒否権や、議決権付き株式への強制転換条項が付されたものが中心となろう。」(58ページ)
というようなアイデアが提示されています。
商法222条9項は、

会社ガ数種ノ株式ヲ発行スル場合ニ於テハ定款ヲ以テ法令又ハ定款ノ定ニ依リ株主総会又ハ取締役会ニ於テ決議スベキ事項ノ全部又ハ一部ニ付其ノ決議ノ外或種類ノ株主ノ総会ノ決議ヲ要スルモノヲ定ムルコトヲ得

という内容。「敵対的買収」に相当する要件を種類株の要項の中に記載しておいて、そのイベントが発生した場合にその実行を拒否するような内容にしておくイメージでしょうか。
「議決権付き株式への強制転換条項が付された種類株」というのは、Googleのdual classのマイルドなやつで、種類株だけど通常は議決権も経済的価値もあまり無いが、「いざ」というときに議決権付き(恐らく経済的価値は付かないか、付いても微々たるものにしておくのがいいかも知れません。)に強制転換されるような種類株のイメージかも知れません。
主流は「ライツ」のようです
ただし、同アイデアの注で、

「注48)米国では、ライツ・プランの普及の前には、種類株式がポイズン・ピルとして用いられることも多かった。」

とありますので、米国では今や、種類株式による買収防衛というのはメインではなく、「ライツ」と呼ばれる敵対的買収時に付与される権利での防衛というのが主流のようです。
同書では、米国では「大半の」企業が何らかの買収防衛策を採用している、とも述べてます。Googleのようなdual classの採用は数%程度のようですが、(こちらのエントリー参照)、その他の買収防衛策は「大半」なんですね。
同書では、日本でライツ・プランに準ずるしくみを提供するのは、新株予約権の付与ではないか、というようなことが書かれています。
種類株式だけの話ではないかも知れないですね。
株主平等原則
米国でも、こうした買収防衛にあたって、敵対的買収をする株主だけを差別するのがいいのかどうかということは過去争われたそうですが、ニューヨーク州などでは「平等原則に反する」という判例が出たあと、立法でそうした差別的条項もOKということにした、とのこと。さらに、デラウエア州では、こうした差別は「株主」の差別であるが「株式」の差別ではない、つまり、例えば15%以上を取得した株主だけ権利行使をできないという条項は、すべての株式に平等についているので、「株式」の平等には反しないのでOKであり、「ほとんど問題にされていないようです」とのことです。(P241など。)
ただし、日本では「株式」の平等が保たれているからいいじゃないか、という論法は、本書に登場される弁護士の先生方のご意見としては抵抗があるようで。
むしろ、株主の平等は「原則」であって、長期的に株主全体の利益になるというような「合理的な」理由がある場合などには例外も認められるという意味での「原則」であるとも解釈できるのではないか、というような説も出されています。
つまり、大機小機の「悠憂」氏のように「株主平等の原則にこだわらずに」というよりは、「こだわった」上で着地点を探す方が現実的なのでは?というのが同書の論旨ではないかと思います。
上場基準の問題
さらっと読んだところでは、同書には論点として出てきませんが、商法や実務がそうした買収対抗策をOKとする場合でも、こちらのエントリーのように、NY証券取引所などでは、公開前からdual classを採用してIPOするのはいいが、公開後にそういう既存株主の権利を侵害する可能性のある施策を行うことはやめてくれ、というのが上場基準になっているようです。このため、既に公開している会社が行う対抗策としては、やはり、何らかの形で「株主全員に」同じ権利が付与される(ただし、敵対的買収を行う者、例えば15%以上の株式を取得した者、はそれを行使できない)というような方式にする必要があるんでしょう。
具体的には、未公開の段階から種類株で工夫をしておいてそれを証券取引所等に認めさせて公開する「Google型」が今のところ日本では一番法的解釈にグレーさがなく、次が新株予約権を使った方式なのかな、という気がします。
前述のニューヨーク州等の法改正の事例などを参考にして、「悠憂」氏のおっしゃるように、立法で株主平等原則に一部制限を加えるようなことも検討してもいいのかも知れませんね。(どこまで具体的に書くのか、なかなか落としどころが難しいような気がしますが。)
(では。)

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「運王」とリスク

6日のエントリー「神とリスク」の続き、です。
(kataさんからコメントいただきました。ありがとうございます。)
「リスク」というと普通は「ダウンサイド・リスク」を想像するかもしれませんが、広義のリスクは「分散」「ばらつき」「σ」「ボラティリティ」などと同様の概念で、アップサイドも含んでます。
つまり「リスク=運」とも言えますね。
以下、今週発売の「イブニング」で最終回を迎えた「運王」より。
まあ、ただのマージャン漫画と言ってしまえばそれまでですが、「運とは何か」を考察したマンガでした。
(これから読む方は、ネタバレ注意。)
image001.jpg (Amazon.co.jp)

日本を支配するほどの巨万の富を得た後、すべてを失った照夜(写真)が、主人公「ゲッツー」に向かって問いかけるシーン。
(照)なァ ゲッツー 教えてくれよ
   運って何なんだ?
(ゲ)運は・・・・・・エレベーターだ
(照)エレベーター?
(ゲ)そうさ
   俺たちを上へも下へも連れてってくれる
   だけど大切なのは その位置じゃねェ
   屋上にいようと地下にいようと・・・
   大事なのはエレベーターに乗ってる中身なんだよ
(照)なァ ゲッツー
(ゲ)うん?
(照)俺はもう一度上に昇れるか?
(ゲ)上行きのボタンを押せ
   そしてゆっくり待って開いたら
   迷わず飛び乗るんだ

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三菱自動車工業の優先株式

本日の日経朝刊28面に三菱自動車の優先株の発行決議の(全面!)公告が載ってます。
http://ir.nikkei.co.jp/data/pdf/20040609/04060049.pdf (5MB。注意!)
本日は、これをちょっと掘り下げてみたいと思います。
A種とG種
中身は、
第1回A種優先株式
第2回A種優先株式
第1回G種優先株式
の3種類の優先株式の発行要項。
B種、C種、D種、E種、F種が抜けてますが、これは、今後、フェニックス・キャピタルやJPモルガンが発行する分への割当になるんではないかと想像します。
「第1回A種」は、三菱重工、三菱商事、東京三菱銀行、三菱信託が引き受け、
「第2回A種」は、中華汽車工業股イ分有限公司(台湾の生産販売会社)、東京海上、明治安田生命、その他三菱グループ会社5社、
「第1回G種」は、東京三菱銀行と三菱信託が引き受けるとのこと。
EDINETに開示されている5月21日付臨時報告書では、「第2回A」の記載がなかったのですが、今回増枠したということでしょうか。
優先順位、議決権
要項の「18」に記載された優先順位を見ると、優先配当金、優先中間配当金、残余財産分配権の別に、下図のような優先順位がついています。
image003.gif
今回発行されるA種とG種は議決権がついてませんが、おそらく、フェニックス・キャピタルやJPモルガンが入れる場合には(ホントにまだ入れるんですかね?)、当然、議決権付きで、かつB種とかF種とかの優先順位の強いところを取ってくるんでしょう。
A種もG種も、非累積型で非参加型の優先配当金が付きますので、「ある時払い」の劣後債的な優先株式ということになります。
転換予約権
優先株主は、来年の10月以降いつでも普通株式への転換が行えます。
この場合の転換条件を、以前のエントリーで書いた横浜銀行の転換社債の転換条件の事例と比べて見ると、
横浜銀行のは20連続取引日の東証の「終値」の平均値が有効な転換価額下回る場合には、転換価額が引き下げられることとなっていて、株価が上がってきても転換価額は一度下がったら二度と上がらない条件(下限「80%」)となっていましたが、
この三菱自動車の転換条件は、20取引日の「売買高加重平均価格」の平均値で修正されることになっており、株価が上がってくれば転換価額も復活するしくみとなっています。
「売買高加重平均価格」のほうが、単純な終値より「終値関与」的な操作では転換条件を変えにくいことになり、より安定的な方式と言えます。
ただし、下限は当初転換価額の「50%」まで。上限は当初転換価額までです。
またおもしろいことに、今回発行される3種のうち、「第2回A種」だけは下限に「50%(但し、下限を30円とする)」という条件がついてるんです。当初転換価額は6月25日から45取引日の売買高加重平均価格の平均で決まるので、三菱自動車の昨日の終値は201円ですが、7月8月で50円割れくらいまで下がることも想定しているということでしょうか。

「売買高加重平均価格」とは、株式会社東京証券取引所が、関連する取引日における当社の普通株式の普通取引の売買高総額を当該取引日における普通株式の普通取引の売買株式総数で除することにより、当該取引日における普通株式の売買高加重平均価格として計算し提示する価格をいう。但し、株式会社東京証券取引所がかかる価格を提示しない場合は、ブルームバーグ・エル・ピー(Bloomberg L.P.)が当該取引日の午前10時から11時の間(ロンドン時間)において提示する7211ジェイティー・エクイティ・エーキューアール(7211JT Equity AQR)の画面(又はそれに代わる画面若しくはサービス。以下「参照画面」という。)に表示された価格(当該取引日において当該参照画面が提示されない場合には、当該取引日の株式会社東京証券取引所における普通株式の普通取引の終値(気配表示を含む。))をいう。

転換枠の優先権
この優先株のちょっとおもしろいところは、普通株に転換できる枠に優先順位があるところ。
現在の発行済普通株の総数は、Yahoo!ファイナンスによると、1,483,438,934株で、昨年9月の中間期の有価証券報告書の発行済(普通)株式総数と変わらず。
当時の授権枠(会社の発行する株式の総数)は、発行済の2倍くらいしかなかったのですが、今回、優先株式を発行するために定款変更をしたはずなので、その時に、商法の上限の発行済株式数の4倍まで広げているはずです。(商法347条)
優先株式は1株100万円とデカいですが、それでも1株とカウントしますので、今回の2950億円の発行で29.5万株にしかなりません。(無視できるくらい少ない。)
image004.gif
問題は、普通株式に転換されるときにドッと株数が増えること。
例えば、転換価額が100円で現在想定されている最大4,950億円分転換すると、約50億株も増えてしまい、授権枠の余りがなくなってしまいます。
もちろん、普通株式が増えた後に株主総会で定款変更を行えば授権枠は増やせるのですが、承認されないリスクや、それまでの間の価格変動リスクを負ってしまいます。
ということで、この条項は、EDINET5月21日付臨時報告書には記載されていないのですが、第1回A種とG種(重工、銀行や商事等)が引く形で、他の三菱グループの株主(東京海上等)の転換を優先する条件を付けたということではないかと考えられます。
C種からF種までの記載がないので、それも、第3回A種から第3回B種までよりは一歩下がった転換枠になるということでしょうか。
上図で、第1回A種と第1回G種の株主は、それぞれ転換請求を出した株数×(A)/(B)の株数しか転換させてもらえません。
もっとも、今後、同社が破綻するようなことになれば、残余財産分配権がついた優先株式のまま取っておいた方が有利なので、「我先に」と転換に殺到するような状況というのは当面考えにくいわけですが。
(ではまた。)
参考:公告の規定(第1回A種優先株式の転換予約権の部分の一部):
mmc_p_stock0077.JPG

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自社株買い定款変更

昨日の日経夕刊3面より。

日本企業の自社株買い定款変更、英機関投資家が反対、取締役会の独断危ぐ。
 英大手機関投資家ハーミーズは六月末に集中する日本企業の株主総会で、自社株買いを株主総会ではなく取締役会で決めるようにする定款の変更議案に反対票を投じる方針を決めた。株主の関与が薄れ、自社株買いの決定過程が分かりにくくなると判断した。米機関投資家も同様の対応を検討し始めた。
(中略)
 発行済みの株式を企業が買い戻す自社株買いは過剰な発行済み株式を吸収し資本効率を改善させ、一株利益の増加につながるとして、欧米の投資家も積極的に求めてきた経緯がある。ハーミーズも自社株買い自体には反対していないものの、新制度が取締役会の独断につながりかねないと判断した。
例えば、より有効な資金使途があるのに自社株買いに手元資金を使えば長期的に株主価値を損ねるとみている。

うーん。
そりゃそうですが、そもそもそれは、取締役を変えたほうがいいかも知れませんねえ。

 株主総会での議決権行使について機関投資家に助言する米国のコンサルティング会社、ISS(インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシズ)も一部の企業には自社株買いの定款変更に反対票を投じるよう顧客投資家に助言し始めた。例えば、持ち株比率が五〇%近い大株主がいる企業の場合、取締役会が決めた自社株買いで発行済み株式数が減っていくと、一般株主の知らぬ間に、大株主が実質五〇%以上を握ってしまう場合があると説明している。
(ロンドン=田村篤士、ニューヨーク=藤田和明)(以下略)

基本的には、株式の発行(増やすほう)については、株式譲渡制限のついていない会社は、「授権枠」(最大で発行済株式数の4倍)まで自由に発行できてしまうので、自社株買い(減らすほう)も、ある程度自由にできてもいいと思うんですけどねえ・・。
毎年株主総会で特別決議を経るというのも、実務としてはしんどい。
改正商法でも、以下のように、配当可能利益の範囲という制限もありますし、TOBまたは市場での買いつけでやらないとだめですから、すべての株主に平等ではあります。

第二百十一条ノ三
会社ハ左ニ掲グル場合ニハ取締役会ノ決議ヲ以テ自己ノ株式ヲ買受クルコトヲ得
一 其ノ子会社ノ有スル自己ノ株式ヲ買受クルトキ
二 取締役会ノ決議ヲ以テ自己ノ株式ヲ買受クル旨ノ定款ノ定アル場合ニ於テ第二百十条第九項本文ニ規定スル方法ニ依リ自己ノ株式ヲ買受クルトキ
� 前項ノ決議ハ買受クベキ株式ノ種類、総数及取得価額ノ総額ニ付之ヲ為スコトヲ要ス
� 前項ノ取得価額ノ総額ハ最終ノ貸借対照表上ノ純資産額ヨリ第二百九十三条ノ五第三項第一号乃至第四号ノ金額及同条第一項ノ規定ニ依リ分配シタル金銭ノ額ノ合計額ヲ控除シタル残額ニ同条第三項第五号乃至第七号ノ金額ヲ加算シタル額ヲ超ユルコトヲ得ズ
� 第一項ノ決議ニ依リ自己ノ株式ヲ買受ケタル場合(同項第一号ニ掲グル場合ヲ除ク)ニ於テハ其ノ決議前ニ終結シタル最後ニ招集セラレタル定時総会ノ終結後ニ買受ケタル自己ノ株式ノ買受ヲ必要トシタル理由並ニ其ノ株式ノ種類、数及取得価額ノ総額ヲ同項ノ決議ニ依ル買受後最初ニ招集セラレタル定時総会ニ於テ報告スルコトヲ要ス

第二百十条
� 第一項ノ決議ニ基キ株式ヲ買受クルニハ市場ニ於テスル取引又ハ証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二章の二第二節ニ定ムル公開買付けノ方法ニ依ルコトヲ要ス但シ第二項第二号ニ掲グル事項ニ付決議アルトキハ此ノ限ニ在ラズ

同じ面の記事で、NTTドコモは、

改正商法に対応した定款変更に加え、昨年同様、六千億円の自社株買い枠設定の二つを提案する。平田正之常務は「定款変更は不測の事態に備えるため」と説明。それとは別に従来方式を使って「平時の利益配分方針を株主に明示する必要がある」と語る。
(中略)
株価安定や円滑な総会運営を意識し、NTTドコモ方式を検討する企業が相次ぎそうだ。

とのこと。
枠の法的意味はなんなんでしょうか。
決議までしなくても、方針を明示するだけでいいような気もしますが・・・。
(ではまた。)

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外資による買収、租税条約

昨日の日経新聞から。

合併対価に外国株・現金、外資主導の再編容易に——法制審方針。
2004/06/06 日本経済新聞 朝刊1面
 法相の諮問機関である法制審議会は企業合併の際、相手先の株主に渡す対価として、新たに外国株式を含めた他社株式、社債、現金を充てることを認める方針を固めた。企業の再編を促すため、日本経団連や米国が求めているもので、外国企業にとっても日本企業を合併・買収(M&A)しやすくなる。法務省が来年の通常国会に提出する会社法案に盛り込み、二〇〇七年中の施行を目指す。(中略)
 新制度は、法制審の会社法部会が秋にまとめる会社法案の要綱案に明記し、来年二月をめどに法相に答申する。

つまり、「買う側」の外国企業は「カネ」で買う以外に、自分で印刷した自社の「株券」を「カレンシー」として使って日本の会社を買うことができる、ということです。
これによって日本の会社が買いやすくなれば、需給バランスから会社の価格もつりあがる要因となる可能性があります。例えば、IT系のマーケットの例をあげると、今だと「売却先としては○フトバンクか○天か○イブドアくらいかなあ」というように売り先が数社に限られてしまうところが、海外の企業も候補に上ってくる可能性があるということ。(ただし当然、相手が欲しがるような会社であれば、ですが。)
また、日本の企業に売却(合併)するのと違って、まだまだ「言葉の壁」が交渉のネックになるかも知れません。気の効いた仲介者がいればいいとも言えますが、やはり一般的には、会社の魅力を最も上手に伝えられるのはその会社の社長だし、株主を一番まとめられるのも社長だし、社長自身が交渉の経過を直接理解できれば、話も早い。
しかし、2007年というのはずいぶんと先の話ですなあ。それまでは、外国企業との合併、売却は別のスキームで対応する必要があります。(今でもできないわけではないので、本当に欲しがられれば手はあります。)

(続き)
 外国企業が日本企業を傘下に収める場合、日本に設立した子会社が日本企業と合併する「三角合併」といわれる方式が一般的。だが、相手先企業の株主に存続会社の株式を与えなければならないため、存続会社の経営権を完全に握ることができない。
(中略)
 合併対価への現金の使用については現在、株式を交付する際に、株式だけでは調整不可能な部分を現金で渡す「合併交付金」が認められている。新制度では、消滅会社の株主に金銭のみを支給する「キャッシュアウト・マージャー」といわれる合併も選択可能になるため、潤沢な資金を持つ外国企業にとって、日本企業のM&Aが容易になる。

もう一つ、対内投資にフィナンシャルな要因で影響を与える可能性のある事象について。

本日 日本経済新聞朝刊13面「今週の予定」
7日(月)大安
租税条約の改正交渉
対オランダ、東京で。投資促進と租税回避防止が目的。
欧州各国との改正交渉の第一弾。

租税条約の関係で、オランダにある投資用のvehicleから投資されるケースは多いです。例えば、新生銀行(旧日本長期信用銀行)に投資した「New LTCB Partners CV」とかもそう。CVというのは、オランダ法上のLimited Partnershipです。
(以上)
以下、ご参考記事、URL:
株主を追い出す(スクイーズ・アウト)
https://www.tez.com/blog/archives/000034.html
課税方式別に見た事業体(パススルー型・ハイブリッド型)の取り扱い(KPMG税理士法人)
(↑web上のコンテンツとしては、かなり詳しく書かれてらっしゃいます。)
http://www.kpmg.or.jp/tax/newsletter/s04_04_19.html
日米租税条約(新条約)の署名について(平成15年11月 財務省)
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy151107.htm
所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国との間の条約(和文)
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy151107a1.pdf
(同英文)
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy151107a2.pdf
2004/01/28 日本経済新聞 夕刊18面

旺文社逆転敗訴、租税回避いたちごっこ——相次ぐ新手法、国税庁の対策後手
(中略)
 消費者金融の旧「ディックファイナンス」、米証券大手「モルガン・スタンレー」の両グループは、商法の「匿名組合」契約を結んだオランダの関連会社から事業資金を調達し、収益を同国に送金。匿名組合の分配金には日本で課税できないという日蘭租税条約の規定を利用し、課税を逃れていたことが、一昨年から昨年にかけ判明した。
(中略)
 ただ、租税回避行為は違法ではなく、企業側が裁判で争うことも少なくない。国税庁は租税条約や法令の改正で“抜け穴”を事前にふさぐ作業も進めているが、新手のスキームの後追いになっているのが実情だ。

「外国税額控除制度の改正に関する提言」
2003年9月 社団法人日本貿易会経理委員会、KPMGジャパン税務グループ
(注:国際的な税金の「取り合い」と今後の提言が、非常にわかりやすくまとまってます。)
http://www.jftc.or.jp/proposals/2003/2003_09_18a_details.pdf
http://www.kpmg.or.jp/tax/newsletter/pdf/gaikokuzei.pdf

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神とリスク

Ronald Reagan元大統領が亡くなられたそうです。ご冥福をお祈りいたします。

NEWS ALERT from The Wall Street Journal
Former President Ronald Reagan died Saturday at age 93. Mr. Reagan, who had lived longer than any other U.S. president, had been out of the public eye since disclosing a decade ago that he had Alzheimer’s disease.

アメリカの大統領は演説の中で「GOD」という言葉を多用しますね。日本の首相が国会演説で「神が・・・」と言ったら極めて違和感があると思いますし、首相は退任を迫られるのではないかと思います。
アメリカでも政教分離という概念はあるようですが、

合衆国憲法 修正第一条(Amendment I)
Congress shall make no law respecting an establishment of religion, or prohibiting the free exercise thereof; or abridging the freedom of speech, or of the press; or the right of the people peaceably to assemble, and to petition the government for a redress of grievances.

そもそも「GODが存在すること自体」は、アメリカ人にとっては「当然」のことなんでしょう。

さて、その「GOD」という言葉は、日本語の「神」という言葉とはちょっとニュアンスが違う、ということがよく言われますが、ぴったりじゃないかと思う言葉があります。
それは「リスク」です。(←日本語やないやん・・・。)

映画「ケープ・フィアー」で、自分を弁護した弁護士を逆恨みしたロバート・デニーロが「エステル記と詩篇の間を読め」とスゴむシーンがあったのですが、旧約聖書のエステル記と詩篇の間が「ヨブ記」という物語です。(ご参考URLは例えばこちら
この「ヨブ記」は、キリスト教やイスラム教やユダヤ教の人が思い描く「GOD」のイメージを非常によく表しているのではないでしょうか。
ヨブ記は、世界で最も信心深く真面目で幸せに暮らしている主人公ヨブに対して、神が、その家族も財産もすべて奪い、病魔に苦しめさせるという超ハードSM的仕打ちをして、絶望のどん底に突き落とすという物語です。そこには「何か悪いことをしたから報いを受けた」という「因果関係」は存在しません。
この「神」は、「商売繁盛を祈願したら必ず応えてくれる便利な存在」ではなく、森羅万象すべてを司り物理法則をも包含する全能者のイメージです。

私は子供の頃、21世紀にもなれば宗教のような「非科学的な」ものは消えうせているんじゃないかと予測していたんですが、その予測は見事にはずれました。共産主義諸国が崩壊して宗教が復活し、世界の宗教を信じる人の比率は減るどころか益々増えているのではないかと思います。
日本でも、経営トップについては、信心深かったり風水を気にしたりする人は非常に多いですね。超優良企業とされる一部上場企業の社長まで、「方角が悪いので今年はあちらの地方には出店しない」とか。
「真面目に努力していれば必ず報われる」という環境に置かれている人は、あまり神の必要性を感じないんじゃないでしょうか。戦後の日本の高度成長期はまさにこうした環境に合致するものではなかったかと思います。
上の人の指示を受けて働いていればいいサラリーマンは、事業リスクからは隔離されてきたし、自分のやったことがうまくいかなかったら、「上の指示が悪かったから」と人のせいにもできるわけです。個人金融資産の過半が預貯金だということは、自分の資産についてもまったくリスクを負ってこなかった、ということでもあります。
が、今までも、企業のトップに立ってリスクを一人で背負っている経営トップは、「がんばったらその分報われる」「よく考えれば必ず成功する」というだけではない「リスク」を一番感じていて、何らかの形でそれをマネジする必要に迫られていたのではないかと思います。

今まで、日本は「よく勉強すればいい学校に入れて、いい会社や役所に勤められて、そこでがんばれば出世できる」という「因果」が成り立っている社会だったわけです。これって、資本主義社会というよりは、「世界で最も成功した共産主義国家」だった、と言えるかも知れません。が、終身雇用制度が崩壊し、大企業に勤めて真面目に働いていても、明日どうなるかわからない、本当の意味での「市場経済」的な社会になってきたわけです。

ここ数年ずっと、日本もシリコンバレーのように、わずかな可能性にかけてチャレンジすることが賞賛されるような社会になれるのかどうかということを考えてきたのですが、その要因の一つとして、こうした「神」のインフラがあるかないかは非常に大きいのではないかという気もしています。
すべてが「因果」で考えられてしまう社会では、失敗したら「そいつの能力がなかったからだ」ということにしかなりません。失敗した上に無能者扱いされるのでは、チャレンジする気も失せるというもんですわね。
失敗は「神(≒リスク)」のせいだ、ということであれば、失敗しても「Good try!」ということになります。「科学的な」説明をすれば、因果は存在するにしても、それは世界中の様々な条件が複雑にからみあったカオスであり、いくらシミュレーションしても結果は予測できない、つまりその部分は「リスク」が残存する(んだから、しゃーないじゃん)、ということになるかと思います。

こういうリスクに対するマネジメント(特に精神面でのマネジメント)が、日本の社会的インフラの課題なんではないかという気がしています。

When I find myself in times of trouble,
mother Mary comes to me,
speaking words of wisdom, let it be.
(以下略)

(ではまた。)

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「経営判断の原則」

「電車男」、読みました。前評判があまりに高くてちょっと期待しすぎたところはありましたが、かなり楽しませていただきました。初めてデートした時のドキドキ感とか思い出しましたね。「あらゆるケース」を想定していろいろシミュレーションしたりシナリオ書いたりとか。(笑)
でも、当たり前ですが、初めてのことをいくら頭で考えても限界があるわけで、絶対シミュレーションどおりでないことが発生するんですよね。w
ということで、(本題に入りますと)、本日は、経営上「やってみなけりゃわからない」ことについてのチャレンジとその法的責任についてのお話。
経営にはリスクがあります。
株式公開すると(しなくても)経営者は株主代表訴訟される可能性もあるわけですが、「やってみなきゃわかんない」ことも多いのに、失敗したからと言ってなんでもかんでも訴えられたんではたまったもんじゃない。特に、ベンチャー企業というのは、誰もやっていないこと、成功確率の低い(だけど成功すれば成果も大きい)ことにもチャレンジしていかないといけないわけです。
どこまでなら訴えられてもOKで、どの線を越えるとアウトなのか?というのは、その企業の置かれている環境にもよるので、一概には言えないわけですが、その問いに対する一つの答えが「経営判断の原則」という概念になります。
以下、今年2月に改定された日本監査役協会が発表した「監査役監査基準」について、旬刊「商事法務」5月5・15合併号(No.1697号)で、「「監査役監査基準」全面改定の背景と実務対応」という座談会が行われてますので、その内容から。(下線部筆者)

(武井一浩氏)大きな点としては、平成五年商法改正以降の株主代表訴訟の増加に伴う、いわゆる「経営判断の原則」に関する下級審判例の修正、それから大規模公開会社の取締役に対する内部統制システムの構築義務です。これらはいずれも取締役の善管注意義務に関する判例法を通じた解釈論の動きであり、取締役の善管注意義務に違反が無いかをチェックする監査役の職責にも当然影響する話になります。
(中略)
(尾崎安央氏)ビジネス・ジャッジメント・ルールですが、これはアメリカの判例法理であることはご存知だと思います。要するに、ビジネス・ジャッジメントについては司法判断しないということだろうと考えますが、アメリカの判例の進展において、意思決定のプロセスの適正性が重要視されてきたことも周知のことかと思います。そのような内容が十四条で明確化したわけです。つまり、取締役会が意思決定をする際にどれだけ十分な情報を得ているか、具体的なシミュレーションをどれだけやっているか、必要な場合に専門家のアドバイスを適切に受けているかなどを監査する。こういった厳格なプロセスのもとに経営判断したならば、結果は問わない。ときにリスクを取る経営判断があるかもしれませんが、予想されたリスクが発生したとしても、慎重な審議をした結果ならば責任は問わない。いい加減な意思決定をしていたならば、責任を取ってくださいということになるわけで、そこのところを具体的に、十四条一項で一号から五号という形で明瞭にしたつもりです。

ググってみますと、legal-definitions.comというオンライン辞書サイトでは、

in corporate law, business judgment rule is doctrine that protects officers and directors of a corporation from personal liability so long as the actors acted in good faith, with due care, and within the officer or director’s authority.

と、一歩進んで「取締役等をprotectする」原則であると言ってますね。(下線部筆者)
こうした原則が明確になるによって、取締役は思う存分新しいことに「チャレンジ」することができます。
ただし、訴訟等を恐れてビビりすぎるのも困りますが、逆に失敗の恐怖のヒューズが壊れてて、「何事も、やってみなきゃわかんない」と、テキトーな判断で新事業とかやっちゃうベンチャー経営者も(よくいらっしゃるんですが)困ります。経営者がわからなくても、誰か専門家に聞いたり部下に調べさせればわかる話というのも多いわけです。
チャレンジも大切ですが、その会社にとっての「in good faith」とか「due care」とはどういった水準なのか、というのもよーく考えて行動したほうがいいと思います。
(ではまた。)
(以下参考資料)
監査役監査基準
http://www.kansa.or.jp/cc01.html
II 改定の視点
 取締役会その他における意思決定に関しては、取締役の善管注意義務履行の判断基準としていわゆる経営判断の原則が判例で定着しつつあることに鑑み、十分な情報と適切な意思決定過程に基づいた合理的決定がなされているか否かという観点を、監査役監査基準に盛り込むこととした。
(中略)
(取締役会等の意思決定の監査)
第14条
1.監査役は、取締役会決議その他において行われる取締役の意思決定に関して、善管注意義務、忠実義務等の法的義務の履行状況を、以下の観点から監視し検証しなければならない。
(1)事実認識に重要かつ不注意な誤りがないこと
(2)意思決定過程が合理的であること
(3)意思決定内容が法令又は定款に違反していないこと
(4)意思決定内容が通常の企業経営者として明らかに不合理ではないこと
(5)意思決定が会社の利益を第一に考えてなされていること
2.前項に関して必要あると認めたときは、監査役は、取締役に対し助言もしくは勧告をし、又は差止めの請求を行わなければならない。

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(大きなお世話?)はてな等への(潜在的)設備投資圧力

最近、ときどき「はてな」や「gree」が重たいことがあるような気がして。(気のせいならいいんですけど・・・。)
「Blogによるコミュニケーションの変化(仮説) 」および
「Blogによるコミュニケーションの変化(仮説)その2」
で書かせてもらったのは、
「トラフィックが特定の『ブランド』サイトからblogなどの『ノンブランド』サイトに分散化されつつあるのではないか」
「その分散化を後ろで支えるはずなのが、(ポータルやサーチエンジンなどの他に)、分散化されたサイトを個々の利用者向けに切り出す、『はてな』等のエージェント的なサービスではないか」
という仮説でした。
Hatena_Gree_Mixi.jpg
(出典:Alexa)
ネットワーク的なサービスは、「ムーアの法則を超えた」トラフィックの増加をするものが多く、恐らく、上記のようなサービスも今後トラフィックが急増し、(うれしい反面)、様々な問題、特に設備投資の資金負担・資金調達の問題が大きくなってくるのではないかと思います。
以下、実際、各サービスの内部データ等拝見したわけでもなんでもないので、ホームページに開示されている内容だけからの推測ですが、
株式会社はてなは、会社概要を見ると資本金1000万円とのことで、まだ、VC等からの資金は入れてらっしゃらない模様。(当然、ラブコール殺到でしょうけど。)
mixiを運営している株式会社イー・マーキュリーは、資本金6,420万円。増資時に資本準備金に半分繰り入れているとしても、1億円程度の調達額かと推測されます。同社が経営しているFindJob! はキャッシュを生みそうなビジネスモデルですが、それでも、ホームページに開示されている情報を見ると、2002年度実績(2年前ですが)で売上1億5200万円。従業員数 29名(契約社員等含む)というところからしても、利益は出ている可能性がありますが、以上のデータから推測する限り、サーバー等にガンガンいくらでも投資をできるほどキャッシュが湧いているという感じでもないですね。
Greeは、「グリーの運営は、上記のメッセージに基づき、そのミッションを実現するため、開発者である田中良和により、個人的なボランタリーで企画/開発/運営が行われています。」とのことで、個人で運営されているようですが、orkutと同様、個人とは言えバックに「超大物」がついてらっしゃっるので、ちょっとやそっとの資金には困らないのかも知れません。(よく存じませんが。)
梅田望夫さんが、「公開資料からかいま見えるGoogleのコンピュータシステム」というエントリーで、

S-1資料によれば、Googleがこれまでに投じたシステムコストは、ハードウェア機器に対して2億5000万ドル。そこから、今Googleは4万5000台から8万台のサーバーを管理しているのではないかと推測している。

というTNL.Netの「How many Google machines」という記事を紹介されてます。
このGoogleの1/30の設備投資で済むとしても、10億円オーダーの設備投資が必要になってくることになります。
ネットバブルの頃は、ハードやミドルウエアのベンダーさんが、ベンチャー向けに破格の値段で製品を提供してくれたりしたもんですが、今はどうなんでしょうか。
小池良治さんの、「モジュラー・データセンターとサーバー・バーチャライゼーション」(←これ、最高おもしろいです。)を読むと、データ処理量が急速に増えていく場合、単にサーバーの数を増やしていけばいいわけではなく、機器間の最適化のマネジメントや3層構成(Three-Tier Server Model)の見直しまで含む様々な技術的問題を解決していかないといけないということがイメージされます。
つまり、大規模なシステム運営を前提としたイケてる技術者の方々なども採用していく必要があるし、そのためにはそういう方々が「勤めたい」と思わせる会社の環境や条件も整備しないといけないはず。
こうした「トラフィックの増加がムーアの法則を追い抜く」タイプのビジネスモデルの場合、技術はいいのにファイナンス面から成長の限界が来たりすると非常にもったいないですね。
Googleが、Kleiner PerkinsやSequoia Capitalから投資を受けたように、こうした日本発の可能性のあるサービスに、「50億円だろうが100億円だろうが出しまっせ。金のことは心配せず、君らはとにかく世界があっと驚くようなサービスを作ってくれ」というような超太っ腹な投資家が資金的なバックアップとして付いたりすれば、非常に「レース」がおもしろくなるんですけど。
1億円投資してもらって喜んでいたら、実は腰の引けた投資家で、「上と相談いたしましたが、御社にはもうこれ以上投資できないということになりまして〜」と追加投資が得られなかったり、20億円くらいのvaluationですぐバイアウトやIPOを勧められるようなことになると悲しいかも知れません。
え?大きなお世話だ?
こりゃまた、どうも失礼いたしましたー。m(_ _)m
(ではまた。)

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