村上判決(速報)

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東京地裁で村上ファンドの村上被告への判決が出ました。
(村上被告懲役2年+罰金300万円、�MACアセットマネジメントに罰金3億円、追徴11億4900円6326円で、執行猶予なし。)


 
判決の要旨を拝見したんですが、個々の判断要素としては、

(1) まず、業務執行を決定する「機関」は「堀江及び宮内」である。(最高裁の判例(平成11年6月10日)を引用)
(2) 「ことについての決定」というのは、「(それに)向けた作業等を会社の業務として行う旨を決定したことをいうと解するのが相当である」。
(3) 決定が「真摯」なものである必要はない。
(4) 実現可能性が高いことは必要性がなく、「可能性が全くない場合は除かれるが、あれば足り」る。

(以上、磯崎による要約)
とのこと。

被告人は「ファンドなのだから、安ければ買うし、高ければ売るのは当たり前」と言うが、このような徹底した利益至上主義には慄然とせざるを得ない。

とのことで、村上ファンドのアクティビスト活動は全否定、といった印象であります。
一つ一つを見れば、法解釈として「ごもっとも」ですし、一般の投資家の方は、そもそも今回問題になったような情報を入手する可能性があまりないので、今回の判決は、ほとんどの「フツウの」投資家にはあまり影響を与えない話だとは思います。
ただし、これらを「合わせワザ」で見ると、大口の投資家が対象企業や他の大口投資家と情報交換をしながら利益を上げた場合には、かなりの確率で(後知恵で)インサイダー取引になってしまうのではないか、少なくとも、アクティビスト活動という「ビジネスモデル」は、日本では成立しえなくなるのではないか?という印象を持ちました。
個人的には、(アクティビストでなくてもいいんですが)、何らかの形でパフォーマンスの悪い経営者の尻をたたく機能は必要だと思っており、こうした活動が仮に存在しえなくなるとしたら、市場や国民の資産全体のパフォーマンスにどのような影響を与えるのか、また、こうした判決を真摯に受け止めた上でもアクティビスト的な活動を行う余地はあるのか、について、後でまた考察してみたいと思います。
今からちょっと会議なので、今回はこれにて。
(ではまた。)

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12 thoughts on “村上判決(速報)

  1. アクティビストファンドとガバナンス

    諸処の事情により更新が滞っておりますが、生きております。
    備忘のため、村上ファンド事件の判決要旨のクリッピングを。
    事実認定を含め、詳細は判決原文…

  2. アクティビストを否定するということは、投資して株を持った人は、経営に対して企業価値を高めるような行動をしてはいけない、ということでしょうか?
    そういう投資行動を法的に禁止する国に果たして投資は、なされるのでしょうか。
    合理なき理性なき感情的な判決だと思います。

  3. 経営者の尻をたたくには、その会社の株を買わない、もしくは空売りするのが一番合理的かと思いますが、いかがでしょうか?

  4. 空売りをしても、会社業績は上がらないでしょう。
    会社を良くするには、バカな経営者を更迭する選択肢があって良いし、そのためには株の買い集めやプロキシファイトがあっても良い。会社が良くなれば、社会全体が利益を受けるのだから。

  5. 村上さんが有罪になった根拠の”重要事実”にはピンとこないのですが。
    拡大解釈して(アナリスト行為基準より)株価に影響を与える事実としても、
    発行企業による行為ではなく、第3者における共謀のようにかんじます。
    相場操縦ならともかく、インサイダーとは?りかいできないのです。

  6. 昨日の判決について

    こんにちは、M&A会計士の澤村です。
    昨日の判決について、ド素人的感想しか書いておりませんでしたが、
    私が常にチェックしている

  7. 日本のコーポレートガバナンスは何処へ行く?

    という話をちょっとしてみようかと思った。 先日、村上さんへの懲役2年の実刑判決がでたわけですが、それに関連して。 村上判決(速報) 村上裁判:結…

  8. 村上裁判の判決内容について

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