ベンチャーこそ委員会設置会社(会社法版)

  • Facebook
  • Twitter
  • はてなブックマーク
  • Delicious
  • Evernote
  • Tumblr

以前、「ベンチャーこそ委員会設置会社」というエントリを書いたんですが、先日、某未公開のベンチャー企業で、「ベンチャーに委員会設置会社ってどうよ?」という雑談になったので、昨年から施行された会社法下で、ベンチャー企業が委員会設置会社をより利用しやすくなったのかどうか、改めて考えてみました。


 
会社法に変わっても、委員会設置会社の基本は前のエントリとほぼ同じではありますが、変わった点としては、


  • 委員会等設置会社の「等」が取れた。(どうでもいいですが。)
  • 以前は大会社(資本金5億円超など)であることが原則だったが、会社法になって、小会社(例えば資本金1円)でも委員会設置会社になれるようになった。
  • 以前は委員会等設置会社のみに義務付けられていた内部統制の決議が、普通の株式会社でも明文化された。

などがあるかと思います。
その、雑談になった未公開ベンチャーは取締役会非設置会社、つまり、監査役がまだいないんですが、その雑談の場で、「単純に監査役を一人連れてきて監査役設置会社にするフツウの手のほかに、(社外取締役はたくさんいるので)委員会設置会社にするという手もありますよ」、という話をしたときに、出てきたのが以下の反応。


  • 社員数数名で委員会設置会社って、おおげさすぎますね(笑)
  • 委員会設置会社は手続きにコストがかかって面倒そう
  • 社外取締役にかなりコミットしてもらわないといけない
  • ギリギリなベンチャーはそんなところにコストを使うべきでない

うーん、そうなんでしょうか。
なぜ委員会設置会社は「重そう」に見えるのか?
昔は大会社しかなれなかったから?
なぜ委員会設置会社は「重そう」に見えるのか?というと、まずひとつは、上記のように、昨年以前は、旧商法特例法上の大会社(資本金5億円超など)でないと委員会等設置会社になれなかったから、というのも一因かと思います。
(前述のとおり、いまや、資本金1円でも委員会設置会社にはなれるわけです。)
実際大企業しか使ってないじゃん?
また、委員会設置会社にしている企業が、ソニー、オリックス、野村證券といった、日本を代表する超大企業しかない、(上場企業でもおそらくまだ100社ないと思いますし、ましてや、未公開会社では聞いたことが無い)、ということがあるかと思います。
内部統制に関するルールが厳しい?
また、日本ではじめて内部統制構築義務が法律の条文に明記されたのが委員会等設置会社だったので、「委員会等設置会社=なんか内部統制がすごく厳しい会社」というイメージができあがっちゃったんでしょう。
(旧商法施行規則193条第6号で、委員会等設置会社の取締役会は「執行役の職務の執行が法令及び定款に適合し、かつ、効率的に行われることを確保するための体制に関するその他の事項」を定めることとされていた。)
しかし、ご案内のとおり、会社法になって、「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」(348条3項4号、362条4項6号)は、委員会設置会社以外の株式会社でも明記されましたので、委員会設置会社とフツウの会社の差は実質的に無くなってます。
フツウの会社は委員会設置会社より甘い内部統制でいいのか?
では、逆に、

  • 「フツウの中小会社は内部統制構築義務が無い」のか?
  • 「フツウの会社は、委員会設置会社より内部統制が甘くて許される」のか?
  • 「フツウの会社の社外取締役の責任は、委員会設置会社の取締役より軽い」のか?

と聞かれたとしたら・・・・答えは「No」でしょう。
取締役として会社の監督を委任されたからには、内部統制の構築義務は(民法上当然に)ある、というのが今や通説になってきているかと思いますし、何かしらの内部統制がまったく無いのに、取締役は、どうやって組織全体の責任を負えるのか?、と考えると、そこにはなんらかの「内部統制」があるはずです。
また、「委員会設置会社は、ソニーやオリックスと同レベルの高度な内部統制を構築しないといけない」なんてことも会社法にはどこにも書いてないわけで、社員5人の会社で、「社長が伝票には全部目を通してまっせ」といったレベルも含め、規模に応じた内部統制があれば、それでよろしいのではないかと思います。
また、「委員会設置会社だから内部監査室や内部監査専担者がいないといけない」、ということもないし、「委員会設置会社だから、キングファイル何冊分もの規定集が必要」ということもない。「委員会設置会社だから、毎月、取締役会や監査委員会を開かないといけない」ということもないです。
つまり今や、必要とされる内部統制のレベルは、委員会設置会社か監査役設置会社かで変わるわけはない。少なくとも、「うちは委員会設置会社じゃないから、委員会設置会社より甘い内部統制でいいんだ。」というのは間違っているんじゃないかと思います。
(348条4項、362条5項で、「大会社では、(内部統制についての)事項を決定しなければならない。」とあるのは、「大会社以外なら、内部統制を構築しなくてもいい」ということとは違います。)
委員会設置会社のほうがコンパクト?
監査役設置会社の取締役会設置会社が大会社になると、最低、取締役3人+監査役3人で6人が必要になります。
委員会設置会社なら、最低、取締役3名でOK。(それで公開審査に通るかどうかは別ですが、取締役と別に監査専門の人を雇うことが不要なのは確か。)
監査法人とどう付き合うか?
ひとつだけ、今のところ委員会設置会社のコスト要因として避けられないのが、委員会設置会社は会計監査人設置会社でなければならない、ということ。(会社法327条5項)
ネットバブルのころであれば、大手監査法人でも「出世払い」で極端な場合年間200万円台くらいのコストでベンチャー企業の監査をしてくれたもんでしたが、その後エンロン事件だのSOX法だの数々の企業不祥事だので、だんだん世の中世知辛くなってきたこともあって、今や、未公開のベンチャーでも年間1000万円近いコストをお支払いせざるを得なくなってきているのではないかと思います。
このため、2〜3年後に株式公開やバイアウトを目指すというのでない企業や、「のんびりした」ベンチャー、公開する予定のない子会社やジョイントベンチャーなどでは、必ずしも委員会設置会社はお勧めできません。
特に、委員会設置会社は役員人事や役員報酬は、社外取締役が過半数の指名委員会や報酬委員会に決定権を握られてしまいますので、「社長の給料を、なんで社長が決められないんじゃ!」とおっしゃるコテコテのオーナー社長の方などには、まったくお勧めできない。
一方、1000万円弱といっても、ちょっと気の利いた人を1人雇う年収と変わりないわけではあります。数人がかりでプロが会社の悪いところを発見してくれて公開やバイアウトの実現の具体性が格段に増す、と考えれば、資金に余裕がある会社なら、入れておいたほうが得ともいえます。
中央青山ショック以降、大手監査法人さんもなかなかお忙しくなってますので、昔であれば受けてくれたような会社でも、今は受けてくれないこともありますし、ここだけのお話、会社法監査なんて、こちらから言い出さない限り、営業方針として原則受けないという監査法人さんもおありのようですので、受けてもらえたらラッキーという面も。
また、最近は(世知辛いので)、公開寸前に「やっぱり監査意見出せません」てなこと言われて公開がひっくり返るケースも多いようなので、将来の証取法監査を前提に任意で監査してもらうのではなく、会社法監査で毎年1回1回監査意見を出してもらって、監査法人さんが逃げられない(逃げにくい)ようにしておく、という戦略もあるようです。
公開2年前になってから監査してもらおうと思っても、受けてもらえないこともある時代に突入してるわけです。ヒヨコのころから監査してもらっていたら、(当然、継続する義務はなくても)、監査法人も鬼ではないので、よほどのことがないかぎり公開を目前に「降りる」てなことにはならないかと思います。
シェア
結局、委員会設置会社の最大の難点は、「シェアが低い(事例が少ない)」というところかと思います。
取締役会や委員会の決議事項や議事録の作成は、会社法の条文数ページを数時間かけて読めばわかる程度のことなんですが、やっぱり「なんとなく、まわりに実例がないと・・・」というのが正直なところかと。
「Macがいいのはわかったけど、周りに使ってる人がいなくて・・・」といわれたら、Macユーザーなら、「そんなの、使ってみりゃわかるって!」と言いたくなるかとは思いますが、やっぱりフツウの人はWindowsを選んでしまうのであります。
うん。
ということで普及の糸口は見えましたね。
  • Macみたいに「委員会設置会社エヴァンジェリスト」を野に放つ。
  • Googleとかイケてる企業と同じboardとofficerの関係がカッコイイ(と思っていただく。)

ということで、誰か「委員会設置会社エヴァンジェリスト」になってみたい方!
(・・・委員会設置会社エヴァンジェリスト1号、磯崎でした。)

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

11 thoughts on “ベンチャーこそ委員会設置会社(会社法版)

  1. それはどうも。
    すんまへん、最近ややこしい話が続いてまして。
    「分かりやすかった」というのは、「Macのあたりが」、ということですね?:-)
    (ではでは。)

  2. 公開を目指すベンチャーでは「週3日以上の勤務(?)実態が必要」
    などといわれる常勤監査役を探すより「ここは思い切って、委員会設置会社」
    なんて考えたこともありましたが、やはり
    「未公開で委員会設置会社なんて聞いたことがない」
     
    という意見が圧倒的でした。
    >それで公開審査に通るかどうかは別ですが、
    このあたりの実例が出てくると、動きが加速されるかもしれません。
    全然関係ありませんが、最後の「委員会設置会社エヴァンジェリスト」が、一瞬
    「委員会設置会社エヴァンゲリオン」
    に見えました。

  3. 先日、起業を目指している昔の同僚と話す機会があり、委員会設置会社にするのも一案よ、と言う話してみました。ネタ元はこちらであることと、一読することも勧めて。
    確かに事例が少ないのがネックかも知れませんが、監査役のなり手を捜すより取締役のなり手を捜す方が早いかも知れませんね。会計監査人がネックになりそうですが、最初は小規模なところにお願いして将来は大手と共同監査、と言う体制に持って行くのも一案かと。

  4. >>それで公開審査に通るかどうかは別ですが、
    >このあたりの実例が出てくると
    実は、実例はないわけではありませんです。(カブドットコム証券)
    >一読することも勧めて。
    どうもありがとうございます。
    「最初は小規模なところにお願いして将来は大手と共同監査」というのも、ちょいとトータルコストが高くなっちゃうんでは、という感じではありますが。
    (ではまた。)

  5. エントリーもさがってきたことですし、あまり名乗り出る人がいないようなので、2号!(?)
    (ではまた。)

  6. 委員会設置会社のリストは監査役協会HPに掲載されています。http://www.kansa.or.jp/PDF/iinkai_list.pdfご参照。
    それによると、現在110社。非上場会社も結構あります(尤も多くは上場会社を親会社に持つケースですが)。
    注目すべきは、
    1)一旦委員会設置会社に移行したものの、再び監査役会設置会社に戻った会社が少なからずあること。
    2)SEC登録会社でも、監査役会設置会社を維持している会社が多いこと。
    です。つまり、委員会設置会社が、わが国に馴染まない、普及しないのはもはや明らかかと思います。(見栄えや雰囲気を除けば)特段のメリットも特徴もありませんので、当然のことかと思います。

  7. 委員会設置会社のリスト、ありがとうございます。
    急速に普及しなさそうというのはその通りだと思いますが、「わが国に馴染まない」というのはかなり大雑把な話かと。個別の企業に馴染めばいいわけですから。
    本文中にも書きましたが、日本の会社のかなりの部分は、「オーナー社長が自由に会社をコントロールしたい」「会社は役員と従業員のもの」というマインドから抜け切れていないし、そうではいけないと思っていても、社外取締役が過半数の指名委員会・報酬委員会で役員人事を握られてしまうのはコワい、また、そういった適切な判断を下してくれそうな社外取締役を探したけどピンと来る人がいない、ということだと思います。
    だから、「ベンチャーこそ委員会設置会社」であります。
    そういう過去からのしがらみから自由なベンチャーは、選択の自由度はより高いはず。
    特徴はないどころか大ありでして、「監査役を置けない(監査役がいらない)」。
    VC等から資金調達したベンチャー企業の場合、逆に、社外取締役なら見つかるけど、常勤監査役や社外監査役に適任そうな人がいない、ということが多い。
    監査役は独任制だし、その法的権限は強大で、いざ暴れだしたら制御が極めて困難なので、ベンチャー企業の場合には、監査役一人ひとりではなく、監査委員会という「組織」として監査を行う委員会設置会社のほうが安心できるという面もあります。

  8. 2009綛眼

    篁ヤ????勌??腓障?勌????眼????粋???????????????障??鐚???????2腓障?壩?≪??????贋??鐚????篁?綛眼??I…