全部取得条項付株式との対比(ブルドックの新株予約権取得)

  • Facebook
  • Twitter
  • はてなブックマーク
  • Delicious
  • Evernote
  • Tumblr

本日00:06,の日経速報ニュース、より

 企業が株主から強制的に買い戻せる「全部取得条項付き種類株」に対する課税ルールが9日までに明らかになった。全部取得株はTOB(株式公開買い付け)を拒否した株主に普通株の代わりに割り当てるケースが多いが、課税ルールが明確でなかった。株主が全部取得株を売却した場合、「みなし配当課税」の対象になるかどうかが注目されていたが、国税庁はこのほど対象としない方針を決めた。売却益があった場合のみ「譲渡益課税」の対象とする。
 今回の国税庁の決定でTOBへの賛否などで課税方法が異なる事態は避けられることになり、会社法上の株主権の行使が保障される形となる。


 
法令(後ろに添付)を見ると、みなし配当にならないのは以前から文言上は明確のように思えましたが、「当局は、全部取得条項付株式をみなし配当にならないのを問題視している」と実務方面の方々内でのウワサもあり・・・ということだったんですが、こうして日経さんで報道されるということは、課税当局の見解としては「OK」ということで固まった、ということでしょうね。
改めて、何を配当とみなすか、ということの法令の歴史を振り返ってみると、理論的に一貫しているというよりは、かなり恣意的というか政策的というか。
(昔の株式配当や、利益積立金額の資本組入れ、(後ろに添付した所得税法施行令61条に含まれる)上場会社等の公開買付けでの自己株取得や端株の取得など。)
という背景も考えると、みなし配当に該当するかどうかは、類推適用を行う余地は少なく、文理的に解釈するしかない、ということになりましょうか。
結果として、ブルドックがスティールの新株予約権を取得した場合に、みなし配当で課税するというのは、やはりちょっと厳しいということになんでしょうか。
(みなし配当はどっちでもいい気もしますが、買い取り額を損金参入できるということになると、税務当局としても大いに違和感を感じるんじゃないかと思います。)
(ではまた。)

(所有株式に対応する資本金等の額又は連結個別資本金等の額の計算方法等)
所得税法施行令第六十一条
 法第二十五条第一項第四号 (配当等とみなす金額)に規定する政令で定める取得は、次に掲げる事由による取得とする。
一  証券取引法第二条第十六項 (定義)に規定する証券取引所の開設する市場(同条第八項第三号 ロに規定する外国有価証券市場を含む。)における購入
二  店頭売買登録銘柄(株式(出資及び投資信託及び投資法人に関する法律第二条第二十一項 (定義)に規定する投資口を含む。以下この項において同じ。)で、証券業協会が、その定める規則に従い、その店頭売買につき、その売買値段を発表し、かつ、当該株式の発行法人に関する資料を公開するものとして登録したものをいう。)として登録された株式のその店頭売買による購入
三  事業の全部の譲受け
四  合併又は分割若しくは現物出資(法人税法第二条第十二号の十一 (定義)に規定する適格分割又は同条第十二号の十四 に規定する適格現物出資及び事業を移転し、かつ、当該事業に係る資産に当該分割又は現物出資に係る同条第十二号の三 に規定する分割承継法人(以下この条において「分割承継法人」という。)又は同法第二条第十二号の五 に規定する被現物出資法人の株式が含まれている場合の当該分割又は現物出資に限る。)による同条第十一号 に規定する被合併法人(以下この条において「被合併法人」という。)又は同法第二条第十二号の二 に規定する分割法人(以下この条において「分割法人」という。)若しくは同法第二条第十二号の四 に規定する現物出資法人からの移転
五  合併に反対する当該合併に係る被合併法人の株主等の買取請求に基づく買取り
六  会社法 (平成十七年法律第八十六号)第百九十二条第一項 (単元未満株式の買取りの請求)又は第二百三十四条第四項 (一に満たない端数の処理)(同法第二百三十五条第二項 (一に満たない端数の処理)又は他の法律において準用する場合を含む。)の規定による買取り
七  第百六十七条の七第五項(株式交換等による取得株式等の取得価額の計算等)に規定する一株に満たない端数に相当する部分の対価としての金銭の交付

[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。

One thought on “全部取得条項付株式との対比(ブルドックの新株予約権取得)

  1. 旧カネボウの和製ハゲタカによるスクイーズアウト
    (少数株主の権利の無視と不当な締め出し)に反対し、
    買取請求を行い、裁判所に価格の判断を仰いでおりますが、
    買取請求者は売却益が出ない場合にも
    「みなし配当課税」の対象とされてしまうのでしょうか?
    > 今回の国税庁の決定でTOBへの賛否などで
    > 課税方法が異なる事態は避けられることになり、
    > 会社法上の株主権の行使が保障される形となる。
    買取請求を行う少数の反対株主は
    【会社法上の株主権】が認められないまま放置されるのでしょうか?